特許第6233016号(P6233016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6233016-回転子および永久磁石電動機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233016
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】回転子および永久磁石電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   H02K1/28 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-271112(P2013-271112)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126655(P2015-126655A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】寺久保 英隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊彦
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−261507(JP,A)
【文献】 特開2007−209163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、同シャフトに固定された内周側鉄心と、同内周側鉄心を覆う柱状の緩衝部材と、同緩衝部材の外周側を覆う筒状の永久磁石とを備えた回転子であって、
前記内周側鉄心は前記シャフトの軸方向に所定の間隙を有し前記シャフトと直交する複数の内周側鉄心片を備え、前記複数の内周側鉄心片が軸方向に前記所定の間隙をもって前記シャフトに配置され、前記緩衝部材は前記所定の間隙を埋めるように前記複数の内周側鉄心片を覆っていることを特徴とする回転子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転子と、同回転子の外周側に所定の間隔をもって対向するように配置される固定子とを備えたことを特徴とする永久磁石電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子およびこの回転子を用いた永久磁石電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の永久磁石電動機には、回転磁界を発生する固定子の内部に、永久磁石を備える回転子を回転可能に配置したインナーロータ型の電動機があり、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータとして用いられる。
【0003】
このような永久磁石電動機の回転子は、例えば、外周側に配置された円筒状の永久磁石と、シャフトに圧着された円柱状の保持部材と、永久磁石と保持部材との間に圧接された可撓性を有する磁性体とを備えた構造になっている。保持部材は内周側鉄心として機能し、磁性体は可撓性を有するため緩衝部材として機能する。この回転子の構造により、永久磁石の回転による振動は、緩衝部材で吸収されて永久磁石から内周側鉄心やシャフトに伝わり難く、回転子の防振効果が得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1による回転子の防振構造は、永久磁石と内周側鉄心との間に備えられた緩衝部材の肉厚が薄く体積が小さいため、回転子の軸方向や周方向などの防振性の低下のおそれがある。この対策としては、緩衝部材の体積を大きくすると、振動エネルギーが緩衝部材でより多く吸収され、回転子の防振性が改善するが、回転子が大きくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−252677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、回転子の大きさを変えることなく、回転子の防振性を高めることができる回転子および永久磁石電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の回転子は、シャフトと、シャフトに固定された内周側鉄心と、内周側鉄心を覆う柱状の緩衝部材と、緩衝部材の外周側を覆う筒状の永久磁石とを備えたものであって、内周側鉄心はシャフトの軸方向に所定の間隙を有しシャフトと直交する複数の内周側鉄心片を備え、複数の内周側鉄心片が軸方向に所定の間隙をもってシャフトに配置され、緩衝部材は所定の間隙を埋めるように複数の内周側鉄心片を覆っていることを特徴とする。また、本発明の永久磁石電動機は、この回転子と、回転子の外周側に所定の間隔をもって対向するように配置される固定子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回転子および永久磁石電動機によれば、内周側鉄心はシャフトの軸方向に所定の間隙を有しシャフトと直交する複数の内周側鉄心片を備え、複数の内周側鉄心片が軸方向に所定の間隙をもってシャフトに配置され、緩衝部材は所定の間隙を埋めるように複数の内周側鉄心片を覆うことにより、回転子の大きさを変えることなく、緩衝部材の体積を大きくすることができるので、回転子の防振性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による回転子を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
図2】本発明による回転子を用いた永久磁石電動機を示す断面図である。
図3】本発明による回転子を用いた永久磁石電動機を示す上面図である。
図4】本発明による回転子の他の実施形態を示す説明図であり、(a)は図1(a)のA−A断面に相当する第2実施形態を示す断面図、(b)は図1(a)のA−A断面に相当する第3実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1乃至図4は、本実施形態における回転子とこの回転子を用いた永久磁石電動機を説明する図である。永久磁石電動機は、回転磁界を発生する固定子内に、永久磁石を備える回転子を回転可能に配置したインナーロータ型電動機であり、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータとして用いられる。
【0011】
回転子1は、図1に示すように、シャフト2と、シャフト2に固定された内周側鉄心3と、内周側鉄心3を覆う柱状の緩衝部材4と、緩衝部材4の外周側を覆う筒状の永久磁石5とを備えている。内周側鉄心3は、シャフト2の軸方向に所定の間隙Sを持たせてシャフト2と直交する5つの内周側鉄心片31を備えている。5つの内周側鉄心片31はそれぞれ円板状に形成されている。それぞれの内周側鉄心片31は、中心にシャフト2に装着するための孔311があり、シャフト2を孔311に通した後、シャフト2と孔311を圧着することで固定される。本実施形態では、5つの内周側鉄心片31が軸方向に等間隔にシャフト2に配置されており、軸方向に同一高さの間隙Sが4つ形成される。なお、内周側鉄心片31は円板状に形成されているが、これに限らず、多角形板状に形成してもよい。また、5つの内周側鉄心片31をシャフト2に圧着するようにしたが、これに限らず、所定の間隙Sを形成するように2つ以上の内周側鉄心31がシャフト2に圧着されていればよい。
【0012】
緩衝部材4は、例えば、CR(クロロプレンゴム)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)などで構成されたゴムや樹脂からなる。緩衝部材4は、5つの内周側鉄心片31の間に形成される4つの間隙Sを埋めるとともに、シャフト2の周囲を除いた最上部の内周側鉄心片31の上端面312と最下部の内周側鉄心片31の下端面313も覆っている。なお、緩衝部材4は、シャフト2の周囲まで最上部の内周側鉄心片31の上端面312と最下部の内周側鉄心片31の下端面313を覆うようにしてもよい。
【0013】
永久磁石5は、例えば、磁石粉末を樹脂で固めた、いわゆるプラスチックマグネットで形成され、緩衝部材4よりも軸方向に長く、緩衝部材4の上端面41と下端面42から飛び出すように配置されている。永久磁石5の内周面には4つの突出部51が形成されている。回転子1は、シャフト2に内周側鉄心片31が圧着された状態において、緩衝部材4をシャフト2と永久磁石5との間に充填し、シャフト2と緩衝部材4と永久磁石5とを一体成形することにより形成されている。そして、永久磁石5は回転子1が形成された後に着磁される。なお、回転子1は、緩衝部材4をシャフト2に予め一体成形することも可能である。この場合には、一体成形時に緩衝部材4の外周面に4つの突出部51がそれぞれ収まる4つの凹部を形成し、一体成形した後に永久磁石5の突出部51を緩衝部材4の凹部に嵌合させてもよい。
【0014】
永久磁石電動機Mは、図2および図3に示すように、前述の回転子1と固定子6とを備えている。固定子6は、固定子鉄心61とインシュレータ62と固定子巻線63とを備えている。固定子鉄心61は、薄い鋼板を複数積層して円筒状に形成され、環状のバックヨーク部611とバックヨーク部611から内径側に延びる複数のティース部612とを備えている。この固定子鉄心61には、インシュレータ62を一体形成し、インシュレータ62を介してティース部612に固定子巻線63が巻回されている。
【0015】
このように構成された固定子6は、固定子巻線63が巻回された固定子鉄心61をティース部612の先端面6121(固定子鉄心61の内周面)を除いてモールド樹脂でモールド成形して円筒状の外郭64を形成し、ティース部612の先端面6121が回転子1の外周面52に所定の間隔(いわゆるエアギャップ)をもって対向するように配置される。
【0016】
以上説明してきた第1の実施形態による回転子1およびこの回転子1を用いた永久磁石電動機Mによれば、内周側鉄心3はシャフト2の軸方向に所定の間隙Sを持たせてシャフト2と直交する複数の内周側鉄心片31を備え、緩衝部材4は所定の間隙Sを埋めるように内周側鉄心片31を覆うことにより、回転子1の大きさを変えることなく、緩衝部材4の体積を大きくすることができる。したがって、振動エネルギーが緩衝部材4でより多く吸収され、回転子1の軸方向や周方向などの防振性を高めることができる。
【0017】
次に、第2の実施形態による回転子1について図4(a)を用いて説明する。なお、前述の第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付し、その説明を省略する。図4(a)に示すように、回転子1は、前述の内周側鉄心3に備えられた5つの内周側鉄心片31に対して、それぞれの内周側鉄心片31を軸方向に連結するように形成した連結部314をさらに備えている。連結部314は円筒状に形成されてシャフト2を挿入した後、圧着されている。
【0018】
第2の実施形態による回転子1によれば、前述の第1の実施形態と同様に、回転子1の軸方向や周方向などの防振性を高めることができる。さらに、前述の第1の実施形態では内周側鉄心3の5つの内周側鉄心片31をシャフト2にそれぞれ圧着する必要があるが、第2の実施形態では内周側鉄心3の連結部314をシャフト2に圧着するだけで済むので容易に組立てることができる。
【0019】
次に、第3の実施形態による回転子1について図4(b)を用いて説明する。なお、前述の第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付し、その説明を省略する。図4(b)に示すように、回転子1は、前述の内周側鉄心3に備えられた5つの内周側鉄心片31に替えて、例えば、薄い鋼板を複数積層して形成された5つの内周側鉄心片32を備えている。5つの内周側鉄心片32はそれぞれ円板状に形成されている。それぞれの内周側鉄心片32は、中心にシャフト2に装着するための孔321があり、シャフト2を孔321に通した後、シャフト2と孔321を圧着することで固定される。緩衝部材4は、シャフト2の周囲を除いた最上部の内周側鉄心片32の上端面322と最下部の内周側鉄心片32の下端面323も覆っている。なお、緩衝部材4は、シャフト2の周囲まで最上部の内周側鉄心片32の上端面322と最下部の内周側鉄心片32の下端面323を覆うようにしてもよい。
【0020】
第3の実施形態による回転子1によれば、前述の第1の実施形態と同様に、回転子1の軸方向や周方向などの防振性を高めることができる。さらに、前述の第1の実施形態では積層していない内周側鉄心片31をシャフト2に圧着するようにしたが、第3の実施形態では複数積層して形成された内周側鉄心片32であるため、内周側鉄心片32のシャフト2に対する圧着状態をさらに強化することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 回転子
2 シャフト
3 内周側鉄心
31 内周側鉄心片
311 孔
312 上端面
313 下端面
314 連結部
32 内周側鉄心片
321 孔
322 上端面
323 下端面
4 緩衝部材
41 上端面
42 下端面
5 永久磁石
51 突出部
6 固定子
61 固定子鉄心
611 バックヨーク部
612 ティース部
6121 先端面
62 インシュレータ
63 固定子巻線
64 外郭
M 永久磁石電動機
S 間隙
図1
図2
図3
図4