特許第6233042号(P6233042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233042インモールド成形用反射防止フィルム及びそれを用いた成形物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233042
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】インモールド成形用反射防止フィルム及びそれを用いた成形物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20171113BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20171113BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20171113BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B32B27/30 D
   B32B27/16
   B32B27/20 A
   B29C45/16
   B29C45/14
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-8393(P2014-8393)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-166750(P2014-166750A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-18119(P2013-18119)
(32)【優先日】2013年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 寛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】野島 孝之
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−171405(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/176742(WO,A1)
【文献】 特開2010−064332(JP,A)
【文献】 特開2012−058307(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/147142(WO,A1)
【文献】 特開2004−009420(JP,A)
【文献】 特開2004−086196(JP,A)
【文献】 特開2010−174201(JP,A)
【文献】 特開2005−275226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 45/00−45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性透明基材フィルム上にハードコート層を有し、熱可塑性透明基材フィルム上のハードコート層側の最表層として色調補正層1を備えるインモールド成形用反射防止フィルムであって、
前記色調補正層1は、
(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂5.0〜15.0質量%、
(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン2.0〜8.0質量%、
(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂9.0〜70.0質量%、
(d)中空シリカ微粒子22.0〜83.0質量%、
(e)光重合開始剤1.0〜10.0質量%
からなる色調補正層1用樹脂組成物(但し、(a)(b)(c)(d)(e)の合計は、100質量%である。)を硬化させてなり、(b)の質量%が、(a)の質量%より少ないことを特徴とするインモールド成形用反射防止フィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層と前記色調補正層1との間に、金属酸化物微粒子と紫外線硬化型樹脂からなり、前記色調補正層1の屈折率より高い1.6〜2.1の屈折率を有する色調補正層2が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のインモールド成形用反射防止フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性透明基材フィルムが、ポリカーボネート層とポリメチルメタクリレート層との2層構造からなり、前記ハードコート層はポリメチルメタクリレート層上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインモールド成形用反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のインモールド成形用反射防止フィルムの色調補正層1が設けられていない面に、熱可塑性樹脂を融着させて成形されていることを特徴とする成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成形に適した反射防止フィルムであって、防汚性に優れた反射防止フィルム、及びそれを用いた成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や携帯電話等の意匠付けにおいて、ハードコート処理や印刷が施された加飾フィルムを熱融着法により成形品に転移するインモールド成形が一部用いられている。カーナビや携帯電話の普及に伴い、それらのディスプレイのカバーにインモールド成形が用いられる機会が増加しており、視認性を良好とするためにディスプレイ表面における外光の反射を防止できるインモールド成形用フィルムが求められていた。
【0003】
現在はそのような要求に応える反射防止フィルムが提供されており、例えば特許文献1においては、ポリメチルメタクリレート樹脂からなるプラスチック透明基材の片面または両面にハードコート層を有し、さらにフィルム表面に多層反射防止膜が設けられている光透過性物品が提案されている。
【0004】
しかし、さらに近年になってマルチタッチ機能を有する静電容量式タッチパネルを搭載したカーナビや携帯電話が普及したため、インモールド成形に用いられる加飾フィルムに対する要求性能のトレンドが変化し、反射防止機能の要求だけでなく、タッチパネル表面への指紋の付着を抑えるニーズが高まっている。しかし、従来の反射防止フィルムは、反射防止の機能に特化しており、指紋付着に関する対策がなんら施されていないため、指紋の付着を抑えるニーズに応えることができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−365402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、インモールド成形用の反射防止フィルムであって、防汚性に優れる反射防止フィルム、及びそれを用いた成形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性透明基材フィルム上にハードコート層を有し、熱可塑性透明基材フィルム上のハードコート層側の最表層として色調補正層1を備えるインモールド成形用反射防止フィルムであって、前記色調補正層1は、(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂5.0〜15.0質量%、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン2.0〜8.0質量%、(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂9.0〜70.0質量%、(d)中空シリカ微粒子22.0〜83.0質量%、(e)光重合開始剤1.0〜10.0質量%からなる色調補正層1用樹脂組成物(但し、(a)(b)(c)(d)(e)の合計は、100質量%である。)を硬化させてなり、(b)の質量%が、(a)の質量%より少ないことを特徴とする。
【0008】
本発明のインモールド成形用反射防止フィルムは、前記ハードコート層と前記色調補正層1との間に、金属酸化物微粒子と紫外線硬化型樹脂からなり、前記色調補正層1の屈折率より高い1.6〜2.1の屈折率を有する色調補正層2が備えられていることが好ましい。
【0009】
本発明のインモールド成形用反射防止フィルムは、前記熱可塑性透明基材フィルムが、ポリカーボネート層とポリメチルメタクリレート層との2層構造からなり、前記ハードコート層はポリメチルメタクリレート層上に形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明は、前記インモールド成形用反射防止フィルムの色調補正層1が設けられていない面に、熱可塑性樹脂を融着させて成形されていることを特徴とする成形物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱可塑性透明基材上にハードコート層、更に、最表層として組成を適切に設定した色調補正層1用樹脂組成物を硬化させてなる色調補正層1を形成することで、指紋の拭取り性に優れるインモールド成形に適した反射防止フィルムを提供することができる。
更に、ハードコート層と色調補正層1との間に、色調補正層2を備えたことで、より視認性に優れた指紋の拭取り性に優れるインモールド成形に適した反射防止フィルムを提供することができる。
加えて、熱可塑性透明基材フィルムが、ポリカーボネート層とポリメチルメタクリレート層との2層構造からなり、前記ハードコート層をポリメチルメタクリレート層上に形成したことで、印刷特性に優れた指紋の拭取り性に優れるインモールド成形に適した反射防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《反射防止フィルム》
本実施形態のインモールド成形に適した反射防止フィルムは、熱可塑性透明基材フィルムの一方の面にハードコート層が積層されており、ハードコート層側の最表層として色調補正層1が積層された構成である。また、ハードコート層と色調補正層1との間には、色調補正層2を設けることもできる。
【0013】
以下に、このインモールド成形に適した反射防止フィルムの構成要素について順に説明する。
【0014】
<熱可塑性透明基材フィルム>
熱可塑性透明基材フィルムは、ポリカーボネート樹脂、又はポリメチルメタクリレート樹脂からなるフィルムを使用でき、特に、ポリカーボネート層及びポリメチルメタクリレート層との2層構造からなるフィルムが好ましい。透明基材フィルムの膜厚は通常30〜250μm、好ましくは125〜188μmである。また、熱可塑性透明基材フィルムの屈折率は、1.49〜1.59であることが好ましい。
【0015】
<ハードコート層>
ハードコート層は、表面硬度向上のため熱可塑性透明基材フィルム上に設けられる。ハードコート層の屈折率は、1.49〜1.59であることが好ましい。屈折率が1.49未満の場合、熱可塑性透明基材フィルムとハードコート層との屈折率差が大きくなり、干渉縞が発生するため好ましくない。屈折率が1.59よりも大きい場合、屈折率を大きくするためにハードコート層へ高屈折率材料を多く添加する必要があるが、高屈折率材料に起因した光の吸収及び、光の散乱が発生し、ハードコート層が着色し、且つ、全光線透過率が低下するため好ましくない。またハードコート層の乾燥硬化後の膜厚は、1〜20μmが好ましい。膜厚が1μmより薄い場合は、十分な表面硬度が得られないため好ましくない。膜厚が20μmより厚い場合は、屈曲性の低下等の問題が生じるため好ましくない。ハードコート層は、下記ハードコート層用樹脂組成物を硬化させてなる。
【0016】
また、熱可塑性透明基材フィルムがポリカーボネート層及びポリメチルメタクリレート層の2層構造である場合、ハードコート層はポリメチルメタクリレート層上に積層されることが好ましい。ポリカーボネート層と比較し、ポリメチルメタクリレート層上にハードコート層を積層することで、熱可塑性透明基材フィルムとハードコート層の密着性が良好となる。また、反射防止フィルムをインモールド成形する際に、色調補正層1と反対側の熱可塑性透明基材フィルム上へ印刷を施すことがあるが、印刷で使用するインキとの密着性は、ポリメチルメタクリレート層よりもポリカーボネート層の方が良好となる。
【0017】
<ハードコート層用樹脂組成物>
本発明のハードコート層用樹脂組成物は、この種のハードコート層に一般的に用いられる材料であれば特に制限されないが、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)及び少なくとも1種の紫外線硬化型樹脂(B)の少なくとも一方と、光重合開始剤(C)とを含有してなるものが好ましい。光重合開始剤(C)とともにアクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)を含有することにより、熱可塑性透明基材フィルムに対して優れた密着性を発揮することができ、紫外線硬化型樹脂(B)を少なくとも1種を含有することにより、適度な流動性を付与することができる。
【0018】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)は、ポリオレフィン由来の構造単位と不飽和ジカルボン酸(無水物)由来の構造単位とアクリル由来の構造単位とからなるものであり、ポリオレフィン成分と不飽和ジカルボン酸(無水物)成分とアクリル成分とから得ることができる。なお、以下に説明するこれら各成分(ポリオレフィン成分、不飽和ジカルボン酸(無水物)成分、アクリル成分)は、それぞれ1種のみであってもよいし2種以上であってよい。
【0019】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)を構成するポリオレフィン成分としては、例えば、炭素数4〜12のα−オレフィンの1種以上とプロピレンとを必須構成単位とする共重合体が好ましく挙げられる。ここで、炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく、1−ブテンが最も好ましい。これら炭素数4〜12のα−オレフィンが前記ポリオレフィン成分中に占める割合は、15〜70モル%であることが好ましい。ただし、前記炭素数4〜12のα−オレフィンおよびプロピレン以外のオレフィンをも構成単位とする共重合体においては、例えばエチレンをも構成単位とする場合(例えば、プロピレン/1−ブテン/エチレン共重合体のような場合)には、前記ポリオレフィン成分中に占めるエチレンの割合は1モル%以下であるのが好ましく、0.5モル%以下であるのがより好ましく、0.1モル%以下であるのがさらに好ましい。
【0020】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)を構成するポリオレフィン成分は、高分子ポリオレフィンからの熱減成ポリオレフィン、すなわち高分子ポリオレフィンを高温で熱分解して得られる低分子ポリオレフィンであることが好ましい。高分子ポリオレフィンからの熱減成ポリオレフィンは、末端や分子内に比較的多くの二重結合が均一に存在するものであり、不飽和ジカルボン酸(無水物)のグラフト化が容易であるので、一般には上げることが難しいと考えられている後述の不飽和ジカルボン酸(無水物)付加率を後述する比較的高い範囲にまで向上させることができる。熱減成ポリオレフィンを得る方法としては、例えば、数平均分子量15000〜150000の高分子ポリオレフィンを、有機過酸化物の存在下では180〜300℃、有機過酸化物の非存在下では300〜450℃で、0.5〜1時間加熱するようにすればよい。また、有機過酸化物の非存在下で加熱する方法が好ましい。
【0021】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)を構成するポリオレフィン成分の数平均分子量は、500〜40000であるのが好ましく、1500〜30000であるのがより好ましい。
【0022】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)を構成する不飽和ジカルボン酸(無水物)成分としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、シクロヘプテンジカルボン酸、アコニット酸等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物や、前記不飽和ジカルボン酸無水物と炭素数1〜5のアルキルアルコールとのエステル化物等が挙げられる。
【0023】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)を構成するアクリル成分としては、例えば4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート等のような活性水素を有するアクリル成分や、例えば2−アクリロイルエチルイソシアネート等のようなイソシアナート基を含有するアクリル成分が挙げられ、さらには、メチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル等もアクリル成分として用いることができる。
【0024】
前記ポリオレフィン成分と前記不飽和ジカルボン酸(無水物)成分と前記アクリル成分とから前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)を得る方法は、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン成分に不飽和ジカルボン酸(無水物)成分をグラフト付加したのち、アクリル成分を反応させる方法等により得ることができる。なお、上記各方法における具体的な反応条件等については、通常の有機合成の手法に従い、適宜設定すればよい。例えば、アクリル成分を反応させる際に、(メタ)アクリル酸エステルをアクリル成分とする場合には、例えばジクミルパーオキサイド等の水素引き抜き能を有する有機過酸化物を用いればよい。
【0025】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)は、融点が92〜112℃であることが重要である。これにより、高温においても優れた密着性を発現し、塗膜に剥離を生じさせることなく金型温度が高い状態で冷却することなく直ちに型開きすることができるようになる。好ましくは、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)の融点は95〜110℃であるのがよい。アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)の融点が92℃未満であると、高温での密着性が不充分となり、金型温度が高い状態で冷却することなく直ちに型開きすると、塗膜に剥離を生じることとなる。一方、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)の融点が112℃を超えると、得られる塗膜に濁りが生じやすくなるとともに、耐水性が低下することになる。なお、融点は、示差走査熱分析(DSC)により測定される。
【0026】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)は、その構造中に占める不飽和ジカルボン酸(無水物)由来の構造単位の割合(すなわち、不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率)が5〜15質量%であることが重要である。これにより、一般に極性が高い紫外線硬化型樹脂(後述する成分B)との相溶性が向上することとなり、その結果、濁りのない塗膜を得ることができるのである。好ましくは、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)における不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率は、6〜13質量%であるのがよい。アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)における不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率が5質量%未満であると、得られる塗膜に濁りが生じるとともに、耐水性も低下することとなる。一方、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)における不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率が15質量%を超えると、耐水性が低下することになる。なお、アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)における不飽和ジカルボン酸(無水物)の付加率は、例えば、赤外線分析(IR)におけるカルボニル基のピーク比から算出すればよい。
【0027】
前記アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)の数平均分子量は、特に制限されないが、例えば、600〜50100であるのが好ましく、1600〜30100であるのがより好ましい。数平均分子量が小さすぎると、鉛筆硬度などの塗膜物性が低下する傾向があり、一方、大きすぎると、得られる塗膜に濁りが生じることがあると同時に、流動性が低下してコーティング時の作業性を損なう恐れがある。
【0028】
前記紫外線硬化型樹脂(B)の具体例としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(オリゴマー)、エポキシ(メタ)アクリレート(オリゴマー)、ポリエステル(メタ)アクリレート(オリゴマー)、ポリエーテル(メタ)アクリレート(オリゴマー)、(メタ)アクリレート(オリゴマー)等が挙げられる。なお、本明細書では、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを指す。
【0029】
前記紫外線硬化型樹脂(B)の重量平均分子量は、100〜50000であるのが好ましい。重量平均分子量が100未満であると、鉛筆硬度などの塗膜物性が低下する傾向があり、一方、50000を超えると、流動性が低下する傾向がありコーティング時の作業性を損なう恐れがある。
【0030】
前記光重合開始剤(C)は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線によりハードコート層用樹脂組成物を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0031】
前記光重合開始剤(C)の配合比は、(C)/〔(A)+(B)〕=0.1/100〜10/100(質量比)である。光重合開始剤(C)が前記範囲より少ないと、重合が不充分となり、密着性を発揮できなくなる。一方、前記範囲より多いと、不必要に多くなるだけであり、好ましくない。
【0032】
本発明のハードコート層用樹脂組成物には、必要に応じて、表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤等の従来公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していても良い。
【0033】
<色調補正層1>
色調補正層1の屈折率は、ハードコート層の屈折率、更に、色調補正層2が存在する場合は色調補正層2の屈折率より低く設定されることを要件とし、その屈折率は1.33〜1.46が好ましい。該屈折率が1.33未満の場合には、塗膜中に含まれる屈折率を低下させるために配合する微粒子の量が多くなり、十分に硬い層を形成することが困難である。その一方、屈折率が1.46を超える場合には十分な反射防止性能を得ることが難しい。また、色調補正層1は0.05〜0.25μmであることが好ましい。色調補正層1は、色調補正層1用樹脂組成物を紫外線等により硬化させた硬化物からなり、その組成を以下において説明する。
【0034】
<色調補正層1用樹脂組成物>
色調補正層1用樹脂組成物は、(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂5.0〜15.0質量%、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン2.0〜8.0質量%、(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂9.0〜70.0質量%、(d)中空シリカ微粒子22.0〜83.0質量%、(e)光重合開始剤1.0〜10.0質量%からなり、(b)の質量%が、(a)の質量%より少なく、更に、(a)(b)(c)(d)(e)の合計は、100質量%である。
【0035】
(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂は、防汚性機能を発現するためのものであり、色調補正層1表面を触った際に付着する指紋の付着性を弱めることができる。フッ素含有紫外線硬化型樹脂の例としては、C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、ダイキン工業(株)製オプツールDAC−HP,DIC(株)製メガファックRS−75等が挙げられる。フッ素含有紫外線硬化型樹脂は、ハードコート用樹脂組成物中に5.0〜15.0質量%含まれる。含有量が5.0質量%未満では、色調補正層1表面を触った際に付着する指紋の付着性を弱めることが出来ない。一方、15.0質量%を越えると、指紋の拭取り性が悪化する。
【0036】
(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、色調補正層1表面に付着した指紋の拭取り性を向上するためのものである。(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとしては、具体的には、ビックケミー・ジャパン(株)製BYK−UV 3500,BYK−UV 3530,BYK−UV 3570等が挙げられる。アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、ハードコート用樹脂組成物中に、2.0〜8.0質量%含まれる。含有量が2.0質量%未満では、ハードコート層表面に付着した指紋の拭取り性が向上しない。一方、8.0質量%を越えると、ハードコート層表面を触った際に付着する指紋の付着性を弱めることが出来ない。
【0037】
(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂は、色調補正層1へ硬度を付与する事が出来る。(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(オリゴマー)、エポキシ(メタ)アクリレート(オリゴマー)、ポリエステル(メタ)アクリレート(オリゴマー)、ポリエーテル(メタ)アクリレート(オリゴマー)、(メタ)アクリレート(オリゴマー)等が挙げられる。(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂は、色調補正層1用樹脂組成物中に9.0〜70.0質量%含まれる。含有量が9.0質量%未満では、色調補正層1の硬度不足や、透過率の低下が生じる。一方、70.0質量%を越えると、指紋の拭取り性が向上しない。
【0038】
(d)中空シリカ微粒子は、屈折率を積極的に低くするために配合されるものである。中空シリカ微粒子の屈折率は製法によって異なるが、1.25〜1.40であることが好ましい。中空シリカ微粒子としては、屈折率を低くするものであれば特に限定されず、公知の中空シリカ微粒子を使用できる。具体的には、日揮触媒化成(株)製アクリル修飾中空シリカ微粒子スルーリアNAU等が挙げられる。中空シリカ微粒子は、色調補正層1用樹脂組成物中に22.0〜83.0質量%含まれる。シリカ微粒子の含有量が22.0質量%未満では、色調補正層1の屈折率を上述の範囲とすることが出来ない。一方、シリカ微粒子の含有量が83.0質量%より多いと、塗膜強度が弱くなるため好ましくない。また、中空シリカ微粒子の大きさは、0.1μm以下であることが好ましい。中空シリカ微粒子の粒子径が0.1μmよりも大きい場合、光の散乱が生じヘイズ値が高くなり白化する傾向にあり好ましくない。なお、本明細書において粒子径とは、粒子径分布測定装置〔大塚電子(株)製、PAR−III〕を使用し、動的光散乱法により平均粒子径を測定することで求めた値である。
【0039】
(e)光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により色調補正層1用樹脂組成物を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤は、色調補正層1用樹脂組成物中に1.0〜10.0質量%含まれる。光重合開始剤の含有量が1.0質量%未満では、ハードコート層の硬化が不十分となる。一方、含有量が10.0質量%を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。
【0040】
<色調補正層2>
続いて、色調補正層2について説明する。該色調補正層2は、上述の色調補正層1との有意な屈折率差により、反射防止効果を向上させるための層である。色調補正層2の屈折率は、ハードコート層及び色調補正層1より高く設定されており、色調補正層2の屈折率は1.6〜2.1である。この屈折率が1.6より小さい場合、反射防止性能を向上することができない。一方、屈折率が2.1を超える色調補正層2を形成することは現状では困難である。また、色調補正層2の乾燥硬化後の膜厚は、0.05〜0.25μmが好ましい。上記範囲外では、光の干渉による反射防止の効果が不十分となる。更に、色調補正層2は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる色調補正層2用樹脂組成物を紫外線等により硬化させた硬化物からなる。
【0041】
<色調補正層2用樹脂組成物>
この色調補正層2用樹脂組成物を構成する材料としては、前記色調補正層2の屈折率の範囲において、金属酸化物微粒子及び紫外線硬化型樹脂を任意に用いることができる。金属酸化物微粒子は、屈折率を積極的に高めるために配合されるものである。金属酸化物微粒子としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ITO等の微粒子が挙げられる。特に、導電性や帯電防止能の観点より、酸化錫、酸化アンチモン及びITOが好ましく、高屈折率の観点より、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛及び酸化ジルコニウムが好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は色調補正層2の厚みを大きく超えないことが好ましく、特に0.15μm以下であることが好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径が色調補正層2の厚みより大きくなると、光の散乱が生じる等、色調補正層2の光学性能が低下する傾向にある。
【0042】
紫外線硬化型樹脂としては、例えば重合硬化したものの屈折率が1.6〜1.8の紫外線硬化型樹脂を用いることができる。そのような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(オリゴマー)、エポキシ(メタ)アクリレート(オリゴマー)、ポリエステル(メタ)アクリレート(オリゴマー)、ポリエーテル(メタ)アクリレート(オリゴマー)、(メタ)アクリレート(オリゴマー)等が挙げられる。
【0043】
色調補正層2中に、金属酸化物微粒子は30〜90質量部含まれ、紫外線硬化型樹脂は10〜70質量部含まれるように調整される。金属酸化物微粒子の含有量が30質量部未満では、色調補正層2の屈折率が上述の範囲外となるため好ましくない。金属酸化物微粒子の含有量が90質量部を超えると、塗膜に対する金属酸化物微粒子の相対量が多くなり、塗膜がもろくなるため好ましくない。一方、紫外線硬化型樹脂の含有量が10質量部未満では、塗膜に対する紫外線硬化型樹脂の相対量が少なく塗膜がもろくなるため好ましくない。また、紫外線硬化型樹脂の含有量が70質量部を超えると、色調補正層2の屈折率が上述の範囲外となるため好ましくない。
【0044】
更に、色調補正層2用樹脂組成物中には、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により色調補正層2用樹脂組成物を硬化させて塗膜を形成するために、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤は、色調補正層2用樹脂組成物中に1.0〜10.0質量%含まれる。光重合開始剤の含有量が1.0質量%未満では、色調補正層2の硬化が不十分となる。一方、含有量が10.0質量%を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。
【0045】
本発明の色調補正層2用樹脂組成物中には、必要に応じて、表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤等の従来公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していても良い。
【0046】
<ハードコート層、色調補正層2及び色調補正層1の形成>
ハードコート層、色調補正層2及び色調補正層1は、各樹脂組成物を透明基材フィルム上へ順に塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。ハードコート層用樹脂組成物、色調補正層2用樹脂組成物及び色調補正層1用樹脂組成物の塗布方法は特に制限されず、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用できる。また、活性エネルギー線の種類は特に制限されないが、利便性等の観点から紫外線を用いることが好ましい。尚、ハードコート層の透明基材フィルムに対する密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことも可能である。また、塗工性の観点から、各樹脂組成物は溶媒に希釈し塗工することが好ましい。溶媒としては、各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
【0047】
《成形物》
本発明の成形物は、反射防止フィルムの色調補正層1が表面に位置するようにインモールド成形された構成である。インモールド成形に用いられる熱可塑性樹脂は、インモールド成形に従来から使用されている公知の樹脂のうち、透明であり反射防止フィルムに融着する樹脂であれば特に限定されず、例えばポリカーボネートなどが適宜選択される。
【0048】
<成形物のインモールド成形>
インモールド成形物は、反射防止フィルムの色調補正層1とは反対側の面を射出成形金型内のキャビティに向くように保持し、溶融させた熱可塑性樹脂を金型内に注入することによって、前記反対側の面に熱可塑性樹脂が融着するように形成される。熱可塑性樹脂の溶融温度、金型への注入圧力は、熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜選択される。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0050】
〔熱可塑性透明基材フィルム〕
各実施例及び比較例において、熱可塑性透明基材フィルムとしては、以下のものを使用した。
ポリカーボネートフィルム(PC)
住友化学株式会社製「C000」188μm
ポリメチルメタクリレートフィルム(PMMA)
住友化学株式会社製「S014G」188μm
ポリカーボネート層とポリメチルメタクリレート層との2層構造からなるフィルム(PC/PMMA)
住友化学株式会社製「C001」188μm
【0051】
〔ハードコート層用樹脂組成物〕
ハードコート層用樹脂組成物として、次の原料を使用し、各原料を下記表1に記載した組成にて混合し、ハードコート層用樹脂組成物HC1−1を調製した。尚、各材料の配合量は、固形分の質量%を記載している。ハードコート層用樹脂組成物の各原料としては、以下の通りである。
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)
下記製造例1で合成した水酸基含有メタクリレート変性無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(A1)
紫外線硬化型樹脂(B)
ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL8402」
日本化薬(株)製「KAYARAD DPCA−20」
共栄社化学(株)製「ライトアクリレート1.9ND−A」
光重合開始剤(C)
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE184(I−184)」
〔製造例1:アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンの合成〕
高分子ポリオレフィン(プロピレンと1−ブテンとの共重合体:三井化学社製「タフマーXR110T」)を攪拌機および温度計を備えた反応容器に入れ、360℃まで昇温して溶融させ、窒素気流下で80分間加熱することにより、熱減成による低分子ポリオレフィン(a1)を得た。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた反応容器に、前記低分子ポリオレフィン(a1)160部を入れ、窒素気流下で180℃まで昇温して溶融させたのち、無水マレイン酸25部と1−ドデセン20部を加え、均一に混合した。次いで、あらかじめ調製したキシレン20部にジクミルパーオキサイド1部を溶解させた溶液を180℃を維持しながら2時間かけて滴下し、滴下後さらに180℃で2時間攪拌し、無水マレイン酸のグラフト化反応を行なった。その後、減圧下でキシレンおよび1−ドデセンを留去して、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(aa1)を得た。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた反応容器に、前記無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(aa1)450部を入れ、窒素気流下で105℃まで昇温し、該温度を維持するようにしながらトルエン300部を攪拌下で徐々に滴下した。次いで、水酸基含有メタクリレート(ダイセル化学工業社製「プラクセルFM4:CH2=C(CH3)COO(CH2)2O[CO(CH2)5O]nH」)135部を添加し、攪拌しながら同温度で3時間反応させたのち、冷却し、水酸基含有メタクリレート変性無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(A1)の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は66.1%であった。
【0052】
なお、下記表中に記載の、硬化後の組成物屈折率は、以下方法にて測定した。
(1)PETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡績(株)製〕上に、バーコーターにより、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nmになるように層の厚さを調整して塗布した。乾燥後、紫外線照射装置〔岩崎電気(株)製〕により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化し、屈折率測定用フィルムを作製した。
(2)作製したフィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計〔「FE-3000」、大塚電子(株)製〕により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ4+b/λ2+c (式1)
a、b、c:波長分散定数
【0053】
【表1】
【0054】
〔色調補正層2用樹脂組成物〕
色調補正層2用樹脂組成物として、次の原料を使用し、各原料を下記表2に記載した組成にて混合し、色調補正層2用樹脂組成物H1−1〜H1−4を調製した。尚、各材料の配合量は、固形分の質量%を記載している。色調補正層2用樹脂組成物の各原料としては、以下の通りである。
金属酸化物微粒子
シーアイ化成(株)製「ZRMEK25%−F47」(酸化ジルコニウム微粒子分散液)
シーアイ化成(株)製「RTTMIBK15WT%−N24」(酸化チタン微粒子分散液)
紫外線硬化型樹脂
日本合成化学工業(株)製「紫光UV−7600B」
光重合開始剤
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE907(I−907)、IRGACURE184(I−184)」
【0055】
【表2】
【0056】
〔色調補正層1用樹脂組成物〕
色調補正層1用樹脂組成物として次の原料を使用し、各原料を下記表3、4に記載した組成にて、(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂と、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンと、(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂と、(d)中空シリカ微粒子と、(e)光重合開始剤とを混合し、色調補正層1用樹脂組成物L1−1〜L1−15、L2−1〜L2−12を調製した。尚、各材料の配合量は、固形分の質量%を記載している。色調補正層1用樹脂組成物の各原料としては、以下の通りである。
(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂
ダイキン工業(株)製「オプツールDAC−HP」
DIC(株)製「メガファックRS−75」
(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン
ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−UV 3500,BYK−UV 3530, BYK−UV 3570」
(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂
日本化薬(株)製「KAYARAD DPHA」
日本合成化学工業(株)製「紫光UV−7600B」
(d)中空シリカ微粒子
日揮触媒化成(株)製「アクリル修飾中空シリカ微粒子 スルーリアNAU」
(e)光重合開始剤
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE907(I−907)、IRGACURE184(I−184)」
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
(実施例1−1)
住友化学(株)製ポリメチルメタクリレートフィルム「S014G、188μm」の一面に、ハードコート用樹脂組成物(HC1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:1の割合で混合したハードコート層用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が2μmとなるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。
次に、このハードコート層上に、色調補正層1用樹脂組成物(L1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:5の割合で混合した色調補正層1用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、窒素雰囲気下、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより反射防止フィルム(F1−1)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を下記方法で測定した。その結果を下記表5に示す。
【0060】
(実施例1−2〜1−15)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表5に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例1−1と同様にして、反射防止フィルム(F1−2〜F1−15)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を下記方法で測定した。その結果を下記表5に示す。なお、熱可塑性透明基材フィルムとして「PC/PMMA」を用いた際は、ポリメチルメタクリレート層(PMMA層)上に各種層を形成した。
【0061】
<指紋拭取り性>
人工指脂液(尿素1g、乳酸4.6g、ピロリン酸ナトリウム8g、食塩7g、エタノール20mLを蒸留水で1Lに希釈したもの)1滴を反射防止フィルム表面(色調補正層1表面)に滴下する。その後、日本製紙クレシア(株)製キムワイプを用い、人工指脂液を馴染ませる。続いて、東レ(株)製トレシーを用いて5往復拭取りを実施した後、表面の跡を目視で観察し下記の3段階で評価した。
○:人工指脂液の跡が無い場合
△:人工指脂液の跡が一部残る場合
×:人工指脂液の跡が残る場合
【0062】
<耐擦傷性>
反射防止フィルム表面を#0000のスチールウールに250gfの荷重をかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで10往復摩擦したあとの表面を目視で観察し、以下の○、×で評価した。
※スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
○:傷が0〜10本
×:傷が11本以上
【0063】
<最小反射率>
反射防止フィルムの裏面反射を防ぐため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計[日本分光(株)製、商品名:U−best560]により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られた反射スペクトルより、最小反射率(%)を読み取った。
【0064】
<印刷特性>
色調補正層1と反対側の熱可塑性透明基材フィルム上へ、帝国インキ製造(株)製インキ(ISX−971−墨)をバーコーターにて硬化後の膜厚が20μmとなるように塗布した後、90℃で90分間加熱乾燥を実施した。その後、インキ面にニチバン(株)製セロテープ(登録商標)を貼り付け、セロテープ(登録商標)を剥がした際のインキの剥れの状態を下記の3段階で評価した。
◎:剥れ無し
○:一部剥れあり
×:全て剥れた
【0065】
【表5】
【0066】
(実施例2−1)
住友化学(株)製ポリメチルメタクリレートフィルム「S014G、188μm」の一面に、ハードコート用樹脂組成物(HC1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:1の割合で混合したハードコート層用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が2μmとなるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。
次に、このハードコート層上に、色調補正層2用樹脂組成物(H−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:5の割合で混合した色調補正層2用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、窒素雰囲気下、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより色調補正層2を形成した。
最後に、この色調補正層2上に、色調補正層1用樹脂組成物(L1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:5の割合で混合した色調補正層1用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、窒素雰囲気下、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより反射防止フィルム(F2−1)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。結果を下記表6に示す。
【0067】
(実施例2−2〜2−15)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層2用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表6に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例2−1と同様にして、反射防止フィルム(F2−2〜F2−15)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。その結果を下記表6に示す。なお、熱可塑性透明基材フィルムとして「PC/PMMA」を用いた際は、ポリメチルメタクリレート層(PMMA層)上に各種層を形成した。
【0068】
【表6】
【0069】
(実施例3−1〜3−15)、(実施例4−1〜4−15)
実施例1−1〜1−15、実施例2−1〜2−15の各反射防止フィルム(F1−1〜F1−15、F2−1〜F2−15)の色調補正層1とは反対側の面が溶融したポリカーボネート樹脂に接するように射出成形金型内のキャビティに保持し、360℃程度の温度で溶融させたポリカーボネート樹脂を、29400kPaの圧力にて金型内に注入し、放冷した。すなわち、成形と同時に融着するインモールド成形融着法にてインモールド成形用反射防止フィルムの融着を行うことで、成形物上に反射防止機能が付与された。
得られた成形物について、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率を上記方法で測定した。結果を下記表7、表8に示す。
【0070】
【表7】

【表8】
【0071】
(比較例1−1〜比較例1−12)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表7に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例1−1と同様にして、反射防止フィルム(F3−1〜F3−12)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。その結果を下記表9に示す。
【0072】
【表9】
【0073】
(比較例2−1〜2−13)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層2用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表8に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例2−1と同様にして、反射防止フィルム(F4−1〜F4−13)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。その結果を下記表10に示す。
【0074】
【表10】
【0075】
(比較例3−1〜3−12)、(比較例4−1〜4−13)
比較例1−1〜1−12、比較例2−1〜2−13の各反射防止フィルム(F3−1〜F3−12、F4−1〜F4−13)の色調補正層1とは反対側の面が溶融したポリカーボネート樹脂に接するように射出成形金型内のキャビティに保持し、360℃程度の温度で溶融させたポリカーボネート樹脂を、29400kPaの圧力にて金型内に注入し、放冷した。すなわち、成形と同時に融着するインモールド成形融着法にてインモールド成形用反射防止フィルムの融着を行うことで、成形物上に反射防止機能が付与された。
得られた成形物について、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率を上記方法で測定した。結果を下記表11、表12に示す。
【0076】
【表11】

【表12】
【0077】
実施例1−1〜1−15では、熱可塑性透明基材フィルムをベース基材に用い、色調補正層1を形成する色調補正層1用樹脂組成物が本発明で規定される範囲に設定されていることから、防汚性に優れるインモールド成形に適した反射防止フィルムを作製することが出来た。
更に、実施例2−1〜2−15では、ハードコート層と色調補正層1との間に、本発明で規定される範囲にて色調補正層2を形成したことから、より視認性に優れ、防汚性に優れたインモールド成形に適した反射防止フィルムを作製することが出来た。
実施例3−1〜3−15、実施例4−1〜4−15では、実施例1−1〜1−15、実施例2−1〜2−15のインモールド成形用反射防止フィルムを用いたインモールド成形融着法によって作製した成形物においても、視認性に優れ、防汚性に優れることを実証することが出来た。
その一方、比較例1−1〜1−9、及び比較例2−1〜2−9は、(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂と、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンの配合が適切でないことから、指紋拭取り性が悪い結果となった。比較例1−10、及び比較例2−10は、光開始剤の配合量が本発明で規定される範囲外であることから、耐擦傷性が低く、硬度に劣る結果となった。比較例1−11、及び比較例2−11は、フッ素含有紫外線硬化型樹脂でなく、フッ素を含有し紫外線硬化しない樹脂を用いたことから、耐擦傷性が弱い結果となった。比較例1−12、及び比較例2−12は、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンでなく、アクリル基を含有しないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを用いたことから、耐擦傷性が弱い結果となった。比較例2−13は、色調補正層2用樹脂組成物が本発明で規定される範囲外であることから、ハードコート層と色調補正層1との間に色調補正層2を形成したにも係らず、実施例2−1〜2−15のように更なる反射率の低減には至らなかった。
比較例3−1〜3−12、比較例4−1〜4−13では、比較例1−1〜1−12、比較例2−1〜2−13のインモールド成形用反射防止フィルムを用いたインモールド成形融着法によって作製した成形物において、視認性及び防汚性の両立を図るには至らなかった。