特許第6233005号(P6233005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233005
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】情報処理プログラムおよび情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20171113BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20171113BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G06F3/12 310
   G06F3/12 336
   G06F3/12 344
   G06F3/12 347
   G06F3/12 385
   G06F3/12 392
   B41J29/00 E
   B41J29/38 Z
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-266439(P2013-266439)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-122011(P2015-122011A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】浅井 紀彦
【審査官】 山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−064030(JP,A)
【文献】 特開2012−133727(JP,A)
【文献】 特開2013−214806(JP,A)
【文献】 特開2013−089075(JP,A)
【文献】 特開2012−203745(JP,A)
【文献】 特開2007−328391(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0100491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09−3/12
B41J 29/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信方式による無線通信である第1無線通信で外部装置と通信する第1通信部と、
前記近距離無線通信方式とは異なる無線通信方式による無線通信である第2無線通信で外部装置と通信する第2通信部と、
制御部とを備えた情報処理装置の、前記制御部が実行可能な情報処理プログラムであって、
処理対象データの選択を受け付ける選択受付手段と、
前記選択受付手段により選択を受け付けた処理対象データである第1データを、中継装置との間で前記第2無線通信を行うための第1無線情報に基づき、前記第2無線通信で前記中継装置に出力することにより、ネットワーク上の変換装置に出力し、前記変換装置にて前記第1データから変換された、当該第1データとは異なるファイル形式の第2データを前記変換装置から取得する処理を実行する変換データ取得手段と、
外部装置と前記第1無線通信が開始された場合に、前記変換データ取得手段による前記処理の実行中であるかを判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、当該判断に応じた所定のタイミングからの経過時間を計時する計時手段と、
外部装置と前記第1無線通信が開始された場合、中継装置を介することなく前記外部装置との間で前記第2無線通信を行うための第2無線情報に基づき、前記外部装置と前記第2無線通信を確立する第1通信制御手段と、
前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、その後、前記計時手段により計時される経過時間が所定値に達する前に、前記変換データ取得手段により前記第2データが取得されたことを条件として、当該第2データ、または、当該第2データから生成された第3データを、前記第1通信制御手段により確立された前記第2無線通信で前記外部装置に出力するデータ出力手段として、
前記制御部を機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項2】
前記変換データ取得手段により前記第2データが取得される前に、前記計時手段により計時される経過時間が所定値に達した場合、前記第1通信制御手段により確立された前記第2無線通信を切断する第2通信制御手段として、
前記制御部を機能させることを特徴とする請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記変換データ取得手段により前記第2データが取得される前に、前記計時手段により計時される経過時間が所定値に達した場合、前記第1通信制御手段により確立された前記第2無線通信を切断する旨を、当該第1通信制御手段により確立された前記第2無線通信で前記外部装置に通知する通知手段として、
前記制御部を機能させることを特徴とする請求項2記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記第1通信制御手段は、前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、その後、前記計時手段により計時される経過時間が所定値に達する前に、前記変換データ取得手段により前記第2データが取得されたことを条件として、前記第2無線情報に基づき前記第2無線通信を確立することを特徴とする請求項1記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記計時手段は、前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、当該判断に応じた所定のタイミングからの経過時間が所定値に達する前に、前記外部装置と他の情報処理装置との間で前記第1無線通信が開始された場合、計時中の経過時間に代えて、当該第1無線通信の開始に応じた所定のタイミングからの経過時間を計時することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、前記第1無線情報と、前記外部装置にて設定されている、当該外部装置が中継装置と前記第2無線通信を行うための第3無線情報とが同じであるかを判断する第2判断手段として、
前記制御部を機能させ、
前記第1通信制御手段は、前記第2判断手段により前記第1無線情報と前記第3無線情報とが同じでないと判断された場合に、前記第2無線情報に基づき前記第2無線通信を確立し、
前記データ出力手段は、
前記第2判断手段により前記第1無線情報と前記第3無線情報とが同じでないと判断された場合、前記第2データまたは前記第3データを、前記第1通信制御手段により確立された前記第2無線通信で前記外部装置に出力し、
前記第2判断手段により前記第1無線情報と前記第3無線情報とが同じであると判断された場合、前記第1通信制御手段による前記第2無線通信の確立を行うことなく、前記第2データまたは前記第3データを、前記第1無線情報に基づき、前記第2無線通信で前記中継装置に出力することによって、前記外部装置に出力することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
外部装置と前記第1無線通信が開始された場合、前記外部装置が生成した前記第2無線情報と、前記外部装置にて設定されている前記第3無線情報とを、前記第1無線通信で前記外部装置から取得する無線情報取得手段として、
前記制御部を機能させ、
前記第2判断手段は、前記第1無線情報と、前記無線情報取得手段により取得した第3無線情報とが同じであるかを判断し、
前記第1通信制御手段は、前記第2判断手段により前記第1無線情報と前記第3無線情報とが同じでないと判断された場合に、前記無線情報取得手段により取得した前記第2無線情報に基づき、前記外部装置と前記第2無線通信を確立することを特徴とする請求項6記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、表示部を備え、
前記変換データ取得手段により前記第2データが取得される前に、前記計時手段により計時される経過時間が所定値に達した場合、前記変換データ取得手段による前記第2データの取得が完了したことを条件として、前記外部装置との間で前記第1無線通信を再度開始することを案内する表示を前記表示部に表示する第1表示手段として、
前記制御部を機能させることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、表示部を備え、
前記第1データ、または、当該第1データから変換された前記第2データのページ数が、所定の閾値以上であるかを判断する第3判断手段と、
前記第3判断手段により前記ページ数が所定の閾値以上であると判断された場合、前記第1通信制御手段による前記第2無線通信の確立を行うことなく、所定のエラー表示を前記表示部に表示する第2表示手段として、
前記制御部を機能させ、
前記第1通信制御手段は、前記第3判断手段により前記ページ数が所定の閾値以上でないと判断された場合、前記第2無線情報に基づき、前記第2無線通信を確立することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項10】
近距離無線通信方式による無線通信である第1無線通信で外部装置と通信する第1通信部と、
前記近距離無線通信方式とは異なる無線通信方式による無線通信である第2無線通信で外部装置と通信する第2通信部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
処理対象データの選択を受け付ける選択受付手段と、
前記選択受付手段により選択を受け付けた処理対象データである第1データを、中継装置との間で前記第2無線通信を行うための第1無線情報に基づき、前記第2無線通信で前記中継装置に出力することにより、ネットワーク上の変換装置に出力し、前記変換装置にて前記第1データから変換された、当該第1データとは異なるファイル形式の第2データを前記変換装置から取得する処理を実行する変換データ取得手段と、
外部装置と前記第1無線通信が開始された場合に、前記変換データ取得手段による前記処理の実行中であるかを判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、当該判断に応じた所定のタイミングからの経過時間を計時する計時手段と、
外部装置と前記第1無線通信が開始された場合、中継装置を介することなく前記外部装置との間で前記第2無線通信を行うための第2無線情報に基づき、前記外部装置と前記第2無線通信を確立する第1通信制御手段と、
前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、その後、前記計時手段により計時される経過時間が所定値に達する前に、前記変換データ取得手段により前記第2データが取得されたことを条件として、当該第2データ、または、当該第2データから生成された第3データを、前記第1通信制御手段により確立された前記第2無線通信で前記外部装置に出力するデータ出力手段と、
を備えていることを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理プログラムおよび情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、近距離無線通信方式による通信(以下「近距離無線通信」と称す)を用いて取得した相手装置の通信方式が、自装置が利用可能な無線LAN規格を示す場合に、相手装置との通信を、無線LAN規格による通信に切り替えて、データを送信する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術によれば、端末装置を印刷装置に近づけて両装置間で近距離無線通信を開始させることにより、端末装置から印刷装置への印刷データの送信を、無線LAN規格による通信(以下「無線LAN通信」と称す)を用いて行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−166538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷対象のファイルが、ある端末装置にて処理できない形式のファイルである場合、変換装置を用いて、当該印刷対象のファイルを当該端末装置にて処理可能な形式に変換させることがある。端末装置が上記ファイル変換を行う場合、端末装置が変換装置から変換後のファイルを取得するまでには、数秒から数分程度の時間を要する。
【0006】
無線LAN通信用の通信部は、1つにつき同時期に接続できる相手装置の数に限りがあるので、印刷装置は、接続可能な数より多くの端末装置とは無線LAN通信を行うことができない。そのため、上記ファイル変換の期間中、印刷データが送信できない状態であるにもかかわらず、端末装置と印刷装置との間の無線LAN通信による接続を維持させた場合、印刷データを直ぐに送信可能な状態にある他の端末装置が、無線LAN通信で印刷装置と接続できない不都合が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、変換装置を用いたファイル変換の実施中に相手装置と無線LAN通信のトリガとなる近距離無線通信を開始させた場合に生じ得る不都合が好適に抑制される情報処理プログラムおよび情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の情報処理プログラムは、近距離無線通信方式による無線通信である第1無線通信で外部装置と通信する第1通信部と、前記近距離無線通信方式とは異なる無線通信方式による無線通信である第2無線通信で外部装置と通信する第2通信部と、制御部とを備えた情報処理装置の、前記制御部が実行可能なプログラムであって、処理対象データの選択を受け付ける選択受付手段と、前記選択受付手段により選択を受け付けた処理対象データである第1データを、中継装置との間で前記第2無線通信を行うための第1無線情報に基づき、前記第2無線通信で前記中継装置に出力することにより、ネットワーク上の変換装置に出力し、前記変換装置にて前記第1データから変換された、当該第1データとは異なるファイル形式の第2データを前記変換装置から取得する処理を実行する変換データ取得手段と、外部装置と前記第1無線通信が開始された場合に、前記変換データ取得手段による前記処理の実行中であるかを判断する第1判断手段と、前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、当該判断に応じた所定のタイミングからの経過時間を計時する計時手段と、外部装置と前記第1無線通信が開始された場合、中継装置を介することなく前記外部装置との間で前記第2無線通信を行うための第2無線情報に基づき、前記外部装置と前記第2無線通信を確立する第1通信制御手段と、前記第1判断手段により前記処理の実行中であると判断された場合、その後、前記計時手段により計時される経過時間が所定値に達する前に、前記変換データ取得手段により前記第2データが取得されたことを条件として、当該第2データ、または、当該第2データから生成された第3データを、前記第1通信制御手段により確立された前記第2無線通信で前記外部装置に出力するデータ出力手段として、前記制御部を機能させる。
【0009】
なお、本発明は、情報処理装置、情報処理装置を制御する制御装置、情報処理システム、情報処理方法、情報処理プログラムを記録する記録媒体等の種々の態様で構成できる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の情報処理プログラムによれば、ネットワーク上の変換装置から、当該変換装置にて第1データから変換された第2データを取得する処理の実行中に、外部装置と近距離無線通信方式による第1無線通信が開始された場合、当該第1無線通信が開始されたことに応じて第1通信制御手段により確立された、中継装置を介することなく前記外部装置との間で行われる近距離無線通信方式とは異なる第2無線通信でデータを送信できる時期的条件が制限される。具体的に、第1通信制御手段により確立された第2無線通信でのデータ送信は、変換装置から取得する処理の実行中であると判断された後、当該判断に応じた所定のタイミングから計時される経過時間が所定値に達する前に、変換装置から第2データを取得したことを条件として行われる。よって、第2データまたは第3データを直ぐに送信可能な状態にある装置が外部装置と第2無線通信を確立できない状況が生じる等の各種不都合を好適に抑制できる。
【0011】
請求項2記載の情報処理プログラムによれば、請求項1が奏する効果に加え、次の効果を奏する。変換装置から取得する処理の実行中であると判断された後、当該判断に応じた所定のタイミングから計時される経過時間が所定値に達した場合、第1通信制御手段により確立された第2無線通信が切断される。よって、第1通信制御手段により確立された第2無線通信は、前記経過時間が所定値に達するまでの期間に限って維持されるので、上記各種不都合を好適に抑制できる。
【0012】
請求項3記載の情報処理プログラムによれば、請求項2が奏する効果に加え、次の効果を奏する。変換装置から取得する処理の実行中であると判断された後、当該判断に応じた所定のタイミングから計時される経過時間が所定値に達した場合、第2無線通信を接続する旨が外部装置に通知されるので、外部装置は該当する第2無線通信を切断でき、同時期に第2無線通信で接続可能な装置の空きを作ることができる。
【0013】
請求項4記載の情報処理プログラムによれば、請求項1が奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1通信制御手段による第2無線通信の確立は、変換装置から取得する処理の実行中であると判断された後、当該判断に応じた所定のタイミングから計時される経過時間が所定値に達する前に、変換装置から第2データを取得したことを条件として行われる。よって、第2データまたは第3データを直ぐに送信可能な状態にある装置が外部装置と第2無線通信を確立できない状況が生じる等の各種不都合を好適に抑制できる。
【0014】
請求項5記載の情報処理プログラムによれば、請求項1から4のいずれかが奏する効果に加え、次の効果を奏する。変換装置から取得する処理の実行中であると判断された後、当該判断に応じた所定のタイミングから計時される経過時間が所定値に達する前に、外部装置と他の情報処理装置との間で第1無線通信が開始された場合、計時中の経過時間に代えて、他の情報処理装置による第1無線通信の開始に応じた所定のタイミングからの経過時間が計時される。よって、外部装置と第1無線通信を開始させた他の情報処理装置を考慮して、第2無線通信でデータを送信できる時期的条件を制限できる。
【0015】
請求項6記載の情報処理プログラムによれば、請求項1から5のいずれかが奏する効果に加え、次の効果を奏する。中継装置との間で第2無線通信を行うための第1無線情報と、外部装置にて設定されている、当該外部装置が中継装置と第2無線通信を行うための第3無線情報とが同じである場合には、第1通信制御手段による第2無線通信の確立を行うことなく、第2データまたは第3データが、中継装置を介して外部装置に出力される。よって、第1通信制御手段による第2無線通信の確立に応じて、同時期に第2無線通信で接続可能な装置の空きが消費されることを抑制できる。
【0016】
請求項7記載の情報処理プログラムによれば、請求項6が奏する効果に加え、次の効果を奏する、外部装置から取得した第3無線情報を用いて、第1無線情報との比較を行うことができる。また、第1無線情報と第3無線情報とが同じでない場合には、外部装置から取得した第2無線情報に基づき第2無線通信を確立できる。
【0017】
請求項8記載の情報処理プログラムによれば、請求項1から7のいずれかが奏する効果に加え、次の効果を奏する。変換装置から第2データが取得される前に、計時手段により計時される経過時間が所定値に達した場合には、変換装置から第2データの取得が完了したことを条件として、外部装置との間で第1無線通信を再度開始することを案内する表示が表示部に表示される。よって、変換装置から取得する処理の実行中であると判断された後、当該判断に応じた所定のタイミングから計時される経過時間が所定値に達したとしても、適切なタイミングで、外部装置との間で第1無線通信を再度開始させること促すことができる。
【0018】
請求項9記載の情報処理プログラムによれば、請求項1から8のいずれかが奏する効果に加え、次の効果を奏する。処理対象データとして選択された第1データ、または、当該第1データから変換された第2データのページ数が、所定の閾値以上である場合には、第1通信制御手段による第2無線通信の確立を行うことなく、エラー表示が表示部に表示される。よって、ページ数が多く、データの変換に長い時間を要する場合には、第1通信制御手段による第2無線通信の確立が行われないので、同時期に第2無線通信で接続可能な装置の空きが消費されることを抑制できる。
【0019】
請求項10記載の情報処理装置によれば、請求項1の情報処理プログラムと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】端末の電気的構成を示すブロック図である。
図2】(a)および(b)は、それぞれ、ファイル選択処理および変換スレッドを示すフローチャートである。
図3】NFC印刷処理を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態のNFC印刷処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1図3を参照して、第1実施形態について説明する。図1は、本発明の情報処理プログラムの一実施形態であるアプリケーション12bを搭載する端末10の電気的構成を示すブロック図である。以下では、「アプリケーション」を「アプリ」と称することがある。 本実施形態の端末10は、スマートフォンなどの携帯端末として構成される。端末10には、CPU11、フラッシュメモリ12、RAM13、操作キー15、LCD16、タッチパネル17、メモリカードインターフェイス(以下「メモリカードI/F」と称す)18、音声入出力部19、電話網通信部20、近距離通信部22、無線通信部23が設けられる。これらの各部は、バスライン24を介して互いに接続される。
【0022】
CPU11は、フラッシュメモリ12等に記憶される固定値やプログラム等に従って、バスライン2と接続された各部を制御する。フラッシュメモリ12は、書換可能な不揮発性のメモリである。フラッシュメモリ12には、オペレーティングシステム12a、アプリ12bが格納される。以下では「オペレーティングシステム」を「OS」と称することがある。また、以下では、アプリケーションやオペレーティングシステムなどのプログラムを実行するCPU11のことを、単にプログラム名で記載する場合もある。例えば「アプリケーション」という記載が「アプリケーションを実行するCPU11」を意味する場合もある。OS12aは、端末10の標準機能を実現するための基本ソフトウェアである。本実施形態では、OS12aは、アンドロイド(登録商標)OSである。
【0023】
アプリ12bは、各種デバイスのベンダによって提供されるアプリケーションであって、ユーザによって端末10にインストールされ、端末10から、対応するデバイスが有する各種機能の利用を可能とする。例えば、アプリ12bは、パーソナルコンピュータ(以下「PC」と称す)などを経由せずに、端末10から直接、デバイスの印刷機能やスキャン機能などを利用することを可能にする。
【0024】
本実施形態のアプリ12bによれば、端末10と多機能周辺装置(以下「MFP」と称す)100との間で近距離無線通信が確立されたことをトリガとして、MFP100の印刷機能を利用して、印刷対象として選択されたファイル(以下「印刷対象ファイル」と称す)に基づく画像を印刷できる。特に、アプリ12bは、印刷対象ファイルがPDF形式のファイルである場合、当該ファイルを変換サーバ200にアップロードし、変換サーバ200にて、所定形式の画像ファイル(本実施形態では、JPEG形式の画像ファイル)に変換させ、変換後の画像ファイルに基づく画像をMFP100に印刷させる。後述する図2(a)、図2(b)、および図3のフローチャートに示す各処理は、CPU11がアプリ12bに従い実行する処理である。
【0025】
また、フラッシュメモリ12には、アプリ用記憶領域12cが設けられる。アプリ用記憶領域12cは、アプリ12bが使用する、アプリ12bに割り当てられた記憶領域である。アプリ用記憶領域12cには、例えば、アプリ12bが設定した、Wi−Fi(登録商標)規格に基づく無線通信(以下、この通信を「第1のWi−Fi通信」と称す)の無線設定、より詳細には、中継装置であるアクセスポイント(以下「AP」と称す)50のSSID(Service Set Identifier)が記憶される。以下では、AP50のSSIDを「インフラ用SSID」と称することがある。
【0026】
RAM13は、CPU11がアプリ12b等を実行するにあたり、各種データを一時的に記憶するためのテンポラリエリアを有する書換可能な揮発性のメモリである。操作キー15は、端末10に指示などを入力するためのメカニカルキーであり、例えば、端末10の筺体に設けられる。LCD16は、各種画面を表示する液晶表示装置である。タッチパネル17は、LCD16に重ねて設けられ、指や棒などの指示体を接触または接近させることによって、端末10に指示などを入力する。メモリカードI/F18は、書換可能な不揮発性のメモリカードMCが装着されるインタフェースであり、メモリカードMCに対するデータの書き込み又は読み出しを制御する。音声入出力部19は、マイクやスピーカなどで構成された音声入出力用デバイスである。電話網通信部20は、携帯電話網(図示せず)を介した通話を行うための回路である。
【0027】
近距離通信部22は、例えば10cm程度の短い距離を通信可能距離とする近距離無線通信で通信を行うためのインタフェースである。本実施形態では、近距離通信部22が行う近距離無線通信は、NFC標準規格に従う非接触通信(以下、この通信を「NFC通信」と称す)である。本実施形態において、端末10は、近距離通信部122を有するMFP100との間でNFC通信を行うことが可能である。
【0028】
無線通信部23は、無線LAN規格による通信(無線LAN通信)を行うためのインタフェースである。本実施形態では、無線通信部23が行う無線LAN通信は、IEEE802.11b/g/nの規格に準拠した無線LANによる無線通信である。端末10は、AP50を介して、MFP100などのデバイスとWi−Fi規格に基づいた無線通信(すなわち、第1のWi−Fi通信)を行うことができる。また、端末10は、Wi−Fi Direct(登録商標)規格に基づく、MFP100などのデバイスとの直接通信(以下「第2のWi−Fi通信」と称す)も可能に構成される。
【0029】
MFP100は、印刷機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能などの各種機能を有している。MFP100は、各種機能を実現するための、図示されないプリンタ部、スキャナ部、およびファクシミリ通信部などを有する。MFP100は、近距離通信部22と同様の近距離通信部122を有している。また、MFP100は、無線通信部23と同様の無線通信部123を有している。
【0030】
AP50は、第1のWi−Fi通信を中継する中継装置である。また、AP50は、ブロードバンドルーター機能を有し、インターネット800に接続できる。変換サーバ200は、端末10からアップロードされた第1形式のファイル(本実施形態では、PDF形式のファイル)を、第1形式とは異なる第2形式の画像ファイルに変換するサーバである。変換後のファイル形式である第2形式としては、JPEG、PNG、GIF、BMPなどの各種形式を採用できる。本実施形態の変換サーバ200は、PDF形式のファイルをJPEG形式の画像ファイルに変換する。変換サーバ200は、インターネット800およびAP50を介して、端末10と通信可能に接続される。
【0031】
図2(a)は、ファイル選択処理を示すフローチャートである。本処理は、アプリ12bを起動させたことに伴いLCD16に印刷メニュー画面(図示せず)が表示されると開始される。CPU11は、印刷メニュー画面から、1のメニュー項目が選択されることを待機する(S201:No)。印刷メニュー画面から選択可能なメニュー項目のうち、写真印刷が選択された場合(S201:写真印刷)、CPU11は、メモリカードMCに記憶される写真画像の中から、印刷対象の写真画像を選択させるための写真選択画面(図示せず)をLCD16に表示し、写真選択画面を介して、印刷対象とする1または複数の写真画像の選択を受け付け(S205)、本処理を終了する。
【0032】
一方、印刷メニュー画面から選択可能なメニュー項目のうち、文書印刷が選択された場合(S201:文書印刷)、メモリカードMCに記憶される文書ファイルの中から、印刷対象の文書ファイルを選択させるための文書ファイル選択画面(図示せず)をLCD16に表示する(S202)。本実施形態の文書ファイルは、PDF形式のファイル(以下「PDFファイル」と称す)である。
【0033】
文書ファイル選択画面が表示されると、CPU11は、文書ファイル選択画面を介して、印刷対象とするPDFファイルが選択されることを待機する(S203:No)。CPU11がPDFファイルの選択を受け付けた場合(S203:Yes)、CPU11は、変換スレッドを起動し(S204)、本処理を終了する。変換スレッドは、印刷対象として選択されたPDFファイルを、変換サーバ200にてJPEG形式の画像ファイル(以下「JPEGファイル」と称す)に変換させるための処理である。以下では、変換サーバ200が行うPDFファイルからJPEGファイルへの変換を、「ファイル変換」または「変換」と称することがある。
【0034】
図2(b)は、上述した変換スレッドを示すフローチャートである。CPU11は、当該変換スレッドを、上述した印刷受付処理や、図3を参照して後述するNFC印刷処理などの他の処理と並行して実行する。CPU11は、処理中フラグがオンに設定されているかを判断する(S221)。「処理中フラグ」は、印刷対象のPDFファイルが変換サーバ200にて処理中であるか、すなわち、変換サーバ200を用いたファイル変換の実施中であるか否かを示すフラグであり、RAM13に設けられる。処理中フラグがオンに設定されている場合、変換サーバ200を用いたファイル変換の実施中であることを示す。処理中フラグは、アプリ12bの起動に伴ってオフに初期化される。
【0035】
CPU11は、印刷対象としての選択を受け付けたPDFファイルを、第1のWi−Fi通信によってAP50に送信し、インターネット800経由で変換サーバ200にアップロードする(S222)。変換サーバ200は、PDFファイルがアップロードされたことにより、当該PDFファイルをファイル変換するための処理を開始する。変換サーバ200は、アップロードされたファイルに対しファイルIDを付与するとともに、当該ファイルを解析し、印刷対象のPDFファイルを構成するページ数を取得する。ファイルIDは、変換サーバ200がファイル変換の対象とするファイルを個々に特定するための識別情報である。
【0036】
CPU11は、変換サーバ200から、アップロードしたPDFファイルに付与されたファイルIDおよび当該PDFファイルのページ数を取得する(S223,S224)。CPU11は、ファイルIDおよびページ数の取得を変換サーバ200に要求することにより、これらの情報を取得する。
【0037】
CPU11は、PDFファイルをアップロードしてから所定時間、例えば、5秒が経過するまで待機する(S225:No)。所定時間が経過したとCPU11が判断した場合(S225:Yes)、CPU11は、取得したファイルIDを用いて、該当するファイルの変換が完了したかを変換サーバ200に問い合わせる(S226)。CPU11は、問い合わせに対する変換サーバ200からの返信に基づき、ファイル変換が完了したかを判断する(S227)。ファイル変換が完了していないとCPU11が判断した場合(S227:No)、CPU11は、処理をS225に移行し、さらに所定時間(例えば、5秒)が経過するのを待機する。
【0038】
一方、ファイル変換が完了したとCPU11が判断した場合(S227:Yes)、CPU11は、JPEGファイルのダウンロードを開始する(S228)。具体的に、CPU11は、S223にて取得したファイルIDとダウンロード要求とを変換サーバ200に送信することにより、JPEGファイルのダウンロードを開始する。S228の処理の結果、変換サーバ200は、S222にてアップロードされたPDFファイルからのファイル変換により得られたJPEGファイルを、1ページずつ、端末10に順次送信する。端末10は、印刷対象として選択されたPDFファイルから変換されたJPEGファイルを順次取得する。
【0039】
CPU11は、ダウンロードが完了するまで待機する(S229:No)。ダウンロードが完了したとCPU11が判断した場合(S229:Yes)、CPU11は、処理中フラグをオフに設定し(S230)、本処理を終了する。
【0040】
図3は、NFC印刷処理を示すフローチャートである。本処理は、アプリ12bが起動されると開始される。CPU11は、当該NFC印刷処理を、上述した印刷受付処理や変換スレッドなどの他の処理と並行して実行する。CPU11は、NFCイベントの受信を待機する(S301:No)。NFCイベントは、端末10(近距離通信部22)が、MFP100など、NFC通信の通信相手となるデバイス(以下「NFCデバイス」と称す)を検知した場合に、OS12aがアプリ12bに通知するイベントである。なお、端末10がNFCデバイスを検知したことに伴い、端末10と、検知されたNFCデバイスとの間にて、NFC通信が確立されて開始される。
【0041】
NFCイベントを受信したとCPU11が判断した場合(301:Yes)、CPU11は、MFP100に対し、SSIDをNFC通信によって要求し、それにより、SSIDをMFP100からNFC通信により取得する(S302)。より詳細には、S302において、CPU11は、2種類のSSID、具体的に、MFP100が中継装置として利用するAPのSSID(すなわち、インフラ用SSID)と、MFP100が端末10をNFCデバイスとして検知したことに伴い発行したSSIDとを取得する。後者のSSIDは、1回限りの使用を条件として無線通信部123との接続を許可するSSID、所謂ワンタイムSSIDである。以下、後者のSSIDのことを「ダイレクト用SSID」と称す。
【0042】
印刷メニュー画面から写真印刷が選択されている場合(S303:写真印刷)、CPU11は、従来処理を実行することにより、印刷対象として選択された写真画像をMFP100に印刷させ(S313)、本処理を終了する。具体的に、CPU11は、従来処理として、まず、S302にて取得したダイレクト用SSIDを設定することにより、端末10とMFP100との間で第2のWi−Fi通信を確立するとともに、印刷対象のJPEGファイル(ここでは、写真画像)と、アプリ12bに設定されている印刷設定とから印刷データを生成する。次に、CPU11は、生成された印刷データと印刷指示とを、第2のWi−Fi通信でMFP100に送信する。
【0043】
一方、印刷メニュー画面から文書印刷が選択されている場合(S303:文書印刷)、CPU11は、印刷対象の文書ファイル(本実施形態では、PDFファイル)が選択済みであるかを判断する(S304)。印刷対象のPDFファイルが選択済みでないと、CPU11が判断した場合(S304:No)、CPU11は、印刷対象のファイルが未選択である旨を通知するエラー表示をLCD16に表示し(S314)、本処理を終了する。
【0044】
印刷対象のPDFファイルが選択済みであると、CPU11が判断した場合(S304:Yes)、CPU11は、印刷対象のPDFファイルが変換サーバ200にて処理中であるかを判断する(S305)。CPU11は、S305の判断を、処理中フラグの内容に応じて行う。具体的に、処理中フラグがオンに設定されている場合、CPU11は、S305の判断を肯定する。一方、処理中フラグがオフに設定されている場合、CPU11は、S305の判断を否定する。
【0045】
CPU11がS305の判断を否定した場合(S305:No)、印刷対象のPDFファイルが変換サーバ200にて処理中でない、すなわち、変換後のJPEGファイルのダウンロードが完了していることを示す。よって、かかる場合、CPU11は、従来処理を実行することにより、ダウンロードしたJPEGファイルをMFP100に印刷させ(S313)、本処理を終了する。
【0046】
一方、CPU11がS305の判断を肯定した場合、すなわち、印刷対象のPDFファイルが変換サーバ200にて処理中である場合(S305:Yes)、CPU11は、印刷対象のPDFファイルを構成するページ数、すなわち、S224にて取得したページ数が、所定の閾値P(例えば、P=20)以上であるかを判断する(S306)。ページ数が閾値P以上であると、CPU11が判断した場合(S306:Yes)、CPU11は、ファイル変換中につき印刷できない旨を通知するエラー表示をLCD16に表示し(S314)、本処理を終了する。
【0047】
ページ数が閾値P未満であると、CPU11が判断した場合(S306:No)、CPU11は、アプリ12bが設定したインフラ用SSIDが、MFP100が利用するインフラ用SSIDと同じであるかを判断する(S307)。具体的に、CPU11は、アプリ用記憶領域12cに記憶されるインフラ用SSIDと、S302にて取得したインフラ用SSIDとが同じであるかを判断する。
【0048】
両方のインフラ用SSIDが異なると、CPU11が判断した場合(S307:No)、CPU11は、CPU11は、端末10とMFP100との間にて、第2のWi−Fi通信を確立するための処理(ハンドオーバー処理)を実行する(S308)。具体的に、CPU11は、S302にて取得したダイレクト用SSIDを設定することにより、第2のWi−Fi通信を確立する。CPU11は、S308の処理後、内蔵されるタイマ(図示せず)を起動し、タイマによる計時を開始する(S309)。
【0049】
CPU11は、他の端末がMFP100にかざされたか、より詳細には、かざされたことによって両装置の間でNFC通信が確立されたかの判断を行う(S310)。他の端末がMFP100にかざされたことにより、両装置の間でNFC通信が確立された場合、MFP100は、その旨を端末10に通知する。よって、S310では、当該通知をMFP100から受信したか否かに応じて、S310の判断を行う。具体的に、CPU11は、NFC通信が確立された旨の通知をMFP100から受信した場合、S310の判断を肯定する。一方、CPU11は、NFC通信が確立された旨の通知をMFP100から受信していない場合、S310の判断を否定する。
【0050】
CPU11がS310の判断を否定した場合(S310:No)、CPU11は、JPEGファイルのダウンロードが完了したかを判断する(S311)。CPU11は、S311の判断を、処理中フラグの内容に応じて行う。具体的に、処理中フラグがオンに設定されている場合、CPU11は、S311の判断を否定する。一方、処理中フラグがオフに設定されている場合、CPU11は、S311の判断を肯定する。
【0051】
CPU11がS311の判断を否定した場合、すなわち、JPEGファイルのダウンロードが未だ完了していない場合(S311:No)、CPU11は、S309にて計時が開始されてから所定時間(例えば、3分)が経過したかを判断する(S318)。所定時間が未だ経過していないと、CPU11が判断した場合(S318:No)、CPU11は、処理をS310に移行する。
【0052】
一方、所定時間が経過したと、CPU11が判断した場合(S318:Yes)、CPU11は、第2のWi−Fi通信を切断する指示をMFP100に通知し(S319)、MFP100との間で確立されていた第2のWi−Fi通信を切断する(S320)。MFP100は、S319にて通知された指示に基づき、端末10との間で確立されていた第2のWi−Fi通信を切断する。これにより、MFP100は、接続可能なWi−Fi通信の空きを増やすことができる。S311,S318の処理によれば、端末10とMFP100との間で第2のWi−Fi通信が確立されてから所定時間が経過しても、JPEGファイルのダウンロードが完了しない場合には、端末10とMFP100との第2のWi−Fi通信が強制的に切断される。よって、JPEGファイルのダウンロードが完了しない状況で第2のWi−Fi通信が確立され続ける期間は、有限の期間に制限される。
【0053】
CPU11は、第2のWi−Fi通信が切断された旨を通知するエラー表示をLCD16に表示し(S321)、JPEGファイルのダウンロードが完了するのを待機する(S322:No)。ダウンロードが完了したと、CPU11が判断した場合(S322:Yes)、CPU11は、エラー表示に代えて、端末10をMFP100に再度かざすことを促す再接続案内をLCD16に表示し(S323)、本処理を終了する。
【0054】
S322,S323によれば、再接続案内が表示されるので、S320にて第2のWi−Fi通信が切断された後の取り扱いをユーザに認識させることができる。特に、再接続案内は、JPEGファイルのダウンロードが完了したことを条件として、すなわち、印刷データを直ぐに送信可能な状態になったことを条件として表示されるので、端末10をMFP100に再度かざした場合に、再度S320にて第2のWi−Fi通信が切断されることもない。このように、端末10をMFP100に再度かざすタイミングとして適切なタイミングで再接続案内が表示されるので、利便性が良い。
【0055】
一方、S311において、ダウンロードが完了したとCPU11が判断した場合(S311:Yes)、CPU11は、印刷実行処理を実行し(S312)、本処理を終了する。具体的に、CPU11は、ダウンロードしたJPEGファイルとアプリ12bに設定されている印刷設定とから印刷データを生成し、生成された印刷データと印刷指示とを、MFP100に送信する。MFP100は、印刷機能を用いて、受信した印刷データに応じた印刷を実行し、それにより、変換後のJPEGファイルに応じた画像、すなわち、印刷対象として選択されたPDFファイルに応じた画像が印刷用紙に印刷される。なお、端末10とMFP100との間で第2のWi−Fi通信が確立されている場合、端末10からMFP100への印刷データの送信は、第2のWi−Fi通信により行われる。
【0056】
CPU11がS310の判断を肯定した場合、すなわち、他の端末がMFP100にかざされた場合(S310:Yes)、CPU11は、内蔵されるタイマにて計時中の経過時間をクリアし、新たな計時を開始する(S315)。CPU11は、S315にて計時が開始されてから所定時間(例えば、30秒)が経過したかを判断する(S316)。所定時間が未だ経過していないと、CPU11が判断した場合(S316:No)、CPU11は、S311と同様に、JPEGファイルのダウンロードが完了したかを判断する(S317)。CPU11がS317の判断を否定した場合(S317:No)、CPU11は、処理をS316に移行する。
【0057】
CPU11がS317の判断を肯定した場合(S317:Yes)、CPU11は、印刷実行処理を実行し(S312)、本処理を終了する。CPU11が、S317の判断を肯定したことに基づき、印刷実行処理を実行する場合、端末10からMFP100への印刷データの送信は、両装置間にて確立されている第2のWi−Fi通信により行われる。
【0058】
一方、CPU11がS316の判断を肯定した場合、すなわち、S315にて計時が開始されてから所定時間が経過した場合(S316:Yes)、CPU11は、処理をS319に移行する。S316,S317の処理によれば、端末10とMFP100との間で第2のWi−Fi通信が確立された後、JPEGファイルのダウンロードが完了する前に、他の端末がMFP100にかざされたことにより、両装置の間でNFC通信が確立された場合、当該NFC通信の確立から所定時間が経過しても、ダウンロードが未だ完了しなければ、端末10とMFP100との第2のWi−Fi通信が強制的に切断される。
【0059】
S307において、アプリ12bが設定したインフラ用SSIDと、S302にて取得したインフラ用SSIDとが同じであると、CPU11が判断した場合(S307:Yes)、端末10とMFP100との間で、AP50を介する第1のWi−Fi通信が既に確立されている。よって、かかる場合、CPU11は、JPEGファイルのダウンロードが完了したことを条件として、AP50を介する第1のWi−Fi通信で印刷データを送信することによって印刷実行処理を実行し(S312)、本処理を終了する。かかる場合、第2のWi−Fi通信を確立させる必要がないので、MFP100が同時期にWi−Fi通信で接続可能な装置の空きが消費されることを抑制できる。
【0060】
第1実施形態によれば、印刷対象のPDFファイルが変換サーバ200にて処理中である状況で、端末10とMFP100との間でNFC通信が確立された場合には、端末10が、変換後のJPEGファイルを、第2のWi−Fi通信(すなわち、Wi−Fi Direct規格に基づく通信)を用いてMFP100に送信できる時期的条件が制限される。具体的に、当該時期的条件の制限は、MFP100との間で第2のWi−Fi通信が確立されてから所定期間が経過するまでにJPEGファイルを準備できない、すなわち、ダウンロードを完了できない場合、CPU11が、S320にて当該通信を強制的に切断することにより行われる。
【0061】
よって、MFP100におけるWi−Fi通信の接続可能数の1つが長期間に亘って占有されないので、印刷データを直ぐに送信可能な状態にある他の端末がMFP100と第2のWi−Fi通信を確立できない状況を抑制できる。また、無線LAN通信の維持には電力が必要であるので、ファイル変換中であるために印刷データを直ぐに送信できない状況において、接続を維持するための電力が無駄に消費されることも抑制できる。
【0062】
特に、端末10とMFP100との間でNFC通信が確立された後、他の端末がMFP100にかざされた場合、CPU11は、他の端末がMFP100にかざされたことを基準とする計時をS315にて開始するので、JPEGファイルを直ぐに準備できない端末10が、他の端末とMFP100との第2のWi−Fi通信を長期間に亘って妨げることを抑制できる。
【0063】
印刷対象のPDFファイルを構成するページ数が多い程、変換サーバ200でのファイル変換に要する時間、すなわち、JPEGファイルを準備できるまでの時間は長くなる。これに対し、S306によれば、当該ページ数が閾値P以上である場合、エラーとなり、第2のWi−Fi通信は確立されない。この点においても、JPEGファイルを直ぐに準備できない端末10が、他の端末とMFP100との第2のWi−Fi通信を長期間に亘って妨げることを抑制できる。
【0064】
次に、図4を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、印刷対象のPDFファイルが変換サーバ200にて処理中である状況で、端末10とMFP100との間でNFC通信が確立された場合、これらの装置間で確立された第2のWi−Fi通信が所定時間に亘って維持される構成とした。これに代えて、第2実施形態では、所定時間が経過する前にJPEGファイルのダウンロードが完了したことを条件として、端末10とMFP100との間で第2のWi−Fi通信を確立する。第2実施形態において、第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。以下、第2実施形態に特有の構成を中心に説明する。
【0065】
図4は、第2実施形態のNFC印刷処理を示すフローチャートである、本処理は、第2実施形態のアプリ12bに従って端末10のCPU11が実行する処理であり、第1実施形態と同様、アプリ12bが起動されると開始される。本処理では、CPU11がS307の判断を否定した場合(S307:No)、CPU11は、ハンドオーバー処理を行うことなく、タイマによる計時を開始する(S309)。
【0066】
S311またはS317において、JPEGファイルのダウンロードが完了したと、CPU11が判断した場合(S311:Yes,S317:Yes)、CPU11は、S308と同様にハンドオーバー処理を実行し(S401)、処理をS312に移行する。
【0067】
第2実施形態によれば、印刷対象のPDFファイルが変換サーバ200にて処理中である状況で、端末10とMFP100との間でNFC通信が確立された場合には、JPEGファイルのダウンロードが所定時間内に完了したことを条件として、端末10とMFP100との間で第2のWi−Fi通信が確立される。
【0068】
よって、第1実施形態と同様に、端末10が、変換後のJPEGファイルを、第2のWi−Fi通信を用いてMFP100に送信できる時期的条件が制限されるので、印刷データを直ぐに送信可能な状態にある他の端末がMFP100と第2のWi−Fi通信を確立できない状況や、接続を維持するための電力が無駄に消費されることなどを抑制できる。
【0069】
上記実施形態において、アプリ12bが、情報処理プログラムの一例である。端末10が、情報処理装置の一例である。MFP100が、外部装置の一例である。変換サーバ200が、変換装置の一例である。インターネット800が、ネットワークの一例である。AP50が、中継装置の一例である。近距離通信部22が、第1通信部の一例である。無線通信部23が、第2通信部の一例である。CPU11が、制御部の一例である。LCD16が、表示部の一例である。NFC通信が、第1無線通信の一例である。第1のWi−Fi通信、第2のWi−Fi通信が、第2無線通信の一例である。インフラ用SSIDが、第1無線情報の一例である。ダイレクト用SSIDが、第2無線情報の一例である。PDFファイルが、第1データの一例である。JPEGファイルが、第2データの一例である。JPEGファイルから生成される印刷データが、第3データの一例である。
【0070】
S203の処理を実行するCPU11が、選択受付手段の一例である。変換スレッドの各処理を実行するCPU11が、変換データ取得手段の一例である。S305の処理を実行するCPU11が、第1判断手段の一例である。S309,S315の処理を実行するCPU11が、計時手段の一例である。S308,S401の処理を実行するCPU11が、第1通信制御手段の一例である。S312の処理を実行するCPU11が、データ出力手段の一例である。S320の処理を実行するCPU11が、第2通信制御手段の一例である。S319の処理を実行するCPU11が、通知手段の一例である。S307の処理を実行するCPU11が、第2判断手段の一例である。S302の処理を実行するCPU11が、無線情報取得手段の一例である。S323の処理を実行するCPU11が、第1表示手段の一例である。S306の処理を実行するCPU11が、第3判断手段の一例である。S314の処理を実行するCPU11が、第2表示手段の一例である。
【0071】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0072】
例えば、上記実施形態では、アプリ12bが搭載される情報処理装置として、スマートフォンなどの端末10を例示したが、近距離通信部22および無線通信部23に相当する構成を有する装置であれば、種々の装置を情報処理装置として採用できる。例えば、タブレット端末や、ノート型のパーソナルコンピュータや、デジタルカメラや、音楽再生装置などの装置が、近距離通信部22および無線通信部23に相当する構成を有する場合、これらの各装置を、アプリ12bを搭載するための情報処理装置として採用できる。
【0073】
上記実施形態では、端末10のS12aがアンドロイドOSであるものとして説明したが、他のOSを採用する構成としてもよい。上記実施形態では、近距離無線通信として、NFC通信を例示したが、TransferJet(登録商標)など、他の規格に従う非接触通信を採用する構成としてもよい。
【0074】
上記各実施形態では、外部装置として、印刷機能などの複数の機能を有するMFP100を例示したが、印刷機能を有する装置であれば、印刷機能のみを有するプリンタであっても、外部装置として採用できる。また、上記実施形態では、端末10がMFP100の印刷機能を利用する場合に、本発明を適用する構成としたが、MFP100が有する印刷機能以外の機能を利用する場合であっても、本発明を適用できる。例えば、NFC通信の確立をトリガとして、端末10が、第2のWi−Fi通信で送信したJPEGファイルを送信することにより、MFP100のFAX送信機能を利用する場合に、本発明を適用してもよい。
【0075】
上記実施形態では、印刷対象としてPDFファイルが選択された場合に、本発明を適用させたが、変換サーバ200での変換対象となり得るファイルであれば、PDFファイル以外のファイル形式、例えば、Microsoft Word(登録商標)により作成されたDOC形式のファイルや、Microsoft Excel(登録商標)により作成された各種形式のファイルなどであっても、同様に本発明を適用できる。また、上記実施形態では、変換サーバ200は、ファイル形式の変換を行う専用のサーバとしたが、変換機能以外の機能を有するサーバを利用する構成としてもよい。例えば、ファイル形式の変換が可能であるとともに、変換後の形式のファイルから印刷データを生成可能なサーバであってもよい。
【0076】
上記実施形態では、端末10とMFP100との間で第2のWi−Fi通信(すなわち、Wi−Fi Direct規格に基づく通信)が確立されている場合、端末10は、当該第2のWi−Fi通信で印刷データをMFP100に送信する構成とした。第2のWi−Fi通信に代えて、アドホックモードのWi−Fi通信を適用する構成としてもよい。
【0077】
上記実施形態では、ダイレクト用SSIDを、1回限りの使用を条件とするSSIDとしたが、使用回数については、1回に限定されない。また、回数でなく、発行されてからの経過時間などの時間要素によって使用制限がされるものであってもよい。ダイレクト用SSIDとして、使用制限のないSSIDを使用してもよい。また、上記実施形態では、端末10は、MFP100から取得したダイレクト用SSIDを用いて、第2のWi−Fi通信を確立する構成とした。これに代えて、端末10がダイレクト用SSIDを生成し、MFP100に送信することにより、第2のWi−Fi通信が確立されてもよい。
【0078】
上記実施形態では、変換後のJPEGファイルから生成された印刷データがMFP100に送信される構成とした。これに代えて、変換後のJPEGファイルと、印刷設定と、印刷指示とを、MFP100に送信し、MFP100が、受信したJPEGファイルおよび印刷設定に基づく印刷を行う構成としてもよい。
【0079】
上記実施形態では、CPU11が、S307においてNoと判断した場合に、計時が開始される構成としたが、計時を開始するタイミングは、CPU11が、S305においてYesと判断した以降であれば、特に限定されない。上記実施形態では、S316の判断で用いる閾値は、30秒などの一律の閾値としたが、そのときの状況に応じた閾値を用いる構成としてもよい。例えば、S315にて新たな計時が開始されたタイミングで、それ以前にS309にて開始された計時の経過時間が、S318の判断で用いる閾値に達するまでの残り時間が所定時間(例えば、30秒)より短い場合には、当該残り時間を、S316の判断で用いる閾値としてもよい。上記実施形態では、S309,S315にて開始される計時を同じタイマを用いて行う構成としたが、別々のタイマを用いてもよい。
【0080】
上記実施形態では、CPU11は、S306にて、印刷対象のPDFファイルのページ数が、所定の閾値P以上であるかを判断する構成とした。これに代えて、変換サーバ200がファイルの解析によって、変換後のJPEGファイルのページ数を取得できる場合には、変換後のJPEGファイルのページ数が、所定の閾値P以上であるかを判断する構成としてもよい。また、端末10が、変換サーバ200から変換の残ページ数を取得できる、または、変換サーバ200からの情報に基づいて変換の残ページ数を算出できる場合には、変換の残ページ数が、所定の閾値P以上であるかを判断する構成としてもよい。あるいは、ページ数に代えて、処理対象のファイルのデータサイズを利用し、データサイズが所定の閾値P以上であるかを判断する構成としてもよい。
【0081】
上記実施形態では、端末10は、印刷対象のPDFファイルのページ数を変換サーバ200から取得する構成としたが、端末10が印刷対象のPDFファイルを解析し、ページ数を取得する構成としてもよい。
【0082】
上記実施形態では、CPU11がS305の判断を肯定した場合に、S306以降の処理を実行する構成としたが、変換サーバ200がファイル変換を開始する前か否かを考慮して、S306以降の処理が実行される構成としてもよい。例えば、CPU11がS305の判断を肯定した場合、CPU11は、変換サーバ200がファイル変換を開始する前であるか否かを判断し、当該ファイル変換が既に開始されている場合には、S306以降の処理を実行する一方で、開始前には、S314の処理を実行する構成としてもよい。変換サーバ200がファイル変換を開始する前であるか否かの判断の実行タイミングは、CPU11がS306の判断を否定した後であってもよい。
【0083】
上記実施形態では、第2のWi−Fi通信が切断された場合に再接続案内を表示する構成としたが、CPU11が、S306の判断を肯定したことに基づき、S314にてエラー表示を行った場合に、JPEGファイルのダウンロードが完了したことを条件として、S323と同様に再接続案内をLCD16に表示する構成としてもよい。
【0084】
上記第2実施形態では、端末10の後に他の端末がかざされた場合に、所定時間内にダウンロードが完了したことを条件として端末10を優先的にMFP100と第2のWi−Fi通信させる構成とした。これに代えて、後にかざされた端末が直ぐに印刷データを送信可能な状況にある場合には、後にかざされた端末を優先的にMFP100と第2のWi−Fi通信させてもよい。この場合、S401でのハンドオーバー処理が成功しない可能性がある。よって、かかる変形例では、S401の処理後に第2のWi−Fi通信の接続が所定時間(例えば、10秒)以内に完了した場合には、CPU11は、処理をS312に移行し、完了しなかった場合には、CPU11は、処理をS321に移行するよう構成すればよい。
【0085】
上記実施形態では、CPU11が、図2図4に記載される各処理を実行する構成として説明したが、これら各図に記載される各処理を、複数のCPUが協同的に実行する構成としてもよい。また、ASICなどのICが、単独で、または、複数によって協働的に、上記各図に記載される各処理を実行する構成してもよい。また、CPU11とASICなどのICとが協同して、上記各図に記載される各処理を実行する構成してもよい。また、上記実施形態により説明した各特徴や、上述した各変形例を適宜組み合わせて実施する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10:端末,11:CPU,12a:OS,12b:アプリ
図1
図2
図3
図4