【実施例】
【0014】
[実施例1の構成]
図1ないし
図3は、本発明の燃料供給システムを適用したコモンレール式燃料噴射システム(実施例1)を示したものである。
【0015】
本実施例の燃料供給システムは、内燃機関(エンジン)用の燃料噴射システムとして知られるコモンレール式燃料噴射システム(蓄圧式燃料噴射装置)によって構成されている。
エンジンは、例えば自動車等の車両に搭載された車両走行用エンジンであって、複数の気筒(例えば第1〜第4気筒)を有する多気筒ディーゼルエンジンが採用されている。これにより、本実施例においては、燃料タンク1の燃料貯留室に貯留される液体燃料、つまりエンジンの燃料としてディーゼル油(軽油)が使用される。
【0016】
コモンレール式燃料噴射システムは、燃料タンク1の燃料貯留室から燃料を汲み上げるフィードポンプ(低圧燃料ポンプ)2と、このフィードポンプ2から供給された燃料中の異物を取り除く燃料フィルタ3と、この燃料フィルタ3から吸入した燃料を加圧して高圧化するサプライポンプ(高圧燃料ポンプ)4と、このサプライポンプ4から高圧燃料が導入される蓄圧室を有するコモンレール5と、このコモンレール5から高圧燃料が分配供給される複数のインジェクタ(ピエゾインジェクタ)6とを備え、コモンレール5の内部(蓄圧室)に蓄圧された高圧燃料を各インジェクタ6を介してエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給するように構成されている。
なお、サプライポンプ4は、高圧燃料を発生する高圧発生部を構成する。また、コモンレール5は、燃料供給経路の中でサプライポンプ4から高圧燃料が導入される高圧部(燃料供給経路の高圧部)に相当する。
【0017】
本実施例のサプライポンプ4は、フィードポンプ2から電磁吸入調量弁を経て加圧室内に吸入した燃料を加圧して高圧化し、この高圧燃料をコモンレール5の蓄圧室へ圧送供給する燃料噴射ポンプである。
サプライポンプ4の電磁吸入調量弁は、フィードポンプ2から加圧室内への燃料の吸入量を調整することで、サプライポンプ4の燃料吐出口より吐出される燃料吐出量を制御する。この電磁吸入調量弁は、ECUから印加されるポンプ駆動信号によって電子制御されるように構成されている。これにより、サプライポンプ4から吐出される燃料吐出量およびコモンレール圧力が制御される。
【0018】
本実施例のインジェクタ6は、エンジンの各気筒毎に対応して搭載される燃料制御弁(燃料噴射弁)として使用される。
このインジェクタ6としては、コモンレール5の蓄圧室内に蓄圧された高圧燃料を、直接燃焼室内に霧状に噴射供給する直接噴射タイプの内燃機関用燃料噴射弁(ディーゼルエンジン用のインジェクタ)が採用されている。
インジェクタは、エンジンの各気筒に形成される燃焼室内に燃料を噴射するもので、燃料を噴射する噴孔、およびこの噴孔に連通する燃料流路を有する筒状のノズルボディと、このノズルボディのガイド孔内に往復摺動可能に収容されて、ノズルボディの燃料流路を開閉するノズルニードルと、ノズルボディの燃料流路を介して噴孔に連通する燃料流路を有するインジェクタボディと、このインジェクタボディの長軸方向の先端部にノズルボディを螺子締結により固定するリテーニングナットとを備えている。
【0019】
ノズルボディの燃料流路には、ガイド孔よりも孔径が拡げられた燃料溜まり室が連通している。この燃料溜まり室には、コモンレール5の蓄圧室からインジェクタボディの燃料流路を通って燃料が導入される。
インジェクタボディの内部には、外部からインジェクタ(ピエゾ)駆動信号を受けるとノズルニードルを開弁方向に駆動するピエゾアクチュエータと、このピエゾアクチュエータにより駆動されてノズルニードルの背圧(圧力制御室内の燃料圧力)を制御する背圧制御機構とが収容されている。この圧力制御室(ノズルニードルの背圧制御室)は、インジェクタボディの燃料流路から分岐した分岐流路の途中(または最下流部)に設けられている。
【0020】
ピエゾアクチュエータは、ピエゾ素子をその軸線方向に多数積層してなる積層体(ピエゾスタック)を備えている。ピエゾスタックは、エンジン制御ユニット(電子制御装置:ECU)から印加されるインジェクタ駆動信号によって電子制御されるように構成されている。これにより、各インジェクタの噴孔から燃料噴射される燃料噴射量および噴射時期が制御される。
なお、ピエゾアクチュエータの代わりに、ステータおよびアーマチャにより構成されたソレノイドアクチュエータを採用しても良い。
【0021】
ここで、サプライポンプ4の電磁吸入調量弁、電磁減圧弁7および複数のインジェクタ6の各ピエゾスタックは、ECUによって電子制御されるポンプ駆動回路、減圧弁駆動回路およびインジェクタ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続されている。
ECUには、CPU、メモリ(ROM、RAMおよびEEPROM)、入力回路(入力部)、出力回路(出力部)、電源回路、タイマー回路、ポンプ駆動回路、減圧弁駆動回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが内蔵されている。
【0022】
コモンレール5の内部には、サプライポンプ4から導入される超高圧の燃料を蓄圧する蓄圧室が形成されている。また、コモンレール5には、蓄圧室の長手方向(軸線方向)に対して直交する半径方向に延びる複数の内外連通孔が形成されている。
複数の内外連通孔は、蓄圧室に一時的に貯留された高圧燃料を複数のインジェクタ6に分配供給するための分配流路である。
蓄圧室の軸線方向の一端側には、電磁減圧弁7が螺子締結等により接続される円筒状の減圧弁締結部が設けられている。この減圧弁締結部には、コモンレール5の軸線方向の一端面で開口する雌螺子孔(リークポート)が設けられている。
【0023】
電磁減圧弁7は、コモンレール5のリークポートから燃料タンク1の燃料貯留室へ戻される燃料戻し流量に応じてコモンレール5内の燃料圧力(所謂コモンレール圧)を減圧する減圧特性を有している。この電磁減圧弁7は、エンジン制御ユニット(電子制御装置:以下ECU)から印加される減圧弁駆動信号によって電子制御されるように構成されている。
また、本実施例では、電磁減圧弁7の弁体(バルブ:後述する)に背圧を与える背圧室(後述する)の燃料圧力を一定値以上の正圧(圧力開放部(P=0)よりも高圧の中間圧力(P=Pb)に保持するレギュレート弁8が電磁減圧弁7に搭載(配置)されている。 なお、電磁減圧弁7およびレギュレート弁8の詳細は、後述する。
【0024】
コモンレール式燃料噴射システムは、燃料タンク1の燃料貯留室からフィードポンプ2→燃料フィルタ3→サプライポンプ4の加圧室→コモンレール5の蓄圧室を経て複数のインジェクタ6の噴孔または燃料溜まり室(または圧力制御室)に燃料を供給する燃料供給経路と、燃料供給経路の高圧部(コモンレール5の蓄圧室)における過剰なまたは余剰な燃料を燃料タンク1の燃料貯留室へ戻す燃料戻し経路とを備えている。
燃料タンク1は、例えば自動車等の車両に搭載されて、所定の内容積を有するタンクケース内に燃料貯留室が形成されている。
【0025】
燃料供給経路は、燃料タンク1の燃料貯留室から燃料フィルタ3を経てサプライポンプ4の燃料入口まで延びる低圧配管11、およびサプライポンプ4の燃料出口からコモンレール5の蓄圧室を経て複数のインジェクタ6の燃料入口まで延びる高圧配管12を有している。
燃料戻し経路は、サプライポンプ4のリークポートから燃料タンク1の燃料貯留室まで延びる燃料戻し配管(図示せず)、コモンレール5のリークポートから電磁減圧弁7、レギュレート弁8を経て燃料タンク1の燃料貯留室まで延びる燃料戻し配管13、およびインジェクタ6のリークポートから燃料タンク1の燃料貯留室まで延びる燃料戻し配管(図示せず)を有している。
【0026】
[実施例1の特徴]
次に、本実施例の電磁減圧弁7およびレギュレート弁8の詳細を
図1および
図2に基づいて簡単に説明する。
【0027】
電磁減圧弁7は、コモンレール5のリークポートに接続される燃料戻し配管13の最上流部にレギュレート弁8と一体化されて配置されている。この電磁減圧弁7は、コモンレール5の減圧弁締結部に締結固定される円筒状のニップル21、このニップル21に密着して組み付けられるオリフィスプレート22、このオリフィスプレート22の弁座(バルブシート)23に接離するバルブ24、このバルブ24をバルブシート23に押し付ける方向(閉弁方向)に付勢するリターンスプリング25、およびバルブ24をバルブシート23から離脱させる方向(開弁方向)に駆動する電磁アクチュエータ(以下ソレノイド)26等を備えている。
【0028】
ニップル21の中間部の外周には、コモンレール5の減圧弁締結部に結合(接続)する際(締結作業)に使用される多角形状の工具係合部(六角部)27が設けられている。また、ニップル21の脚部側の外周には、減圧弁締結部に形成される雌螺子孔と螺合する雄螺子が設けられている。また、ニップル21の頭部側には、内部にオリフィスプレート22およびソレノイド26のバルブボディ28を収容する円筒状の周壁29が設けられている。
周壁29の内周には、バルブボディ28の外周に形成される雄螺子孔と螺合する雌螺子が設けられている。また、周壁29の外周には、ソレノイド26のリテーニングナット(後述する)に形成される雌螺子孔と螺合する雄螺子が設けられている。
【0029】
ニップル21の内部には、コモンレール5の蓄圧室よりも燃料の流れ方向の下流側に位置し、且つコモンレール5の蓄圧室に臨む高圧室31が貫通形成されている。
高圧室31は、ニップル21の中心軸線方向に真っ直ぐに延びる大径孔、およびこの大径孔よりも孔径が小さい中径孔32等を有している。この中径孔32は、オリフィスプレート22の入口側流路(中径孔32よりも孔径が小さい小径孔33、小径孔33よりも孔径が小さいオリフィス孔34)を介してバルブ収容室35に連通している。
高圧室31の大径孔の上流端には、コモンレール5の蓄圧室に向かって開口した燃料入口(電磁減圧弁7の燃料入口)が形成されている。
【0030】
バルブ収容室35は、中継流路(流路孔36、37)を介して背圧室(アーマチャ室)38に連通している。また、背圧室38は、出口側流路(流路孔39〜41)を介して低圧室42に連通している。また、低圧室42は、トップリターンチューブ43内のアウトレットポート(電磁減圧弁7およびレギュレート弁8のリークポート)44に連通している。そして、アウトレットポート44は、燃料戻し配管13を介して燃料タンク1に連通している。
【0031】
オリフィスプレート22は、その中央部に電磁減圧弁7の弁体であるバルブ24が着座可能な円環状のバルブシート23を有している。また、オリフィスプレート22には、高圧室31の中径孔32よりも燃料の流れ方向の下流側に位置する小径孔33、およびこの小径孔33よりも燃料の流れ方向の下流側に位置し、且つ通過する燃料の流量を調節するためのオリフィス孔34が形成されている。
小径孔33およびオリフィス孔34は、バルブシート23で開口する弁孔(電磁減圧弁7の弁孔)を構成している。
【0032】
バルブ24は、電磁減圧弁7の弁体を構成し、ソレノイド26のアーマチャ51の軸線方向の先端側(アーマチャステム)に一体的に形成されている。このバルブ24は、バルブ収容室35内に往復位相可能に収容されている。また、バルブ24は、オリフィスプレート22のバルブシート23に接離して高圧室31と背圧室38とを連通する入口側流路(小径孔33、オリフィス孔34)および中継流路(流路孔36、37)を開放、閉鎖する。
【0033】
バルブ24は、アーマチャ51のアーマチャステムと別体部品で構成されている場合、アーマチャステムに溶接または圧入等により一体移動可能に連結されている。なお、バルブ24を、アーマチャ51のアーマチャステムから分離独立させても良い。この場合は、バルブ24をボールバルブやスプールバルブ等に変更しても良い。また、バルブ24とアーマチャ51との間に、バルブ24とアーマチャ51とを一体移動可能に連結するシャフト等の連結部材を配置しても良い。
【0034】
リターンスプリング25は、アーマチャ51に対して、バルブ24をソレノイド26のステータコア側とは反対側(バルブシート側)へ向けて付勢する弾性力(付勢力、復元力)を発生する圧縮コイルスプリングである。このリターンスプリング25は、アーマチャ51の上端面(スプリング座部)とソレノイド26の非磁性スプリングシート65の下端面(スプリング座部)との間で軸線方向(ソレノイド軸方向)に圧縮された状態で配置されている。
【0035】
ここで、電磁減圧弁7は、ソレノイド26のコイル52への通電停止(OFF)時にリターンスプリング25の付勢力によってバルブシート23にバルブ24が着座して高圧室31と背圧室38との連通を遮断するノーマリクローズ(N/C)タイプの電磁燃料圧力制御弁(電磁弁)である。また、電磁減圧弁7は、ソレノイド26のコイル52への通電(ON)時にソレノイド26の磁気吸引力によってバルブシート23からバルブ24が離脱(フルリフト)して高圧室31と背圧室38とを連通する。
【0036】
ソレノイド26は、バルブ24を往復移動可能に支持する非磁性金属製のバルブボディ28と、バルブ24と一体移動可能な磁性金属製の可動子(以下アーマチャ51)と、通電されると周囲に磁束を発生するソレノイドコイル(以下コイル52)と、このコイル52の内周側および外周側等に磁路を形成する磁性金属製の固定子(以下ステータコア53)と、コイル52と外部回路(外部電源や外部制御回路:TCU)との接続を行うための外部接続用コネクタ54とを備えている。
【0037】
また、ソレノイド26は、上記の各ソレノイド主要部品(アーマチャ51、コイル52、ステータコア53、外部接続用コネクタ54等)の他に、ステータコア15の周囲を円周方向に取り囲むように設置された非磁性金属ケース55と、コイル52のターミナル56が通り抜ける非磁性金属ブロック(ハウジング)57と、電磁減圧弁7の図示上部に設けられるヘッドキャップであるソレノイドケース58と、電磁減圧弁7のニップル21にソレノイド26の各構成部品を組み付けるためのリテーニングナット59とを備えている。
【0038】
バルブボディ28の中心軸線上には、軸線方向に延びる摺動孔61が貫通形成されている。また、摺動孔61のオリフィスプレート側の開口端には、摺動孔61の孔径よりも大きい開口径のバルブ収容室35が設けられている。
また、バルブボディ28の内部には、バルブボディ28の中心軸線方向に対して傾斜するように設けられる流路孔36、およびバルブボディ28の中心軸線方向に平行で、且つ摺動孔61に対して並列配置される流路孔37が形成されている。
【0039】
アーマチャ51は、リターンスプリング25の付勢力によってバルブ24と共に、オリフィスプレート22のバルブシート側へ付勢される。
また、アーマチャ51は、バルブボディ28の摺動孔61内をその軸線方向に往復摺動可能な摺動軸部(電磁減圧弁7の弁軸:アーマチャステム62)、およびこのアーマチャステム62の軸線方向の先端側に設けられて、オリフィスプレート22のバルブシート23に着座可能なバルブ24を有している。
【0040】
また、アーマチャ51は、ステータコア53の磁極面に所定のギャップを隔てて対向配置されるアーマチャ本体を有している。このアーマチャ本体の中央部には、リターンスプリング25の一端部を保持するスプリング座部が設けられている。また、アーマチャ本体には、アーマチャ51のアーマチャ本体等を収容する背圧室38内でのアーマチャ51の前後空間における燃料の流動を確保するために、アーマチャ本体をその軸線方向と平行に貫通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
なお、背圧室38の下流端には、流路孔39〜41に向かって開口した燃料出口(電磁減圧弁7の第1燃料出口)が形成されている。
【0041】
コイル52は、電力の供給を受けると(電流印加または通電されると)、アーマチャ51をステータコア53の磁極面63に引き寄せる磁力を発生する磁束発生手段(磁力発生手段)である。
このコイル52は、絶縁性を有する合成樹脂(1次成形樹脂部、モールド樹脂部)製のコイルボビン(以下ボビン:図示せず)の円筒部の外周に、絶縁被膜を施した導線を複数回巻装したソレノイドコイルである。
【0042】
コイル52は、発生磁力によってアーマチャ51をステータコア側へ磁気吸引し、バルブ24およびアーマチャ51を、バルブシート23から離脱する方向(開弁方向)へ駆動するものである。
そして、本実施例のソレノイド26においては、コイル52が通電されると、アーマチャ51およびステータコア53を磁束が集中して通過する磁気回路が形成される。
【0043】
コイル52は、ボビンの円筒部の外周に巻装された円筒状のコイル部と、このコイル部の巻き始め端部および巻き終わり端部より外側に引き出された一対のコイルリード線を有している。
一対のコイルリード線は、ボビン、つまり一対の鍔状部間および円筒部の外周に巻装されるコイル52を形成する導体(導電体)であって、外部接続用コネクタ54の各ターミナル56を介して、外部回路と電気接続されている。
【0044】
また、コイル52の各コイルリード線と各ターミナル56との導通接合部は、絶縁性を有する合成樹脂(2次成形樹脂部、モールド樹脂部)製のソレノイドケース58によって被覆されて保護されている。このソレノイドケース58は、コイル52およびボビンの周囲を円周方向に取り囲む円筒部、および一対のターミナル56の先端側(外部接続端子)を露出して収容するコネクタケース(外部接続用コネクタ54のコネクタケース)を有している。
【0045】
ステータコア53は、アーマチャ51を引き寄せる円環状の磁気吸引部(磁極面63)を有している。
ステータコア53は、コイル52が通電されると励磁(磁化)される磁性金属(例えば鉄等の強磁性材料)よりなる。このステータコア53は、非磁性金属ブロック57の基端側に一体的に形成されている。また、ステータコア53の二重円環状の端面には、アーマチャ51を磁気吸引するための磁極面(磁気吸引部)63が設けられている。この磁極面63は、コイル52への通電が停止(OFF)している時、アーマチャ51のアーマチャ本体の磁極面との間に所定距離を隔てて対向配置された対向部である。
【0046】
非磁性金属ケース55は、ステータコア53の周囲を円周方向に取り囲むように設置されて、ステータコア53の外周部を保持するステータケースである。この非磁性金属ケース55は、ニップル21の周壁29の環状端面(図示上端面)との間に円環状の非磁性スペーサ64を挟み込む円環状の鍔部65を有している。
また、非磁性金属ケース55は、ステータコア53の外周部に係合してステータコア53を組み付け、非磁性金属ブロック57をかしめまたは溶接等によって組み付けている。これにより、非磁性金属ケース55と非磁性金属ブロック57との間にステータコア53が固定される。
【0047】
非磁性金属ブロック57は、電磁減圧弁7のハウジングに相当し、ステータコア53の反アーマチャ側の端面上に搭載されるようにソレノイドケース58内にインサート成形されている。また、非磁性金属ブロック57の中心軸線上には、背圧室38に臨むように開口した流路孔39が形成されている。
非磁性金属ブロック57の内部には、非磁性スプリングシート66が圧入固定されている。この非磁性スプリングシート66の内部には、流路孔39と流路孔41とを連通する流路孔40が形成されている。
なお、流路孔39〜41の上流端には、背圧室38に向かって開口した燃料入口(レギュレート弁8の燃料入口)が形成されている。
【0048】
非磁性金属ブロック57の図示上端側には、円筒状のトップリターンチューブ43が設けられている。このトップリターンチューブ43は、電磁減圧弁7およびレギュレート弁8から流出する燃料を燃料タンク1の燃料貯留室に戻すための燃料戻し配管13に接続されている。
ソレノイドケース58は、外部接続用コネクタ54のコネクタケース、およびトップリターンチューブ43の外周を周方向に取り囲むように設けられる合成樹脂製の円筒部67を有している。
【0049】
また、トップリターンチューブ43の内部には、燃料出口流路(アウトレットポート44)が形成されている。このアウトレットポート44は、出口側流路(流路孔39〜41)および低圧室42よりも燃料の流れ方向の下流側に設けられて、電磁減圧弁7およびレギュレート弁8の外部へ向けて開口している。
なお、アウトレットポート44の下流端には、電磁減圧弁7およびレギュレート弁8の外部に向かって開口した燃料出口(電磁減圧弁7の第1燃料出口、レギュレート弁8の燃料出口)が形成されている。
【0050】
レギュレート弁8は、電磁減圧弁7を含む燃料戻し配管13において、電磁減圧弁7のオリフィスプレート22のバルブシート23およびバルブ24よりも燃料の流れ方向の下流側に設置されている。このレギュレート弁8は、非磁性金属ブロック57のトップリターンチューブ43に設置されている。
また、レギュレート弁8は、電磁減圧弁7のバルブ24に背圧を与える背圧室38の燃料圧力を一定値以上の正圧に保持する弁装置である。
【0051】
レギュレート弁8は、バルブシート23およびバルブ24よりも燃料の流れ方向の下流側、つまり出口側流路(流路孔39〜41)の出口周縁部に設けられる環状のバルブシート(弁座)71、このバルブシート71に接離して、背圧室38と低圧室42とを連通する出口側流路(流路孔39〜41)を開閉するボールバルブ(弁体)72、およびこのボールバルブ72をバルブシート71に押し当てる方向(閉弁方向)に付勢するリターンスプリング73を備えている。
【0052】
トップリターンチューブ43の底部には、レギュレート弁8の弁孔である流路孔41の開口端から燃料の流れ方向の下流側に向けて孔径が徐々に拡径したテーパー状(円錐面形状)の段差面、つまり出口側流路(流路孔39〜41)の出口周縁部が形成されている。この段差面の内周に設けられるシートエッジ(稜線)は、バルブ72が着座して流路孔41を閉鎖するバルブシート71として使用される。
リターンスプリング73は、ボールバルブ72に対して、ボールバルブ72をバルブシート側へ向けて付勢する弾性力(付勢力、復元力)を発生する圧縮コイルスプリングである。
【0053】
リターンスプリング73は、ボールバルブ72のスプリング座部と非磁性スプリングシート74のスプリング座部との間で軸線方向(ソレノイド軸方向)に圧縮された状態で配置されている。
非磁性スプリングシート74は、トップリターンチューブ43に圧入固定されている。この非磁性スプリングシート74の内部には、軸線方向に延びるアウトレットポート44が形成されている。
なお、レギュレート弁8の開弁圧は、開弁前のリターンスプリング73のスプリング荷重により規定される。
【0054】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のコモンレール式燃料噴射システムに使用される電磁減圧弁7およびレギュレート弁8の作用を
図1ないし
図3に基づいて簡単に説明する。
【0055】
コモンレール5の蓄圧室内の燃料圧力(コモンレール圧)を減圧させる必要がある場合には、ECUから減圧弁駆動回路を介してソレノイド26のコイル52が通電(ON)される。コイル52がONされると、コイル52の周囲に磁束が発生し、アーマチャ51とステータコア53を通る磁気回路が形成される。これにより、ステータコア53の磁極面63にアーマチャ51が磁気吸引されるため、バルブ24がオリフィスプレート22のバルブシート23から離脱する。
したがって、電磁減圧弁7のバルブ24が開弁することで、高圧室31と背圧室38とが連通する。このとき、高圧室31の上流側の開口(燃料入口)は、コモンレール5の蓄圧室およびリークポートへ向かって開放されているので、高圧室31内には、コモンレール5の蓄圧室内の燃料圧力と等しい高圧燃料が充満(導入)されている。
【0056】
よって、コモンレール5の蓄圧室、リークポートおよび高圧室31内の高圧燃料は、高圧室31の大径孔→中径孔32→小径孔33→オリフィス孔34→バルブ収容室35→中継流路(流路孔36、37)→背圧室38を経て出口側流路(流路孔39〜41)に到達する。
その後、背圧室38および出口側流路(流路孔39〜41)内に導入されて、出口側流路(流路孔39〜41)内の燃料圧力がレギュレート弁8の開弁圧を上回ると、つまりリターンスプリング73の付勢力を上回ると、ボールバルブ72がバルブシート71より離脱してレギュレート弁8が開弁する。
【0057】
レギュレート弁8が開弁すると、高圧室31(A位置)側の燃料圧力(P=Pa)と低圧室42(C位置)側の燃料圧力(P=0)との中間圧力(P=Pb)とされた燃料が、背圧室38(B位置)および出口側流路(流路孔39〜41)から圧力(大気)開放部であるバルブシート71よりも燃料の流れ方向の下流側の低圧室42→アウトレットポート44を通って燃料戻し配管13に流入する。燃料戻し配管13に流入した燃料は、燃料戻し配管13から燃料タンク1の燃料貯留室へ戻される。
したがって、コモンレール5の蓄圧室内の燃料圧力が、電磁減圧弁7の開弁前の燃料圧力から所定の圧力(例えばエンジンの運転状態に対応して設定される目標コモンレール圧)に減圧される。
【0058】
一方、ソレノイド26のコイル52への通電を停止(OFF)すると、コイル52の発生磁束が消磁されるため、リターンスプリング25の付勢力によってバルブシート23にバルブ24が押し付けられるため、高圧室31と背圧室38との連通が遮断される。
これにより、背圧室38および出口側流路(流路孔39〜41)内の燃料圧力がレギュレート弁8の開弁圧を下回ると、リターンスプリング73の付勢力によってボールバルブ72がバルブシート71に着座してレギュレート弁8が閉弁する。
したがって、コモンレール5の蓄圧室内の燃料圧力の減圧が終了する。
【0059】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のコモンレール式燃料噴射システムは、
図1に示したように、燃料タンク1の燃料貯留室からフィードポンプ2によって汲み上げた燃料を燃料フィルタ3→サプライポンプ4の加圧室→コモンレール5の蓄圧室を経由して複数のインジェクタ6へ供給する燃料供給経路と、この燃料供給経路の高圧部であるコモンレール5の蓄圧室に貯留された燃料を、高圧室31、入口側流路(小径孔33、オリフィス孔34)、電磁減圧弁7のバルブ収容室35、中継流路(流路孔36、37)、背圧室38、出口側流路(流路孔39〜41)、レギュレート弁8のバルブ収容室である低圧室42、燃料出口流路(アウトレットポート44)、電磁減圧弁7の外部配管(燃料戻し配管13)を経由して燃料タンク1の燃料貯留室へ戻すための燃料戻し経路とを備えている。
【0060】
そして、コモンレール式燃料噴射システムの燃料戻し経路に、電磁減圧弁7の最下流部を構成する非磁性金属ブロック57のトップリターンチューブ43に配置されて、電磁減圧弁7のバルブシート23およびバルブ24よりも燃料の流れ方向の下流側にレギュレート弁8を設けたことにより、
図1および
図3の実施例1に示したように、電磁減圧弁7のバルブ24に背圧を与える背圧室38(B位置)の燃料圧力を一定値以上の正圧(高圧室31(A位置)側の燃料圧力よりも低圧で、且つ圧力開放部である低圧室42(C位置)側の燃料圧力(P=0)よりも高圧の中間圧力(P=Pb))に保持することが可能となる。
これによって、コモンレール5のリークポートよりも燃料の流れ方向の下流側に位置する高圧室31の内部圧力と背圧室(例えばアーマチャ収容室)38の内部圧力との圧力差が小さくなることから、局部的に飽和蒸気圧を下回る領域が生じ難くなり、その領域においてキャビテーションが発生し難くなる。これにより、電磁減圧弁7のバルブシート23およびバルブ24におけるキャビテーションの発生を要因とするエロージョンの生成を回避することができる。
【0061】
ところで、特許文献2に記載の定残圧弁は、高圧ポンプで昇圧された高圧燃料が通過する弁体よりも燃料の流れ方向の下流側に位置するスプリングストッパをその中心線方向に貫通するオリフィスを設け、アジャストパイプの燃料孔の開口周縁に設けられる環状の弁座と弁体との間からのキャビテーションの発生を抑制するものであるが、特許文献2のようにオリフィスを使用する場合、減圧弁のバルブの背圧は、オリフィスを通過する流量により変化してしまうので、減圧特性が安定しない恐れがある。
これに対して、本実施例のように、レギュレート弁8を使用することで、電磁減圧弁7のバルブ24の背圧を一定値に保持できるため、安定した減圧特性にて本実施例の電磁減圧弁7を使用することができる。
【0062】
[
参考例の構成]
図4は、本発明の燃料供給システムを適用したコモンレール式燃料噴射システム(
参考例)を示したものである。ここで、実施例1と同じ符号は、同一の構成または機能を示
すものであって、説明を省略する。
【0063】
参考例のコモンレール式燃料噴射システムは、エンジンの気筒内に燃料を噴射する噴
孔を有する複数のインジェクタ6と、燃料タンク1の燃料貯留室から少なくともフィード
ポンプ2を経て供給された燃料を加圧して高圧化し、複数のインジェクタ6へ圧送するサ
プライポンプ4と、このサプライポンプ4から導入された高圧燃料を複数のインジェクタ
6へ分配供給するコモンレール5と、燃料タンク1の燃料貯留室からフィードポンプ2→
サプライポンプ4の加圧室→コモンレール5の蓄圧室を経て複数のインジェクタ6の噴孔
または燃料溜まり室へ燃料を供給する燃料供給経路と、少なくともコモンレール5の蓄圧
室から燃料タンク1の燃料貯留室へ燃料を戻す燃料戻し経路とを備えている。
【0064】
コモンレール5の軸線方向の一端側、つまり蓄圧室に連通する第1円筒開口部には、電磁減圧弁7が接続されている。また、コモンレール5の軸線方向の他端側、つまり蓄圧室に連通する第2円筒開口部には、燃料圧力センサであるコモンレール圧センサ79が接続されている。
電磁減圧弁7は、高圧室と背圧室とを連通する入口側流路、この入口側流路の周囲、特に入口側流路の出口周縁部に設けられる環状のバルブシート、このバルブシートに接離して入口側流路を開閉するバルブ、このバルブをバルブシートに押し当てる方向(閉弁方向)に付勢するリターンスプリング、およびバルブをバルブシートから離脱させる方向(開弁方向)に駆動するアクチュエータ(例えばソレノイド)を備えている。
【0065】
コモンレール5は、エンジンの各気筒のインジェクタ6に高圧燃料を分配供給する円筒パイプ形状の燃料分配管である。このコモンレール5の内部には、サプライポンプ4から導入された超高圧の燃料を蓄圧する蓄圧室が形成されている。
また、コモンレール5は、蓄圧室が長手方向に形成されるレール本体81、およびこのレール本体81と一体部品または別体部品で構成された複数の第1〜第6配管ジョイント82を備えている。
第1〜第6配管ジョイント82は、蓄圧室の長手方向(軸線方向)に対して直交する半径方向に延びる内外連通孔がそれぞれ形成されている。
第1、第2配管ジョイント82の内外連通孔の外側開口部83は、例えば第1、第2気筒のインジェクタ6へ高圧燃料を分配供給する燃料出口(アウトレットポート)を構成している。
【0066】
第3配管ジョイント82の内外連通孔の外側開口部84は、サプライポンプ4から高圧燃料が導入される燃料入口(インレットポート)を構成している。
第4、第5配管ジョイント82の内外連通孔の外側開口部85は、例えば第3、第4気筒のインジェクタ6へ高圧燃料を分配供給する燃料出口(アウトレットポート)を構成している。
第6配管ジョイント82の内外連通孔の外側開口部は、外部配管86、燃料戻し配管13を介して、コモンレール5の蓄圧室内の燃料を燃料タンク1の燃料貯留室へ戻すための燃料出口(アウトレットポート)を構成している。外部配管86の接続端には、第6配管ジョイント82に螺子締結される配管ナット87が設置されている。
【0067】
また、第6配管ジョイント82の内外連通孔は、電磁減圧弁7の背圧室と内外連通孔の
中で外部配管86側に形成される低圧室とを連通する出口側流路を含んで構成されている
。そして、コモンレール5の第6配管ジョイント82の内部には、出口側流路の出口周縁
部に設けられる環状の弁座(バルブシート)、この弁座に接離して出口側流路を開閉する
弁体(ボールバルブ等)、およびこの弁体をバルブシートに押し当てる方向(閉弁方向)
に付勢するリターンスプリングを有するレギュレート弁8が配置されている
。
【0068】
[変形例]
本実施例では、本発明の燃料供給システムを、コモンレール式燃料噴射システムに適用しているが、本発明の燃料供給システムを、コモンレールを備えない燃料噴射システムに適用しても良い。
本実施例では、減圧弁のバルブの駆動手段(アクチュエータ)として、ソレノイド26を採用しているが、減圧弁のバルブの駆動手段(アクチュエータ)として、モータを備えた電動アクチュエータや負圧作動アクチュエータを採用しても良い。
【0069】
本実施例では、燃料供給経路の高圧部として、コモンレール5の蓄圧室を採用しているが、燃料供給経路の高圧部として、サプライポンプ4の加圧室からコモンレール5の蓄圧室を経て複数のインジェクタ6の各燃料溜まり室(または圧力制御室)までの間(高圧配管12含む)であれば、いずれの箇所を高圧部として採用しても良い。この場合、例えばサプライポンプ4またはインジェクタ6等の高圧部における過剰なまたは余剰な燃料(溢流した燃料)を減圧弁、レギュレート弁を経て燃料タンク1の燃料貯留室へ戻す燃料戻し経路が形成される。
【0070】
また、内燃機関(エンジン)の燃料として、液化ガス燃料やガソリンを使用しても良い。また、内燃機関(エンジン)の燃料として、エタノールまたはメタノール等のアルコール燃料、あるいはガソリンとアルコール燃料とを任意の比率で混合したアルコール混合燃料を使用しても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、多気筒ディーゼルエンジンの代わりに、多気筒ガソリンエンジンを用いても良い。また、単気筒エンジンに本発明を適用しても良い。
【0071】
本実施例では、本発明の燃料戻し経路として、燃料供給経路の高圧部(コモンレール5)における過剰なまたは余剰な燃料を燃料タンク1へ戻す燃料戻し経路を採用しているが、本発明の燃料戻し経路として、燃料供給経路の高圧部(コモンレール5)における過剰なまたは余剰な燃料を燃料供給経路の低圧部(低圧配管11、サプライポンプ4の加圧室よりも上流側)へ戻す燃料戻し経路を採用しても良い。
また、レギュレート弁を、電磁減圧弁7の燃料出口流路(アウトレットポート44)から燃料タンク1の燃料貯留室、あるいは燃料供給経路の低圧部へ燃料を戻すための燃料戻し配管13の途中に設置しても良い。
【0072】
本実施例では、本発明の減圧弁として、ソレノイド26のコイル52への通電停止(OFF)時にリターンスプリング25の付勢力によってバルブシート23にバルブ24を液密的に押し当てて高圧室31と背圧室38との連通を遮断し、ソレノイドのコイルへの通電(ON)時にソレノイドの磁気吸引力によってバルブシート23からバルブ24を引き離して高圧室31と背圧室38とを連通するノーマリクローズ(N/C)タイプの電磁燃料圧力制御弁(電磁減圧弁7)を採用しているが、本発明の減圧弁として、ソレノイドのコイルへの通電停止(OFF)時にリターンスプリングの付勢力によってバルブシート23からバルブ24を引き離して高圧室31と背圧室38とを連通し、ソレノイドのコイルへの通電(ON)時にソレノイドの磁気吸引力によってバルブシート23にバルブ24を液密的に押し当てて高圧室31と背圧室38との連通を遮断するノーマリオープン(N/O)タイプの電磁燃料圧力制御弁(電磁減圧弁)を採用しても良い。