(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
実施形態及び図面では、表示部12のカード券面の法線方向を上下方向Zとし、表示部12の表示が正位置になるように電子モジュール10等を見たときの左右方向X、縦方向Yを示す。なお、各図面において、上下方向Z(厚み方向)等の構成等は、構成を明確に図示するために、適宜大きさを誇張する。
【0010】
図1は、第1実施形態のカード1を上面から見た図、断面図である。
カード1は、例えば、クレジットカード、銀行のキャッシュカード等に利用されるものである。カード1の総厚みは、例えば0.60〜0.85mm程度である。
カード1は、電子モジュール10、上層20、枠体30、下層40を備える。
カード1は、上層側から上層20、枠体30、下層40が積層されて構成される。電子モジュール10は、枠体30の内部に配置されることにより、上層20及び下層40間に配置される。
各部材間の隙間には、接着剤50が充填されている。これにより、電子モジュール10が、カード1内に固定される。
【0011】
電子モジュール10は、モジュール基板11、表示部12、スペーサ13、電池14を備える。
電子モジュール10は、ICチップ(図示せず)の制御によって、カード1の使用毎に認証パスワード(いわゆるワンタイムパスワード)を生成する機能を有する。
モジュール基板11は、リジッド又はフレキシブルタイプのプリント配線基板である。本実施形態では、モジュール基板11は、ポリイミド等から形成されるフレキシブルタイプである。モジュール基板11の厚みは、例えば厚み100μm程度である。モジュール基板11には、表示部12やICチップ、ドームスイッチ(図示せず)等が実装され、また、電池14が接続端子(図示せず)によって接続されている。
【0012】
表示部12は、パスワードを表示する表示装置である。表示部12は、例えば、液晶ディスプレイ、電子ペーパディスプレイ等である。
スペーサ13は、厚みを調整するための部材である。スペーサ13は、モジュール基板11の下面に両面テープ等によって貼付されている。
スペーサ13の外形は、カード1を上面から見たときに、表示部12よりも1回り大きい。
【0013】
スペーサ13の厚みは、接着剤50の内部に含まれる気泡Aが表示部12の上面及び上層20の下面間に入らないように、設定されている。つまり、表示部12の上面及び上層20の下面間の長さL1(窓部−表示部間長さ)は、気泡Aの外形よりも小さい。なお、実施形態では、気泡Aとは、肉眼で視認可能な外形を有するものをいい、肉眼で視認できない微小なものまでは含まない。
実施形態では、上層20の下面及び下層40の上面間の長さL2から、表示部12の上面及びスペーサ13の下面間の長さL3を減算した値が、気泡Aの大きさよりも小さくなるように設定されている。これにより、ラミネート工程で、電子モジュール10が上層20及び下層40間内で動いて、スペーサ13が下層40に接してしまう場合でも、気泡Aが表示部12の上面及び上層20の下面間に入ることを、より確実に抑制できる。ラミネート工程の詳細は、後述する。
【0014】
電池14は、電子モジュール10の表示部12、ICチップ等に電力を供給する部材である。
上記構成により、ICチップは、ドームスイッチの操作に応じて、パスワードを生成する。ICチップは、表示部12を駆動して、このパスワードを表示する。
【0015】
上層20は、透明な樹脂(例えば、PVC、PET、PETG等)製のシートである。上層20の厚みは、例えば100〜200μm程度である。
上層20は、印刷層20a、窓部20b、ボタン部20cを備える。
印刷層20aは、上層20の上面に設けられている。印刷層20aは、例えば、カード1の名称等が印刷されている。なお、カード1の仕様等に応じて、印刷層20aは、上層20の下面に設けてもよい。この場合には、印刷層20aを保護することができる。
印刷層20aは、隠蔽性を有している。このため、カード1を上面から見たときに、印刷層20aは、カード1内部の構成(電子モジュール10等)を、視認できないように隠蔽する。
【0016】
窓部20bは、表示部12に対応する位置に設けられている。つまり、カード1を上面から見たときに、窓部20bの配置は、表示部12と同様な位置に配置されている。また、窓部20bの大きさは、表示領域と同様な大きさである。
窓部20bは、上層20のうち印刷層20aが設けられていない部分である。このため、窓部20bは、光を透過する。これにより、カード1の利用者等は、窓部20bから表示部12の表示内容を視認できる。
【0017】
ボタン部20cは、電子モジュール10のドームスイッチに対応する領域である。カード1の利用者等は、ボタン部20cを押し下げることにより、ドームスイッチを操作できる。
【0018】
枠体30は、カード1の内部に配置される枠状の部材である。枠体30は、例えば、PVC、PET、PETG等の樹脂シートに、貫通孔である配置孔31(
図2(B)参照)を設けて形成される。枠体30の厚みは、例えば400〜600μm程度である。
【0019】
下層40は、透明又は隠蔽性を有する樹脂シートである。下層40の厚みは、例えば100〜200μm程度である。下層40は、上層20と同様な材料により形成される。
下層40は、印刷層40aを備える。
印刷層40aは、下層40の上面又は下面に設けられている。印刷層40aは、例えば、カード1の使用方法、利用者の署名欄が印刷されている。
印刷層40aは、下層40の全面に設けられている。このため、下層40が透明な材料により形成された場合でも、印刷層40aは、カード1が下面から観察された状態では、カード1内部の構成を、視認できないように隠蔽できる。
【0020】
[カード1の製造方法]
カード1の製造方法について説明する。
図2は、第1実施形態のシート材20A,30A,40Aを示す図である。
図2(A)は、上面から見た図である。
図2(B)は、断面図である。
図2には、カード外形を二点鎖線で図示した。
図3は、第1実施形態のラミネート工程を説明する断面図である。
図3では、印刷層20a,40aの図示を省略した。なお、印刷層20a,40aは、他の構成に比較すると十分に薄いので、ラミネート加工にはほとんど影響しない。
【0021】
図2に示すように、カード1は、上層20、枠体30、下層40を複数含む上層シート材20A、枠体シート材30A、下層シート材40Aを用いて、多面取りによって製造される。
上層シート材20A、下層シート材40Aには、既に、印刷層20a,40aが設けられたものを用いる。
カード製造は、作業者又は加工装置が、以下の工程に従って行う。
【0022】
(電子モジュール配置工程♯1)
図2に示すように、電子モジュール10を、配置孔31内に配置する。電子モジュール10及び枠体30間は、テープ16等で仮固定する。
(積層工程♯2)
上層側から上層シート材20Aと、電子モジュール10が仮固定された枠体30と、下層シート材40Aとを積層し、積層体1Aの状態にする。
【0023】
(ラミネート工程♯3)
図3(A)に示すように、積層体1Aをラミネートローラ61,62間を通してラミネート加工する。
ラミネートローラ61,62は、駆動装置(図示せず)により回転駆動される。ラミネートローラ61,62間の距離は、カード1の規定厚みに対応した設定になっている。
接着剤50は、接着剤供給装置(図示せず)によって、上層シート材20A及び下層シート材40A間に供給される。
【0024】
積層体1Aは、ラミネートローラ61,62間を通過することにより加圧され、通過後には、規定厚みに成形される。このとき、余剰な接着剤50は、積層体1Aの外部に排出されたり、上流側に移動する。
なお、必要に応じて、ラミネート加工後の積層体1Aを、板でプレスしてもよい。この場合には、カード1を安定して規定厚みに製造できる。
【0025】
接着剤50の内部の気泡Aは、供給前の状態でもともと含まれていたもの、供給時に内部に混入してしまうもの等である。
前述したように、長さL1は、気泡Aの大きさ(外形)よりも小さい。このため、表示部12及び上層20間に、長さL1よりも大きい気泡Aが配置されることが抑制される。
なお、このように、気泡Aの配置を抑制できるのは、上記寸法設定により、ラミネート加工時において、表示部12及び上層20間から排出されるためと考えられる。
【0026】
この効果については、実際に上記寸法設定に基づいてカード1を複数枚試作して、窓部20bを通して気泡Aの大きさを観察することにより、確認した。
ここで、気泡Aの大きさが100μm以下であれば、肉眼による外観検査では、外観品質上許容できる程度であった。また、気泡Aの大きさが50μm以下であれば、肉眼ではほとんど気にならず、外観品質上、良好であった。そこで、実施形態では、長さL1が最大となる状態、つまり、スペーサ13の下面及び下層シート材40Aの上面が接した状態で、カード1の品質基準等に応じて、長さL1が100μm以下又は50μm以下になるように、スペーサ13の厚みを設定した。
なお、スペーサ13を設けなくても、上記寸法設定を満たす場合には、スペーサ13を削除してもよい。
【0027】
(切断工程)
接着剤50が固着したら、ラミネート後の積層体1Aを、カード外形で切断して個片にする。これにより、カード1が製造される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のカード1は、上層20及び表示部12間に視認可能な気泡Aが入ることを抑制できるので、外観品質を向上できる。
また、印刷層20aが形成されていない領域を上層20に設けることにより、窓部20bが自然に形成される。このため、カード1は、窓部20bを設けるための特別な工程が不要であり、容易に製造できる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図4は、第2実施形態のカード201を上面から見た図、断面図である。
電子モジュール210の表示部212は、モジュール基板211上に実装されているのではなく、モジュール基板211に対して、フレキシブルケーブル212aで接続されている。
スペーサ213は、表示部212の下面に直接貼付されている。
【0030】
この場合でも、第1実施形態と同様に、表示部212の上面及び上層20の下面間の長さL1(窓部−表示部間長さ)は、視認可能な気泡Aの外形よりも小さい。つまり、上層20の下面及び下層40の上面間の長さL2から、表示部212の上面及びスペーサ13の下面間の長さL3を減算した値が、気泡Aの大きさよりも小さい。
このため、本実施形態のカード201は、第1実施形態と同様に、ラミネート工程において、表示部212及び上層20間に、長さL1よりも大きい気泡Aが配置されることが抑制される。
【0031】
これにより、本実施形態のカード201は、第1実施形態と同様に、外観品質を向上できるし、また、容易に製造できる。
【0032】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、第3実施形態のカード301の断面図である。
図5(A)は、カード301の構成を分解して説明する図である。
図5(B)は、カード301の接着後の構成を説明する図である。
上層320は、上層側から、透明層321、隠蔽層322が積層されて構成される。透明層321及び隠蔽層322間は、接着剤によって接着されていたり、熱プレスによって溶着されている。
透明層321は、透明な樹脂(例えば、PVC、PET、PETG等)製のシートである。
透明層321は、第1実施形態と同様な、印刷層320aを備える。
印刷層320aは、窓部320bを設けるための印刷されていない領域を備える。
【0033】
隠蔽層322は、光を透過しない隠蔽性を有する樹脂(例えば、PVC、PET、PETG等)製のシートである。
隠蔽層322は、窓部材323を備える。
窓部材323は、透明な樹脂シート材等により形成される。カード301を上面から見たときに、窓部材323は、表示部12と同様な領域に配置されている。
図5(A)に示すように、窓部材323は、隠蔽層322の開口孔322a(孔部)に嵌め込んで、接着剤等より隠蔽層322に固定されている。窓部材323の下面は、隠蔽層322よりも下層側に突出している。
【0034】
上記構成により、透明層321のうち印刷層320aが設けられていない部分と、隠蔽層322の窓部材323とは、光を通過し、窓部320bを形成する。
【0035】
厚み方向Zの設定について説明する。
表示部12の上面及び窓部材323の下面間の長さL1(窓部−表示部間長さ)は、視認可能な気泡Aの外形よりも小さい。また、窓部材323の下面及び下層40の上面間の長さL2から、表示部12の上面及びスペーサ13の下面間の長さL3を減算した値が、気泡Aの大きさよりも小さい。
【0036】
図6は、第3実施形態のラミネート工程を説明する断面図である。
カード製造には、透明層321と、窓部材323を固定した隠蔽層322とを、接着した上層シート材320Aとを、予め製造しておく。
その後の工程、つまり、モジュール積層工程から切断工程までの工程は、第1実施形態と同様に行う。
すなわち、上層シート材320Aと、電子モジュール10を仮固定した枠体シート材30Aと、下層シート材40Aとを積層した積層体301Aを、ラミネート加工する。
【0037】
ラミネート加工時には、第1実施形態と同様に、気泡Aが配置されることが抑制される。
これにより、本実施形態のカード301は、第1実施形態と同様に、外観品質を向上できるし、また、容易に製造できる。
【0038】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
なお、本実施形態の説明及び図面において、前述した第3実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図7は、第4実施形態のカード401の断面図である。
図7(A)は、カード401の構成を分解して説明する図である。
図7(B)は、カード401の接着後の構成を説明する図である。
上層420は、上層側から、第3実施形態と同様な透明層421、隠蔽層422が積層されて構成される。
本実施形態では、窓部材423を配置する孔として、隠蔽層422の開口孔422aに加えて、透明層421の開口孔421aを設けた。
つまり、窓部材423は、隠蔽層422の開口孔422aと、透明層421の開口孔421aとに配置されて、接着剤等により透明層421、隠蔽層422に固定されている。
このため、窓部材423及び透明層421が、カード401の最上層に配置される。
【0039】
厚み方向の設定は、窓部材423の厚み等が異なる以外は、第3実施形態と同様である。このため、カード401は、表示部12の上面及び窓部材423の下面間に、気泡Aが配置されることが抑制される。これにより、カード401は、外観品質を向上できる。
【0040】
カード製造は、透明層421及び隠蔽層422に対して窓部材423を固定した上層シート材を予め製造しておき、第3実施形態と同様に、この上層シート材と、枠体シート材Aと、下層シート材とを積層して、ラミネート加工すればよい。
【0041】
これにより、本実施形態のカード301は、第3実施形態と同様に、外観品質を向上できるし、また、容易に製造できる。
【0042】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図8は、第5実施形態のカード501の断面図である。
図8(A)は、カード501の構成を分解して説明する図である。
図8(B)は、カード501の接着後の構成を説明する図である。
上層520は、上層側から、第3実施形態と同様な透明層521、隠蔽層522が積層されて構成される。
表示部12は、隠蔽層522の開口孔522a(孔部)に嵌め込まれ、接着剤等より隠蔽層522に固定されている。
表示部12及び透明層521間には、接着剤551によって、接着されている。
【0043】
厚み方向Zの設定について説明する。
第1実形態と同様に、表示部12の上面及び上層520の下面(透明層521の下面)間の長さL1(窓部−表示部間長さ)は、接着剤551内の視認可能な気泡の外形よりも小さい。また、透明層521の下面及び下層40の上面間の長さL2から、表示部12の上面及びスペーサ13の下面間の長さL3を減算した値が、気泡の大きさよりも小さい。
【0044】
上記構成により、カード501は、表示部12の上面及び透明層521の下面間に、大きい気泡が配置されることが抑制される。これにより、カード501は、外観品質を向上できる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0046】
(変形形態)
(1)本実施形態において、表示部は、パスワード等も文字を表示する表示装置である例を示したが、これに限定されない。例えば、LED等の発光装置でもよい。
【0047】
(2)本実施形態において、カード製造は、横型のラミネート加工を用いる例を示したが、これに限定されない。カード製造は、例えば、各シート材を鉛直方向下側に向けて移動する縦型のラミネート加工を用いてもよい。この場合には、電子モジュールを、上層及び下層間の中央に、安定して配置することができる。
【0048】
(3)本実施形態において、スペーサの厚み等の寸法設定は、電子モジュールが下側に最も下側に配置された場合に基づいて行う例を示したが、これに限定されない。
例えば、複数のカードを製造することにより、表示部及び上層間の長さのばらつきが分かっている場合、表示部及び上層間の長さの傾向が分かっている場合等には、これらに基づいて、スペーサの厚みを設定してもよい。