(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したような従来の筐体100に用いられるパッキン103は、接合面101a、102aの形状に対応した金型を用いて形成されており、高価である。また、筐体100の形状が変わり、パッキン103に求められる形状が変わると、それに応じてパッキン103を作製する金型から作り直す必要があり、パッキン103の汎用性も高くない。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、パッキンを有する構造でありながら、パッキンを形成する金型を必要とせず、筐体の形状変化にパッキンの形状を柔軟に対応させることが可能な筐体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成により把握される。
本発明の筐体は、第1筐体及び第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体の接合面の少なくとも一方に形成された凹部に配置されるパッキンと、を備え、前記パッキンは、前記凹部に接着されていない外周面の面積よりも接着されている外周面の面積の方が小さ
、かつ前記凹部の一部には、前記パッキンを接着し難くする表面処理が施されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パッキンを有する構造でありながら、パッキンを形成する金型を必要とせず、筐体の形状変化にパッキンの形状を柔軟に対応させることが可能な筐体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る実施形態の筐体について、図面を用いて説明する。
本発明も車載用撮像装置を収納するケースとなる筐体など、電子部品を収容するための筐体に好適に適用することができるものである。
図1は、筐体のパッキン構造を拡大した状態を示している。
図1に示すように、本発明に係る実施形態の筐体10Aは、第1筐体11と第2筐体12とを有しており、第1筐体11の接合面11aと第2筐体12の接合面12aが互いに対面する。
【0013】
一方の接合面である第2筐体12の接合面12aは、外周縁部に最も第1筐体11側に近接し、第1筐体11と第2筐体12を組み付けた際に当接可能な当接部13を有する。
当接部13の内側には、第1筐体11の接合面11aと第2筐体12の接合面12aとの間の気密性を保持するためのパッキン20が押し潰されて広がるパッキン配置面14を有する。
パッキン配置面14には、円弧形状の凹部15が設けられている。なお、凹部15の形状は、特に限定するものはなく、円弧形状のほかに曲率が一定でない円弧形状や、2つの角を有した直線で構成された形状でも可能である。
【0014】
パッキン配置面14は、筐体10に対して凹部15の外側に位置する外側配置面14aと、凹部15の内側に位置する内側配置面14bを有し、この外側配置面14a及び内側配置面14bは、凹部15の左右の端部を構成している。内側配置面14bは、外側配置面14aよりも低く(すなわち、第1筐体11の接合面11aから遠く)形成されており、凹部15は、半円よりも小さな部分円形状となっている。つまり、凹部15の左右一方の端部(外側配置面14a)の高さに対して他方の端部(内側配置面14b)の高さが低く形成されている。
【0015】
パッキン20は、液状パッキン材料をディスペンサーにより凹部15に注入し、その後、熱や紫外線等で硬化させて形成される。硬化した液体パッキン材料(パッキン20)は弾性を有する。液状パッキン材料としては、例えば、シリコン樹脂(RTV(室温加硫)、熱硬化)、ウレタン樹脂、ブチルゴム、アクリル樹脂等を用いることができる。
凹部15に注入されて硬化した液状パッキン材料が、パッキン20となる。このようにすれば、金型を用いる必要もなくパッキン20が形成され、筐体10Aの形状が設計変更され、筐体の形状変化に応じて、第2筐体12に形成されている凹部15の形状が変ったとしても、その凹部15に沿ってディスペンサーで凹部15にパッキン20となる液状パッキン材料を注入するだけであるので、凹部15の形状変化に対して極めて柔軟に対応させることが可能である。
【0016】
ところで、前述したように、液状パッキン材料を用いてパッキンを形成する場合には、
図2に示すような半円形状の凹部17を有する筐体10Bでも問題なく液状パッキン材料を注入することは適用可能である。
しかしながら、凹部17に注入された液状パッキン材料は、凹部17と接触する部分、つまり、
図2に示す範囲23の部分で凹部17の内面に硬化する際に、接着された状態となる。そうすると、凹部17内に存在する硬化した液体パッキン材料は変形しにくくなるため、
図2に示す範囲24の非接着部分だけが変形可能部分となり、この変形可能部分が少ないと、第1筐体11と第2筐体12を接合した際に、パッキン20が十分に変形できず、気密性を確保することができない場合がある。
【0017】
そこで、本発明の筐体10Aでは、
図1において前述したように、凹部15の形状を半円よりも小さく形成して、
図1に示す接着状態となる範囲21を減らし、非接着状態で変形可能な範囲22の面積を大きくし、第1筐体11と第2筐体12を接合した際に、パッキン20が十分に変形して、気密性を確保することができるようにした。
【0018】
上記のように、パッキン20が十分に変形できるように、非接着部分を増やすようにしたことによって、
図3に示すように、パッキン20の変形量を確保でき、筐体10Aにおける接合面11a、12aの気密性を確保することができる。
【0019】
次に、筐体10Aの組立方法について説明する。
図1に示すように、第2筐体12の接合面12aに設ける凹部15を、半円よりも小さく形成しておく。
ディスペンサーにより、凹部15に液状パッキン材料を注入する。
その後、注入された液状パッキン材料を熱や紫外線により硬化してパッキン20を形成する。
液状パッキン材料が硬化しパッキン20の状態になったら、第1筐体11の接合面11aと第2筐体12の接合面12aを合わせてねじ(図示省略)等で接合して、筐体10Aを組立てる。
このように、本実施形態の製法では、金型を用いてパッキン20を成形する必要が無く、また、パッキン20を設ける必要がある凹部15に沿ってディスペンサーを動かすだけであるので凹部15の形状に合わせてパッキン20を容易に形成することが可能である。
したがって、成形パッキンのような高価な部品を使用する必要がないのでコストダウンが図れるとともに、筐体の形状変化にパッキンの形状を柔軟に対応させることが可能である。
【0020】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の筐体を説明する。
なお、前述した第1実施形態に係る筐体10Aと共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図4に示すように、第2実施形態の筐体10Cでは、第1実施形態の筐体10Aにおける凹部15の内面に、液状パッキン材料が硬化する段階で凹部15に接着するのを防止する表面処理を
図4の範囲25の範囲に施した。表面処理は、凹部15の内面全面に行う必要はなく、例えば半分に施すことができる。
【0021】
具体的には、この表面処理は、テフロン(登録商標)、シリコンオイル、離型剤等を凹部15の所望の範囲に塗布する処理である。このような材料が塗布されている凹部15の部分は、液状パッキン材料の硬化の際に、パッキン材料が接着状態になり難くい。したがって、この表面処理を行った部分に形成されたパッキン20は、接着されていないので変形可能な状態となり、第1筐体11と第2筐体12を接合した際に、気密を保つための適切な形状に変形するために動くことが可能になる。
したがって、第2実施形態の筐体10Cは、第1実施形態の筐体10Aと比較して、さらに、気密性が確保しやすくなる。
【0022】
組立方法の点では、第1実施形態で説明したディスペンサーで液状パッキン材料を塗布する作業の前に、
図4に示す範囲25にディスペンサーなどでテフロン、シリコンオイル、離形剤等の材料を塗布し、パッキン20が凹部15の内面に接着しにくくする表面処理を施すだけである。
【0023】
なお、第1実施形態の説明で、
図2に示す凹部17の場合、パッキン20が十分に変形できず、気密性を確保することができない場合があると説明した。
図2に示す場合、パッキン20と凹部17との接触する面積は、接触していない面積と略同じ面積となる。
しかしながら、第2実施形態のように、表面処理を施して、凹部17と接触しているが接着状態に無いパッキン20の表面積を増やすことで、パッキン20の外周面において凹部17の内面に接着された接着面積が、接着されていない面積より少なくすることが可能であり、このように接着面積が接着されていない面積より少なくなるようにすることで
図2に示される筐体10Bの場合でも、パッキン20の変形が十分に可能となり、気密を保てるようにすることができる。
【0024】
本発明の筐体は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
前述した各施形態においては、凹部15を一方の接合面12aにのみ設けた場合を例示したが、両方の接合面11a、12aに凹部15を設けることも可能である。
また、前述した各施形態においては、当接部13が外周縁に設けられその内側にパッキン20を設けた場合を例示したが、当接部13を内側に設けて、その外側にパッキン20を設けることも可能である。
このように、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、適宜設計変更が行われてもよい。