特許第6233044号(P6233044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6233044-可撓性回路基板 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233044
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】可撓性回路基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20171113BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H05K1/02 E
   H05K1/02 N
   H05K9/00 R
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-9457(P2014-9457)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-138876(P2015-138876A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】益井 窓爾
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−061059(JP,A)
【文献】 特開2012−084800(JP,A)
【文献】 特開2005−294639(JP,A)
【文献】 特開平08−213722(JP,A)
【文献】 特開2005−183536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 〜 1/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性絶縁ベース材の一方の面に配線パターンを備えると共に、前記可撓性絶縁ベース材の他方の面に接地パターンを備え、予め設定された折り線で折り曲げられる可撓性回路基板であって、
前記可撓性絶縁ベース材の前記折り線両端の端縁部分に、前記可撓性絶縁ベース材の面に沿って、他の部分よりも金属が集中した線材又は板材からなる集中部を、
備え
前記接地パターンは、離散的に円形の空隙部を有する金属薄板によって構成され、
前記集中部は、前記金属薄板の前記空隙部が他の部分よりも密度が低い部分によって構成されて前記接地パターンの他の部分と導通することを特徴とする可撓性回路基板。
【請求項2】
前記集中部は、その集中部を備えた可撓性回路基板の外部から目視可能なことを特徴とする請求項に記載の可撓性回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性絶縁ベース材の一方の面に配線パターンを備えると共に、前記可撓性絶縁ベース材の他方の面に接地パターンを備えた可撓性回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイミド等の樹脂からなる可撓性絶縁ベース材の一方の面に配線パターンを備えると共に、前記可撓性絶縁ベース材の他方の面に接地パターンを備えた可撓性回路基板(いわゆるフレキシブルプリント基板)が種々知られている。例えば、接地パターンを梯子状に形成して、配線パターンのインピーダンスのコントロールを容易にした可撓性回路基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−77801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の可撓性回路基板は、各種機器の筐体内に折り曲げて設置される場合があるが、可撓性絶縁ベース材の復元力が強いとその可撓性回路基板を折り曲げられた状態に形状維持するのが困難になる。従来は、このように可撓性回路基板を折り曲げられた状態に形状維持する容易さについて考慮されて来なかった。そこで、本発明は、折り曲げられた状態に形状維持するのが容易な可撓性回路基板を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達するためになされた本発明の可撓性回路基板は、可撓性絶縁ベース材の一方の面に配線パターンを備えると共に、前記可撓性絶縁ベース材の他方の面に接地パターンを備え、予め設定された折り線で折り曲げられる。そして、前記可撓性絶縁ベース材の前記折り線両端の端縁部分には、前記可撓性絶縁ベース材の面に沿って、他の部分よりも金属が集中した線材又は板材からなる集中部が備えられている。このため、少なくともその集中部では、線材又は板材からなる金属の材料的特性により、可撓性絶縁ベース材の復元力に抗して可撓性回路基板を折り曲げられた状態に形状維持するのが容易になる。本発明の可撓性回路基板では、そのような集中部が、可撓性絶縁ベース材の折り線両端の端縁部に設けられているので、その可撓性回路基板を前記折り線で折り曲げられた状態に形状維持するのが容易になる。
【0006】
なお、前記接地パターンは、離散的に空隙部を有する金属薄板によって構成され、前記集中部は、前記金属薄板の前記空隙部が他の部分よりも少ない部分によって構成されて前記接地パターンの他の部分と導通してもよい。その場合、集中部は接地パターンと導通しているので、その集中部がノイズ源となるのを抑制することができる。また、前記集中部は接地パターンと同一の金属板から構成されているので、集中部を別途作成する場合に比べて、可撓性回路基板の製造も容易となる。
【0007】
また、前記集中部は、その集中部を備えた可撓性回路基板の外部から目視可能であってもよい。その場合、可撓性回路基板の折り曲げ位置が外部から目視によって分かるので、その可撓性回路基板の機器への設置作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用したFPCの外観を表す平面図である。
図2】そのFPCの構成を表面側と裏面側とに分けて表す平面図である。
図3】そのFPCの接地パターンの変形例を裏面側から表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の構成]
次に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。図1の平面図に示すように、本発明が適用された可撓性回路基板の一例としてのFPC(フレキシブルプリント基板)1は、例えばポリイミド等の樹脂フィルムからなる透明又は半透明の可撓性絶縁ベース材(以下、単にベース材という。)3の片面(以下、表面という。)に配線パターン5を備え、ベース材3の他面(以下、裏面という。)に接地パターン7を備えている。なお、FPC1は、図1に破線で示す折り線Lで折り曲げて使用されるものである。
【0010】
図2(A)は、FPC1の裏面側の構成を表す平面図であり、図2(B)はFPC1の表面側の構成を表す平面図である。図1及び図2(B)に示すように、配線パターン5は、ベース材3の表面に積層された金属薄板(例えば銅板)をエッチングすることによって、ベース材3の長手方向に沿って平行に配置された複数の直線状のパターンとして形成されている。
【0011】
また、図1及び図2(A)に示すように、接地パターン7は、ベース材3の裏面に積層された金属薄板(例えば銅板)をエッチングして矩形の網目状の空隙部7Aをマトリックス状に形成することにより、網状のパターンとして形成されている。また、そのエッチング時に、折り線Lの両端におけるベース材3の端縁部分には、前記金属薄板が矩形の面状に(いわゆるベタに)残されることによって、板材からなる集中部9が形成されている。この集中部9は、図1及び図2(A)に示すように、接地パターン7と導通している。
【0012】
[実施形態の効果]
このように、本実施形態のFPC1は、ベース材3における折り線L両端の端縁部分に、そのベース材3の面に沿って、金属薄板が面状に残された集中部9を有している。このため、少なくともその集中部9では、金属薄板の材料的特性により、ベース材3の復元力に抗してFPC1を折り曲げられた状態に形状維持するのが容易になる。FPC1では、そのような集中部9が、ベース材3の折り線L両端の端縁部に設けられているので、そのFPC1を折り線Lで折り曲げられた状態に形状維持するのが容易になる。
【0013】
しかも、その集中部9は接地パターン7と導通しているので、その集中部9がノイズ源となるのを抑制することができる。また、集中部9は、エッチングによって接地パターン7と同時に同一の金属薄板から形成されるので、集中部9を別途作成する場合に比べて、FPC1の製造も容易となる。また、接地パターン7は網状に構成されているので、接地パターン7の全体を面状に構成した場合に比べて、配線パターン5のインピーダンスが下がりすぎるのを抑制し、かつ、FPC1の折り曲げやすさも確保することができる。
【0014】
また、ベース材3が半透明であるため、図1に示すように、集中部9はFPC1の外部から目視可能である。このため、FPC1の折り曲げ位置(すなわち折り線L)が外部から目視によって分かり、そのFPC1の機器への設置作業が容易になる。例えば、このようなFPCは、白線逸脱警報等の制御で用いられる車両用の画像センサユニットにおいて使用することができる。画像センサユニットを車両への搭載方法を適合するために、構成部品の配置を一部変更して、それに応じて信号等の通電経路も屈曲させる必要が生じる場合がある。これに対して、本実施形態のFPC1では、そのFPC1を予め設定された折り線Lで折り曲げた状態に良好に形状維持することができるので、そのような画像センサユニットに適用された場合にはその画像センサユニットの信頼性を向上させることができる。
【0015】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、接地パターンの網目は、矩形に限定されるものではなく、菱形や六角形,三角形等であってもよい。また、接地パターンは、次のように金属薄板に空隙部としての穴を開けただけの構成であってもよい。
【0016】
接地パターン7の変形例としての接地パターン57は、図3に示すように、ベース材3の裏面に積層された金属板(例えば銅板)をエッチングして多数の円形の空隙部57Aを形成したものである。空隙部57Aは、接地パターン57のほぼ全体に離散的に配置されているが、折り線Lの両端におけるベース材3の端縁部分ではその密度が低くされ、その部分が集中部59とされている。すなわち、集中部59では、他の部分よりも金属が集中し、その部分で金属が板状に構成されている。
【0017】
この場合も、集中部59を構成する金属薄板の材料的特性により、ベース材3の復元力に抗してFPC1を折り曲げられた状態に形状維持するのが容易になる。従って、このような接地パターン57及び集中部59を採用した場合も、接地パターン7及び集中部9を採用した場合と同様の作用・効果が生じる。
【符号の説明】
【0018】
1…FPC 3…可撓性絶縁ベース材 5…配線パターン
7,57…接地パターン 7A,57A…空隙部 9,59…集中部
L…折り線
図1
図2
図3