(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の窒化物半導体よりなる層の不純物濃度は、前記第2の窒化物半導体よりなる層の不純物濃度より大きいことを特徴とする、請求項1、2ないし3のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
前記電子供給層は、前記第2の窒化物半導体よりなる層よりも前記チャネル層に近い位置に、前記第2の窒化物半導体よりバンドギャップが大きい第4の窒化物半導体よりなる層を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
前記電子供給層は、前記第3の窒化物半導体よりなる層から前記第4の窒化物半導体よりなる層に達するリセス部が設けられ、前記リセス部の底部に前記ゲート電極が形成された、請求項5に記載の電界効果トランジスタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、InAlGaN電子障壁層を用いると、AlGaN電子障壁層を用いた場合と比べて著しくリーク電流が増大し、オフ耐圧が低下するという課題が発生する。InAlGaN層を用いたことによるキャリア密度の増加を加味しても非常にオフ耐圧が低いことから、InAlGaN層の結晶性が悪くなることで、電子障壁層がn型化していることが上記課題の主な原因と推定される。
【0008】
InAlGaN電子障壁層の結晶成長時、蒸気圧の高いInを取り込みやすくするため、AlGaN電子障壁層よりも100℃程度結晶成長温度を低くする必要がある。しかしながら、結晶成長温度が低いとIII族窒化物半導体を構成する原子が結晶表面を十分にマイグレーションしなくなるため、結晶欠陥が生成されやすくなる。この場合、結晶欠陥の中でも特に窒素空孔が形成されているものと考えられる。窒素空孔はIII族窒化物半導体においてドナーとして働くため、ドーピングを行わなくても結晶がn型化する。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、大電流かつオフ耐圧が高く、且つゲートリーク電流が少ないIII族電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の電界効果トランジスタは、基板と、基板の上に配置された、第1の窒化物半導体よりなるチャネル層と、チャネル層の上に形成された電子供給層と、電子供給層の上に形成されたソース電極、ゲート電極およびドレイン電極と、を有し、電子供給層は、第1の窒化物半導体よりもバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体よりなる層と、第2の窒化物半導体よりなる層の上に形成された、Inを含有し、かつ第1の窒化物半導体よりもバンドギャップが大きい第3の窒化物半導体よりなる層と、を有し、第3の窒化物半導体よりなる層は、アクセプタ性不純物が添加されてドナーが補償されているものである。
【0011】
この構成により、第3の窒化物半導体よりなる層がInを含有し、アクセプタ性不純物が添加されてドナーが補償されていることにより、オフ耐圧が増加し、かつリーク電流が低減する。
【0012】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに第2の第2の窒化物半導体は、Inを含有することが好ましい。この好ましい構成によれば、その下にあるチャネル層に対し自発分極によるキャリアをチャネル層により多く供給することができ、より多くの電流を流すことができる。
【0013】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに第2の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層とは同一組成であることが好ましい。この好ましい構成によれば、オフ耐圧と大電流化を両立できる。
【0014】
本発明の電界効果トランジスタは、第3の窒化物半導体よりなる層の不純物濃度は、第2の窒化物半導体よりなる層の不純物濃度より大きいことが好ましい。
【0015】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに電子供給層は、第2の窒化物半導体よりなる層よりもチャネル層に近い位置に、第2の窒化物半導体よりバンドギャップが大きい第4の窒化物半導体よりなる層を有することが好ましい。
【0016】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに第4の窒化物半導体のバンドギャップは、第3の窒化物半導体のバンドギャップよりも大きいことが好ましい。
【0017】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに電子供給層は、第2の窒化物半導体よりなる層と第4の窒化物半導体よりなる層との間に配置された第5の窒化物半導体よりなる層を備え、第5の窒化物半導体のバンドギャップは、第4の窒化物半導体のバンドギャップよりも小さいことが好ましい。
【0018】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに第5の窒化物半導体よりなる層のIn組成は、第2の窒化物半導体よりなる層のIn組成よりも小さいことが好ましい。この好ましい構成によれば、InAlGaN合金散乱の抑制がなされ移動度の向上によりシート抵抗が低減できる。
【0019】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに第3の窒化物半導体よりなる層のアクセプタ性不純物の濃度は、5×10
18cm
-3以上5×10
19cm
-3以下であることが好ましい。この好ましい構成によれば、第3の窒化物半導体よりなる層のドナーを十分に補償することができる。
【0020】
本発明の電界効果トランジスタは、さらに電子供給層は、第3の窒化物半導体よりなる層から第4の窒化物半導体よりなる層に達するリセス部が設けられ、リセス部の底部にゲート電極が形成されたことが好ましい。この好ましい構成によれば、電界効果トランジスタのしきい値電圧の制御が可能となる。
【0021】
本発明の電界効果トランジスタは、さらにチャネル層とゲート電極との間に絶縁層を有することが好ましい。この好ましい構成によれば、ゲートリーク電流を少なく、大電流かつオフ耐圧を高くできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電界効果トランジスタによれば、電子供給層におけるドナー不純物が補償され、それにより大電流かつオフ耐圧の高い電界効果トランジスタを実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、以下に図面を用いて説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタを製造方法とともに説明する。
図1は第1の実施の形態に係る電界効果トランジスタの上面図、
図2は
図1のA−A´線に沿って切った断面図である。
【0026】
まず、MOCVD法により、主面の面方位が(111)のSiからなる基板101の主面上に、膜厚が2μmの例えばGaNからなるチャネル層102、膜厚が1nmの例えばAlNからなる第一電子障壁層103、膜厚が10nmの例えばAl
0.30Ga
0.70Nからなる第二電子障壁層104、膜厚が7.5nmの例えばIn
0.18Al
0.82Nからなる第三電子障壁層105、Mgをドーピングした膜厚が7.5nmの例えばIn
0.18Al
0.82Nからなる第四電子障壁層106を順次成長する。第一電子障壁層103、第二電子障壁層104、第三電子障壁層105、第四電子障壁層106にて電子供給層が形成されている。次に、レジストパターニング後にたとえばBイオンを注入することによりイオン注入部107を形成する。次に、たとえばTi/Al(20nm/200nm)からなるソース電極108およびドレイン電極109を前記第四電子障壁層106の上に順次形成する。次に、たとえばNi/Au(膜厚100nm/500nm)からなるゲート電極110を形成する。
【0027】
ここで、第四電子障壁層106のMgの濃度は、5×10
18cm
-3であり、第四電子障壁層106内のドナーを十分に自己補償する濃度である。なお、Mgの濃度は2次イオン質量分析法(SIMS)にて測定した。
【0028】
第四電子障壁層106のMgの濃度が5×10
18cm
-3であるとき、第四電子障壁層106内のドナーが十分に自己補償されるのは、以下の理由による。
【0029】
すなわち、第四電子障壁層106はInAlGaNからなり、Mgを添加しない場合はn型となり10
17cm
-3〜10
18cm
-3程度のキャリア濃度を有する。一方、例えばGaNの場合ではMgの濃度が5×10
18cm
-3であるとき、p型キャリア濃度は8×10
17cm
-3である。すなわち、第四電子障壁層106に5×10
18cm
-3の濃度のMgを添加した場合、8×10
17cm
-3程度のp型キャリアが生じることになる。このp型キャリアとMgを添加しない場合に生じるn型キャリアが相殺する。このようにして、第四電子障壁層106内のドナーが十分に自己補償されるのである。
【0030】
ソース電極108およびドレイン電極109は、チャネル層102とオーミック的に導通し、ゲート電極110は第四電子障壁層106に対してショットキー接触をする。ソース電極108およびドレイン電極109がチャネル層102とオーミック的に導通するのは、第一電子障壁層103、第二電子障壁層104および第三電子障壁層105がn型であり、第四電子障壁層106の層厚が薄いからである。
【0031】
なお、チャネル層102、第一電子障壁層103、第二電子障壁層104、第三電子障壁層105および第四電子障壁層106の主面の面方位は(0001)面(c面)である。
【0032】
上記により製造された本発明に電界効果トランジスタの層構造については、以下の表1のようになる。
【0034】
また、本発明の電界効果トランジスタについて、ゲート電極110の長手方向は<11−20>方向としている。従って、ソース電極108とゲート電極110とを結ぶ方向は<1−100>方向である。ゲート長(ゲート電極110の<1−100>方向に沿った幅)は2μmであり、ソース電極108とゲート電極110との向かい合う両端の電極間距離は1.5μmであり、ドレイン電極109とゲート電極110との向かい合う両端の電極間距離は10μmである。また、電界効果トランジスタの素子サイズは<11−20>方向に250μmであり、<1−100>方向に250μmである。イオン注入部107は、電界効果トランジスタの端部より20μmの位置まで設けられている。
【0035】
なお、GaNと格子整合したInAlGaNの臨界膜厚は、理論上無限大となるはずであるが、実際には膜厚50nm以上堆積させると急激に結晶性が低下する。
【0036】
ここで、膜厚をd、基板とエピタキシャル膜の格子定数差Δaと基板の格子定数aの比Δa/aを格子不整合度と定義すると、クラックが入らない良好な結晶を得るためには
【0038】
を満たすような格子不整合度が好ましいことを実験的に確認した。さらに、この条件の中でも第三電子障壁層105、第四電子障壁層106の膜厚は、合計して50nm以下であることが特に好ましい。
【0039】
この第の実施の形態に係る電界トランジスタの特性について、以下に説明する。
【0040】
ここで検討した電界効果トランジスタとしては、第三電子障壁層105および第四電子障壁層106がともにアンドープであるサンプル(サンプルA)、第三電子障壁層105および第四電子障壁層106中に一様にMgをドーピングしたサンプル(サンプルB)、第三電子障壁層105をアンドープとし、第四電子障壁層106にMgをドーピングしたサンプル(サンプルC)の3種類である。なお、サンプルBおよびサンプルCにおいてドープされた層のMg濃度は、ともに5×10
18cm
-3であり、層内のドナーを十分に自己補償する濃度である。
【0041】
検討したサンプルについて、第三電子障壁層105および第四電子障壁層106のMgドープの有無とMg濃度との関係は、表2のようになる。
【0043】
(1)オフ耐圧特性
まず、上記サンプルA〜Cについて、ゲート電極110とドレイン電極109との間の距離をパラメータとし、ゲート電極110に電圧を印加してオフ耐圧を測定した。ここで、オフ耐圧とは、電界効果トランジスタのゲート電圧をしきい値電圧以下(つまりオフ状態)にした状態でのソースとレインとの間の耐圧のことをいう。その結果、
図3に示す結果が得られた。
図3より、サンプルAと比べてサンプルBおよびサンプルCのオフ耐圧が向上していることがわかる。ゲート電極110とドレイン電極109との間の距離が10μmのとき、オフ耐圧は表3のようになる。
【0045】
表3より、第四電子障壁層106にMgをドーピングしていないサンプルAのオフ耐圧は60Vであり、第四電子障壁層106にMgをドーピングしたサンプルBおよびサンプルCのオフ耐圧は、ともに400Vであることがわかった。このことから、第四電子障壁層106にMgをドーピングすることで、オフ耐圧が60V程度から400V超まで飛躍的に向上したことがわかった。
【0046】
このオフ耐圧の向上について以下に説明する。
【0047】
第三電子障壁層105と第四電子障壁層106の結晶成長時、蒸気圧の高いInを取り込みやすくするため、第三電子障壁層105および第四電子障壁層106がAlGaNの場合よりも100℃程度結晶成長温度を低くする必要がある。しかしながら、結晶成長温度が低いとIII族窒化物半導体を構成する原子が結晶表面を十分にマイグレーションしなくなるため、結晶欠陥が生成されやすくなる。この場合、結晶欠陥の中でも特に窒素空孔が形成されているものと考えられる。窒素空孔はIII族窒化物半導体においてドナーとして働くため、ドーピングを行わなくても結晶がn型化する。
【0048】
従って、第三電子障壁層105と第四電子障壁層106にInAlGaNを用いた場合、リーク電流が多くなり、アバランシェ破壊も生じやすくなることでオフ耐圧が低下するものと考えられる。
【0049】
そこで、本願発明者らは、InAlGaNの第三電子障壁層105と第四電子障壁層106とにMgをドーピングすることにより正孔を生じさせ、窒素空孔によって生じた電子を正孔によって自己補償させることを試みた。その結果、リーク電流が低減し、オフ耐圧が向上することがわかった。
【0050】
結果として、ゲート電極110とドレイン電極109との間距離が10μmでオフ耐圧は60Vしかなかったものが400Vまで改善したのである。
【0051】
なお、オフ耐圧の向上から、第四電子障壁層106は高抵抗または半絶縁性となっていることがわかった。
(2)Id−Vd特性
次に、サンプルA、サンプルBおよびサンプルCに関するドレイン電流・ドレイン電圧特性(以下、Id−Vd特性という)について説明する。
【0052】
まず、サンプルAとサンプルBとについて、Id−Vd特性を
図4に示す。
図4において、横軸がドレイン電圧(単位はV)、縦軸がドレイン電流(単位はA/mm)であり、グラフAはサンプルAに関するグラフであり、グラフBはサンプルBに関するグラフである。なお、ゲート電圧は、それぞれのグラフについて−2V〜6Vの間で1Vステップにて変化させている。
【0053】
サンプルBのように電子を十分に自己補償させるほどのMgを第三電子障壁層105および第四電子障壁層106にドーピングすると、Mgをドーピングしていない場合(サンプルA)と比較して著しく最大ドレイン電流が減少した。これは、Mgドーピングに伴う不純物散乱の増大により電子移動度が著しく低下してシート抵抗が増大したことによるものと推定される。
【0054】
次に、上記サンプルBおよびサンプルCについて、ドレイン電流ドレイン電圧特性を調べた、その結果を
図5に示す。
図5において、横軸がドレイン電圧(単位はV)、縦軸がドレイン電流(単位はA/mm)であり、グラフBはサンプルBに関するグラフであり、グラフCはサンプルCに関するグラフである。なお、ゲート電圧は、それぞれのグラフについて−2V〜6Vの間で1Vステップにて変化させている。
図4より、ドレイン電流ドレイン電圧特性サンプルBについては大幅に電流が低減したのに対し、サンプルCについてはサンプルAと同等のドレイン電流が得られた。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、オフ耐圧が飛躍的に向上するとともに大電流の電界効果トランジスタを実現できることがわかった。
【0056】
なお、Mg濃度が5×10
17cm
-3以上5×10
20cm
-3以下、特にMg濃度が5×10
18cm
-3以上5×10
19cm
-3であれば、第四電子障壁層106において層内のドナーを十分に自己補償できて好適な第四電子障壁層106が得られる。
【0057】
また、上記実施の形態においては、第三電子障壁層の組成と第四電子障壁層の組成とを等しくしているが、第三電子障壁層の組成と第四電子障壁層の組成は必ずしも等しくなくてもよい。
【0058】
第四電子障壁層106の上にゲート電極110が形成されている場合、ゲート電極110の端部に電界集中がしやすくなるので、第四電子障壁層106のオフ耐圧を特に高くするのが好ましい。
【0059】
一般的に、InAlGaNのIn組成を高くしてMgのドーピングを過剰に行うと、Mgがアクセプタとして働く格子位置に納まらず、ドナーとしても働くようになるため、第四電子障壁層106のIn組成は、オフ耐圧向上を目的とする場合は低い方が好ましい。
【0060】
しかしながら、第四電子障壁層106のIn組成を下げた場合、電流が減少してしまうというトレードオフが起きるので、オフ耐圧と大電流化を両立したい場合は第四電子障壁層106の組成は、第三電子障壁層105と同一組成であることが好ましい。
【0061】
また、InAlGaNはIn、Al、Ga、そしてNから成る四元混晶であるため、In組成が高くなるほど合金散乱による移動度低下が著しい。そこで、第二電子障壁層104と第三電子障壁層105との間には、第二電子障壁層104および第三電子障壁層105よりもバンドギャップが小さく、第三電子障壁層105よりもIn組成の小さい窒化物半導体層が挿入されていてもよい。これにより、InAlGaNの合金散乱の抑制がなされ移動度の向上によりシート抵抗を低減することができる。
【0062】
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態に係る電界効果トランジスタを製造方法とともに説明する。
図6は第2の実施の形態に係る電界効果トランジスタの上面図、
図7は
図6のA−A´線に沿って切った断面図である。
図6、
図7において、
図2、
図3と同一の要素は同一の符号を付与し説明を省略する。第1の実施例と同様にして、MOCVD法により基板101上にチャネル層102、第一電子障壁層103、第二電子障壁層104、第三電子障壁層105、第四電子障壁層106を順次堆積させる。次に、レジストパターニング後にたとえばBイオンを注入することによりイオン注入部107を形成する。次に、レジストパターニングの後にドライエッチングをすることにより、リセス部201を形成する。しきい値電圧が過度にマイナス側に大きくならないよう、リセス部201の底面は第一電子障壁層103、もしくは第二電子障壁層104に達するようにする。本実施の形態においては、第一電子障壁層103の上面に達するようにリセス部201を形成している。
【0063】
なお、リセス部201については、リセス幅(<1−100>方向に沿った幅)は1μmである。その他電界効果トランジスタに関するパラメータは、第1の実施の形態と同様である。
【0064】
次に、ソース電極108およびドレイン電極109を第四電子障壁層106の上に順次形成する。次に、ゲート電極110をリセス部201の上に形成する。
【0065】
ここで検討した電界効果トランジスタとして、リセス部201があるサンプルをサンプルD、リセス部201がないサンプルをサンプルEとする。サンプルDおよびサンプルEに対し、しきい値電圧を調べたところ、表4のようになった。
【0067】
リセス部201がないサンプルEの場合はゲート電極110の下部のキャリア密度が非常に高く、しきい値電圧が−15V以下となっていたが、前記リセス部201を有するサンプルDの場合はしきい値電圧を−3V程度とすることができる。
【0068】
以上のように、本実施の形態によれば、オフ耐圧が飛躍的に向上するとともにしきい値電圧を−3V程度に制御した大電流の電界効果トランジスタを実現できる。
【0069】
なお、リセス部201の底面は、第一電子障壁層103の層厚が薄いほどしきい値電圧が正にシフトする。しかしながら第一電子障壁層103の層厚が薄くなるようにリセス部201を形成した場合、第三電子障壁層105が窒素空孔形成によりn型化しているため、ゲート電極110が第三電子障壁層105に接しているとリーク電流増大の原因となるため、例えば第三電子障壁層105のゲート電極110が接する部分にはイオン注入等により高抵抗化したり、または絶縁層を形成することにより、ゲートリーク電流を低減させることが好ましい。
【0070】
(第3の実施の形態)
以下、第3の実施の形態に係る窒化物半導体素子を製造方法とともに説明する。
図8は第3の実施の形態に係る電界効果トランジスタの上面図、
図9は
図8のA−A´線に沿って切った断面図である。
図8、
図9において、
図2、
図3と同一の要素は同一の符号を付与し説明を省略する。第1の実施例と同様にして、MOCVD法により基板101上にチャネル層102、第一電子障壁層103、第二電子障壁層104、第三電子障壁層105、第四電子障壁層106を順次堆積させる。次に、レジストパターニング後にたとえばBイオンを注入することによりイオン注入部107を形成する。次に、レジストパターニング後にドライエッチすることによりリセス部201を形成し、第四電子障壁層106の上にソース電極108、ドレイン電極109、前記リセス部201の上にゲート電極110を形成する。実施例2においてはゲート電極と第三電子障壁層105、第四電子障壁層106が接していたが、本実施の形態においては、
図9に示すように、リセス部201の幅がゲート電極110の幅よりも広く、ゲート電極110と第三電子障壁層105、第四電子障壁層106と接しない構成となっている。なお、本実施の形態においては、第一電子障壁層103の上面に達するようにリセス部201が形成されている。
【0071】
なお、リセス部201については、リセス幅(<1−100>方向に沿った幅)は1μmである。その他電界効果トランジスタに関するパラメータは、第1の実施の形態と同様である。
【0072】
第三電子障壁層105はInを含んでおり、窒素空孔が多い。そのため、第三電子障壁層105とゲート電極110とを離間させることによってゲートリーク電流を抑制できる。この第3の実施の形態に係る電界効果トランジスタについては、第2の実施の形態の場合と同様に、リセス部201を有することによりしきい値電圧を−3V程度とすることができた。
【0073】
以上のように、本実施の形態によれば、オフ耐圧が飛躍的に向上するとともにしきい値電圧を−3V程度に制御した大電流の電界効果トランジスタを実現できる。
【0074】
(第4の実施の形態)
以下、第4の実施の形態に係る窒化物半導体素子を製造方法とともに説明する。
図10は第4の実施の形態に係る電界効果トランジスタの上面図、
図11は
図10のA−A´線に沿って切った断面図である。
図10、
図11において、
図2、
図3と同一の要素は同一の符号を付与し説明を省略する。
【0075】
第1の実施の形態と同様にして、MOCVD法により基板101上にチャネル層102、第一電子障壁層103、第二電子障壁層104、第三電子障壁層105、第四電子障壁層106を順次堆積させる。次に、レジストパターニング後にたとえばBイオンを注入することによりイオン注入部107を形成する。次に第四電子障壁層106を覆うように、例えば層厚が100nmのSiNからなる絶縁膜202を形成する。次に、レジストパターングにより第四電子障壁層106の上にオーミック窓部203を形成する。次に、オーミック窓部203の上にソース電極108、ドレイン電極109を形成する。次に、リセス部201および絶縁膜202の上にゲート電極110を形成する。
【0076】
なお、本実施の形態においては、第一電子障壁層103の上面に達するようにリセス部201が形成されている。
【0077】
なお、リセス部201については、リセス幅(<1−100>方向に沿った幅)は1μmである。その他電界効果トランジスタに関するパラメータは、第1の実施の形態と同様である。
【0078】
このようにして製造された第3の実施の形態に係る電界効果トランジスタについては、絶縁膜202によりゲートリーク電流が抑制される。
【0079】
以上のように、本実施の形態によれば、オフ耐圧が飛躍的に向上するとともに大電流・低ゲートリーク電流の電界効果トランジスタを実現できる。
【0080】
(第5の実施の形態)
以下、第5の実施の形態に係る窒化物半導体素子を製造方法とともに説明する。
図12は第5の実施の形態に係る電界効果トランジスタの上面図、
図13は
図12のA−A´線に沿って切った断面図である。
図12、
図13において、
図2、
図3と同一の要素は同一の符号を付与し説明を省略する。
【0081】
第1の実施の形態と同様にして、MOCVD法により基板101上にチャネル層102、第一電子障壁層103、第二電子障壁層104、第三電子障壁層105、第四電子障壁層106を順次堆積させる。次に、レジストパターニング後にたとえばBイオンを注入することによりイオン注入部107を形成する。次に、レジストパターニング後にドライエッチすることによりリセス部201を形成する。次に、リセス部201上と第四電子障壁層106を覆うように、例えばSiNからなる絶縁膜202を形成する。次に、レジストパターニングにより第四電子障壁層106の上にオーミック窓部203を形成する。次に、オーミック窓部203の上にソース電極108、ドレイン電極109を形成する。次に、リセス部201および絶縁膜202上にゲート電極110を形成する。
【0082】
なお、本実施の形態においては、第一電子障壁層103の上面に達するようにリセス部201が形成されている。
【0083】
なお、リセス部201については、リセス幅(<1−100>方向に沿った幅)は1μmである。その他電界効果トランジスタに関するパラメータは、第1の実施の形態と同様である。
【0084】
絶縁膜202によりゲートリーク電流が抑制され、リセス部201を有することにより、第4の実施の形態の電界効果トランジスタよりもしきい値電圧を正にシフトすることができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、しきい値電圧を制御するとともにオフ耐圧が飛躍的に向上するとともに大電流・低ゲートリーク電流の電界効果トランジスタを実現できる。
【0086】
(第6の実施の形態)
以下、第6の実施の形態に係る窒化物半導体素子を製造方法とともに説明する。
図14は第6の実施の形態に係る電界効果トランジスタの上面図、
図15は
図14のA−A´線に沿って切った断面図である。
図14、
図15において、
図2、
図3と同一の要素は同一の符号を付与し説明を省略する。
【0087】
第1の実施の形態と同様にして、MOCVD法により基板101上にチャネル層102、第一電子障壁層103、第二電子障壁層104、第三電子障壁層105、第四電子障壁層106を順次堆積させる。次に、レジストパターニング後にたとえばBイオンを注入することによりイオン注入部107を形成する。次に、レジストパターニング後にドライエッチすることによりリセス部201を形成する。次に、リセス部201上と第四電子障壁層106を覆うように、例えばSiNからなる絶縁膜202を形成する。次に、レジストパターングにより第四電子障壁層106上にオーミック窓部203を形成する。次に、オーミック窓部203上にソース電極108、ドレイン電極109を形成する。次に、リセス部201および絶縁膜202上にゲート電極110を形成する。第5の実施の形態においてはゲート電極110の側面と絶縁膜202が接していたが、本実施の形態においては、
図15に示すように、リセス部201の幅がゲート電極110の幅よりも広く、ゲート電極110の側面と絶縁膜202とが接しない構成となっている。
【0088】
なお、本実施の形態においては、第一電子障壁層103の上面に達するようにリセス部201が形成されている。
【0089】
なお、リセス部201については、リセス幅(<1−100>方向に沿った幅)は1μmである。その他電界効果トランジスタに関するパラメータは、第1の実施の形態と同様である。
【0090】
本実施の形態にかかる電界効果トランジスタについては、第三電子障壁層105において生じた電子が絶縁膜202をトンネルしてゲート電極110に到達することがなく、第5の実施の形態にかかる電界効果トランジスタよりもさらにゲートリーク電流を抑制できる構成となっている。また、第5の実施の形態と同様にリセス部201を有することにより、第4の実施の形態にかかる電界効果トランジスタよりもしきい値電圧を正にシフトすることができる。
【0091】
以上のように、本実施の形態によれば、しきい値電圧を制御するとともにオフ耐圧が飛躍的に向上するとともに大電流・低ゲートリーク電流の電界効果トランジスタを実現できる。
【0092】
なお、上記第1ないし第6の実施の形態において、電界効果トランジスタを構成する各半導体層の組成や層厚、リセス部201の幅は上記に限定されない。また、ソース電極108、ドレイン電極109およびゲート電極110を構成する電極金属やその膜厚は上記に限定されない。また、イオン注入部107の領域は、上記に限定されない。
【0093】
また、上記第4の実施の形態において、絶縁膜202はSiNに限らず、SiO
2やSiON(シリコン酸窒化膜)、その他酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を用いてもよい。
【0094】
また、上記第1ないし第6の実施の形態において、基板101としては、主面を(111)とするSi以外にサファイア、炭化珪素、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化ガリウム等を用いることができる。
【0095】
また、上記第1ないし第6の実施の形態において、アクセプタ性の不純物としてMgを用いたが、Mg以外にBe、C、Znを用いてもよい。
【0096】
また、上記第1ないし第6の実施の形態において、アクセプタ性の不純物としてMgを用いたが、Mg以外にBe、C、Znを用いてもよい。