特許第6232983号(P6232983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232983
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】減速装置及びシート駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20171113BHJP
   F16H 53/00 20060101ALI20171113BHJP
   A47C 1/025 20060101ALI20171113BHJP
   B60N 2/235 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F16H1/32 A
   F16H53/00
   A47C1/025
   B60N2/235
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-250147(P2013-250147)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-108381(P2015-108381A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 定夫
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−158249(JP,A)
【文献】 特開2001−165248(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/015845(WO,A1)
【文献】 特開2000−97295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
A47C 1/025
B60N 2/235
F16H 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる歯数を有して噛合可能に形成される内歯及び外歯の一方側を備えた第1歯車と、
前記内歯及び外歯の他方側を備えた第2歯車と、
前記第1歯車と同軸位置において回転可能に支持されることにより該第1歯車及び前記第2歯車を偏心状態で噛合させるとともに駆動トルクの入力により前記第1歯車と前記第2歯車との間の噛合位置を移動させることが可能なカム機構と、
前記カム機構に連結されることにより前記第1歯車と同軸に配置される連結軸と、
前記第2歯車と同軸に設けられて前記連結軸に連結されることにより該連結軸を介して前記カム機構に前記駆動トルクを入力可能な回転体と、を備え、
前記回転体は、回転中心を通って径方向に延びる長孔を有し、該長孔内に前記連結軸が挿入されることにより前記第1歯車と前記第2歯車との間に設定された偏心量に相当する偏心位置において前記連結軸に連結されるとともに、
前記長孔は、該長孔の長手方向に沿った前記回転体と前記連結軸との相対移動を許容する長径を有した減速装置。
【請求項2】
請求項1に記載の減速装置において、
前記回転体は、前記長孔内を長手方向移動可能な挿入体を介して前記連結軸に連結されること、を特徴とする減速装置。
【請求項3】
請求項2に記載の減速装置において、
前記挿入体は、前記長孔の長手方向に対して交差する方向に延設された第2の長孔を有し、
前記連結軸は、前記第2の長孔の長手方向に沿って相対移動可能に該第2の長孔内に挿入されること、を特徴とする減速装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の減速装置において、
前記カム機構は、前記第2歯車と同軸位置において該第2歯車と一体に設けられた周壁部の内側に配置されるカム部材と、
前記カム部材と周壁部との間に配置される一対の押圧部材と、
前記各押圧部材を互いに離間する方向に付勢して前記周壁部に押し付けるバネ部材と、
を備えること、を特徴とする減速装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の減速装置において、
前記連結軸には、平行する二平面を有した二面幅部が形成されること、
を特徴とする減速装置。
【請求項6】
二つのシート部材間に介在された請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の減速装置を備えるシート駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載のシート駆動装置において、
前記各シート部材の一方側に前記第1歯車が固定されるとともに他方側に前記第2歯車が固定されることにより、前記第2歯車が回転不能な固定要素となること、
を特徴とするシート駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速装置及びシート駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる歯数が設定された内歯歯車及び外歯歯車の一方を第1歯車とし、他方を第2歯車とする。そして、その第1歯車と同軸位置において回転可能に支持されることにより当該第1歯車及び第2歯車を偏心状態で噛合させるとともに、入力される駆動トルクに基づいて第1歯車と第2歯車との間の噛合位置を移動させることが可能なカム機構を備えた減速装置がある。
【0003】
このような減速装置は、その第1歯車と第2歯車との噛合位置が移動する際、これらの第1歯車及び第2歯車が相対回転することを利用して、そのカム機構に入力される駆動回転を高い減速比で減速することができる。そして、例えば、特許文献1に記載のシート駆動装置は、このような減速装置をシートッションとシートバックとの間に介在させることにより、そのシートバックの傾倒角度を調整可能なリクライニング装置として機能させる構成となっている。
【0004】
具体的には、このシート駆動装置において、リクライニング装置を構成する減速装置は、例えば、その第1歯車を構成する内歯歯車が設けられた第1部材がシートバック側に固定され、第2歯車を構成する外歯歯車が設けられた第2部材がシートクッション側に固定される。また、このようなリクライニング装置は、多くの場合、そのシートバックの幅方向両側に設けられる。そして、これら二つのリクライニング装置は、シート幅方向に延びる連結軸によって、その内歯歯車(第1歯車)と同軸に設けられたカム機構間が連結されるようになっている。
【0005】
また、この従来例に示されるシート駆動装置は、駆動源となるモータの回転を減速して出力するアクチュエータ装置を備えている。例えば、このアクチュエータ装置は、シートッションの側方に固定されることにより、その減速ギヤが上記リクライニング装置を構成する減速装置の外歯歯車(第2歯車)と同軸に配置される。そして、この減速ギヤには、その回転中心から離間した偏心位置に、上記連結軸に対する連結孔が設けられている。
【0006】
即ち、各リクライニング装置を構成する減速装置は、その第1歯車及び第2歯車の一方側を基準とした場合、他方側は、見かけ上、両者の間に設定された所定の偏心量を有して揺動回転するという特徴がある。
【0007】
この点を踏まえ、上記従来のシート駆動装置では、予め、上記偏心量に相当する所定の偏心位置に連結孔を形成することで、その連結軸と駆動トルクが入力される回転体としての減速ギヤとが連結されるようになっている。そして、これにより、その回転体の回転軸周りに連結軸を周回させることで、簡素な構成にて、円滑に、その回転不能なシートクッション側に設けられたアクチュエータ装置の駆動トルクを、シートバックとともに揺動回転する各リクライニング装置のカム機構に伝達することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0119554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、実際には、その第1歯車と第2歯車との間の偏心量は、必ずしも一定ではなく、例えば、減速装置を構成する各部材の製造・組付誤差、或いは経年変化による摩耗等を要因として、その構成部材間の相対的な位置関係に応じて変動するものとなっている。このため、上記従来の構成では、その実際の偏心量と減速ギヤの連結孔に設定された偏心位置との間に差異が生ずる可能性がある。そして、これが円滑な動作の妨げとなるおそれがあることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より円滑に動作する減速装置及びシート駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する減速装置は、異なる歯数を有して噛合可能に形成される内歯及び外歯の一方側を備えた第1歯車と、前記内歯及び外歯の他方側を備えた第2歯車と、前記第1歯車と同軸位置において回転可能に支持されることにより該第1歯車及び前記第2歯車を偏心状態で噛合させるとともに駆動トルクの入力により前記第1歯車と前記第2歯車との間の噛合位置を移動させることが可能なカム機構と、前記カム機構に連結されることにより前記第1歯車と同軸に配置される連結軸と、前記第2歯車と同軸に設けられて前記連結軸に連結されることにより該連結軸を介して前記カム機構に前記駆動トルクを入力可能な回転体と、を備え、前記回転体は、回転中心を通って径方向に延びる長孔を有し、該長孔内に前記連結軸が挿入されることにより前記第1歯車と前記第2歯車との間に設定された偏心量に相当する偏心位置において前記連結軸に連結されるとともに、前記長孔は、該長孔の長手方向に沿った前記回転体と前記連結軸との相対移動を許容する長径を有したものであることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、回転体に設けられた長孔内に連結軸を挿入することによって、容易に、その第1歯車と第2歯車との間の偏心量に相当する偏心位置において回転体と連結軸とを連結することができる。そして、これにより、その第2歯車が固定された側から、効率よく、カム機構に駆動トルクを伝達することができる。
【0013】
更に、長孔の長手方向に沿った回転体と連結軸との間の相対移動が許容されることで、第2歯車と同軸に設けられた回転体に対する連結軸の偏心位置は、その第1歯車及び第2歯車を噛合させるカム機構の機能によって自動的に調整される。そして、これにより、例えば、製造・組付誤差、或いは経年変化による摩耗等により生ずる上記偏心量の変動を吸収することができる。その結果、より円滑な減速装置の動作を確保することができる。
【0014】
上記課題を解決する減速装置は、前記回転体は、前記長孔内を長手方向移動可能な挿入体を介して前記連結軸に連結されることが好ましい。
上記構成によれば、より円滑に、その長孔の長手方向に沿って回転体と連結軸とを相対移動させることができる。その結果、より円滑な減速装置の動作を確保することができる。
【0015】
上記課題を解決する減速装置は、前記挿入体は、前記長孔の長手方向に対して交差する方向に延設された第2の長孔を有し、前記連結軸は、前記第2の長孔の長手方向に沿って相対移動可能に該第2の長孔内に挿入されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、回転体に形成された長孔の長手方向に沿った挿入体の相対移動が許容され、及びその挿入体に形成された第2の長孔の長手方向に沿った連結軸の相対移動が許容される。そして、これにより、簡易的なオルダム継手を形成することで、より柔軟に、その第2歯車と同軸に設けられた回転体に対する連結軸の偏心位置を調整することができる。その結果、より円滑な減速装置の動作を確保することができる。
【0017】
また、第1歯車と第2歯車との間の相対的な回転位置にかかわらず、そのカム機構に連結軸を連結することができる。そして、これにより、組付け作業が容易になることで、その作業効率の向上を図ることができる。
【0018】
上記課題を解決する減速装置は、前記カム機構は、前記第2歯車と同軸位置において該第2歯車と一体に設けられた周壁部の内側に配置されるカム部材と、前記カム部材と周壁部との間に配置される一対の押圧部材と、前記各押圧部材を互いに離間する方向に付勢して前記周壁部に押し付けるバネ部材と、を備えることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、バネ部材のバネ力に基づいて、第1歯車及び第2歯車を偏心状態で噛合させることができる。そして、そのカム部材に入力される駆動トルクに基づいて、第1歯車と第2歯車との間の噛合位置を移動させることができる。加えて、カム機構に対する駆動トルクの入力がない場合であっても、バネ部材のバネ力に基づいて、その第1歯車と第2歯車との相対的な回転位置を保持することができる。
【0020】
上記課題を解決する減速装置は、前記連結軸には、平行する二平面を有した二面幅部が形成されることが好ましい。
上記構成によれば、簡素な構成にて、円滑に、その長孔の長手方向に沿って回転体と連結軸とを相対移動させることができる。その結果、より円滑な減速装置の動作を確保することができる。
【0021】
上記課題を解決するシート駆動装置は、二つのシート部材間に介在された上記何れかに記載の減速装置を備えることが好ましい。
上記構成によれば、比較的小さな駆動トルクで円滑に、二つのシート部材間を相対回転させることができる。
【0022】
上記課題を解決するシート駆動装置は、前記各シート部材の一方側に前記第1歯車が固定されるとともに他方側に前記第2歯車が固定されることにより、前記第2歯車が回転不能な固定要素となることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、その第2歯車が固定された固定部側に駆動源が設けられた構成であっても、その第1歯車とともに揺動回転するカム機構に対し、固定部側から効率よく、駆動トルクを伝達することができる。また、駆動源を固定部側に配置することで、その配置自由度が向上する。更に、一つの駆動源によって複数の可動部位を動作させることも可能になる。そして、これにより、構成の簡素化及びスペースの有効利用を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より円滑に減速装置を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】シート駆動装置の概略構成図。
図2】シート駆動装置の斜視図。
図3】(a)は、第1の実施形態におけるシート駆動装置の側面図、(b)は、第1の実施形態におけるホイールと連結軸との間の連結部分の拡大図。
図4】第1の実施形態におけるシート駆動装置の断面図(図3(a)におけるIV−IV断面)。
図5】リクライニング装置の分解斜視図。
図6】リクライニング装置の分解斜視図。
図7】リクライニング装置の概略構成を模式的に示す説明図。
図8】第1の実施形態におけるシート駆動装置の分解斜視図。
図9】第2の実施形態におけるシート駆動装置の分解斜視図。
図10】(a)は、第2の実施形態におけるシート駆動装置の側面図、(b)は、第2の実施形態におけるホイールと連結軸との間の連結部分の拡大図。
図11】第3の実施形態におけるシート駆動装置の分解斜視図。
図12】(a)は、第3の実施形態におけるシート駆動装置の側面図、(b)は、第3の実施形態におけるホイールと連結軸との間の連結部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
以下、車両用のシート駆動装置に適用される減速装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0027】
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3とを備えている。本実施形態では、車両の床部Fには、左右一対のロアレール5が設けられている。また、これらのロアレール5には、当該各ロアレール5上を相対移動するアッパレール6が装着されている。そして、シート1は、これら各アッパレール6上に支持されている。
【0028】
即ち、本実施形態では、相対移動可能に設けられたこれらのロアレール5及びアッパレール6によってシートスライド装置7が形成されている。そして、車両の乗員は、このシートスライド装置7の機能を利用することにより、車両前後方向におけるシート位置を調整することが可能となっている。
【0029】
また、本実施形態では、シートクッション2とシートバック3との間には、シートクッション2に対するシートバック3の相対回動を規制し、及びその相対回動を許容することが可能なリクライニング装置10が設けられている。そして、車両の乗員は、このリクライニング装置10の機能を利用することにより、そのシートバック3の傾倒角度を調整することができるようになっている。
【0030】
詳述すると、図2及び図3(a)に示すように、本実施形態では、シートクッション2の側方に位置するロアアーム11には、それぞれ、その後端部11aから上方に延びる支持プレート12が設けられている。また、シートバック3は、これらの支持プレート12間に挟まれる態様で、シートクッション2の後端部に配置されている。そして、リクライニング装置10は、シートバック3の幅方向両側に位置する各シートバックフレーム13と上記各支持プレート12との間に介在されている。
【0031】
さらに詳述すると、図4図7に示すように、本実施形態のリクライニング装置10は、異なる歯数が設定された内歯歯車15及び外歯歯車16と、これらの内歯歯車15及び外歯歯車16を偏心状態で噛合させるカム機構18と、を備えている。そして、本実施形態では、これらの構成部材を備えて形成される減速装置20の機能を利用することで、そのシートバック3の傾倒角度を調整可能な所謂タウメル式のリクライニング装置が形成されている。
【0032】
具体的には、本実施形態のリクライニング装置10は、第1歯車を構成する上記内歯歯車15が一体に形成された第1部材(内歯側リクライナプレート)21と、第2歯車を構成する上記外歯歯車16が一体に形成された第2部材(外歯側リクライナプレート)22と、を備えている。
【0033】
本実施形態では、これらの第1部材21及び第2部材22は、ともに略円板状の外形を有している。また、これらの第1部材21及び第2部材22は、その径方向外側に円環状の保持部材23が取着されることにより、対向面21s,22sを有して相対回転可能に並置されている。そして、第1部材21側の内歯歯車15は、その対向面21sに設けられた円形凹部25の内周に刻設され、第2部材22側の外歯歯車16は、その対向面22sに設けられた円環突部26の外周に刻設されている。
【0034】
また、本実施形態では、第1部材21の中心部には、当該第1部材21を厚み方向(図4中、左右方向)に貫通する円孔27が設けられている。尚、本実施形態では、この円孔27の周縁部には、上記円形凹部25の深さに相当する軸長を有して円孔27に連続する円筒状の筒状部28が設けられている。更に、第2部材22の中心部には、当該第2部材22を厚み方向(同じく、図4中、左右方向)に貫通して上記円環突部26の内周に連続する円孔30が設けられている。そして、カム機構18は、その円孔30の内側に設けられている。
【0035】
さらに詳述すると、本実施形態では、第2部材22の円孔30内には、略円環状をなすブッシュ31が嵌着される。そして、本実施形態のカム機構18は、略円筒状の筒状部32aを有して上記第1部材21の円孔27内に挿入されることにより内歯歯車15と同軸位置において回転可能に支持されるカム部材32と、上記ブッシュ31の内周面31sと上記カム部材32との間に配置される一対のウェッジ35と、を備えている。
【0036】
具体的には、これらの各ウェッジ35は、外歯歯車16と同軸位置において当該外歯歯車16と一体に設けられた周壁部としての上記ブッシュ31の内周面31sに当接可能な湾曲した押圧面35sを有する弧状部材となっている。そして、各ウェッジ35は、互いの周方向端部(近接端部35a)が近接する位置において、上記筒状部32aの径方向外側、詳しくは当該筒状部32aが挿入される第1部材21側の円孔27の周縁に設けられた筒状部28の径方向外側に配置されるようになっている。
【0037】
また、カム機構18は、上記各ウェッジ35を互いに離間する方向に付勢してブッシュ31の内周面31sに押し付けるスプリング36を備えている。本実施形態では、このバネ部材としてのスプリング36は、上記カム部材32の径方向外側を迂回する略リング形状を有している。更に、スプリング36の両端部は、それぞれ、上記のように互いに近接する位置に配置された各ウェッジ35の近接端部35aに連結されている。そして、本実施形態のカム機構18は、これにより、上記ブッシュ31の内側に各ウェッジ35が配置される際、スプリング36のリング形状が撓められることにより生ずるバネ力(弾性復元力)に基づいて、その径方向外側に位置するブッシュ31の内周面31sに対して各ウェッジ35を押し付ける構成となっている。
【0038】
ここで、本実施形態のカム部材32は、上記筒状部32aの軸方向一端側において径方向外側に延びるフランジ部32bを備えている。本実施形態では、このフランジ部32bは、周縁部の一部が周方向に切り欠かれた略円板形状を有している。更に、各ウェッジ35には、それぞれ、このフランジ部32bに設けられた切欠き38内に配置されて当該切欠き38の周方向端部に当接することにより各ウェッジ35が周方向に離間する動きを制限可能な規制突部39が設けられている。そして、本実施形態のカム機構18は、これにより、そのスプリング36のバネ力に基づいて、各ウェッジ35が径方向移動するように構成されている。
【0039】
即ち、押圧部材としての各ウェッジ35は、上記のように内歯歯車15(中心位置N1)と同軸に設けられたカム部材32と外歯歯車16(中心位置N2)と同軸に設けられたブッシュ31の内周面31sとの間に配置されている。このため、これらの各ウェッジ35がブッシュ31の内周面31sを押圧することによって、そのリクライニング装置10を構成する第1部材21と第2部材22との間には、当該第1部材21及び第2部材22を径方向に相対移動させる力が発生することになる。そして、本実施形態のカム機構18は、これにより、その第1部材21に設けられた内歯歯車15と第2部材22に設けられた外歯歯車16を偏心状態で噛合させることが可能となっている。
【0040】
また、本実施形態では、上記のようにカム機構18を構成するカム部材32の筒内は、略六角形状の断面を有した連結孔(六角孔)40となっている。更に、この連結孔40内には、シート幅方向に延びる連結軸41が挿入される(図2参照)。尚、この連結軸41もまた、上記連結孔40の六角形状に対応する断面形状を有した六角軸となっている。そして、上記のようにシートバック3の幅方向両側に設けられた各リクライニング装置10は、この連結軸41を介して、そのカム機構18間が連結されるようになっている。
【0041】
更に、本実施形態では、この連結軸41を介することにより、各カム機構18のカム部材32に駆動トルクが入力されるようになっている。そして、本実施形態のカム機構18は、その入力される駆動トルクに基づいて、第1部材21に設けられた内歯歯車15と第2部材22に設けられた外歯歯車16との間の噛合位置を移動させるように構成されている。
【0042】
即ち、本実施形態のカム機構18は、上記連結軸41を中心にカム部材32が回転するような駆動トルクが入力されることによって、当該カム部材32の切欠き38内に挿入された各ウェッジ35の規制突部39のうちの一方側が上記カム部材32のフランジ部32bに設けられた切欠き38の周方向端部に押圧されるように構成されている。また、この一方側のウェッジ35を周方向に押圧する力は、スプリング36を介して他方側のウェッジ35に伝達される。そして、本実施形態では、これにより、その各ウェッジ35及びスプリング36が連結軸41周りに連れ回る態様で、カム部材32と一体に回転するようになっている。
【0043】
また、このとき、その各ウェッジ35を外歯歯車16と同軸に設けられたブッシュ31の内周面31sに押し付ける押圧力の方向(押し付け方向)は、カム部材32の回転中心となる連結軸41周りに回転することになる。そして、本実施形態のカム機構18は、この押し付け方向の変化に基づいて、第1部材21に設けられた内歯歯車15と第2部材22に設けられた外歯歯車16との間の噛合位置を、そのカム部材32の回転方向に応じた方向に移動させる構成となっている。
【0044】
更に、本実施形態のカム機構18は、そのカム部材32が連結軸41と一体に外歯歯車16の中心位置N2(図7参照)周りを周回するような駆動トルクの入力によっても、その内歯歯車15と外歯歯車16との噛合位置を移動させるように構成されている。
【0045】
即ち、この場合、そのカム部材32の周回方向に位置する一方のウェッジ35については、そのブッシュ31の内周面31sに対する押し付け力が強まり、他方側のウェッジ35については、その内周面31sに対する押し付け力が弱まることになる。しかしながら、これら二つのウェッジ35間に生ずる押し付け力の差異は、当該各ウェッジ35間を連結するスプリング36のバネ力に基づいて連結軸41を中心にカム部材32が回転することにより解消される。そして、本実施形態では、これにより各ウェッジ35の押し付け方向が変化することで、その内歯歯車15と外歯歯車16との間の噛合位置がカム部材32の周回方向に移動するようになっている。
【0046】
本実施形態のリクライニング装置10は、このような連結軸41を介したカム機構18に対する駆動トルクの入力、及びこれにより生ずる内歯歯車15と外歯歯車16との間の噛合位置の変化に基づいて、そのシートバック3の傾倒角度を調整することが可能となっている。
【0047】
即ち、カム機構18に対する駆動トルクの入力がない場合には、スプリング36のバネ力に基づき各ウェッジ35がブッシュ31の内周面31sを押圧することによって、その第2部材22に設けられた外歯歯車16と、第1部材21に設けられた内歯歯車15との噛合位置が保持される。そして、本実施形態のリクライニング装置10は、これにより、シートバック3側に固定された第1部材21とシートクッション2側に固定された第2部材22との相対回転が規制されることで、そのシートバック3の傾倒角度を保持することが可能となっている。
【0048】
一方、連結軸41を介してカム機構18に駆動トルクが入力された場合には、内歯歯車15と外歯歯車16との噛合位置が移動することで、その内歯歯車15が設けられた第1部材21と外歯歯車16が設けられた第2部材22との間の相対的な回転位置が変化する。そして、本実施形態のリクライニング装置10は、これにより、そのシートバック3の傾倒角度を変更することが可能となっている。
【0049】
具体的には、本実施形態では、シートクッション2側に固定された外歯歯車16が回転不能な固定要素となっている。このため、シートバック3側に固定された第1部材21は、その内歯歯車15(中心位置N1)と第2部材22に設けられた外歯歯車16(中心位置N2)との間に設定された所定の偏心量δを有して揺動回転することになる(図7参照)。
【0050】
また、このとき、連結軸41を介してカム機構18に入力される駆動回転は、その内歯歯車15と外歯歯車16との間に設定された歯数の違いに基づいた減速比で減速される。即ち、これらの内歯歯車15、外歯歯車16及びカム機構18を備えて形成される減速装置20は、カム機構18の一回転につき、その歯数差分(例えば、1又は2)に相当する角度ずつ外歯歯車16に対して内歯歯車15が相対回転するように構成されている。そして、本実施形態のリクライニング装置10は、これにより、その入力される駆動トルクが比較的小さな場合であっても、円滑に、そのシートバック3の傾倒角度を変更することが可能となっている。
【0051】
さらに詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態のシート1には、モータ45を駆動源とするアクチュエータ装置46が設けられている。そして、本実施形態では、このアクチュエータ装置46が出力する駆動トルクを上記連結軸41を介してリクライニング装置10のカム機構18に伝達することによって、そのシートバック3の傾倒角度をモータ駆動により調整可能なシート駆動装置50が形成されている。
【0052】
図4及び図8に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置46は、モータ軸45aに連結されることにより当該モータ軸45aと一体に回転するウォーム51と、このウォーム51に噛合されるホイール52と、これらのウォーム51及びホイール52を回転自在に収容するケース53と、を備えている。そして、そのケース53が上記支持プレート12の外側面12aに締結されることにより、シートクッション2の側方に配置されるようになっている。
【0053】
尚、本実施形態では、支持部材としてのケース53は、ウォーム51の軸線に沿って分割された第1及び第2の収容部材53a,53bを組み付けることにより形成される。また、これら第1及び第2の収容部材53a,53bには、それぞれ、ホイール52の回転軸52aが挿入される円孔54,55が形成されている。そして、本実施形態のケース53は、これにより、その収容するホイール52を回転自在に軸支することが可能となっている。
【0054】
また、本実施形態では、上記のようにアクチュエータ装置46が固定される支持プレート12には、当該支持プレート12を厚み方向に貫通する貫通孔56が形成されている。更に、この貫通孔56には、各リクライニング装置10のカム機構18間を連結する上記連結軸41の一端が挿通されるようになっている。そして、本実施形態のアクチュエータ装置46は、そのホイール52を接続部として、この貫通孔56を介して支持プレート12の外側面12a側に突出する連結軸41の軸端に連結される構成となっている。
【0055】
即ち、本実施形態では、アクチュエータ装置46のホイール52が、その連結軸41を介して各リクライニング装置10のカム機構18に駆動トルクを入力可能な回転体を構成する。そして、本実施形態のシート駆動装置50は、これにより、そのアクチュエータ装置46が出力する駆動トルクに基づいて、シートバック3の幅方向両側に設けられた各リクライニング装置10を同期して動作させることが可能となっている。
【0056】
具体的には、本実施形態のアクチュエータ装置46は、支持プレート12の外側面12aに固定されることにより、当該支持プレート12の内側面12b側に配置されるリクライニング装置10に対応した位置、詳しくは、そのホイール52が、支持プレート12に固定された第2部材22の外歯歯車16と同軸に配置されるようになっている。そして、本実施形態では、これにより、リクライニング装置10を構成する内歯歯車15(中心位置N1)と外歯歯車16(中心位置N2)との間に設定された偏心量δに相当する偏心位置Pにおいて、そのホイール52と連結軸41とが連結されるようになっている。
【0057】
即ち、本実施形態では、上記のように連結軸41に連結されたカム機構18のカム部材32は、回転体としてのホイール52が回転することによって、そのホイール52と同軸に位置する外歯歯車16の中心位置N2周りに周回することになる。そして、本実施形態のシート駆動装置50は、これにより、そのホイール52から連結軸41を介して各リクライニング装置10のカム機構18に伝達される駆動トルクに基づいて、シートクッション2に対するシートバック3の傾倒角度を調整することが可能となっている。
【0058】
さらに詳述すると、図2図4、及び図8に示すように、本実施形態では、ホイール52には、当該ホイール52を厚み方向(図4中、左右方向)に貫通するとともに、その外歯歯車16の中心位置N2と同軸上に配置される回転中心N3を通って径方向(同図中、上下方向)に延びる長孔57が形成されている。そして、ホイール52は、この長孔57内に連結軸41が挿入されることにより、上記内歯歯車15と外歯歯車16との間の偏心量δに相当する偏心位置Pにおいて連結軸41に連結されるようになっている。
【0059】
具体的には、本実施形態では、長孔57内には、当該長孔57内を長手方向移動可能な挿入体(ブッシュ)58が設けられている。本実施形態では、この挿入体58は、断面略小判状の軸形状を有している。また、この挿入体58には、当該挿入体58を軸方向に貫通する連結孔59が形成されている。尚、この連結孔59もまた、上記カム部材32に設けられた連結孔40と同様、連結軸41の断面形状に対応する略六角形状の断面を有した六角孔となっている(図5及び図6参照)。そして、本実施形態のホイール52は、この連結孔59内に連結軸41が挿入されることにより、その長孔57内に配置された挿入体58を介して連結軸41に連結されるようになっている。
【0060】
図3(b)に示すように、本実施形態では、長孔57の短径D1は、その略小判状をなす挿入体58の断面形状に現れる短手方向長さL1と略等しい値に設定されている(D1≒L1)。また、長孔57の長径D2は、同じく挿入体58の断面形状に現れる長手方向長さL2よりも長い値に設定されている(D2>L2)。そして、本実施形態では、これにより、その長孔57の長手方向における相対移動を許容しつつ、トルク伝達可能に、ホイール52と連結軸41とが連結されるようになっている。
【0061】
次に、上記のように構成されたシート駆動装置50の作用について説明する。
即ち、本実施形態のアクチュエータ装置46は、駆動源となるモータ45の回転を、そのウォーム51及びホイール52により減速して出力する。また、内歯歯車15と外歯歯車16との間の偏心量δに相当する偏心位置Pにおいてホイール52に連結された連結軸41は、上記ホイール52が回転することによって、その内歯歯車15と同軸に配置されたカム機構18のカム部材32と一体に、ホイール52と同軸に配置された外歯歯車16の中心位置N2周りを周回する。更に、これにより内歯歯車15と外歯歯車16との噛合位置が移動することで、その外歯歯車16を有してシートクッション2側に固定された第2部材22に対し、内歯歯車15を有してシートバック3に固定された第1部材21が揺動回転することになる。そして、本実施形態のシート駆動装置50は、これにより、その各リクライニング装置10を構成する減速装置20の減速比に基づいて、シートバック3の傾倒角度を調整することが可能となっている。
【0062】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)シートクッション2とシートバック3との間に介在されることによりリクライニング装置10として機能する減速装置20は、異なる歯数を有した内歯歯車15及び外歯歯車16と、これらの内歯歯車15(第1歯車)及び外歯歯車16(第2歯車)を偏心状態で噛合させるカム機構18と、を備える。また、この減速装置20は、カム機構18に連結されることにより内歯歯車15と同軸に配置される連結軸41と、当該連結軸41を介して上記内歯歯車15及び外歯歯車16の噛合位置を移動させる駆動トルクをカム機構18に入力可能な回転体としてのホイール52と、を備える。ホイール52は、外歯歯車16の中心位置N2と同軸上に配置される回転中心N3を通って径方向に延びる長孔57を有し、当該長孔57内に連結軸41が挿入されることにより、内歯歯車15と外歯歯車16との間の偏心量δに相当する偏心位置Pにおいて連結軸41と連結される。そして、この長孔57には、その長手方向に沿ったホイール52と連結軸41との相対移動を許容する長径D2が設定される。
【0063】
即ち、このような減速装置20は、内歯歯車15及び外歯歯車16の一方側を基準とした場合、他方側は、見かけ上、その内歯歯車15と外歯歯車16との間に設定された所定の偏心量δを有して揺動回転するという特徴を有している。このため、その外歯歯車16側を固定要素とすることによって、上記のようにカム機構18に連結されることにより内歯歯車15と同軸に配置された連結軸41は、その外歯歯車16の中心位置N2周りを周回する態様で、出力要素となる内歯歯車15と一体に揺動回転することになる。
【0064】
しかしながら、上記構成によれば、ホイール52に設けられた長孔57内に連結軸41を挿入することによって、容易に、その内歯歯車15と外歯歯車16との間の偏心量δに相当する偏心位置Pにおいてホイール52と連結軸41とを連結することができる。そして、これにより、外歯歯車16が固定された側(シートクッション2側)から、効率よく、カム機構18に対して駆動トルクを伝達することができる。
【0065】
更に、長孔57の長手方向に沿ったホイール52と連結軸41との間の相対移動が許容されることで、外歯歯車16(中心位置N2)と同軸に設けられたホイール52(回転中心N3)に対する連結軸41の偏心位置Pは、その内歯歯車15及び外歯歯車16を噛合させるカム機構18の機能によって自動的に調整される。そして、これにより、製造・組付誤差、或いは経年変化による摩耗等により生ずる上記偏心量δの変動を吸収することで、より円滑な動作を確保することができる。
【0066】
(2)長孔57内には、当該長孔57内を長手方向移動可能な挿入体(ブッシュ)58が設けられる。そして、ホイール52は、この挿入体58を介して連結軸41に連結される。
【0067】
上記構成によれば、より円滑に、その長孔57の長手方向に沿ってホイール52と連結軸41とを相対移動させることができる。その結果、より円滑な減速装置20の動作を確保することができる。
【0068】
加えて、挿入体58に代えて長孔57内を移動不能な第2の挿入体(アダプタ)を挿入することにより、容易にホイール52と連結軸41とを同軸に連結することが可能という利点がある。即ち、その長孔57に対する挿入体を交換するだけで、大きな変更を加えることなく、内歯歯車15が固定された側からカム機構18に駆動トルクを伝達する構成、つまりは、シートバック3側にアクチュエータ装置が設けられた構成に適用することができる。尚、この場合、アダプタの断面形状に現れる長手方向長さを長孔57の長径D2と略等しく設定し、そのホイール52の回転中心N3に対応する位置に連結軸41との連結孔59を形成するとよい。そして、これにより、駆動源の配置が異なる複数の製品について、部品の共用化を進めることができる。その結果、その製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
(3)カム機構18は、外歯歯車16と同軸位置において当該外歯歯車16と一体に設けられたブッシュ31の内側に配置されるカム部材32と、このカム部材32とブッシュ31の内周面31sとの間に配置される一対のウェッジ35と、を備える。そして、カム機構18は、更に、これらの各ウェッジ35を互いに離間する方向に付勢してブッシュ31の内周面31sに押し付けるスプリング36と、を備えてなる。
【0070】
上記構成によれば、そのスプリング36のバネ力に基づいて、内歯歯車15及び外歯歯車16を偏心状態で噛合させることができる。そして、そのカム部材32に入力される駆動トルクに基づいて、内歯歯車15と外歯歯車16との間の噛合位置を移動させることができる。更に、カム機構18に対する駆動トルクの入力がない場合であっても、そのスプリング36のバネ力に基づいて、内歯歯車15と外歯歯車16との相対的な回転位置を保持することができる。従って、このような構成をリクライニング装置10に適用することで、エネルギー効率に優れたシート駆動装置50を形成することができる。
【0071】
(4)リクライニング装置10は、内歯歯車15を有してシートバック3側に固定される第1部材21と、外歯歯車16を有してシートクッション2側に固定される第2部材22と、を備える。また、シートクッション2の側方には、モータ45の回転をウォーム51及びホイール52により減速して出力するアクチュエータ装置46が設けられる。そして、このアクチュエータ装置46は、シートクッション2側の支持プレート12に固定される外歯歯車16と同軸位置においてホイール52を回転自在に支持する支持部材としてのケース53を備える。
【0072】
上記構成によれば、固定要素となる外歯歯車16が固定されたシートクッション2側から、その内歯歯車15とともに揺動回転する入力要素としてのカム機構18に対して、効率よく、駆動トルクを伝達することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
以下、車両用のシート駆動装置に適用される減速装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0074】
図9及び図10(a)(b)に示すように、本実施形態のシート駆動装置50Bもまた、上記第1の実施形態におけるシート駆動装置50と同様、シートクッション2の側方に固定されたアクチュエータ装置46が出力する駆動トルクに基づいて、そのシートバック3の幅方向両側に設けられた各リクライニング装置10を同期して動作させる。
【0075】
ここで、本実施形態では、各リクライニング装置10(のカム機構18)間を連結する連結軸41Bの軸端、詳しくは、アクチュエータ装置46が固定される支持プレート12の貫通孔56に挿通されることにより当該支持プレート12の外側面12a側に突出する側の軸端には、平行する二平面60sを有した二面幅部60が形成されている。また、本実施形態のホイール52Bもまた、上記第1の実施形態におけるホイール52と同様、外歯歯車16の中心位置N2と同軸上に配置される回転中心N3を通って径方向に延びる長孔57Bを有している。そして、本実施形態では、この長孔57Bの短径D3は、その連結軸41Bの軸端に設けられた二面幅部60の断面形状に現れる短手方向長さL3と略等しい値に設定されている(D3≒L3)。
【0076】
即ち、本実施形態の減速装置20Bは、回転体としてのホイール52Bの長孔57Bに対して連結軸41Bの軸端に設けられた二面幅部60が直接に挿入されるようになっている。
【0077】
また、本実施形態では、その長孔57Bの長径D4は、二面幅部60の断面形状に現れる長手方向長さL4よりも長い値に設定されている(D4>L4)。そして、これにより、本実施形態においてもまた、その長孔57Bの長手方向における相対移動を許容しつつ、トルク伝達可能に、ホイール52Bと連結軸41Bとが連結されるようになっている。
【0078】
以上、本実施形態の減速装置20Bによっても、上記第1の実施形態における減速装置20と同様の効果を得ることができる。そして、上記第1の実施形態との比較においては、挿入体58(図3参照)を廃止することによる構成の簡素化によって、その製造コストの低減を図ることができる。
【0079】
[第3の実施形態]
以下、車両用のシート駆動装置に適用される減速装置に関する第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1及び第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0080】
図11及び図12(a)(b)に示すように、本実施形態のシート駆動装置50Cにおいて、リクライニング装置10として機能する減速装置20Cは、上記第1の実施形態における減速装置20と同様、そのホイール52に形成された長孔57内に挿入されることにより、当該長孔57内を長手方向移動可能な挿入体(ブッシュ)58Cを備えている。また、連結軸41Cの軸端には、上記第2の実施形態における連結軸41Bと同様の二面幅部60が形成されている。そして、上記挿入体58Cには、当該挿入体58Cを軸方向に貫通する態様で、その連結軸41Bの二面幅部60が挿入される第2の長孔61が形成されている。
【0081】
詳述すると、上記第2の長孔61は、当該第2の長孔61を有する挿入体58Cが挿入された長孔57の長手方向に対して交差する方向、詳しくは略直交する方向に延設されている。また、第2の長孔61の短径D5は、当該第2の長孔61内に挿入される二面幅部60の断面形状に現れる短手方向長さL5と略等しい値に設定されている(D5≒L5)。更に、第2の長孔61の長径D6は、二面幅部60の断面形状に現れる長手方向長さL6よりも長い値に設定されている(D6>L6)。そして、本実施形態では、これにより、その第2の長孔61の長手方向に沿って、当該第2の長孔61内に挿入された連結軸41Cが相対移動することが可能となっている。
【0082】
即ち、本実施形態では、その長孔57の長手方向に沿ったホイール52と挿入体58Cとの相対移動を許容し、及びその第2の長孔61の長手方向に沿った挿入体58Cと連結軸41Cとの相対移動を許容することにより、簡易的なオルダム継手が形成されている。そして、本実施形態の減速装置20Cは、これにより、より柔軟に、その外歯歯車16(中心位置N2)と同軸に設けられたホイール52(回転中心N3)に対する連結軸41の偏心位置Pを調整することが可能となっている。
【0083】
以上、本実施形態の減速装置20Cによっても、上記第1の実施形態における減速装置20と同様の効果を得ることができる。そして、その優れた偏心位置調整機能によって、より円滑な動作を確保することができる。また、内歯歯車15と外歯歯車16との間の相対的な回転位置にかかわらず、そのカム機構18に連結軸41Cを連結することができる。特に、シート駆動装置50Cにおいては、シートバック3の傾倒角度を所定位置に合わせる工程を省くことができる。そして、これにより、組付け作業が容易になることで、その作業効率の向上を図ることができる。
【0084】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、カム機構18は、カム部材32と、押圧部材としての一対のウェッジ35と、バネ部材としてのスプリング36とを備えて構成されることとした。しかし、これに限らず、内歯歯車15と同軸位置において回転可能に支持されることにより当該内歯歯車15及び外歯歯車16を偏心状態で噛合させるとともに駆動トルクの入力に基づいて内歯歯車15と外歯歯車16との間の噛合位置を移動させることが可能なものであれば、そのカム機構18の構成は、任意に変更してもよい。
【0085】
・上記各実施形態では、第2部材22に設けられた円孔30内に略円環状をなすブッシュ31を嵌着することにより、押圧部材としての各ウェッジ35が押し付けられる周壁部を形成することとした。しかし、これに限らず、例えば、その円孔30の内周面に対して各ウェッジ35が直接に押し付けられる構成等、その周壁部の構成は任意に変更してもよい。
【0086】
・上記各実施形態では、内歯歯車15と外歯歯車16との間の歯数差は、1又は2に設定されることとしたが、この歯数差は任意に変更してもよい。
・上記各実施形態では、アクチュエータ装置46のホイール52(52B)を、その連結軸41(41B,41C)を介してカム機構18に駆動トルクを入力可能な回転体とした。しかし、これに限らず、その他の減速ギヤを回転体としてもよい。そして、その回転体がアクチュエータ装置46とは別体に設けられたものであってもよい。
【0087】
・上記各実施形態のシート駆動装置50(50B,50C)は、シートクッション2の側方に設けられたアクチュエータ装置46の出力する駆動トルクに基づいて、リクライニング装置10として機能する減速装置20(20B,20C)を動作させることとした。しかし、これに限らず、例えば、オットマン装置やシートチルト装置等、二つのシート部材間に減速装置20を介在させることによって、そのアクチュエータ装置の出力する駆動トルクに基づいて両シート部材間の相対的な回転位置(回動位置)を変更可能な構成に具体化してもよい。そして、一つのアクチュエータ装置によって複数の可動部位を動作させる構成であってもよい。
【0088】
・上記第1の実施形態では、連結軸41の断面形状及びホイール52に設けられた連結孔59は、ともに六角形状であることとした。しかし、これに限らず、トルク伝達可能に連結軸41とホイール52とを連結可能であれば、例えば、四角や十二角等、六角以外の断面形状であってもよい。また、セレーション嵌合等により相対回転不能に連結される構成であってもよい。そして、同じく連結軸41が挿入されるカム部材32の連結孔40についてもまた、その形状は、連結軸41の断面形状に合わせて任意に変更してもよい。
【0089】
・上記各実施形態では、外歯歯車16を固定要素とし、内歯歯車15を出力要素とする構成に具体化したが、内歯歯車15を固定要素とし、外歯歯車16を出力要素とする構成に適用してもよい。即ち、内歯歯車15を有する第1部材21がシートクッション2側に固定され、外歯歯車16を有する第2部材22がシートバック3側に固定される。そして、そのシートバック3側にアクチュエータ装置46が設けられる構成であってもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、第1部材21には、内歯を有する第1歯車(内歯歯車15)が設けられ、第2部材22には、外歯を有する第2歯車(外歯車16)が設けられることとした。しかし、これに限らず、第1部材21には、外歯を有する第1歯車が設けられ、第2部材22には、内歯を有する第2歯車が設けられる構成であってもよい。
【0091】
即ち、カム機構18(カム部材32)及び連結軸41(41B,41C)と同軸に位置する第1歯車を外歯歯車とし、周壁部としてのブッシュ31及び回転体としてのホイール52(52B)と同軸に位置する第2歯車を内歯歯車とする構成であってもよい。
【0092】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記第2部材が固定された前記シート部材に固定されることにより前記第2歯車と同軸位置において前記回転体を回転自在に支持する支持部材を備えること、を特徴とするシート駆動装置。これにより、第2歯車が固定されたシート部材側から、効率よく、その入力要素としてのカム機構に駆動トルクを伝達することができる。
【符号の説明】
【0093】
1…シート、2…シートクッション、3…シートバック、10…リクライニング装置、11…ロアアーム、12…支持プレート、12a…外側面、13…シートバックフレーム、15…内歯歯車(第1歯車)、16…外歯歯車(第2歯車)、18…カム機構、20,20B,20C…減速装置、21…第1部材、22…第2部材、27…円孔、30…円孔、31…ブッシュ(周壁部)、31s…内周面、32…カム部材、32a…筒状部、32b…フランジ部、35…ウェッジ(押圧部材)、35s…押圧面、36…スプリング(バネ部材)、38…切欠き、39…規制突部、40…連結孔、41,41B,41C…連結軸、45…モータ、46…アクチュエータ装置、50,50B,50C…シート駆動装置、51…ウォーム、52,52B…ホイール(回転体)、53…ケース(支持部材)、57,57B…長孔、58,58C…挿入体、59…連結孔、60…二面幅部、60s…平面、61…第2の長孔、N1,N2…中心位置、N3…回転中心、δ…偏心量、P…偏心位置、D1,D3,D5…短径、D2,D4,D6…長径、L1,L3,L5…短手方向長さ、L2,L4,L6…長手方向長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12