(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車両は、駐車時に車両バッテリ(21)に充電が行われるプラグインハイブリッド自動車または電気自動車、あるいは太陽電池の発電により前記車両バッテリ(21)に充電が行われる太陽電池搭載自動車であり、
前記制御部(120)は、前記駐車時において、前記車両バッテリ(21)の充電量が所定充電量より多いときに、前記外気モード優先運転を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
前記制御部(120)は、新車購入以降の初期段階であることを、前記外気モード優先運転の実行に基づく走行距離の総和によって判定することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の車両用空調装置100Aについて、
図1〜
図3を用いて説明する。車両用空調装置100Aは、車室内の空調、即ち、冷房、暖房、除湿等を行うようになっている。
図1に示すように、この車両用空調装置100Aが搭載される車両には、エンジンの制御を行うためのエンジン制御部50が設けられている。
【0013】
まず、エンジン制御部50について、簡単に説明しておく。エンジン制御部50は、時々刻々と変化するエンジンの作動状況に応じて、適切なエンジン作動が得られるように、燃料噴射弁から噴射すべき燃料の噴射時間(噴射量)、および噴射時期等を制御する制御手段である。エンジン制御部50は、エンジンの作動状況を把握するために、車両に設けられた各種センサ類から、あるいはプログラム計算によって、各種信号を得るようになっている。各種信号は、例えば、吸入空気量、吸入空気温度、クランク位置、スロットルバルブ開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温度、走行速度、走行距離、燃費等である。
【0014】
エンジン制御部50は、Controller Area Networkバス(以下、CANバス(登録商標))10と接続されている。CANバス10は、車両に搭載された複数の車載装置を相互に接続してなる車内通信ネットワークにおいて、各車載装置間でのデータの伝送に用いられる伝送路である。エンジン制御部50は、CANバス10を通じて、離れて位置する車両用空調装置100A(空調制御部120)と通信可能となっている。
【0015】
車両用空調装置100Aは、空調部110、および空調制御部120等を備えており、インストルメントパネル内部に装着されている。空調部110は、更に、空調用空気を送風する送風ユニット(図示せず)と、空調用空気の温度を調整する温調ユニット(図示せず)とを備えている。
【0016】
送風ユニットは、空調部110において空調用空気流れの最上流部に設定される内外気切替え部によって、車両の外部の空気を導入する場合(外気モード)、あるいは、車室内の空気を導入する場合(内気モード)のいずれかを選択して、導入した空調用空気を送風機によって、温調ユニット、更には、車室内に送風するユニットとなっている。
【0017】
温調ユニットは、空調ダクト内に蒸発器、ヒータコア、バイパス流路、エアミックスドア等が設けられて形成されており、空調用空気の温調を行うユニットとなっている。蒸発器は、冷凍サイクルにおいて、圧縮機によって循環される冷媒のうち、低温低圧冷媒を用いて空調用空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器は、空調ダクト内で、空調用空気流れの上流側に配置されている。ヒータコアは、エンジンの冷却水を加熱源として、空調用空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコアは、蒸発器よりも空調用空気流れの下流側に配置されている。バイパス流路は、空調ダクト内において、ヒータコアをバイパスする流路である。エアミックスドアは、ヒータコアに対する開度を変更することで、ヒータコアを通過する空調用空気量と、バイパス流路を通過する空調用空気量との混合割合を変更するドアである。
【0018】
空調ダクトの空調用空気流れの最下流側には、空調部110で温調された空調風を車室内の各部位に吹出すための各種吹出口が設けられている。各種吹出口は、車両のフロンドウインドに向けて空調風を吹出すデフロスタ吹出口、乗員の顔に向けて空調風を吹出すフェイス吹出口、および、乗員の足元に向けて空調風を吹出すフット吹出口である。各吹出口には、それぞれの吹出口を開閉する吹出口ドアが設けられている。
【0019】
尚、車両の後方部には、外気モード時において、空調部110で温調されて車室内に吹出された空調風を車両外部に排出するための排出口が設けられている。
【0020】
空調制御部120は、目標吹出温度TAOに基づいて、上記の空調部110における各部位の作動を制御することで、空調制御を行う制御部となっている。空調制御部120は、まず、予め定められた演算式に基づいて、目標吹出温度TAOを算出するようになっている。目標吹出温度TAOは、空調部110から車室内に吹出される空調風の温度を制御するための目標となる温度である。目標吹出温度TAOは、乗員が設定する設定温度、外気温度、内気温度、および日射量等から、演算式に基づいて算出されるようになっている。
【0021】
そして、空調制御部120は、目標吹出温度TAOに基づいて、内外気切替え部を制御するようになっている。
図2に示すように、空調制御部120は、目標吹出温度TAOが比較的低い領域では、空調用空気の導入モードを内気モードに設定する。また、空調制御部120は、目標吹出温度TAOが比較的高い領域では、空調用空気の導入モードを外気モードに設定するようになっている(通常の内外気運転)。
【0022】
また、空調制御部120は、目標吹出温度TAOに基づいて、送風機の風量を制御するようになっている。空調制御部120は、目標吹出温度TAOが比較的低い領域、および比較的高い領域では、送風機の風量を大きくし、また、目標吹出温度TAOが中間的な領域では、送風機の風量を小さくするようになっている。
【0023】
また、空調制御部120は、目標吹出温度TAOに基づいて、冷凍サイクルの圧縮機の吐出量、およびエアミックスドアの開度を制御することで、空調用空気の温度が目標吹出温度TAOに近づくように制御するようになっている。更に、空調制御部120は、目標吹出温度TAOに基づいて、各吹出し口における吹出口ドアの開閉を制御して、いずれの吹出口から空調風を吹出すようにするかを制御するようになっている。
【0024】
ここで、新車購入時においては、例えば、車室内に使用されるダッシュボードやシート、天井に使われる内装材や接着剤等の臭いが車室内に残っており、乗員によっては、このような新車の臭いを嫌う人も多くいる。よって、本車両用空調装置100Aにおいては、空調制御部120は、新車購入時の初期段階において、新車の臭いを低減するための制御(外気モード優先運転)を実行するようにしている。
【0025】
即ち、空調制御部120は、新車購入時の初期段階として、
図3に示すように、新車購入時から後述する所定の走行距離Aに至るまでの間は、目標吹出温度TAOによって決定される吹出しモードに係わりなく、空調用空気の導入モードとして外気モードを優先して設定する(外気モード優先運転)。つまり、目標吹出温度TAOによって導入モードが外気モードとして選択される条件下では、そのまま外気モード設定とするが、目標吹出温度TAOによって導入モードが内気モードとして選択される条件下では、意図的に外気モード設定とするのである。
【0026】
上記のように外気モードとした場合では、空調用空気が車両外部から空調部110に導入されて、温調され、車室内に吹出されると共に、車両後方の排出口から車両外部に排出されることになり、車室内の換気が積極的に行われることになる。
【0027】
尚、新車購入時の初期段階において、乗員が意図的に手動操作によって、内気モードを選択した場合は、空調制御部120は、内気モードの設定を行う。
【0028】
空調制御部120は、外気モード優先運転を実行している間に、CANバス10を介して、エンジン制御部50から、走行距離信号を逐次入手していく。そして、空調制御部120は、外気モードを優先して走行しているときの走行距離を積算していき、この積算距離が所定の走行距離Aに達すると、外気モード優先運転を解除して、
図2で説明した通常の内外気運転に切替える。つまり、空調制御部120は、新車購入以降の初期段階という期間を、外気モード優先運転の実行に基づく走行距離の総和によって判定するようにしている。所定の走行距離Aは、例えば、1万km〜2万km程度の距離として設定することができる。この所定の走行距離Aは、事前に、車種や乗員毎に任意に設定することが可能である。
【0029】
以上のように、本実施形態では、新車購入時の初期段階において、空調制御部120によって空調部110が空調制御される際に、外気モード優先運転が実行される。この外気モード優先運転によって、車内には、外気が優先して導入されることになる。そして、空調された空気は、車内から車両外部に排出されることになるので、積極的に車室内の換気が行われることになる。よって、新車における車内の臭いを効果的に低減することが可能となる。
【0030】
また、空調制御部120は、新車購入以降の初期段階であることを、外気モード優先運転の実行に基づく走行距離の総和によって判定するようにしている。車両においては、外気モードでは、空調部110の送風機による送風に加えて、走行時の車速風が空調部110に導入される。つまり、車両が走行しているときに、外気を用いた換気作用がより効果的に得られることになる。よって、新車購入以降の初期段階であることを、外気モード優先運転の実行に基づく走行距離の総和によって判定することで、外気モード優先運転の要否を明確に判定することが可能となる。
【0031】
(第2実施形態)
第2実施形態の車両用空調装置100Bを
図4に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、対象とする車両をプラグインハイブリッド自動車、電気自動車、あるいは太陽電池搭載自動車として、充電管理される車両バッテリ21の充電量に応じて、駐車時に外気モード優先運転を行うようにしている。
【0032】
対象とする車両のうち、プラグインハイブリッド自動車は、エンジンと走行用モータとを走行用の駆動源とし、家庭用電源(家庭用コンセント)からプラグを利用して車両バッテリ21に電力を充電できる車両である。
【0033】
また、電気自動車は、走行用モータを走行用の駆動源とし、家庭用電源、あるいは公共施設等に設けられる充電ステーションの充電器によって車両バッテリ21に電力を充電できる車両である。
【0034】
また、太陽電池搭載自動車は、例えば、ハイブリッド自動車において、ルーフ部に太陽電池を搭載しており、太陽電池によって太陽からの光エネルギーを電力に変換し、発電された電力を車両バッテリ21に充電できる車両である。
【0035】
このような車両においては、主に、駐車時において、例えば、バッテリ制御部22によって車両バッテリ21への充電が制御される。バッテリ制御部22は、CANバス10に接続されている。
【0036】
本車両用空調装置100Bの空調制御部120は、CANバス10を介して、車両バッテリ21の充電状態を得ることができる。そして、空調制御部120は、車両が駐車している場合で、車両バッテリ21の充電量が所定充電量よりも多いときに、外気モード優先運転を実行するようになっている。つまり、本実施形態では、バッテリ制御部22によって車両バッテリ21への充電が管理される車両を対象として、新車購入以降の初期段階において、乗員が車両に乗っていない駐車時に、上記第1実施形態で説明した外気モード優先運転を実行する。
【0037】
車両走行時の車内の空調に際しては、外気モード優先運転とすると、外気の影響により、車室内温度の制御に時間がかかり、乗員に対する快適性が低下することが考えられる。しかしながら、駐車時において、外気モード優先運転を実行することで、乗員に対する快適性の低下を心配する必要がなくなる。このとき、駐車時に空調部110を作動させることで、車両バッテリ21があがってしまうおそれが考えられる。ここでは、充電管理されるプラグインハイブリッド自動車、電気自動車、あるいは太陽電池搭載車を対象として、車両バッテリ21の充電量が所定充電量よりも多いときに、外気モード優先運転を実行するので、車両バッテリ21があがってしまうことを防止することができる。
【0038】
(第3実施形態)
第3実施形態の車両用空調装置100Cを
図5に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態に対して、車両の排気口に排気用ファン111を設け、この排気用ファン111を加えて外気モード優先運転を行うようにしたものである。
【0039】
排気用ファン111は、例えば、小型で薄型のファンであり、車両後方の排気口に設けられている。排気用ファン111の作動は、空調制御部120によって制御されるようになっている。
【0040】
そして、本車両用空調装置100Cの空調制御部120は、外気モード優先運転を実行する際に、排気用ファン111を同時に作動させるようになっている。
【0041】
これにより、外気モード優先運転の実行時に、排気用ファン111によって、強制的に車室内の空気を排出することができる。よって、外気モード優先運転による換気効果を高めることができる。
【0042】
(第4実施形態)
第4実施形態の車両用空調装置100Dを
図6に示す。第4実施形態は、上記第1実施形態に対して、臭い検出手段としての臭いセンサ112を設け、臭いセンサ112によって得られる信号に応じて、一時的に外気モード優先運転を解除するようにしている。
【0043】
臭いセンサ112は、車両外部での特定の臭いを検出するセンサである。臭いの対象は、例えば、田畑等の耕作地における肥料の臭い、畜産場における家畜の臭い、工場地帯で使用される処理剤等の臭いである。臭いセンサ112によって得られる臭い信号は、空調制御部120に出力されるようになっている。
【0044】
本車両用空調装置100Dの空調制御部120は、外気モード優先運転を実行する際に、臭いセンサ112から得られる車両外部の臭い(臭い信号)が、予め定めた臭いレベルよりも高いときに、外気モード優先運転を一時的に解除し、内気モードに切替えるようになっている。予め定めた臭いレベルというのは、乗員にとって不快と感じられる臭いレベルである。
【0045】
これにより、車両の外部の臭いが、予め定めた臭いレベルよりも高いときに、車両外部の臭いを車内に導入してしまうことを防止できるので、快適な車室内環境を保つことができる。
【0046】
(第5実施形態)
第5実施形態の車両用空調装置100Eを
図7に示す。第5実施形態は、上記第1実施形態に対して、乗員の手動操作によって入力可能な解除選択手段としての解除スイッチ113を設け、解除スイッチ113によって得られる解除信号に応じて、外気モード優先運転を解除するようにしている。
【0047】
解除スイッチ113は、予め外気モード優先運転を承知している乗員が、外気モード優先運転の必要性を感じないときに入力するスイッチであり、入力された解除信号は、空調制御部120に出力されるようになっている。
【0048】
本車両用空調装置100Eの空調制御部120は、外気モード優先運転を実行する際に、解除スイッチ113からの解除信号を受けると、新車購入以降の所定の段階が終了する前であっても、外気モード優先運転を解除し、それ以降は、通常の内外気運転を行う。
【0049】
乗員によっては、新車時の車室内の臭いがさほど気にならない人もいる。このような人が、新車購入以降の初期段階において、解除スイッチ113による選択を行ったのであれば、乗員の意思に基づいた外気モード優先運転の解除が可能となる。
【0050】
(第6実施形態)
第6実施形態の車両用空調装置100Fを
図8に示す。第6実施形態は、上記第1実施形態に対して、乗員の手動操作によって入力可能なモード選択手段としての内外気選択スイッチ114を設け、内外気選択スイッチ114によって得られる内気モードの選択頻度に応じて、外気モード優先運転を解除するようにしている。
【0051】
内外気選択スイッチ114は、乗員の意思により、内気モード、あるいは外気モードを選択入力するスイッチであり、入力された選択信号は、空調制御部120に出力されるようになっている。
【0052】
本車両用空調装置100Eの空調制御部120は、新車購入以降の初期段階において、選択信号のうち、内気モードが選択された場合の頻度を記憶していく。そして、記憶した内気モードの選択頻度が、予め定めた所定頻度を超えると、新車購入以降の所定の段階が終了する前であっても、外気モード優先運転を解除し、それ以降は、通常の内外気運転を行う。
【0053】
乗員によっては、新車時の車室内の臭いがさほど気にならない人もいる。このような人が、新車購入以降の初期段階において、自動制御によって外気モード優先運転とされることを嫌って、内気モードを好んで選択し、その選択頻度が所定頻度を超えるようであれば、無理に外気モード優先運転を実行する必要もないことになる。よって、このような場合であれば、外気モード優先運転を解除することで、乗員の希望にかなった空調制御とすることができる。
【0054】
(第7実施形態)
第7実施形態の車両用空調装置の基本構成は、上記第1実施形態の車両用空調装置100Aと同一であるが、空調制御部120による制御内容が異なるものとしている。
【0055】
本実施形態の車両用空調装置では、
図9に示すように、通常の制御において、目標吹出温度TAOに応じて設定される空調用空気の導入モードが、内気モードと外気モードに加えて、内気および外気の両者を導入する内外気モードが追加されている。
【0056】
そして、空調制御部120は、新車購入以降の初期段階において、目標吹出温度TAOに基づく空調用空気の導入モードが、内外気モードを選択すべき条件であると、導入する外気量が内気量よりも多くなるようにして、外気モード優先運転を実行する。外気量と内気量との比率は、例えば、外気量70〜80、内気量30〜20といった具合で設定することができる。
【0057】
これにより、内外気の両者を用いた空調用空気の導入による空調を可能とすると共に、より多くの外気を用いた換気作用を発揮することができ、きめ細かな制御が可能となる。