特許第6233110号(P6233110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233110
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   H01M2/10 S
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-47428(P2014-47428)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-172998(P2015-172998A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−042648(JP,A)
【文献】 特開2008−277050(JP,A)
【文献】 特開2009−252614(JP,A)
【文献】 実開昭62−149166(JP,U)
【文献】 特開昭61−239568(JP,A)
【文献】 特開平06−314571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に沿って配列された複数の電池セルを含む電池ユニットと、
前記所定の方向における前記電池ユニットの一方の端部及び他方の端部にそれぞれ配置された一対の端部材と、
前記一対の端部材によって前記電池ユニットが挟持されるように前記端部材同士を互いに連結する連結部材と、を備え、
前記端部材は、平板状であって、前記電池セルに対向する対向領域と、前記連結部材が配置される連結領域と、前記対向領域と前記連結領域との間の中間領域と、を有し、
前記中間領域の一部には、溝が設けられており、
前記中間領域は、前記溝によって前記所定の方向における前記対向領域の平均厚さよりも薄く形成された脆弱部を含む、
ことを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリ組立体が記載されている。このバッテリ組立体は、所定の方向に配列された複数の単バッテリと、所定の方向の両側から複数の単バッテリを挟むように配置された一対の保持プレートと、一方の保持プレートから他方の保持プレートに至るように延在する複数のロッドと、を備えている。このバッテリ組立体は、複数の単バッテリを挟持するように、ロッドを介して一対の保持プレート同士を互いに連結することによって、モジュール化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−148187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したバッテリ組立体にあっては、単バッテリが、例えば経年劣化等に伴って膨張する場合がある。その場合には、単バッテリを挟持するように保持プレート同士を連結するロッド等の連結部材に加わる荷重が増加する結果、当該連結部材が破断するおそれがある。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、連結部材の破断を抑制可能な電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電池モジュールは、所定の方向に沿って配列された複数の電池セルを含む電池ユニットと、所定の方向における電池ユニットの一方の端部及び他方の端部にそれぞれ配置された一対の端部材と、一対の端部材によって電池ユニットが挟持されるように端部材同士を互いに連結する連結部材と、を備え、端部材は、電池セルに対向する対向領域と、連結部材が配置される連結領域と、対向領域と連結領域との間の中間領域と、を有し、中間領域は、所定の方向における対向領域の平均厚さよりも薄く形成された脆弱部を含む、ことを特徴とする。
【0007】
この電池モジュールにおいては、電池セルの配列方向における電池ユニットの両端部に端部材が配置されている。そして、その一対の端部材によって電池ユニットが挟持されるように、連結部材によって端部材同士を互いに連結している。また、端部材は、電池ユニットの電池セルに対向する対向領域と、連結部材が配置される連結領域と、それらの間の中間領域とを有している。そして、中間領域は、電池セルに対向する対向領域の平均厚さよりも薄い脆弱部を含む。したがって、電池セルの膨張に伴って連結部材に加わる荷重が増加した場合には、その中間領域の脆弱部を起点として、一対の端部材の連結領域同士が近づく方向に端部材が変形しやすい。このため、連結部材に加わる荷重の増加を緩和することにより、連結部材の破断を抑制可能である。
【0008】
本発明に係る電池モジュールにおいては、端部材は、電池ユニット上に配置された第1の部材と、電池ユニット及び第1の部材上に配置され第1の部材に締結された第2の部材と、を有し、連結部材は、第1の部材同士を互いに連結しており、対向領域は、第1の部材、及び第2の部材における電池セルに対向する領域であり、連結領域は、第1の部材における連結部材が配置される領域であり、中間領域は、第1の部材における対向領域と連結領域との間の領域であってもよい。この場合、中間領域の脆弱部の厚さよりも平均的に厚い対向領域を、第1の部材と第2の部材とによって容易に構成することができる。つまり、脆弱部の形成が容易化される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連結部材の破断を抑制可能な電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る電池モジュールの側面図である。
図2図1に示された電池モジュールの端部の構造を示す部分的な断面図である。
図3図1に示された電池モジュールの端部材が変形する様子を示す模式的な側面図である。
図4図1に示された電池モジュールの変形例を示す部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電池モジュールの一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素同士、或いは相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る電池モジュールの側面図である。図2は、図1に示された電池モジュールの端部の構造を示す部分的な断面図である。図1,2に示されるように、電池モジュール1は、電池ユニット10と、一対の端部材20と、複数の連結部材30と、を備えている。
【0013】
電池ユニット10は、所定の方向に沿って配列された複数(ここでは7つ)の電池セル11と、互いに隣接する電池セル11同士の間に配置された複数(ここでは7つ)の伝熱プレート12とを有している。電池セル11は、例えば、リチウム二次電池等の非水電解質二次電池である。
【0014】
端部材20は、電池セル11の配列方向(所定の方向)における電池ユニット10の一方の端部10a及び他方の端部10bにそれぞれ配置されている。一方の端部材20は、伝熱プレート12を介して電池セル11上に配置されており、他方の端部材20は直接電池セル11上に配置されている。端部材20は、電池ユニット10上に配置された矩形平板状のエンドプレート(第1の部材)21と、電池ユニット10及びエンドプレート21上に配置された板状のブラケット(第2の部材)22とを有する。
【0015】
エンドプレート21は、電池セル11の配列方向からみて、電池モジュール1における電池セル11が配置された領域よりも広い範囲にわたって延在している。したがって、エンドプレート21は、電池セル11の配列方向からみて、電池セル11の外縁よりも外側まで延在している。ブラケット22は、電池セル11の配列方向からみて、電池モジュール1における電池セル11が配置された領域よりも狭い範囲内に収められている。つまり、電池セル11の配列方向からみて、ブラケット22の外縁は、電池セル11の外縁よりも内側に位置している。
【0016】
ブラケット22は、複数のボルト23によってエンドプレート21に締結されている。ブラケット22は、例えば、電池モジュール1を電池パック(不図示)の筐体(不図示)に固定する際に用いられる。このため、ブラケット22は、電池パックの筐体への締結部となる部分であって、電池セル11の配列方向に延在する部分を有するが、その図示を省略する。
【0017】
連結部材30は、例えば、端部材20(エンドプレート21)の四隅のそれぞれに配置されている。連結部材30は、一対の端部材20によって電池ユニット10が挟持されるように端部材20同士を互いに連結している。ここでは、連結部材30は、エンドプレート21同士を互いに連結している。より具体的には、連結部材30は、長尺棒状のボルト31と、ボルト31の両端に螺合されるナット32とを含む。
【0018】
ボルト31は、一対のエンドプレート21における電池セル11の外縁よりも外側に延在する部分に挿通されている。そして、連結部材30は、エンドプレート21の外側(電池ユニット10と反対側)からボルト31の両端にナット32を螺合することにより、エンドプレート21同士を締結する。これにより、電池セル11及び伝熱プレート12が端部材20(エンドプレート21)により挟持されてユニット化される。また、電池セル11に対して拘束荷重が付与される。
【0019】
ここで、端部材20は、電池セル11の配列方向に交差する方向(エンドプレート21の延在方向)に配列された複数の領域を含む。より具体的には、端部材20は、電池セル11に対向する対向領域41と、連結部材30が配置される連結領域42と、対向領域41と連結領域42との間の中間領域43とを含む。対向領域41は、電池セル11の配列方向からみて、端部材20の略中央に位置する。対向領域41は、エンドプレート21及びブラケット22における電池セル11に対向する領域である。
【0020】
連結領域42は、電池セル11の配列方向からみて、端部材20の外端付近に位置しており、電池セル11に対向していない。連結領域42は、エンドプレート21における連結部材30が配置される領域である(すなわち、ボルト31が挿通される領域である)。中間領域43は、電池セル11の配列方向からみて、電池セル11に対向していない。中間領域43は、エンドプレート21における対向領域41と連結領域42との間の領域である。電池セル11の配列方向からみたとき、中間領域43と対向領域41との境界は、電池セル11の外縁に一致する。
【0021】
対向領域41は、エンドプレート21のみからなる部分と、エンドプレート21及びブラケット22からなる部分とを含む。このため、対向領域41は、電池セル11の配列方向における厚さが相対的に薄い部分と相対的に厚い部分とを含む。一方、中間領域43は、エンドプレート21のみからなる。したがって、電池セル11の配列方向における中間領域43の厚さは、対向領域41の相対的に薄い部分の厚さと略同一であり、エンドプレート21の延在方向について略均一である。
【0022】
したがって、対向領域41の全体と中間領域43との全体とを比較すると、電池セル11の配列方向における中間領域43の平均厚さは、電池セル11の配列方向における対向領域41の平均厚さよりも薄い。換言すれば、中間領域43は、電池セル11の配列方向における対向領域41の平均厚さよりも薄く形成された脆弱部50を含む。ここでは、中間領域43の全体が、対向領域41の平均厚さよりも薄い脆弱部50である。なお、当該領域の平均厚さとは、電池セル11の配列方向における当該領域の厚さをエンドプレート21の延在方向について平均したものである。
【0023】
なお、対向領域41を、エンドプレート21及びブラケット22に加え、エンドプレート21とブラケット22とを互いに締結するボルト23を含む領域であるとみなせば、電池セル11の配列方向における脆弱部50の厚さは、電池セル11の配列方向における対向領域41の最低厚さ(エンドプレート21の厚さ)以下となる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係る電池モジュール1においては、電池セル11の配列方向における電池ユニット10の端部10a,10bに端部材20が配置されている。そして、その一対の端部材20によって電池ユニット10が挟持されるように、連結部材30によって端部材20同士を互いに連結している。また、端部材20は、電池ユニット10の電池セル11に対向する対向領域41と、連結部材30が配置される連結領域42と、それらの間の中間領域43とを有している。
【0025】
そして、中間領域43は、対向領域41の平均厚さよりも薄い脆弱部50を含む。したがって、電池セル11の膨張に伴って連結部材30に加わる荷重が増加した場合には、図3に示されるように、その脆弱部50(中間領域43)を起点として、電池セル11の配列方向に対向する連結領域42同士が互いに近づく方向に端部材20が変形する(例えば塑性変形する)。このため、電池セル11が膨張した場合であっても、連結部材30に加わる荷重の増加が緩和され、連結部材30の破断を抑制可能である。
【0026】
また、このような端部材20の変形によって、電池セル11が膨張した場合であっても、端部材20からの電池セル11の拘束荷重が大きくなり過ぎることが抑制される。このため、この電池モジュール1によれば、電池セル11の拘束荷重が必要以上に大きくなることに起因した電池セル11の特性の劣化、及び電池セル11の短寿命化を避けることが可能である。
【0027】
また、この電池モジュール1においては、端部材20は、電池ユニット10上に配置されるエンドプレート21と、電池ユニット10及びエンドプレート21上に配置されエンドプレート21に締結されたブラケット22とを有する。そして、対向領域41は、エンドプレート21、及びブラケット22における電池セル11に対向する領域であり、連結領域42は、エンドプレート21における連結部材30が配置される領域であり、中間領域43は、エンドプレート21における対向領域41と連結領域42との間の領域である。このため、脆弱部50の厚さよりも平均的に厚い対向領域41を、エンドプレート21とブラケット22とによって容易に構成することができる。つまり、脆弱部50の形成が容易化される。
【0028】
さらに、電池モジュール1においては、対向領域41がボルト23を含む領域であるとみなせば、電池セル11の配列方向における脆弱部50の厚さは、電池セル11の配列方向における対向領域41の最低厚さ(エンドプレート21の厚さ)以下である。このため、電池セル11の膨張に伴う端部材20の変形を、確実に脆弱部50を起点としたものとすることができる。これにより、電池セル11が膨張した際に、対向領域41の変形が避けられるので、電池セル11への均一な拘束荷重の付与が確実に維持される。
【0029】
以上の実施形態は、本発明に係る電池モジュールの一実施形態について説明したものである。したがって、本発明に係る電池モジュールは、上述した電池モジュールに限定されない。本発明に係る電池モジュールは、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述した電池モジュール1を変形したものですることができる。
【0030】
図4は、図1に示された電池モジュールの変形例を示す部分断面図である。図4の(a)に示されるように、電池モジュール1においては、端部材20がエンドプレート21のみであってもよい。この場合には、エンドプレート21が概ね平板状であることから、電池セル11の配列方向におけるエンドプレート21の厚さも概ね一定である。ただし、この場合には、中間領域43の一部に溝43sが設けられ、薄化されている。溝43sは、対向領域41を挟んで互いに対向する中間領域43のそれぞれに設けられており、互いに略平行に延在している。
【0031】
この溝43sの形成により、中間領域43には、電池セル11の配列方向における対向領域41の平均厚さよりも薄い脆弱部50が形成される。この場合には、電池セル11の膨張に応じて、脆弱部50を起点として端部材20が変形することにより、連結部材30に加わる荷重の増加が緩和される。したがって、連結部材30の破断や、電池セル11の劣化及び短寿命化が抑制される。
【0032】
また、図4の(b)に示されるように、電池モジュール1においては、端部材20を、電池セル11の積層方向における厚さが異なる複数(ここでは2つ)の部分からなるエンドプレート21のみとすることもできる。ここでは、エンドプレート21の電池セル11に対向する部分(対向領域41)の厚さが相対的に厚く、それ以外の部分の厚さが相対的に薄い。このような構成によって、電池セル11の配列方向における対向領域41の平均厚さよりも薄い脆弱部50を中間領域43に形成してもよい(中間領域43の全体が脆弱部50である)。
【0033】
以上のように、電池モジュール1においては、電池セル11の膨張に応じて中間領域43において端部材20の変形が生じるように、任意の態様によって、中間領域43に対して対向領域41の平均厚さよりも薄い脆弱部50を設けることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…電池モジュール、10a,10b…端部、10…電池ユニット、11…電池セル、20…端部材、21…エンドプレート(第1の部材)、22…ブラケット(第2の部材)、30…連結部材、41…対向領域、42…連結領域、43…中間領域、50…脆弱部。
図1
図2
図3
図4