(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233128
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】天井埋込型空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/00 20110101AFI20171113BHJP
F24F 13/30 20060101ALI20171113BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20171113BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
F24F1/00 306
F24F1/00 321
F24F1/00 391A
F04D29/58 R
F04D29/28 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-61149(P2014-61149)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183941(P2015-183941A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直人
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−257898(JP,A)
【文献】
特開2001−082384(JP,A)
【文献】
特開昭62−035100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00
F04D 29/28
F04D 29/58
F24F 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の筐体の内部に、ファンモータと、同ファンモータのシャフトに軸支されるターボファン型の送風ファンと、同送風ファンに空気を取り入れるベルマウスと、前記送風ファンを囲む熱交換器が配置され、前記筐体と前記熱交換器の間を熱交換された空気が流れる主送風路と熱交換されない空気が流れる補助送風路とに区画する仕切体を備えた天井埋込型空気調和機において、
前記送風ファンは、前記ベルマウスに向かい開口したシュラウドと、前記ファンモータのシャフトが固定されるハブと、前記シュラウドと前記ハブの間に中間ハブとを備え、前記中間ハブと前記シュラウドの間に複数の下段ブレードを配置して前記主送風路に空気を送る下段ファンを形成し、前記ハブと前記中間ハブの間に複数の上段ブレードを配置して前記補助送風路に空気を送る上段ファンを形成し、
前記中間ハブの出口側の外径の高さを前記熱交換器の上端に合わせたことを特徴とする天井埋込型空気調和機。
【請求項2】
前記上段ブレードの個数が、前記下段ブレードより多いことを特徴とする請求項1に記載の天井埋込型空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井内に筐体が埋設された天井埋込型空気調和機に関し、さらに詳しく言えば送風ファンの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天井埋込型空気調和機は、内部に熱交換器および送風ファン(ターボファン)を含む筐体を天井内に埋設してなり、筐体の下面中央に設けられた吸込口から吸い込んだ空気を熱交換器で冷媒との間で熱交換して、吸込口の周囲に設けた吹出口から風向板で風向を調節して室内に送出する空気調和機で、オフィスや店舗等の比較的広い室内に用いられている。
【0003】
天井埋込型空気調和機には、冷房運転時に風向板を横吹き出し位置に回動した際、吹出口から送出された冷風が天井面に触れて水滴が生じて、塵埃が付着しやすくなり、さらにはカビが発生してしまう(所謂スマッジング)問題と、暖房運転時に風向板を下方吹き出し位置に回動した際、吹出口から送出された温風が上昇しやすくなって足元に届きにくいという問題を有していた。
【0004】
そこで、従来例では熱交換器の上部と筐体との間に、吸込口から吸い込まれた吸込空気を導入する導入部を設ける一方、吹出口の外側に補助吹出口を併設し、これら導入部および補助吹出口の間に送風路を仕切る仕切体を設け、その仕切体により主送風路と区画された補助送風路を形成する。これにより補助送風路を通った熱交換されない空気が補助吹出口から吹き出され天井面に沿うことで冷気が天井面に接触するのを防ぐとともに、暖気を外側から抑えて足元に届きやすいようにしたものがある。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-283493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱交換される空気の主送風路には熱交換器があるため送風抵抗が大きい。また送風ファンに使われるターボファンは上方に風が多く出る性質がある。そのため主送風路よりも補助送風路に多くの風が流れ、必要以上に熱交換されない空気が多く吹き出される問題があった。
【0007】
本発明は以上述べた問題点を解決し、補助送風路を備えた空気調和機において、熱交換された空気と、熱交換されない空気を適切な割合で吹き出す井埋込型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のように構成した本発明の空気調和機は、箱型の筐体の内部に、ファンモータと、同ファンモータのシャフトに軸支されるターボファン型の送風ファンと、同送風ファンに空気を取り入れるベルマウスと、前記送風ファンを囲む熱交換器が配置され、前記筐体と前記熱交換器の間を熱交換された空気が流れる主送風路と熱交換されない空気が流れる補助送風路とに区画する仕切体を備えた天井埋込型空気調和機において、
前記送風ファンは、前記ベルマウスに向かい開口したシュラウドと、前記ファンモータのシャフトが固定されるハブと、前記シュラウドと前記ハブの間に中間ハブとを備え、前記中間ハブと前記シュラウドの間に複数の下段ブレードを配置して前記主送風路に空気を送る下段ファンを形成し、前記ハブと前記中間ハブの間に複数の上段ブレードを配置して前記補助送風路に空気を送る上段ファンを形成し、
前記中間ハブの出口側の外径の高さを前記熱交換器の上端に合わせたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明の天井埋込空気調和機における送風ファンは、主送風路に空気を送る下段ファンと補助送風路に空気を送る上段ファンを形成することで、熱交換された空気と、熱交換されない空気を適切な割合で吹き出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による天井埋込型空気調和機の断面図である。
【
図2】本発明による天井埋込型空気調和機の外観図である。
【
図3】本発明による天井埋込型空気調和機の冷房運転時の要部断面図である。
【
図4】本発明による天井埋込型空気調和機の暖房運転時の要部断面図である。
【
図5】本発明のドレンパンを備えた断熱部材を送風ファン側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
本発明に係る天井埋込型空気調和機1は、
図1に示すように天井10内に埋設される板金製の箱型の筐体2を有し、筐体2は矩形状の天板21と、天板21の外周から下方に延在する側板22とを有し、側板22の内側には断熱部材23が設けられ、底面(
図1では下面)が開放される。
【0014】
筐体2の天板21の内側には螺子等によりファンモータ31が固定され、ファンモータ31から下方に伸びるシャフト31aに送風ファン3が軸支される。送風ファン3にはターボファンが用いられる。送風ファン3はファンモータ31とともに筐体2の内部のほぼ中央に配置されている。
【0015】
筐体2の底面側は断熱部材24で覆われ、断熱部材24の送風ファン3と対向する部分が開口され吸込口11となり、送風ファン3と吸込口11との間にはベルマウス12が配置される。
ファンモータ31による送風ファン3の回転に伴って、吸込口11から室内の空気が筐体2内に吸い込まれる。筐体2に吸い込まれた空気は、ベルマウス12によって送風ファン3に案内され、送風ファン3の半径方向の外方に向かって吹き出される。
【0016】
送風ファン3の周囲には、送風ファン3を囲む枠状に熱交換器4配置されている。熱交換器4は熱交換器4の上端42が天板21に固定された支柱41で支えられ、支柱41の無い隙間が後述する導入口63となる。
【0017】
熱交換器4は、図示しない冷房運転と暖房運転とが可能な可逆式の冷凍サイクル回路に接続されており、冷房運転時には蒸発器として機能して空気を冷却し、暖房運転時には凝縮器として機能して空気を加熱する。
【0018】
断熱部材24は、熱交換器4の下面と対向する部分にコーティングが施され、熱交換器4で生成されるドレン水を受け止めるドレンパン13の役割も果たす。
【0019】
筐体2に設けられた断熱部材23、24と熱交換器4との間には、送風ファン3から吹き出された空気を筐体2の下面に向けて案内する送風路5が設けられており、
図3と
図4に示すように送風路5は、仕切体14により熱交換器4で冷媒と熱交換された空気K1が流れる主送風路51と、導入口63から取り込まれた熱交換されない空気K2が流れる補助送風路61とに区画される。補助送風路61の断熱部材23、24と仕切体14との間の横方向の幅W1は主送風路51の熱交換器4と仕切体14との間の横方向の幅W2よりも狭くなっている。
【0020】
仕切体14は板金製で、
図3ないし
図5に示すように下端部が断熱部材24に固定され、上端部は熱交換器4側に折り曲げられ、上端部の先端が熱交換器4の上端42に当接され、熱交換器4を取り囲むように配置される。
【0021】
図1と
図2に示すように筐体2の下端には化粧パネル15が取り付けられている。化粧パネル15は、樹脂で形成された角丸正四角形の板体で筐体2の底面と底面周囲の天井10を覆う。化粧パネル15の中央には吸込口11に空気を取り入れるため桟形状となった吸込グリル17が着脱可能に取り付けられている。吸込グリル17の背面(
図1では上面)には、除塵用のフィルタ18が保持されている。
【0022】
化粧パネル15の送風路5の出口部分に対向する位置には吹出口16が設けられている。各吹出口16は送風路5の出口部分から外側に向かって傾斜しながら貫通する貫通孔である。
図2に示すように本実施例では、吹出口16は吸込口11の周りで化粧パネル15の各辺に沿って長尺の長方形状で4箇所に配置されている。
【0023】
各吹出口16には風向板19が回動自在に取り付けられている。風向板19は、吹出口16の開口形状にほぼ合致し、閉位置において吹出口16を塞ぎ得る長尺の板材であって、その長手方向の両端には、図示しない回転支軸が同軸的に設けられて図示しないモータにより回動する。
【0024】
主送風路51と補助送風路61は吹出口16で一旦合流するが、風向板19が仕切体14を延長させる役割を担い、風向板19の回動により空気K1と空気K2は夫々分かれて空調室内に吹き出される。例えば
図3に示す冷房運転時は、風向板19が吹出口16内で横吹き出し位置に回動することで、主送風路51を流れ冷気となった空気K1が横方向に吹き出されるとともに、風向板19により狭められた吹出口16の端から補助送風路61を流れた空気K2が吹き出され、天井10面に沿うことで冷気となった空気K1が天井面に接触するのを防ぎ、スマッジングを防止する。
【0025】
また、
図4に示す暖房運転時は、風向板19が吹出口16内で下方吹き出し位置に回動することで、主送風路51を流れ暖気となった空気K1が風向板19に抑えられ下方に吹き出されるとともに、空気K1より外側に補助送風路61を流れた空気K2が吹き出されることで、暖気となった空気K1を外側から抑えて足元に届きやすいようにする。
【0026】
なお、主送風路51と補助送風路61は、図示しないがそれぞれ吹出口を別に設けてもよい。その場合は、仕切体14が化粧パネル15の吹出口16の出口まで延出して風向板19は主送風路51の吹出口部分を覆い、運転時には主送風路51の吹出口部分の中で回動する。
【0027】
化粧パネル15には、
図2に示すように化粧パネルの四隅の角部で隣り合う吹出口19の間に補助送風路61を流れる空気K2の一部が導かれる補助吹出口62が設けられている。
【0028】
補助吹出口62は、
図5に示す断熱部材24に固定される仕切体14より外側に設けた補助孔64から、化粧パネル15の中をさらに外側に向かって傾斜して貫通する貫通孔であって、化粧パネル15の表面では細い口となり、吹出口16の外端を結んだ仮想線Xよりも外側に設けられる。
【0029】
この実施形態により、吹出口16から吹き出され熱交換された空気K1の外側の全周を覆うように、熱交換されない空気K2が吹出口16と補助吹出口62の両方から吹き出される。例えば、冷房運転時には天井10全体を空気K2で覆うことが可能となり、吹出口16からのみ空気K2を吹き出すよりもスマッジングの防止に有効である。また、空気K2が冷気となった空気K1と混ざることで、風力が増して遠くまで届き空調室内を快適にする。さらに、暖房運転時には吹出口16と吹出口16の外端を結んだ仮想線Xよりも外側に設けられた補助吹出口62から熱交換されない空気K2が空気K1よりも外側の全周から吹き出されることにより、上昇しやすい暖気となった空気K1の全周を囲むように抑えることができ、暖気を包み込んで逃がさずに足元に届け、快適性が向上する。
【0030】
送風ファン3は、
図3と
図4および
図6に示すように、ベルマウス12に向かい流入口を開口した円環状のシュラウド33と、ファンモータ31のシャフト31aが固定される中央部32aを釣鐘状に膨出させた略円盤状のハブ32と、シュラウド33とハブ32との間の流路を上下に区画する中間ハブ34とを備え、中間ハブ34とシュラウド33の間に複数の下段ブレード36を配置して主送風路51に空気を送る下段ファン37を形成し、ハブ32と中間ハブ34の間に複数の上段ブレード35を配置して補助送風路51に空気を送る上段ファン38を形成する所謂2段ファンである。
【0031】
ファンモータ31により下段ファン37と上段ファン38が一体となって回転すると、シュラウド33と中間ハブ34の流入口から室内の空気が吸引され、続いて下段ブレード36の回転に伴い熱交換器4に向かい放射状に空気が吹き出され、上段ブレード35の回転に伴い導入口63に向かい放射状に空気が吹き出される。主送風路51専用に空気を送る下段ファン37と、補助送風路61専用に空気を送る上段ファン38をそれぞれ設けたことで、熱交換された空気K1と熱交換されない空気K2が適切な割合で吹き出され、上方の補助送風路61に過剰な空気が流れることを防ぐ。
【0032】
また中間ハブ34は、中心側がシュラウド33の上端を同心円状に区画するとともに、出口側の外径の高さ34aを熱交換器4の上端42に合わせ、
図6に示す下段ファン37の吹出開口37aが上段ファン38の吹出開口38aより広くなるように形成することで、熱交換器4に吹き出される空気の風量は、導入口63に吹き出される空気の風量よりも多くなり、これに伴い熱交換された空気K1の風量が多くなる。
【0033】
一方、上段ブレード35の個数は下段ブレード36より多く配置されていることで、上段ファン38の吹出開口38aが狭くても、速度のある風を送ることができ、空気K2は空気K1よりも風量が少なくとも風速が速くなり空気K1を確実に抑え込む効果を有する。
【0034】
上記のように熱交換された空気K1が流れる主送風路51と熱交換されない空気K2が流れる補助送風路61を備えた本発明の天井埋込空気調和機は、化粧パネルの四隅の角部で隣り合う吹出口19の間に補助送風路61を流れる空気K2の一部が導かれる補助吹出口62を設けたことで、吹出口19から吹き出された熱交換された空気K1の外側の全周を覆うように、熱交換されない空気K2が吹出口19と補助吹出口62の両方から吹き出されることにより、冷房運転時には、天井10全体を熱交換されない空気K2で覆うことが可能となりスマッジングの防止に有効であり、暖房運転時には暖気となった熱交換された空気K1の全周を囲むように抑えることができ、暖気を包み込んで逃がさずに足元に届け、快適性が向上する。
【0035】
また、送風ファン3を主送風路51に空気を送る下段ファン37と、補助送風路61に空気を送る上段ファン38の2段ファンに形成することで、補助送風路61に過剰な空気が流れることを防ぎ、熱交換された空気K1と、熱交換されない空気K2が適切な割合で吹き出されることが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1:天井埋込型空気調和機、10:天井、14:仕切体、15:化粧パネル、16:吹出口、19:風向板
2:筐体、23・24:断熱部材
3:送風ファン、31:ファンモータ、32:ハブ、33:シュラウド、34:中間ハブ、35:上段ブレード、36:下段ブレード、37:下段ファン、38:上段ファン
4:熱交換器
5:送風路、51:主送風路
61:補助送風路、62:補助吹出口、63:導入口、64:補助孔
X:仮想線
K1:熱交換された空気、K2:熱交換されない空気