(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高圧カットアウト用ヒューズの経年劣化に伴う異常発熱を発見するには、停電してヒューズを取り出し、発熱の有無を確認する必要がある。従って、従来行っている保守点検時の外観点検のみでは、異常発熱を発見することができない。また、変圧器の取り替え等の停電工事の際には、ヒューズを取り出して発熱の有無を確認することが可能であるが、停電工事を行わない高圧カットアウトに対しては、発熱の有無を確認することができない。
【0006】
そこでこの発明は、停電を行うことなくヒューズの異常を発見することが可能な、高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断装置および劣化診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、高圧カットアウトのヒューズの劣化を診断する高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断装置であって、前記ヒューズ周辺の臭いの強度を測定する臭い測定手段と、前記臭い測定手段で測定された臭いの強度が、予め設定された基準強度以上の場合に、前記ヒューズに異常があると判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、臭い測定手段によってヒューズ周辺の臭いの強度が測定されると、判定手段によって、測定された臭いの強度が基準強度以上の場合に、ヒューズに異常(異常発熱等)があると判定される。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断装置において、前記ヒューズに接近可能で、前記ヒューズ周辺の臭いを前記臭い測定手段に導くガイド手段を備える、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断装置において、前記ヒューズ周辺の臭いを気流によって前記臭い測定手段側に導く気流発生手段を備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断装置において、棒状の測定竿の先端部に前記臭い測定手段が設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、高圧カットアウトのヒューズの劣化を診断する高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断方法であって、前記ヒューズ周辺の臭いの強度を測定し、測定した臭いの強度が、予め設定された基準強度以上の場合に、前記ヒューズに異常があると判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、5の発明によれば、ヒューズ周辺の臭いの強度が基準強度以上の場合に、ヒューズに異常があると判定する。すなわち、ヒューズが異常発熱等するとヒューズから強い臭いが発せられる、という事象に着目して、臭いに基づいてヒューズの異常の有無を判定するため、停電を行うことなくヒューズの異常を発見することが可能となる。しかも、ヒューズ周辺の臭いの強度が基準強度以上か否かだけで判定、診断を行うため、熟練を要せず誰でも適正かつ安定した診断結果を得ることができ、高圧カットアウトの診断・点検業務の効率化、高精度化が図れる。
【0014】
請求項2の発明によれば、ヒューズ周辺の臭いがガイド手段によって臭い測定手段に導かれるため、臭い測定手段で適正に臭いの強度を測定することができ、この結果、ヒューズの異常をより適正に発見することが可能となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、ヒューズ周辺の臭いが気流発生手段による気流によって臭い測定手段に導かれるため、臭い測定手段で適正に臭いの強度を測定することができ、この結果、ヒューズの異常をより適正に発見することが可能となる。
【0016】
請求項4の発明によれば、棒状の測定竿の先端部に臭い測定手段が設けられているため、高い位置に配設された高圧カットアウトなどに対しても、容易かつ安全にヒューズの異常を発見することが可能となる。すなわち、測定竿の基端部を持って臭い測定手段を診断対象の高圧カットアウトのヒューズに近づけ、臭い測定手段で臭いの強度を測定するだけで、地上などの安定した場所から容易かつ安全にヒューズの異常の有無を確認・点検することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係る高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断装置(以下、「劣化診断装置」という)1を示す斜視図であり、
図2は、劣化診断装置1の概略構成ブロック図である。この劣化診断装置1は、
図3に示すような筒型高圧カットアウト100のヒューズ101の劣化を診断する装置であり、主として、ニオイセンサ(臭い測定手段)2と、第1のメモリ(第1の記憶手段)31と、第2のメモリ(第2の記憶手段)32と、先端吸引体(ガイド手段)4と、吸気ファン(気流発生手段)5と、判定部(判定手段)6と、警報部(警報手段)7と、これらを制御などする中央処理部(CPU)10と、を備えている。
【0020】
ここで、筒型高圧カットアウト100は、
図3に示すように、上下が塞がれた円筒状のケース102内にヒューズ筒103が収容され、このヒューズ筒103内にヒューズ101が収納されている。また、ケース102の下板にはキャップ104が設けられ、キャップ104を外すと下板の挿入窓102aからヒューズ101が望めるようになっている。ここで、
図3中符号105は、高圧電線である。
【0021】
ニオイセンサ2は、ヒューズ101周辺の臭いの強度を測定するセンサである。すなわち、ニオイセンサ2の周辺の臭いの強さを測定し、その結果を強さのレベルまたは臭気指数(相当値)として出力するセンサであり、ニオイセンサ2を直接ヒューズ101に近づけたり、後述する先端吸引体4や吸気ファン5を設けることで、ヒューズ101周辺の臭いの強度を測定できるものである。
【0022】
ここで、臭いの強度を測定する手法・メカニズムについては、どのようなものであってもよいが、例えば、におい分子が半導体に吸着することで、半導体の電気伝導度が高くなり抵抗値が下がる、という事象を利用した手法などがある。ここで、この実施の形態では、ニオイセンサ2によって、臭いの強度として臭いの強さのレベルを出力するものとする。また、ニオイセンサ2による測定時間は、後述する判定部6による判定が適正に行えるように設定されている。すなわち、ニオイセンサ2による測定値が基準強度以上か否かの判定が、適正に行える時間長(十分に長い時間)に設定されている。
【0023】
このようなニオイセンサ2は、棒状の測定竿81の先端部81aに配設されている。すなわち、
図1に示すように、測定竿81の先端部81aには、立方体状のケーシング(筐体)82が配設され、このケーシング82内にニオイセンサ2が収納されている。また、測定竿81の長さは、高い位置にある筒型高圧カットアウト100などに対して、後述するようにして地上などから測定、診断できるように設定されている。さらに、測定竿81の基端部81bには、ニオイセンサ2を起動したり停止させたり、吸気ファン5を操作する操作スイッチ(図示せず)が設けられている。
【0024】
第1のメモリ31は、判定部6で判定する際の基準強度を記憶するメモリである。すなわち、後述するように判定部6は、ニオイセンサ2で測定された臭いの強度が、所定値以上か否かを判定するものであり、この判定基準となる基準強度が第1のメモリ31に記憶されている。ここで、この基準強度は、正常なヒューズ101の周辺の臭いの強度と、劣化して異常発熱したヒューズ101の周辺の臭いの強度とに基づいて設定、記憶されている。
【0025】
具体的には、正常なヒューズ101の周辺の臭いの強さのレベルを、経時的に測定したところ、
図4のレベルラインL1に示すように、時間の経過にかかわらず臭いの強さのレベルが2〜3程度であったとする。これに対して、劣化して異常発熱したヒューズ101の周辺の臭いの強さのレベルを、経時的に測定したところ、
図4のレベルラインL2に示すように、時間の経過に伴って上昇し、10分程度でレベルが10に達することが確認されたとする。この場合、基準強度・基準値が10に設定されて、第1のメモリ31に記憶されている。つまり、正常なヒューズ101と異常なヒューズ101とを、臭いの強さのレベルによって識別する閾値として、10が設定されて第1のメモリ31に記憶されている。
【0026】
第2のメモリ32は、ニオイセンサ2で測定された臭いの強度などを記憶するメモリである。すなわち、ニオイセンサ2による測定とその後に続く判定部6による判定が行われると、測定された臭いの強さのレベルと判定結果とが、診断対象の筒型高圧カットアウト100の識別情報や測定日時とともに、診断情報として第2のメモリ32に記憶されるようになっている。そして、第2のメモリ32に記憶された診断情報は、パーソナルコンピュータなどから読み出しできるようになっている。
【0027】
先端吸引体4は、ヒューズ101に接近可能で、ヒューズ101周辺の臭いをニオイセンサ2に導くものであり、電気絶縁材で構成されている。すなわち、管状の管部41と、筒状で有底の筒部42とを備え、管部41の一端部がケーシング82の上板に接続され、管部41の他端部に筒部42の底部が接続されている。また、筒部42の外形は、筒型高圧カットアウト100の挿入窓102aと同形状に形成され、
図3に示すように、挿入窓102aを覆うように筒部42を被せることで、ヒューズ101に接近可能となる。この状態で、ヒューズ101周辺の臭いが、挿入窓102aから筒部42内および管部41内を介してニオイセンサ2に導かれるようになっている。
【0028】
吸気ファン5は、ヒューズ101周辺の臭いを気流によってニオイセンサ2に導くものである。すなわち、先端吸引体4の管部41のケーシング82側の端部に配設され、筒部42側の空気を、管部41内を通してケーシング82内に吸気するファンである。そして、吸気ファン5による気流に乗ってヒューズ101周辺の臭いが、挿入窓102aを通過して筒部42内および管部41内を介してニオイセンサ2側に流れるようになっている。
【0029】
判定部6は、ニオイセンサ2で測定された臭いの強度が、予め設定された基準強度以上の場合に、ヒューズ101に異常があると判定するタスク・プログラムである。すなわち、ヒューズ101が異常発熱等するとヒューズ101から強い臭いが発せられる、という事象に着目して、ニオイセンサ2で測定した臭いの強度が基準強度以上か否かに基づいて、ヒューズ101の異常の有無を判定するものである。具体的には、上記のように、ニオイセンサ2によって所定時間測定した後に、臭いの強さのレベルが、第1のメモリ31に記憶された基準強度である10以上の場合に、ヒューズ101に異常があると判定する。
【0030】
このようなメモリ31、32と判定部6と中央処理部10は、ケーシング82内に収納されている。
【0031】
警報部7は、判定部6による判定結果などを通知するものであり、ブザー71とディスプレイ72から構成されている。すなわち、判定部6によって、ヒューズ101に異常があると判定された場合に、ブザー71から警報音を発し、異常がないと判定された場合には、ブザー71から測定完了音を発する。また、ニオイセンサ2による測定値と判定部6による判定結果(異常の有無)とをディスプレイ72に表示するものである。このような警報部7は、
図1に示すように、ケーシング82の表面部に設けられている。
【0032】
次に、このような構成の劣化診断装置1の作用および劣化診断装置1による高圧カットアウト用ヒューズ劣化診断方法(以下、「劣化診断方法」という)について説明する。ここで、事前に記憶ステップとして、上記のように、判定部6で判定する際の基準強度が、第1のメモリ31に記憶されているものとする。
【0033】
診断を行うには、まず、ニオイセンサ2でヒューズ101周辺の臭いの強度を測定する(測定ステップ)。具体的には、筒型高圧カットアウト100のキャップ104を外し、作業員が測定竿81の基端部81bを持って、
図3に示すように、挿入窓102aを覆うように筒部42を被せる。この状態で、作業員が測定竿81のスイッチを起動操作して、ニオイセンサ2や吸気ファン5を起動させてニオイセンサ2による測定を行う。このとき、吸気ファン5による気流に乗ってヒューズ101周辺の臭いが、挿入窓102aを通過して筒部42内および管部41内を介してニオイセンサ2側に流れ、ニオイセンサ2によってヒューズ101周辺の臭いの強さのレベルが測定される。
【0034】
次に、ニオイセンサ2による測定が完了すると判定部6が起動され、上記のようにして、測定した臭いの強度が予め設定された基準強度以上か否かが判定される(判定ステップ)。そして、基準強度以上の場合にはヒューズ101に異常があると判定され、ブザー71から警報音が発せられ、異常がないと判定された場合には、ブザー71から測定完了音が発せられる。これと同時に、ニオイセンサ2による測定値と判定部6による判定結果とが、ディスプレイ72に表示される。また、ニオイセンサ2による測定値や判定部6による判定結果(ヒューズ101の異常の有無)などは、診断情報として第2のメモリ32に記憶される。このような診断を診断対象の各筒型高圧カットアウト100に対して行うものである。
【0035】
以上のように、本劣化診断装置1および本劣化診断方法によれば、ヒューズ101周辺の臭いの強度が基準強度以上の場合に、ヒューズ101に異常があると判定する。すなわち、ヒューズ101が異常発熱等するとヒューズ101から強い臭いが発せられる、という事象に着目して、臭いに基づいてヒューズ101の異常の有無を判定するため、停電を行うことなくヒューズ101の異常を発見することが可能となる。しかも、ヒューズ101周辺の臭いの強度が基準強度以上か否かだけで判定、診断を行うため、熟練を要せず誰でも適正かつ安定した診断結果を得ることができ、筒型高圧カットアウト100の診断・点検業務の効率化、高精度化が図れる。
【0036】
また、ヒューズ101周辺の臭いが先端吸引体4によってニオイセンサ2に導かれるため、ニオイセンサ2で適正に臭いの強度を測定することができる。しかも、ヒューズ101周辺の臭いが吸気ファン5による気流に乗ってニオイセンサ2側に流れるため、ニオイセンサ2でより適正に臭いの強度を測定することができる。この結果、ヒューズ101の異常をより適正に発見することが可能となる。
【0037】
一方、棒状の測定竿81の先端部81aにニオイセンサ2が設けられているため、高い位置に配設された筒型高圧カットアウト100などに対しても、電柱に登ったりすることなく、容易かつ安全にヒューズ101の異常を発見することが可能となる。すなわち、測定竿81の基端部81bを持ってニオイセンサ2を筒型高圧カットアウト100のヒューズ101に近づけ、ニオイセンサ2で臭いの強度を測定するだけで、地上などの安定した場所から容易かつ安全にヒューズ101の異常の有無を確認・点検することが可能となる。
【0038】
(実施の形態2)
図5は、この実施の形態に係る劣化診断装置11を示す斜視図である。この実施の形態では、
図6に示すような箱型高圧カットアウト200を診断対象とし、先端吸引体9が実施の形態1と異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0039】
ここで、箱型高圧カットアウト200は、立方体状の箱型ケース202内にヒューズ筒203が収容され、このヒューズ筒203内にヒューズ201が収納されている。また、箱型ケース202の下端は開放されて開口202aが設けられ、この開口202aを開閉自在に塞ぐゴム蓋204が設けられている。そして、ゴム蓋204を開けると開口202aからヒューズ201が望めるようになっている。ここで、
図6中符号205は、高圧電線である。
【0040】
先端吸引体9は、ヒューズ201に接近可能で、ヒューズ201周辺の臭いをニオイセンサ2に導くものであり、電気絶縁材で構成されている。すなわち、管状の管部91と、薄い角筒状で有底の筒部92とを備え、管部91の一端部がケーシング82の上板に接続され、管部91の他端部に筒部92の側部が接続されている。また、筒部92の外形は、箱型高圧カットアウト200の開口202aと同形状に形成され、
図6に示すように、開口202aを覆うように筒部92を被せることで、ヒューズ201に接近可能となる。この状態で、ヒューズ201周辺の臭いが、開口202aから筒部92内および管部91内を介してニオイセンサ2に導かれるようになっている。
【0041】
この実施の形態によれば、箱型ケース202の下端とゴム蓋204との間に、先端吸引体9の筒部92を挿入して、開口202aを塞ぐように筒部92を位置させる。これにより、ヒューズ201周辺の臭いが先端吸引体9によってニオイセンサ2に導かれるため、ニオイセンサ2で適正に臭いの強度を測定することができる。この結果、実施の形態1と同様に、ヒューズ101の異常をより適正に発見することが可能となる。
【0042】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、判定部6における基準強度を固定値としているが、第1のメモリ31に複数の基準強度を記憶し、診断対象の高圧カットアウト100、200の種類や管理基準、点検基準などに応じて基準強度を選択できるようにしてもよい。また、先端吸引体4、9を着脱自在とし、筒型高圧カットアウト100か箱型高圧カットアウト200かに応じて先端吸引体4、9を取り替えるようにしてもよい。