(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機金属化学気相成長法(MOCVD法)やハイドライド気相成長法(HVPE法)等の気相成長法では、チャンバーの内部でサセプターに保持した成長基板の上に半導体層を堆積させる。この半導体層の積層に際して、成長基板を加熱するとともに、成長基板に原料ガスを導く。
【0003】
これらの気相成長法を用いる気相成長装置は、一般に、サセプターを加熱する。そして、加熱されたサセプターが成長基板を加熱することとなる。サセプターの加熱方式には、例えば、誘導加熱によりサセプターを加熱する誘導加熱方式と、熱源を接触させてサセプターを加熱する伝熱方式と、がある。
【0004】
半導体層を成長させるためには、成長基板の板面に対して均一に加熱することが重要である。成長基板の温度ムラは、半導体層のムラにつながるからである。例えば、III 族窒化物半導体発光素子を製造する場合には、成長基板の温度が低い箇所では、他の箇所に比べてインジウム濃度が高い。この温度の低い箇所から取れたIII 族窒化物半導体発光素子では、発光波長にずれが生じている。このように、成長基板の温度ムラは、半導体素子の歩留まりを低下させる原因となる。
【0005】
そのため、成長基板の温度ムラを解消する対策が講じられてきている。例えば、特許文献1には、誘導加熱により加熱されるサセプターを用いる場合に、成長基板に異方的な反りが生じた場合でも、成長基板を均一に加熱しやすくする技術が開示されている(特許文献1の段落[0014]等参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、誘導加熱では加熱対象物の表面に渦電流を発生させることにより、その加熱対象物を直接加熱する。そして、その加熱対象物の厚みによっては、第1面側に発生する渦電流と第2面側に発生する渦電流とが打ち消し合う。そのため、サセプターの厚みの設計により、渦電流の打ち消し合う量が変わる。つまり、サセプターの厚みの設計により、渦電流の大きさが変わるのである。これにより、サセプターの温度分布は変わる。サセプターの温度分布は、もちろん、成長基板の温度分布に影響を与える。成長基板の温度分布は、成長基板の上に成長させる半導体層の結晶性に影響を与える。したがって、誘導加熱方式のサセプターにおいては、サセプターの厚みを好適に設計する必要がある。
【0008】
また、誘導加熱方式のサセプターとして、板状の炭素素材にSiCをコーティングしたものが用いられることが多い。板状の炭素素材を成形する工程では、炭素素材に結着材等の材料を混入する。したがって、出来上がった炭素素材の電気抵抗率は、結着材等の濃度や分布、製造時の温度や湿度に起因してばらつきが生じる。そのため、所定の電気抵抗率の炭素素材を基準にサセプターの厚みを設計したとしても、これらの製造条件に応じたばらつきは生じてしまう。つまり、ロットの異なるサセプターを用いると、異なった温度分布の条件下で半導体を積層することとなる。
【0009】
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは、誘導加熱により加熱されるサセプターにおける温度分布のばらつきを低減させるサセプターとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様におけるサセプターの製造方法は、誘導加熱により加熱されるサセプターの製造方法である。この製造方法は、炭素材料の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定工程と、電気抵抗率測定工程により測定された炭素材料の電気抵抗率に基づいて炭素材料を加工して炭素基材を作製する炭素基材加工工程と、を有する。そして、炭素基材加工工程では、第1の厚みA1を有する中央部と、第1の厚みA1より厚い第2の厚みB1を有する外周部と、を有する炭素基材を作製する。そして、この加工に際して、電気抵抗率測定工程で測定した炭素基材の電気抵抗率が高いほど、炭素基材の中央部の第1の厚みA1を厚く加工する。
また、第1の厚みA1および第2の厚みB1を、次式
0.9・k・ρ1/2 ≦ A1/B1 ≦ 1.1・k・ρ1/2
δ < A1 < 2・δ
2・δ < B1
ρ: サセプターの炭素基材の電気抵抗率
k: 定数(0.10(μΩ・m)-1/2以上0.15(μΩ・m)-1/2以下)
δ: 渦電流の浸透深さ
を満たすように炭素材料を加工する。
【0011】
この製造方法で製造されたサセプターでは、誘導加熱により炭素基材が加熱される。また、この製造方法により製造された複数のサセプターを比較すると、炭素基材の電気抵抗率が高いほど、炭素基材の中央部の第1の厚みA1が厚い。また、逆に、炭素基材の中央部の第1の厚みA1が厚いものほど、炭素基材の電気抵抗率は高い。この製造方法では、炭素材料を製造するにあたって、炭素系原材料に結着材等を混合する。その際に、結着材の濃度のばらつきや、炭素系原材料の粒径のばらつき等に起因して、炭素材料の固有の電気抵抗率にばらつきが生じる。このサセプターの製造方法では、電気抵抗率に応じてサセプターの厚みを調整することにより、温度分布のばらつきが抑制されている。
【0012】
【0013】
なお、第1の厚みA1は、所望の温度分布にするための肉厚であるとともに、誘導加熱の表皮効果による電流浸透深さより大きい肉厚である。第2の厚みB1は、誘導加熱の表皮効果による電流浸透深さの影響を受けない一定の肉厚である。すなわち、第2の厚みB1は、渦電流の打消しの効果が十分に小さくなる肉厚である。
【0014】
第2の態様におけるサセプターの製造方法は、炭素基材加工工程の後に、炭素基材をSiCでコーティングするコーティング工程を有する。
【0015】
第3の態様における
複数のサセプターは、誘導加熱により加熱される炭素基材を有する。炭素基材は、第1の厚みA1を有する中央部と、第1の厚みA1より厚い第2の厚みB1を有する外周部と、を有する。そして、
複数のサセプターのうち炭素基材の電気抵抗率が高い
ものほど、炭素基材の中央部の第1の厚みA1が厚い。
また、第1の厚みA1および第2の厚みB1は、次式
0.9・k・ρ1/2 ≦ A1/B1 ≦ 1.1・k・ρ1/2
δ < A1 < 2・δ
2・δ < B1
ρ: サセプターの炭素基材の電気抵抗率
k: 定数(0.10(μΩ・m)-1/2以上0.15(μΩ・m)-1/2以下)
δ: 渦電流の浸透深さ
を満たす。
【0016】
【0017】
【発明の効果】
【0018】
本明細書では、誘導加熱により加熱されるサセプターにおける温度分布のばらつきを低減させるサセプターとその製造方法が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、具体的な実施形態について、誘導加熱により加熱されるサセプターとそのサセプターの製造方法を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0021】
1.気相成長装置
図1は、本実施形態のサセプター100を有する気相成長装置1の概略構成を示す図である。気相成長装置1は、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)により半導体層を成長させるものである。より具体的には、気相成長装置1は、サセプター100に保持された成長基板の上にIII 族窒化物半導体を堆積させる。また、気相成長装置1は、高周波誘導加熱によりサセプター100を加熱する。
【0022】
気相成長装置1は、チャンバー10と、サセプター100と、サセプター取付け部20と、回転軸30と、モーター40と、ガス導入口50と、ガス排出口60と、rfコイル70と、高周波電源80と、ガス供給部90と、マスフローコントローラー91と、を有している。
【0023】
チャンバー10は、成長基板上に原料ガスを供給して半導体結晶の堆積を行うための炉本体である。サセプター100は、成長基板を保持するためのものである。サセプター取付け部20は、サセプター100を回転軸30に取り付けるためのものである。回転軸30は、モーター40の回転駆動をサセプター100に伝達するためのものである。モーター40は、サセプター100を回転させるためのものである。このため、サセプター100は、半導体層を成長させる間、チャンバー10に対して回転することができるようになっている。
【0024】
ガス供給部90は、種々の原料ガスを供給するためのものである。
図1では、ガス供給部90は、簡略化して描かれているが、実際には複数のガスを供給する。マスフローコントローラー91は、ガス導入口50に供給する各種のガスの流量を制御するためのものである。ガス導入口50は、チャンバー10の内部に原料ガスを導入するためのものである。ガス排出口60は、チャンバー10の内部からガスを排出するためのものである。
【0025】
高周波電源80は、rfコイル70に高周波電流を流すためのものである。rfコイル70は、チャンバー10を覆うように配置されている。そのため、サセプター100は、rfコイル70の内部に位置している。rfコイル70は、交番磁界を発生させるためのものである。rfコイル70により発生する磁界は、サセプター100に保持される成長基板の板面に平行に形成される。この磁界は、例えば、ガス導入口50とガス排出口60とを結ぶ線に平行に形成される。
【0026】
2.サセプター
2−1.サセプターの材質
図2は、本実施形態の気相成長装置1のサセプター100を示す平面図である。サセプター100は、少なくとも成長基板に半導体層を堆積している間、成長基板を保持するためのものである。サセプター100は、炭素基材にSiCでコーティングを施したものである。この炭素基材は、rfコイル70が形成する高周波磁界により加熱される。このような誘導加熱方式により、サセプター100は、加熱される。
【0027】
2−2.サセプターの形状
図2に示すように、サセプター100は、全体的には円板形状である。そして、サセプター100は、5個の基板載置部130を有している。この基板載置部130は、成長基板を載置するためのものである。なお、
図2には、後述する中央部110と外周部120との境界線が破線で仮想的に描かれている。
【0028】
図3は、
図2のIII-III 断面を示す断面図である。
図3に示すように、サセプター100は、炭素基材BM1と、コーティング部S1と、を有している。炭素基材BM1は、炭素材料でできている。コーティング部S1は、SiCでできている。前述したように、炭素基材BM1が、誘導加熱により加熱される。炭素基材BM1は、中央部110と、外周部120と、を有している。中央部110は、第1の厚みA1を有している。外周部120は、第2の厚みB1を有している。
図3に示すように、外周部120の第2の厚みB1は、中央部110の第1の厚みA1よりも厚い。
【0029】
図4は、炭素基材BM1の底面図である。
図4に示すように、外周部120は、炭素基材BM1の外縁に沿ったリング状の部分である。中央部110は、炭素基材BM1の中央付近の円板形状の部分である。なお、
図4では、サセプター取付け部20に取り付けられる箇所は、省略されている。このように、炭素基材BM1の形状は、全体的には円板形状であるとともに、中央部110とその中央部110より厚みの厚い外周部120とを有している。
【0030】
3.サセプターの厚みと渦電流の浸透深さ
3−1.渦電流
サセプター100の炭素基材BM1の表面では、rfコイル70が形成する高周波磁界により渦電流が発生する。この渦電流により、炭素基材BM1は、加熱されることとなる。
【0031】
図5は、サセプター100の炭素基材BM1の中央部110と外周部120とで渦電流の状態を比較するための図である。
図5に示すように、炭素基材BM1の両方の表面には渦電流が流れる。
【0032】
図5に示すように、中央部110は、領域DA1、DA2、DA3を仮想的に想定することができる。領域DA1は、成長基板を載置する表面(第1面)の側にある。領域DA2は、領域DA1の反対側の表面(第2面)の側に位置している。領域DA3は、領域DA1と領域DA2との間に位置している。中央部110の領域DA1、DA2では、渦電流が生じている。中央部110の領域DA3では、渦電流が打ち消し合っている。
図5では、この様子を概念的に描いてある。ただし、実際には、これほど明確に3つの領域DA1、DA2、DA3を区別できるわけではない。
【0033】
一方、外周部120は、領域DB1、DB2、DB3を仮想的に想定することができる。領域DB1は、成長基板を載置する表面(第1面)の側にある。領域DB2は、領域DB1の反対側の表面(第2面)の側に位置している。領域DB3は、領域DB1と領域DB2との間に位置している。外周部120の領域DB1、DB2では、渦電流が生じている。外周部120の領域DB3では、渦電流が打ち消し合っている。領域DB1、DB2、DB3も、領域DA1、DA2、DA3と同様に必ずしも明確に区別できるわけではない。
【0034】
このように、渦電流は、炭素基材BM1の第1面および第2面の表面を流れるとともに、板厚の中央付近では打ち消し合う。しかし、この打ち消す度合いについては、中央部110と外周部120とで異なっている。つまり、中央部110の領域DA3は、外周部120の領域DB3よりも大きい。そして、中央部110での電流の打消しの度合いは、外周部120での電流の打消しの度合いよりも大きい。このため、サセプター100の炭素基材BM1の発熱量は、中央部110よりも外周部120でやや大きい。そのため、温度の低くなりがちな成長基板の外周部を効果的に加熱することができる。
【0035】
3−2.渦電流の浸透深さ
そして、渦電流の打消しの度合いは、渦電流がどの深さまで浸透するかに依存する。渦電流の浸透深さδは次式で与えられる。
δ = 503(ρ/(f・μr))
1/2 ………(1)
δ : 渦電流の浸透深さ(m)
ρ : サセプターの炭素基材の電気抵抗率
μr: サセプターの相対透磁率
f : 高周波電流の周波数(Hz)
【0036】
ここで、渦電流の浸透深さδは、炭素基材BM1の表面からどの程度渦電流が浸透するかを示すものである。渦電流の浸透深さδは、渦電流が最表面の渦電流に対して1/eとなる深さを示す。そのため、実際には、渦電流の浸透深さδより深い位置にも小さい渦電流が流れる。そして、この渦電流の浸透深さδは、
図5に示すように、渦電流の打ち消す度合いと関係している。そして、式(1)が示すように、渦電流の浸透深さδは、炭素基材BM1の電気抵抗率ρに依存している。ここで、高周波電流の周波数fは、例えば、10kHzから100kHzまでの周波数が挙げられる。または、その他の周波数を用いてもよい。
【0037】
ところで、サセプター100を製造する際には、炭素材料を用いる。この炭素材料は、後述するように、炭素系材料に結着材等を配合した後に焼結して製造される。したがって、その結着材の配合比率、生成条件、温度湿度環境等により、製造される炭素材料の電気抵抗率は、ロット毎にある程度ばらつく。式(1)に示すように、炭素材料の電気抵抗率にばらつきが生じると、炭素材料の渦電流の浸透深さδにもばらつきが生じる。つまり、サセプター100の温度分布が、サセプター100の設計時に想定していた温度分布からずれが生じる場合がある。
【0038】
したがって、下記のように、炭素材料の電気抵抗率に応じて、炭素基材BM1の中央部110の第1の厚みA1を調整する。
【0039】
3−3.サセプターの厚みの関係式
本実施形態のサセプター100は、中央部110の第1の厚みA1と外周部120の第2の厚みB1とについて次式を満たすように加工されている。
0.9・k・ρ
1/2 ≦ A1/B1 ≦ 1.1・k・ρ
1/2 …(2)
A1: 第1の厚み
B1: 第2の厚み
ρ: サセプターの炭素基材の電気抵抗率
k: 定数
【0040】
ここで、定数kは、例えば、0.10(μΩ・m)
-1/2以上0.15(μΩ・m)
-1/2以下の範囲内である。定数kについては、後述する。式(2)のように、第1の厚みA1を電気抵抗率ρに応じて変えるのである。これにより、炭素材料の電気抵抗率のばらつきの影響を抑制することができる。
【0041】
また、第1の厚みA1および第2の厚みB1は、次式
δ < A1 < 2・δ ………(3)
2・δ < B1
δ: 渦電流の浸透深さ
を満たす。式(3)において、第1の厚みA1は、所望の温度分布にするための肉厚である。そして、第1の厚みA1は、誘導加熱の表皮効果による渦電流の浸透深さδより大きい肉厚である。第2の厚みB1は、誘導加熱の表皮効果による渦電流の浸透深さδの影響を受けない一定の肉厚である。すなわち、第2の厚みB1は、渦電流の打消しの効果が十分に小さくなる肉厚である。
【0042】
4.サセプターの電気抵抗率
サセプター100を製造する際には、後述するように、炭素系材料に結着材等を配合した後に焼結して炭素材料を製造する。その結着材の配合比率、生成条件、温度湿度環境等により、製造される炭素基材に固有の電気抵抗率がある程度ばらつく。炭素材料の電気抵抗率にばらつきが生じると、製造後のサセプター100の性能にもばらつきが生じる。
【0043】
式(2)に示すように、渦電流の浸透深さδは、炭素基材BM1の電気抵抗率ρの平方根に比例する。そのため、例えば、製造された炭素基材BM1の電気抵抗率が、基準値よりも小さければ、その炭素基材の渦電流の浸透深さδもそれに応じて小さい値をとる。渦電流の浸透深さδが変わると、サセプター100の中央部110と、サセプター100の外周部120とで、加熱の度合いが設計時と異なることとなる。これにより、温度分布にばらつきが生じる。
【0044】
サセプター100の温度分布が設計時と異なっていると、サセプター100に支持される成長基板の温度分布もばらつく。これにより、成長基板の中央付近と外周付近とで、成長させる半導体層の組成がばらつく。その結果、半導体素子の歩留りが低下する。
【0045】
したがって、式(2)に示すように、サセプター100の中央部110の第1の厚みA1と、外周部120の第2の厚みB1とを設定する。そして、後述するように、炭素基材の電気抵抗率の測定値に応じて、中央部110の第1の厚みA1を変えるのである。
【0046】
表1は、電気抵抗率ρ等を例示する表である。表1の第1列は、炭素基材BM1の電気抵抗率ρ(μΩ・m)である。表1の第2列は、中央部110の第1の厚みA1と外周部120の第2の厚みB1との比T1である。表1の第3列は、第2列の比T1を電気抵抗率ρの平方根で割った比T2である。表1の第4列は、第3列の比T2を式(2)の定数kで割った値である。表1では、定数kを、0.1254(μΩ・m)
-1/2とした。また、第2の厚みB1は、一定の厚みである。それに対して、第1の厚みA1を変化させる。
【0047】
表1に示すように、炭素基材BM1の電気抵抗率が高いほど、炭素基材BM1の中央部110の第1の厚みA1が厚い。そのため、炭素材料の電気抵抗率にばらつきが生じたとしても、サセプター100の温度分布は、ロット間でほとんどばらつかない。炭素材料の電気抵抗率のばらつきについては、中央部110の第1の厚みA1を調整することにより吸収しているからである。
【0048】
ここで、表1の第4列のT3は、式(2)をk・ρ
1/2 で割った値である。表1では、第4列におけるT3(=A1/(B1・k・ρ
1/2 ))は、0.95以上1.05以下である。そのため、定数kが0.1254(μΩ・m)
-1/2のときには、もちろん、式(2)を満たす。
【0049】
なお、定数kについては、適宜選択してよい。定数kについては、0.10(μΩ・m)
-1/2以上0.15(μΩ・m)
-1/2以下の範囲内で選択すれば、式(2)が成り立つ場合がある。好ましくは、0.11(μΩ・m)
-1/2以上0.14(μΩ・m)
-1/2以下の範囲内である。より好ましくは、0.12(μΩ・m)
-1/2以上0.13(μΩ・m)
-1/2以下の範囲内である。
【0051】
5.製造されたサセプター
このように、本実施形態では、サセプター100の材料である炭素材料の電気抵抗率に応じて、サセプター100を加工する。そのため、ロットの異なるサセプター100を用いて半導体層を成長させた場合であっても、サセプター100の温度分布は、狙った温度分布とほとんど異ならない。そのため、半導体層にばらつきが生じにくい。
【0052】
ここで仮に、3個の炭素材料C1、C2、C3からサセプター100を製造したとする。そして、電気抵抗率の低いものから順に、炭素材料C1、炭素材料C2、炭素材料C3であったとする。その場合には、炭素材料C1、C2、C3から製造されたサセプター100の中央部110の第1の厚みA1は、それぞれ異なっている。
【0053】
炭素材料C1、C2、C3から製造されたサセプター100のうち、炭素材料C1から製造されたサセプター100の中央部110の第1の厚みA1が最も薄い。つまり、炭素材料C1から製造されたサセプター100の中央部110の第1の厚みA1は、その他の炭素材料C2、C3から製造されたサセプター100の中央部110の第1の厚みA1よりも薄い。その次に厚みの薄いものは、炭素材料C2から製造されたサセプター100の中央部110の第1の厚みA1である。そして、炭素材料C3から製造されたサセプター100の中央部110の第1の厚みA1が最も厚い。このように、炭素基材の電気抵抗率が高いものほど、サセプター100の中央部110の第1の厚みA1が厚い。
【0054】
そして、多数のサセプター100がある場合には、それぞれのサセプター100の電気抵抗率と、それぞれのサセプター100の中央部110の第1の厚みA1と、は相関がある。すなわち、炭素材料の電気抵抗率の高いものほど、サセプター100の中央部110の第1の厚みA1が厚い。
【0055】
6.サセプターの製造方法
6−1.炭素素材作製工程
炭素系材料に結着材を混入する。そして、その炭素系材料を直方体形状に成形して焼結する。そして、この焼結体を切り出す。これにより、
図6に示すように、板状の炭素材料200が作成される。
【0056】
6−2.電気抵抗率測定工程
この板状の炭素材料200は、厚みB1を有している。そして、その炭素材料200の電気抵抗率を測定する。この電気抵抗率の測定にあたっては、JIS R 7222:1997(黒鉛素材の物理特性測定方法)を用いる。
【0057】
6−3.炭素基材加工工程
次に、測定された板状の炭素材料200の電気抵抗率に基づいて、その板状の炭素材料200を円板形状に加工する。そして、第1の厚みA1の中央部110と、第2の厚みB1の外周部120と、を有する炭素基材BM1を作製する。ここで、炭素材料200の電気抵抗率が高いほど、炭素基材BM1の中央部110の第1の厚みA1を厚く加工する。炭素材料200の電気抵抗率が低いほど、炭素基材BM1の中央部110の第1の厚みA1を薄く加工する。つまり、式(2)を満たすように、板状の炭素材料200を削る。また、式(2)に加えて、式(3)を満たすようにするとなおよい。
【0058】
なお、サセプター取付け部20に固定される箇所、例えば、サセプター取付け部20に嵌め込むための溝を形成する。もちろん、その他の接続構造を設けてもよい。これにより、炭素基材BM1が製造される。
【0059】
6−4.コーティング工程
次に、プラズマCVD法等を用いて、炭素基材BM1をSiCでコーティングする。以上により、サセプター100が製造される。
【0060】
7.変形例
7−1.半導体素子
本実施形態では、III 族窒化物半導体発光素子を製造するために気相成長装置1を用いた。しかし、もちろん、その他の半導体素子を製造するために用いることができる。例えば、III 族窒化物系以外の半導体層を有する発光素子である。また、HEMT等の半導体素子であってもよい。
【0061】
7−2.基板載置部の数
本実施形態では、
図2に示すように、サセプター100は、5個の基板載置部150を有することとした。しかし、例えば、1個の基板載置部150を有するサセプターを用いてもよい。また、6個の基板載置部150を有するサセプターを用いてもよい。このように、基板載置部150の数は、いくつであってもよい。
【0062】
7−3.気相成長方法
本実施形態では、気相成長装置1は、MOCVD法により半導体層を成長基板上に堆積させるものであるとした。しかし、HVPE法等、その他の気相成長法を用いることとしてもよい。
【0063】
7−4.組み合わせ
また、上記の変形例のそれぞれを自由に組み合わせてもよい。
【0064】
8.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態のサセプター100では、第1面側に発生する渦電流と第2面側に発生する渦電流とが好適に作用しあうように、中央部110の厚みA1と外周部120の厚みB1とを決定した。そのため、半導体成長時には、サセプター100の温度分布は好適である。よって、このサセプターを用いて製造された半導体素子の歩留まりはよい。
【0065】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本明細書の技術を何ら限定するものではない。したがって本明細書の技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、有機金属気相成長法(MOCVD法)に限らない。HVPE法等、その他の結晶成長方法を用いてもよい。