(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233079
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電極の製造方法及び活物質合剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20171113BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20171113BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20171113BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20171113BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20171113BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20171113BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20171113BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20171113BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
H01G11/86
H01G13/00 381
B05C5/02
B05C11/10
B05D3/12 E
B05D7/14 G
B05D1/28
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-22591(P2014-22591)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-149236(P2015-149236A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 庄太
【審査官】
佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−215688(JP,A)
【文献】
特開平11−317220(JP,A)
【文献】
特開平8−96802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/139
H01G 11/86
H01G 13/00
B05C 5/02
B05C 11/10
B05D 1/28
B05D 3/12
B05D 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の少なくとも一方の面に活物質層が形成された電極の製造方法であって、
帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する塗布工程において、前記帯状の金属箔の全幅より長さの長いバックアップロール又はコーティングロールを用いて活物質合剤供給部から前記活物質合剤を前記帯状の金属箔の全幅以上の範囲にわたって塗布し、前記活物質合剤供給部から塗布された前記活物質合剤のうち前記金属箔からはみ出して前記バックアップロール又は前記コーティングロールに付着した前記活物質合剤を除去し、
前記帯状の金属箔の一方の面に前記活物質合剤が塗布された後の前記金属箔が乾燥工程に送り込まれる前に、前記金属箔の他方の面に付着した前記活物質合剤を除去する不要物除去工程を備えていることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項2】
前記活物質合剤は前記帯状の金属箔の長手方向において間欠的に塗布される請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記電極は積層型の電極組立体用の電極である請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する活物質合剤塗布装置であって、
前記活物質合剤を供給する活物質合剤供給部と、前記帯状の金属箔の全幅より長い長さを有し前記活物質合剤供給部と共同して前記帯状の金属箔の少なくとも一面に前記活物質合剤を塗布するバックアップロール又はコーティングロールと、前記活物質合剤供給部から供給された前記活物質合剤のうち前記金属箔からはみ出して前記バックアップロール又は前記コーティングロールに付着した前記活物質合剤を除去するスキージとを備え、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の塗布工程を実施可能な活物質合剤塗布装置。
【請求項5】
金属箔の両面に活物質層が形成された電極の製造方法であって、
帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する塗布工程において、前記帯状の金属箔の全幅より長さの長い一対のコーティングロールに活物質合剤供給部から前記活物質合剤を前記帯状の金属箔の全幅以上の範囲にわたって塗布し、前記一対のコーティングロール間に前記帯状の金属箔を挿通させ、前記活物質合剤を前記金属箔に転写し、一対のコーティングロール上に塗布された前記活物質合剤のうち前記金属箔上に転写されず前記コーティングロール上に付着した前記活物質合剤を除去することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項6】
帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する活物質合剤塗布装置であって、
前記活物質合剤を供給する活物質合剤供給部と、
前記帯状の金属箔の全幅より長い長さを有し、前記活物質合剤供給部により前記帯状の金属箔の全幅以上の範囲にわたって塗布された前記活物質合剤を前記帯状の金属箔の両面に転写する一対のコーティングロールと、
前記一対のコーティングロールに供給された前記活物質合剤のうち前記金属箔に転写されずに前記コーティングロールに付着した前記活物質合剤を除去するスキージとを備える活物質合剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法及び活物質合剤塗布装置に係り、詳しくは帯状の金属箔の少なくとも一方の面に活物質層が形成された電極の製造方法及び活物質合剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は、金属箔に活物質を含有するスラリー状又はペースト状の活物質合剤が塗布されて形成された活物質層を有する正極及び負極が、間にセパレータが存在する状態で層をなすように積層あるいは巻回された電極組立体を備えている。
【0003】
電極の製造工程では、上記活物質合剤を帯状の金属箔に塗布する塗布工程が行われた後、乾燥工程により溶剤の大半を揮発により除去した後、活物質層の密度を高めるためにロールプレスを行い、活物質層が形成される。さらに、必要に応じ活物質層内に残った溶剤を除去するために乾燥工程を行った後、帯状の電極を所定形状にカットする。
【0004】
電極の製造方法として、集電体(金属箔)の幅よりもやや内側に活物質塗工液を塗布、乾燥して活物質層を形成した後、トリミングと呼ばれる工程で未塗工部を切り落とし、全面に活物質層が形成された原反を作製する。その後、原反の長手方向に沿って活物質を除去して非塗工部を形成し、電極板の側縁部に集電体が帯状に露出した電極を作成する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、従来、積層型電極組立体用の電極の製造は、先ず、
図7(a)に示すように、帯状の金属箔61に対してその長手方向に所定間隔をおいて間欠的に、かつ金属箔61の幅方向両側に非塗布部62が存在する状態で活物質合剤塗布層63を形成する。次にプレスのときに皺が入らないように、
図7(b)に示すように、スリット64を形成し、
図7(c)に示すように、金属箔61の幅方向の両端部を削除した後、金属箔61のプレスを行い、活物質層65を形成する。そして、プレス後、
図7(d)に示すように、金属箔61の幅方向両側にスリット64を形成して、両端を除去する。また、2条取りの場合は、金属箔61の幅方向中央にスリット64を形成して金属箔61を2分割して電極用基材を得る。そして、各電極用基材から打ち抜きなどにより積層型電極組立体用の電極を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−331674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電極の製造方法では、帯状の金属箔(集電体)の幅方向の両側に活物質合剤の非塗布部を形成した後、非塗布部に沿って金属箔を切断除去するため、材料、特に金属箔の歩留まりが悪化する。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、電極の材料のロスを低減することができる電極の製造方法及び活物質合剤塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する電極の製造方法は、金属箔の少なくとも一方の面に活物質層が形成された電極の製造方法であって、帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する塗布工程において、前記帯状の金属箔の全幅より長さの長いバックアップロール又はコーティングロールを用いて活物質合剤供給部から前記活物質合剤を前記帯状の金属箔の全幅以上の範囲にわたって塗布し、前記活物質合剤供給部から塗布された前記活物質合剤のうち前記金属箔からはみ出して前記バックアップロール又は前記コーティングロールに付着した前記活物質合剤を除去
し、前記帯状の金属箔の一方の面に前記活物質合剤が塗布された後の前記金属箔が乾燥工程に送り込まれる前に、前記金属箔の他方の面に付着した前記活物質合剤を除去する不要物除去工程を備えている。
【0010】
この構成によれば、帯状の金属箔の少なくとも一方の面に対してその全幅以上の範囲にわたって活物質合剤供給部から活物質合剤が塗布される。帯状の金属箔からはみ出した活物質合剤は、バックアップロール又はコーティングロールに付着する。そして、バックアップロール又はコーティングロールに付着した活物質合剤は、除去される。そのため、金属箔上に塗布された活物質合剤の幅方向における厚さムラが、活物質合剤を金属箔からはみ出さないように塗布する場合に比べて小さくなる。また、活物質合剤が帯状の金属箔には全幅以上の範囲にわたって塗布されるため、従来と異なりトリミングにより金属箔の幅方向の両端部を除去する必要が無く、電極の材料のロスを低減することができる。
【0012】
帯状の金属箔からはみ出してバックアップロール又はコーティングロールに付着した活物質合剤は、除去されるが、除去することができなかったカスが金属箔の他方の面に付着する場合がある。しかし、金属箔の他方の面に付着したカスは、金属箔が乾燥工程に送り込まれる前に、不要物除去工程により除去される。カスが他方の面に付着したまま乾燥工程で乾燥されると、カスを金属箔から除去し難くなるが、乾燥工程に送り込まれる前に不要物の除去が行われるため、容易に除去を行うことができる。
【0013】
前記活物質合剤は前記帯状の金属箔の長手方向において間欠的に塗布されることが好ましい。活物質合剤が帯状の金属箔の幅方向全面に塗布されるため、活物質合剤が両面に塗布された場合、電極のタブを形成するためには活物質層の一部を除去する必要がある。しかし、活物質合剤が間欠的に塗布された場合は、活物質合剤が塗布されていない活物質合剤非塗布部でタブを形成することができる。
【0014】
前記電極は積層型の電極組立体用の電極であることが好ましい。積層型の電極組立体用の電極は、巻回型の電極組立体用の電極に比べて長さが短いため、活物質合剤を間欠塗布しない場合には、帯状の金属箔に形成された活物質層の一部を除去して電極のタブを形成する作業が多く必要になる。しかし、活物質合剤が間欠的に塗布されていれば、その作業を行う必要がない。
【0015】
上記課題を解決する活物質合剤塗布装置は、帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する活物質合剤塗布装置であって、前記活物質合剤を供給する活物質合剤供給部と、前記帯状の金属箔の全幅より長い長さを有し前記活物質合剤供給部と共同して前記帯状の金属箔の少なくとも一面に前記活物質合剤を塗布するバックアップロール又はコーティングロールと、前記活物質合剤供給部から供給された前記活物質合剤のうち前記金属箔からはみ出して前記バックアップロール又は前記コーティングロールに付着した前記活物質合剤を除去するスキージとを備え、請求項1〜請求項
3のいずれか一項に記載の塗布工程を実施可能に構成されている。したがって、この構成によれば、前述の電極の製造方法における活物質合剤を塗布する塗布工程を実施することができる。
上記課題を解決する電極の製造方法は、金属箔の両面に活物質層が形成された電極の製造方法であって、帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する塗布工程において、前記帯状の金属箔の全幅より長さの長い一対のコーティングロールに活物質合剤供給部から前記活物質合剤を前記帯状の金属箔の全幅以上の範囲にわたって塗布し、前記一対のコーティングロール間に前記帯状の金属箔を挿通させ、前記活物質合剤を前記金属箔に転写し、一対のコーティングロール上に塗布された前記活物質合剤のうち前記金属箔上に転写されず前記コーティングロール上に付着した前記活物質合剤を除去する。
上記課題を解決する活物質合剤塗布装置は、帯状の金属箔をその長手方向へ移動させながら活物質合剤を塗布する活物質合剤塗布装置であって、前記活物質合剤を供給する活物質合剤供給部と、前記帯状の金属箔の全幅より長い長さを有し、前記活物質合剤供給部により前記帯状の金属箔の全幅以上の範囲にわたって塗布された前記活物質合剤を前記帯状の金属箔の両面に転写する一対のコーティングロールと、前記一対のコーティングロールに供給された前記活物質合剤のうち前記金属箔に転写されずに前記コーティングロールに付着した前記活物質合剤を除去するスキージとを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極の材料のロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態における活物質合剤塗布装置の模式側面図。
【
図3】(a)は活物質層が形成された帯状の金属箔の部分平面図、(b)は帯状の電極基材からの積層用電極の打ち抜き位置を示す模式図。
【
図4】第2の実施形態における塗布装置の模式側面図。
【
図6】別の実施形態における塗布装置の部分側面図。
【
図7】(a)〜(d)は従来技術を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明を蓄電装置を構成する積層型の電極組立体用の電極の製造方法に具体化した第1の実施形態を
図1〜
図3にしたがって説明する。
【0019】
図1に示すように、活物質合剤塗布装置10は、活物質合剤供給部11と、バックアップロール12と、スキージ13とを備えている。活物質合剤塗布装置10は、供給リール20から繰り出される帯状の金属箔21の一方の面に、活物質合剤供給部11で活物質合剤Sを供給し、活物質合剤Sが塗布された金属箔21を乾燥装置23で乾燥させ、巻取リール26に巻き取る。なお、供給リール20とバックアップロール12との間、及び乾燥装置23と巻取リール26との間にはダンサーロール27が設けられ、ダンサーロール27は、移動する金属箔21の張力を調節して、金属箔21の弛みを防止する。また、バックアップロール12と乾燥装置23との間にはガイドロール28が設けられている。
【0020】
活物質合剤供給部11を構成するスリットダイ14は、スラリー状の活物質合剤Sが貯留されるマニホールド15と、マニホールド15に貯留される活物質合剤Sが吐出される吐出口16とを備えている。吐出口16は、バックアップロール12の外周面に沿って移動する金属箔21に対して離間した状態でバックアップロール12と対向配置されている。吐出口16は、金属箔21の全幅より長い開口長さを有している。スリットダイ14は、図示しないポンプに配管を介して接続され、ポンプの駆動及び配管に設けられたバルブの制御により、活物質合剤Sが定量供給されるとともに吐出口16から間欠的に所定量ずつ吐出されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、バックアップロール12は、金属箔21の全幅より長い長さを有し、スリットダイ14から吐出されて金属箔21の幅方向の両端からはみ出した活物質合剤Sは、バックアップロール12に付着するようになっている。
【0022】
スキージ13は、金属箔21からはみ出してバックアップロール12に付着した活物質合剤Sをバックアップロール12からかき取る。
ガイドロール28と乾燥装置23との間における金属箔21の移動経路には、金属箔21の他方の面(裏面)に付着した不要物(カス)を除去する不要物除去装置30が設けられている。不要物除去装置30は、活物質合剤供給部から供給されて金属箔21に塗布された活物質合剤Sのうち金属箔21からはみ出してバックアップロール12に付着した後、スキージ13により除去しきれずにバックアップロール12に残り、バックアップロール12の回転によって金属箔21の他方の面に付着した不要物(カス)を除去する。不要物除去装置30は、金属箔21の移動に逆らう方向に回転するブラシ31と、ブラシ31により金属箔21から除去された不要物を吸引除去する図示しない吸引手段とを備えている。
【0023】
次に前記のように構成された装置を使用した電極の製造方法を説明する。
電極の製造方法は、金属箔21の少なくとも一方の面に活物質層が形成された電極の製造方法であって、帯状の金属箔21をその長手方向へ移動させながら活物質合剤Sを塗布する塗布工程が従来と異なり、その他の工程は従来と同様であるため、従来と異なる塗布工程について主に説明する。
【0024】
図1に示すように、塗布工程では、活物質合剤Sの塗布されていない帯状の金属箔21が供給リール20から繰り出され、ダンサーロール27を経てバックアップロール12の表面に沿って移動し、ガイドロール28を経て乾燥装置23に至り、乾燥装置23を通過後、ダンサーロール27を経て巻取リール26に巻き取られる。金属箔21がバックアップロール12に沿って移動する際、活物質合剤供給部11のスリットダイ14の吐出口16から活物質合剤Sが間欠的に吐出され、
図3(a)に示すように、金属箔21の一方の面に対して活物質合剤Sが間欠的に塗布される。活物質合剤Sは、その塗布領域の間の活物質合剤非塗布部42の大きさが、積層型の電極組立体用の電極のタブを形成可能な大きさに設定されている。
【0025】
活物質合剤Sが塗布された金属箔21は、ガイドロール28、不要物除去装置30を経て乾燥装置23へ導入され、乾燥工程を構成する乾燥装置23である程度乾燥され、活物質層22が形成された後、巻取リール26に巻き取られる。
【0026】
スリットダイ14の吐出口16は、金属箔21の全幅より長い開口長さを有しており、バックアップロール12も金属箔21の全幅より長い長さを有している。そのため、吐出口16から吐出され、金属箔21からはみ出した活物質合剤Sは、
図1及び
図2に示すように、バックアップロール12に付着し、付着した活物質合剤Sの大部分はスキージ13によってバックアップロール12からかき取り除去される。
【0027】
しかし、バックアップロール12に付着した活物質合剤Sの一部はスキージ13によってかき取られずに、バックアップロール12に接触しつつ移動する金属箔21の他方の面に付着して不要物となる場合もある。不要物は、金属箔21が不要物除去工程を構成する不要物除去装置30と対応する位置を通過する際に不要物除去装置30によって金属箔21から除去され、金属箔21は不要物が除去された後、乾燥装置23で乾燥され、活物質層22が形成された状態で巻取リール26に巻き取られる。
【0028】
次に、一方の面に活物質層22が形成された金属箔21を巻き取った巻取リール26を活物質合剤塗布装置10の供給リール20として使用して、金属箔21の他方の面に、前述と同様にして活物質合剤Sを塗布する。詳述すると、一方の面に活物質層22が形成された金属箔21が供給リール20から繰り出され、金属箔21がスリットダイ14及びバックアップロール12の間を通過する間に、金属箔21の他方の面の全幅にわたって、金属箔21の長手方向において所定間隔で間欠的に活物質合剤Sが塗布される。そして、金属箔21の両面に活物質層22が間欠的に形成された帯状の電極基材が得られる。
【0029】
なお、電極基材を2条取りで形成する場合は、金属箔21は乾燥装置23を通過後、ダンサーロール27に至るまでの間において、図示しない切断装置により幅方向中央部の位置で長手方向に沿って切断されて2枚の電極基材となり、それぞれ異なる巻取リール26に巻き取られて、金属箔21の両面に活物質層22が形成された2枚の電極基材が完成する。
【0030】
次に、
図3(b)に示すように、活物質層22が両面に形成された帯状の電極基材40から積層型の電極組立体用の電極41を、二点鎖線で示すように、活物質合剤非塗布部42においてタブ41aが電極基材40の長手方向に沿って延びる形状に打ち抜いて形成する。活物質合剤Sが帯状の金属箔21の幅方向全面に塗布されるため、活物質合剤Sが両面に塗布された場合、電極41のタブ41aを形成するためには活物質層の一部を除去する必要がある。しかし、活物質合剤Sが間欠的に塗布されているため、活物質合剤非塗布部42でタブ41aを形成することができる。
【0031】
なお、蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合、正極用の金属箔21にはアルミニウム箔あるいはアルミニウム合金箔が使用され、負極用の金属箔21には銅箔が使用される。また、正極用の金属箔21には正極用の活物質を含む活物質合剤Sが塗布され、負極用の金属箔21には負極用の活物質を含む活物質合剤Sが塗布される。そして、正極用及び負極用の電極41がセパレータを介して積層されて積層型電極組立体が形成され、蓄電装置に使用される。
【0032】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)金属箔21の少なくとも一方の面に活物質層22が形成された電極の製造方法は、帯状の金属箔21をその長手方向へ移動させながら活物質合剤Sを塗布する塗布工程において、金属箔21の全幅より長さの長いバックアップロール12を用いて活物質合剤供給部11から活物質合剤Sを帯状の金属箔21の全幅以上の範囲にわたって塗布する。活物質合剤供給部11から塗布された活物質合剤Sのうち金属箔21からはみ出してバックアップロール12に付着した活物質合剤Sを除去する。金属箔21の両面に活物質層22を形成する場合は、一方の面に活物質層22が形成された金属箔21に対して他方の面に同様にして活物質層22を形成する。したがって、電極41を製造する際に、電極の材料のロスを低減することができる。
【0033】
(2)帯状の金属箔21の一方の面に活物質合剤Sが塗布された後の金属箔21が乾燥工程に送り込まれる前に、金属箔21の他方の面に付着した活物質合剤を除去する不要物除去工程を備えている。この構成によれば、帯状の金属箔21からはみ出してバックアップロール12に付着した活物質合剤Sは、除去されるが、除去することができなかったカス(不要物)が金属箔21の他方の面に付着する場合がある。しかし、金属箔21の他方の面に付着したカスは、金属箔21が乾燥工程に送り込まれる前に、不要物除去工程により除去される。カスが他方の面に付着したまま乾燥工程で乾燥されると、カスを金属箔21から除去し難くなるが、乾燥工程に送り込まれる前にカスの除去が行われるため、容易に除去を行うことができる。
【0034】
(3)活物質合剤Sは帯状の金属箔21の長手方向において間欠的に塗布される。活物質合剤Sが帯状の金属箔21の幅方向全面に塗布されるため、活物質合剤Sが両面に塗布された場合、電極41のタブ41aを形成するためには活物質層22の一部を除去する必要がある。しかし、活物質合剤Sが間欠的に塗布された場合は、活物質合剤非塗布部42でタブ41aを形成することができ、タブ41aを形成するために活物質層22の一部を除去する必要がない。
【0035】
(4)電極は積層型の電極組立体用の電極41である。積層型の電極組立体用の電極41は、巻回型の電極組立体用の電極に比べて長さが短いため、活物質合剤Sを間欠塗布しない場合には、帯状の金属箔21に形成された活物質層22の一部を除去して電極41のタブ41aを形成する作業が多く必要になる。しかし、活物質合剤Sが間欠的に塗布されていれば、その作業を行う必要がない。
【0036】
(5)活物質合剤塗布装置10は、帯状の金属箔21をその長手方向へ移動させながら活物質合剤Sを塗布する塗布装置である。そして、活物質合剤Sを供給する活物質合剤供給部11と、金属箔21の全幅より長い長さを有し活物質合剤供給部11と共同して金属箔21の少なくとも一面に活物質合剤Sを塗布するバックアップロール12と、活物質合剤供給部11から供給された活物質合剤Sのうち金属箔21からはみ出してバックアップロール12に付着した活物質合剤Sを除去するスキージ13とを備える。そのため、(1)に記載の塗布工程を実施可能となり、電極41を製造する際に、電極の材料のロスを低減することができる。
【0037】
(6)活物質合剤塗布装置10は、ガイドロール28と乾燥装置23との間における金属箔21の移動経路に、金属箔21の他方の面(裏面)に付着した不要物(カス)を除去する不要物除去装置30が設けられている。そのため、(2)に記載の効果が得られる。
【0038】
(7)活物質合剤塗布装置10が複数(この実施形態では2台)設けられているため、不要物が金属箔21に残る虞が小さくなる。
(8)活物質合剤塗布装置10は、活物質合剤Sを帯状の金属箔21の長手方向において間欠的に塗布するように構成されている。そのため、(3)に記載の効果が得られる。
【0039】
(9)活物質合剤塗布装置10は、活物質合剤非塗布部42の大きさが、積層型の電極組立体用の電極41のタブ41aを形成可能となるように活物質合剤Sを帯状の金属箔21の長手方向において間欠的に塗布する。そのため、(4)に記載の効果が得られる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を
図4にしたがって説明する。この実施形態では、金属箔21の両面に同時に活物質合剤Sを塗布する点が前記第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、活物質合剤塗布装置10は、活物質合剤供給部11としてスリットダイ14と、コーティングロール(転写ロール)17とを用いて活物質合剤Sの塗布を行う。スリットダイ14及びコーティングロール17は2組設けられ、各スリットダイ14及びコーティングロール17の組みは、金属箔21が下から上方へ向かって垂直に移動する経路において、金属箔21を挟んで対称に配置されている。コーティングロール17の上方には乾燥装置23が上下方向に延びる状態で設けられている。金属箔21は、両コーティングロール17の下方に設けられたガイドロール28と、乾燥装置23の上方に設けられたガイドロール28とに案内されて、両コーティングロール17の間を垂直に移動するようになっている。なお、供給リール20、巻取リール26、ダンサーロール27の図示を省略している。
【0042】
この実施形態では、各スリットダイ14から間欠的にコーティングロール17上に吐出された活物質合剤Sは、金属箔21がガイドロール28に案内されて両コーティングロール17の間を下から上に向かって移動する間に、コーティングロール17上から金属箔21上に転写される。コーティングロール17は、金属箔21の移動方向と対向する方向に回転されるため、コーティングロール17が金属箔21の移動方向と同方向に回転される場合に比べてコーティングロール17上から金属箔21上への活物質合剤Sの転写が円滑に行われる。
【0043】
また、金属箔21の全幅より外側の範囲においてコーティングロール17上に吐出され、金属箔21上に転写されずにコーティングロール17上に残った活物質合剤Sは、スキージ13によりコーティングロール17上からかき取られる。コーティングロール17上からかき取られずにコーティングロール17上に残った活物質合剤Sがコーティングロール17上から金属箔21の活物質合剤Sの塗布範囲に付着する場合がある。しかし、第1の実施形態の場合と異なり、コーティングロール17上に残った活物質合剤Sが乾燥装置23で乾燥される前に、その活物質合剤S上にスリットダイ14から吐出される活物質合剤Sが塗布される。そのため、第1の実施形態の場合と異なり、スキージ13によりコーティングロール17上からかき取られずに残った活物質合剤Sが金属箔21に付着しても、その活物質合剤Sを不要物除去装置30で除去しなくても支障はない。
【0044】
この実施形態では、第1の実施形態の(1),(3),(4),(8),(9)と同様な効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(10)金属箔21の両面に同時に活物質合剤Sの塗布が行われるため、片面ずつ2回で塗布する構成に比べて塗布に要する時間が短縮される。
【0045】
(11)不要物除去装置30を設けなくても支障がない。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 金属箔21の両面に活物質合剤Sが塗布された電極は、積層型の電極組立体用の電極41に限らず、巻回型の電極組立体用の電極であってもよい。例えば、
図5に示すように、帯状電極45の長手方向の一端に活物質合剤非塗布部42を有する構成とし、活物質合剤非塗布部42をタブとして使用してもよい。この帯状電極45は比較的小型の二次電池に使用される。
【0046】
○ 電極は、金属箔21の少なくとも一方の面に活物質層22が形成された構成であればよく、金属箔21の一方の面にのみ活物質層22が形成されたものであってもよい。この場合、電極のタブを活物質合剤Sが塗布される金属箔21の一部で形成せずに、金属箔21と別に形成されたタブを金属箔21に溶接で溶着して形成することができる。そのため、巻回型の電極組立体用の電極として、電極の幅方向の一端に沿って延びるタブを有する電極を形成する場合、金属箔21の一方の面にのみ活物質層22が形成された長尺の電極基材を所定の長さに切断し、別に形成されたタブを金属箔21に溶着して形成することができる。
【0047】
○ 活物質合剤供給部11は、スリットダイ14を備えた構成に限らない。例えば、
図6に示すように、活物質合剤供給部11は、スラリー状の活物質合剤Sを貯留するためのタンク18と、コーティングロール17と、金属箔21上に塗布される活物質合剤Sの厚さ(量)を調節するコンマロール19と、金属箔21を移送するバックアップロール12とを備えた構成であってもよい。バックアップロール12は、コーティングロール17の前方近傍に配設され、コーティングロール17及びバックアップロール12の間を通過する金属箔21をコーティングロール17に接触させる接触位置(
図6に示す位置)と、金属箔21をコーティングロール17から離間させる離間位置とに移動手段(図示せず)によって移動配置されるようになっている。
【0048】
○ 不要物除去装置30は、ブラシ31のみあるいは吸引手段のみで構成したり、ブラシ31のみで構成された不要物除去装置と、吸引手段のみで構成された不要物除去装置とを金属箔21の移動経路に沿って設けたりしてもよい。
【0049】
○ 不要物除去装置30は、複数台に限らず1台であってもよい。
○ 1枚の帯状の金属箔21から2枚ではなく、3枚以上の複数枚の帯状の電極基材40を形成してもよい。
【0050】
○ 二次電池は、リチウムイオン二次電池に限らず、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等の他の二次電池であってもよい。
○ 蓄電装置は、二次電池に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
S…活物質合剤、10…活物質合剤塗布装置、11…活物質合剤供給部、12…バックアップロール、13…スキージ、17…コーティングロール、21…金属箔、22…活物質層、41…電極。