(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の微細発泡成形体の製造方法は、海相を形成する連続相と島相を形成する独立相からなる海島構造を有し、前記島相内部に形成された微細発泡セルを有する微細発泡成形体の製造方法であって、前記海相を形成する樹脂(A)がポリカーボネートを含有し、
前記島相を形成する樹脂(B)が、結晶性樹脂であり、当該結晶性樹脂が結晶性ポリエステル、
結晶性ポリオレフィン及び
結晶性ポリアミドから選択される少なくとも一種
であり、前記海相を形成する樹脂(A)のポリカーボネートの含有量を100質量部としたとき、前記島相を形成する樹脂(B)を10〜60質量部の範囲内で含有し
、少なくとも下記工程(1)〜(4)を経て形成することを特徴とする。
(1)前記海相を形成する樹脂(A)と前記島相を形成する樹脂(B)とを混練して海島構造の樹脂組成物を作製する工程
(2)前記樹脂組成物を、射出成形機内で溶融・混練して、前記海相を形成する樹脂(A)中に前記島相を形成する樹脂(B)を個数平均粒径10μm以下の粒子状物として分散する工程
(3)溶融状態の当該樹脂組成物中に超臨界ガスを注入する工程
(4)前記超臨界ガスが注入された前記樹脂組成物を射出成形することにより、成形体内の島相内部に微細発泡セルを形成する工程
この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0022】
本発明の実施態様として、本発明の効果発現の観点から、前記島相を形成する樹脂(B)が、
結晶性ポリエステルを含有する製造方法であることが好ましい。前記島相を形成する樹脂(B)が、
結晶性ポリエステルを含有する樹脂であると、ポリカーボネート中で
結晶性ポリエステルが微粒子状に分散されやすく射出成形時に微細な発泡セルを形成することができる。
【0023】
また、前記超臨界ガスが、窒素ガスである製造方法であることが好ましい。超臨界ガスが窒素ガスであると微細な発泡セルを形成することができる。
【0024】
本発明の微細発泡成形体は、海相を形成する連続相と島相を形成する独立相からなる海島構造を有し、前記島相内部に形成された微細発泡セルを有する微細発泡成形体であって、前記海相を形成する樹脂(A)がポリカーボネートを含有し、
前記島相を形成する樹脂(B)が、結晶性樹脂であり、当該結晶性樹脂が結晶性ポリエステル、
結晶性ポリオレフィン及び
結晶性ポリアミドから選択される少なくとも一種
であり、前記海相を形成する樹脂(A)のポリカーボネートの含有量を100質量部とした
とき、前記島相を形成する樹脂(B)を10〜60質量部の範囲内で含有し
、少なくとも下記工程(1)〜(4)を経て形成され
ることを特徴とする。
(1)前記海相を形成する樹脂(A)と前記島相を形成する樹脂(B)とを混練して海島構造の樹脂組成物を作製する工程
(2)前記樹脂組成物を、射出成形機内で溶融・混練して、前記海相を形成する樹脂(A)中に前記島相を形成する樹脂(B)を個数平均粒径10μm以下の粒子状物として分散する工程
(3)溶融状態の当該樹脂組成物中に超臨界ガスを注入する工程
(4)前記超臨界ガスが注入された前記樹脂組成物を射出成形することにより、成形体内の島相内部に微細発泡セルを形成する工程
また、本発明の効果発現の観点から、前記島相を形成する樹脂(B)が、
結晶性ポリエステルを含有することが好ましい。前記島相を形成する樹脂(B)が、
結晶性ポリエステルを含有する樹脂であると、ポリカーボネート中で
結晶性ポリエステルが微粒子状に分散されやすく射出成形時に微細な発泡セルを形成することができる。
【0025】
また、前記超臨界ガスが、窒素ガスであることが好ましい。前記超臨界ガスが窒素ガスであると微細な発泡セルを形成することができる。
【0026】
以下本発明の構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で用いる。
【0027】
≪微細発泡成形体≫
本発明の微細発泡成形体は、海相を形成する連続相と島相を形成する独立相からなる海島構造を有し、前記島相内部に形成された微細発泡セルを有する微細発泡成形体であって、前記海相を形成する樹脂(A)がポリカーボネートを含有し、
前記島相を形成する樹脂(B)が、結晶性樹脂であり、当該結晶性樹脂が結晶性ポリエステル、
結晶性ポリオレフィン及び
結晶性ポリアミドから選択される少なくとも
一種であり、前記海相を形成する樹脂(A)のポリカーボネートの含有量を100質量部とした
とき、前記島相を形成する樹脂(B)を10〜60質量部の範囲内で含有し
、少なくとも下記工程(1)〜(4)を経て形成され
ることを特徴とする。
(1)前記海相を形成する樹脂(A)と前記島相を形成する樹脂(B)とを混練して海島構造の樹脂組成物を作製する工程
(2)前記樹脂組成物を、射出成形機内で溶融・混練して、前記海相を形成する樹脂(A)中に前記島相を形成する樹脂(B)を個数平均粒径10μm以下の粒子状物として分散する工程
(3)溶融状態の当該樹脂組成物中に超臨界ガスを注入する工程
(4)前記超臨界ガスが注入された前記樹脂組成物を射出成形することにより、成形体内の島相内部に微細発泡セルを形成する工程
図1は、本発明に係る海島構造を有する樹脂組成物の断面の模式図である。ここで、Aは海相を構成する樹脂(A)を表し、Bは島相を構成する樹脂(B)を表し、これらが海島構造を有している。
図2は、微細発泡セルが形成された微細発泡成形体の断面の模式図であり、Bの島相を形成する樹脂(B)中に微細発泡セルCが形成されていることを表している。
【0028】
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、海相を形成する樹脂(A)が、ポリカーボネートを含有し、当該ポリカーボネートの含有量を100質量部としたとき、島相を形成する樹脂(B)が、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリアミドから選択される少なくとも一種を10〜60質量部の範囲内で含有しており、前記海相を形成する樹脂(A)中に、前記島相を形成する樹脂(B)が、粒子状物として分散された海島構造を有する樹脂組成物である。この樹脂組成物を用いて射出成形を行うことにより、島相内部に形成された微細発泡セルを有する微細発泡成形体を製造することができる。
【0029】
本発明において、海島構造とは、海相を形成する樹脂(A)の連続相中に、閉じた界面(相と相との境界)を有する島状の相(島相を形成する樹脂(B))が存在する構造のものをいう。すなわち、海島構造とは、相互に非相溶性の複数(例えば二種)の樹脂成分を混合した場合、混合物の高次構造として、樹脂成分の片方が連続する相(海)の中に、もう一方の樹脂が島状あるいは粒子状に散在している構造をいう。すなわち、一方の樹脂が連続相(海)となり、他方が島状の独立相(分散相)となることで形成される構造をいう。
【0030】
<海相を形成する樹脂(A)>
本発明に係る海相を形成する樹脂(A)はポリカーボネートを含有する。
【0031】
(ポリカーボネート)
本発明で使用するポリカーボネートとは、脂肪族又は芳香族のポリカーボネートであり、芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン又は炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる芳香族ホモ又はコポリカーボネートなどの芳香族ポリカーボネートが挙げられ、示差熱量計で測定されるガラス転移温度が100〜155℃の範囲にあるものが好ましく用いられる。
【0032】
また、前記の芳香族二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。また、ヒンダードフェノール系、イオウ系及びリン系の酸化防止剤などの化合物を一種以上含有していても良い。
【0033】
<島相を形成する樹脂(B)>
本発明において、島相を形成する樹脂(B)は、ポリエステル、ポリオレフィン及びポリアミドから選択される少なくとも一種の樹脂を含有する。これらの樹脂は、結晶性樹脂であることが好ましく、結晶性樹脂であることによって、ポリカーボネート中に微細な結晶核として存在させることができ、この微細な結晶核が射出成形時に発泡の起点となることによって、微細、かつ均一な発泡セルを形成することができる。
【0034】
(ポリエステル)
本発明に用いられるポリエステルとしては、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性樹脂であり、結晶性ポリエステルであることが好ましい。具体的にはカルボン酸又はそのエステル誘導体を主成分とする酸成分とジオール成分の重縮合物、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル誘導体の重縮合物、カルボン酸又はそのエステル誘導体を主成分とする酸成分と環状エーテル化合物から得られる重縮合物又は環状エステル化合物の開環重合物などが挙げられる。
【0035】
カルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルメタンカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸、マレイン酸及びフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。
【0036】
ヒドロキシカルボン酸成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4′−ヒドロキシ−ビフェニル−4−カルボン酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、乳酸及びグリコール酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0037】
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及び2,2−ビス(2′−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0038】
環状エーテル化合物としては、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどを挙げることができ、環状エステル化合物としては、δ−バレロラクトン、β−プロピルラクトン、γ−ブチロラクトン及びε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0039】
具体的な好ましい熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポチエチレンテレフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンイソフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、p−ヒドロキシ安息香酸ポリエチレンテレフタレート及びポリ乳酸樹脂などが挙げられる。
【0040】
(ポリオレフィン)
本発明に用いられるポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1及びオクテン−1などのα−オレフィンの単独重合体、ランダム又はブロックなどの形態をなす相互共重合体、これらα−オレフィンと他の不飽和単量体とのランダム、ブロック若しくはグラフトなどの共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミドなどの不飽和有機酸並びにその誘導体、あるいは酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル、あるいはスチレン、メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、あるいはビニルトリメチルメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン、あるいはジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンなどを用いることができ、共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、二種に限らず、複数種からなるものであってもよい。また、本発明においては、ポリオレフィンは結晶性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0041】
(ポリアミド)
本発明に用いられるポリアミドとは、アミノ酸、ラクタム又はジアミンとジカルボン酸を出発原料としたアミド結合を有する熱可塑性樹脂である。アミノ酸としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸及びパラアミノメチル安息香酸などが挙げられ、ラクタムとしてはε−カプロラクタム及びω−ラウロラクタムなどが挙げられる。また、本発明においては、ポリアミドとしては結晶性ポリアミドであることが好ましい。
【0042】
ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン及びアミノエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0043】
ジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸及びジグリコール酸などが挙げられる。
【0044】
本発明に係る樹脂組成物は、海相を構成する樹脂(A)が、ポリカーボネートを含有し、ポリカーボネートの含有量を100質量部としたとき、島相を構成する樹脂(B)を10〜60質量部の範囲内で含有する。好ましくは、10〜40質量部の範囲内である。島相を形成する樹脂(B)が10質量部より少ないと島相と島相の間隔が広くなり発泡する際に発泡セルが巨大化してしまう。また島相を形成する樹脂(B)が60質量部より多いと島相となる樹脂が偏在し、偏在した大きな島相の中で発泡セルが成長し均一な発泡セルを得ることができない。また、本発明においては、海相を構成する樹脂(A)としてポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
【0045】
樹脂組成物中において、海相を形成する樹脂(A)中に分散された島相を形成する樹脂(B)は、個数平均粒径10μm以下の粒子状物として分散されていることが好ましい。樹脂組成物中において、島相を形成する樹脂(B)の個数平均粒径が10μm以下であると、射出成形機内において、溶融・混練されたときに島相を形成する樹脂(B)が確実に10μm以下とすることができるので、成形体としたときに発泡セルをより微細かつ均一にすることができる。さらに島相を形成する樹脂(B)は、個数平均粒径5μm以下の粒子径で分散されていることがより好ましい。
【0046】
(相溶化剤)
本発明においては、さらに相溶化剤(C)を添加しても良い。本発明における相溶化剤(C)とは、ポリカーボネートを主成分とする海相を形成する樹脂(A)、島相を形成する樹脂(B)及びその他の熱可塑性樹脂との相溶化を促進させるものであり、(A)成分及び(B)成分とを微分散化させる作用を有するものである。また、海相と島相との界面を相溶化させることによって、成形体としたときに、衝撃強度を高くする効果を有する。
【0047】
このような相溶化剤(C)としては、無機充填剤、グリシジル化合物又は酸無水物をグラフト又は共重合した高分子化合物、アクリル樹脂又はスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物、及び有機金属化合物が挙げられ、一種又は二種以上で用いてもよい。
【0048】
また、相溶化剤の配合量は、海相を形成する樹脂(A)及び島相を形成する樹脂(B)の合計量100質量部に対し、1〜50質量部が好ましく、より好ましくは3〜40質量部、特に好ましくは4〜30質量部であり、この範囲内であると相溶化剤としての効果を発揮させることができる。
【0049】
(難燃剤)
本発明では、さらに難燃剤(D)を添加してもよい。使用する難燃剤(D)とは、樹脂に難燃性を付与する目的で添加される物質であれば特に限定されるものではなく、具体的には、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤及びその他の無機系難燃剤などが挙げられ、これら少なくとも一種以上を選択して用いることができる。
【0050】
本発明で用いられる臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー又はポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー又はポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル及びN,N′−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー及びブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
【0051】
本発明で用いられるリン系難燃剤は特に限定されることはなく、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的にはリン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物や赤リンが挙げられる。
【0052】
上記の有機リン系化合物におけるリン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート及びこれらの縮合物などの縮合リン酸エステルを挙げることができる。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741及びCR747などを挙げることができる。
【0053】
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるリン酸塩及びポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン塩、メラミン塩及びアンモニウム塩などが挙げられる。
【0054】
また、上記の他、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート及びトリス(β−クロロプロピル)ホスフェート)などの含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物及びリン酸エステルアミドを挙げることができる。
【0055】
また、赤リンとしては、未処理の赤リンのみでなく、熱硬化性樹脂被膜、金属水酸化物被膜、金属メッキ被膜から成る群より選ばれる一種以上の化合物被膜により処理された赤リンを好ましく使用することができる。熱硬化性樹脂被膜の熱硬化性樹脂としては、赤リンを被膜できる樹脂であれば特に制限はなく、例えば、フェノール−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂、メラミン−ホルマリン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物被膜の金属水酸化物としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどを挙げることができる。金属メッキ被膜の金属としては、赤リンを被膜できるものであれば特に制限はなく、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mn、Ti、Zr、Al又はこれらの合金などが挙げられる。さらに、これらの被膜は二種以上組み合わせて、あるいは二種以上に積層されていてもよい。
【0056】
本発明で用いられる窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素及びチオ尿素などを挙げることができる。なお、上記リン系難燃剤で例示したようなポリリン酸アンモニウムなど含窒素リン系難燃剤はここでいう窒素化合物系難燃剤には含まない。脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン及び1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。芳香族アミンとしては、アニリン及びフェニレンジアミンなどを挙げることができる。含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジン及びトリアジン化合物などを挙げることができる。シアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。脂肪族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。芳香族アミドとしては、N,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0057】
上記において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン及びジアミノイソプロポキシトリアジンなどを挙げることができる。
【0058】
メラミンシアヌレート又はメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸又はイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸又はイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していても良い。また、樹脂に配合される前の平均粒径は、成形体の難燃性、機械的強度、表面性の点から0.01〜100μmが好ましく、更に好ましくは1〜80μmである。
【0059】
窒素化合物系難燃剤の中では、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。
【0060】
また、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコール又は金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。
【0061】
本発明で用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂及びシリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、SiO
2、RSiO
3/2、R
2SiO、R
3SiO
1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、又はフェニル基、ベンジル基等の芳香族基、又は上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、及びポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも一つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシ基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、又はトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも一つの基により変性された変性ポリシロキサン又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0062】
本発明で用いられるその他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一スズ、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、黒鉛及び膨潤性黒鉛などを挙げることができる。中でも、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛及び膨潤性黒鉛が好ましい。
【0063】
前記難燃剤(D)は、一種で用いても、二種以上併用して用いてもかまわない。なお、水酸化アルミニウムを用いる場合は、混練温度210℃以下で溶融混合して用いることが好ましい。
【0064】
前記難燃剤(D)の中では、ハロゲンを全く含有しないリン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤及びその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも一種又は二種以上を組み合わせて用いることが好ましい。上記において難燃剤を二種以上併用する場合、リン系難燃剤と他の難燃剤を併用することが好ましい。リン系難燃剤と併用する窒素化合物系難燃剤としては、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。また、リン系難燃剤と併用するシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂が好ましい。また、リン系難燃剤と併用するその他の無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛及び膨潤性黒鉛が好ましい。また、リン系難燃剤との配合比率は任意の量を組み合わせることができ、特に難燃剤100質量%中のリン系難燃剤の量は5質量%以上であることが好ましく、5〜95質量%であることがより好ましい。
【0065】
難燃剤(D)の配合量は、海相を形成する樹脂(A)及び島相を形成する樹脂(B)の合計量100質量部に対して、1〜50質量部であり、さらには2〜45質量部が好ましく、特に好ましくは3〜40質量部であり、この範囲内であると十分な難燃化効果が得られる。
【0066】
(可塑剤)
本発明においては、さらに可塑剤(E)を配合することができ、可塑剤としては、一般に樹脂の可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。
【0067】
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ロジンなどの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルや、ポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸又は単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0068】
グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート及びグリセリンモノアセトモノモンタネートなどを挙げることができる。
【0069】
多価カルボン酸系可塑剤の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコール、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール、アジピン酸ベンジルブチルジグリコールなどのアジピン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、及びセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
【0070】
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及びランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコール及びその末端エポキシ変性化合物、末端エステル変性化合物、並びに末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができる。
【0071】
エポキシ系可塑剤とは、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
【0072】
その他の可塑剤の具体例としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートなどの脂肪族ポリオールの安息香酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、及びアセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、ペンタエリスリトール、ポリアクリル酸エステル、パラフィン類、オルトターフェニル、メタオルトターフェニル及びパラオルトターフェニルなどの芳香族化合物などを挙げることができる。
【0073】
(結晶核剤)
本発明においては、さらに結晶核剤を配合することができ、結晶核剤としては、公知の窒化物などの無機系核剤、有機カルボン酸金属塩などの有機系核剤、ソルビトール類、及び高分子核剤などが挙げられ、一種のみでもよくまた二種以上の併用を行ってもよい。本発明においては、可塑剤と結晶核剤とを各々単独で用いてもよいが、両者を併用して用いることが成形性の点において好ましい。
【0074】
(着色剤)
本発明においては、さらに、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、群青、焼成イエロー及びさらに種々の色の顔料や染料を一種以上配合することにより種々の色に樹脂を調色、耐候(光)性、及び導電性を改良することも可能であり、顔料や染料の配合量は、海相を形成する樹脂(A)と島相を形成する樹脂(B)の合計量100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜9質量部、より好ましくは0.03〜8質量部である。
【0075】
また、前記のカーボンブラックとしては、限定されるものではないが、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、アントラセンブラック、油煙、松煙、及び黒鉛などが挙げられ、平均粒径500nm以下、ジブチルフタレート吸油量50〜400cm
3/100gのカーボンブラックが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、又はシランカップリング剤などで処理されていても良い。
【0076】
また、前記の酸化チタンとしては、ルチル形、あるいはアナターゼ形などの結晶形を持ち、平均粒径5μm以下の酸化チタンが好ましく用いられ、処理剤として酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ポリオール、又はシランカップリング剤などで処理されていても良い。また、上記のカーボンブラック、酸化チタン及び種々の色の顔料や染料は、本発明の樹脂組成物との分散性向上や製造時のハンドリング性の向上のため、種々の熱可塑性樹脂と溶融ブレンドあるいは単にブレンドした混合材料として用いても良い。
【0077】
(安定剤)
本発明の樹脂組成物に対しては、本発明の目的を損なわない範囲で、安定剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、及び銅害防止剤など)、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分ケン化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、及び変成シリコーン)、又は加水分解抑制剤(エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及びイソシヌレート化合物)などを必要に応じて添加することができる。
【0078】
(無機充填剤)
本発明に係る樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲で、他の充填材、他種ポリマーなどを添加することができる。これらは、任意の時期に添加してよい。充填材としては一般に樹脂用フィラーとして用いられる公知のものが用いられ、本発明のポリエステル樹脂組成物の強度、剛性、耐熱性、寸法安定性などを改良できる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、アスベスト、アルミノシリケート、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及びシリカなどが挙げられる。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を二種類以上用いることも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、又はエポキシ化合物などのカップリング剤で処理して使用してもよい。本発明のポリエステル樹脂組成物を効果的に補強するには、前記充填材の中でも、特にガラス繊維、及び炭素繊維を添加することもできる。
【0079】
≪微細発泡成形体の製造方法≫
本発明の微細発泡成形体の製造方法は、海相を形成する連続相と島相を形成する独立相からなる海島構造を有し、前記島相内部に形成された微細発泡セルを有する微細発泡成形体の製造方法であって、前記海相を形成する樹脂(A)がポリカーボネートを含有し、
前記島相を形成する樹脂(B)が、結晶性樹脂であり、当該結晶性樹脂が結晶性ポリエステル、
結晶性ポリオレフィン及び
結晶性ポリアミドから選択される少なくとも一種
であり、前記海相を形成する樹脂(A)のポリカーボネートの含有量を100質量部としたとき、前記島相を形成する樹脂(B)を10〜60質量部の範囲内で含有し
、少なくとも下記工程(1)〜(4)を経て形成することを特徴とする。
(1)前記海相を形成する樹脂(A)と前記島相を形成する樹脂(B)とを混練して海島構造の樹脂組成物を作製する工程
(2)前記樹脂組成物を、射出成形機内で溶融・混練して、前記海相を形成する樹脂(A)中に前記島相を形成する樹脂(B)を個数平均粒径10μm以下の粒子状物として分散する工程
(3)溶融状態の当該樹脂組成物中に超臨界ガスを注入する工程
(4)前記超臨界ガスが注入された前記樹脂組成物を射出成形することにより、成形体内の島相内部に微細発泡セルを形成する工程
次に、上記樹脂組成物の製造方法及び射出成形方法について説明する。
【0080】
<樹脂組成物の製造方法>
(混練方法)
本発明に係る海島構造の樹脂組成物は、海相を形成する樹脂(A)、島相を形成する樹脂(B)、及び必要に応じて、相溶化剤(C)、難燃剤(D)並びに可塑剤(E)の各成分を混練性に優れる二軸押出機などの溶融混練機で混練することにより得ることができる。
【0081】
混練機としては、一般的な一軸、二軸の混練機が使用できる。これらの中でも二軸押出混練機が好ましく、このような混練機としては、(株)神戸製鋼所製の二軸押出混練機「KTX−30」及び「KTX−46」、東芝機械(株)製二軸押出混練機「TEM−26SS」及び「TEM−48SS」並びに(株)池貝製「PCM−30」及び「PCM−115」等が使用できる。
【0082】
混練条件としては、海相を形成する樹脂(A)及び島相を形成する樹脂(B)の軟化点などの熱特性に応じて、混練機のシリンダー(バレル)温度、スクリュー回転数を適宜調整することによって所望の分散状態の樹脂組成物を得ることができる。
【0083】
本発明においては、射出成形機内で溶融・混練したとき海相を形成する樹脂(A)中に粒子状物として分散された島相を形成する樹脂(B)の個数平均粒径を10μm以下とするためには、樹脂組成物を製造する段階で10μm以下の粒子状物とすることが好ましい。射出成形機内で溶融・混練したとき海相を形成する樹脂(A)中に粒子状物として分散された島相を形成する樹脂(B)の個数平均粒径は、樹脂組成物を超臨界ガスを用いないで射出成形し未発泡成形体の島相の個数平均粒径を測定することで代用できる。
【0084】
≪射出成形≫
本発明の微細発泡成形体は、射出成形によって作製することができ、さらに詳しくは、微細射出発泡成形(MuCell)によって作製することができる。
【0085】
<微細射出発泡成形>
微細射出発泡成形とは、成形機のシリンダー内の溶融した成形用原料樹脂に高圧下で、発泡剤である窒素や二酸化炭素などの超臨界ガスを大量に溶解させ、次いで、金型内に原料樹脂を注入することにより急激に減圧させることによって、多数の微細な気泡を発生させる成形方法である。
【0086】
すなわち、微細射出発泡成形は、前述した微細発泡成形体を射出成形のプロセスの中で実現する方法である。超臨界流体発生装置は、発泡剤であるガスを加圧して超臨界流体(超臨界ガス)とするとともに、一定の流量で送り出す。送り出された流体は、成形機のシリンダー内圧力に応じた圧力に調整され、決められた時間だけ成形機に注入される。専用に設計されたシリンダーとスクリューは、超臨界流体を細かい液滴として溶融樹脂内に分散させ、その後の混合でガスが溶解した単一相溶解物を形成する。
【0087】
射出された単一相溶解物(成形用原料樹脂)は成形機のノズル、あるいは金型のバルブゲートを通過する際、急激な圧力低下によって、多数の気泡が発生・成長する。気泡は金型内の樹脂圧力が高まると成長を止め、あるいは樹脂が冷却固化することで、成長を止める。
【0088】
<超臨界ガス>
超臨界ガスとは、気体の流動性と液体の溶解性を併せ持つ物質の状態であり、気体の拡散性と液体の溶解性を持ち溶融樹脂内へ高溶解と高分散が可能となる。金型中に溶融樹脂を射出すると樹脂は急激に減圧され溶融樹脂内に溶解されたガスは、過飽和状態となり結晶核を起点として急激に気泡となる。
【0089】
本発明においては、超臨界ガスとは、具体的には、二酸化炭素及び窒素等が挙げられる。本発明においては窒素が、より微細な発泡セルを形成できることから好ましい。
【0090】
この超臨界ガスは、射出成形機のシリンダー内へ、インジェクターから圧力をかけて注入される。
【0091】
<成形条件>
微細発泡成形体の製造方法としては、超臨界ガスを成形材料である樹脂組成物に浸透させる工程(相溶させる工程)と、ガスが浸透した成形材料を脱ガスさせる工程を有する方法であればよく、特に制限されず、例えば米国特許第4473665号明細書、米国特許第5158986号明細書などに記載されている方法を用いることができるが、以下に示す方法により、所望の微細発泡成形体を効率よく製造することができる。
【0092】
好適な製造方法においては、まず、樹脂組成物に超臨界ガスを浸透させる。この際用いるガスとしては、当該樹脂組成物に溶け込むことができ、かつ不活性であればよく、特に制限はないが、安全性、コストなどの面から、二酸化炭素又は窒素が好ましく、さらに好ましくは窒素である。又は二酸化炭素及び窒素を併用してもよい。この臨界状ガスは、当該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の範囲で浸透させ、相溶させる。超臨界状ガスの量が0.1質量部未満では均質な発泡セルが形成されず、発泡倍率も余り高くならない。また20質量部を超えると微細発泡成形体表面の外観不良が生じ、美麗な表面外観が得られにくい上、粗大な発泡セルが生成する原因となる。
【0093】
本発明において、超臨界ガスは、成形機シリンダー内で、計量工程(可塑化・計量工程ともいう。)中において、溶融状態の樹脂組成物に浸透させるのが好ましく、その方法としては、例えば気体状態の不活性ガスを直接あるいは加圧又は減圧した状態で注入する方法、液体状態の不活性ガスをプランジャーポンプ等で注入する方法等が挙げられる。
【0094】
ここで、計量工程とは、射出成形において、シリンダー内のスクリューを回転させ、次の成形ショットに必要な成形用樹脂を計量する工程である。超臨界ガスを樹脂組成物に浸透させる場合のガス圧は、浸透させるガスの臨界圧以上に、少なくとも金型内への導入工程が終了するまで維持することを必須とし、より浸透速度を向上させるためには、好ましくは15MPa以上、特に好ましくは20MPa以上である。
【0095】
次に、このようにして超臨界ガスを含浸させた樹脂組成物を、金型内に射出充填し発泡させる。すなわち、シリンダーから金型内へ溶融された樹脂を射出充填することで、樹脂は減圧され樹脂中に過飽和状態で溶解されていたガスが発泡して微細発泡セルを形成する。超臨界ガスを含浸させた樹脂組成物を金型に射出充填し終わる前に、超臨界状態を保てないと、発泡しにくくなる上、シルバーストリーク発生などの原因となる。
【0096】
超臨界ガスを含浸させた樹脂組成物を金型内に充填した後、金型内の前記樹脂組成物の少なくとも一部が溶融状態にある間に、金型内の圧力を急激に下げることで、多数の発泡核が生成し、それを中心に発泡セルが成長して均一な発泡セルをもつ高転写、高光沢の微細発泡成形体が得られる。前記金型内の圧力を急激に下げる方法としては、(1)金型の型締め圧を緩める、(2)超臨界状ガスを含浸させた成形材料を充填する前の金型内に、1〜20MPa程度の不活性ガスを充満しておき、該成形材料を導入直後に、不活性ガスを抜く、(3)金型温度を急速に下げる、(4)金型内の樹脂材料が、金型に接する表層がスキン層を形成し、内部が溶融状態にある間に、金型の一部又は全部を後退させる、などの操作を挙げることができる。
【0097】
これらの中で、(4)の操作を行うことが特に好ましい。この(4)の操作において、前記のタイミングで金型を後退(コアバック)することで、平均発泡セル径が多少大きくなる傾向があるものの、発泡セル径の分布が小さくなり、特に、ゲート付近と成形体末端部の発泡セル径のバラツキが小さくなる。金型を後退させる割合は、必要とする発泡倍率に応じて選定すればよい。該発泡倍率は、通常1.1〜3倍程度である。金型を後退させる機構としては、公知の射出成形、射出圧縮成形の金型ユニットを用いることができる。ここで、コアバックとは、キャビティ容積が可変である金型を用いるもので、発泡性溶融樹脂を充填する際には、キャビティ容積を小さくしておき、充填後にキャビティ容積を拡大することで積極的に気泡の発生、拡大を促進させる方法である。
【0098】
<発泡セル>
本発明においては、上述のように、溶融した樹脂組成物を金型内に射出充填し、樹脂が減圧されることによって、樹脂中に溶解されていたガスが発泡して微細な発泡セルを形成する。このとき、島相を形成する樹脂(B)が、発泡の起点となる。そのため、微細発泡セルの粒径を微細、かつ均一なものとするためには、発泡の起点となる島相を形成する樹脂(B)が射出成形機内で溶融・混練したときに、個数平均粒径10μm以下の粒子状に分散されていることが必要である。
【0099】
<島相を形成する樹脂(B)の個数平均粒径の測定方法>
評価装置:走査型電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子(株)製)
評価試料:(切片の厚さ100〜200nm)
加速電圧:30kV
倍率 :5000倍
(島相の粒径の測定試料 作製法及び識別方法)
〔島相の粒径の測定試料の作製法〕
ダイヤモンド歯を備えたミクロトーム「ウルトラカットE」((株)ファインテック製)を用い、未発泡の成形体から厚さ100〜200nmの薄片状のサンプルを切り出す。
【0100】
〔識別方法〕
下記の基準にて成形体内の樹脂成分を識別する。
【0101】
・暗く観察される :ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド
・明るく観察される:ポリカーボネート系樹脂
(島相の個数平均粒径の測定)
評価装置:画像処理解析装置「LUZEX(登録商標) AP」((株)ニレコ製)
〔測定方法〕
上記透過型顕微鏡の画像から50個の島相の粒径を測定する。
【0102】
島相の個数平均粒径は水平方向フェレ径の平均値として算出する。ここで、水平方向フェレ径とは、走査型電子顕微鏡画像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。
【0103】
<発泡セルの個数平均セル径の測定方法>
評価装置:レーザー顕微鏡「VK9510」((株)キーエンス製)
評価試料:発泡成形体
倍率 :200倍
〔セル径の測定試料の作製法〕
JIS K7110(1999)のノッチ付き試験片形状の発泡成形体を液体窒素で冷却する。冷却した未発泡成形体を万能衝撃試験機((株)安田精機製作所製)にセットしハンマーで破壊する。得られた破片を断面観察用のサンプルとする。
【0104】
(発泡セルの個数平均セル径の測定)
評価装置:画像処理解析装置「LUZEX(登録商標) AP」((株)ニレコ製)
〔測定方法〕
上記レーザー顕微鏡の200倍画像から50個のセル径を測定する。
【0105】
発泡セルのセル径は水平方向フェレ径の平均値として算出する。ここで、水平方向フェレ径とは、レーザー顕微鏡画像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。
【0106】
<本発明の微細発泡成形体の用途>
本発明のポリエステル樹脂組成物は、射出成形により、所望の形状に成形でき、特に自動車部品、電子・電気部品、事務用オフィス機器などに好適に使用することができる。
【0107】
自動車部品の例としては、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エアフローメーター、エアポンプ、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、サーモスタットハウジング、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブ−スター部品、各種ケース、燃料関係・排気系・吸気系等の各種チューブ、各種タンク、燃料関係・排気系・吸気系等の各種ホース、各種クリップ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、各種パイプ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスイッチ基板、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエータモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、スタータースイッチ、スターターリレー、安全ベルト部品、ドアロックハウジング、ドアロックプロテクター等のドアロック部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、デュストリビューター、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、ホーンターミナル、ウィンドウォッシャーノズル、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプソケット、ランプハウジング、ランプベゼル、ドアハンドル、ワイヤーハーネスコネクタ、SMJコネクタ、PCBコネクタ、ドアグロメットコネクタ、ヒューズ用コネクタなどの各種コネクタなどが挙げられる。
【0108】
また、電子・電気部品の例としては、コネクタ、コイル、各種センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク・DVD等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサ部品、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライター関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等の光学機器/精密機械関連部品などが挙げられる。
【0109】
事務用オフィス機器としては、複写機、プリンターの外装部品、現像器部品、トナー容器部品、給紙装置部品、画像形成ユニット部品等が挙げられる。
【実施例】
【0110】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において使用した材料は以下のとおりである。
【0111】
(1)PC1:ポリカーボネート「タフロンA−1900」(出光興産(株)製)
(2)PC2:ポリカーボネート「ユーピロンH−2000」(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
(3)ポリエステル1:ポリエステル「ダイヤナイトMA521H−D25」(三菱レイヨン(株)製)
(4)ポリエステル2:ポリエステル「トレコン4210X10」(東レ(株)製)
(5)ポリオレフィン:「プライムポリプロJ704UG」((株)プライムポリマー製)
(6)ポリアミド:「アミランCM3001」(東レ(株)製)
(7)ABS:ABS樹脂「トヨラック700−314」(東レ(株)製)
(8)PS:ポリスチレン「トーヨースチロールGPMW2C」(東洋スチレン(株)製)
(9)フィラー:タルク「MICRO ACE P−6」(日本タルク(株)製)
【0112】
<樹脂組成物1の作製>
ポリカーボネート「タフロンA−1900」(出光興産(株)製)100質量部とポリエステル「ダイヤナイトMA521 H−D25」(三菱レイヨン(株)製)30質量部とをダブルコーンミキサーを用いて予備混合した混合物を二軸押出混練機「KTX−30」((株)神戸製鋼所製)にて溶融・混練した。溶融・混練条件は、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数250rpmで行った。
【0113】
上記のようにして得られた溶融状態の樹脂組成物を冷却固化し、ペレタイザーを用いて細断することで、射出成形で使用される樹脂材料として適したペレット状の樹脂組成物1を得た。
【0114】
<樹脂組成物2〜15の作製>
樹脂組成物1の作製において、海相を構成する樹脂(A)、島相を構成する樹脂(B)及び混練条件を表1に記載のようにした他は同様にして、樹脂組成物2〜15を作製した。
【0115】
【表1】
【0116】
<未発泡成形体1の作製>
上記のようにして作製した樹脂組成物1を80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機「J140AD−110H Mucell仕様」((株)日本製鋼所製)を用い、JIS K7110(1999)に準じた形状(長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)の衝撃試験用、軽量化率測定用及び島相の個数平均粒径測定用の未発泡成形体1の試験片を得た。成形条件は、シリンダー温度(成形温度)260℃、金型温度50℃、射出成形速度30mm/sec、保圧80MPaとした。
【0117】
<未発泡成形体2〜15の作製>
樹脂組成物2〜15を用い、成形条件を表2に記載したようにした他は未発泡成形体1と同様にして、未発泡成形体2〜15を作製し、後述する衝撃強度低下率、軽量化率及び島相の個数平均粒径の評価に用いた。
【0118】
【表2】
【0119】
上記のようにして作製した未発泡成形体1〜15について、海島状態を観察した。
≪評価方法≫
<海島状態の観察>
樹脂組成物1〜15の射出成形機内で溶融・混練状態での島相の個数平均粒径の測定の代用として、未発泡成形体1〜15をミクロトームでスライスし、走査型透過電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子(株)製)を用いて前述のようにして島相の個数平均粒径を測定した。結果を表3に示した。
【0120】
(評価基準)
◎:海島構造となっており、島相の個数平均粒径が5μm以下
○:海島構造となっており、島相の個数平均粒径が5μmより大きく、10μm以下
△:海島構造となっており、島相の個数平均粒径が10μmより大きい
×:海島構造となっていない
【0121】
【表3】
【0122】
<微細発泡成形体1の作製>
未発泡成形体の作製と同じ成形条件、同じ金型を用いて、射出成形の計量工程中に超臨界状態の窒素を成形機シリンダー内に樹脂質量に対して0.3質量%、注入圧力17MPa注入した。シリンダー温度260℃、金型温度50℃、射出速度30mm/sec、保圧0MPaで成形し、微細発泡成形体1を作製した。
【0123】
<微細発泡成形体2〜16の作製>
微細発泡射出成形体1の作製において、樹脂組成物、超臨界ガス及び成形条件を表4のようにした他は同様にして微細発泡成形体2〜16を作製した。
【0124】
【表4】
【0125】
上記のようにして作製した微細発泡成形体1〜16について以下のようにして評価した。
≪評価方法≫
<発泡状態の観察>
微細発泡成形体1〜16の発泡状態をレーザー顕微鏡「VK9510」((株)キーエンス製)を用いて前述のようにし発泡セルの個数平均セル径を測定した。
【0126】
(評価基準)
◎:発泡セルの個数平均セル径が5μm以下
○:発泡セルの個数平均セル径が5μmより大きく10μm以下
△:発泡セルの個数平均セル径が10μmより大きく20μm以下
×:発泡セルの個数平均セル径が20μmより大きい
<衝撃強度試験>
微細発泡成形体1〜16、それらに対応する樹脂組成物1〜15を用いて作製した未発泡成形体1〜15について、JIS K7110(1999)に準じた形状の衝撃強度試験を実施した。
【0127】
(衝撃試験方法)
評価装置 :万能衝撃試験機 ((株)安田精機製作所製)
試験片形状:JIS K7110 ノッチ付き試験片
試験方法 :アイゾット
重り :5.5J
上記のようにして衝撃強度を測定し、以下の式(1)により、衝撃強度低下率を求めた。
【0128】
式(1):
[衝撃強度低下率](%)={([未発泡成形体の衝撃強度]−[微細発泡成形体の衝撃強度])/[未発泡成形体の衝撃強度]}×100
(評価基準)
◎:衝撃強度低下率 10%以下
○:衝撃強度低下率 10%より大きく50%以下
△:衝撃強度低下率 50%より大きく90%以下
×:衝撃強度低下率 90%より大きい
<軽量化>
微細発泡成形体1〜16、それらに対応する樹脂組成物1〜15を用いて作製した未発泡成形体1〜15について、成形体1ショットの質量を測定し、以下の式(2)により軽量化率を求めた。
【0129】
式(2):
[軽量化率](%)={([未発泡成形体の1ショット質量]−[微細発泡成形体の1ショット質量])/[未発泡成形体の1ショット質量]}×100
(評価基準)
◎:軽量化率 10%以上
○:軽症化率 5%以上10%未満
△:軽量化率 3%以上5%未満
×:軽量化率 3%未満
以上の評価結果を表5に示した。
【0130】
【表5】
【0131】
以上の結果から、本発明の微細発泡成形体1〜9は、比較例の成形体10〜16に比較して、衝撃強度、軽量化率及び発泡状態において優れたものであった。これに対して比較例の成形体は、いずれかの評価項目において劣るものであった。
【0132】
すなわち、微細発泡成形体10は、島相を形成する樹脂(B)を添加しなかったため、海島構造を形成せず、発泡が十分でなく、衝撃強度も劣る結果であった。
【0133】
微細発泡成形体11は、島相を形成する樹脂(B)として、ABS樹脂を用いたため、微細発泡セルの発生起点がなく、微細発泡セルが大きくなり、衝撃強度が劣る結果となった。
【0134】
微細発泡成形体12は島相を形成する樹脂(B)として、PSを添加したものであるが、微細発泡セルの発生起点がなく、微細発泡セルが大きくなり、衝撃強度が劣る結果となった。
【0135】
微細発泡成形体13は、島相を形成する樹脂(B)であるポリエステルの添加量が少ないため、発泡起点が少ないため微細発泡セルが大きくなり、衝撃強度が弱いものであった。
【0136】
微細発泡成形体14は、島相を形成する樹脂(B)としてポリエステルの添加量が多いため、発泡起点が多く、微細発泡セルが互いに結合することによって大きな発泡セルが発生してしまい、衝撃強度は劣るものであった。
【0137】
微細発泡成形体15は、島相を形成する樹脂(B)の代わりに、フィラーとしてタルクを用いたものであるが、発泡状態は良好であるが、フィラーのために軽量化が十分でなかった。
【0138】
微細発泡成形体16は、未発泡成形体の島相の個数平均粒径が10μmを超えたため微細発泡セル径が大きい結果となった。