特許第6233204号(P6233204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233204
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20060101AFI20171113BHJP
   A01G 31/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A01G9/00 C
   A01G31/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-128244(P2014-128244)
(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-7148(P2016-7148A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100191112
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】梶原 慎介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 吉晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇喜
(72)【発明者】
【氏名】水品 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】古川 直彦
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−047170(JP,A)
【文献】 実開昭63−038757(JP,U)
【文献】 特開昭63−279731(JP,A)
【文献】 米国特許第04476651(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00,9/00
A01G 31/00−31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する栽培装置であって、
栽培対象の植物を保持する植物保持カートリッジを複数一列で搬送可能に支持する搬送レールと、
前記搬送レールの第1所定位置において隣接する2つの前記植物保持カートリッジの間にスペーサを挿入するスペーサ挿入部と、
を有し、
前記スペーサ挿入部は、
外部から供給された前記スペーサを搬送するスペーサ用レールと、
前記搬送レールの前記第1所定位置に対して前記スペーサ用レールを合流させる第1合流部と、
前記第1合流部より上流側の前記搬送レールと前記スペーサ用レールのそれぞれで、前記植物保持カートリッジと前記スペーサのそれぞれの通過状態と制止状態を切り替える搬送ゲート及びスペーサ用ゲートと、
前記搬送レールにおける前記植物保持カートリッジの配置を検出するように構成された検出部と、
前記検出部の検出結果に応じて前記搬送ゲートと前記スペーサ用ゲートを交互に通過状態に切り替えるように構成されたゲート制御部と、
を有することを特徴とする栽培装置。
【請求項2】
前記搬送ゲートは、
1回の通過状態の切り替えで前記植物保持カートリッジを1つだけ通過させ、
前記スペーサ用ゲートは、
1回の通過状態の切り替えで前記スペーサを所定数だけ通過させることを特徴とする請求項記載の栽培装置。
【請求項3】
前記搬送レールの下方側に配置されて、前記植物栽培カートリッジが保持する植物の根に浸すための養液を貯留する養液貯留部と、
前記搬送レールの上方側で、搬送方向において部分的に区画された所定範囲内に配置されて、前記植物栽培カートリッジが保持する植物の葉に当てる光を発光する光源と、
を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然光(太陽光)又は人工光(例えば蛍光灯やLED等の発光光)を利用した水耕栽培により食用植物を栽培する水耕栽培装置が提案されている。この水耕栽培装置において栽培面積の効率化を図るために、中央部の播種ユニット供給エリアから外周部の収穫エリアまで播種ユニットを回転移送しながら送り出し機構によって漸次外周方向に移動させることで播種ユニット間の離間距離を広げる構成が取られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−24076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では、外周部の収穫エリアにおいて周方向での播種ユニット間の離間間隔が必要以上に広げられるため、最適な栽培面積の効率化が図られているとはいえなかった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、栽培面積の効率化を図ることができる栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、植物を栽培する栽培装置であって、栽培対象の植物を保持する植物保持カートリッジを複数一列で搬送可能に支持する搬送レールと、前記搬送レールの第1所定位置において隣接する2つの前記植物保持カートリッジの間にスペーサを挿入するスペーサ挿入部と、
を有し、前記スペーサ挿入部は、外部から供給された前記スペーサを搬送するスペーサ用レールと、前記搬送レールの前記第1所定位置に対して前記スペーサ用レールを合流させる第1合流部と、前記第1合流部より上流側の前記搬送レールと前記スペーサ用レールのそれぞれで、前記植物保持カートリッジと前記スペーサのそれぞれの通過状態と制止状態を切り替える搬送ゲート及びスペーサ用ゲートと、前記搬送レールにおける前記植物保持カートリッジの配置を検出するように構成された検出部と、前記検出部の検出結果に応じて前記搬送ゲートと前記スペーサ用ゲートを交互に通過状態に切り替えるように構成されたゲート制御部と、を有する栽培装置が適用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、栽培面積の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の栽培装置の外観全体の斜視で表した図である。
図2】栽培装置の全体の外観を前方から見た正面で表した図である。
図3】栽培装置の全体の外観を左方から見た側面で表した図である。
図4】栽培装置の全体の外観を上方から見た平面で表した図である。
図5図2図3中の矢視V−V断面で見た平面断面を表した図である。
図6図2図3中の矢視VI−VI断面で見た平面断面を表した図である。
図7】植物保持カートリッジの外観全体を斜視で表した図である。
図8】植物保持カートリッジの軸方向側断面を表した図である。
図9】培地内の種子が発芽した状態の植物保持カートリッジの軸方向側断面を表した図である。
図10】植物が成長した状態の植物保持カートリッジの軸方向側断面を表した図である。
図11】実施形態の栽培装置が備える搬送レールの周囲の具体的構成の一例を斜視で表した図である。
図12】搬送レール上において行われる定植工程について説明する図である。
図13】スペーサ挿入部の具体的構成の一例を表す図である。
図14】2回目の定植工程を行うスペーサ挿入部の具体的構成の一例を表す図である。
図15】1回の定植工程で2つのスペーサを挿入する場合のスペーサ挿入部の具体的構成の一例を表す図である。
図16】ライン統合部の具体的構成の一例を表す図である。
図17】ライン統合部とスペーサ挿入部を近接した配置で設けた場合の具体的構成の一例を表す図である。
図18】スペーサ挿入部の全てのゲートを一体化して形成した場合の具体的構成の一例を表す図である。
図19】搬送レールの搬送方向において部分的に区画された所定範囲内だけに光源を配置した場合の具体的構成の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図中に注記されている「前方」「後方」「左方」「右方」「上方」「下方」の方向は、明細書中の説明において「前方(前)」「後方(後)」「左方(左)」「右方(右)」「上方(上)」「下方(下)」と記述されている方向にそれぞれ対応する。また、以下では、栽培装置等の構成の説明の便宜上、上下左右等の方向を適宜使用するが、栽培装置等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0010】
<栽培装置の概略構成>
図1は、本実施形態の栽培装置の全体の外観を斜視で表し、図2は、栽培装置の全体の外観を前方から見た正面で表し、図3は、栽培装置の全体の外観を左方から見た側面で表し、図4は、栽培装置の全体の外観を上方から見た平面で表し、図5は、図2図3中の矢視V−V断面で見た平面断面を表し、図6は、図2図3中の矢視VI−VI断面で見た平面断面を表している。これら図1図6において、本実施形態の栽培装置1は、基板部2と、6本の支柱部3と、天板部4と、8つの支持板5A〜5Hと、直線レール部6と、折り返しレール部7と、ライン統合部8と、スペーサ挿入部9と、捕集部10を有している。なお、これら図1図6では、主に各支持板5A〜5Hと各搬送レールを含めた上記各部位の配置関係を説明するための概略的な構成しか示しておらず、その他に当該栽培装置1が備える詳細な部位の構成については後に図示、説明する。
【0011】
基板部2上において、それぞれ同じ矩形形状の天板部4と8つの支持板5A〜5Hが適宜の間隔で上下方向に重複するよう積層配置されており、それらの周囲を6本の支柱部3で支持している。天板部4が最も上方に位置しており、それから下方に向けて順に第1〜8支持板5A,5B,5C,5D,5E,5F,5G,5Hが配置されている。第1〜4支持板5A〜5Dの上面には、その長手方向(図中の左右方向)全体に渡る長さの直線レール部6が各支持板5A〜5Dの幅方向(図中の前後方向)に対して6本並設されている。
【0012】
第1支持板5Aと第2支持板5Bのそれぞれの右端の間には、6つの折り返しレール部7が並設されている。これら折り返しレール部7は、それぞれ各支持板5A,5Bの右端から側方に突出してさらに180°折り返すことで上下方向に対応する組み合わせの2つの直線レール部6の右端どうしを接続している。同様にして、第2支持板5Bと第3支持板5Cのそれぞれの左端の間と、第3支持板5Cと第4支持板5Dのそれぞれの右端の間にも、6つの折り返しレール部7が並設されている。
【0013】
そして図示する例では、第4支持板5Dと第5支持板5Eのそれぞれの左端の間において3つの折り返しレール部7が並設されており、これら3つの折り返しレール部7にはそれぞれライン統合部8と、スペーサ挿入部9が設けられている。ライン統合部8は、隣接する2つの直線レール部6を合流させる部位であり、上記3つの折り返しレール部7の途中位置である第2所定位置P2で合流させている(図5参照)。またスペーサ挿入部9は、第4支持板5Dと第5支持板5Eのそれぞれの左端から突出したスペーサ用レール11を有しており、上記3つの折り返しレール部7上で上記第2所定位置P2より下流側に位置する第1所定位置P1でスペーサ用レール11を合流させている(図6参照)。なお図6で示している例では、直線的なスペーサ用レール11に対して折り返しレール部7が屈曲して合流しているが、他にも折り返しレール部7と直線レール部6を直線的に接続させてそれに対しスペーサ用レール11を屈曲させて合流させるようにしてもよい(図示省略)。
【0014】
そして、上記ライン統合部8での合流によりまとめられた3本の直線レール部6が第5〜8支持板5E〜5Hの上面にそれぞれ並設されており、第5支持板5Eと第6支持板5Fの右端の間、第6支持板5Fと第7支持板5Gの左端の間、及び、第7支持板5Gと第8支持板5Hの右端の間においてそれぞれ3つの折り返しレール部7が並設されている。
【0015】
以上の構成において、第1支持板5Aから第8支持板5Hまでの間で対応する直線レール部6と折り返しレール部7が一続きに連結した全体が搬送レールRを構成する。この搬送レールRは、第1支持板5Aの左方側の端部を始端とし、第8支持板5Hの左方側の端部を終端としており、第1〜4支持板5A〜5Dにおいて隣接する2本の搬送レールRが第4支持板5Dと第5支持板5Eの間の折り返しレール部7におけるライン統合部8で1本にまとめられている。本実施形態の栽培装置1では、この構成を3系統並設している。
【0016】
捕集部10は、各系統の搬送レールRの終端から排出される後述の植物保持カートリッジとスペーサを捕集する部位であり、各系統の搬送レールRの終端位置、つまり第8支持板5Hの左端の下方に配置されている。
【0017】
上記構成の栽培装置1は、各系統の搬送レールRにおいて、始端から装填して終端で排出されるまでの間に栽培対象の植物を保持する植物保持カートリッジを複数一列に支持して搬送する。また第1〜8支持板5A〜5Hは、それぞれ搬送レールRにおける上流側に対して下流側が低くなるよう傾斜している。
【0018】
<植物保持カートリッジの構成例>
次に、本実施形態の栽培装置1に用いる植物保持カートリッジの構成の一例について説明する。なお、以下に説明する例においては、栽培対象の植物としていわゆる葉物野菜を想定しているが、これに限られるものではない。
【0019】
図7は、植物保持カートリッジの全体の外観を斜視で表し、図8は、軸方向側断面を表している。これら図7図8において、本実施形態の植物保持カートリッジ100は、ホルダ101と、培地102を有している。
【0020】
ホルダ101は、両端が開口した内径を有する筒部121と、筒部121の軸方向一方側(図中の上側)の端部に当該筒部121と一体に設けられた第1鍔部122と、筒部121の軸方向他方側(図中の下側)の端部に当該筒部121と一体に設けられた第2鍔部123を有している。本実施形態の例では、筒部121は円筒形状に形成され、その内径の軸方向長さや直径の寸法は栽培対象の植物の種類に応じて設定する。
【0021】
培地102は、水分を含有したゲル材料からなり、上記ホルダ101の筒部121の内径に充填されている。ここで、ゲルとは、コロイド粒子が一定の組織的な結びつきをつくり、自由に動けなくなった状態の材料であり、適度な弾性、粘性を有しているものを想定しているが、これに限られるものではない。
【0022】
ここで、一般的な水耕栽培による植物の栽培工程としては、播種→育苗→定植→収穫の順で行われる。播種工程は、栽培対象の植物の種子を培地102の内部に植え付ける工程である。育苗工程は、培地102内の種子から根と葉を発芽させる工程である。定植工程は、育苗後の成長過程においてその植物の成長度合いに応じて個体単位で周囲との配置関係を変更する工程である。収穫工程は、十分に成長した植物から主として出荷対象の部位(この例の葉の部分)を切断して採集する工程である。本実施形態の栽培装置1が備える搬送レールRは、例えば植物保持カートリッジ100を始端に供給してから終端で取り出すまでの経路順を上記栽培工程の進行に対応させることで、各植物保持カートリッジ100の植物を種子から収穫可能な段階まで成長させることができる。
【0023】
まず種子の播種工程においては、図示するように、筒部121の一方側の開口部から栽培対象の種子131を培地102の内部に挿入、埋設することにより行う。この播種工程は、植物保持カートリッジ100を搬送レールRの始端に装填する前に別途行ってもよいし、装填直後に行ってもよい。この播種工程により、図8に示すように、ゲル材料からなる培地102が種子131を適切に保持するとともに、ゲル材料が含有する水分により種子131の育苗を促進できる。この育苗工程においては、ゲル材料に有機養分が含まれていなくとも種子131そのものが有する養分によって発芽までは可能であり、その場合の方が余分な有機養分による藻の発生を防いで衛生的に望ましい。また、ゲル材料には適度の粘性を有しているため、種子131に対する保持機能を維持したまま発芽時における根132と葉133の成長を妨げにくい(図9参照)。
【0024】
そして発芽後には、図10に示すように、水分を含んだ有機養液Wに根132を浸すとともに、葉133に光L(太陽光でもよいし、LEDや蛍光灯等による人工光でもよい)を当てることで植物のさらなる成長を促すことができる。このように植物の成長を促進させることで、根132と葉133は互いに筒部121の逆側の開口部からそれぞれ膨出するよう成長し、その結果植物全体の中央に位置する茎の外周に筒部121が嵌合する状態となる。この位置に定着した筒部121を搬送レールRが支持することで、根132と葉133の両方にほとんど触れることなく植物全体を適切な重心バランスで保持できる。また、育苗後に根132と葉133が筒部121の内径よりも十分大きく拡大した状態では、筒部121から植物が抜脱することがほとんどない。これによりファクトリーオートメーション化された栽培装置1において、簡易な構成の搬送レールRによる植物単位の安定した保持と搬送が可能となる。なお、図10に示す例では、筒部121の外周における2つの鍔部122,123の間にその離間距離とほぼ同じ厚さ寸法のパネル124を挟み込むことで、植物全体を安定的に保持している。
【0025】
<搬送レールの具体的構成例>
図11は、本実施形態の栽培装置1が備える搬送レールRの周囲の具体的構成の一例を斜視で表している。この図11において、略四角筒形状に形成された中空の箱体31と、この箱体31の上方に配置された光Lの光源である蛍光灯32が設けられている。箱体31の上壁の幅方向中央位置に、その長手方向に沿って筒部121の外径とほぼ同じ幅の長溝が搬送レールRとして形成されており、この搬送レールRに植物保持カートリッジ100の筒部121外周が嵌め込まれて装填される。このとき上下2つの鍔部122,123が長溝である搬送レールRの2つの縁部に対してその上面と下面を挟み込む。これにより、植物が搬送レールRに安定的に保持される。そして箱体31内部に有機養液Wを満たして(又は長手方向に流通させて)植物の根132に有機養液Wを供給するとともに、上方の蛍光灯32から光Lを照射して植物の葉133に当てることで植物の成長を促進する。なお、光源である蛍光灯32は、上記の天板部4及び第1〜7支持板5A〜5Gの下面に設置される(第8支持板5Hの下方には搬送レールRがないため蛍光灯32を設置しない)。なお、有機養液Wが供給される箱体31の内部が、各請求項記載の養液貯留部に相当する。
【0026】
そして、植物保持カートリッジ100は、植物を保持しながらその全体を搬送レールRに沿って自由に移動できる。これにより、適宜の搬送手段を用いて各植物を個体単位で上流側から下流側へ向けて容易に移送させることができ(図中の矢印D参照)、その途中で隣接する2つの植物の間の離間距離を適切に調整する定植工程が容易となる。搬送手段としては、搬送レールR全体が上流側から下流側へ向けて低くなるよう傾斜していることで植物及び植物保持カートリッジ100の自重を利用したり、有機養液Wの水流を利用したり、搬送レールRに別途設けた適宜の機械的な搬送機構を利用したり、適宜の治具を用いて人手により筒部121のみを押し込む手法などがある(特に図示せず)。そして栽培工程が進むにつれて、植物の成長に伴い培地102は崩壊、離散して主に有機養液Wへ落下する。この有機養液Wに対して適宜の処理を行うことで、培地102は適切に処分される。また収穫工程で根132と葉133を分離した後には筒部121を取り出して再利用できる。このため、栽培工程を通じて植物保持カートリッジ100から無機固形物としての廃棄物をほとんど出すことがない。
【0027】
<定植工程について>
上記搬送レールR上において行われる定植工程について、図12を参照しつつ説明する。播種工程前後の発芽前の状態と、植物の根132と葉133がホルダ101の直径(第1鍔部122、第2鍔部123の直径)より十分小さい初期の育苗工程では、栽培面積の効率化を図るために搬送方向で隣接する植物保持カートリッジ100どうしを密接して配置できる(図中の右側参照)。しかし、搬送途中における植物の成長に伴って根132と葉133の成長領域がホルダ101の直径より大きくなった際には、隣接する植物どうしで根132と葉133が接触するのを避けるためにも植物保持カートリッジ100間の離間距離を広げる定植工程を行うことが望ましい。
【0028】
しかし、必要以上に離間距離を広げた場合には、栽培面積の利用効率が低下してしまう。また、発芽後における植物の根132や葉133は非常にもろく、植物の商品価値を維持するためにも根132と葉133には直接触れないようにすることが望ましい。また植物の種類によっては、根132と葉133の成長領域の拡大に応じて段階的に複数回行うことが望ましい。そして近年では、上記栽培工程を通していかに人手の手間を省き、またロボットなどの大がかりな設備を用いずに、製作コスト及び運用コストを抑えてかつ効率的に植物を定植するかが重要なポイントとなっている。
【0029】
そこで本実施形態の栽培装置1では、定植工程を行うべき搬送レールRの途中位置を第1所定位置P1とし、この第1所定位置P1に搬送方向で隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間にスペーサを挿入するスペーサ挿入部9を有している。これにより、植物の根132と葉133に直接触れることなく植物間の離間距離を広げる定植工程を人手によらず自動的に、かつ簡易な構成で実現できる。例えば搬送の初期段階では、隣接する2つの植物の間の離間距離がホルダ101の1個分であったところ、スペーサ141を1つ挿入することで離間距離をホルダ101の2個分に広げることができる。またさらに、植物の生長度合いに応じてスペーサ141を1つ挿入することで、離間距離をホルダ101の3個分に広げることができる。
【0030】
なお、上記図1〜6に示した本実施形態の栽培装置1では、第4支持板5Dと第5支持板5Eとの間を接続する折り返しレール部7の一カ所だけにスペーサ挿入部9を設けているが、これに限られず図12に示すように必要に応じて搬送レールRの複数箇所に設けてもよい。また、本実施形態の例においては、挿入するスペーサ141として培地102及び植物を保持していない空のホルダ101を利用する。しかし、別途専用のスペーサを作成して利用してもよく(図示省略)、その大きさや挿入する個数を植物の成長に応じて適宜設定することで、最適な栽培面積の効率化が可能となる。
【0031】
<スペーサ挿入部の具体的構成例>
次にスペーサ挿入部9の具体的構成の一例を図13に示す。この図13において、スペーサ挿入部9は、スペーサ用レール11と、第1合流部12と、上流側搬送ゲート13と、下流側搬送ゲート14と、上流側スペーサ用ゲート15と、下流側スペーサ用ゲート16と、4つのアクチュエータ17と、光センサ18と、ゲート制御部19を有している。
【0032】
スペーサ用レール11は、外部から供給されたスペーサ141(この例の空のホルダ101)を搬送するレールである。
【0033】
第1合流部12は、スペーサ用レール11を搬送レールRの第1所定位置P1に合流させる部分である。
【0034】
下流側搬送ゲート14は、搬送レールR上で第1所定位置P1より上流側に配置され、上流側搬送ゲート13は下流側搬送ゲート14より上流側で植物保持カートリッジ100の1つ分の距離だけ離間した位置に配置されている。それぞれは、個別のアクチュエータ17の動作により開閉動作して搬送レールR上における植物保持カートリッジ100の通過と制止を切り替える。
【0035】
下流側スペーサ用ゲート16は、スペーサ用レール11上で第1所定位置P1より上流側に配置され、上流側スペーサ用ゲート15は下流側スペーサ用ゲート16より上流側でスペーサ141の1つ分の距離だけ離間した位置に配置されている。それぞれは、個別のアクチュエータ17の動作により開閉動作してスペーサ用レール11上におけるスペーサ141の通過と制止を切り替える。
【0036】
光センサ18(検出部)は、搬送レールR上で第1所定位置P1より下流側に配置され、植物保持カートリッジ100又はスペーサ141の通過状態を検出する機能を有する。
【0037】
ゲート制御部19は、上記光センサ18の検出結果に応じて各アクチュエータ17に動作指令信号を出力する機能を有する。
【0038】
なお、上流側搬送ゲート13と下流側搬送ゲート14を併せて各請求項記載の搬送ゲートに相当し、上流側スペーサ用ゲート15と下流側搬送ゲート14を併せて各請求項記載のスペーサ用ゲートに相当する。
【0039】
以上の構成において、ゲート制御部19は、上流側搬送ゲート13と下流側搬送ゲート14に対してそれぞれの通過状態と制止状態が相互に逆となるよう開閉動作を制御する。この開閉動作を1周期分行うことにより、搬送レールRの上流側から搬送されてきた植物保持カートリッジ100を1つ分だけ両ゲート13,14の間に保持する動作と、その保持された1つの植物保持カートリッジ100だけを第1所定位置P1へ向けて通過させる動作を行うことができる。
【0040】
またゲート制御部19は、上流側スペーサ用ゲート15と下流側スペーサ用ゲート16に対してもそれぞれの通過状態と制止状態が相互に逆となるよう開閉動作を制御する。この開閉動作を1周期分行うことにより、スペーサ用レール11の上流側から搬送されてきたスペーサ141を1つ分だけ両ゲート15,16の間に保持する動作と、その保持された1つのスペーサ141だけを第1所定位置P1へ向けて通過させる動作を行うことができる。
【0041】
そしてゲート制御部19は、光センサ18が植物保持カートリッジ100又はスペーサ141の1つ分(この例ではホルダ101の1つ分に相当)の通過を検出するたびに、上流側搬送ゲート13と下流側搬送ゲート14の開閉動作の切り替え(半周期分の開閉動作)と、上流側スペーサ用ゲート15と下流側スペーサ用ゲート16の開閉動作の切り替え(半周期分の開閉動作)を同時に行う。なおこのときゲート制御部19は、上流側搬送ゲート13及び下流側搬送ゲート14の組み合わせ、と、上流側スペーサ用ゲート15及び下流側スペーサ用ゲート16の組み合わせとの間で、それぞれの上流側と下流側の通過状態と制止状態の関係が相互に逆となるよう制御する。これにより、1つの植物保持カートリッジ100と1つのスペーサ141を交互に第1所定位置P1の第1合流部12に通過させることができる。この結果、搬送レールR上で隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間にスペーサ141を1つ挿入する定植工程を行うことができる。
【0042】
さらに2回目の定植工程を行うスペーサ挿入部9(上記図1〜6では図示せず)においては、図14に示すように、上流側搬送ゲート13と下流側搬送ゲート14の間を1つの植物保持カートリッジ100と1つのスペーサ141を合わせた距離(この例では、ホルダ101の2つ分の距離に相当)だけ離間した位置に配置する。そしてゲート制御部19は、下流側搬送ゲート14を通過状態に切り替えた後で光センサ18が1つ分の植物保持カートリッジ100と1つ分のスペーサ141(この例ではホルダ101の2つ分に相当)の通過を検出した際に、4つのゲート13〜16の次の開閉動作の切り替え(半周期分の開閉動作)を同時に行う。その後に光センサ18が1つ分のスペーサ141の通過を検出した際に、4つのゲート13〜16の次の開閉動作の切り替え(半周期分の開閉動作)を同時に行う。これにより、搬送レールR上で隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間にスペーサ141が1つ挿入されている状態からさらにスペーサ141を1つ挿入する定植工程を行うことができる。
【0043】
また1回の定植工程で2つのスペーサ141を挿入する場合には、図15に示すように、上流側スペーサ用ゲート15と下流側スペーサ用ゲート16の間を2つ分のスペーサ141だけ離間した位置に配置する。そしてゲート制御部19は、下流側スペーサ用ゲート16を通過状態に切り替えた後で光センサ18が2つ分のスペーサ141の通過を検出した際に、4つのゲート13〜16の次の開閉動作の切り替え(半周期分の開閉動作)を同時に行う。その後に光センサ18が1つ分の植物保持カートリッジ100の通過を検出した際に、4つのゲート13〜16の次の開閉動作の切り替え(半周期分の開閉動作)を同時に行う。これにより、搬送レールR上で隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間に2つのスペーサ141を挿入する定植工程を行うことができる。
【0044】
<ライン統合部の具体的構成例>
また、隣接する2つの直線レール部6を合流させるライン統合部8については、図16に示す構成で実現できる。これは、上記図13に示した構成とほぼ同等であり、スペーサ用レール11の代わりに隣接する直線レール部6が接続され、第2所定位置P2の第2合流部23で合流している。また、上流側スペーサ用ゲート15の代わりに上流側合流用ゲート21を設け、下流側スペーサ用ゲート16の代わりに下流側合流用ゲート22を設けている。図13等に示したスペーサ挿入部9では、1つの搬送レールR上において搬送方向で隣接する2つの植物の間の離間距離を広げることができたが、図16に示すライン統合部8では、並設する複数の搬送レールR間においてその並設方向で隣接する2つの植物の間の離間距離を広げることができる。
【0045】
なお、図1〜6に示した本実施形態の栽培装置1では、第4支持板5Dと第5支持板5Eの左端の間に並設した3つの折り返しレール部7のそれぞれで上流側にライン統合部8を設け、下流側にスペーサ挿入部9を設けている。このようにライン統合部8とスペーサ挿入部9を近接した配置で設けた場合には、図17に示すように、第1所定位置P1の第1合流部12より下流側に配置された同一の光センサ18に同期して全てのゲート13〜16,21,22の開閉動作を制御してもよい。この場合の同期制御は、上記の図13図16でそれぞれ説明した同期制御を組み合わせて行えばよい。
【0046】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の栽培装置1は、定植を行うべき搬送レールRの途中位置を第1所定位置P1とし、この第1所定位置P1に搬送方向で隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間にスペーサ141を挿入するスペーサ挿入部9を有している。これにより、植物の根132と葉133に直接触れることなく植物保持カートリッジ100間の離間距離を広げる定植工程を人手によらず自動的に、かつ簡易な構成で実現できる。また、挿入するスペーサ141のそれぞれの大きさや個数を植物の成長に応じて適宜設定することで、最適な栽培面積の効率化が可能となる。この結果、水耕栽培における定植工程を機能的に行うことができる。
【0047】
なお、植物保持カートリッジ100を複数一列で搬送可能に支持する搬送レールRは、全体を直線状に形成してもよいし、本実施形態のように適宜の位置で折り返してもよいし、また適宜の位置で屈曲、湾曲してもよい。また、本実施形態では、第4支持板5Dと第5支持板5Eのそれぞれの左端の間に並設した3つの折り返しレール部7のそれぞれにライン統合部8とスペーサ挿入部9を設けたがこれに限られない。他にもライン統合部8又はスペーサ挿入部9を複数箇所で設けてもよく、またそれらの設置基準位置となる第1所定位置P1及び第2所定位置P2を直線レール部6の途中位置に設定してもよい。
【0048】
また、本実施形態では特に、搬送レールRは、植物保持カートリッジ100を供給する始端から、植物保持カートリッジ100を取り出す終端まで経路順を栽培工程の進行に対応させている。これにより、当該栽培装置1だけで播種から収穫までの栽培工程を行うことができ、植物保持カートリッジ100の移送作業を省力化して運用コストを低減できる。なお、植物の成長段階に応じて有機養液の内容や光Lの光量、波長などを適切に変えてもよく、その場合には搬送レールRの経路順で適宜区画して変化させればよい。
【0049】
また、本実施形態では特に、スペーサ挿入部9は、外部から供給されたスペーサ141を搬送するスペーサ用レール11と、搬送レールRの第1所定位置P1に対してスペーサ用レール11を合流させる第1合流部12と、を有する。これにより、スペーサ用レール11にスペーサ141を供給するだけで自動的に隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間にスペーサ141を挿入できるスペーサ挿入部9を簡易な構成で実現できる。
【0050】
また、本実施形態では特に、スペーサ挿入部9は、第1合流部12より上流側の搬送レールRとスペーサ用レール11のそれぞれで、植物保持カートリッジ100とスペーサ141のそれぞれの通過状態と制止状態を切り替える上流側搬送ゲート13及び下流側搬送ゲート14の組み合わせと、上流側スペーサ用ゲート15及び下流側スペーサ用ゲート16の組み合わせを有する。これにより、第1合流部12における植物保持カートリッジ100とスペーサ141の通過順を制御して隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間にスペーサ141を確実に挿入できる。
【0051】
また、本実施形態では特に、スペーサ挿入部9は、光センサ18とゲート制御部19を有する。光センサ18は、第1合流部12(又は第2合流部23)の下流側位置において植物保持カートリッジ100又はスペーサ141の通過を検出することで、各ゲート13〜16,21,22の開閉動作を行うのに適切な位置に植物保持カートリッジ100又はスペーサ141が到達したタイミングを検知する。またゲート制御部19は、光センサ18の検出結果に応じて搬送レールR上のゲート13,14とスペーサ用レール11上のゲート15,16を交互に通過状態に切り替える。これにより、第1合流部12における植物保持カートリッジ100とスペーサ141のそれぞれの通過タイミングを適切に制御でき、搬送レールRにおける搬送が不安定であっても植物保持カートリッジ100とスペーサ141を衝突させることなく確実に挿入できる。なお、光センサ18に代えて他の適宜の磁気センサや機械スイッチを用いてもよく、これらは各ゲート13〜16,21,22の開閉動作を行うのに適切な位置に植物保持カートリッジ100又はスペーサ141が到達したタイミングを検知できる位置に配置すればよい。
【0052】
また、本実施形態では特に、搬送レールR上の各ゲート13,14は、1回の通過状態の切り替えで植物保持カートリッジ100を1つだけ(もしくはすでに挿入されたスペーサ141も併せて)通過させ、スペーサ用レール11上の各ゲート15,16は、1回の通過状態の切り替えでスペーサ141を所定数(1つ乃至複数)だけ通過させる。これにより、1カ所のスペーサ挿入部9において隣接する2つの植物保持カートリッジ100の間に所定数のスペーサ141を挿入できる。なお、スペーサ用レール11上の各ゲート15,16の場合は、1つのスペーサ141だけ通過させる動作を所定数分繰り返すことで上記の「1回の通過状態の切り替え」としてもよい。
【0053】
また、本実施形態では特に、搬送レールR上において搬送方向に対して1つ分の植物保持カートリッジ100の距離(もしくはすでに挿入されたスペーサ141も併せた距離)で離間した配置で相互に通過状態と制止状態が逆となるよう動作する上流側搬送ゲート13と下流側搬送ゲート14を有する。また、スペーサ用レール11上において搬送方向に対し所定数分のスペーサ141の距離で離間した配置で相互に通過状態と制止状態が逆となる上流側スペーサ用ゲート15と下流側スペーサ用ゲート16を有する。そしてゲート制御部19は、搬送レールR上の2つのゲート13,14とスペーサ用レール11上の2つのゲート15,16の間で、それぞれの上流側と下流側の通過状態と制止状態の関係が相互に逆となるよう制御する。これにより、搬送レールR上の2つのゲート13,14における1回の通過個数を1つとし、スペーサ用レール11上の2つのゲート15,16における1回の通過個数を所定数として、それぞれ交互に第1合流部12に通過させることができる。
【0054】
また、本実施形態では特に、搬送レールRは搬送方向に略直交する方向で複数並設されており、搬送レールRの第2所定位置P2において、ライン統合部8は隣接する搬送レールRどうしを合流させる第2合流部23を有する。これにより、複数系統(複数ライン)の搬送レールRを並設して栽培面積の効率化を図ることができるとともに、その並設方向に対しても隣接する植物保持カートリッジ100間の離間距離を広げる定植がライン統合部8の第2合流部23で可能となる。なお、複数の搬送レールRを並設する配置として、それぞれの始端側で並設方向に近接し、終端側に向かうほど並設方向に離間するような配置(例えば扇形の配置)とすることでライン統合部8を設けることなく適切に並設方向の離間距離を設定してもよい。
【0055】
また、本実施形態では特に、搬送レールRは、上流側に対して下流側が低くなるよう傾斜している。これにより、特別な搬送機構を設けることなく、植物保持カートリッジ100とスペーサ141の自重を利用してそれぞれ自動的に搬送できる。このために、適度の重量を有するようホルダ101を構成したり、自己潤滑性を有する材料でホルダ101や搬送レールRを構成するとよい。
【0056】
また、本実施形態では特に、搬送レールRは、所定長で折り返して上下方向に略重複するいわゆる折り返しスロープ型の配置で設けられている。これにより、栽培装置1全体の設置面積の効率化を図ることができる。なお、この搬送レールRの配置に限られず、例えば二重螺旋の配置で複数の搬送レールRを並設配置してもよい。
【0057】
また、本実施形態では特に、スペーサ141は、植物を保持していない植物栽培カートリッジ100、つまり空のホルダ101を利用している。これにより、空の植物栽培カートリッジ100をスペーサ141として使い回すことができ、別途の部品の製造と管理が不要となる。なお、専用のスペーサを別途製作して利用してもよく、この場合には搬送方向に対する長さ寸法を適切に設定した複数種類のスペーサを用意できる。
【0058】
また、本実施形態では特に、搬送レールRの下方側に配置されて、植物栽培カートリッジ100が保持する植物の根132に浸すための養液を貯留する箱体31と、搬送レールRの上方側に配置されて、植物栽培カートリッジ100が保持する植物の葉133に当てる光Lを発光する光源としての蛍光灯32と、を有している。これにより、植物保持カートリッジ100に播種、発芽させた後の植物の成長を促すことができる。
【0059】
<変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0060】
(1)スペーサ挿入部の全てのゲートを一体化する場合
上記実施形態では、上流側搬送ゲート13、下流側搬送ゲート14、上流側スペーサ用ゲート15、及び下流側スペーサ用ゲート16の4つのゲートをそれぞれ対応するアクチュエータ17で個別に動作させていたが、これに限られない。例えば図18に示すように、4つのゲートをまとめて1つの一体型ゲート41として形成し、それぞれ搬送レールRとスペーサ用レール11の直交方向に移動することで通過状態と制止状態を切り替えるよう構成してもよい。図示する構成例では、搬送レールRとスペーサ用レール11のそれぞれにおいて、搬送方向に対しホルダ101の1つ分の離間距離で配置した開口部42と壁部43の組み合わせを直交方向に逆位相で2つ配置する。そして搬送レールRとスペーサ用レール11との間で、全ての開口部42と壁部43を逆の位相で配置する。
【0061】
これにより、1カ所のスペーサ挿入部9における全てのゲートに対する一括動作を一つのアクチュエータ17による簡易な構成で実現できる。なお、図示する例では搬送方向と直交する方向にスライドさせる構成を示したが、これ以外にも各レールR,11にそれぞれ対応する回転軸で同期回転させる回転型で構成してもよい(図示省略)。
【0062】
(2)昼部と夜部に区画して光源を配置する場合
上記実施形態では、搬送レールRの全体に渡って(ただし折り返しレール部7を覗く)光源を配置していたが、これに限られない。例えば、上記図11に対応する図19に示すように、搬送レールRの搬送方向において部分的に区画された所定範囲A内だけに光源としてのLED51を配置してもよい。
【0063】
これにより、搬送レールR上における植物の搬送にともない、LED51が配置されている範囲A内だけ自然光の場合の昼部のように植物の葉133に光Lを当てて光合成を行わせ、またLED51が配置されていない範囲B内では夜部のように植物に呼吸(酸素を取り入れて二酸化炭素を排出)だけを行わせる。このように、植物に昼と夜の2つの状態を交互に繰り返し置くことで、植物の成長をより健常に促すことができる。また、搬送レールRの全長に渡ってLED51を配置する場合と比較してLED51の設置数を削減できるため、栽培装置1の製造コスト及び運用コストも削減できる。
【0064】
なお、昼部の範囲Aと夜部の範囲Bのそれぞれの長さの設定は、搬送レールR上の各所における搬送速度(常時搬送の場合の搬送速度や間欠搬送の場合の時間間隔及び搬送距離)、または栽培対象の植物の特性に合わせて適宜設定すればよい。また、光源はLED51以外にも、各範囲に合わせた長さの蛍光灯で構成してもよい。また、昼部の範囲Aと夜部の範囲Bの間の境界に遮蔽幕を設けてもよく、この場合には光Lの漏出を防いで昼部の範囲Aと夜部の範囲Bの区画を明確にできる。また、上方のLED51の設置基部をレールのように構成して各LED51を搬送方向に移動自在とすることで、昼部の範囲Aと夜部の範囲Bを任意に変更できるようにしてもよい(以上、図示省略)。
【0065】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0066】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 栽培装置
5A〜5H 第1〜8支持板
6 直線レール部
7 折り返しレール部
8 ライン統合部
9 スペーサ挿入部
11 スペーサ用レール
12 第1合流部
13 上流側搬送ゲート
14 下流側搬送ゲート
15 上流側スペーサ用ゲート
16 下流側スペーサ用ゲート
18 光センサ(検出部)
19 ゲート制御部
21 上流側合流用ゲート
22 下流側合流用ゲート
23 第2合流部
31 箱体(養液貯留部)
32 蛍光灯(光源)
41 一体型ゲート
51 LED(光源)
100 植物保持カートリッジ
101 ホルダ
102 培地
121 筒部
122 第1鍔部
123 第2鍔部
131 種子
132 根
133 葉
141 スペーサ
L 光
W 有機養液
P1 第1所定位置
P2 第2所定位置
R 搬送レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図15
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図19