【実施例】
【0049】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0050】
〔熱可塑性透明基材フィルム〕
各実施例及び比較例において、熱可塑性透明基材フィルムとしては、以下のものを使用した。
ポリカーボネートフィルム(PC)
住友化学株式会社製「C000」188μm
ポリメチルメタクリレートフィルム(PMMA)
住友化学株式会社製「S014G」188μm
ポリカーボネート層とポリメチルメタクリレート層との2層構造からなるフィルム(PC/PMMA)
住友化学株式会社製「C001」188μm
【0051】
〔ハードコート層用樹脂組成物〕
ハードコート層用樹脂組成物として、次の原料を使用し、各原料を下記表1に記載した組成にて混合し、ハードコート層用樹脂組成物HC1−1を調製した。尚、各材料の配合量は、固形分の質量%を記載している。ハードコート層用樹脂組成物の各原料としては、以下の通りである。
アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィン(A)
下記製造例1で合成した水酸基含有メタクリレート変性無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(A1)
紫外線硬化型樹脂(B)
ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL8402」
日本化薬(株)製「KAYARAD DPCA−20」
共栄社化学(株)製「ライトアクリレート1.9ND−A」
光重合開始剤(C)
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE184(I−184)」
〔製造例1:アクリル変性不飽和ジカルボン酸(無水物)グラフト化ポリオレフィンの合成〕
高分子ポリオレフィン(プロピレンと1−ブテンとの共重合体:三井化学社製「タフマーXR110T」)を攪拌機および温度計を備えた反応容器に入れ、360℃まで昇温して溶融させ、窒素気流下で80分間加熱することにより、熱減成による低分子ポリオレフィン(a1)を得た。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた反応容器に、前記低分子ポリオレフィン(a1)160部を入れ、窒素気流下で180℃まで昇温して溶融させたのち、無水マレイン酸25部と1−ドデセン20部を加え、均一に混合した。次いで、あらかじめ調製したキシレン20部にジクミルパーオキサイド1部を溶解させた溶液を180℃を維持しながら2時間かけて滴下し、滴下後さらに180℃で2時間攪拌し、無水マレイン酸のグラフト化反応を行なった。その後、減圧下でキシレンおよび1−ドデセンを留去して、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(aa1)を得た。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた反応容器に、前記無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(aa1)450部を入れ、窒素気流下で105℃まで昇温し、該温度を維持するようにしながらトルエン300部を攪拌下で徐々に滴下した。次いで、水酸基含有メタクリレート(ダイセル化学工業社製「プラクセルFM4:CH2=C(CH3)COO(CH2)2O[CO(CH2)5O]nH」)135部を添加し、攪拌しながら同温度で3時間反応させたのち、冷却し、水酸基含有メタクリレート変性無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(A1)の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は66.1%であった。
【0052】
なお、下記表中に記載の、硬化後の組成物屈折率は、以下方法にて測定した。
(1)PETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡績(株)製〕上に、バーコーターにより、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nmになるように層の厚さを調整して塗布した。乾燥後、紫外線照射装置〔岩崎電気(株)製〕により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化し、屈折率測定用フィルムを作製した。
(2)作製したフィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計〔「FE-3000」、大塚電子(株)製〕により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長589nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ4+b/λ2+c (式1)
a、b、c:波長分散定数
【0053】
【表1】
【0054】
〔色調補正層2用樹脂組成物〕
色調補正層2用樹脂組成物として、次の原料を使用し、各原料を下記表2に記載した組成にて混合し、色調補正層2用樹脂組成物H1−1〜H1−4を調製した。尚、各材料の配合量は、固形分の質量%を記載している。色調補正層2用樹脂組成物の各原料としては、以下の通りである。
金属酸化物微粒子
シーアイ化成(株)製「ZRMEK25%−F47」(酸化ジルコニウム微粒子分散液)
シーアイ化成(株)製「RTTMIBK15WT%−N24」(酸化チタン微粒子分散液)
紫外線硬化型樹脂
日本合成化学工業(株)製「紫光UV−7600B」
光重合開始剤
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE907(I−907)、IRGACURE184(I−184)」
【0055】
【表2】
【0056】
〔色調補正層1用樹脂組成物〕
色調補正層1用樹脂組成物として次の原料を使用し、各原料を下記表3、4に記載した組成にて、(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂と、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンと、(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂と、(d)中空シリカ微粒子と、(e)光重合開始剤とを混合し、色調補正層1用樹脂組成物L1−1〜L1−15、L2−1〜L2−12を調製した。尚、各材料の配合量は、固形分の質量%を記載している。色調補正層1用樹脂組成物の各原料としては、以下の通りである。
(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂
ダイキン工業(株)製「オプツールDAC−HP」
DIC(株)製「メガファックRS−75」
(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン
ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−UV 3500,BYK−UV 3530, BYK−UV 3570」
(c)(a)及び(b)と共重合可能な紫外線硬化型樹脂
日本化薬(株)製「KAYARAD DPHA」
日本合成化学工業(株)製「紫光UV−7600B」
(d)中空シリカ微粒子
日揮触媒化成(株)製「アクリル修飾中空シリカ微粒子 スルーリアNAU」
(e)光重合開始剤
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製「IRGACURE907(I−907)、IRGACURE184(I−184)」
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
(実施例1−1)
住友化学(株)製ポリメチルメタクリレートフィルム「S014G、188μm」の一面に、ハードコート用樹脂組成物(HC1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:1の割合で混合したハードコート層用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が2μmとなるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。
次に、このハードコート層上に、色調補正層1用樹脂組成物(L1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:5の割合で混合した色調補正層1用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、窒素雰囲気下、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより反射防止フィルム(F1−1)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を下記方法で測定した。その結果を下記表5に示す。
【0060】
(実施例1−2〜1−15)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表5に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例1−1と同様にして、反射防止フィルム(F1−2〜F1−15)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を下記方法で測定した。その結果を下記表5に示す。なお、熱可塑性透明基材フィルムとして「PC/PMMA」を用いた際は、ポリメチルメタクリレート層(PMMA層)上に各種層を形成した。
【0061】
<指紋拭取り性>
人工指脂液(尿素1g、乳酸4.6g、ピロリン酸ナトリウム8g、食塩7g、エタノール20mLを蒸留水で1Lに希釈したもの)1滴を反射防止フィルム表面(色調補正層1表面)に滴下する。その後、日本製紙クレシア(株)製キムワイプを用い、人工指脂液を馴染ませる。続いて、東レ(株)製トレシーを用いて5往復拭取りを実施した後、表面の跡を目視で観察し下記の3段階で評価した。
○:人工指脂液の跡が無い場合
△:人工指脂液の跡が一部残る場合
×:人工指脂液の跡が残る場合
【0062】
<耐擦傷性>
反射防止フィルム表面を#0000のスチールウールに250gfの荷重をかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで10往復摩擦したあとの表面を目視で観察し、以下の○、×で評価した。
※スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
○:傷が0〜10本
×:傷が11本以上
【0063】
<最小反射率>
反射防止フィルムの裏面反射を防ぐため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計[日本分光(株)製、商品名:U−best560]により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られた反射スペクトルより、最小反射率(%)を読み取った。
【0064】
<印刷特性>
色調補正層1と反対側の熱可塑性透明基材フィルム上へ、帝国インキ製造(株)製インキ(ISX−971−墨)をバーコーターにて硬化後の膜厚が20μmとなるように塗布した後、90℃で90分間加熱乾燥を実施した。その後、インキ面にニチバン(株)製セロテープ(登録商標)を貼り付け、セロテープ(登録商標)を剥がした際のインキの剥れの状態を下記の3段階で評価した。
◎:剥れ無し
○:一部剥れあり
×:全て剥れた
【0065】
【表5】
【0066】
(実施例2−1)
住友化学(株)製ポリメチルメタクリレートフィルム「S014G、188μm」の一面に、ハードコート用樹脂組成物(HC1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:1の割合で混合したハードコート層用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が2μmとなるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。
次に、このハードコート層上に、色調補正層2用樹脂組成物(H−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:5の割合で混合した色調補正層2用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、窒素雰囲気下、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより色調補正層2を形成した。
最後に、この色調補正層2上に、色調補正層1用樹脂組成物(L1−1)及び溶媒(メチルイソブチルケトン)を1:5の割合で混合した色調補正層1用塗液をバーコーターにて硬化後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、窒素雰囲気下、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより反射防止フィルム(F2−1)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。結果を下記表6に示す。
【0067】
(実施例2−2〜2−15)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層2用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表6に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例2−1と同様にして、反射防止フィルム(F2−2〜F2−15)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。その結果を下記表6に示す。なお、熱可塑性透明基材フィルムとして「PC/PMMA」を用いた際は、ポリメチルメタクリレート層(PMMA層)上に各種層を形成した。
【0068】
【表6】
【0069】
(実施例3−1〜3−15)、(実施例4−1〜4−15)
実施例1−1〜1−15、実施例2−1〜2−15の各反射防止フィルム(F1−1〜F1−15、F2−1〜F2−15)の色調補正層1とは反対側の面が溶融したポリカーボネート樹脂に接するように射出成形金型内のキャビティに保持し、360℃程度の温度で溶融させたポリカーボネート樹脂を、29400kPaの圧力にて金型内に注入し、放冷した。すなわち、成形と同時に融着するインモールド成形融着法にてインモールド成形用反射防止フィルムの融着を行うことで、成形物上に反射防止機能が付与された。
得られた成形物について、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率を上記方法で測定した。結果を下記表7、表8に示す。
【0070】
【表7】
【表8】
【0071】
(比較例1−1〜比較例1−12)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表7に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例1−1と同様にして、反射防止フィルム(F3−1〜F3−12)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。その結果を下記表9に示す。
【0072】
【表9】
【0073】
(比較例2−1〜2−13)
熱可塑性透明基材フィルム、ハードコート用樹脂組成物、色調補正層2用樹脂組成物、色調補正層1用樹脂組成物を下記表8に記載した材料及び各層の組合せとした以外は、実施例2−1と同様にして、反射防止フィルム(F4−1〜F4−13)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率、印刷特性を上記方法で測定した。その結果を下記表10に示す。
【0074】
【表10】
【0075】
(比較例3−1〜3−12)、(比較例4−1〜4−13)
比較例1−1〜1−12、比較例2−1〜2−13の各反射防止フィルム(F3−1〜F3−12、F4−1〜F4−13)の色調補正層1とは反対側の面が溶融したポリカーボネート樹脂に接するように射出成形金型内のキャビティに保持し、360℃程度の温度で溶融させたポリカーボネート樹脂を、29400kPaの圧力にて金型内に注入し、放冷した。すなわち、成形と同時に融着するインモールド成形融着法にてインモールド成形用反射防止フィルムの融着を行うことで、成形物上に反射防止機能が付与された。
得られた成形物について、指紋拭取り性、耐擦傷性、最小反射率を上記方法で測定した。結果を下記表11、表12に示す。
【0076】
【表11】
【表12】
【0077】
実施例1−1〜1−15では、熱可塑性透明基材フィルムをベース基材に用い、色調補正層1を形成する色調補正層1用樹脂組成物が本発明で規定される範囲に設定されていることから、防汚性に優れるインモールド成形に適した反射防止フィルムを作製することが出来た。
更に、実施例2−1〜2−15では、ハードコート層と色調補正層1との間に、本発明で規定される範囲にて色調補正層2を形成したことから、より視認性に優れ、防汚性に優れたインモールド成形に適した反射防止フィルムを作製することが出来た。
実施例3−1〜3−15、実施例4−1〜4−15では、実施例1−1〜1−15、実施例2−1〜2−15のインモールド成形用反射防止フィルムを用いたインモールド成形融着法によって作製した成形物においても、視認性に優れ、防汚性に優れることを実証することが出来た。
その一方、比較例1−1〜1−9、及び比較例2−1〜2−9は、(a)フッ素含有紫外線硬化型樹脂と、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンの配合が適切でないことから、指紋拭取り性が悪い結果となった。比較例1−10、及び比較例2−10は、光開始剤の配合量が本発明で規定される範囲外であることから、耐擦傷性が低く、硬度に劣る結果となった。比較例1−11、及び比較例2−11は、フッ素含有紫外線硬化型樹脂でなく、フッ素を含有し紫外線硬化しない樹脂を用いたことから、耐擦傷性が弱い結果となった。比較例1−12、及び比較例2−12は、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンでなく、アクリル基を含有しないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを用いたことから、耐擦傷性が弱い結果となった。比較例2−13は、色調補正層2用樹脂組成物が本発明で規定される範囲外であることから、ハードコート層と色調補正層1との間に色調補正層2を形成したにも係らず、実施例2−1〜2−15のように更なる反射率の低減には至らなかった。
比較例3−1〜3−12、比較例4−1〜4−13では、比較例1−1〜1−12、比較例2−1〜2−13のインモールド成形用反射防止フィルムを用いたインモールド成形融着法によって作製した成形物において、視認性及び防汚性の両立を図るには至らなかった。