(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シフトレバーの操作ポジションとして、ドライブモードを選択するためのDポジションと、ブレーキモードを選択するためのBポジションとが隣接して設けられた車両の制御装置であって、
前記シフトレバーのDポジションからBポジションへの操作回数が多いほど運転者の要求減速度レベルが高いと判定する要求減速度レベル判定手段と、
該要求減速度レベル判定手段で判定した要求減速度レベルが高いほど減速比が大きくなるように変速機の減速比増大制御を行う減速比制御手段と、
該減速比制御手段による減速比増大制御を許可するか否かを判定する減速許可判定手段とを有し、
前記減速許可判定手段は、前記要求減速度レベルが最低のレベル1のときは、レベル2以上のときに比べて、前記減速比制御手段による減速比増大制御を許可するか否かの減速許可条件を厳しくし、
前記減速比制御手段は、前記減速許可判定手段が減速比増大制御を許可したときに、前記要求減速度レベル判定手段で判定した要求減速度レベルに応じた減速比増大制御を行うことを特徴とする
車両の制御装置。
前記減速許可判定手段は、前記要求減速度レベルがレベル1のとき、前記減速比制御手段による減速比増大制御によって所定以上のブレーキ力が発生すると推定される場合に該減速比増大制御を禁止することにより、減速許可条件を厳しくすることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に記載された発明では、前述のように、シフトレバーXをBポジションに操作したときに得られるエンジンブレーキの大きさはそのときの運転状態によって決まるので、運転者が任意にその大きさを選択することができず、要求した車両減速度が実現されないことがある。
【0007】
これに対し、特許文献2に記載された発明によれば、シフトレバーX’をBポジションに操作した上で、さらにプラスポジションまたはマイナスポジションに操作することによってエンジンブレーキレベルの選択が可能であるから、運転者の要求に応じた車両減速度もしくはこれに近い減速度が得られる。
【0008】
しかし、特許文献2に記載された発明は、シフトレバーX’のBポジションへの操作を検出するスイッチに加え、プラスポジションへの操作を検出するスイッチとマイナスポジションへの操作を検出するスイッチとが余分に必要となり、構造の複雑化や部品点数の増大を招くと共に、Bポジションの両側にプラスポジションとマイナスポジションとを設けるので、ブレーキモードのためのシフトレバーX’の操作領域が拡大し、該シフトレバー周辺のデザインやレイアウトの自由度が制約されるおそれがある。
【0009】
そこで、特許文献2に記載の発明の上記のような課題に対し、Dポジション、Bポジション間の操作回数を検出し、その回数によって運転者の要求減速度レベルを判定する方法が考えられる。
【0010】
つまり、Dポジションでの走行中に、Bポジションへの操作(以下、この操作を「D→B操作」という)が行われたときに、要求減速度レベルをレベル1と判定し、その後、連続的に、または、Bポジションでの走行をしばらく行った後、Bポジションから一旦Dポジションに戻した上で再びBポジションに移動させる操作(以下、この操作を「B→D→B操作」という)が行われたときには、要求減速度レベルをレベル2と判定し、以下、このB→D→B操作を繰り返すごとに要求減速度レベルの判定値を高くし、例えば自動変速機を搭載した車両の場合、レベルが高くなるほど変速段を低変速段側に切り換えるという方法である。
【0011】
これによれば、新たなスイッチを追加することによる構造の複雑化や部品点数の増大、ブレーキモードのためのシフトレバー操作領域の拡大等を抑制しながら、運転者の要求に応じた車両減速度を実現することが可能となる。
【0012】
ところで、前記方法の場合、DポジションとBポジションとの間でシフトレバーを操作するとき、特に高レベルの減速度を要求するために両ポジション間でシフトレバーを短時間の間に連続的に操作するときに、該シフトレバーの良好な操作性を実現するためには、隣接するDポジション、Bポジション間のシフトレバーの操作力を軽く設定しておくことが要求される。
【0013】
しかし、Dポジション、Bポジション間のシフトレバーの操作力が軽いと、運転者や助手席の乗員がドライブモードでの走行中にシフトレバーに触れたり、運転者が無意識的にシフトレバーに手を置いている場合などに、シフトレバーを不用意にBポジションに操作して、意図せずエンジンブレーキを発生させ、急減速やショックの発生等の車両の予期せぬ挙動により乗員に違和感を与えるおそれがある。
【0014】
本発明は、車両減速用のブレーキモードが設定され、シフトレバーの操作ポジションとして、Dポジションに隣接させてブレーキモードを選択するためのBポジションが設けられた車両における上記のような問題を解消することを課題とし、構造の複雑化や部品点数の増大、シフトレバーの操作領域の拡大等を抑制しながら、運転者の要求レベルに応じた車両減速度が得られ、しかも、Dポジション、Bポジション間のシフトレバーの軽快な操作性と、不用意な操作による予期せぬ車両の挙動が抑制される耐誤操作性とを両立させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両の制御装置は、次のように構成したことを特徴とする。
【0016】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、シフトレバーの操作ポジションとして、ドライブモードを選択するためのDポジションと、ブレーキモードを選択するためのBポジションとが隣接して設けられた車両の制御装置であって、
前記シフトレバーのDポジションからBポジションへの操作回数が多いほど運転者の要求減速度レベルが高いと判定する要求減速度レベル判定手段と、
該
要求減速度レベル判定手段で判定した要求減速度レベルが高いほど減速比が大きくなるように変速機の減速比増大制御を行う減速比制御手段と、
該減速比制御手段による減速比増大制御を許可するか否かを判定する減速許可判定手段とを有し、
前記減速許可判定手段は、前記要求減速度レベルが最低のレベル1のときは、レベル2以上のときに比べて、前記減速比制御手段による減速比増大制御を許可するか否かの減速許可条件を厳しくし、
前記減速比制御手段は、前記減速許可判定手段が減速比増大制御を許可したときに、前記
要求減速度レベル判定手段で判定した要求減速度レベルに応じた減速比増大制御を行うことを特徴とする。
【0017】
ここで、前記変速機には、減速比が段階的に変化する自動変速機と、無段階に変化する無段変速機とが含まれる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記減速許可判定手段は、前記要求減速度レベルがレベル1のとき、前記減速比制御手段による減速比増大制御によって所定以上のブレーキ力が発生すると推定される場合に該減速比増大制御を禁止することにより、減速許可条件を厳しくすることを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置において、
前記変速機は自動変速機であり、
前記減速許可判定手段は、前記要求減速度レベルがレベル1のとき、前記変速機のシフトパターンを、レベル2以上のときのものに比べて、シフトダウン許可領域が低車速側に向けて狭くされているものに変更することにより、減速許可条件を厳しくすることを特徴とする。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、
前記変速機は自動変速機であり、
前記減速許可判定手段は、前記自動変速機のシフトパターンとして車速のみをパラメータとするものを用いると共に、
前記要求減速度レベルがレベル1のとき、前記シフトパターンを、レベル2以上のときのものに比べてシフトダウン車速が低車速側に設定されているものに変更することにより、減速許可条件を厳しくすることを特徴とする。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の制御装置において、
前記シフトレバーの操作ポジションとして、ニュートラルモードを選択するためのNポジションが前記Dポジションに隣接して設けられていると共に、
Bポジションは、Dポジションとの間のシフトレバーの操作方向がDポジション、Nポジション間のシフトレバーの操作方向と異なるように設けられており、かつ、
DポジションとBポジションとを含むシフトレバーの操作線上には、これらのポジションのみが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記の構成により、まず、本願の請求項1に記載の発明によれば、シフトレバーの操作ポジションとして、DポジションとBポジションとが隣接して設けられた車両において、ドライブモードでの走行中に、前記シフトレバーのD→B操作が行われたときは、要求減速度レベル判定手段は、要求減速度レベルがレベル1であると判定し、減速許可判定手段が車両の減速比増大制御を許可すれば、減速比制御手段がレベル1に対応する減速比が得られるように変速機を制御する。
【0023】
また、このD→B操作後、連続して或いはブレーキモードでしばらく走行した後、さらに大きな減速度を得るために、B→D→B操作が行われたときは、そのつど要求減速度レベルが高くなり、減速比制御手段がそのレベルに応じて減速比を増大させるように変速機を制御する。
【0024】
この減速比増大制御は、自動変速機を搭載した車両の場合は、Bポジションへの操作のたびに変速段を1段もしくは複数段シフトダウンすることにより行われ、無段変速機を搭載した車両の場合は、Bポジションへの操作のたびに、減速比を段階的に大きくすることにより行われる。
【0025】
このように、請求項1の発明によれば、シフトレバーのDポジション、Bポジション間の操作だけで運転者の要求減速度レベルが判定され、そのレベルに応じた変速機の減速比が得られるので、運転者の要求に応じた車両減速度を実現するために、例えばBポジションの両側にプラスポジションとマイナスポジションを設けるといった構成が不要となる。その結果、これらのポジションへの操作を検出するスイッチが不要となって、構造の簡素化や部品点数の削減が実現されると共に、シフトレバーの操作領域の拡大が回避されて、シフトレバー周辺のデザインやレイアウトの自由度が向上することになる。
【0026】
そして、特にこの発明によれば、要求減速度レベルがレベル1のときは、減速許可判定手段がレベル2以上の場合に比べて減速許可条件が厳しくされるので、最初のD→B操作による減速比増大制御の実行が抑制されることになる。
【0027】
これにより、DポジションとBポジションの間の操作力を軽くした結果、シフトレバーの不用意なBポジションへの操作が起きやすくなっても、これによる予期せぬエンジンブレーキの発生や、これに伴う急減速やショックの発生等の車両の予期せぬ挙動が抑制され、乗員に違和感を与えることが少なくなる。
【0028】
一方、最初のD→B操作の後、B→D→B操作が行われたときは、上記のような不用意な操作ではなく、より大きな減速度を得るために運転者が意識的に操作したものと判断されるから、この場合は、前記減速許可判定手段の減速許可条件が緩和され、2回目以降のBポジションへの操作、即ち要求減速度レベルがレベル2以上のときは、例えばエンジンの過回転が生じない限り、原則としてそのレベルに応じた減速比ないし減速度を得るための制御が行われる。
【0029】
その結果、シフトレバーのDポジション、Bポジション間の操作力を軽くして、ブレーキモードでの軽快な操作性と耐誤操作性とを両立させながら、運転者の要求に応じた減速度が得られる車両が実現される。
【0030】
また、請求項2に記載の発明によれば、減速許可判定手段による要求減速度レベルがレベル1で減速許可条件を厳しくするときは、減速比増大制御によって所定以上のブレーキ力が発生すると推定されるときに、この減速比増大制御を禁止するので、ドライブモードでの走行中における不用意なD→B操作による予期せぬ大きなエンジンブレーキの発生が回避される。
【0031】
その場合に、減速比の増大によって所定以上のブレーキ力が発生するか否かの推定は、例えば、そのときの車速が所定車速以上か否か、減速比の増大によるエンジン回転数の上昇が所定回転数以上となるか否か、などに基づいて行われる。
【0032】
なお、減速比増大制御によって所定以上のブレーキ力が発生すると推定されないときは、D→B操作が不用意なものであっても減速比増大制御が行われることになるが、この場合は乗員に違和感を与えることが少なく、逆に、意図的な操作の場合に、その意図が尊重されることになる。
【0033】
また、請求項3に記載の発明によれば、変速機が自動変速機の場合に、要求減速度レベルがレベル1で減速許可条件を厳しくするときは、自動変速機のシフトパターンを、レベル2以上のときのものに比べて、シフトダウン許可領域が低車速側に向けて狭くされているものに変更するので、高車速側で減速比増大制御を行うことによる大きなエンジンブレーキの発生やショックの発生が抑制され、前記各請求項の発明と同様の効果が自動変速機を搭載した車両において実現される。
【0034】
そして、請求項4に記載の発明によれば、ブレーキモードでは、前記自動変速機のシフトパターンとして車速のみをパラメータとするものが用いられ、要求減速度レベルが1で減速許可条件を厳しくするときは、前記シフトパターンを、レベル2以上のときのものに比べてシフトダウン車速が低車速側に設定されたものに変更するので、前記各請求項の発明と同様の効果がより具体的な構成によって実現される。
【0035】
一方、請求項5に記載の発明によれば、シフトレバーの操作ポジションとして、前記Dポジションに隣接してNポジションが設けられている場合に、Dポジション、Bポジショ間のシフトレバーの操作方向がDポジション、Nポジション間の操作方向と異なり、かつ、DポジションとBポジションを含むシフトレバーの操作線上には、これらのポジション以外のポジションが存在しないので、例えばB→D操作の際に誤ってNポジションに操作するなど、DポジションまたはBポジションへの操作時に誤って他のポジションに操作することが確実に防止される。
【0036】
特に、DポジションとBポジションとの間のシフトレバーの操作力を小さく設定して、軽快な操作性を実現させた場合にも、この発明によれば、上記のような他のポジションへの誤操作が効果的に防止され、軽快でかつ確実な操作性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0039】
図1に示すように、運転席横のコンソール部1にはシフトレバー2が備えられ、該シフトレバー2には、操作ポジションとして、P(駐車)ポジション、R(後退)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、及びB(ブレーキ)ポジションが設定されており、この実施形態では、車両前方から後方に向けて、直列に、P、R、N、Dの各ポジションが配置され、最も後方のDポジションの側方にBポジションが設けられている。また、シフトレバー2のノブ2aには、所定のポジション間の操作を許可するためのロックリリースボタン3が設けられている。
【0040】
図2は、前記シフトレバー2の軸部2bを案内するガイドプレート4を示し、前記各ポジションの配置に従い、P、R、N、Dの各ポジションが位置する前後方向に延びる第1ガイド溝4aと、該第1ガイド溝4aの後方側の端部のDポジションから側方に延びて、先端がBポジションとされる第2ガイド溝4bとを有する。
【0041】
そして、
図2(a)に示すように、Pポジションから他のポジションへの操作は、前記ロックリリースボタン3を押し、かつブレーキペダルを踏み込んでいることが操作許可条件とされ、また、同図(b)に示すように、N→R操作、及びR→P操作は、ロックリリースボタン3を押すことが操作許可条件とされている。換言すれば、Dポジション、Nポジション間の操作、及び、Dポジション、Bポジション間の操作は、常に無条件で可能とされている。
【0042】
図3は、本実施形態に係る車両の制御システムを示すもので、この実施形態に係る車両は、駆動源としてのエンジン11と、該エンジン11の出力を変速する自動変速機12と、該自動変速機12の出力を分割して左右の駆動輪13、13に伝達する差動装置14とを有し、車両減速状態で、前記自動変速機12の変速段をシフトダウンするごとに減速比が増大し、車両減速度が大きくなる。
【0043】
そして、前記自動変速機12の変速段を制御して車両減速度を段階的に変化させるコントロールユニット21が備えられ、このコントロールユニット21に、前記シフトレバー2がP、R、N、Dのいずれかのポジションにあるときに、そのポジションを検出するポジションセンサ22からの信号と、前記シフトレバー2がBポジションにあるときに、それを検出するBポジションスイッチ23からの信号と、運転者のアクセルペダルの踏込量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ24からの信号とが入力されるようになっている。
【0044】
なお、前記ポジションセンサ22に代え、例えば、P、R、N、Dのポジションごとにスイッチを備えるなど、シフトレバー2のポジションの検出方法としては適宜選択可能である。
【0045】
前記コントロールユニット21は、前記ポジションセンサ22及びBポジションスイッチ23からの信号と、アクセル開度センサ24からの信号とに基づき、運転者の要求減速度レベルを判定すると共に、判定したレベルの車両減速度が得られるように、前記自動変速機12に変速段を変更するように制御信号を出力する。
【0046】
次に、
図4、
図5のフローチャートに従って、前記コントロールユニット21による運転者の要求減速度レベル判定制御と、判定したレベルの車両減速度が得られるように前記自動変速機12の減速比(変速段)を制御する減速比制御の具体的動作を説明する。
【0047】
まず、
図4により要求減速度レベル判定制御の動作を説明すると、コントロールユニット21は、まず、ステップS1で、前記ポジションセンサ22及びBポジションスイッチ23からの信号に基づき、シフトレバー2のD→B操作、即ち、DポジションからBポジションへの操作が行われたか否かを判定する。
【0048】
そして、D→B操作が行われたことを判定すれば、次にステップS2で、今回のBポジションへの操作前のシフトレバー2のDポジションでの滞在時間が所定時間(例えば1秒)以下であったか否かを判定する。
【0049】
今回のBポジションへの操作が、通常のドライブモードでの走行後の最初の操作であったとすると、その操作前のシフトレバー2のDポジションでの滞在時間は前記所定時間より長いはずであるから、今回のBポジションへの操作が通常のドライブモードでの走行後の最初の操作であったと判断され、その場合は、ステップS3で、今回のBポジションへの操作による要求減速度レベルNをレベル1と判定する。そして、ステップS4で、コントロールユニット21に備えられたメモリ21aに「1」を書き込む。
【0050】
次に、ステップS1に戻り、再びシフトレバー2のD→B操作が行われたか否かを判定し、Bポジションに保持されている間、及び、その後のB→D操作によってポジションがDとされている間は、次にD→B操作が行われるまで、そのままステップS1のみを繰り返し実行する。
【0051】
そして、前回のD→B操作の後、再びD→B操作が行われれば、ステップS2を再度実行し、今回のBポジションへの操作の前のDポジションでの滞在時間が前記所定時間以下であったか否かを判定し、所定時間以下のときは、ステップS5で、今回のD→B操作におけるDポジションへの操作前のポジションがBポジションであったか否かを判定する。
【0052】
Dポジションへの操作前のポジションがBポジションであったとき、換言すれば、今回のD→B操作がB→D→B操作であったときは、その操作中におけるDポジションでの滞在時間が前記所定時間以下であるので、今回のB→D→B操作は、最初のD→B操作による要求減速度レベル1よりも、高いレベルの減速度を要求している可能性があると判断する。
【0053】
つまり、運転者が初めからレベル1で得られる減速度よりも大きな減速度を要求しているときは、前記B→D→B操作が最初のD→B操作に連続して、一連のD→B→D→B操作として行われ、また、最初のD→B操作によって得られたレベル1の減速度では不十分で、さらに大きな減速度を求める場合は、D→B操作の後、改めてB→D→B操作が行われることになるが、いずれの場合にも、このような場合は、B→D→B操作におけるBポジションからDポジションへ戻した後のBポジションへの操作は直ちに行われるので、Dポジションでの滞在時間は前記所定時間以下になる。そこで、これらの場合は、運転者の要求減速度レベルNはレベル1より大きい可能性があると判断するのである。
【0054】
これに対し、B→D→B操作において、BポジションからDポジションに戻した後、前記所定時間が経過した後に改めてBポジションへの操作が行われた場合は、BポジションからDポジションに戻す操作は、運転者がブレーキモードの走行を終了し、通常のドライブモードに戻すためのものと考えられるので、コントロールユニット21は、ステップS2から前記ステップS3を実行し、Dポジションに戻した後のBポジションへの操作は、ドライブモードでの走行中に行われた最初のD→B操作であると判定し、要求減速度レベルNをレベル1と判定する。
【0055】
なお、前記ステップS5で、今回のD→B操作におけるDポジションへの操作前のポジションがBポジションでなかった場合、即ち、今回の操作が、P、RまたはNポジションからDポジションへ操作された後のBポジションへの操作である場合は、ドライブモードからブレーキモードへの切り換えのための最初のD→B操作であると考えられるので、この場合も、前記ステップS3で、要求減速度レベルNをレベル1と判定する。
【0056】
そして、上記のようにして、今回のD→B操作が、要求減速度レベルNを上げるためのB→D→B操作として行われた可能性があると判断されれば、さらに、ステップS6で、このB→D→B操作の間、車両は減速状態にあったか否かをアクセル開度センサ24からの信号に基づいて判定し、アクセル開度が全閉もしくはこれに近いごく小さな開度のときは、減速状態にあったものと判定する。
【0057】
B→D→B操作の間、運転者のアクセルペダルの踏み込みにより、車両が一時的にせよ非減速状態となったときは、Dポジションへの戻し操作は、一旦ブレーキモードを終了するためのものと判断されるので、この場合は、Dポジションでの滞在時間が前記所定時間以下であっても、コントローラ21はステップS6から前記ステップS3を実行し、今回のB→D→B操作による要求減速度レベルNをレベル1と判定する。
【0058】
一方、今回のB→D→B操作において、Dポジションでの滞在時間が所定時間以下であり、かつ、この操作が車両減速状態を維持したまま行われたものであるときは、運転者が初めから大きな減速度を要求しているか、または、前回のD→B操作による減速度では不十分で、さらに大きな減速度を要求しているかのいずれかであると判断し、ステップS7で、前記ステップS4でメモリ21aに記録した前回のD→B操作の際に設定した要求減速度レベルNを読み出し、ステップS8で、これに1を加えて、要求減速度レベルNを一段階高める。そして、ステップS4で、この新たな要求減速度レベルNを前記メモリ21aに書き込む。
【0059】
そして、このB→D→B操作が、減速状態が維持されている状態で、かつ、Dポジションでの滞在時間が所定時間以下の条件で繰り返されると、ステップS1、S2、S5〜S8、S4が繰り返し実行され、そのつど、要求減速度レベルNの値が1ずつ大きくされてメモリ21aに上書きされる。
【0060】
例えば、ドライブモードでの走行中において、一連のD→B→D→B操作が行われ、或いは、D→B操作の後、改めてB→D→B操作が行われたときは、N=2となり、また、一連のD→B→D→B→D→B操作が行われ、或いは、D→B操作の後、B→D→B操作が断続的に2回行われたときは、N=3となる。つまり、所定の条件の下でのD→B操作の回数が要求減速度レベルNとなる。
【0061】
一方、コントロールユニット21は、以上のような要求減速度レベルNの判定制御と並行して、そのレベルNに対応する車両減速度が得られるように自動変速機12の減速比制御を実行する。
【0062】
この制御は、
図5のフローチャートに従って行われ、まずステップS11で、現在の自動変速機12の変速段Kを読み込み、次に、ステップS12で、前記要求減速度レベル判定制御のステップS4でメモリ21aに書き込んだ現時点の要求減速度レベルNを読み込む。
【0063】
そして、ステップS13で、この要求減速度レベルNがレベル1であるか否かを判定し、レベル1と判定されたときは、ステップS14で
図6(a)に示す現変速段K用のシフトパターンAを選択し、ステップS15で、このシフトパターンAに基づいて、自動変速機12の変速段制御を実行する。
【0064】
ここで、ステップS15の変速段制御においては、選択しているシフトパターンと車速との関係で、シフトダウンされる場合(K=K−1)と、シフトダウンされない場合(K=K)とがある。
【0065】
一方、前記ステップS13で、現在の要求減速度レベルNが1でないと判定されたときは、ステップS16で、前回の変速制御実行時よりも要求減速度レベルNが増加しているか否かを判定する。そして、最初のシフトレバー2のD→B操作後、前述の条件の下で、さらにD→B(B→D→B)操作が行われ、要求減速度レベルNがレベル1からレベル2に増加した場合や、さらにレベル3に増加した場合などは、次にステップS17で、
図6(b)に示す現変速段K用のシフトパターンBを選択し、前記ステップS15で、このシフトパターンBに基づいて、変速段制御を実行する。
【0066】
また、前記ステップS16で、前回の変速段制御実行時から要求減速度レベルNが増加していないと判定されたときは、ステップS18で、現在選択中のシフトパターンBを維持し、ステップS15の変速段制御を実行する。
【0067】
ここで、前記シフトパターンA、Bは、いずれも車速のみをパラメータとするもので、変速段Kごとに備えられており、同じ変速段用のもので比較した場合、シフトパターンAのシフトダウン車速V
Aの方が、シフトパターンBのシフトダウン車速V
Bよりも低車速側に設定され、それだけ、シフトダウンが許可される領域が低車速側に向けて狭くされている。換言すれば、シフトパターンAの方がシフトパターンBよりも、シフトダウン許可条件が厳しくされている。
【0068】
具体的には、この実施形態の場合、シフトパターンBのシフトダウン車速V
Bは、変速段がK速から1段シフトダウンされたときに、エンジンの過回転を生じるか否かを基準として設定されているのに対し、シフトパターンAのシフトダウン車速V
Aは、変速段がKから1段シフトダウンされたときに、エンジンブレーキの大きさが所定以上となるか否かを基準として設定されている。その場合に、エンジンブレーキの大きさが所定以上か否かは、例えば、シフトダウンによるエンジン回転数の上昇量や車速等に基づき、予期せず発生したときに乗員が急減速やショックにより違和感を覚えるか否かを基準とする。
【0069】
なお、前記要求減速度レベルNがレベル1の場合において、シフトパターンAを用いたステップS15の変速段制御により変速段がシフトダウンされなかったときは、その後、レベルが増加してステップS17でシフトパターンBを選択するときに、最初に選択したシフトパターンAと同じ変速段用のものが選択される。
【0070】
これに対し、シフトパターンAを用いた変速段制御により変速段がシフトダウンされたときは、その後、ステップS17でシフトパターンBを選択するときに、最初に選択したシフトパターンAより1段低変速段用のものが選択され、また、このシフトパターンBを用いた変速段制御によって変速段がシフトダウンされた場合は、次のステップS17の実行時には、さらに1段低変速段用のシフトパターンBが選択されることになる。
【0071】
以上の減速比制御により、乗員がドライブモードでの走行中にシフトレバー2を不用意にD→B操作したとき、シフトダウン許可条件が厳しいシフトパターンAが選択されるから、車速がシフトダウン車速V
A以上であって、変速機のシフトダウンにより所定以上の大きさのエンジンブレーキの発生が予測されるときはシフトダウンが行われないことになり、乗員に違和感を与えることが回避される。
【0072】
これに対し、シフトパターンAが選択されていても、車速がシフトダウン車速V
A未満であれば、変速機はシフトダウンされることになるが、この場合は発生するエンジンブレーキが比較的小さくて乗員に違和感を与えることが少なく、また、このD→B操作が運転者が意図的に行ったものであるときに、その意図が尊重されることになる。
【0073】
そして、最初のD→B操作に連続して、或いはその後しばらくして行われるB→D→B操作時、即ち、不用意な操作ではなく、運転者の意識的な操作であることが明らかなときは、シフトパターンBが選択されることにより、同じ変速段用のシフトパターンAに基づけばシフトダウンが禁止される車速であっても、エンジンの過回転が生じない限り、即ち車速V
A〜V
B間でシフトダウンされることになり、運転者の要求により適合した車両の減速度制御が行われることになる。
【0074】
これにより、Dポジション、Bポジション間におけるシフトレバーの操作力を軽く設定したために不用意なD→B操作が生じやすくなっても、これによる予期せぬシフトダウンによって乗員に違和感を与えることが抑制されると共に、必要以上にシフトダウンを禁止することが回避され、運転者の要求に応じた車両減速度が実現され、かつ、快適な操作性と耐誤操作性とが両立する。
【0075】
そして、本実施形態によれば、シフトレバー2のDポジション、Bポジション間の操作だけで運転者の要求減速度レベルが判定され、前記シフトダウン許可条件が満足されている限り、判定されたレベルに応じた変速機の減速比が得られるので、ブレーキモード用の構成として、シフトレバー2のBポジションへの操作を検出するスイッチの追加だけで足りると共に、ブレーキモードでのシフトレバー2の操作領域の拡大が回避される。
【0076】
なお、以上の実施形態では、シフトパターンとして車速のみをパラメータとするものを用いたが、
図7、
図8に示すように、車速とアクセル開度とをパラメータとするシフトパターンを用いることもできる。そして、いずれの場合も、要求減速度レベルNがレベル1の最初のD→B操作時に選択されるシフトパターンAは、2回目以降の操作時に選択されるシフトパターンBよりシフトダウンが許可される領域が低車速側に狭くされ、同一アクセル開度におけるシフトダウン車速が低車速側となるように設定されている。
【0077】
また、以上の実施形態は、自動変速機を搭載した車両に本発明を適用したものであるが、無段変速機を搭載したものであっても、ブレーキモードでは、減速比を要求減速度レベルが高くなるにしたがって段階的に大きくなるように設定しておき、その減速比の増大制御の許可条件を、最初のD→B操作時には2回目以降の操作時より厳しくするように制御すれば、自動変速機を搭載した前記実施例と同様の作用が得られる。
【0078】
また、前記実施形態では、最初のD→B操作時には、2回目以降の操作時に比べて、変速車速が低車速側に設定されたシフトパターンを用いることにより減速許可条件を厳しくするようにしたが、例えば最初のD→B操作によっては、シフトダウンを禁止するようにしてもよい。