(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(以下、燃料電池と略称する。)は、多数のセルを積層することによって構成されている(例えば特許文献1参照)。1つのセルは、固体高分子膜からなる電解質膜を燃料極と空気極とによって挟むことにより形成された膜電極接合体と、同膜電極接合体を挟む一対のセパレータとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載の燃料電池は、凹凸形状を有する溝流路プレートを一方のセパレータとして備えている。また、前記燃料電池は、溝流路プレートに隣接するフラットプレートと、同フラットプレートに対して溝流路プレートが接する面とは反対側の面に接する多孔体プレートとを他方のセパレータとして有している。
【0004】
溝流路プレートにおける前記膜電極接合体に対向する面には、供給用マニホルド孔からの燃料ガスを同膜電極接合体に供給するとともに未反応の燃料ガスを排出用マニホルド孔へ排出するためのガス流路が形成されている。
【0005】
多孔体プレートには、供給用マニホルド孔からの酸化剤ガスを膜電極接合体に供給するとともに未反応の酸化剤ガスを排出用マニホルド孔へ排出するためのガス流路が形成されている。
【0006】
各ガス流路を通じて膜電極接合体に燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されると、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電が行なわれる。また、発電に伴って生成される水(以下、生成水と称する。)は、多孔体プレートの前記ガス流路を通じて排出用マニホルド孔へ排出される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図5を参照して、第1実施形態について説明する。なお、
図1〜
図4におけるセル10の上下方向を単に上下方向とし、
図1〜
図4における左右方向を単に左右方向として説明する。
【0016】
図1、
図2及び
図5に示すように、固体高分子形燃料電池は、多数のセル10を積層することによって構成されている。
図2及び
図5に示すように、セル10は、フラットプレート60と、第2樹脂フレーム40によって周縁を囲まれるとともにフラットプレート60に隣接して設けられる多孔体プレート50とを備えている。また、セル10は、第1樹脂フレーム20によって周縁を囲まれるとともに多孔体プレート50に隣接して設けられる膜電極接合体30と、同膜電極接合体30に隣接して設けられ、凹凸形状を有する溝流路プレート70とを備えている。膜電極接合体30は、固体高分子膜からなる電解質膜を燃料極と空気極とによって挟むことにより形成されている。フラットプレート60、溝流路プレート70、及び多孔体プレート50は、金属板材をプレス加工することによりそれぞれ形成されている。
【0017】
図1に示すように、セル10の左上側周縁部には、同セル10の中央部に位置する膜電極接合体30に向けて燃料ガス(例えば水素ガス)を供給するための燃料ガス供給用マニホルド孔11が形成されている。また、セル10の右下側周縁部には、同セル10の中央部からの未反応の燃料ガスを排出するための燃料ガス排出用マニホルド孔12が形成されている。
【0018】
セル10の下側周縁部には、前記膜電極接合体30に向けて酸化剤ガス(例えば空気)を供給するための酸化剤ガス供給用マニホルド孔13が左右方向に間隔をおいて複数形成されている。また、セル10の上側周縁部には、同セル10の中央部からの未反応の酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出用マニホルド孔14が左右方向に間隔をおいて複数形成されている。
【0019】
セル10の左下側周縁部には、同セル10の中央部に向けて冷却水を供給するための冷却水供給用マニホルド孔15が形成されている。また、セル10の右上側周縁部には、同セル10の中央部からの冷却水を排出するための冷却水排出用マニホルド孔16が形成されている。
【0020】
図1及び
図2に併せ示すように、燃料ガス給排用のマニホルド孔11,12は、フラットプレート60の周縁部に形成された孔61,62、第2樹脂フレーム40の周縁部に形成された孔41,42、第1樹脂フレーム20の周縁部に形成された孔21,22、及び溝流路プレート70の周縁部に形成された孔71,72によって構成されている。
【0021】
酸化剤ガス給排用のマニホルド孔13,14は、フラットプレート60の周縁部に形成された孔63,64、第2樹脂フレーム40の周縁部に形成された孔43,44、第1樹脂フレーム20の周縁部に形成された孔23,24、及び溝流路プレート70の周縁部に形成された孔73,74によって構成されている。
【0022】
冷却水給排用のマニホルド孔15,16は、フラットプレート60の周縁部に形成された孔65,66、第2樹脂フレーム40の周縁部に形成された孔45,46、第1樹脂フレーム20の周縁部に形成された孔25,26、及び溝流路プレート70の周縁部に形成された孔75,76によって構成されている。
【0023】
図1、
図2及び
図5(a),(b)に示すように、溝流路プレート70における膜電極接合体30に対向する面の中央部には、燃料ガスが流通する溝状のガス流路77が形成されている。このガス流路77は、燃料ガス給排用のマニホルド孔11,12に連通している。
【0024】
溝流路プレート70におけるフラットプレート60に対向する面の中央部には、冷却水が流通する冷却水流路78が形成されている。この冷却水流路78は、冷却水給排用のマニホルド孔15,16に連通するとともに、互いに隣接するガス流路77の間に位置している。
【0025】
多孔体プレート50には、酸化剤ガスが流通するガス流路57が形成されている。このガス流路57においては、膜電極接合体30での発電に伴って生成される水(以下、生成水と称する。)も流通する。
【0026】
本実施形態の燃料電池は、酸化剤ガス排出用マニホルド孔14の下方に酸化剤ガス供給用マニホルド孔13が位置する姿勢で車両に搭載されており、
図5(a),(b)に示すように、多孔体プレート50のガス流路57は、酸化剤ガス排出用マニホルド孔14から下方に向けて延びている。
【0027】
図5(a),(b)に示すように、溝流路プレート70の孔74の下側縁を含む平面部70Aが第1樹脂フレーム20及び膜電極接合体30に接しており、同平面部70Aの下方に位置する突出部70Bがフラットプレート60に接している。そして、溝流路プレート70の平面部70Aとフラットプレート60の突出部70Bとによって酸化剤ガス排出用マニホルド孔14に開口する水溜部90が形成されている。
【0028】
また、
図3及び
図5(a),(b)に示すように、フラットプレート60の各孔64の下方には、ガス流路57内と水溜部90とを連通する連通孔67が形成されている。水溜部90はガス流路57の出口部58と連通孔67を介して隣接している。
【0029】
図3に示すように、連通孔67は、前記孔64の各々の並び方向に沿って一端の孔64から他端の孔64までの全体にわたって連続して延びている。また、前記水溜部90は前記並び方向に沿って連通孔67の形成範囲に対応して延びている。
【0030】
図3及び
図5(b)に示すように、フラットプレート60には、前記連通孔67と、前記一端の孔64との間の部位が切り欠かれた切欠部69が形成されている。
図4及び
図5(b)に示すように、第2樹脂フレーム40及び多孔体プレート50における前記切欠部69に対応する部位には、切欠部49,59がそれぞれ形成されている。
【0031】
図5(b)に示すように、第1樹脂フレーム20及び膜電極接合体30における前記切欠部69に対応する部位には、切欠部29,39がそれぞれ形成されている。
図2及び
図5(b)に示すように、溝流路プレート70における前記切欠部69に対応する部位には、切欠部79が形成されている。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
各ガス流路77,57を通じて膜電極接合体30に燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されると、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電が行なわれる。また、発電に伴って生成される水(以下、生成水と称する。)は、多孔体プレート50のガス流路57を通じて酸化剤ガス排出用マニホルド孔14へ排出される。
【0033】
このとき、
図5(a)に示すように、ガス流路57内の生成水はフラットプレート60を伝って酸化剤ガス排出用マニホルド孔14に向けて移動するとともに、フラットプレート60に形成された連通孔67を通じてガス流路57の出口部58に隣接する水溜部90へ流入する。このように、ガス流路57内の生成水は酸化剤ガス排出用マニホルド孔14に直接排出されるのではなく、ガス流路57における酸化剤ガス排出用マニホルド孔14の上流側に形成された連通孔67を通じて水溜部90へ流入することとなるため、ガス流路57内での生成水の滞留が抑制される。
【0034】
そして、
図5(b)に示すように、水溜部90に溜まった生成水は、酸化剤ガスによって酸化剤ガス排出用マニホルド孔14に持ち去られるようになる。
以上説明した本実施形態に係る燃料電池によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0035】
(1)ガス流路57の出口部58に隣接する部位には、酸化剤ガス排出用マニホルド孔14内に開口する水溜部90が形成されている。ガス流路57における酸化剤ガス排出用マニホルド孔14よりも上流側には、ガス流路57を通じて排出される水を水溜部90に導入する導入部としての連通孔67が形成されている。
【0036】
こうした構成によれば、ガス流路57内の生成水は酸化剤ガス排出用マニホルド孔14に直接排出されるのではなく、ガス流路57における酸化剤ガス排出用マニホルド孔14の上流側に形成された連通孔67を通じて水溜部90へ流入することとなるため、ガス流路57内での生成水の滞留を抑制することができる。従って、ガス流路57内での酸化剤ガスの流れが円滑となる。よって、酸化剤ガスの圧力損失を低減することができるとともに酸化剤ガスの拡散性能を高めることができ、ひいては燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0037】
(2)水溜部90は、凹凸形状を有する溝流路プレート70とフラットプレート60とによって形成されている。このため、溝流路プレート70の平面部70A及び突出部70Bとフラットプレート60とによって水溜部90を容易に形成することができる。
【0038】
(3)連通孔67は、前記孔64の各々の並び方向に沿って一端の孔64から他端の孔64までの全体にわたって連続して延びている。また、前記水溜部90は前記並び方向に沿って連通孔67の形成範囲に対応して延びている。また、フラットプレート60には連通孔67と複数の孔64のうちの前記並び方向の一端の孔64との間の部位が切り欠かれた切欠部69が形成されている。また、多孔体プレート50、第2樹脂フレーム40、膜電極接合体30、第1樹脂フレーム20、及び溝流路プレート70における前記切欠部69に対応する部位には切欠部59,49,39,29,79が形成されている。
【0039】
こうした構成によれば、酸化剤ガス排出用マニホルド孔14を流れる酸化剤ガスが各切欠部69,59,49,39,29,79を流れることで、水溜部90に溜まった水が持ち去られやすくなる。このため、水溜部90に溜まった生成水の排出を促進することができる。
【0040】
<第2実施形態>
以下、
図6〜
図8を参照して、第2実施形態について説明する。なお、上記実施形態の構成に対応する構成には「100」を加算した符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、フラットプレート160の各孔164の下側縁における幅方向の中央には、導入部としての後退部167が形成されている。後退部167は、幅方向の中央に近づくほど下側に位置するように三角形状を有している。
【0042】
図7に示すように、多孔体プレート150の下端部は第2樹脂フレーム140の孔143の上側縁を形成しており、多孔体プレート150の上端部は第2樹脂フレーム140の孔144の下側縁を形成している。
【0043】
図8に示すように、溝流路プレート170の孔174の下側縁、多孔体プレート150の上端、及び第1樹脂フレーム120の下側縁は同一面上に位置しているのに対して、フラットプレート160の後退部167は、前記同一面よりも下方に位置している。
【0044】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図8に示すように、ガス流路157内の生成水はフラットプレート160を伝って酸化剤ガス排出用マニホルド孔114に向けて移動するとともに、フラットプレート160に形成された後退部167を通じてガス流路157の出口部158に隣接する水溜部190へ流入する。このように、ガス流路157内の生成水は酸化剤ガス排出用マニホルド孔114に直接排出されるのではなく、酸化剤ガス排出用マニホルド孔114の手前に形成された後退部167を通じて水溜部190へ流入することとなるため、ガス流路157内での生成水の滞留が抑制される。
【0045】
そして、水溜部190に溜まった生成水は、酸化剤ガスによって酸化剤ガス排出用マニホルド孔114に持ち去られるようになる。
以上説明した本実施形態に係る燃料電池によれば、上記実施形態の効果(1)に準じた効果が得られるようになる。
【0046】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・セル10を斜めに傾けた状態で燃料電池を使用することもできる。
・
図6に二点鎖線にて示すように、フラットプレート160の孔164の下側縁全体に後退部167Aを形成することもできる。
【0047】
・
図9に示すように、フラットプレート260の連通孔267と酸化剤ガス排出用マニホルド孔214(
図10参照)を形成する複数の孔264との間に第1実施形態において例示した切欠部を形成しないようにしてもよい。この場合、
図10(a),(b)に示すように、第1樹脂フレーム220、膜電極接合体230、第2樹脂フレーム240、多孔体プレート250、及び溝流路プレート270には、第1実施形態において例示した切欠部29,39,49,59,79に対応する切欠部は形成されていない。また、
図10(a),(b)に示すように、連通孔267に後退部268を形成すればよい。この場合であっても、第1実施形態の効果(1)に準じた効果を奏することができる。
【0048】
・第2実施形態において例示した後退部167に代えて、
図11(a)に示すように、後退部367を孔364の幅方向の両端に形成するとともに同幅方向の端に近づくほどガス流路の上流側(同図における下側)に位置するように形成してもよい。また、
図11(b)に示すように、後退部467を孔464の幅方向の中央に形成するとともに半円状にしてもよい。また、
図11(c)に示すように、後退部567を孔564の幅方向の全体に形成するとともに、幅方向の中央に近づくほどガス流路の上流側に位置するように形成してもよい。また、
図11(d)に示すように、
図11(a)の後退部367に代えて、半円状の後退部667を採用することもできる。また、
図11(e)に示すように、後退部767を孔764の幅方向の一端に形成するとともに矩形状にすることもできる。また、
図11(f)に示すように、
図11(c)の後退部567に代えて、孔864の幅方向の一端側ほどガス流路の上流側に位置する形状を有する後退部867を採用することもできる。また、
図11(g)に示すように、
図11(a)の後退部367の一方が省略された後退部967の形状を採用することもできる。
【0049】
・溝流路プレートのガス流路を用いて酸化剤ガスや燃料ガス(以下、これらを反応ガスと総称する。)及び生成水や凝縮水(以下、これらを水と総称する。)を排出用マニホルド孔に排出する構成の場合には、同ガス流路の出口部に隣接する部位に、一対のセパレータによって排出用マニホルド孔内に開口する水溜部を形成すればよい。また、前記ガス流路を有する一方のセパレータに、同ガス流路を通じて排出される水を水溜部に導入する導入部を形成すればよい。