【実施例】
【0046】
以下に本発明の実施例と比較例を示し、本発明についてより具体的に説明する。
[実施例1]
<樹脂マスターバッチの作製>
下記成分を下記配合量でヘンシェルミキサー(標準羽装着、三井鉱山(株)製)に投入し、混合した(第1の混合物)。
ポリ乳酸樹脂:ポリ乳酸樹脂(海正生物製、重量平均分子量80,000 軟化点112℃) 90質量部
粉砕助剤:ペンセルD135(荒川化学製 軟化点135℃) 10質量部。
【0047】
得られた混合粉体を二軸押出機((株)池貝製、スクリュウ径43mm、L/D=34)で溶融混練した後、この溶融混練物を圧延ロールの循環水を10℃に設定して延伸し冷却した。この冷却後の混練物をロートプレックス(ホソカワミクロン(株)製、2mmスクリーン)で粗砕した。これにより、「粉砕された樹脂マスターバッチ」を得た。
【0048】
<トナーの作製>
粉砕された樹脂マスターバッチに、離型剤、着色剤、帯電制御剤を混合した(第2の混合物)。すなわち、下記成分を下記配合量でヘンシェルミキサー(標準羽装着、三井鉱山(株)製)に投入し、混合した。着色剤として、フタロシアニン顔料(大日精化工業(株)製)50質量部およびポリエステル樹脂(花王(株)製、Mw13,000 軟化点100℃)50質量部からなる顔料マスターバッチを使用した。
粉砕された樹脂マスターバッチ 100質量部
離型剤:カルナウバワックス1号粉末(日本ワックス(株)製) 3質量部
着色剤:フタロシアニン顔料マスターバッチ 8質量部
帯電制御剤:「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1質量部。
【0049】
得られた混合粉体を二軸押出機((株)池貝製、スクリュウ径43mm、L/D=34)で溶融混練した後、この溶融混練物を圧延ロールの循環水を10℃に設定して延伸し冷却し、この冷却後の混練物をロートプレックス(ホソカワミクロン(株)製、2mmスクリーン)で粗砕した。その後、衝突式粉砕機(日本ニューマチック工業IDS−2)・風力分級機(日本ニューマチック工業DSX−2)にて、トナー平均粒径が8.0μmになるように粉砕及び分級を行い、微粒子を得た。
【0050】
得られた微粒子100質量部に外添剤として、「RY200」(日本アエロジル(株)製:疎水性シリカ、1次粒子径12nm)を0.4質量部、「RX50」(日本アエロジル(株)製:疎水性シリカ、1次粒子径50nm)3質量部添加し、ヘンシェルミキサー(撹拌強化羽装着、三井鉱山(株)製)で3分間撹拌混合し、トナーを得た。
【0051】
[実施例2〜18]
実施例1と同様の手法に従って実施例2〜18のトナーを作製した。実施例2〜18のトナーは、表3に記載されるとおり、第1の混合物の組成を変更した。実施例15〜18については、第1の混合物が、着色剤および/または帯電制御剤を既に含むため、第2の混合物を調製する際にこれらを添加しなかった。
【0052】
【表3】
【0053】
[比較例1]
下記成分を下記配合量でヘンシェルミキサー(標準羽装着、三井鉱山(株)製)に投入し、混合した。
ポリ乳酸樹脂:ポリ乳酸樹脂(花王(株)製、Mw80,000 軟化点112℃) 100質量部
粉砕助剤:ペンセルD135(荒川化学製 軟化点135℃) 20質量部
離型剤:カルナウバワックス1号粉末(日本ワックス(株)製) 3質量部
着色剤:フタロシアニン顔料マスターバッチ 8質量部
帯電制御剤:「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1質量部。
【0054】
得られた混合粉体を二軸押出機((株)池貝製、スクリュウ径43mm、L/D=34)で溶融混練した後、この溶融混練物を圧延ロールの循環水を10℃に設定して延伸し冷却した。この冷却後の混練物をロートプレックス(ホソカワミクロン(株)製、2mmスクリーン)で粗砕した。
【0055】
[比較例2〜9]
比較例1と同様の手法に従って比較例2〜9のトナーを作製した。比較例2〜9のトナーは、表4に記載されるとおり、トナー原料の組成を変更した。
【0056】
【表4】
【0057】
[評価方法]
<ヒゲの有無>
二軸押出機から吐出された混合物(実施例の場合、第2の混合物を使用する)を圧延ロールにて板状にする。板状になった混合物を折り曲げた時にヒゲが発生するか、その有無を目視にて判断する。
○ ヒゲ無し
× ヒゲあり。
【0058】
<粉砕性指数>
樹脂サンプルを、ミニブレンダー(型番:MB−2 大阪ケミカル)で10秒間粗粉砕する。樹脂サンプルとして、実施例の場合、樹脂マスターバッチを使用し、比較例の場合、トナー原料の溶融混練物を延伸し冷却したものを使用する。粗粉砕後の樹脂サンプルから、16メッシュ(目開き:1mm)の篩いを通過するが22メッシュ(目開き:710μm)の篩いは通過しない樹脂粉体を得た。得られた樹脂粉体を10g計量する。計量した樹脂粉体を目開き710μmのメッシュで10分間 振動ふるいでふるう。振動ふるいを通過した樹脂粉体の重量を計測する。計測された樹脂粉体の重量(A)gを下記式に導入し、粉砕性指数を算出する。
式:粉砕性指数 = (A)g/振動ふるい前の採取重量(10g)×100。
【0059】
[評価結果]
「ヒゲの有無」および「粉砕性指数」の結果を表3および4に示す。
【0060】
実施例1〜18では、ポリ乳酸を、粉砕助剤を含有するが離型剤を含有しない配合でマスターバッチ化し、得られた樹脂マスターバッチの粉砕性指数を20以上とし、その後、樹脂マスターバッチを、離型剤を含むトナー原料と溶融混練してトナーを製造した。その結果、実施例1〜18では、ポリ乳酸の粉砕性の問題が解決されるとともに、溶融混練後に起こるヒゲの発生を防止することができた。その結果、実施例1〜18のトナーは、ヒゲの発生によるトナー性能の低下を防止することができた。
【0061】
一方、比較例1〜9では、ポリ乳酸を、マスターバッチ化することなく、粉砕助剤および離型剤を含有するトナー原料と溶融混練してトナーを製造した。比較例1、2、4、5、8および9では、ポリ乳酸を、粉砕助剤、離型剤、着色剤および帯電制御剤とともに溶融混練してトナーを製造したところ、溶融混練後にヒゲの発生がみられた。また、比較例3では、ポリ乳酸を、粉砕助剤および離型剤とともに溶融混練してトナーを製造したところ、溶融混練後にヒゲの発生がみられた。また、比較例6および7では、粉砕助剤を添加しなかったため、粉砕性指数が低く、粉砕が困難であった。
【0062】
これら結果は、樹脂マスターバッチの粉砕性指数を20以上とすることにより、ポリ乳酸の粉砕性の問題を解決できること、および樹脂マスターバッチの原料混合物に離型剤を添加しないで、その後のトナー製造工程で離型剤を添加することにより、溶融混練後に起こるヒゲの問題を解決できることを示す。
【0063】
なお、本実施例では、顔料をマスターバッチ化するためにポリエステル樹脂を使用したが、ポリ乳酸樹脂(Mw60,000 軟化点112℃)で顔料をマスターバッチ化した着色剤でも、効果に影響がないことを確認した。
【0064】
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 20,000〜110,000の重量平均分子量を有するポリ乳酸および粉砕助剤を含み離型剤を含まない第1の混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却して固化させて樹脂マスターバッチを調製する工程であって、前記第1の混合物を、前記樹脂マスターバッチの粉砕性指数が20以上となるような組成とする工程と、
前記樹脂マスターバッチを粉砕する工程と、
前記粉砕後の樹脂マスターバッチおよび離型剤を含む第2の混合物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕、分級する工程と
を含むことを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
[2] 前記樹脂マスターバッチの調製工程が、前記粉砕助剤の配合量を調整することにより、前記第1の混合物を、前記樹脂マスターバッチの粉砕性指数が20以上となるような組成とする工程であることを特徴とする[1]に記載の電子写真用トナーの製造方法。
[3] 前記第1の混合物が、着色剤を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の電子写真用トナーの製造方法。
[4] 前記第2の混合物が、着色剤を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の電子写真用トナーの製造方法。
[5] 前記第1の混合物が、帯電制御剤を含むことを特徴とする[3]または[4]に記載の電子写真用トナーの製造方法。
[6] 前記第2の混合物が、帯電制御剤を含むことを特徴とする[3]または[4]に記載の電子写真用トナーの製造方法。
[7] 20,000〜110,000の重量平均分子量を有するポリ乳酸および粉砕助剤を含み離型剤を含まない第1の混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却して固化させて樹脂マスターバッチを調製する工程であって、前記第1の混合物を、前記樹脂マスターバッチの粉砕性指数が20以上となるような組成とする工程と、
前記樹脂マスターバッチを粉砕する工程と
を含むことを特徴とする樹脂マスターバッチの製造方法。