特許第6233222号(P6233222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233222
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20171113BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20171113BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20171113BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20171113BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02J50/40
   H02J50/70
   H02J7/00 301D
   H02J7/00 P
   B60L11/18 C
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-146739(P2014-146739)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-25691(P2016-25691A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】名倉 宏紀
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−005394(JP,A)
【文献】 特開2012−005207(JP,A)
【文献】 特表2016−536951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00−50/90
H02J7/00
H02J5/00
B60M7/00
B60L11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電対象となる移動体(VCa〜VCe)に割り当てられた複数の給電スペース(SPa〜SPe)のそれぞれに設けられた送電コイル(LS)と、
複数の前記送電コイルのそれぞれから、複数の前記送電コイルのそれぞれに対応する前記移動体に搭載された受電コイル(LR)へと非接触で電力を伝送すべく、複数の前記送電コイルのそれぞれに交流電圧を印加可能な交流電圧印加回路(13a〜13e)と、を備え、
複数の前記送電コイルのうち、前記交流電圧印加回路から交流電圧が印加されている送電コイルを印加対象コイルとし、
前記印加対象コイルが複数である状況下において、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの総和である合成ベクトルの振幅を、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくすべく、前記交流電圧印加回路から前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する操作手段を備え
前記操作手段は、前記合成ベクトルの振幅が最小となる前記位相を探索する探索手段を含むことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記操作手段は、前記合成ベクトルの振幅を、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅のうち最も大きい振幅よりも小さくすべく、前記交流電圧の位相を操作する請求項1記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記交流電圧印加回路は、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに対応して個別に備えられ、
複数の前記印加対象コイルに印加される交流電圧の周波数は、互いに等しく設定され、
前記操作手段は、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに流れる複素電流の位相関係を調整すべく、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する請求項1又は2記載の非接触給電システム。
【請求項4】
複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界の強度と相関を有するパラメータ値を検出する検出手段(16a〜16e)と、
前記印加対象コイルが複数であるか否かを判断する第1判断手段と、
前記検出手段の検出値に基づき、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅が互いに同等であるか否かを判断する第2判断手段とを備え、
前記操作手段は、前記印加対象コイルが複数であって、かつ振幅が互いに同等であると判断されることを条件として、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに流す複素電流の位相を、前記印加対象コイルの数で2πを除算した値ずつずらすように、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する均等操作手段を含む請求項記載の非接触給電システム。
【請求項5】
給電対象となる移動体(VCa〜VCe)に割り当てられた複数の給電スペース(SPa〜SPe)のそれぞれに設けられた送電コイル(LS)と、
複数の前記送電コイルのそれぞれから、複数の前記送電コイルのそれぞれに対応する前記移動体に搭載された受電コイル(LR)へと非接触で電力を伝送すべく、複数の前記送電コイルのそれぞれに交流電圧を印加可能な交流電圧印加回路(13a〜13e)と、を備え、
複数の前記送電コイルのうち、前記交流電圧印加回路から交流電圧が印加されている送電コイルを印加対象コイルとし、
前記印加対象コイルが複数である状況下において、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの総和である合成ベクトルの振幅を、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくすべく、前記交流電圧印加回路から前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する操作手段を備え、
前記交流電圧印加回路は、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに対応して個別に備えられ、
複数の前記印加対象コイルに印加される交流電圧の周波数は、互いに等しく設定され、
複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界の強度と相関を有するパラメータ値を検出する検出手段(16a〜16e)と、
前記印加対象コイルが複数であるか否かを判断する第1判断手段と、
前記検出手段の検出値に基づき、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅が互いに同等であるか否かを判断する第2判断手段とを備え、
前記操作手段は、前記印加対象コイルが複数であって、かつ振幅が互いに同等であると判断されることを条件として、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに流す複素電流の位相を、前記印加対象コイルの数で2πを除算した値ずつずらすように、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する均等操作手段を含むことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項6】
前記均等操作手段によって前記交流電圧印加回路が操作されている状況において、前記印加対象コイルの数が減少したと判断された場合、前記印加対象コイルの数が4つ以上であることを条件として、前記均等操作手段によって設定された複素電流の位相関係を維持する維持手段を備える請求項4又は5記載の非接触給電システム。
【請求項7】
複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界の強度と相関を有するパラメータ値を検出する検出手段(16a〜16e)と、
前記印加対象コイルが複数であるか否かを判断する第1判断手段と、
前記検出手段の検出値に基づき、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅が互いに同等であるか否かを判断する第2判断手段とを備え、
前記操作手段は、前記印加対象コイルが複数であって、かつ振幅が互いに同等でないと判断されることを条件として、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに流す複素電流の位相を、前記印加対象コイルの数で2πを除算した値ずつずらした位相を基準に、前記印加対象コイルのそれぞれに流す複素電流の位相を変化させることで、前記合成ベクトルの振幅が最小となる前記位相を探索する手段を含む請求項〜6のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項8】
給電対象となる移動体(VCa〜VCe)に割り当てられた複数の給電スペース(SPa〜SPe)のそれぞれに設けられた送電コイル(LS)と、
複数の前記送電コイルのそれぞれから、複数の前記送電コイルのそれぞれに対応する前記移動体に搭載された受電コイル(LR)へと非接触で電力を伝送すべく、複数の前記送電コイルのそれぞれに交流電圧を印加可能な交流電圧印加回路(13a〜13e)と、を備え、
複数の前記送電コイルのうち、前記交流電圧印加回路から交流電圧が印加されている送電コイルを印加対象コイルとし、
前記印加対象コイルが複数である状況下において、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの総和である合成ベクトルの振幅を、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくすべく、前記交流電圧印加回路から前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する操作手段を備え、
前記交流電圧印加回路は、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに対応して個別に備えられ、
複数の前記印加対象コイルに印加される交流電圧の周波数は、互いに等しく設定され、
複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界の強度と相関を有するパラメータ値を検出する検出手段(16a〜16e)と、
前記印加対象コイルが複数であるか否かを判断する第1判断手段と、
前記検出手段の検出値に基づき、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅が互いに同等であるか否かを判断する第2判断手段とを備え、
前記操作手段は、前記印加対象コイルが複数であって、かつ振幅が互いに同等でないと判断されることを条件として、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに流す複素電流の位相を、前記印加対象コイルの数で2πを除算した値ずつずらした位相を基準に、前記印加対象コイルのそれぞれに流す複素電流の位相を変化させることで、前記合成ベクトルの振幅が最小となる前記位相を探索する手段を含むことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項9】
前記検出手段は、前記送電コイルに流れる電流を検出する電流検出手段(16a〜16e)を含み、
前記第2判断手段は、前記電流検出手段の検出値に基づき、前記振幅が互いに同等であるか否かを判断する請求項4〜8のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項10】
複数の前記印加対象コイルのうち互いに隣接する印加対象コイルのそれぞれの電磁界ベクトルの総和の振幅が、隣接する前記印加対象コイルのそれぞれの電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくなるように、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する隣接操作手段を備える請求項1〜のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項11】
給電対象となる移動体(VCa〜VCe)に割り当てられた複数の給電スペース(SPa〜SPe)のそれぞれに設けられた送電コイル(LS)と、
複数の前記送電コイルのそれぞれから、複数の前記送電コイルのそれぞれに対応する前記移動体に搭載された受電コイル(LR)へと非接触で電力を伝送すべく、複数の前記送電コイルのそれぞれに交流電圧を印加可能な交流電圧印加回路(13a〜13e)と、を備え、
複数の前記送電コイルのうち、前記交流電圧印加回路から交流電圧が印加されている送電コイルを印加対象コイルとし、
前記印加対象コイルが複数である状況下において、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの総和である合成ベクトルの振幅を、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくすべく、前記交流電圧印加回路から前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する操作手段と、
複数の前記印加対象コイルのうち互いに隣接する印加対象コイルのそれぞれの電磁界ベクトルの総和の振幅が、隣接する前記印加対象コイルのそれぞれの電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくなるように、複数の前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する隣接操作手段とを備えることを特徴とする非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電対象となる移動体の給電スペースに設けられた送電コイルから、移動体に搭載された送電コイルへと非接触で電力を伝送する非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとしては、下記特許文献1に見られるように、給電設備に設けられた送電コイルから、車両に搭載された受電コイルへと伝送する給電電力の周波数範囲を拡散させるものが知られている。このシステムによれば、非接触給電に伴って放射される電磁界強度のピークを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−193598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給電スペースに停車した複数の車両のそれぞれに非接触給電を行う非接触給電システムがある。複数の車両のそれぞれに対して同時に非接触給電を行うと、各車両の給電先となる送電コイルのそれぞれから放射される電磁界が重畳されることにより、漏洩電磁界が増大するおそれがある。特に最悪の場合には、漏洩電磁界が、各送電コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の総和になるおそれがある。こうした問題に対処すべく、例えば、同時に給電可能な車両数や給電電力を制限することも考えられる。ただし、この場合、非接触給電システムの利便性等が低下することとなる。
【0005】
本発明は、複数の移動体に同時に非接触給電する場合における漏洩電磁界を低減できる非接触給電システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
本発明は、給電対象となる移動体(VCa〜VCe)に割り当てられた複数の給電スペース(SPa〜SPe)のそれぞれに設けられた送電コイル(LS)と、複数の前記送電コイルのそれぞれから、複数の前記送電コイルのそれぞれに対応する前記移動体に搭載された受電コイル(LR)へと非接触で電力を伝送すべく、複数の前記送電コイルのそれぞれに交流電圧を印加可能な交流電圧印加回路(13a〜13e)と、を備え、複数の前記送電コイルのうち、前記交流電圧印加回路から交流電圧が印加されている送電コイルを印加対象コイルとし、前記印加対象コイルが複数である状況下において、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの総和である合成ベクトルの振幅を、複数の前記印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくすべく、前記交流電圧印加回路から前記印加対象コイルのそれぞれに印加される交流電圧の位相を操作する操作手段を備えることを特徴とする。
【0008】
上記発明では、操作手段を備えることにより、上記合成ベクトルの振幅を、複数の印加対象コイルのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくできる。このため、複数の移動体に非接触給電する場合における漏洩電磁界を好適に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態にかかる非接触給電システムの全体構成図。
図2】フィルタ及びパッドの変形例を示す図。
図3】第1実施形態にかかる給電スペースを示す平面図。
図4】漏洩電磁界の増大態様を示す図。
図5】第1実施形態にかかる給電処理の手順を示すフローチャート。
図6】同実施形態にかかる複素電流の設定態様及び漏洩電磁界の低減効果の一例を示す図。
図7】同実施形態にかかる漏洩電磁界の低減効果の一例を示す図。
図8】同実施形態にかかる探索処理態様を示す図。
図9】同実施形態にかかる探索処理態様を示す図。
図10】第2実施形態にかかる漏洩電磁界の低減効果の一例を示す図。
図11】第3実施形態にかかる複素電流の設定態様及び漏洩電磁界の低減効果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる非接触給電システムを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示すように、非接触給電システムは、移動体である車両の外部(地上側)に設けられた送電システムPSと、車両に設けられた受電システムとで構成されている。本実施形態において、送電システムPSは、例えば公共の駐車スペースに設けられるものを想定している。受電システムは、複数(5つを例示)の車両VCa〜VCeのそれぞれに搭載されている。
【0012】
送電システムPSは、交流電源10(系統電源)から出力された交流電圧が入力されるPFC回路11、PFC回路11の出力電圧が入力される第1〜第5DCDCコンバータ12a〜12e、第1〜第5インバータ13a〜13e(「交流電圧印加回路」に相当)、第1〜第5送電側フィルタ回路14a〜14e、及び第1〜第5送電パッド15a〜15eを備えている。なお、本実施形態において、各DCDCコンバータ12a〜12eの構成は互いに同一であり、各インバータ13a〜13eの構成も互いに同一である。また、各送電側フィルタ回路14a〜14eの構成は互いに同一であり、各送電パッド15a〜15eの構成も互いに同一である。このため、以下では主に、第1DCDCコンバータ12a、第1インバータ13a、第1送電側フィルタ回路14a、及び第1送電パッド15aを例にして説明する。
【0013】
PFC回路11は、入力された交流電圧を直流電圧に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。PFC回路11は、例えば、ダイオードブリッジからなる全波整流回路と、非絶縁型の昇圧チョッパ回路とを備えている。第1DCDCコンバータ12aは、PFC回路11から出力された直流電圧を所定の直流電圧に変換して出力する。第1DCDCコンバータ12aは、例えば、非絶縁型の降圧チョッパ回路である。
【0014】
第1インバータ13aは、電圧制御形のインバータである。詳しくは、第1インバータ13aは、第1上アームスイッチSXp及び第1下アームスイッチSXnの直列接続体と、第2上アームスイッチSYp及び第2下アームスイッチSYnの直列接続体と、入力電圧を平滑化する図示しないコンデンサとを備えるフルブリッジインバータである。なお、各スイッチSXp〜SYnとしては、例えば電圧制御形の半導体スイッチを用いることができ、具体的には例えばIGBTを用いることができる。また、各スイッチSXp〜SYnには、図示しないフリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
【0015】
第1インバータ13aの出力側には、第1送電側フィルタ回路14aを介して第1送電パッド15aの第1端が接続され、第1送電パッド15aの第2端には、第1送電側フィルタ回路14aを介して第2上アームスイッチSYpと第2下アームスイッチSYnとの接続点が接続されている。なお、本実施形態では、第1送電側フィルタ回路14aとして、バンドパスフィルタを用いている。第1送電側フィルタ回路14aは、送電側第1,第2リアクトルLF1,LF2の直列接続体と、送電側第3,第4リアクトルLF3,LF4の直列接続体と、各直列接続体の接続点を接続する送電側コンデンサCFとを備えている。
【0016】
第1送電パッド15aは、送電側コイルLS、第1共振コンデンサCS1、及び第2共振コンデンサCS2を備えている。送電側コイルLSの第1端には、第1共振コンデンサCS1を介して第1送電パッド15aの第1端が接続されている。送電側コイルLSの第2端には、第2共振コンデンサCS2を介して第1送電パッド15aの第2端が接続されている。第1送電パッド15aは、LC直列共振回路を構成する。第1送電パッド15aは、電磁誘導によって受電システムの備える各受電パッド20a〜20eに電力を送るための回路である。
【0017】
ちなみに、各送電側フィルタ回路及び各送電パッドを、図2に示す構成のように変更してもよい。詳しくは、送電側コイルLSには、共振コンデンサCSが並列接続されている。すなわち、送電側コイルLSと共振コンデンサCSとによってLC並列共振回路が構成されている。第1送電側フィルタ回路17aは、送電側第1コンデンサC1及び送電側第1リアクトルL1の直列接続体と、送電側第2コンデンサC2及び送電側第2リアクトルL2の直列接続体とを備えている。
【0018】
先の図1の説明に戻り、第1〜第5車両VCa〜VCeのそれぞれには、受電パッド、受電側フィルタ回路、整流回路、及び負荷を備えている。なお、本実施形態では、第1〜第5受電パッド20a〜20eの構成は互いに同一であり、第1〜第5受電側フィルタ回路21a〜21eの構成も互いに同一である。また、第1〜第5整流回路22a〜22eの構成は互いに同一であり、第1〜第5負荷23a〜23eの構成も互いに同一である。このため、以下では主に、第1受電パッド20a、第1受電側フィルタ回路21a、第1整流回路22a、及び第1負荷23aを例にして説明する。
【0019】
第1の車両VCaに搭載される受電システムは、第1送電パッド15aに対応したものである。第1受電パッド20aは、受電側コイルLR、受電側第1共振コンデンサCR1、及び受電側第2共振コンデンサCR2を備えている。受電側コイルLRの第1端には、受電側第1共振コンデンサCR1を介して第1受電パッド20aの第1端が接続されている。受電側コイルLRの第2端には、受電側第2共振コンデンサCR2を介して第1受電パッド20aの第2端が接続されている。第1受電パッド20aは、LC直列共振回路を構成する。
【0020】
第1受電パッド20aには、第1受電側フィルタ回路21aを介して第1整流回路22aが接続されている。なお、本実施形態では、第1受電側フィルタ回路21aとして、第1送電側フィルタ回路14aと同様のバンドパスフィルタを用いている。第1整流回路22aは、第1受電パッド20aから出力された交流電圧を直流電圧に変換して出力する。第1整流回路22aは、例えば、ダイオードブリッジから構成される全波整流回路や、4つのスイッチング素子(例えばMOSFET)から構成される同期整流回路を用いることができる。第1整流回路22aから出力された直流電圧は、車載バッテリを含む第1負荷23aに供給される。なお、本実施形態において、バッテリは、車載主機としての図示しない回転機(モータジェネレータ)の電力供給源となる。
【0021】
ちなみに、各受電パッド及び各受電側フィルタ回路も、先の図2に示した構成に変更してもよい。
【0022】
送電システムPSには、第1〜第5インバータ13a〜13eから出力される電流を検出する第1〜第5電流センサ16a〜16eが備えられている。また、送電システムPSには、制御装置30が備えられている。制御装置30は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成され、各電流センサ16a〜16eの検出値Ia〜Ieや、各DCDCコンバータ12a〜12eの出力電圧(各インバータ13a〜13eの入力電圧)が入力される。制御装置30は、各送電パッド15a〜15eを構成する送電側コイルから、各受電パッド20a〜20eを構成する受電側コイルへと非接触で電力伝送する給電処理を行う。給電処理は、車両を給電対象としたものである。制御装置30は、PFC回路11や、各DCDCコンバータ12a〜12e、各インバータ13a〜13eを操作することで、給電処理を行う。
【0023】
制御装置30は、各インバータ13a〜13eのそれぞれにおいて、第1上アームスイッチSXp及び第2下アームスイッチSYnの組と、第1下アームスイッチSXn及び第2上アームスイッチSYpの組とを、デッドタイムを挟みつつ交互にオン操作する。これにより、極性を交互に反転させた矩形波電圧VFa〜VFeを各送電パッド15a〜15eに供給する。本実施形態では、各インバータ13a〜13eのそれぞれにおいて、各スイッチSXp〜SYnのスイッチング周期が同一に設定されている。このため、各インバータ13a〜13eから出力される交流電圧の周波数は互いに同一であり、各送電パッド15a〜15eに流れる共振電流の周波数も互いに同一である。ちなみに、本実施形態では、各送電パッド15a〜15eに流す共振電流の振幅の最大値が互いに同一であるとする。このため、各送電パッド15a〜15eのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅の最大値も互いに同一であるとする。
【0024】
なお、制御装置30は、各DCDCコンバータ12a〜12eの出力電圧を目標電圧に制御すべく、各DCDCコンバータ12a〜12eを操作する。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、各車両VCa〜VCeの駐車スペースが一列に並んで設けられている。本実施形態では、第1〜第5車両VCa〜VCeの駐車スペースを第1〜第5駐車スペースSPa〜SPeと称すこととする。第1〜第5駐車スペースには、第1〜第5送電パッド15a〜15eが互いに同じ向きで埋設されている。すなわち、各駐車スペースSPa〜SPeが給電スペースとされている。各車両VCa〜VCeは、受電パッド20a〜20eが送電パッド15a〜15eの対向位置となるように停車した状態で非接触給電される。
【0026】
ここで、本実施形態では、複数の車両が同時に給電される場合において、動作中の各送電パッドから放射される漏洩電磁界を低減可能な給電処理を採用する。本実施形態において、漏洩電磁界の低減対象となる空間(以下、低減対象空間)は、各送電パッド15a〜15eから規定距離Ldisで囲われる空間であり(図3参照)、規定距離Ldisは、各送電パッド15a〜15eから放射される電磁波の1波長λを基準として設定されることとする。具体的には、規定距離Ldisは、上記1波長λの「1/10」程度の値に設定されることとする。このため、本実施形態では、漏洩電磁界の電磁波の波長に対して規定距離Ldisが十分に短い。したがって、各送電パッド15a〜15eの位置関係等に起因したフェージングによる漏洩電磁界の減衰量が無視できるものとする。なお、本実施形態では、各インバータ13a〜13eの出力電圧の周波数が10kHz〜100kHzに対応した値に設定されており、より具体的には、100kHzに設定されている。このため、上記1波長λは、3kmとなる。
【0027】
ちなみに、本実施形態において、電磁界ベクトルとは、電界ベクトルのみ、磁界ベクトルのみ、又はそれらベクトルの双方を指す。
【0028】
図4に、漏洩電磁界が増大する場合の各インバータ13a〜13eの動作対象を示す。詳しくは、図4(a)は、第1〜第5送電パッド15a〜15eに流す複素電流(フェーザ電流)を示し、図4(b)は、各送電パッド15a〜15eに電流を流すことによって放射される漏洩電磁界のうち、低減対象空間内の特定の位置TPにおける電磁界ベクトルを示す。なお、図4(b)には、電磁界ベクトルの直交3軸座標系(X,Y,Z)の各成分のうち1つを示したものである。
【0029】
図4(a)に示す例では、各送電パッド15a〜15eに流す複素電流の振幅及び位相が互いに同一となるように、各インバータ13a〜13eが操作されている。ここで、複素平面上における各電磁界ベクトルの位相関係は、複素電流の位相関係と同様になる。このため、各送電パッド15a〜15eに流す複素電流の位相を互いに同一にすると、図4(b)に示すように、電磁界ベクトルの合成ベクトルの振幅5Doが、最悪、1つの送電パッドに電流を流す場合の電磁界ベクトルの振幅Doの5倍になるおそれがある。こうした問題に対処すべく、本実施形態では、図5に示す給電処理を行う。
【0030】
図5に、本実施形態にかかる給電処理の手順を示す。この処理は、制御装置30によって例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図5では、第1〜第5送電パッド15a〜15eのうちいずれか1つのみに交流電圧が印加される単独給電処理の図示を省略している。
【0031】
この一連の処理では、まずステップS10において、第1〜第5送電パッド15a〜15eのうち、第1〜第5インバータ13a〜13eからの交流電圧の印加対象となる対象パッドの数Nが2つ以上であるか否かを判断する。なお、本実施形態において、本ステップの処理が「第1判断手段」に相当する。
【0032】
ステップS10において肯定判断した場合には、ステップS12に進み、第1条件と第2条件との論理和が真であるか否かを判断する。ここで、第1条件は、対象パッドのそれぞれから伝送される給電電力Wが全て同等であるとの条件である。本実施形態において、同等であるとは、対象パッドのそれぞれから伝送される給電電力Wの全てが互いに等しいことに加えて、これら給電電力Wが略等しいことも含む。給電電力Wが略等しくなる状況とは、例えば、これら給電電力Wの目標値が互いに同一の値に設定された場合であっても、電流センサの検出誤差等により、これら給電電力Wが多少ばらつく状況である。第2条件は、対象パッド数Nが2つであるとの条件である。第1条件は、各対象パッドのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの振幅が互いに同等であることを把握するための条件である。ここで、振幅の把握に給電電力を用いているのは、給電電力と電力密度とが正の相関を有し、電力密度、電界強度及び磁界強度のそれぞれが互いに正の相関を有していることによる。本実施形態において、第1〜第5送電パッド15a〜15eから伝送される給電電力は、第1〜第5電流センサ16a〜16eの検出値Ia〜Ieの実効値、ピーク値、又は時間平均値と、第1〜第5DCDCコンバータ12a〜12eの出力電圧V(第1〜第5インバータ13a〜13eの入力電圧)との乗算値として算出すればよい。なお、本実施形態において、ステップS12の処理が「第2判断手段」に相当する。
【0033】
ステップS12において肯定判断した場合には、ステップS14に進み、対象パッドのそれぞれに流す複素電流の位相を、対象パッド数Nで2πを除算した値(以下、シフト角Δθ)ずつずらして設定する均等設定処理を行う。本実施形態において、本ステップの処理が「均等操作手段」に相当する。ここで、図6には、対象パッド数が5つである場合の均等設定処理態様を示した。詳しくは、図6(a),(b)は、先の図4(a),(b)に対応している。なお、図6(a)では、各インバータ13a〜13eの入力電圧が互いに等しい状態を想定している。
【0034】
図6(a)には、第1〜第5送電パッド15a〜15eのそれぞれに流す複素電流IFa〜IFeの振幅を互いに同一の振幅Ioに設定し、シフト角Δθを「2π/5」とした例を示した。なお、図6(a)では、便宜上、第1送電パッド15aに流す複素電流IFaの位相を複素平面の実軸に示している。各複素電流IFa,IFb,IFc,IFd,IFeを各送電パッド15a,15b,15c,15d,15eに流すと、各送電パッド15a,15b,15c,15d,15eから各複素電流IFa,IFb,IFc,IFd,IFeに対応した電磁界ベクトルDa,Db,Dc,Dd,Deが放射される。これら電磁界ベクトルDa〜Deの位相関係は、各複素電流IFa〜IFeの位相関係と同様に、「2π/5」ずつずれている。ここで、均等設定処理を行うと、これら電磁界ベクトルDa〜Deの合成ベクトルDTを理論的には0とすることができる。すなわち、漏洩電磁界を1台の車両給電時における漏洩電磁界よりも小さくできる。
【0035】
なお、図7には、対象パッド数が3つである場合の電磁界ベクトルの発生態様を示した。この場合、シフト角Δθを「2π/3」に設定することにより、各電磁界ベクトルDb,Dc,Deの位相も「2π/3」ずつずれることとなる。その結果、合成ベクトルDTを理論的には0とすることができる。
【0036】
先の図5の説明に戻り、上記ステップS12において否定判断した場合には、ステップS16に進み、探索処理を行う。この処理は、合成ベクトルDTの振幅が最小となるように、各対象パッドに流す複素電流の位相関係を探索する処理である。本実施形態において、本ステップの処理が「探索手段」に相当する。以下、この処理について、図8及び図9を用いて説明する。
【0037】
図8には、対象パッド数が3つであって、かつ第1送電パッド15aの給電電力が第2,第3送電パッド15b,15cの給電電力よりも小さい例を示した。本実施形態にかかる探索処理では、まず、第1〜第3送電パッド15a〜15cのそれぞれの複素電流IFa〜IFcのシフト角Δθを、均等設定処理と同様の角度「2π/3」に設定する。これにより、図8(a)に示すように、第1〜第3送電パッド15a〜15cのそれぞれから放射される電磁界ベクトルDa〜Dcの位相がシフト角「2π/3」ずつずれる。その後、第1〜第3送電パッド15a〜15cのうち、給電電力が最も低い第1送電パッド15aに流す複素電流IFaの位相に向かって、第2,第3送電パッド15b,15cに流す複素電流IFb,IFcの位相を近づける。各複素電流IFb,IFcの位相を近づけている途中において、電磁界ベクトルDa〜Dcの合成ベクトルDTが0となるタイミングの位相が各複素電流IFb,IFcの位相として設定される(図8(b)参照)。
【0038】
図9には、対象パッド数が3つであって、かつ第1〜第3送電パッド15a〜15cの給電電力が互いに相違する例を示した。この場合であっても、まず、第1〜第3送電パッド15a〜15cのそれぞれの複素電流のシフト角Δθを、均等設定処理と同様の角度「2π/3」に設定する。これにより、図9(a)に示すように、第1〜第3送電パッド15a〜15cのそれぞれから放射される電磁界ベクトルDa〜Dcの位相がシフト角「2π/3」ずれる。その後、第1〜第3送電パッド15a〜15cの位相関係を調整することにより、電磁界ベクトルDa〜Dcの合成ベクトルDTが最小となるタイミングの位相関係が各複素電流IFa〜IFcの位相関係として設定される(図9(b)参照)。
【0039】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0040】
(1)制御装置30は、複数の対象パッドのそれぞれの給電電力が全て等しいと判断した場合、均等設定処理を行った。これにより、合成ベクトルの振幅を0に近づけることができる。したがって、複数の車両に同時に非接触給電する場合における漏洩電磁界を好適に低減することができる。さらに、本実施形態によれば、漏洩電磁界を低減する部品数を低減でき、非接触給電システムの体格やコストの増大を抑制することもできる。
【0041】
(2)制御装置30は、複数の対象パッドのそれぞれの給電電力が全て同等でないと判断した場合、探索処理を行った。このため、合成ベクトルの振幅を最小とすることができる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、均等設定処理によって位相関係が調整されている状況において、対象パッド数Nが減少するとの条件と、対象パッド数Nが4つ以上であるとの条件との論理積が真であると判断された場合、維持処理を行う。この処理は、対象パッド数が4つ以上であれば、均等設定処理によって再度シフト角Δθを設定することなく、均等設定処理によって前回設定された位相関係を維持する処理である。以下、図10を用いて、この処理について説明する。
【0043】
図10には、対象パッド数が5から4に減少した場合を例示した。詳しくは、図10(a)に示す状況は、第1〜第5送電パッド15a〜15eのそれぞれに複素電流が流れている状況である。ここで、図10(b)に示すように、第2送電パッド15bへの複素電流の供給が停止された場合であっても、第1,第3〜第5送電パッド15a,15c〜15eのそれぞれに流す複素電流の位相関係を維持することで、合成ベクトルDTの振幅を各送電パッド15a,15c〜15eのいずれか1つを動作させた場合の電磁界ベクトルの振幅以下にすることができる。
【0044】
なお、対象パッド数Nが3つに減少するまで維持処理を継続すればよい。すなわち、対象パッド数Nが3つに減少したことをもって、再度、均等設定処理を行えばよい。
【0045】
以上説明した本実施形態によれば、漏洩電磁界を低減しつつ、均等設定処理の頻度を低下させて制御装置30の演算負荷を低減することなどができる。
【0046】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、複数の対象パッドのうち互いに隣接する対象パッドのそれぞれの電磁界ベクトルの総和の振幅が、隣接する対象パッドのそれぞれの電磁界ベクトルの振幅の総和よりも小さくなるように、対象パッドのそれぞれに流す複素電流の位相関係を調整する。以下、これについて図11を用いて説明する。なお、図11では、各送電パッド15a〜15eのそれぞれに複素電流が流れてかつ、各インバータ13a〜13eの入力電圧が互いに等しい状況を想定している。
【0047】
図11(a)は、各送電パッド15a〜15eに流す複素電流を示し、図11(b)は、互いに隣接する送電パッドのそれぞれから放射される電磁界ベクトルの合成ベクトルを示す。詳しくは、図11では、均等設定処理によってシフト角Δθが「2π/5」に設定されている。そして、第1送電パッド15aに流す複素電流IFaの位相と、第2送電パッド15bに流す複素電流IFbの位相とを「2×Δθ」だけずらした。これにより、第1,第2送電パッド15a,15bのそれぞれから放射される電磁界ベクトルDa,Dbの合成ベクトルDT1の振幅は、1つの電磁界ベクトルの振幅よりも小さくなる。また、第2送電パッド15bに流す複素電流IFbの位相と、第3送電パッド15cに流す複素電流IFcの位相とを「2×Δθ」だけずらした。これにより、第2,第3送電パッド15b,15cのそれぞれから放射される電磁界ベクトルDb,Dcの合成ベクトルDT2の振幅は、1つの電磁界ベクトルの振幅よりも小さくなる。
【0048】
さらに、第3送電パッド15cに流す複素電流IFcの位相と、第4送電パッド15dに流す複素電流IFdの位相とを「2×Δθ」だけずらした。これにより、第3,第4送電パッド15c,15dのそれぞれから放射される電磁界ベクトルDc,Ddの合成ベクトルDT3の振幅は、1つの電磁界ベクトルの振幅よりも小さくなる。加えて、第4送電パッド15dに流す複素電流IFdの位相と、第5送電パッド15eに流す複素電流IFeの位相とを「2×Δθ」だけずらした。これにより、第4,第5送電パッド15d,15eのそれぞれから放射される電磁界ベクトルDd,Deの合成ベクトルDT4の振幅は、1つの電磁界ベクトルの振幅よりも小さくなる。加えて、第5送電パッド15eに流す複素電流IFeの位相と、第1送電パッド15aに流す複素電流IFaの位相とを「2×Δθ」だけずらした。これにより、第5,第1送電パッド15e,15aのそれぞれから放射される電磁界ベクトルDe,Daの合成ベクトルの振幅は、図示しないが、1つの電磁界ベクトルの振幅よりも小さくなる。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、給電中の互いに隣接する車両同士の間における漏洩電磁界を低減することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0051】
・上記第1実施形態では、各インバータの出力電流を送電コイルに流れる電流として検出したがこれに限らない。例えば、送電パッドに電流センサを直接備え、送電パッドに流れる電流を直接検出してもよい。
【0052】
・先の図5のステップS12において、第1条件を、複数の対象パッドのそれぞれに対応する電流センサの検出値が互いに等しいとの条件に変更してもよいし、各インバータからの出力電圧又は各インバータに各DCDCコンバータから供給される直流電圧を用いた条件に変更してもよい。こうした条件は、各送電パッドや各受電パッドに接続される共振回路の特性に応じて放射される電磁界ベクトルの振幅との相関を取りやすい物理量を選択すればよい。例えば、各インバータ13a〜13eのそれぞれの入力電圧が互いに等しく設定された場合、第1条件として、電流センサの検出値が互いに等しいとの条件を採用すればよい。
【0053】
・各送電パッドのそれぞれの近傍に、送電パッドから放射される電磁界高度を直接検出可能な強度センサを非接触システムに備えてもよい。この場合、先の図5のステップS12において、第1条件を、対象パッドのそれぞれに対応する強度センサの検出値が互いに等しいとの条件に変更してもよい。
【0054】
・送電パッドが設置される駐車スペースとしては、先の図3に示した配置態様に限らず、例えばL字型に並ぶ駐車スペースであってもよい。駐車スペースの配置態様によって各送電パッドから放射される電磁界ベクトルの位相特性が変化する場合も、その特性をあらかじめ考慮した上で、上記各実施形態における位相を操作すればよい。これにより、駐車スペースの配置態様によらず漏洩電磁界を低減することができる。
【符号の説明】
【0055】
13a〜13e…第1〜第5インバータ、15a〜15e…第1〜第5送電パッド、20a〜20e…第1〜第5受電パッド、30…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11