【実施例】
【0022】
(基本課題と、更なる課題1を解決する実施例)
図1は、表面側冷却器20aと、表面側重ね合わせブロック30aと、半導体装置40と、裏面側重ね合わせブロック30bと、裏面側冷却器20bを順に積層して構成した第1実施例のモジュール10の分解斜視図を示している。
表面側冷却器20aは、熱抵抗が低い金属(アルミ)で形成されており、内部に冷却液の通過経路が形成されている。表面側冷却器20aには、冷却液の流入管と流出管が形成されている。裏面側冷却器20bは、表面側冷却器20aと同じ形状と構造である。表面側冷却器20aの裏面と裏面側冷却器20bの表面には、絶縁層が形成されており、それによって、後記する重ね合わせブロックと冷却器の間の絶縁を確保している。表面側冷却器20aの裏面と裏面側冷却器20bの表面は、xy面に沿って延びている。
表面側重ね合わせブロック30aは、多数枚のグラファイト箔32aと多数枚の金属箔34aが交互に重ね合されたブロック36aと、そのブロック36aに導通可能に接続されている金属板38aで構成されている。金属板38aはy方向に長く延びており、個々のグラファイト箔32aと個々の金属箔34aはyz面に沿って延びている。グラファイト箔32aと金属箔34aの当接面は、半導体装置40の表面電極に立てた法線(z軸)に沿って延び、表面側重ね合わせブロック30aの長手方向(y軸)に沿って延びている。なお、図では、個々のグラファイト箔32aと個々の金属箔34aの厚みが実際よりも厚く表示されている。実際の積層枚数はもっと多い。裏面側重ね合わせブロック30bは、表面側重ね合わせブロックと同じ構造と形状に形成されている。
半導体装置40は、図示しない表面電極と裏面電極を備えており、その他に図示しない制御電極を備えている。半導体装置40は、制御電極に加える電圧によって、表面電極と裏面電極の間の抵抗を切換える。大電流をスイッチングするものであり、動作すると発熱する。冷却しないと半導体装置40が過熱することから、冷却を要する。
【0023】
半導体装置40の表面電極と表面側冷却器20aの裏面の間に金属板を介在させれば、その金属板が導電体となって半導体装置40の表面電極に対する導電路が確保される。しかし、金属板の熱抵抗は、本実施例で用いる重ね合わせブロックの熱抵抗よりも大きい。金属板を介在させる技術では、半導体装置40と表面側冷却器20aの間の熱抵抗が大きくなってしまい、半導体装置40が過熱してしまう。また、半導体装置40の熱膨張係数と金属板の熱膨張係数が相違することから、半導体装置と金属板に大きな熱応力が発達し、それがモジュールの長期信頼性を損ねる。その問題を解決するために、半導体装置40の表面電極と表面側冷却器20aの裏面の間に、表面側重ね合わせブロック30aを用いる。
【0024】
図1の第1実施例では、多数枚のグラファイト箔32aと多数枚の金属箔34aを交互に重ね合わせてブロック36aを形成している。グラファイト箔32aと金属箔34aは単に重ね合わされているだけで、それ以上の拘束関係はない。重ね合わせた形状を維持するために、ブロック36aの外周側面は、金属箔で包まれている。最外周を覆っている金属箔は柔軟であって、グラファイト箔32aと金属箔34aが変形・変位することを妨げない。また、金属板38aは最外周を覆っている金属箔に導通し、各々のグラファイト箔32aと各々の金属箔34aは、ブロック36aの最外周を覆っている金属箔に導通している。全部のグラファイト箔32aと全部の金属箔34aが、金属板38aに導通している。
【0025】
ブロック36aの表面は、表面側冷却器20aの裏面にろう付けされている。ブロック36aの裏面は、半導体装置40の表面電極にろう付けされている。モジュール10を形成した段階では、表面側重ね合わせブロック36aの表面は表面側冷却器20aで拘束され、表面側重ね合わせブロック36aの裏面は半導体装置40で拘束されている。
【0026】
裏面側冷却器20bと裏面側重ね合わせブロック30bと半導体装置40の関係は、表面側に同じである。ただし、表面側と裏面側では、上下関係が反転している。表面側部材の裏面が裏面側部材の表面となり、表面側部材の表面が裏面側部材の裏面となる。実質的に重複する説明は省略する。参照番号40pは、裏面側重ね合せブロック30bの表面と半導体装置40の裏面電極が接する範囲を示し、参照番号36pは、裏面側重ね合せブロック36bの裏面と裏面側冷却器20bの表面が接する範囲を示している。
【0027】
半導体装置40の表面電極には表面側重ね合わせブロック30aを介して給電される。金属板38aも金属箔34aもグラファイト箔32aも導電体である。金属箔34aとグラファイト箔32aのy方向の電気抵抗は低い。同様に、半導体装置40の裏面電極には裏面側重ね合わせブロック30bを介して給電される。
半導体装置40が動作すると、半導体装置40が発熱する。半導体装置40の温度>表面側重ね合わせブロック30aの温度>表面側冷却器20aの温度の関係となる。本実施例では、表面側重ね合わせブロック30aを構成するグラファイト箔32aがz方向に延びて半導体装置40と表面側冷却器20aの間に伝熱経路を提供している。z方向に延びているグラファイト箔32aの熱抵抗は、金属板38aの熱抵抗よりも低い。半導体装置40と表面側冷却器20aの間の熱抵抗は非常に低い。金属板38aで伝熱する場合に比して、半導体装置40と表面側冷却器20aの温度差は小さく抑えられる。
裏面側も同じであって、半導体装置40と裏面側冷却器20bの温度差は小さく抑えられる。
【0028】
半導体装置40の熱膨張率に比して表面側冷却器20aの熱膨張率が格段に大きいために、半導体装置40が発熱すると、半導体装置40に比して表面側冷却器20aの方が相対的に大きく膨張する。図示の場合、半導体装置40に対して表面側冷却器20aが、x方向にもy方向にも膨張する。
表面側重ね合わせブロック30aの表面は表面側冷却器20aで拘束され、表面側重ね合わせブロック30aの裏面は半導体装置40に拘束されている。半導体装置40に比して表面側冷却器20aの方が相対的に大きく膨張するのに追従して、表面側重ね合わせブロック30aの裏面に比して表面の方が相対的に大きく変形すれば、半導体装置40にも表面側冷却器20aにも大きな熱応力が発生しない。
【0029】
表面側重ね合わせブロック30aでは、グラファイト箔32aと金属箔34aが重ね合わされているだけであり、グラファイト箔32aと金属箔34aは当接面に沿って滑ることもできれば、両者の密着力が増大した状態に変化することもできれば、両者の密着力が低下した状態に変化することもできる。表面側重ね合わせブロック30aは、柔軟に変形できる。半導体装置40に対して表面側冷却器20aが膨張・収縮する際には、重ね合わせブロック30aが柔軟に変形する。半導体装置40に対して表面側冷却器20aが膨張・収縮しても、半導体装置40に大きな熱応力が発生することもなければ、表面側冷却器20aに大きな熱応力が発生することもない。さらに、表面側重ね合わせブロック30a自体にも大きな熱応力が発生することがない。
裏面側重ね合わせブロック30bも、前記と同様の応力緩和作用を発揮する。半導体装置40に大きな熱応力が発生することもなければ、裏面側冷却器20bに大きな熱応力が発生することもなければ、裏面側重ね合わせブロック30bにも大きな熱応力が発生することもない。
図1に示すモジュール10では、半導体装置40の表面電極に対する導電路の電気抵抗が低く、半導体装置40と表面側冷却器20aの間の伝熱経路の熱抵抗が低く、十分に柔軟な重ね合わせブロック30aを利用することで大きな熱応力が発生するのを防止している。同様に、半導体装置40の裏面電極に対する導電路の電気抵抗が低く、半導体装置40と裏面側冷却器20bの間の伝熱経路の熱抵抗が低く、十分に柔軟な重ね合わせブロック30bを利用することで大きな熱応力が発生するのを防止している。
【0030】
本実施例では、各々のグラファイト箔32aと各々の金属箔34aが、yz面に沿って延びている。この場合、ブロック36aのy方向の電気抵抗が低い。そのために、金属板38aを用いるのに代えて、ブロック36自体をy方向に長くのばして導電路としてもよい。金属板38aを併用する場合には、各々のグラファイト箔32aと各々の金属箔34aがxz面に沿って延びるようにしてもよい。また、重ね合わせブロック36は、長尺のグラファイト箔と長尺の金属箔を重ねたものを多重に巻くことで形成してもよい。
【0031】
図1では図示されていないが、表面側重ね合わせブロック30aと半導体装置40と裏面側重ね合わせブロック30bを接合したものを、射出成形型内に収容し、表面側重ね合わせブロック30aと半導体装置40と裏面側重ね合わせブロック30bの周囲に溶融樹脂を充填し、その溶融樹脂が硬化した樹脂モールドで半導体装置40等を封止することができる。それによってモジュールの信頼性と耐久性を向上させることができる。
樹脂モールドは、その表面近傍の外形を仮想線90で示すように、ブロック36aの側方を覆う。重ね合わせブロック30aの一部は樹脂モールドから突出し、図示しない導電体に接続可能となっている。樹脂モールド90の表面はブロック36aの表面と面一であり、ブロック36aの表面は樹脂モールド90の表面に露出している。そのために、ブロック36aの表面を表面側冷却器20aの裏面に(樹脂モールドを介することなく)接合することができる。同様に、樹脂モールド90の裏面は裏面側ブロック36bの裏面と面一であり、裏面側ブロック36bの裏面は樹脂モールド90の裏面に露出している。そのために、ブロック36bの裏面を裏面側冷却器20bの表面に(樹脂モールドを介することなく)接合することができる。
【0032】
本実施例では、裏面側にも表面側と同じ構造を配置している。本実施例は、半導体装置40が表裏両面に電極を備えており、表裏両面に冷却器を配置する場合に対応するものである。すなわち、更なる課題1の解決に向けたものである。
それに対して、半導体装置40の裏面が絶縁基板に固定されている場合もあるし、半導体装置40の裏面が大気にさらされている場合もある。そのような場合は、表面側冷却器20aと表面側重ね合わせブロック30aを用いるものの、裏面側冷却器20bと裏面側重ね合わせブロック30bは用いない。上記のケースでは、表面側冷却器20aと表面側重ね合わせブロック30aを用いるだけで、課題(基本的課題)が解決される。
【0033】
(基本課題と更なる課題2を解決する実施例)
図2に示すように、この実施例のモジュール80は、2個の半導体装置40a,40bを内蔵する。この明細書では、一方の半導体装置40aを表面側半導体装置といい、他方の半導体装置40bを裏面側半導体装置という。
図2では、表面側半導体装置40aと表面側重ね合わせブロック30aが、中間重ね合わせブロック70に対して組み付けられた位置に示され、裏面側半導体装置40bと裏面側重ね合わせブロック30bが、中間重ね合わせブロック70から分離した状態で示されている。添え字aは表面側の部材であることを示し、添え字bは裏面側の部材であることを示し、
図1と参照番号が同じ部材は、
図1の部材に対応することを示している。
【0034】
図3に示すように、表面側半導体装置40aはダイオードとIGBTを内蔵している。同様に、裏面側半導体装置40bもダイオードとIGBTを内蔵している。表面側半導体装置40aの表面電極は、IGBTのドレイン電極であり、導電体でもある表面側重ね合わせブロック30aを介して、直流電源の正極に接続される。実際には、後記する樹脂モールド90から突出する金属板38aを利用して直流電源の正極に接続される。裏面側半導体装置40bの裏面電極は、IGBTのソース電極であり、導電体でもある裏面側重ね合わせブロック30bを介して、直流電源の負極に接続される。実際には、後記する樹脂モールド90から突出する金属板38bを利用して直流電源の負極に接続される。表面側半導体装置40aの裏面電極はIGBTのソース電極であり、裏面側半導体装置40bの表面電極はIGBTのドレイン電極であり、両者は導電体でもある中間重ね合わせブロック70によって接続される。2個のIGBTを直列に接続した電子回路が得られる。中間重ね合わせブロック70の一部78は、樹脂モールド90から突出しており、その突出部78に導電体を接続することができる。なお、IGBTのゲート電極に制御電圧を加える端子も、図示はしないものの樹脂モールド90から突出している。モジュール80は
図3に示す昇圧コンバータ回路を内蔵している。
【0035】
図2に示すように、表面側半導体装置40aの表面電極に表面側重ね合わせブロック30aの裏面が接合され、表面側重ね合わせブロック30aの表面に表面側冷却器20aの裏面が接合される。表面側冷却器20aの裏面は絶縁層で被覆されており、導電体である表面側重ね合わせブロック36aと表面側冷却器20aの間が絶縁されている。表面側重ね合わせブロック30aは、
図1で説明した重ね合わせブロック30と同じ構造と同じ形状を備えおり、yz面内を延びるグラファイト箔32aと金属箔34aが交互に多数枚が積層されてブロック36aを形成し、そこから金属板38aが延びている。金属板38aは樹脂モールド90から突出する。上記構成によって得られる作用効果は
図1を参照して説明したとおりであり、表面側半導体装置40aの表面電極に対する低電気抵抗の導電路が確保され、表面側半導体装置40aから表面側冷却器20aに至る低熱抵抗な伝熱経路が確保され、表面側半導体装置40aと表面側重ね合わせブロック30aと表面側冷却器20aに大きな熱応力が発生するのを防止する。
【0036】
裏面側も同様であり、裏面側半導体装置40bの裏面電極に裏面側重ね合わせブロック30bの表面が接合され、裏面側重ね合わせブロック30bの裏面に裏面側冷却器20bの表面が接合される。表面側と同じ関係が得られ、裏面側半導体装置40bの裏面電極に対する低電気抵抗な導電路が確保され、裏面側半導体装置40bから裏面側冷却器20bに至る低熱抵抗な伝熱経路が確保され、裏面側半導体装置40bと裏面側重ね合わせブロック30bと裏面側冷却器20bに大きな熱応力が発生するのを防止する。
【0037】
表面側半導体装置40aの裏面電極は中間重ね合わせブロック70の表面に接合され、裏面側半導体装置40bの表面電極は中間重ね合わせブロック70の裏面に接合される。中間重ね合わせブロック70は、H型ブロック76と、それに導通可能に接合されている金属板78で形成されている。H型ブロック76は、H型をしているグラファイト箔72と、H型をしている金属箔74が、交互にy方向に重ね合わせることで形成されている。各々のグラファイト箔72と金属箔74は、xz面内を延びている。グラファイト箔72と金属箔74は単に重ね合されているだけで、それ以上の拘束関係は講じられていない。重ね合わせた状態を維持するために、H型ブロック76の外表面は薄い金属箔で被覆されている。その金属箔は極めて柔軟であり、H型ブロック76を形成するグラファイト箔72と金属箔74が柔軟に変形することを邪魔しない。H型ブロック76のx方向とz方向の熱抵抗と電気抵抗は低い。H型ブロック76から延びている金属板78の先端は、樹脂モールド90から突出している。
【0038】
H型ブロック76は、x方向の両端部からz方向に延びる2本の重ね合わせ部を備えている。各々のz方向重ね合わせ部の表面は、表面側ブロック36aの表面と面一である。また、各々のz方向重ね合わせ部の裏面は、裏面側ブロック36bの裏面と面一である。
【0039】
表面側重ね合わせブロック30aと表面側半導体装置40aの側方(中間重ね合わせブロック70との隙間を含む)と、裏面側重ね合わせブロック30bと裏面側半導体装置40bの側方(中間重ね合わせブロック70との隙間を含む)と、中間重ね合わせブロック70の側方は、樹脂モールド90で覆われている。ただし、表面側ブロック36aの表面とH型ブロック76の表面は、樹脂モールド90の表面に露出している。また、裏面側ブロック36bの裏面とH型ブロック76の裏面は、樹脂モールド90の裏面に露出している。
樹脂モールド90の表面に表面側冷却器20aの裏面を被せると、表面側重ね合わせブロック30aの表面と中間重ね合わせブロック70の表面が、表面側冷却器20aの裏面に接触する。樹脂モールド90の裏面に裏面側冷却器20bの表面を被せると、裏面側重ね合わせブロック30bの裏面と中間重ね合わせブロック70の裏面が、裏面側冷却器20bの表面に接触する。
表面側重ね合わせブロック30aは、表面側半導体装置40aと表面側冷却器20aの間に低熱抵抗な伝熱経路を提供する。裏面側重ね合わせブロック30bは、裏面側半導体装置40bと裏面側冷却器20bの間に低熱抵抗な伝熱経路を提供する。さらに、中間重ね合わせブロック70は、表面側半導体装置40aと裏面側半導体装置40bと表面側冷却器20aと裏面側冷却器20bの間に低熱抵抗な伝熱経路を提供する。
【0040】
上記実施例によると、中間重ね合わせブロック70を利用することで、表面側半導体装置40aの裏面電極と裏面側半導体装置40bの表面電極に対する低電気抵抗な導電路が確保され、表面側半導体装置40aの裏面電極から表面側冷却器20aに至る低熱抵抗な伝熱路が確保され、表面側半導体装置40aの裏面電極から裏面側冷却器20bに至る低熱抵抗な伝熱路が確保され、裏面側半導体装置40bの表面電極から表面側冷却器20aに至る低熱抵抗な伝熱路が確保され、裏面側半導体装置40bの表面電極から裏面側冷却器20bに至る低熱抵抗な伝熱路が確保され、表面側冷却器20aと表面側重ね合わせブロック30aと表面側半導体装置40aと中間重ね合わせブロック70と裏面側半導体装置40bと裏面側重ね合わせブロック30bと裏面側冷却器20bに大きな熱応力が発生するのを防止する。
【0041】
上記の実施例では、表面側重ね合わせブロック30aと裏面側重ね合せブロック30bを構成するグラファイト箔32a,32bはyz面に沿って展開しており、中間重ね合せブロック70を構成するグラファイト箔72はxz面に沿って展開しており、両者の展開面が直交している。グラファイト箔の展開面に沿った方向の熱膨張率は非常に低い。グラファイト箔32a,32bは、モジュールがy方向に変形することを抑制し、z方向に変形することを抑制する。グラファイト箔72は、モジュールがx方向に変形することを抑制し、z方向に変形することを抑制する。グラファイト箔32a,32b,72によって、モジュールがx、y,zの全方向に向けて変形することが抑制される。モジュールが直交する3つの全方向について変形することが抑制されると、樹脂モールドで封止して保護する必要をなくすことできる。樹脂モールドを不用化することができる。
【0042】
(3相インバータ回路をモジュール化した実施例)
図4に示すように、3相インバータ回路をモジュール化することができる。この場合は各相に対して
図2の構造を用いる。添え字は、u相、v相、w相を示している。
図8に示すように、表面側半導体装置40au、40av,40awのドレインは、共通電位に接続する。そこで、
図4に示すように、u相、v相、w相に亘って延びる金属板38aを利用する。金属板38aには3つの開孔が形成されており、そこに、u相用表面側重ね合わせブロック36au、v相用表面側重ね合わせブロック36av、w相用表面側重ね合わせブロック36awがはめ込まれている。金属板38aとブロック36au,36av,36awを組み合わせる代わりに、
図4の仮想線に示すように、u相、v相、w相に亘って延びる一個の重ね合わせブロック30aを利用してもよい。各グラファイト箔32aと各金属箔34aがy方向に長く延びていれば、必要な導通性を確保することができる。
同様に、
図8に示すように、裏面側半導体装置40bu、40bv,40bwのソースは、共通電位に接続する。そこで、
図4に示すように、u相、v相、w相に亘って延びる金属板38bを利用する。金属板38bには3つの開孔が形成されており、そこに、u相用裏面側重ね合わせブロック36bu、v相用裏面側重ね合わせブロック36bv、w相用裏面側重ね合わせブロック36bwがはめ込まれている。金属板38bとブロック36bu,36bv,36bwを組み合わせる代わりに、図示はしないが、u相、v相、w相に亘って延びる一個の重ね合わせブロックを利用してもよい。各グラファイト箔32bと各金属箔34bがy方向に長く延びていれば、必要な導通性を確保することができる。
この実施例では、u相用とv相用とw相用の回路が、共通の樹脂モールド90に封止されている。金属板38a,38b,78u,78v,78wの一端が樹脂モールド90の外に延びている。
【0043】
図5は
図4のV−V線断面図を示す。冷却器20a,20bの内部にある冷却液経路の断面が図示されている。参照番号22aは表面側冷却器20aの裏面に沿って延びる絶縁板であり、参照番号22bは裏面側冷却器20bの表面に沿って延びる絶縁板である。絶縁板22a,22bは、冷却器に固定されていてもよいし、冷却器の表面に形成されていてもよい。樹脂モールド90が、異なる電位の導電体の間を絶縁していることがわかる。
【0044】
図6は、
図5のVI−VI線断面図を示し、
図7はモジュールの平面図を示す。参照番号42は、制御端子を示す。u相用制御端子42uとv相用制御端子42vとw相用制御端子42wは、樹脂モールド90外に延びている。表面側重ね合わせブロック30au,30av,30awの表面と、H側重ね合わせ合わせブロック70u,70v,70wの表面が、樹脂モールド90の表面に露出している。同様に、図示はしないが、裏面側重ね合わせブロック30bu,30bv,30bwの裏面と、H側重ね合わせブロック70u,70v,70wの裏面が、樹脂モールド90の裏面に露出している。
【0045】
上記実施例では、3個の表面側ブロック36au,36av,36awを金属板38aに組み付けることで表面側重ね合せブロック30aを構成している。これに代えて、u相・v相・w相に跨って延びるグラファイト箔32aと金属箔34aの重ね合わせブロック36a自体を表面側重ね合せブロック30aとしてもよい。すなわち、金属板38aを用いない実施例がある。表面側重ね合わせブロック30aを構成するグラファイト箔32aと金属箔34aの当接面が、半導体装置40aの表面に対して垂直であり(すなわちz方向に延びており)、表面側重ね合わせブロック30aの長手方向に延びていれば(すなわちy方向に延びていれば)、必要な伝熱性と導電性を確保することができる。表面側重ね合わせブロック30a自体を導電体として用いるために金属板38aを用いない場合、
図7の平面図では、y方向に長い表面側重ね合わせブロック30aの表面がモジュールの表面に露出し、表面側冷却器に密着する。裏面側重ね合わせブロック30bについても同様である。
上記の実施例では、グラファイト箔32a、32bがyz方向に延びている。グラファイト箔は、その展開面に沿った方向の熱膨張率が非常に低い。そのために、
図4のモジュールのy方向の変形率とz方向の変形率は非常に低い。また、グラファイト箔72がxz方向に延びている。そのために、
図4のモジュールのx方向の変形率とz方向の変形率は非常に低い。以上の結果、
図4のモジュールでは、x方向、y方向、z方向のいずれの方向においても熱によって膨張・収縮する変形率が小さい。そのために、樹脂モールド90で保護する必要がない。樹脂モールド90で保護しなくても必要な信頼性を確保することができる。樹脂モールド90を省略することで製造コストを低減できる。
上記実施例では、導電体である表面側重ね合わせブロック30aと裏面側重ね合わせブロック30bはわずかな距離を隔てて向い合って延びている。インバータ回路の動作時には、わずかな距離を隔てて平行している導電体に反対方向の電流が流れる。そのために、相互インダクタスが低く抑えられる。寄生インダクタンスに起因して発熱することを抑制でき、寄生インダクタンスによって大きなサージ電圧が発生することを防止できる。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。