(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
尿素水タンク(14)に貯えられた尿素水を吐出する尿素水ポンプ(15)と、前記尿素水ポンプ(15)を駆動するモータ(16)とを備える排気浄化システム(10)において、前記排気浄化システム(10)を制御する制御装置(30)であって、
予め設定された前記モータ(16)の回転数と前記尿素水ポンプ(15)から吐出される尿素水の圧力との関係を特性マップとして記憶する記憶手段(34)と、
前記モータ(16)の実回転数を検出する回転数検出手段(32)と、
前記尿素水ポンプ(15)から吐出される尿素水の実尿素水圧力を検出する尿素水圧検出手段(33)と、
前記回転数検出手段(32)で検出した前記実回転数と前記尿素水圧検出手段(33)で検出した前記実尿素水圧力との関係を、前記記憶手段(34)に記憶されている前記特性マップと対比して、前記尿素水圧検出手段(33)の特性を診断する特性診断手段(35)と、を備え、
前記特性診断手段(35)は、前記尿素水圧検出手段(33)で検出した前記実尿素水圧力が、予め設定された目標圧力を中央値とする診断圧力範囲で安定しているとき、前記実回転数と前記実尿素水圧力との関係を前記特性マップと対比して前記尿素水圧検出手段(33)の特性を診断する排気浄化システムの制御装置。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気を浄化する後処理として尿素を用いた尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが公知である。尿素SCRシステムでは、排気に尿素を添加することにより、排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元する。ここで、尿素は、水溶液の尿素水として排気へ添加される。この尿素SCRシステムに異常が生じると、排気へ尿素水が添加されず、排気の処理が不十分になるおそれがある。そこで、この尿素SCRシステムの異常を診断する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、内燃機関に燃料の供給を停止している間に、予め設定された量の尿素水を排気に添加している。そして、特許文献1では、尿素水の添加によって変化するNOx濃度をNOxセンサで検出することにより、尿素水を噴射する機構の異常の有無を診断している。
しかし、特許文献1の場合、異常の有無はNOxセンサで検出したNOx濃度に依存している。そのため、特許文献1では、NOxの濃度に異常が生じると、尿素水を噴射する機構は全体として異常と診断される。その結果、尿素水を噴射する機構のうちいずれの部品に異常が生じているか特定が困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、異常が生じている部品の特定、特に尿素水圧検出手段の異常の把握が容易な排気浄化システムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1または4記載の発明では、記憶手段は予めモータの回転数と尿素水ポンプから吐出される尿素水の圧力との関係を特性マップとして記憶している。すなわち、モータの回転数と尿素水ポンプから吐出される尿素水の圧力とは相関している。そこで、記憶手段は、この相関する関係を特性マップとして記憶している。特性診断手段は、回転数検出手段で検出したモータの実際の回転数である実回転数と尿素水圧検出手段で検出した尿素水の実際の圧力である実尿素水圧との関係を、この特性マップと対比する。これにより、特性診断手段は、実回転数と実尿素水圧との関係が特性マップと異なるとき、尿素水圧検出手段に異常が生じていると診断する。したがって、尿素水圧検出手段の異常を容易に把握することができる。
【0007】
請求項1記載の発明では、特性診断手段は、尿素水圧検出手段で検出した実尿素水圧が診断圧力範囲にあるとき、尿素水圧検出手段の特性を診断する。この診断圧力範囲は、予め設定されている。尿素水圧検出手段は、例えば個体差などによってばらつきを含んでいる。また、尿素水ポンプから吐出される尿素水の圧力は、尿素水ポンプの起動からの経過時間や排気へ添加を繰り返すことにより経時的に変化する。そこで、特性診断手段は、予め設定された診断圧力範囲において尿素水の圧力が安定しているとき、尿素水圧検出手段の診断を実行する。したがって、尿素水圧検出手段の異常の診断精度を向上することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、特性診断手段は、回転検出手段で検出した実回転数が診断回転数範囲にあるとき、尿素水圧検出手段の特性を診断する。この診断回転数範囲は、予め設定されている。尿素水ポンプを駆動するモータは、例えば個体差などによってばらつきを含んでいる。また、尿素水ポンプを駆動するモータの回転数は、尿素水ポンプの起動からの経過時間や排気へ添加を繰り返すことにより経時的に変化する。そこで、特性診断手段は、予め設定された診断回転数範囲において尿素水の圧力が安定しているとき、尿素水圧検出手段の診断を実行する。したがって、尿素水圧検出手段の異常の診断精度を向上することができる。
【0009】
請求項3記載の発明では、回転数制限手段は、尿素水ポンプを駆動するモータの回転数を回転上限値以下に制限する。尿素水圧検出手段に異常があるとき、モータの回転数を制御しても、目標となる尿素水の圧力に到達しないことがある。このとき、モータの回転数および負荷が過大となるおそれがある。そこで、モータを駆動しても尿素水の圧力が十分に上昇しないとき、回転数制限手段はモータの回転数を回転上限値以下に制限する。そして、特性診断手段は、このモータの回転数が制限されている状態が設定期間継続すると、尿素水検出手段の診断を実行する。このとき、モータの回転数と尿素水の圧力との間には大きな乖離が生じる。したがって、尿素水圧検出手段の異常を確実に診断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態による排気浄化システムの制御装置を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図2に示す排気浄化システム10は、例えば車両に搭載されている内燃機関11から排出される排気に尿素水を添加し、排気に含まれるNOxを還元するSCRシステムを構成している。内燃機関11の排気は、排気管部材12が形成する排気通路13を経由して大気へ放出される。内燃機関11は、例えばディーゼルエンジンである。なお、排気浄化システム10は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンやガスタービンエンジンなどに適用してもよい。また、排気浄化システム10は、車載の内燃機関11に限らず、例えば発電ユニットなどの据置型の内燃機関11に適用してもよい。
【0012】
排気浄化システム10は、尿素水タンク14、尿素水ポンプ15、モータ16、尿素水通路部17および還元触媒18を備えている。尿素水タンク14は、尿素水である尿素の水溶液を貯えている。尿素水ポンプ15は、尿素水タンク14に収容されている。モータ16は、尿素水ポンプ15を駆動する。尿素水ポンプ15は、モータ16へ電力を供給することにより駆動され、尿素水タンク14から吸入した尿素水を加圧して、尿素水通路部17へ吐出する。尿素水通路部17は、尿素水通路19を形成している。還元触媒18は、排気管部材12が形成する排気通路13に設けられている。
【0013】
排気浄化システム10は、上記に加えてインジェクタ21を備えている。尿素水通路19は、尿素水ポンプ15と反対側の端部がインジェクタ21に接続している。尿素水ポンプ15から吐出された尿素水は、尿素水通路19を経由してインジェクタ21に供給される。インジェクタ21は、排気管部材12に設けられている。インジェクタ21は、排気管部材12を貫いて、先端が排気通路13に露出している。インジェクタ21へ供給された尿素水は、排気通路13を流れる排気へ噴射される。内燃機関11から排出された排気とインジェクタ21から噴射された尿素水とは、排気通路13において混合され、還元触媒18へ流入する。排気に含まれるNOxは、還元触媒18において尿素水に含まれる尿素と化学反応することにより還元される。
【0014】
上述の排気浄化システム10は、制御装置30によって制御される。制御装置30は、
図1に示すように制御ユニット31、回転数センサ32、圧力センサ33および記憶部34を備えている。制御ユニット31は、CPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成され、ROMに記憶されているコンピュータプログラムによって排気浄化システム10を制御する。回転数センサ32は、回転数検出手段に相当し、モータ16の実際の回転数を実回転数として検出する。回転数センサ32は、検出したモータ16の実回転数を電気信号として制御ユニット31へ出力する。回転数センサ32は、モータ16の回転数を直接検出してもよく、モータ16へ供給する電気信号から間接的に検出してもよい。圧力センサ33は、尿素水圧検出手段に相当し、
図2に示すように尿素水ポンプ15とインジェクタ21とを接続する尿素水通路19に設けられている。圧力センサ33は、尿素水通路19において、尿素水ポンプ15から吐出された尿素水の実際の圧力を実尿素水圧として検出する。圧力センサ33は、検出した実尿素水圧を電気信号として制御ユニット31へ出力する。
【0015】
記憶部34は、例えばフラッシュメモリなどのように不揮発性の媒体で構成されている。記憶部34は、制御ユニット31のROMやRAMと共用してもよい。記憶部34は、
図3に示すような特性マップを記憶している。特性マップは、モータ16の回転数と尿素水ポンプ15から吐出される尿素水の圧力との関係を示すものである。この特性マップは、モータ16の回転数と尿素水の圧力との理想的な関係として予め設定され、記憶部34に記憶されている。モータ16の回転数と尿素水ポンプ15から吐出される尿素水の圧力つまりトルクとの間には、
図3に示すような反比例の関係がある。すなわち、尿素水ポンプ15から吐出される尿素水の圧力が決定すると、モータ16の回転数は特定の値となる。本実施形態の場合、このモータ16の回転数と尿素水の圧力との間の関係は、実験的に得られた理想値として作成され、記憶部34に記憶されている。
【0016】
制御装置30は、コンピュータプログラムを実行することにより、
図1に示すように特性診断部35をソフトウェア的に実現している。この特性診断部35は、ハードウェア的に実現してもよく、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現してもよい。特性診断部35は、圧力センサ33の特性すなわち圧力センサ33の異常を診断する。具体的には、特性診断部35は、回転数センサ32からモータ16の実回転数を取得し、圧力センサ33から尿素水通路19における尿素水の実尿素水圧を取得する。そして、特性診断部35は、取得した実回転数および実尿素水圧から圧力センサ33の特性を診断する。上述のように尿素水ポンプ15から吐出される尿素水の圧力が決定すると、圧力センサ33が正常であれば、モータ16の回転数は一義的に決定される。しかし、圧力センサ33に異常が生じているとき、取得した実回転数と実尿素水圧との関係は
図3に示す特性マップの理想的な関係から逸脱する。そのため、この特性マップの理想的な関係からの逸脱が大きくなると、圧力センサ33に何らかの異常が生じていることが考えられる。そこで、特性診断部35は、取得した実回転数と実尿素水圧との関係が特性マップから乖離しているとき、圧力センサ33に異常が生じていると診断する。本実施形態の場合、
図3に示すように特性マップは、理想値を中央値として上限値および下限値を有している。そして、特性診断部35は、取得した実回転数と実尿素水圧との関係が、この特性マップの上限値と下限値との間に設定されている設定範囲から逸脱したとき、圧力センサ33が異常であると診断する。上限値および下限値は、適用する排気浄化システム10に応じて設定される。一例として、上限値および下限値は、理想値に対し±10%〜十数%程度に設定される。
【0017】
また、特性診断部35は、実尿素水圧力が安定した状態にあるとき、圧力センサ33の異常について診断する。具体的には、特性診断部35は、圧力センサ33で取得した実尿素水圧力が診断圧力範囲にあるとき、圧力センサ33の特性を診断する。この診断圧力範囲は、適用する排気浄化システム10の特性に応じて予め任意に設定されている。圧力センサ33は、例えば個体差などによってばらつきを含んでいる。また、尿素水ポンプ15から吐出される尿素水の圧力は、尿素水ポンプ15の起動からの経過時間や排気への尿素水の添加を繰り返すことにより経時的に変化する。このように個体差や経時的な圧力の変化が生じるとき、圧力センサ33の診断を実行すると、これら個体差や経時的な変化によって検出する実尿素水圧の信頼性が低下するおそれがある。そこで、特性診断部35は、予め設定された診断圧力範囲において尿素水の圧力が安定しているとき、圧力センサ33の診断を実行する。
【0018】
また、特性診断部35は、モータ16の回転数が安定した状態にあることを条件として、圧力センサ33の異常について診断する構成としてもよい。特性診断部35は、例えば回転数センサ32で取得したモータ16の実回転数が診断回転数範囲にあるとき、圧力センサ33の特性を診断する。この診断回転数範囲は、適用する排気浄化システム10の特性に応じて予め任意に設定されている。モータ16や回転数センサ32は、圧力センサ33と同様に例えば個体差などによってばらつきを含んでいる。また、尿素水ポンプ15から吐出される尿素水の圧力は、尿素水ポンプ15の起動からの経過時間や排気への尿素水の添加を繰り返すことにより経時的に変化する。このように個体差や経時的な圧力の変化が生じるとき、圧力センサ33の診断を実行すると、これら個体差や経時的な変化によって検出する実回転数の信頼性が低下するおそれがある。そこで、特性診断部35は、予め設定された診断回転数範囲においてモータ16の回転数が安定しているとき、圧力センサ33の診断を実行する。
【0019】
制御ユニット31は、モータ16の回転数を制御することにより、尿素水ポンプ15から吐出される尿素水の圧力を目標圧力Ptなるように一定制御する。この目標圧力Ptは、誤差を考慮して、予め上限値と下限値とが決定されている。制御ユニット31は、この目標圧力Ptを中央値とする上限値と下限値との間に尿素水の圧力を制御する。モータ16が起動されると、尿素水ポンプ15は尿素水の吐出を開始する。そのため、圧力センサ33が検出する実尿素水圧Prは、
図4に示すように時間の経過とともにほぼ比例的に上昇する。圧力センサ33が正常であれば、制御ユニット31は、圧力センサ33で検出した実尿素水圧Prが目標圧力Ptに到達すると、この目標圧力Ptを維持するように実尿素水圧Prに基づいてモータ16の回転数をフィードバック制御する。すなわち、圧力センサ33が正常であれば、モータ16の実回転数Rrは
図3に示す特性マップの上限値と下限値との間の設定範囲に維持される。このとき、モータ16の実回転数Rrは、
図4に示すように正常回転数範囲で制御される。
【0020】
次に、上記の構成による診断の流れについて
図5に基づいて説明する。
特性診断部35は、モータ16を起動すると(S101)、尿素水の圧力を制御する処理を開始する(S102)。これとともに特性診断部35は、圧力センサ33から実尿素水圧Prを取得する(S103)。そして、特性診断部35は、取得した実尿素水圧Prと目標圧力Ptとを比較して、実尿素水圧Prが目標圧力Ptにあるか否かを判断する(S104)。このとき、特性診断部35は、実尿素水圧Prが目標圧力Ptの上限値と下限値との間にあるか否かを判断する。特性診断部35は、実尿素水圧Prが目標圧力Ptでないとき(S104:No)、S102へ戻り、尿素水の圧力を制御する処理を繰り返し、実尿素水圧Prが目標圧力Ptに到達するまで待機する。
【0021】
一方、特性診断部35は、実尿素水圧Prが目標圧力Ptであるとき(S104:Yes)、回転数センサ32から実回転数Rrを取得する(S105)。そして、特性診断部35は、取得した実回転数Rrと下限回転数Rminとを比較する(S106)。この下限回転数Rminは、
図3に示す特性マップにおいて下限値に相当する。すなわち、実尿素水圧PrがS103で取得した値に決定されると、圧力センサ33が正常であれば、モータ16の実回転数Rrは
図3に示す特性マップから下限回転数Rminと上限回転数Rmaxとの間にあることになる。そのため、特性診断部35は、実回転数Rrと下限回転数Rminとを比較する。
【0022】
圧力センサ33に異常が生じると、
図6に示すように取得したモータ16の実回転数Rrと圧力センサで検出した実尿素水圧Prとの間には乖離が生じる。すなわち、実尿素水圧Prが目標圧力Ptに制御されているとき、圧力センサ33が正常であるときと比較して、(A)モータ16の回転数が正常回転数範囲よりも高い状態で一定となる場合、(B)モータ16の回転数が正常回転数範囲よりも低い状態で一定となる場合、または(C)モータ16の回転数が正常回転数範囲に到達しない場合が生じる。そのため、圧力センサ33に異常が生じているとき、モータ16の実回転数Rrは、特性マップの上限回転数Rmaxと下限回転数Rminとの間に設定された設定範囲から逸脱することになる。
【0023】
そこで、特性診断部35は、実回転数Rrが下限回転数Rminよりも低いとき(S106:Yes)、圧力センサ33が異常であると診断する(S107)。また、特性診断部35は、実回転数が下限回転数Rmin以上であるとき(S106:No)、実回転数Rrと上限回転数Rmaxとを比較する(S108)。そして、特性診断部35は、実回転数Rrが上限回転数Rmaxより高いときも(S108:No)、圧力センサ33が異常であると診断する(S107)。一方、特性診断部35は、実回転数Rrが上限回転数Rmax以下であるとき(S108:Yes)、圧力センサ33が正常であると診断する(S109)。すなわち、S108において実回転数Rrが上限回転数Rmax以下であるとき、実回転数Rrは上限回転数Rmaxと下限回転数Rminとの間に設定された設定範囲にある。そのため、モータ16の実回転数Rrは正常な設定範囲にあることから、特性診断部35は圧力センサ33が正常であると診断する。
【0024】
以上説明したように、第1実施形態では、特性診断部35は、回転数センサ32で検出したモータ16の実回転数Rrと圧力センサ33で検出した実尿素水圧Prとの関係を、特性マップと対比する。特性診断部35は、実回転数Rrと実尿素水圧Prとの関係が特性マップの設定範囲から乖離するとき、圧力センサ33に異常が生じていると診断する。したがって、圧力センサ33の異常を容易に把握することができる。
【0025】
(第2実施形態)
第2実施形態による排気浄化システムの制御装置を
図7に示す。
第2実施形態の制御装置30は、第1実施形態の構成に加え回転数制限部36を備えている。回転数制限部36は、制御ユニット31でコンピュータプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現されている。この回転数制限部36は、ハードウェア的に実現してもよく、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現してもよい。回転数制限部36は、モータ16の回転数を予め設定された回転上限値Mr以下に制限する。圧力センサ33に異常があるとき、
図6(C)に示すようにモータ16の回転数を制御しても、実尿素水圧Prが目標圧力Ptに到達しない場合がある。この場合、実尿素水圧Prが目標圧力Ptに到達せず、S102およびS103の処理を繰り返すこととなる。この場合、圧力センサ33の異常の診断ができないだけでなく、モータ16に過大な負荷が加わるおそれがある。そこで、回転数制限部36は、実尿素水圧Prが目標圧力Ptに到達せず、モータ16の回転数が過大になるおそれがあるとき、モータ16の回転数を回転上限値Mr以下に制限する。
【0026】
特性診断部35は、このように回転数制限部36がモータ16の回転数を制限したとき、モータ16の回転数が回転上限値Mr以下に制限されている期間が設定期間を超えると、このときのモータ16の回転数で圧力センサ33の異常の診断を実行する。この設定期間は、モータ16の特性などに応じて任意に設定される。
【0027】
第2実施形態による診断の流れについて
図8に基づいて説明する。なお、第1実施形態における診断の流れと同一の処理については説明を省略する。
特性診断部35は、モータ16を起動すると(S201)、制御ユニット31に設けられているタイマーのカウントCをリセットする(S202)。すなわち、特性診断部35は、制御ユニット31のタイマーのカウントCをC=0とする。これとともに、特性診断部35は、尿素水の圧力を制御する処理を開始する(S203)。特性診断部35は、尿素水の圧力が制御されているとき、圧力センサ33から実尿素水圧Prを取得し(S204)、実尿素水圧Prが目標圧力Ptにあるか否かを判断する(S205)。
【0028】
特性診断部35は、実尿素水圧Prが目標圧力Ptであるとき(S205:Yes)、回転数センサ32から実回転数Rrを取得する(S206)。そして、特性診断部35は、取得した実回転数Rrと下限回転数Rminとを比較する(S207)。特性診断部35は、実回転数Rrが下限回転数Rminよりも低いとき(S207:Yes)、圧力センサ33が異常であると診断する(S208)。また、特性診断部35は、実回転数が下限回転数Rmin以上であるとき(S207:No)、実回転数Rrと上限回転数Rmaxとを比較する(S209)。そして、特性診断部35は、実回転数Rrが上限回転数Rmaxより高いとき(S209:Yes)、圧力センサ33が異常であると診断する(S208)。一方、特性診断部35は、実回転数Rrが上限回転数Rmax以下であるとき(S209:No)、圧力センサ33が正常であると診断する(S210)。
【0029】
ところで、特性診断部35は、S205において実尿素水圧Prが目標圧力Ptでないと判断したとき(S205:No)、回転数センサ32から実回転数Rrを取得する(S211)。そして、特性診断部35は、S211で取得した実回転数Rrが回転上限値Mr以下であるか否かを判断する(S212)。特性診断部35は、モータ16の実回転数Rrが回転上限値Mr以下であるとき(S212:Yes)、カウントCを「1」インクリメントする(S213)。すなわち、特性診断部35は、カウントCを「C=C+1」とする。一方、特性診断部35は、モータ16の実回転数Rrが回転上限値Mrより大きいとき(S212:No)、S203へ戻り、尿素水の圧力を制御する処理を繰り返す。回転数制限部36が機能している場合、通常であれば、S212においてモータ16の実回転数Rrが回転上限値Mrより大きいと判断されることはない。すなわち、通常であれば、S212においてモータ16の実回転数Rrが回転上限値Mrを上回ることはない。しかし、尿素水ポンプ15の起動直後などのように、負荷の変動が大きなとき、一時的にモータ16の実回転数Rrが回転上限値Mrを上回ることもある。この場合、特性診断部35は、S203へ戻り、尿素水の圧力を制御する処理を継続する。
【0030】
特性診断部35は、S213でカウントCをインクリメントすると、このカウントCが設定期間Tに到達したか否かを判断する(S214)。すなわち、特性診断部35は、モータ16の回転数が回転数制限部36によって回転上限値Mr以下に制限されている状態が設定期間Tとなったか否かを判断する。特性診断部35は、カウントCが設定期間Tに到達していないと判断したとき(S214:No)、S203へ戻り、尿素水の圧力を制御する処理を繰り返す。一方、特性診断部35は、カウントCが設定期間Tに到達したと判断すると(S214:Yes)、S204で取得した実尿素水圧Prが下限圧力Pminより小さいか否かを判断する(S215)。上述のように圧力センサ33に異常があるとき、実尿素水圧Prは十分な値まで上昇しない。そのため、実尿素水圧Prは、
図9に示すように目標圧力Ptに到達しない。そこで、特性診断部35は、実尿素水圧Prがこの目標圧力Ptよりも低い下限圧力Pminに到達していないとき(S215:Yes)、圧力センサ33は異常であると診断する(S208)。この下限圧力Pminは、目標圧力Ptより低い値として任意に設定することができる。また、特性診断部35は、実尿素水圧Prが下限圧力Pmin以上であるとき(S215:No)、S203へ戻り、尿素水の圧力を制御する処理を繰り返す。
【0031】
第2実施形態では、回転数制限部36は、尿素水ポンプ15を駆動するモータ16の回転数を回転上限値Mr以下に制限する。圧力センサ33に異常があるとき、モータ16の回転数を制御しても、尿素水の圧力が目標圧力Ptに到達しないことがある。このとき、モータ16の回転数および負荷が過大となるおそれがある。そこで、モータ16を駆動しても尿素水の圧力が十分に上昇しないとき、回転数制限部36はモータ16の回転数を回転上限値Mr以下に制限する。そして、特性診断部35は、このモータ16の回転数が制限されている状態が設定期間Tまで継続すると、圧力センサ33の診断を実行する。このとき、圧力センサ33で検出する実尿素水圧Prは、目標圧力Ptよりも低い下限圧力Pminに到達しない。そのため、特性診断部35は、実尿素水圧Prが下限圧力Pminに到達しないとき、圧力センサ33に異常があると診断する。したがって、圧力センサ33の異常を確実に診断することができる。
【0032】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。