特許第6233114号(P6233114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233114半導体装置用シリコン部材及び半導体装置用シリコン部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233114
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】半導体装置用シリコン部材及び半導体装置用シリコン部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20171113BHJP
   C30B 11/14 20060101ALI20171113BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C30B29/06 501Z
   C30B11/14
   H01L21/302 101L
   H01L21/302 101B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-48157(P2014-48157)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-198664(P2014-198664A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2013-48150(P2013-48150)
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】中田 嘉信
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−281307(JP,A)
【文献】 特表2010−534189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 11/14
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向凝固シリコンからなり、380mmφ以上の面積を有し、凝固方向に直交する断面における結晶粒の粒界長さの合計LSと断面積Aとから算出される粒界密度P=LS/Aが0.24以下とされていることを特徴とする半導体装置用シリコン部材。
【請求項2】
使用部位表面に露出している面積の少なくとも35%以上が1つの結晶粒にみなされる結晶(面方位が同じ)で占められることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用シリコン部材。
【請求項3】
酸素濃度が4.0×1017atoms/ml以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置用シリコン部材。
【請求項4】
窒素濃度が7.5×1014atoms/ml以上3.1×1015atoms/ml以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置用シリコン部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置用シリコン部材がドライエッチング用シリコン部材として用いられることを特徴とする半導体装置用シリコン部材。
【請求項6】
るつぼ底部に単結晶シリコン板からなる複数個の同じ結晶方位の種結晶を配置する単結晶シリコン板配置工程と、
前記単結晶シリコン板が配置されたるつぼ内にシリコン原料を装入し、前記単結晶シリコン板が完全に溶解しない条件で前記シリコン原料を溶融してシリコン融液を得るシリコン原料溶融工程と、
前記るつぼが載置されるチルプレートを下方から支持する下部ヒータと、前記るつぼの上方に配設された上部ヒータと、前記るつぼの周囲に設けられた断熱材と、備えた柱状晶シリコンインゴット製造装置を用いて、前記シリコン融液を、前記単結晶シリコン板が配置される前記るつぼ底部から上方に向けて一方向凝固させて柱状晶シリコンインゴットを得る一方向凝固工程と、
前記柱状晶シリコンインゴットを加工して半導体装置用シリコン部材とする加工工程と、
を備えていることを特徴とする半導体装置用シリコン部材の製造方法。
【請求項7】
前記るつぼの底部に前記種結晶を配置する際に、互いの種結晶同士の間に隙間を形成することなく密着して配置することを特徴とする請求項6に記載の半導体装置用シリコン部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用シリコン部材及び半導体装置用シリコン部材の製造方法に関するものである。より具体的にはドライエッチング用シリコン部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体デバイスを製造する工程で用いられる例えばプラズマエッチング装置は、酸化膜の部分除去等のために、CF6やSF6などのフッ化系のガスを用いている。エッチング対象であるシリコンウエハとの間に高周波電圧を印加される、多数の穴を開けた極板(電極板)にこれらフッ化系のガスを通し、プラズマ化させたガスを用いて、シリコンウエハ表面のシリコン酸化膜のエッチングを行っている(下記特許文献1参照)。これらの電極板には、通常単結晶のシリコンが用いられ(下記特許文献2参照)、エッチングの均一性を確保するために、エッチング対象であるシリコンウエハより大きなサイズのものが一般的に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−79961号公報
【特許文献2】特公平7−40567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、次世代の450mmシリコンウエハの使用に向けた動きが活発化してきている。450mmシリコンウエハの場合には、450mmφより大きな電極板が必要となる。電極板は、480mmφ、500mmφ、望ましくは530mmφ以上の電極板が必要となるが、このような大口径のシリコン単結晶を成長することは現状では難しく、また、可能となった場合でも大幅なコストアップが見込まれる。角形の半導体部材の場合には、少なくとも1辺が450mmより大きいサイズが必要となる。1辺が500mm、望ましくは1辺が530mmの半導体部材が必要となる。
【0005】
そこで、530mmφ以上のサイズの電極板を製造することが可能な柱状晶シリコンが注目されている。しかし、柱状晶シリコンは通常多結晶シリコンであり、電極板に多結晶シリコンを用いた場合は、シリコンウエハにパーティクルが形成されやすい、電極板の結晶粒界へ偏析している不純物やSiOなどがシリコンウエハ上に降下する、異なる結晶方位によるエッチング速度の差により結晶粒界に段差が発生する等の問題が生じる。このため、パーティクルの低減、不純物によるデバイス不良の低減、あるいは、電界の不均一性によるシリコンウエハに対するエッチングの均一性確保が困難になるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、一方向凝固シリコン鋳造法から作製されていながら、単結晶シリコンから作られものとほぼ同等の性能を発揮でき、かつ比較的大型のものでも製作可能な半導体装置用シリコン部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の半導体装置用シリコン部材は、一方向凝固シリコンからなり、380mmφ以上の面積を有し、凝固方向に直交する断面における結晶粒の粒界長さの合計LSと断面積Aとから算出される粒界密度P=LS/Aが0.24以下とされていることを特徴とする。
この構成の半導体装置用シリコン部材においては、上述の結晶密度Pが0.24以下と結晶粒界が少なくされているので、上記半導体装置用シリコン部材を例えばプラズマエッチング用の電極板に用いる場合には、均一性の高いエッチングが可能となる。
【0011】
使用部位表面に露出している面積の少なくとも35%以上が1つの結晶粒とみなされる結晶(面方位が同じ)で占められることが好ましい。
従前の柱状晶シリコンインゴットから切り出して得られる半導体装置用シリコン部材では、通常、使用部位表面において1つの結晶粒で占められる面積が使用部位表面全体の1/3に満たない。このような従前の半導体装置用シリコン部材に比べ、本願発明の半導体装置用シリコン部材ものは、結晶粒界が非常に少ない。このため、上記半導体装置用シリコン部材を例えばプラズマエッチング用の電極板に用いる場合には、均一性の高いエッチングが可能となる。
【0014】
さらに、結晶中の酸素濃度が4.0×1017atoms/ml以下であることが好ましい。
この構成の半導体装置用シリコン部材においては、結晶中の酸素濃度が4.0×1017atoms/ml以下であることから、エッチング速度を遅くすることが可能となる。
【0015】
また、結晶中の窒素濃度が7.5×1014atoms/ml以上3.1×1015atoms/ml以下であることが好ましい。
この構成の半導体装置用シリコン部材においては、窒素濃度が7.5×1014atoms/ml以上3.1×1015atoms/ml以下の範囲内とされていることから、エッチング速度を遅くすることが可能となる。
【0016】
本発明の半導体装置用シリコン部材の製造方法は、るつぼ底部に単結晶シリコン板からなる複数個の同じ結晶方位の種結晶を配置する単結晶シリコン板配置工程と、前記単結晶シリコン板が配置されたるつぼ内にシリコン原料を装入し、前記単結晶シリコン板が完全に溶解しない条件で前記シリコン原料を溶融してシリコン融液を得るシリコン原料溶融工程と、前記るつぼが載置されるチルプレートを下方から支持する下部ヒータと、前記るつぼの上方に配設された上部ヒータと、前記るつぼの周囲に設けられた断熱材と、備えた柱状晶シリコンインゴット製造装置を用いて、前記シリコン融液を、前記単結晶シリコン板が配置される前記るつぼ底部から上方に向けて一方向凝固させて柱状晶シリコンインゴットを得る一方向凝固工程と、前記柱状晶シリコンインゴットを加工して半導体装置用シリコン部材とする加工工程と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の半導体装置用シリコン部材の製造方法によれば、従前の柱状晶シリコンインゴットから切り出して得られるものに比べて、結晶粒界が非常に少ないかあるいは全くない半導体装置用シリコン部材を得ることができる。
また、各種結晶が同じ結晶方位で配列しているので、それら種結晶から成長する単結晶は同じ結晶方位となり、あたかも単結晶のシリコンインゴットが得られる。この結果、このようなあたかも単結晶のシリコンインゴットから切り出して得られる半導体装置用シリコン部材をプラズマエッチング用の電極板として用いる場合、エッチングの均一性をより高めることができる。また、パーティクルの発生、結晶粒界へ偏析した不純物やSiOなどの降下によるデバイス不良を低減できる。
ここで、前記るつぼの底部に前記種結晶を配置する際に、互いの種結晶同士の間に隙間を形成することなく密着して配置することが好ましい。
この場合、種結晶を密着して配置するので、種結晶の間で結晶が個々に成長する現象を回避することができ、結晶粒界のより少ない一方向凝固シリコンインゴットを得ることできる。この結果、このような結晶粒界のより少ない一方向凝固シリコンインゴットから切り出して得られるドライエッチング用シリコン部材をプラズマエッチング用の電極板として用いる場合、エッチングの均一性をより高めることができる。また、パーティクルの発生、結晶粒界へ偏析した不純物やSiOなどの降下によるデバイス不良を低減できる。
【発明の効果】
【0017】
従前の柱状晶シリコンインゴットから切り出して得られるものに比べて、結晶粒界が非常に少ない。このため、例えばプラズマエッチング用の電極板に用いる場合、パーティクルの発生、結晶粒界へ偏析した不純物やSiOなどの降下によるデバイス不良が低減し、また、結晶粒に起因する段差の発生が少なくなり、この結果、ほぼ均一なエッチングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態である半導体装置用シリコン部材の素材となる柱状晶シリコンインゴットを製造する際に用いられる柱状晶シリコンインゴット製造装置の概略図である。
図2】(a)は単結晶シリコンから作製した電極板、図2(b)は本発明に係る擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板を示す平面図である。
図3図2(b)におけるIIIで示す拡大断面図であり、図3(a)は擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板の使用前の断面図、図3(b)は擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板の使用後の断面図である。
図4】本実施形態の比較のために示すものであって、図4(a)は従前の柱状晶シリコンインゴットから作製した電極板の使用前の断面図、図4(b)は、従前の柱状晶シリコンインゴットから作製した電極板の使用後の電極板の断面図である。
図5】本実施形態であるドライエッチング用リングRを示す平面図である。
図6】従前の柱状晶シリコンインゴットの縦断面の模式図ある。
図7】従前の柱状晶シリコンインゴットの横断面の模式図ある。
図8】擬単結晶シリコンインゴットの一例の縦断面の模式図ある。
図9】擬単結晶シリコンインゴットの一例の横断面の模式図ある。図中破線で囲んだ領域は擬単結晶インゴット中の種結晶対応単結晶領域である。
図10】擬単結晶シリコンインゴットの他の例の縦断面の模式図ある。
図11】擬単結晶シリコンインゴットの他の例の横断面の模式図ある。図中破線で囲んだ領域は擬単結晶インゴット中の種結晶対応単結晶領域である。(角型結晶で種結晶を隙間を空けずに配置した場合)
図12】擬単結晶シリコンインゴットの他の例の縦断面の模式図ある。
図13】擬単結晶シリコンインゴットの他の例の横断面の模式図ある。図中破線で囲んだ領域は擬単結晶インゴット中の種結晶対応単結晶領域である。(角型結晶で種結晶を隙間を空けて配置した場合)
図14】擬単結晶シリコンインゴットの他の例の縦断面の模式図ある。
図15】擬単結晶シリコンインゴットの他の例の横断面の模式図ある。図中破線で囲んだ領域は擬単結晶インゴット中の種結晶対応単結晶領域である。(角型結晶で種結晶を隙間を空けず配置した場合)
図16】擬単結晶シリコンインゴット鋳造時の種結晶の配置例。結晶の面方位関係は図中の矢印で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る半導体装置用シリコン部材の実施形態を説明する。
本実施形態である半導体装置用シリコン部材は、ドライエッチング用シリコン部材として用いられるものである。この半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)は、多結晶シリコンインゴットから得られるものであり、より具体的には、特殊な工程を得て一方向凝固によって製造される柱状晶シリコンインゴットから切り出して得られるものである。
【0020】
この本実施形態で用いる柱状晶シリコンインゴットは、鋳造において製造されるが、その製造過程が通常の柱状晶シリコンインゴットの場合とは異なる。すなわち、本実施形態で用いる柱状晶シリコンインゴットは、るつぼ底部に単結晶シリコン板からなる複数個の種結晶を配置し、るつぼ内の溶融シリコンを一方向凝固させることにより複数個の種結晶それぞれから単結晶を成長させて得られる柱状晶シリコンインゴット(以下、擬単結晶シリコンインゴットと呼ぶ)である。
このように本実施形態の擬単結晶シリコンインゴットは、種結晶から成長させた単結晶部位を複数もつシリコンインゴットであり、種結晶の配置によっては、シリコンインゴット全体をほぼ単結晶にすることも可能である。
【0021】
次に、本実施形態である半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)の素材となる擬単結晶シリコンインゴットを製造する際に用いられる柱状晶シリコンインゴット製造装置10について、図1を参照して説明する。
この柱状晶シリコンインゴット製造装置10は、シリコン融液Lが貯留されるるつぼ20と、このるつぼ20が載置されるチルプレート12と、このチルプレート12を下方から支持する下部ヒータ13と、るつぼ20の上方に配設された上部ヒータ14と、を備えている。また、るつぼ20の周囲には、断熱材15が設けられている。
チルプレート12は、中空構造とされており、供給パイプ16を介して内部にArガスが供給される構成とされている。
【0022】
るつぼ20は、水平断面形状が角形(四角形)又は丸形(円形)とされており、本実施形態では、角形(四角形)と丸形(円形)とされている。
このるつぼ20は、石英(SiO)で構成されており、その内面にシリコンナイトライド(Si)がコーティングされている。すなわち、るつぼ20内のシリコン融液Lが石英(SiO)と直接接触しないように構成されているのである。
【0023】
次に、この柱状晶シリコンインゴット製造装置10を用いて擬単結晶シリコンインゴットを製造する方法について説明する。まず、るつぼ20の内にシリコン原料を装入する。具体的には、るつぼ20の底部に単結晶シリコン板からなる複数個の種結晶Cをるつぼ20の底面に沿って平行に配置する(単結晶シリコン板配置工程)。それら種結晶Cは、同じ結晶方位で配列することが好ましいが、必ずしもその必要はない。また、それら種結晶Cは、間に隙間を形成することなく密着して配置するのが好ましいが、これについても必ずしもその必要はない。
擬単結晶シリコンインゴット鋳造時の種結晶Cの配置例を図16に示す。(a)は角型るつぼの底部に同じ結晶方位で隙間を空けて配列した場合、(b)は角型るつぼの底部に同じ結晶方位で隙間を空けずに配列した場合、(c)は丸型るつぼの底部に同じ結晶方位で隙間を空けて配列した場合を示す。また、図中の矢印と記号は種結晶Cの配置時の方位を示す。
そして、それら種結晶Cの上側に11N(純度99.999999999)の高純度ポリシリコンを砕いて得られた「チャンク」と呼ばれる塊状のものを配置する。この塊状のシリコン原料の粒径は、例えば、30mmから100mmとされている。
【0024】
このようにして配置したシリコン原料を、上部ヒータ14と下部ヒータ13とに通電して加熱する。このとき、るつぼ20の底部に配置した種結晶Cが完全に溶けないように、下部ヒータ13の出力を調整し、主として種結晶Cの上側のチャンクを上側から溶かす(シリコン原料溶融工程)。これにより、るつぼ20内にシリコン融液が貯留される。
種結晶Cが完全に溶けてしまうと、液相エピタキシャル成長ができず、多数の結晶核がるつぼ底面で発生し多結晶となり単結晶がうまく成長しない。
【0025】
次に、下部ヒータ13への通電量をさらに下げて、チルプレート12の内部に供給パイプ16を介してArガスを供給する。これにより、るつぼ20の底部を冷却する。さらに、上部ヒータ14への通電を徐々に減少させることにより、るつぼ20内のシリコン融液Lは、るつぼ20の底部に配置した種結晶Cをそのまま引きついで結晶成長する。その結果、種結晶Cから該種結晶Cの結晶方位を引き継ぎながら成長し、ほぼ種結晶Cと平面的に同サイズの単結晶部をもつ一方向凝固法による柱状晶シリコンインゴット(擬単結晶シリコンインゴット)を鋳造する(一方向凝固工程)。ここでは、このようにして得られた擬単結晶シリコンインゴットは、多結晶でありながら単結晶の性質も併せもつ。
【0026】
こうして得られた擬単結晶シリコンインゴットを加工し、表面を鏡面研磨以上の平坦度となるように研磨する(加工工程)。これにより、半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)、例えばプラズマエッチング用の反応室内部で使用されるプラズマエッチング用シリコン部材が製造される。ここでは、プラズマエッチング用シリコン部材の例として電極板を挙げる。
【0027】
図2は、プラズマエッチング用電極板(以下単に電極板という)を示し、図2(a)は単結晶シリコンインゴットから作製した電極板Ea、図2(b)は本発明に係る擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板Ebである。図2(b)からわかるように擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板Ebは、一部に結晶粒界Ebaがみられ、多結晶からなっていることがわかる。
【0028】
電極板Ea、Ebには、フッ化系のガスを通すために複数の孔Hがそれぞれあけられている。擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板Ebでは、孔Hが単結晶部位に形成されている。図3(a)は、図2(b)において矢印IIIで示すように孔Hを含む位置で切断した電極板Eb使用前の拡大した断面図、図3(b)は電極板Ebの使用後の拡大した断面図である。なお、図4(a)、(b)は本実施形態の比較のために示すものであって、図4(a)は従前の柱状晶シリコンインゴットから作製した電極板Ecの使用前の断面図、図4(b)は、従前の柱状晶シリコンインゴットから作製した電極板Ecの使用後の断面図である。
【0029】
従前の柱状晶シリコンインゴットから作製した電極板Ecでは、使用後において孔Hのガス出口付近がフッ化系ガスの腐食によって拡がっている(図中符号Ha)。また、電極板Ecの表面に結晶粒に起因する段差の発生が見られる。これは、各結晶によって表面に向く結晶方位が異なるため、表面のエッチング速度が異なるためである。
【0030】
一方、擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板Ebでは、使用後において孔Hのガス出口付近がフッ化系ガスの腐食によって拡がっているものの(図中符号Ha)、電極板Ebの表面に結晶粒に起因する段差の発生が見られない。これは、電極板Ebがひとつの結晶によって構成され表面に向く結晶方位が同じであるため、表面のエッチング速度に差異が生じないからである。
【0031】
以上のような構成とされた本実施形態である半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)によれば、複数の種結晶それぞれから単結晶を成長させて得られた擬単結晶シリコンインゴットから切り出して作製されるものであり、従前の柱状晶シリコンインゴットから切り出して得られるものに比べて、結晶粒界が非常に少ないかあるいは全くないので、例えばプラズマエッチング用の電極板Ebに用いる場合、シリコンウエハのパーティクルの発生、結晶粒界へ偏析した不純物やSiOなどの降下によるデバイス不良が低減する。また、電極板に結晶粒に起因する段差の発生が少なくなり、ほぼ均一なエッチングが可能となる。
【0032】
また、るつぼ20の底部に複数個の種結晶Cを配置する際に、各種結晶Cを同じ結晶方位で配列する場合には、それら種結晶Cから成長する単結晶は同じ結晶方位となり、あたかも単結晶のシリコンインゴットが得られる。この結果、このようなあたかも単結晶のシリコンインゴットから切り出して得られる半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)を例えばプラズマエッチング用の電極板として用いる場合には、エッチングの均一性をより高めることができる。
【0033】
また、るつぼ20の底部に種結晶Cを配置する際に、互いの種結晶C同士の間に隙間を形成することなく密着させる場合には、種結晶Cの間で結晶が個々に成長する現象を回避することができ、結晶粒界がより少ない柱状晶シリコンインゴットを得ることできる。この結果、このような結晶粒界がより少ない柱状晶シリコンインゴットから切り出して得られる半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)を例えばプラズマエッチング用の電極板として用いる場合には、エッチングの均一性をより高めることができる。
【0034】
ここで、実施形態の半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)では、使用部位表面に露出している面積の少なくとも35%以上が1つの結晶粒とみなされる結晶(面方位が同じ)で占められることが好ましく、同面積の1/2以上が1つの結晶粒とみなされる結晶(面方位が同じ)で占められることがより好ましく、同面積の2/3以上が1つの結晶粒とみなされる結晶(面方位が同じ)で占められることがさらにより好ましい。
この場合、従前の柱状晶シリコンインゴットから切り出して得られる半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)では、通常、使用部位表面において1つの結晶粒で占められる面積が使用部位表面全体の1/3に満たない。このような従前の半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)材を例えばプラズマエッチング用の電極板として用いる場合には、前記「発明が解決しようとする課題」で述べた不具合が生じる。
【0035】
これに比べ、本願発明の半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)は、使用部位表面に露出している面積の少なくとも35%以上が1つの結晶粒とみなされる結晶(面方位が同じ)で占められるので、結晶粒界が少ない。このため、上記不具合が解消される。また、使用部位表面に露出している面積の少なくとも1/2以上が1つの結晶粒とみなされる結晶(面方位が同じ)で占められる場合には、より均一性の高いエッチングが可能となる。さらに、使用部位表面に露出している面積の少なくとも2/3以上が1つの結晶粒とみなされる結晶(面方位が同じ)で占められる場合には、より一層均一性の高いエッチングが可能となる。
【0036】
また、実施形態の半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)は使用部位の全体がひとつの結晶粒からなっていることが好ましい。
この場合、単結晶のシリコンインゴットから切り出して得られる半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)とほぼ同等の性能を発揮することができる。
また、本願発明の半導体装置用シリコン部材(ドライエッチング用シリコン部材)は、530mmφ以上の比較的大型のサイズの部材を容易に製作することができる。
尚、結晶粒の大きさは、エッチング速度の結晶方位依存性の高いKOHやNaOHなどのアルカリエッチングをおこない、個々の結晶を判別し画像解析装置を用いてサイズを測定した。
【0037】
ところで、CZ法による単結晶シリコンから作製された電極板は、一方向凝固シリコン(多結晶、擬単結晶)より酸素濃度が高く、また、窒素は一般的に含有されていないので、プラズマエッチング時のエッチングレートが大きく電極の消耗が速い。ここで、一方向凝固シリコン(多結晶、擬単結晶)の酸素濃度が低いのは、シリカるつぼの内面にシリコンナイトライドをコーティングしているので直接シリコン融液と接しないため、SiOの溶け込みが非常に小さい為である。また、窒素が含有されるのは、シリカるつぼ内面のシリコンナイトライドコーティング層のシリコンナイトライドがシリコン融液に溶解して溶け込むためである。酸素濃度が低く、窒素が固溶限以下で固溶している場合は、プラズマエッチングによるエッチングレートが小さいので、一方向凝固シリコンは、CZ法の単結晶シリコンに比べてエッチングレートが小さいという特徴を持っている。
【0038】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前記実施形態では、本発明の半導体装置用シリコン部材として、プラズマエッチング用の電極を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、図5に示すように、プラズマエッチング用として用いる、保護リング、シールリング、アースリング等の各種リングR等に用いても良い。なお、ここでは、リングRの一部に、多結晶からなる部位Raが見られる。
また、本発明の半導体装置用シリコン部材は、必ずしも、プラズマエッチング用シリコン部材に限られることなく、プラズマを用いることなく反応ガス中に材料に曝す反応性ガスエッチング用シリコン部材にも適用可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例を説明する。
参考例として、ポリシリコン176kgを入れた内径570mmφのるつぼを鋳造炉に入れ溶解し、従前の手法である一方向凝固により、内径570mmφ×300mmHの円柱状の一方向凝固シリコンインゴットを鋳造した。図6はこの柱状晶シリコンインゴットIaの縦断面の模式図、図7はこの柱状晶シリコンインゴットIaの横断面の模式図である。図7中の複数の直線は全て直線近似された粒界Lを示し、後述する総粒界長さLSとは、測定範囲内に存在する粒界Lの総和を意味する。この柱状晶シリコンインゴットIaは平均結晶粒径が5mmであった。
【0040】
次に、同サイズのるつぼを用い、るつぼの底部に200mm(縦)×200mm(横)×10mm(厚さ)、結晶面方位[001]の単結晶シリコン板からなる種結晶Cをそれぞれ1cmの隙間を空けて配置した。なお、るつぼの底部の内周部分には、200mm(縦)×200mm(横)×10mm(厚さ)、結晶面方位[001]の単結晶シリコン板をウォータージェットで矩形に切断したものを、隙間を生じさせることなく過不足なく埋めた。原料シリコンの総重量は、底部に敷き詰めた種結晶を含めて176kgとした。種結晶Cの配置例を図16(c)に示す。下部の種結晶が完全に溶けないように、下部ヒータの出力を調整し、シリコン原料を上から溶かした。るつぼの底部の温度を1380℃にし、結晶を一方向に凝固させる為に、下部ヒータと上部ヒータの各出力をコントロールして当該結晶を成長させた。
このようにして製造したものが、図8図9に示す擬単結晶シリコンインゴットIbである。図8は擬単結晶シリコンインゴットIbの縦断面の模式図、図9は擬単結晶シリコンインゴットIbの横断面の模式図である。
【0041】
擬単結晶シリコンインゴットIbでは、種結晶Cと種結晶Cの境目にわずかに小さい結晶が形成されたが、ほぼ、底部の単結晶をそのまま引きついで結晶成長した。その結果、種結晶部分から単結晶の結晶方位を引き継ぎながら結晶が成長し、ほぼ単結晶板と同サイズの単結晶部Ibaをもつ擬単結晶シリコンインゴットIbを鋳造できた。単結晶部Ibaの最大サイズは一辺が140mm、対角線で200mm長であった。単結晶部Ibaの結晶面方位は[001]であった。
また、同様に200mm(縦)×200mm(横)×10mm(厚さ)、結晶面方位[111]の単結晶シリコン板からなる種結晶Cを用いて、上述したものと同様な方法で擬単結晶を鋳造した。この場合でも、ほぼ同様の擬単結晶シリコンインゴットを得ることができた。その際の単結晶部Ibaの結晶面方位は[111]であった。
【0042】
次に、るつぼの底部の平坦性の良い一辺670mm×670mm×420mmの角形るつぼを選び、内底面の外周部を除いて600mm×600mmの領域に、300mm×300mm×10mm、結晶面方位[001]の単結晶シリコン板からなる種結晶Cを隙間が無いように敷き詰めた。種結晶Cの配置例を図16(b)に示す。前述の底部に種結晶Cを配して一方向に凝固させてシリコンインゴットIbを鋳造したときと同じ条件で擬単結晶シリコンインゴットIcを鋳造した。図10は製造した擬単結晶シリコンインゴットIcの縦断面の模式図、図11は同擬単結晶シリコンインゴットIcの横断面の模式図である。
擬単結晶シリコンインゴットIcでは、中央の600mm×600mmの領域Icaに小さな結晶粒が形成されず、この領域は全体が単結晶状になった。この単結晶部位の結晶面方位は[001]であった。また、この擬単結晶シリコンインゴットIcにおいて外周35mmの領域Icbは、平均結晶粒径が5mmの柱状晶であった。
【0043】
また、るつぼの底部の平坦性の良い一辺670mm×670mm×420mmの角形るつぼを選び、内底面の外周部を除いて600mm×600mmの領域に、300mm×300mm×20mm、結晶面方位[001]の単結晶シリコン板からなる種結晶Cを隙間が無いように敷き詰めた。種結晶Cの配置例を図16(b)に示す。前述の底部に種結晶Cを配して一方向に凝固させてシリコンインゴットIcを鋳造したときと同じ条件で擬単結晶シリコンインゴットIeを鋳造した。図14は製造した擬単結晶シリコンインゴットIeの縦断面の模式図、図15は同擬単結晶シリコンインゴットIeの横断面の模式図である。
擬単結晶シリコンインゴットIeは、中央の600mm×600mmの領域Ieaに小さな結晶粒が形成されず、この領域は全体が単結晶状になった。この単結晶部位の結晶面方位は[001]であった。また、この擬単結晶シリコンインゴットIeにおいて外周30mmの領域Iebは、平均結晶粒径が5mmの柱状晶であった。
【0044】
さらに、るつぼの底部の平坦性の良い一辺670mm×670mm×420mmの角形るつぼを選び、内底面の外周部を除いて600mm×600mmの領域に、300mm×300mm×10mm、結晶面方位[001]の単結晶シリコン板からなる種結晶Cを隙間を空けて配置した。種結晶Cの配置例を図16(a)に示す。前述の底部に種結晶Cを配して一方向に凝固させてシリコンインゴットIbを鋳造したときと同じ条件で擬単結晶シリコンインゴットIdを鋳造した。図12は製造した擬単結晶シリコンインゴットIdの縦断面の模式図、図13は同擬単結晶シリコンインゴットIdの横断面の模式図である。
なお、これら擬単結晶を鋳造する場合、200mm(縦)×200mm(横)×10mm(厚さ)、結晶面方位[111]の単結晶シリコン板を種結晶Cとして用い、上述したものと同様の方法で、擬単結晶を鋳造した。この場合でも、ほぼ同様の擬単結晶シリコンインゴットを得ることができた。その際の単結晶部Idaの結晶面方位は[111]であった。
【0045】
上述の柱状晶シリコンインゴットIa、擬単結晶シリコンインゴットIb、Ic、Ieと従来から用いている単結晶からなるシリコンインゴットから、それぞれ380mmφ×10mmのドライエッチング用電極板を作製した。従前の柱状晶シリコンインゴットIaから作製したものを「柱状晶」、擬単結晶シリコンインゴットIbから作製したものを「擬単結晶1」、擬単結晶シリコンインゴットIcから作製したものを「擬単結晶2」、擬単結晶シリコンインゴットIeから作製したものを「擬単結晶3」、単結晶シリコンインゴットから作製したものを「単結晶」と呼ぶ。これら試料について、モニター用300mmシリコンウエハを用い、その300mmφの単結晶シリコンウエハ表面のパーティクルの数と表面の不純物濃度を測定し比較した。尚、パーティクル数はパーティクルカウンター(KLA-Tencor Surfscan)を用いて測定した。
【0046】
パーティクル数の測定は、以下の手順で実施した。300mmφ用酸化膜ドライエッチャーの平行平板型装置を用い、電極板に単結晶シリコンと柱状晶シリコンをそれぞれ用いた。動作圧力は700torr、RFパワー:300W、ガスはCF、Heを4:1に混合したガスを800cm/min流した。200回エッチングを実施した後、装置中にモニター用300mmφウエハを置き、RFパワーはoffとして不活性ガスのArを流した状態で1分間暴露し、暴露前後のパーティクルの増加数を調べた。その後、表面の不純物濃度を測定した。
その結果を下記表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から、従前の柱状晶シリコンインゴットIaから作製した電極板(柱状晶)に比べ、擬単結晶シリコンインゴットIb、Ic、Ieから作製した電極板(擬単結晶1,2,3)を用いた場合、ともにパーティクルが少なくなっていることが確認された。特に、擬単結晶2及び擬単結晶3の電極板は、単結晶シリコンから作製したものまでに減少しないまでも、それに近づく程度まで減少していることが確認できた。
【0049】
また、不純物濃度は、電極板に使用した柱状晶、擬単結晶1、擬単結晶2、擬単結晶3、単結晶に使用した結晶の一部を用いて、ICP−MS法を用いて測定した。
その結果を下記表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2から、従前の柱状晶シリコンインゴットIaから作製した電極板(柱状晶)に比べ、擬単結晶シリコンインゴットIb、Ic、Ieから作製した電極板(擬単結晶1,2,3)を用いた場合、Fe、Ni、Cu、Znの不純物濃度が減少していることが確認された。
【0052】
また、上述のドライエッチング用電極板について単結晶領域面積を測定し、全断面積に対する割合を算出した。なお、単結晶領域は図9図11図13図15中の破線で示すように、大きな単結晶領域の外側の多結晶領域の多結晶から内側数mmを単結晶との境として単結晶領域を矩形で囲み、この面積の総和を元の結晶の横断面積で割って求めた。
その結果を下記表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3から、角型擬単結晶1では単結晶領域が36%、角型擬単結晶2では単結晶領域が51%、角型擬単結晶3では単結晶領域が54%であることがわかる。また、丸型擬単結晶1では単結晶領域が35%であることがわかる。
【0055】
また、上述のドライエッチング用電極板について粒界密度を測定した。なお、粒界密度は以下のように定義した。断面内のすべての結晶粒の粒界の長さを足し、それを元の結晶の断面積で割った値を粒界の密度とした。なお、本実施例では、一方向凝固の凝固方向に直交する断面で測定した。
その結果を下記表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表4から、角型柱状晶では粒界密度が0.26、角型擬単結晶1では粒界密度が0.17、角型擬単結晶2では粒界密度が0.11、角型擬単結晶3では粒界密度が0.10であることがわかる。また、丸型柱状晶では粒界密度が0.28、丸型擬単結晶1では粒界密度が0.24であることがわかる。
【0058】
また、上述の柱状晶シリコンインゴット、擬単結晶シリコンインゴット、従来から用いている単結晶からなるシリコンインゴットから作製された半導体装置用シリコン部材のプラズマエッチングレートを評価した
【0059】
プラズマエッチング用試料は、各インゴットから、100mm角×厚さ1mmの板を切り出し、板の主面を鏡面研磨して供試材を製造した。プラズマエッチング装置(株式会社ユーテック製YR−4011 1H−DXII)を用いてプラズマエッチング処理を行い、エッチング部とマスク部との段差を、表面粗さ計(Bruker AXS製Dektak)を用いて測定し、エッチング速度を算出した。なお、プラズマエッチング条件は、真空度:50mTorr、エッチング時間:30分、エッチングガス:SF、エッチングガス流量:10sccm、出力:100Wとした。
また、これらの半導体装置用シリコン部材の酸素濃度及び窒素濃度、並びに、エッチング後のパーティクルの個数を測定した。
その結果を下記表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
表5から、酸素濃度が4.0×1017atoms/ml以下で、窒素濃度が7.5×1014atoms/ml以上3.1×1015atoms/ml以下で、エッチングレートが遅いことが分かる。窒素濃度が4×1015atoms/ml以上ではSiの析出物が生じる為である。なお、450mmφ、500mmφ、530mmφでも同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0062】
C 種結晶
Ib 擬単結晶シリコンインゴット
Ic 擬単結晶シリコンインゴット
Ie 擬単結晶シリコンインゴット
Eb 擬単結晶シリコンインゴットから作製した電極板
R 擬単結晶シリコンインゴットから作製したリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図16