【実施例】
【0019】
図1は、半導体装置10と絶縁基板20と重ね合せブロック30と冷却器70を順に積層して構成した第1実施例のモジュール80の分解斜視図を示している。
半導体装置10は、表面電極と裏面電極を備えており、大電流をスイッチングするものであり、動作すると発熱する。冷却しないと半導体装置10が過熱することから、冷却を要する。
絶縁基板20の表面に配線層22が形成されている。その配線層22に半導体装置10の裏面電極がはんだ接合されている。半導体装置10は絶縁基板20の表面に搭載されている。半導体装置10の表面電極には図示しない導体がボンディングされ、配線層22にも図示しない導体がボンディングされる。絶縁基板20はセラミックで形成されており、後記する金属製の冷却器70に比して熱膨張率が小さい。
冷却器70は、熱抵抗が低い金属(アルミ)で形成されており、内部に冷却液の通過経路が形成されている。
絶縁基板20の裏面を冷却器70の表面にはんだ付けすれば、両者間の熱抵抗が低く抑えられるものの、絶縁基板20と冷却器70に大きな熱応力が発達し、絶縁基板20が反ったり損傷したりする。それを避けるために、絶縁基板20と冷却器70の間に重ね合せブロック30が介在している。重ね合せブロック30は、絶縁基板20と冷却器70の間の熱抵抗を上昇させないほどに熱抵抗が低く、しかも柔軟に変形して絶縁基板20と冷却器70に大きな熱応力が発生するのを防止する。
【0020】
図1の第1実施例では、芯32の周りに、長尺のグラファイト箔34と長尺の金属箔36を重ね合わせた長尺多層箔を多重に巻くことによって、重ね合せブロック30が形成されている。グラファイト箔34と金属箔36は単に重ね合わされているだけで、それ以上の拘束関係はない。多重に巻く際にも、単に重ね合うように巻くだけで、それ以上の拘束関係はない。巻いた形状を維持するために、最外周の金属箔36の端部はその内側に位置する金属箔36に溶接されている。最外周の金属箔36の端部の内側に金属箔36が露出するように、金属箔36の最外周側端部はグラファイト箔34の最外周側端部よりも長く伸びている。なお、図面では、グラファイト箔34と金属箔36の厚みが実際よりも厚く表示され、その結果、巻数が実際よりも少なく表示されている。
図2以降についても同様である。金属箔にはアルミニウム膜を用いることができる。さらに高い伝熱性が必要とされる場合には銅箔を用いることが好ましい。
【0021】
絶縁基板20の表面と裏面は平行に延びており、その法線方向をz軸とする。グラファイト箔34と金属箔36は、z軸がグラファイト箔34と金属箔36の当接面に沿って延びる向きに配置され、z軸の周りに巻かれている。重ね合せブロック30には、xz面に沿って延びる当接面とyz面に沿って延びる当接面が形成されている。
【0022】
重ね合せブロック30の表面は、絶縁基板20の裏面にろう付けされている。重ね合せブロック30の裏面は、冷却器70の表面にろう付けされている。モジュール80を形成する段階では、重ね合せブロック30の表面は絶縁基板20で拘束され、重ね合せブロック30の裏面は冷却器70で拘束されている。
なお、重ね合せブロック30の表面と裏面を金属箔で覆っておいてからろう付けしてもよいし、金属箔とアルミニウム膜が混在している面が露出している状態でろう付けしてもよい。
【0023】
半導体装置10が動作すると、半導体装置10が発熱し、絶縁基板20と冷却器70が加熱される。絶縁基板20は冷却器70よりも高温となるが、絶縁基板20の熱膨張率に比して冷却器70の熱膨張率が格段に大きいために、絶縁基板20に比して冷却器70の方が相対的に大きく膨張する。図示の場合、x方向にもy方向にも、絶縁基板20に対して冷却器70が膨張する。
【0024】
重ね合せブロック30の表面は絶縁基板20で拘束され、重ね合せブロック30の裏面は冷却器70で拘束されている。絶縁基板20に比して冷却器70の方が相対的に大きく膨張するのに追従して、重ね合せブロック30の表面に比して裏面の方が相対的に大きく変形すれば、絶縁基板20にも冷却器70にも大きな熱応力が発生しない。
【0025】
重ね合せブロック30では、グラファイト箔34と金属箔36が重ね合わされているだけであり、グラファイト箔34と金属箔36は当接面に沿って滑ることもできれば、両者の密着力が増大した状態に変化することもできれば、両者の密着力が低下した状態に変化することもできる。重ね合せブロック30は、柔軟に変形できる。絶縁基板20に対して冷却器70が膨張・収縮する際には、重ね合せブロック30が柔軟に変形する。絶縁基板20に対して冷却器70が膨張・収縮しても、絶縁基板20に大きな熱応力が発生することもなければ、冷却器70に大きな熱応力が発生することもない。さらに、重ね合せブロック30自体にも大きな熱応力が発生することがない。
図1に示すモジュール80は、熱抵抗が低いとともに十分に柔軟な重ね合せブロック30を利用することで、長期信頼性を得ている。
【0026】
重ね合せブロック30を形成する際には、幅の広い長尺のグラファイト箔34と幅の広い長尺の金属箔36を重ね合わせた長尺多層箔を多重に巻くことによって、四角柱状のブロックを形成し、それを横断面に沿って切断することで、複数個の重ね合せブロック30に切り分ける。
【0027】
以下に、種々の重ね合せブロックを説明する。以下の説明では相違点のみを説明する。重複説明を省略する。
(第2実施例)
図2に示すように、第2実施例の重ね合せブロック30aは、長尺のグラファイト箔34aと長尺の金属箔36aを重ね合わせた長尺多層箔を多重に巻くことによって、重ね合せブロック30aを形成している。この実施例の重ね合せブロック30aでも、絶縁基板20の法線がグラファイト箔34aと金属箔36aの当接面に沿って延びており、xz面に沿って延びる当接面とyz面に沿って延びる当接面を併せ持っている。
【0028】
(第3実施例)
絶縁基板20が矩形であれば、第2実施例の重ね合せブロック30aを矩形とすることができる。
図3に示すように、第3実施例の重ね合せブロック30bは、第2実施例の重ね合せブロック30aを4本の切断線40bに沿って切断することで形成する。第2実施例の重ね合せブロック30aを絶縁基板20にろう付けしてから切断すれば、第3実施例の重ね合せブロック30bは重ね合せ状態を維持する。
【0029】
(第4実施例)
第2実施例の重ね合せブロック30aの外周にプレス力を加えて矩形に修正することができる。
図4に示すように、第4実施例の重ね合せブロックは、第2実施例の重ね合せブロック30bの外周に、直交する4方向からプレス力F1,F2,F3,F4を同時に加える。すると、重ね合せブロックは矢印M1,M2,M3,M4に示すように変形し、ほぼ矩形に修正される。
【0030】
(第5実施例)
重ね合せブロックは、柔軟に変形することから、必ずしもxz面に沿って延びる当接面とyz面に沿って延びる当接面の両者を必要としない。
図5に示す第5実施例の重ね合せブロック30dの場合、当接面はxz面に沿って延びており、yz面に沿って延びる当接面の面積は小さい。この重ね合せブロック30dでも、y方向の膨張・収縮のみならず、x方向の膨張・収縮にもよく追従する。y方向の横領緩和性もx方向の横領緩和性も兼ね備えている。
図5の重ね合せブロック30dは、長尺のグラファイト箔34dの表裏両面に長尺の金属箔36dを重ね合わせた長尺多層箔を折り返しながら積層することで形成される。なお図示の明瞭化のために金属箔36d同志の当接面の図示を省略している。参照番号42dは、折り返しながら積層した重ね合せブロックの外周を取り囲む金属箔であり、外力が作用しない状態では、重ね合せブロック30dの形状を維持する。外周を取り囲む金属箔42dは十分に柔軟であり、重ね合せブロック30dの柔軟性を損ねない。
【0031】
(第6実施例)
図6は、第6実施例の重ね合せブロック30eを示す。長尺のグラファイト箔34eと長尺の金属箔36eを重ね合わせた長尺多層箔を、三角形を形成するように多重に巻く。そうして得られた6個の三角形を図示のように組み合わせ、その外周を箔42eで包むことで第6実施例の重ね合せブロック30eが得られる。
【0032】
上記の実施例では、長尺の箔を用いる。これに代えて、短尺の箔の多数枚を積層して重ね合せブロックを形成することもできる。
図7に示すように、第7実施例の重ね合せブロック30fは、短尺のグラファイト箔34fと短尺の金属箔36fを交互に多数枚積層して重ね合せブロック30fを形成する。参照番号42fは、外周を取り囲む金属箔であり、外力が作用しない状態での重ね合せブロック30fの形状を規制する。外周を取り囲む金属箔42fは十分に柔軟であり、重ね合せブロック30fの柔軟性を損ねない。
【0033】
図8は、第8実施例の重ね合せブロック30gを示し、第7実施例の重ね合せブロック30fの2枚を組み合わせて構成されている。上方の重ね合せブロック30f1は、当接面がxz面内にある向きに置かれ、下方の重ね合せブロック30f2は、当接面がyz面内にある向きに置かれる。重ね合せブロック30f1の裏面と重ね合せブロック30f2の表面をろう付けすることができる。
【0034】
(第9実施例)
図9は、第9実施例の重ね合せブロック30hを示している。グラファイト箔34hと金属箔34hの各々は、同心円をなしている。42hは、外周を囲む箔である。第9実施例の重ね合せブロック30hでも必要な柔軟性と伝熱性を確保することができる。
【0035】
(第10実施例)
図10の(a)は、巻く前の長尺多層箔35を示している。この長尺多層箔35を巻くと、巻くにつれて、グラファイト箔とグラファイト箔の間に介在する金属箔の枚数が変化する。
図10は、長さ方向を圧縮して図示している。実際には、例えば、巻き始めから1000回転までの距離ではグラファイト箔34jに1枚の金属箔36j1が重ね合されており、1000〜2000回転までの距離では2枚の金属箔36j1,36j2が重ね合されており、2000〜3000回転までの距離では3枚の金属箔36j1,36j2,36j3が重ね合されている。この長尺多層膜35を利用すれば、中心部ではグラファイト箔が密に配置されており、周辺部ではグラファイト箔が疎に配置されている重ね合せブロックを得ることができる。(b)は中心近傍での重ね合せ状態を示し、(d)は周辺近傍での重ね合せ状態を示し、(c)は中間域での重ね合せ状態を示している。多くの半導体装置10では中心近傍では発熱量が高く、周辺近傍では発熱量が低い。発熱量が大きい中心近傍には(b)に示す重ね合せ状態が対向し、発熱量が小さい周辺近傍には(d)に示す重ね合せ状態が対向する使い方をすることができる。なお、グラファイトが密に存在位置でも、少なくとも10%は金属箔が占めていることが好ましい。単位面積毎に10%の金属箔が混在していると、必要な機械的強度を確保することができる。
【0036】
(第11実施例)
図11は、中心ほど発熱量が高い半導体装置の2個を絶縁基板に搭載する際に用いる重ね合せブロックを示している。中心ほど発熱量が高いのに対応し、中心近傍ではグラファイト箔とグラファイト箔の間隔aが狭く、周辺近傍ではグラファイト箔とグラファイト箔の間隔cが広く、中間域でのグラファイト箔とグラファイト箔の間隔bが中間にある。
2個の半導体装置に対応するように、2個の同心体を並べて配置することで重ね合せブロックを形成している。
【0037】
(第2実施例のモジュール)
図12に示すように、第2実施例のモジュール80aでは、絶縁基板20の法線方向から観察したときに、重ね合せブロック30より冷却器70が広く広がっている。広く広がっている冷却器70を活用するために、重ね合せブロック30と冷却器70の間に、冷却器側ヒートスプレッダー60が介在している。
【0038】
冷却器側ヒートスプレッダー60は、重ね合せブロック30の外形形状にほぼ一致する開孔66が形成されているとともに冷却器70の表面に沿って延びるグラファイト箔64と、グラファイト箔64の表裏を被覆する金属箔62,68によって形成されている。グラファイト箔64は、xy面に沿った方向の熱伝導率が非常に高くなる向きにおかれている。上側の金属箔62にも、重ね合せブロック30の外形形状にほぼ一致する開孔63が形成されている。
重ね合せブロック30は、上側金属箔62の開孔63とグラファイト箔64の開孔66を通過して下側の金属箔68の上面に固定される。金属箔62,68の外形形状は、グラファイト箔64の外形形状よりも一回り大きく、グラファイト箔64の外形形状の外側では金属箔62と68がグラファイト箔64を介さないで対向する。グラファイト箔64を介さないで対向する周辺部では、金属箔62と68がろう付けされ、それによってグラファイト箔64のxy面内の位置が固定される。
重ね合せブロック30と冷却器70は、下側の金属箔68を利用してろう付けされる。
【0039】
重ね合せブロック30の外周側に位置するグラファイト箔34を伝熱する熱は、グラファイト箔64に伝熱し、冷却器70の上面の広い範囲に伝熱する。それに対して、重ね合せブロック30の内周側に位置するグラファイト箔34を伝熱する熱は、グラファイト箔64に妨げられることなく、開孔66を通過して冷却器70に伝熱される。グラファイト箔64には、面に沿った方向の伝熱性が良好なのに対し、面に直交する方向の伝熱性は低いという性質がある。開孔66を形成すると、面に直交する方向の伝熱性が低いという特性が問題となるのを避けられる。
【0040】
開孔63,66の内部に、例えば十字形上の梁を渡してもよい。この場合、重ね合せブロック30の中心から直接的に冷却器70に伝熱する経路の熱抵抗は上昇するが、グラファイト箔64を経て冷却器70の広い範囲に広がる伝熱経路が形成され、半導体装置10の中心から冷却器70に至るまでの実質的な熱抵抗が低下することがある。開孔63,66は必ずしも完全な開孔でなくてもよく、必要に応じて梁を渡したものであってもよい。梁を渡す場合には、重ね合せブロック30の下面に、梁を受け入れる溝を形成することが好ましい。
【0041】
図12のモジュール80aの場合、半導体装置10より重ね合せブロック30が広く広がっている。広く広がっている重ね合せブロック30を活用するためには、狭い範囲に存在している高温の半導体装置10の熱を、重ね合せブロック30の表面に沿った方向に伝熱し、半導体装置10より広く広がっている重ね合せブロック30の広い範囲に効率的に伝熱することが好ましい。
そこで、このモジュール80aでは、絶縁基板20と重ね合せブロック30の間に絶縁基板側ヒートスプレッダー50が付加されている。絶縁基板側ヒートスプレッダー50は冷却器側ヒートスプレッダー60と同じ構造である。絶縁基板側ヒートスプレッダー50は、図示はされていないが、半導体装置10の外形形状にほぼ一致する開孔が形成されているとともに重ね合せブロック30の表面に沿って延びるグラファイト箔と、そのグラファイト箔の表裏を被覆する金属箔で形成されている。そのヒートスプレッダー50を絶縁基板20と重ね合せブロック30の間に付加すると、狭い範囲に存在している高温の半導体装置10の熱を重ね合せブロック30の表面に沿った方向に伝熱し、広く広がっている重ね合せブロック30の広い範囲に効率的に伝熱することができる。しかも絶縁基板20から冷却器70に直接的に伝熱する経路の熱抵抗を上げてしまうこともない。
絶縁基板側ヒートスプレッダー50の場合も、冷却器側ヒートスプレッダー60の場合と同様に、グラファイト箔の開孔に梁を渡すことがある。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。