(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0012】
本発明はその一側面として、外部装置に内部温度情報を回答する機能を有する光送信器に関する。この光送信器は、通電によって発熱する少なくとも1つの被温調素子と、被温調素子の加熱又は冷却を行う熱電素子と、被温調素子の温度を検出する温度検出器と、それら被温調素子、温度検出器及び熱電素子を収容するパッケージと、を有する光送信モジュールと、被温調素子の通電を制御する演算処理回路と、演算処理回路から情報の読み書きが可能な記憶装置と、パッケージの外部の温度を検出する温度検出回路と、を備える。被温調素子は、パッケージの複数の端子との複数の電気的配線を介してパッケージの外部と熱的に結合している。演算処理回路は、被温調素子に通電しているときは温度検出回路により検出された温度を内部温度情報として記憶装置に書き込み、被温調素子に通電していないときは温度検出器により検出された温度と記憶装置に格納された内部温度情報とに基づいて内部温度を算出し、内部温度情報として記憶装置に書き込む。
【0013】
この光送信器では、熱電素子の上面と熱的に結合している温度調節(以下、「温調」という。)の対象素子(以下、「被温調素子」という。)が通電しているか否かに応じて光送信器の内部温度の導出方法を変えている。すなわち、被温調素子が通電しているときには、光送信モジュールのパッケージの外部(且つ、光送信器の内部)に備わっている温度検出回路により検出された温度を光送信器の内部温度としている。このように、光送信モジュールの外部に備わった温度検出回路により光送信器の内部温度を導出することで、被温調素子が通電することにより発熱し、被温調素子の温度が熱電素子によって所定の温度になるよう熱電素子上面の冷却又は加熱によって温調される場合には、光送信器内の内部温度を適切に導出できる。一方で、被温調素子が通電していないときには、温度検出器により検出された温度と記憶装置に格納された内部温度情報とに基づいて光送信器の内部温度を算出している。光送信器を小型化する観点からシリアル通信バスを介して演算処理回路と温度検出回路等の構成要素が接続されている場合において、演算処理回路と温度検出回路とのシリアル通信が不能となった場合であっても、温度検出器により検出された温度に基づいて内部温度を推定することで、確実に精度良く光送信器の内部温度を導出できる。温度検出器が温度を検出する被温調素子は光送信モジュールのパッケージの外部と熱的に結合しているため、被温調素子が通電によって発熱しておらず、温調が行われない場合には、温度検出器により検出される温度は光送信モジュールのパッケージの外部の温度に応じた値となる。そのため、上述した温度検出器により検出された温度に基づく光送信器の内部温度の推定が可能となっている。なお、この光送信器は、本来被温調素子の温度を検出するための構成要素である温度検出器により検出された温度を、光送信器の内部温度の検出にも利用するものであり、光送信器の内部温度を検出するために新たな構成要素を追加するものでない。そのため、光送信器の小型化の弊害になるものではない。以上より、本発明によれば、光送信器の小型化を図りながら、動作状態に係らず内部温度の検出を確実且つ適切に行うことができる。
【0014】
また、上記の光送信器において、被温調素子と温度検出回路との間の熱抵抗をRTOSA、温度検出回路と光送信器の外側表面との間の熱抵抗をRTRX、熱電素子によって加熱又は冷却される熱容量をCTOSA、光送信器内部の熱容量をCTRXとすると、
【数1】
を満たす構成であってもよい。上記式(1)を満たすことにより、光送信器の内部温度の温度変化が温度検出器により検出された温度の温度変化よりも緩やかとなり、光送信モジュールの内部に設けられた温度検出器により検出された温度から、光送信モジュールの外部における光送信器の内部温度を高精度に推定できる。
【0015】
また、上記の光送信器において、光送信モジュールは、被温調素子として、少なくとも2つの発光素子及び発光素子を駆動する少なくとも1つの駆動回路を有し、発光素子及び駆動回路は、各々がパッケージの複数の端子との複数の電気的配線を介してパッケージの外部と熱的に結合していてもよい。例えば、CFP4のように、光送信モジュール内に複数の発光素子及び駆動回路が内蔵され、それらが複数の端子とボンディングワイヤ等の電気的配線を介して熱的に結合されることにより、パッケージの内部に収容された温度検出器が温度を検出する被温調素子と、パッケージの外部との熱的な結合度合いが大きくなる。そのことで、温度検出器により検出された温度に基づく光送信器の内部温度の推定精度を向上させることができる。
【0016】
また、上記の光送信器において、温度検出器は、演算処理回路と電気的に接続されており、演算処理回路は、被温調素子に通電していないときに温度検出器により検出された温度に基づいて内部温度を算出するとき、被温調素子の通電を停止する直前に被温調素子に通電しているときに温度検出回路により検出された温度の情報を利用してもよい。直前に被温調素子が通電していたときに温度検出回路により検出された温度を使用して、例えば、初期値として内部温度を推定することにより、通電状態から通電していない状態に遷移した際に、高精度に内部温度を推定できる。
【0017】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態にかかる光送信器の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0018】
図1は、第1実施形態に係る光トランシーバの構成を示す図である。光トランシーバ1は、例えば1300nm帯の互いに異なる4つの波長の光を使用して2芯双方向で光信号を送受信する100ギガビット光トランシーバであり、外部装置30(上位レイヤ)に対して活線挿抜可能なモジュールとなっている。このような光トランシーバに係る外形、端子配置、電気的特性、及び光学的特性に関する規格は、例えば、MSA(Multi-Source Agreement)規格のCFP(100G Form-factorPluggable)、又は、CFP2、CFP4等によって規定されつつある。CFP2は、挿抜方向に垂直な面での面積比で従来のCFPの1/2程度の大きさであり、CFP4は、面積比で従来のCFPの1/4以下の大きさである。
【0019】
光トランシーバ1は、集積光送信モジュール11(光送信モジュール)と、演算処理回路(MCU)12と、熱電素子制御回路(TEC制御回路)13と、温度検出回路14と、LDバイアス電流回路15と、メモリ16と、電圧生成回路17と、通信制御回路18と、信号処理回路(CDR)19,22と、集積光受信モジュール21とを備えている。
【0020】
集積光送信モジュール11は、互いに独立した4つのデータレート25Gbpsの電気信号を互いに波長の異なる4つの光信号に変換した後に、各光信号を合波して波長多重信号として100Gbps光信号を出力する。集積光送信モジュール11に入力される電気信号は、信号処理IC(図示せず)において10本の10Gbps電気信号から4本の25Gbps電気信号に変換された後に、CDR(Clock Data Recovery)19においてクロックデータリカバリが行われたものである。
【0021】
集積光受信モジュール21は、1つの波長多重信号として100Gbps光信号を受信して、それを互いに異なる4波長の光信号に分波し、各光信号をそれぞれデータレート25Gbpsの電気信号に変換して出力する。集積光受信モジュール21が出力した4つの25Gbps電気信号は、CDR22に入力されてCDR22においてクロックデータリカバリが行われた後に、信号処理IC(図示せず)により10本の10Gbps電気信号に変換され出力される。
【0022】
上記構成要素のうち、集積光送信モジュール11、MCU12、TEC制御回路13、温度検出回路14、及びLDバイアス電流回路15により光送信部10(光送信器)が構成されている。光送信部10は、外部装置に内部温度情報を回答する機能を有する。まず、光送信部10の各構成要素について、詳細に説明する。
【0023】
集積光送信モジュール11は、互いに発振波長の異なる4個のLD51(発光素子)と、LDドライバ回路52(駆動回路)と、光合波器53と、熱電素子(TEC)54と、温度検出器55(第1の温度検出器)と、パッケージ56と、を有している。4個のLD51、LDドライバ回路52、光合波器53、及び温度検出器55は、熱電素子54の上面に実装され、それらが1つのパッケージ56内に収容されている。このような構成及び構造の光送信モジュールを集積TOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)という。なお、4個のLD51は、それぞれ独立した半導体チップであっても、同一の半導体チップ上に製造されたものであっても良い。また、波長多重通信システム用途では発振波長は異なるが、例えば、送信側と受信側とでそれぞれ4芯の光ファイバーにて通信を行うパラレル通信用途では発振波長は同じであっても良い。
【0024】
LD(Laser Diode)51は、例えば、分布帰還型レーザダイオード、フェブリベロ―型レーザダイオード又は面発光型レーザダイオード等である。各LD51はLDバイアス電流回路15に接続されている。LD51は、LDバイアス電流回路15からバイアス電流が供給されると発光し、バイアス電流が遮断されると発光が停止する。LDバイアス電流回路15は、MCU12から入力されるLDバイアス電流回路イネーブル信号に応じてバイアス電流を制御する。なお、
図1では、説明を容易にするためTEC54上に各LD51が積層されるように記載しているが、
図2に示すように、実際には、全てのLD51がTEC54上に実装されている。よって、全てのLD51がTEC54の上面(温度制御面)と熱的に結合している。LD51は、通電によって発熱する被温調素子の一例である。
【0025】
LDドライバ回路52は、MCU12から入力されるLDドライバ回路のイネーブル信号に応じて、LD51の出力光を変調するための駆動信号を制御する。LDドライバ回路52は、互いに発振波長の異なる4個のLD51を並列に駆動させる4個の駆動回路を内蔵した4ch Driver ICであり、各駆動回路はそれぞれ異なるLD51に接続されている。そのため、LDドライバ回路52が出力した4本の駆動信号は、それぞれ異なる4個のLD51に入力される。それぞれ異なるLD51に入力される4本の駆動信号は、LDドライバ回路イネーブル信号によって、例えば、LDドライバ回路イネーブル信号がHighレベルのときには出力され、LDドライバ回路イネーブル信号がLowレベルのときには遮断される、というように制御される。LDドライバ回路52は、LDドライバ回路イネーブル信号によって駆動信号を遮断するときに、駆動信号を出力するときよりも自身の消費する電源電流がゼロに抑制されることが好ましい。なお、LDドライバ回路52は、小型化及び製造容易性の観点から、TEC54上に実装されている。よって、LDドライバ回路52は、TEC54と熱的に結合している。LDドライバ回路52は、例えば、高速データレートである25GbpsでLD51を駆動する際に数Wの電力を消費する。
【0026】
光合波器53は、4個のLD51から出力された出力光を合波して一つの波長多重された光信号を出力する。例えば、LD51から出力された出力光のデータレートが25Gbpsで、4本の出力光が波長多重された光信号のデータレートは100Gbpsとなる。光合波器53は、光学的特性の温度依存性が比較的大きくて、その光学的特性を一定に保つ必要がある場合には、TEC54上に実装されることが好ましいが、実装されていなくてもよい。光合波器53は、例えば光学薄膜を利用した光学フィルター等を組み合わせたものやアレイ導波路型回折格子(AWG: Arrayed Waveguide Grating)によって構成される。
【0027】
TEC(ThermoElectric Cooler)54は、ペルチェ効果を利用して、その上面と熱的に結合した被温調素子の冷却又は加熱を行う熱電素子である。TEC54によってTEC上面の温度を所望の目標値TSETに保つことで、例えば、LD51の発振波長を所望の値とすることができ、また、他の光学的特性あるいは電気的特性も所定の値に保つことができる。TEC54は、例えば、TEC下面(放熱面)の温度をT4とした時に、T4>TSET(目標値)とするときには冷却を行い、T4<TSETとするときには加熱を行う。加熱の場合と冷却の場合とで、TECに印加する電圧及びTECに流す電流の向きは反対になる。そのため、制御にはHブリッジ回路等を備えた専用の制御回路が必要となる。TEC54は、温度差T4−TSETが大きくなるほど大きな電力を必要とし、LD51の温度を数10℃冷却又は加熱するために例えば数Wの電力を消費する。被温調素子は、LD51だけでなく、LD51とLDドライバ回路52の両方であっても良く、さらに、それらに加えて光合波器53及び発熱のほとんどない温度検出器55を含んでいても良い。すなわち、TEC上面と熱的に結合している素子はTEC54による温度調整の対象物と成り得る。実用上、それらはTEC上面にろう付け、又は樹脂による接着等にて実装される構成を取る場合が多い。また、TEC54とTEC54上面の被温調素子との構成は、大量生産を容易にするため、キャリア(図示せず)を介して熱的に結合されるものであってもよい。なお、制御回路からTEC54に電圧及び電流が供給されず、TEC54が通電していない状態では、TEC54の上面と下面との間の熱伝導性は非常に低く、ほぼ断熱状態にあると考えることができる。
【0028】
温度検出器55は、TEC54上に実装され、TEC54上面の温度、すなわち、被温調素子であるLD51の温度を検出する。温度検出器55は例えばサーミスタである。サーミスタは温度の変化によって抵抗値が変化するため、例えば、抵抗値の変化を抵抗分圧回路によって電圧の変化として検出することで基準温度に対する温度変化を算出して、サーミスタの実装された部分の温度を推定することができる。温度検出器55は、TEC制御回路13及びMCU12と信号端子等を介して電気的に接続されており、温度検出信号(例えば、前述の電圧値)をTEC制御回路13及びMCU12に入力する。MCU12は、内部のAD(アナログデジタル)変換器によって一定の周期(例えば数10mS〜数100mS間隔)で温度検出信号をディジタル値として取り込む。なお、上述したようにTEC54上にはLD51が実装されているため、温度検出器55が検出するTEC54上面の温度をLD温度として、以下説明する。
【0029】
ここで、
図2及び
図3を参照して、光送信部10、特に、集積光送信モジュール11の各構成要素の電気的な接続について説明する。
図2は、集積光送信モジュールにおける各構成要素の電気的な接続状態を説明するための図であり、
図2(a)は集積光送信モジュール11を側面視した図を、
図2(b)は集積光送信モジュール11を平面視した図を、それぞれ示している。また、
図3は、光トランシーバ内部の光送信部10における各構成要素の電気的な接続状態を説明するための図である。なお、
図2及び
図3はともに、含まれる全ての構成を示すものではなく、電気的な接続状態を説明するために必要最小限の構成を示したものである。よって、適宜構成を省略して記載している。
【0030】
図2(a)及び(b)に示されるように、集積光送信モジュール11のパッケージ56内部には、上述したLD51、LDドライバ回路52、光合波器53、TEC54、及び温度検出器55が収容されており、それらと外部とを電気的に接続するための仲介手段として複数の端子61が装備されている。上述した被温調素子の一例であるLD51及びLDドライバ回路52は、複数の端子61との複数の電気的配線を介して、パッケージ56の外部と熱的に結合している。
【0031】
端子61は、例えば、金属母材(Cu、42アロイ、CuW、FeNiCo等)やセラミック上銅箔の表面に鉛フリーメッキ(Sn-Bi、Sn、Sn-Cu、Ni/Pd/Cu等)が施されたものが使用できる。端子61は、パッケージ56内部の各構成要素と、光送信部10の構成要素であってパッケージ56外部に配置された各構成要素とを電気的に接続する中継点となる。端子61には、複数の信号端子61aと複数の電源端子61bとが含まれている。信号端子61aは、パッケージ56内部の各構成要素とボンディングワイヤ62等を介して電気的に接続される。また、信号端子61aは、MCU12(
図3参照)等のパッケージ56外部に配置された構成要素と、プリント基板81及びフレキシブルプリント板63(FPC; Flexible Printed Circuits)等を介して電気的に接続される。それにより、例えば、MCU12からの制御信号をパッケージ56内部の各構成要素に伝送することができる。すなわち、例えば、外部装置30(
図1参照)からの指示に応じたMCU12(
図3参照)の通電に関する指示信号はこのように端子61を介してLDドライバ回路52(ICチップ)に伝達される。また、電源端子61bは、パッケージ56の内部及び外部との電気的な接続は信号端子61aと同様に行われるが、電圧生成回路17(
図1参照)によって生成された電源電圧をパッケージ56内部の各構成要素に供給するために使用される。
【0032】
信号端子61a及び電源端子61bは、例えば金のボンディングワイヤ62(配線)を介してLD51、LDドライバ回路52、TEC54、及び温度検出器55等のパッケージ56内部の各構成と電気的に接続されている。ボンディングワイヤ62を介して接続されることにより、信号端子61a及び電源端子61bと、TEC54上面とは熱的に結合している。
【0033】
そして、
図3に示されるように、信号端子61a及び電源端子61bは、フレキシブルプリント板63等を介してパッケージ56の外部(且つ光送信部10内部)のプリント基板81と接続されている。プリント基板81には、パッケージ56外部に配置された各構成要素、例えば、MCU12や温度検出回路14等が接続されている。すなわち、ボンディングワイヤ62及び端子61を介して、パッケージ56内部の各構成要素とパッケージ56外部の各構成とが電気的に接続されている。また、ボンディングワイヤ62及び端子61を介して、TEC54の上面とパッケージ56の外部とが熱的に結合している。なお、本実施形態では、LD51が4個、パッケージ56内部に収容されているため、それに応じて端子61及びボンディングワイヤ62の数が、LD1個のみの場合と比較して多くなっている。そのため、温度検出器55が温度を検出するTEC54の上面とパッケージ56外部との熱的な結合度合いが、LD1個のみの場合と比較して数倍大きくなっている。
【0034】
図1に戻り、MCU(Micro Controller Unit)12は、LDドライバ回路52等の被温調素子の通電を制御するとともに、TEC54等を制御する。具体的には、イネーブル信号を入力することによりLDドライバ回路52及びTEC制御回路13を起動する。また、MCU12は、イネーブル信号の入力によりLDバイアス電流回路15を起動し、LD51を作動させる。各々のイネーブル信号は、第1の目的は信号を受ける各々の回路の出力を可能とするか不可(遮断)とするかの制御にあるが、各々の回路は出力を不可(遮断)とする際に回路自身の消費電流が低減されることが好ましい。
【0035】
MCU12は、上述した制御を可能とすべく、TEC制御回路13、LDバイアス電流回路15、及びLDドライバ回路52と電気的に接続されている。また、光送信部10の内部温度を取得すべく温度検出回路14と電気的に接続されている。ここで、光送信部10を小型化する観点から、当該電気的な接続はシリアル通信バス、具体的にはI2C(Inter-Integrated Circuit)バス71により行われている。すなわち、MCU12と、TEC制御回路13、温度検出回路14、LDバイアス電流回路15、及びLDドライバ回路52とは、I2Cバス71により電気的に接続されている。I2Cバスは、クロック信号線(SCL)とデータ信号線(SDA)の2本の信号線のみで各回路(IC)間の通信を行うことができる。
【0036】
MCU12は、通信制御回路18を介して接続された外部装置30からの指示信号に基づいて光トランシーバ1の運用モードと省電力モードとを相互に切り替える際に、集積光送信モジュール11の動作状態を制御する。
【0037】
運用モードとは、TEC制御回路13、LDドライバ回路52、及びLD51(すなわちLDバイアス電流回路15)を起動した(通電させる)モードである。すなわち、外部装置30からの指示信号に基づいて、集積光送信モジュール11、集積光受信モジュール21、信号処理回路19、22及びそれらの制御に係る回路等を起動して光信号の送受信が可能になった状態が運用モードである。運用モードでは、基本的に光トランシーバ1内部の各構成要素が全て通電して所定の機能を行っており、例えば、CFP光トランシーバの場合では8W以上の電力を消費するものもある。
【0038】
一方、省電力モードとは、MSAあるいは市場からの要望により規定された省電力化が図られたモードであり、上位レイヤの外部装置30との通信等のいわゆるDDM(Digital Diagnosis Monitoring)機能に必要な通信以外を停止させた(通電させない)モードである。具体的には、省電力モードにおいては、TEC制御回路13、LDドライバ回路52、及びLD51(すなわちLDバイアス電流回路15)が停止させられる。すなわち、光トランシーバ1の電源投入時(起動時)等に、マイクロコンピュータを含む制御回路の一部分(例えば、MCU12と通信制御回路18)のみを起動し、光トランシーバ1の内部状態の監視、及び、ホストである外部装置30との通信の確立等の限られた機能のみを作動させた状態が省電力モードである。なお、変形例として、省電力モードのときに、集積光受信モジュール21、信号処理回路19,22、電圧生成回路17等を停止させても良い。
【0039】
省電力モードにおいても、内部状態の監視及び外部装置30との通信を維持させておくことにより、外部装置30からの内部状態の監視・制御に関する問い合わせあるいは指示に対して、MSA規格に準拠して応答することが可能となっている。外部装置30からの内部状態に関する問い合わせとして、例えば、光送信部10の内部温度に関する問い合わせがある。通常状態(運用モードの状態)においては、このような内部温度は、専用に用意される温度検出回路14によって検出される。温度検出回路14は、集積光送信モジュール11とは独立な構成要素であって、光送信部10の代表的な温度が検出できる位置に配置されており、検出した自身の近傍の温度(ディジタル値)であるパッケージの外部の温度を、I2Cバス71を介してMCU12に入力する(
図4(a)参照)。すなわち、MCU12は、運用モードでは、温度検出回路14により検出された温度を内部温度とし、問い合せを受けた際にはその情報を外部装置30に送信するか、所定のレジスタ内に格納して外部装置30から必要に応じて読み出せるようにする。MCU12は、温度検出回路14により検出された温度を内部温度情報としてメモリ16に書き込む。
【0040】
ここで、I2Cバスでは、接続されている端子の内1つでもその端子を有する構成要素(IC)への電源電圧供給が停止されると、I2Cバスの信号レベルがLow固定となり、当該I2Cバスに接続された全ての構成の通信が不能となってしまう。上述したように、MCU12と、TEC制御回路13、温度検出回路14、LDバイアス電流回路15、及びLDドライバ回路52とはI2Cバス71により電気的に接続されているところ、省電力モードでは、例えば、TEC制御回路13等の構成要素が停止させられるため、MCU12と温度検出回路14とはI2Cバスを介しての通信が行えない。そのため、省電力モードにおいては、MCU12は、温度検出回路14が検出した内部温度を取得することができない。なお、温度検出回路14との通信のために別のI2Cバスを用意することが考えられるが、それによって信号本数が増え、配線の実装面積が大きくなるために、光トランシーバの小型化において好ましくない。
【0041】
そこで、省電力モードにおいては、MCU12は、TEC54上の温度検出器55により検出されたTEC54上面のLD温度に基づいて内部温度を推定する(
図4(b)参照)。より具体的には、MCU12は、温度検出器55により検出された温度と、メモリ16に格納された内部温度情報とに基づいて、内部温度を算出し、当該算出した内部温度を新たな内部温度情報としてメモリ16に書き込む。以下、省電力モードにおける、温度検出器55により検出されたTEC54上面のLD温度に基づく光送信部10の内部温度の推定について説明する。なお、省電力モードとしては、光送信部10の電源投入時において初期化が行われた後に遷移するモード(以下、直読モードと記載)と、一度運用モードを経た後に遷移するモード(以下、補正モードと記載)とがある。それぞれにおける内部温度の推定について順に説明する。
【0042】
直読モードでは、MCU12は、温度検出器55が検出したTEC54上面のLD温度をそのまま光送信部10の内部温度として推定する。運用モードを経ていない直読モードでは、TEC54が作動前であるため、TEC54上面は、TEC54の温度調整による温度変化も被温調素子の発熱による影響も受けていない。そのため、TEC54上面の温度とパッケージ56外部の温度(光送信部10内部の代表的な温度である内部温度)とは略一致すると考えられる。
【0043】
補正モードでは、MCU12は、温度検出器55が検出したTEC54上面のLD温度を補正したものを光送信部10の内部温度として推定する。一度運用モードとなりTEC54が作動した場合においては、TEC54上面の温度はTEC制御回路13によって制御された温度となっており、TEC54上面の温度(温度検出器55が検出する温度)とパッケージ56外部の温度(光送信部10内部の代表的な温度である内部温度)とは乖離が生じるため、光送信部10の内部温度を正確に推定するためには、温度検出器55が検出したTEC54上面のLD温度を補正する必要がある。なお、運用モードから省電力モードに切り替わって所定の時間が経過すると、TEC54上面とパッケージ56外部とは平衡状態に至って各々の温度は略一致するようになるため、その場合には、再び上述した直読モードとなり、温度検出器55が検出したTEC54上面のLD温度をそのまま光送信部10の内部温度として推定することができる。
【0044】
以下、具体的な補正方法について説明する。運用モードから省電力モードへ切替わった際の時間をt=0とし、光送信部10の内部温度(パッケージ56外部の温度)をT
0、温度検出器55の検出温度をT、TEC54上面に打たれたボンディングワイヤ62の熱伝導率をK、各ボンディングワイヤ62の断面積をSi、長さをli(i=1,2,3,…M)とし、TEC54上面に配置された各構成要素(LD51等)をj=1,2,3…N、TEC54上面に配置された各構成要素の比熱をσj、比重をρj、体積をVjとし、微小時間dtにおける温度検出器55の検出温度の変化をdTとすると、以下の式(2)が成り立つ。なお、省電力モードではTEC54の制御を停止するために、TEC54へは電圧も電流も供給されなくなる。その状態にて、TEC54の上面(温度調整面)と下面(放熱面)との間の熱伝導度は非常に小さく、ほぼ断熱状態にあると考えることができる。従って、TEC自体を熱伝導の経路とした外部との熱の流出入は無視できると仮定している。
【数2】
【0045】
いま、T
0(t)の時間に伴う変化がT(t)の時間に伴う変化よりも緩やかであると近似すると、運用モードから省電力モードへの切り替えが生じた後、時間tにて温度検出器55が検出する温度T(t)は、以下の式(3)で示される。
【数3】
【0046】
式(3)におけるΣ内部の値は、集積光送信モジュール11の材料・構造で決まるものであるため、光送信部10に組み込む部品が決まっていれば決まる値であり、Σの値も決まる。任意定数Aは、A=T(0)−T
0(0)であるところ、T
0(0)は運用モードから省電力モードへ切替わる直前(被温調素子の通電を停止する直前)において、温度検出回路14で検出された温度であり、また、T(0)は、運用モードにおいてTEC制御回路13により制御されたTEC54の目標値TSETであるため、任意定数Aが導出される。任意定数Aが一意に定まるため、光送信部10の内部温度T
0は、温度検出器55の検出温度Tに対して任意定数Aに応じた所定の補正を行うことにより推定できる。なお、ここでいう補正とは、例えば、実際に製造された光トランシーバを使用して実測によって上記のΣの値を精度良く求めることであっても良い。
【0047】
なお、式(3)は、TEC54上面の被温調素子と温度検出回路14との間の熱抵抗をRTOSA、TEC54の上面の被温調素子等による総熱容量(TEC54によって加熱又は冷却される熱容量)をCTOSAとすると、以下の式(4)で示される。
【数4】
すなわち、RTOSAおよびCTOSAは次のように表すことができる。
【数5】
【数6】
【0048】
ここで、時間t=t
1における温度検出器55の検出温度がT(t
1)であったとする。一方、仮にt=t
1において光送信部10の内部温度T
0に変化がなかったとすると、運用モードから省電力モードへ切替わる直前において温度検出回路14で検出された内部温度T
0(0)と温度検出器55において検出された温度T(0)とから、光送信部10の内部温度T
0に変化がない場合の温度検出器55の検出温度T´(t
1)が計算から求まる。
【0049】
光送信部10の内部温度T
0に変化がある場合には、この変化分が、上述した検出温度T´(t
1)と検出温度T(t
1)との差分ととらえられるので、光送信部10の内部温度T
0は、T
0(0)から、T
0(t
1)=T´(t
1)−T(t
1)+T
0(0)に変化したと推定することができる。さらに時間が進んだ時間t=t
2においても同様に、温度検出器55の検出温度T(t
2)を取得し、計算から求まる検出温度T´(t
2)から、光送信部10の内部温度T
0は、T
0(t
2)=T´(t
2)−T(t
2)+T
0(0)と推定することができる。このように、運用モードから省電力モードに切り替わる直前において温度検出回路14で検出された内部温度T
0(0)を検出温度T(t)の初期値として、実測による温度検出器55の検出温度T(t)と計算から求まる温度検出器55の検出温度T´(t)とから各時間における光送信部10の内部温度T
0(t)を推定することができる。
【0050】
なお、LD51等の被温調素子とTEC54上面との間の熱伝導度は、TEC54のペルチェ効果を利用してLD51の温度を効率的に調整(制御)するためにはできるだけ大きいことが好ましい。よって、LD51とTEC54上面との間の熱抵抗をRLとした場合に、
【数7】
が満たされることが好ましい。例えば、被温調素子がキャリア等に実装された上で、そのキャリア等がTEC54の上面に実装されるような構造を取る場合、キャリアの熱伝導度が小さいとRLが大きくなるためにキャリアの材料は熱伝導度が高く、キャリアの厚さは薄いことが好ましい。仮にRTOSAがRLよりも小さいと、パッケージ56外部との熱の出入りによってTEC54上面の温度が変動するため、TEC54による温度調節(制御)の効率が悪化する。
【0051】
また、上述した内部温度T
0の推定を行う前提として、運用モードから省電力モードに切り替わった後の検出温度Tの変化よりも内部温度T
0の変化の方が緩やかである必要がある。当該条件は、熱容量がそれに係る熱抵抗によってどの程度変化しやすいという指標(電気回路における「時定数」に相当)によって表すことができる。すなわち、温度検出回路14と光送信部10の外側表面との間の熱抵抗をRTRX、光送信部10の内部の総熱容量をCTRXとした場合に、
【数8】
を満たすことが必要となる。
【0052】
TEC制御回路13は、TEC54を制御してLD温度を、MCU12からの指示信号に基づいて設定された目標値TSETに近づける。具体的には、TEC制御回路13は、TEC54に接続されており、MCU12から入力されるTEC制御回路イネーブル信号に応じて起動し、TEC54を作動させる。TEC制御回路13によるLD温度の制御は、ATC(Automatic Temperature Control)と称されるフィードバック制御によって行われる。すなわち、温度検出器55からのLD温度検出信号によってTEC上面の温度(LD温度)を検出し、それが目標値TSETと一致するようにHブリッジ回路等を備えた専用の駆動回路にてTEC54に必要な電圧及び電流を与えて加熱又は冷却を行わせる。
【0053】
メモリ16は、MCU12から情報の読み書きが可能な記憶装置であり、MCU12が省電力モードにおいて内部温度T
0の推定を行う際に用いる各種情報を格納している。すなわち、メモリ16は、予めわかっている光送信部10に組み込む部品から算出される式(3)におけるΣの値や、運用モード運用モードから省電力モードへ切替わる直前において温度検出回路14で検出された温度T(0)と温度検出器55において検出された内部温度T
0(0)等を格納している。
【0054】
電圧生成回路17は、MCU12に専用の信号線を介して制御されるものであり、外部電源から集積光送信モジュール11及びLDバイアス電流回路15等が必要とする少なくとも1つの内部電源を生成するものである。MCU12は、内部電圧を集積光送信モジュール11若しくはLDバイアス電流回路15に供給するか、又は、供給を停止するかを、専用信号線を介して電圧生成回路17に指示する。なお、専用の信号線はHigh, Lowのディジタル2値の電圧レベルを伝達する単一の信号線でも良いし、I2Cバス等のシリアル通信バスを使用しても良い。
【0055】
次に、外部電源が投入されて光トランシーバが起動して最初に省電力モードにて動作し、その後、運用モードと省電力モードとを相互に遷移する際の処理について、
図5を参照して説明する。
図5は、光トランシーバの各動作モード及び温度推定に係る処理を説明するためのフローチャートである。
【0056】
まず、外部装置30によって外部電源が投入されると、光トランシーバ1は起動してMCU12は初期設定を行う(ステップS1)。内部温度の推定は後述するサブルーチンにて行うが、そこで光トランシーバの動作状態(動作モード)の判定と、直読モードか補正モードかの判定を行うために、状態フラグと推定フラグを使用する。光トランシーバの起動後には、MCU12内でのファームウェアの実行開始、外部装置30との通信の確立、集積光送信モジュールや集積光受信モジュールの運用モード時の制御に関する設定等が行われるが、それらの説明は省略する。状態フラグと推定フラグは、例えば、MCU12内の所定のレジスタにて各々1ビットを割り当てて使用することができる。初期設定にて、MCU12は状態フラグと推定フラグをゼロにする(クリアする)。その後、光トランシーバ1は省電力モードにて動作する(ステップS2)。具体的には、光トランシーバ1は外部装置30との通信を行い、内部のレジスタの情報を更新したり、外部装置30へ送信したりする。例えば、内部温度について外部装置30から問い合わせを受けると、後述する内部温度を推定するサブルーチン(以下、「内部温度推定サブルーチン」という。)に処理を移し、そこから戻ったらその結果に基づいて、内部温度の情報を格納するために割り当てられた特定のレジスタ(図示せず。以下、「内部温度レジスタ」という。)の情報を更新する。光トランシーバ1は、外部装置30から運用モードに移るよう指示を受ける(ステップS3;Yes)とステップS4へ進み、それまでは省電力モードにて動作を続ける(ステップS3;No)。
【0057】
つづいて、ステップS4では、内部温度推定サブルーチンを呼び出した際に、そこで運用モードであることを判定できるようにするために、状態フラグを“1"にセットし、次に省電力モードに移った際に内部温度の推定は温度検出器55によって検出した温度を基に行うために、推定フラグを“1”にセットする。次に、MCU12は電圧生成回路17を起動し、主要回路(集積光送信モジュール11、集積光受信モジュール21、信号処理回路19、22、及びそれらの駆動回路であるTEC制御回路13、LDバイアス電流回路15や制御回路(図示せず)等)を起動する。主要回路には温度検出回路14も含まれる。MCU12の主要回路との通信及び制御は、I2Cバス71を介して行うことができる。主要回路の準備が完了したら、光トランシーバ1は運用モードにて動作を行う(ステップS6)。運用モードにて、MCU12は外部装置30との通信も継続して行う。例えば、内部温度について外部装置30から問い合わせを受けると、内部温度推定サブルーチンに処理を移し、そこから戻ったらその結果に基づいて内部温度レジスタの情報を更新する。また、外部装置30から省電力モードへの移るよう指示される(ステップS7;Yes)とステップS8へ進み、それまでは運用モードにて動作を続ける(ステップS7;No)。
【0058】
つづいて、ステップS8では、内部温度推定サブルーチンを呼び出した際に、そこで省電力モードであることを判定できるようにするために、状態フラグを“0”にセットする。次に、ステップS9にて内部温度の推定に必要な情報の保存を行う。すなわち、省電力モードへの遷移を開始してからの時間tを計測するためのカウントアップタイマーをリセットし(t=0にする)、省電力モードに移行を開始するとき(t=0)の温度検出回路14で検出した温度情報(T
0(0))と温度検出器55で検出した温度情報(T(0)とを所定のレジスタあるいはメモリーに格納する。次に、MCU12は、主要回路を停止させ、電圧生成回路17を停止する(ステップS10)。この後は、省電力モードで動作を行うために、ステップS2に戻る。
【0059】
以上述べたように、光トランシーバ1は、起動後に省電力モードにて動作し、その後は外部装置30からの指示によって運用モードと省電力モードとを互いに行き来する。なお、光トランシーバを完全に停止させたり、リセットを掛けたりする場合には、外部装置30から特定の命令コードを送ったり、専用の信号線によりMCU12に外部割込みを掛けたりするが、ステップS2あるいはステップS6からそれらの専用のサブルーチンに処理を移すことで対応できる。それら専用のサブルーチンについての説明は省略する。
【0060】
次に、内部温度推定サブルーチンの処理について、
図6を参照して説明する。
図6は、内部温度の推定に係る処理を説明するためのフローチャートである。
【0061】
内部温度推定サブルーチンは、省電力モードで動作時(
図5のステップS2)あるいは運用モードで動作時(
図5のステップS6)に、外部装置30から内部温度の情報について問い合わせを受けた際にMCU12によって実行される。開始すると、ステップT1にて、現在の光トランシーバの動作状態が省電力モードであるのか、運用モードであるのか、状態フラグの値によって判断を行う。すなわち、状態フラグが“0”であれば、省電力モードであるため、ステップT2に進み(ステップT1;Yes)、状態フラグが“1”であれば、運用モードであるため、ステップT9に進む(ステップT1;No)。
【0062】
つづいて、省電力モードと判断した際には、ステップT2にて温度推定に関して直読モードにて処理するか、補正モードにて処理するか、推定フラグの値によって判断を行う。すなわち、推定フラグが“0”であって直読モードで処理する際にはステップT3に進み(ステップT2;Yes)、推定フラグが“1”であって補正モードで処理する際にはステップT4に進む(ステップT2;No)。
【0063】
つづいて、直読モードにでの処理(ステップT3)について説明する。直読モードでは、パッケージ56内部の温度検出器55の実装されたTEC54の上面とパッケージ56外部とはほぼ熱平衡状態にあるとみなすことができるため、温度検出器55によって検出したTEC54上面のLD温度の情報をそのまま光送信部10の内部温度として内部温度レジスタに格納して、呼び出された元のステップに戻る。
【0064】
つづいて、補正モードでの処理(ステップT4)について説明する。補正モードでは、MCU12は、温度検出器55によって検出したTEC54上面のLD温度の情報を基に次に述べる方法によって内部温度を推定して、その情報を内部温度レジスタに格納する。推定方法では、まず、式(4)を使用して、運用モードから省電力モードに遷移した時(
図5のステップS9)に保存した温度情報T
0(0)及びT(0)と現在のカウントアップタイマーの時間t=t1から、光送信部10の内部温度T
0に変化がないと想定した場合の温度検出器55の検出温度T´(t1)を求める。次に、そのT’(t1)、実際に温度検出器55によって検出した温度T(t1)、及び保存された温度情報T
0(0)より、内部温度T
0(t1)をT
0(t1)=T´(t1)−T(t1)+T
0(0)によって推定する。
【0065】
補正モードでの内部温度の推定はステップT4のみで十分であるが、運用モードから省電力モードに遷移して、例えば、数妙から数十秒以上が経過すると、前述の直読モードで対応することができるため、ステップT5〜T8にてそのためのモードの切り替え判定を行う。すなわち、前回、補正モードにて内部温度を推定した時のカウントアップ・タイマーの時間t0及びその時の内部温度の推定値T
0(t0)と今回の時間t1及び内部温度の推定値T
0(t1)とから、経過時間t1−t0における内部温度の推定値の変化量T
0(t1)−T
0(t0)から変動率=(T
0(t1)−T
0(t0))/(t1−t0)を算出する(ステップT5)。その変動率を所定の基準値と比較して、変動率が基準値以下であれば(ステップT6;Yes)、推定フラグを“0”にし(ステップT7)、変動率が所定の基準値よりも大きければ(ステップT6;No)、推定フラグは“1”のままとし、今回のt1とT
0(t1)の値を次回の判定のためのt0とT
0(t0)として保存する(ステップT8)。保存する場所としては、例えば、レジスタやメモリーを使用することができる。
【0066】
一方、ステップT1にて運用モードと判断した場合には、温度検出回路14によって検出した温度の情報を内部温度として内部温度レジスタに格納する(ステップT9)。運用モードでは、温度検出回路14に電源電圧が供給されて、内部温度の検出が可能であり、I2Cバス71を介して温度検出回路14とMCU12とは通信することができる。従って、MCU12は温度検出回路14から内部温度の情報をシリアル通信によって受け取り、それを内部温度レジスタに格納することができる。
【0067】
以上、本実施形態に係る光送信部10では、LD51が通電しているか否か、すなわち、運用モードであるか省電力モードであるかに応じて、光送信部10の内部温度の導出方法を変えている。
【0068】
従来より、光送信部ひいては光トランシーバの小型化を図る観点から、MCUと、該MCUにより制御される各構成、例えば、TEC制御回路や温度検出回路等とは、I2Cバス等のシリアル通信バスにより電気的に接続されることがある。この場合には、MSAにより規定された省電力モードに遷移した際に、シリアル通信バスに接続されたいずれかの構成への電源供給が停止させられるとMCUと温度検出回路とが通信不能となるため、MCUは内部温度を取得できず、外部装置から内部温度に関する問い合わせがあった場合にも内部温度を送信できない場合があった。
【0069】
この点、本実施形態に係る光送信部10では、省電力モード、すなわち、LD51が通電していないときには、パッケージ56内部のTEC54上面に配置された温度検出器55により検出された温度と記憶装置に格納された内部温度情報とに基づいて、光送信部10の内部温度(パッケージ56外部の平均的な温度)を算出している。省電力モードにおいては、I2Cバス71で接続された温度検出回路14からの温度取得は不可となるところ、温度検出器55により検出された温度を用いて内部温度を推定することで、省電力モードにおいても確実に光送信部10の内部温度を導出できる。なお、温度検出器55が温度を検出する被温調素子はパッケージ56の外部と熱的に結合しているため、被温調素子(例えば、LD51、LDドライバ回路52等)が通電によって発熱していない場合には、温度検出器55により検出される温度はパッケージの外部の温度に応じた値となる。そのため、上述した温度検出器55により検出された温度に基づく光送信部10の内部温度の推定が可能となっている。
【0070】
また、運用モード、すなわち、被温調素子が通電しているときには、パッケージ56の外部(且つ、光送信部10の内部)に備わっている温度検出回路14により検出された温度を光送信部10の内部温度としている。このように、パッケージの外部に備わった温度検出回路14により光送信部10の内部温度を導出することで、被温調素子が通電することにより発熱し、パッケージ56内部の温度が局所的に上昇しているような場合であっても、光送信部10内の内部温度を適切に導出できる。
【0071】
なお、本実施形態に係る光送信部10は、本来TEC54の温度を検出するための構成である温度検出器55により検出された温度を、光送信部10の内部温度の検出にも利用するものであり、光送信部10の内部温度を検出するために新たな構成を追加するものでない。そのため、光送信部10の小型化の弊害になるものではない。以上より、本実施形態に係る光送信部10によれば、光送信部10の小型化を図りながら、動作状態に係らず内部温度の検出を確実且つ適切に行うことができる。
【0072】
また、TEC54上面の被温調素子と温度検出回路14との間の熱抵抗をRTOSA、温度検出回路14と光送信部10の外側表面との間の熱抵抗をRTRX、TEC54の上面の熱容量をCTOSA、光送信部10内部の熱容量をCTRXとした場合に、
【数9】
が満たされることで、光送信部10の内部温度の温度変化が温度検出器55により検出された温度の温度変化よりも緩やかとなり、パッケージ56の内部に設けられた温度検出器55により検出された温度から、パッケージ56の外部における光送信部10の内部温度を高精度に推定できる。
【0073】
また、集積光送信モジュール11は、4個のLD51と、複数の信号端子61a及び電源端子61bと、を有し、パッケージ56は、4個のLD51、LDドライバ回路52、TEC54、温度検出器55、及び、複数の信号端子61a及び電源端子61bを収容している。そのため、4個のLD及びLDドライバ回路52は、TEC54の上面と熱的に強く結合しており、さらに、複数の信号端子61a及び電源端子61bとボンディングワイヤ62を介して電気的に接続されると共に熱的に結合している。
【0074】
従来、例えば
図7に示した光送信モジュール101のように、TEC154上に、1個のLD151と温度検出器155が配置され、これらの構成とLDドライバ回路152及び端子161とがボンディングワイヤ162により電気的に接続された構成が知られている。このような構成では、LD151が1個であるため、それに応じて端子161の数も少なく、TEC154の上面とパッケージ156の外部との熱的な結合度合いは小さかった。なお、
図7の比較例において、被温調素子はLD151であり、通電時の発熱による温度上昇に対してLD151の電気的特性及び光学的特性を一定に保つためにTEC54のペルチェ効果を利用して冷却を行い、温度検出器155によって検出されるTEC54の上面の温度が所定の温度になるように外部の駆動回路によるフィードバック制御によって温度調節が行われる。温度検出器155はフィードバック制御に必要な温度検出手段であって、温度調節を行うべき対象ではない。そのため、温度検出器155は温度調節の影響は受けるが、被温調素子には含めていない(便宜的に含めても支障はない)。
【0075】
この点、4個のLD及びそれに応じた複数の信号端子61a及び電源端子61bを有する集積光送信モジュール11では、パッケージ56の内部に収容された温度検出器55が温度を検出するTEC54の上面と、パッケージ56の外部との熱的な結合度合いが大きくなる。そのことで、温度検出器55により検出された温度に基づく光送信部10の内部温度の推定精度を向上させることができる。例えば、
図7の比較例にて、端子161及び端子161に接続されたボンディングワイヤ162の個数は6個であるのに対し、
図2の集積光送信モジュールでは、端子61及び端子61に接続されたボンディングワイヤ62の個数は16となっている。従って、端子及びボンディングワイヤの各々の材料や形状が
図7と
図2とで同じとすれば、TEC上面とパッケージの外部との熱的な結合の度合いは、
図2の集積光送信モジュールの方が
図7の光送信モジュールよりも約16/6=2.67倍、又は、それ以上であると考えることができる。
【0076】
また、温度検出器55は、ボンディングワイヤ62及び端子61と外部の電気配線とを介してMCU12と電気的に接続されており、MCU12は、LD51が通電していないときに温度検出器55により検出された温度に基づいて内部温度を推定する際、直前にLD51が通電していたとき(すなわち、運用モードの状態)に温度検出回路14により検出された温度を初期値とし、内部温度を推定することで、運用モードから省電力モードに遷移した際に、高精度に内部温度を推定できる。
【0077】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。即ち、本実施形態では、集積光送信モジュールは、4つの25Gbps電気信号をそれぞれ光信号に変換した後に波長多重を行った場合を例として説明したが、チャンネル数及びデータレートの組み合わせはこれに限定されず、例えば、10波長の10Gbps電気信号を光信号に変換するものであってもよい。
【0078】
また、光トランシーバを、CFP2又はCFP4に適用した場合を例にとって説明したが、その他の光トランシーバに適用してもよい。また、LD及びLDドライバ回路はTEC上面に直接実装されているとして説明したが、必ずしもLD及びLDドライバ回路がTEC上に実装されていなくてもよい。また、LD及びLDドライバ回路はTECの上面に直接実装されているとして説明したが、必ずしもLD及びLDドライバ回路がTEC上に実装されていなくてもよい。例えば、LD及びLDドライバ回路とTECとがチップキャリアやその他の熱伝導性の良い部材等を介して間接的に接続され相互に熱的に作用する構成であってもよい。
【0079】
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明の一形態に係る光送信部による内部温度の推定について具体的に説明する。なお、光送信部の構成は下記の実施例に限定されるものではない。
【0080】
図8は、温度検出回路の内部温度T
0と温度検出器の温度Tとの各動作モードにおける関係を説明するための図である。具体的には、外部電源の投入から初期設定及び省電力モードでの動作を経て、さらに、運用モード、省電力モード、及び運用モードを遷移する際の、温度検出回路14の内部温度T
0と温度検出器55の温度Tの各々の時間変化を示している。最初、光トランシーバ1は外部装置30に組み込まれた状態で、環境温度20℃の環境下にて外部電源が供給されていない状態にあると想定する時間time=time0に外部装置30によって外部電源が投入されると、光トランシーバ1は初期設定を開始し、状態フラグと推定フラグを“0”にして、省電力モードにて動作する。この状態では、T
0は省電力モードでの消費電力による発熱によって数℃、例えば、1〜3℃上昇する。被温調素子は通電されていないために、TとT
0はほぼ等しくなっており、温度検出器55によって検出された温度をそのまま内部温度とする。次に、time=time1にて運用モードに遷移すると、電圧生成回路17が起動して主要回路が起動して消費電力が大きくなるために内部温度は徐々に上昇して行くが、内部の発熱と外部への放熱が平衡したところでほぼ一定(例えば、ここでは70℃と想定している)となる。運用モードでは、シリアル通信バスは使用できるので、MCU12は温度検出回路14で検出した内部温度(T
0)の情報をシリアル通信によって受信し、それを内部温度とする。なお、TEC54の上面は温度調節によって所定の設定値(例えば、ここでは40℃と想定した)に近づいて行き、Tの時間変化はその様子を表している。次に、time=time2にて省電力モードに遷移すると、主要回路が停止され消費電力が小さくなるのに伴い、内部温度も徐々に低下して行く。この時の温度の変化の度合いは、光トランシーバ1の外部との熱抵抗RTRXと内部の熱容量CTRXの大きさによって左右される。1/(RTRX・CTRX)の値が小さいほど、内部温度の時間変化はゆっくりとなる。この運用モードの後の省電力モードでは、温度検出器55によって検出した温度を基に内部温度の推定を行うが、その詳細について次に説明する。
【0081】
図8の時間time2からtime3の間の内部温度の推定結果について、熱的等価回路モデルによる時間応答のシミュレーションの例を用いて説明する。
【0082】
当該熱的等価回路モデルは、熱解析における温度を電気回路解析における電圧、熱抵抗を電気抵抗、熱容量をコンデンサ、熱流量を電流と置き換え、置き換え前後の物理量を等価に扱うことにより、電気回路解析の手法を用いて熱解析を行うためのものである。具体的には、
図9に示す電気回路により回路シミュレータを使用して過渡解析を行った。初期条件は、
図8のtime=time2にてカウントアップ・タイマー(時間t)をリセットするため、その時刻をt=0として、T(0)=40℃、T
0(0)=70℃とした。また、RTOSA*CTOSA=1、RTRX*CTRX=5とした。よって、上述した式(9)を満たしている。
【0083】
内部温度T
0の実際の値、及び、上述した式(4)を用いた内部温度T
0の推定値の過渡変化は、
図10(b)に示すように近寄っており、本発明によって実際の値を良好に推定することができる。具体的には、誤差(推定値−実際の値)が5℃以下となり、十分に実用的なレベルとすることができる。