特許第6233223号(P6233223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233223
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-147131(P2014-147131)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-23985(P2016-23985A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】登口 健吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 正毅
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007-502424(JP,A)
【文献】 特開2013-257192(JP,A)
【文献】 特開2008-76211(JP,A)
【文献】 特開2013-127454(JP,A)
【文献】 特開平5-249069(JP,A)
【文献】 特開2011-112557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性を有し、筒状の外周部(23)の先端が閉塞されたコップ形状の固体電解質体(2)と、
上記外周部(23)の外周面(201)に設けられた被測定ガス側電極(21)と、
上記外周部(23)の内周面(202)に設けられた基準ガス側電極(22)と、
上記固体電解質体(2)の内周側に配置され、該固体電解質体(2)を加熱するヒータ(3)と、
上記固体電解質体(2)を保持するハウジング(4)と、
該ハウジング(4)に取り付けられ、上記固体電解質体(2)を覆うカバー(5)と、を備えており、
該カバー(5)は、該カバー(5)の基端側であって上記固体電解質体(2)の外周側に位置する大径カバー部(51)と、該大径カバー部(51)の先端側において、該大径カバー部(51)よりも縮径して形成された小径カバー部(52)と、該小径カバー部(52)と上記大径カバー部(51)とを繋ぐ段部(53)とを有しており、
上記大径カバー部(51)、上記小径カバー部(52)及び上記段部(53)は一重のカバーとして形成されており、
上記小径カバー部(52)の先端には、孔の全周が開かれた第1貫通孔(521)が形成されており、
上記段部(53)の周方向の複数個所には、孔の全周が開かれた第2貫通孔(531)が形成されていることを特徴とするガスセンサ(1)。
【請求項2】
上記第1貫通孔(521)の孔径はφ0.9〜3mmの範囲内にあり、
上記第2貫通孔(531)の孔径はφ0.9〜1.5mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ(1)。
【請求項3】
上記大径カバー部(51)の内周面と上記被測定ガス側電極(21)との隙間D1は、1〜2.5mmの範囲内にあり、
上記小径カバー部(52)の内径D2は、φ3.8〜9.8mmの範囲内にあり、
上記被測定ガス側電極(21)の先端(211)から上記段部(53)の基端面(530)までの距離D3は、1〜6mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ(1)。
【請求項4】
上記ガスセンサ(1)は、車両の排気管内の、触媒が配置された位置よりも下流側において、上記排気管内の排気ガスの流れ(F)に略直交して配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中の酸素濃度等を測定するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気管内に配置されて、排気管内を通過する排気ガス中の酸素濃度等を測定するガスセンサには、測定の速さを示す応答性、水分からの保護性能を示す耐被水性等が要求される。
例えば、特許文献1には、検出素子と、検出素子を保持する主体金具と、検出素子の検出部を収容するプロテクタとを備えるガスセンサについて開示されている。プロテクタは、大径部と小径部とを有している。大径部の第一先端壁には、軸線方向後端側に向かって窪んだ第一陥没部と、第一陥没部において開口する第一開口部とが設けられている。また、小径部の第二先端壁には、軸線方向後端側に向かって窪んだ第二陥没部と、第二陥没部において開口する第二開口部とが設けられている。そして、第一開口部又は第二開口部からプロテクタ内に水滴が浸入した場合でも、水滴が、第一陥没部又は第二陥没部に付着することにより、検出素子に付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−257192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第一陥没部及び第二陥没部は、第一開口部又は第二開口部を通過する被測定ガスの流れを遮る形でプロテクタの内側へ突出している。そのため、被測定ガスが検出素子の検出部へ到達する時間が遅れ、ガスセンサによる測定の応答性を十分に向上させることができない。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、耐被水性を確保して、測定の応答性を高めることができるガスセンサを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、酸素イオン伝導性を有し、筒状の外周部の先端が閉塞されたコップ形状の固体電解質体と、
上記外周部の外周面に設けられた被測定ガス側電極と、
上記外周部の内周面に設けられた基準ガス側電極と、
上記固体電解質体の内周側に配置され、該固体電解質体を加熱するヒータと、
上記固体電解質体を保持するハウジングと、
該ハウジングに取り付けられ、上記固体電解質体を覆うカバーと、を備えており、
該カバーは、該カバーの基端側であって上記固体電解質体の外周側に位置する大径カバー部と、該大径カバー部の先端側において、該大径カバー部よりも縮径して形成された小径カバー部と、該小径カバー部と上記大径カバー部とを繋ぐ段部とを有しており、
上記大径カバー部、上記小径カバー部及び上記段部は一重のカバーとして形成されており、
上記小径カバー部の先端には、孔の全周が開かれた第1貫通孔が形成されており、
上記段部の周方向の複数個所には、孔の全周が開かれた第2貫通孔が形成されていることを特徴とするガスセンサにある。
【発明の効果】
【0007】
上記ガスセンサにおいては、カバーを大径カバー部と小径カバー部との2段形状に形成している。そして、小径カバー部の先端には、孔の全周が打ち抜かれた第1貫通孔を形成し、大径カバー部と小径カバー部とを繋ぐ段部の周方向の複数個所には、孔の全周が打ち抜かれた第2貫通孔を形成している。
このカバーの構成により、被測定ガスが、第1貫通孔及び第2貫通孔を介して、カバーの外側と内側との間を通過しやすくなる。すなわち、被測定ガス側電極の近傍における被測定ガスの流速を高めることができる。そして、被測定ガスは、固体電解質体における被測定ガス側電極に到達しやすくなり、また、被測定ガス側電極からカバーの外部へ排出されやすくなる。そのため、ガスセンサによる酸素濃度等の特定ガス成分濃度を測定する応答性を高めることができる。
【0008】
また、ガスセンサの応答性が高められることにより、ヒータの出力を抑えて、固体電解質体の温度を低くすることが可能になる。これにより、固体電解質体に、水分による被水ストレス、割れ等が生じにくくすることができ、ガスセンサの耐被水性を確保することができる。また、第1貫通孔及び第2貫通孔の孔径をできるだけ小さくすることによっても、水分がカバー内に浸入しにくくして、ガスセンサの耐被水性を確保することができる。
それ故、上記ガスセンサによれば、耐被水性を確保して、測定の応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例にかかる、ガスセンサを示す断面説明図。
図2】実施例にかかる、横軸に、大径カバー部の内周面と測定ガス側電極との間の径方向の隙間D1をとり、縦軸に、固体電解質体の被測定ガス側電極の近傍における被測定ガスの流速をとって、両者の関係を示すグラフ。
図3】実施例にかかる、横軸に、小径カバー部の内径D2をとり、縦軸に、固体電解質体の被測定ガス側電極の近傍における被測定ガスの流速をとって、両者の関係を示すグラフ。
図4】実施例にかかる、横軸に、測定ガス側電極の先端から段部の基端面までの軸線方向の距離D3をとり、縦軸に、固体電解質体の被測定ガス側電極の近傍における被測定ガスの流速をとって、両者の関係を示すグラフ。
図5】実施例にかかる、横軸に、カバーの段部における第2貫通孔の孔径をとり、縦軸に、固体電解質体の被水量をとって、両者の関係を示すグラフ。
図6】実施例にかかる、横軸に、固体電解質体の測定ガス側電極の近傍における被測定ガスの流速をとり、縦軸に、ガスセンサの応答性をとって、両者の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述したガスセンサにおける好ましい実施の形態について説明する。
上記ガスセンサにおいては、上記第1貫通孔は、孔径がφ0.9〜3mmの大きさで1箇所に形成されており、上記第2貫通孔は、孔径がφ0.9〜1.5mmの大きさで形成されていてもよい。
この場合には、第1貫通孔及び第2貫通孔を適切に小さくすることができ、被測定ガスの通過を容易にして、カバー内への水分の浸入を防ぐことができる。
第1貫通孔の孔径がφ0.9mm未満の場合、及び第2貫通孔の孔径がφ0.9mm未満の場合には、孔明けを行う型の管理が困難になる。一方、第1貫通孔の孔径がφ3mm超過の場合、及び第2貫通孔の孔径がφ1.5mm超過の場合には、耐被水性が悪化する。
【0011】
また、上記大径カバー部の内周面と上記測定ガス側電極との隙間D1は、1〜2.5mmの範囲内にあり、上記小径カバー部の内径D2は、φ3.8〜9.8mmの範囲内にあり、上記被測定ガス側電極の先端から上記段部の基端面までの距離D3は、1〜6mmの範囲内にあってもよい。
この場合には、カバー内において、被測定ガス側電極の近傍における被測定ガスの流速を高く維持することができ、ガスセンサの測定の応答性を高く維持することができる。
【0012】
隙間D1がφ1mm未満の場合には、大径カバー部の内周面と被測定ガス側電極とが干渉するおそれが生じる。一方、隙間D1がφ2.5mm超過の場合には、ガスセンサの応答性が悪化するおそれがある。
内径D2がφ3.8mm未満の場合には、ガスセンサの応答性が悪化するおそれがある。一方、内径D2がφ9.8mm超過の場合には、大径カバー部と小径カバー部との2段形状を成立させることが困難になる。
距離D3が1mm未満の場合には、固体電解質体の先端と段部の基端面とが干渉するおそれが生じる。一方、距離D3が6mm超過の場合には、ガスセンサの応答性が悪化するおそれがある。
【実施例】
【0013】
以下に、ガスセンサにかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例のガスセンサ1は、図1に示すごとく、固体電解質体2、測定ガス側電極21、基準ガス側電極22、ヒータ3、ハウジング4及びカバー5を備えている。固体電解質体2は、酸素イオン伝導性を有し、かつ筒状の外周部23の先端が閉塞されたコップ形状を有している。測定ガス側電極21は、固体電解質体2の外周部23の外周面201に設けられており、基準ガス側電極22は、外周部23の内周面202に設けられている。ヒータ3は、固体電解質体2の内周側に配置されており、固体電解質体2を加熱するよう構成されている。ハウジング4は、固体電解質体2を内周側に保持する筒形状を有している。カバー5は、固体電解質体2を覆うとともに、その基端部がハウジング4に取り付けられている。
【0014】
カバー5は、固体電解質体2の外周側に位置する大径カバー部51と、大径カバー部51の先端側に隣接して、大径カバー部51よりも縮径して形成された小径カバー部52と、小径カバー部52と大径カバー部51とを繋ぐ段部53とを有している。小径カバー部52の先端には、孔の全周が打ち抜かれた第1貫通孔521が形成されている。段部53の周方向の複数個所には、孔の全周が打ち抜かれた第2貫通孔531が形成されている。
【0015】
以下に、本例のガスセンサ1について、図1図6を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例のガスセンサ1は、車両の排気管内に配置されて使用され、排気管内を流れる排気ガスを被測定ガスGとして、排気ガス中の酸素濃度を測定するものである。また、ガスセンサ1は、排気管内の、触媒が配置された位置よりも下流側の位置に配置され、排気管内の排気ガスの流れFに略直交して配置される。
なお、ガスセンサ1は、酸素濃度センサとする以外にも、A/F(空燃比)センサ等とすることができる。
【0016】
同図に示すごとく、固体電解質体2の外周部23は、ハウジング4の内周穴に挿通される挿通部分231が、先端側に行くほど縮径する傾斜円筒形状に形成されており、ハウジング4から先端側に突出する突出部分232が、ガスセンサ1の軸線方向Lに平行な円筒形状に形成されている。突出部分232の先端は、半球状の先端部24によって閉塞されている。測定ガス側電極21は、突出部分232の外周面201の全周に設けられており、基準ガス側電極22は、突出部分232の内周面202の全周に設けられている。また、固体電解質体2、測定ガス側電極21及び基準ガス側電極22によってガスセンサ素子が構成されている。
ヒータ3は、セラミックス基板に、通電によって発熱する導体層を設けて構成されている。ヒータ3における導体層は、被測定ガス側電極21及び基準ガス側電極22が設けられた軸線方向Lの範囲に設けられている。カバー5は、大径カバー部51、段部53及び小径カバー部52が形成された一重構造を有するものである。
【0017】
カバー5の大径カバー部51及び小径カバー部52は、円筒形状に形成されており、軸線方向Lに平行に配置されている。カバー5は、固体電解質体2と同一軸線状に配置されている。固体電解質体2の突出部分232は、大径カバー部51の内周側に配置されており、突出部分232の先端と、カバー5の段部53の基端面530との間には、所定の隙間D1が形成されている。
小径カバー部52の先端における第1貫通孔521の孔径はφ0.9〜3mmの範囲内にある。第1貫通孔521は、小径カバー部52の先端の中心位置の1箇所に形成されている。段部53における第2貫通孔531の孔径はφ0.9〜1.5mmの範囲内にある。第2貫通孔531は、固体電解質体2及びカバー5の中心軸線回りである周方向の複数箇所に等間隔に形成されている。
【0018】
カバー5、及びカバー5とその周辺との間の寸法関係は、次のようにしている。
図1に示すごとく、大径カバー部51の内周面と測定ガス側電極21との間の径方向の隙間D1は、1〜2.5mmの範囲内にある。また、小径カバー部52の内径D2は、φ3.8〜9.8mmの範囲内にある。また、測定ガス側電極21の先端211から段部53の基端面530までの軸線方向Lの距離D3は、1〜6mmの範囲内にある。
【0019】
図2には、隙間D1(mm)と、固体電解質体2の被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)との関係を示す。同図において、内径D2はφ4mmとし、距離D3は、3.5mmとし、内径D4はφ10mmとした。同図に示すように、隙間D1が2.5mmよりも大きくなると被測定ガスGの流速が低下することが分かる。この理由は、隙間D1が大きくなると、大径カバー部51と固体電解質体2の突出部分232との間に、被測定ガスGが流入する空間が広くなり過ぎるためであると考える。一方、隙間D1が2.5mm以下である場合には、被測定ガスGの流速が低下せず、ガスセンサ1による測定の応答性を高く維持することができる。また、大径カバー部51の内周面と測定ガス側電極21との干渉を避けるために、隙間D1はφ1mm以上とすることが好ましい。
【0020】
図3には、内径D2(mm)と、固体電解質体2の被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)との関係を示す。同図において、隙間D1は2.3mmとし、距離D3は、3.5mmとし、内径D4はφ10mmとした。同図に示すように、内径D2がφ3.8mmよりも小さくなると被測定ガスGの流速が低下することが分かる。この理由は、内径D2が小さくなると、小径カバー部52内を被測定ガスGが流れにくくなるためであると考える。一方、内径D2がφ3.8mm以上である場合には、被測定ガスGの流速が低下せず、ガスセンサ1による測定の応答性を高く維持することができる。また、大径カバー部51と小径カバー部52との2段形状を成立させるためには、内径D2はφ9.8mm以下とすることが好ましい。
【0021】
図4には、距離D3(mm)と、固体電解質体2の被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)との関係を示す。同図において、隙間D1は2.3mmとし、内径D2はφ4mmとし、内径D4はφ10mmとした。同図に示すように、距離D3が6mmよりも大きくなると被測定ガスGの流速が低下することが分かる。この理由は、距離D3が大きくなると、大径カバー部51内と小径カバー部52内との間を被測定ガスGが通過しにくくなるためであると考える。一方、距離D3が6mm以下である場合には、被測定ガスGの流速が低下せず、ガスセンサ1による測定の応答性を高く維持することができる。また、固体電解質体2の先端部24と段部53の基端面530との干渉を避けるためには、距離D3はφ1mm以上とすることが好ましい。
【0022】
また、図1に示すごとく、大径カバー部51の内径D4は、φ8〜14mmの範囲内にある。大径カバー部51の内径D4がφ8mm未満になると、大径カバー部51が固体電解質体2における被測定ガス側電極21と干渉するおそれが生じる。一方、大径カバー部51の内径D4がφ14mm超過になると、大径カバー部51がその周囲の部品と干渉するおそれが生じる。
【0023】
また、第2貫通孔531の全体の開口面積は、14〜25mm2の範囲内にある。第2貫通孔531の全体の開口面積が14mm2未満になると、カバー5内へ被測定ガスGが流入しにくくなり、ガスセンサ1による測定の応答性が悪化するおそれがある。一方、第2貫通孔531の全体の開口面積が25mm2超過になると、第2貫通孔531からカバー5内へ水分が浸入しやすくなり、ガスセンサ1の耐被水性が悪化するおそれがある。
【0024】
図5には、カバー5の段部53における第2貫通孔531の孔径(mm)と、固体電解質体2の被水量(μL)との関係を示す。同図に示すように、第2貫通孔531の孔径がφ1.5mmよりも大きくなると、固体電解質体2の被水量が多くなることが分かる。この理由は、第2貫通孔531の孔径が大きくなると、被測定ガスGに混ざって飛散する水分が第2貫通孔531を通過してカバー5内に浸入しやすくなるためであると考える。一方、第2貫通孔531の孔径がφ1.5mm以下である場合には、固体電解質体2が被水しにくくなり、ガスセンサ1の耐被水性を高く維持することができる。また、第2貫通孔531の孔明けを行う型の管理を容易にするためには、第2貫通孔531の孔径はφ0.9mm以上とすることが好ましい。
【0025】
本例のガスセンサ1においては、カバー5を大径カバー部51と小径カバー部52との2段形状に形成している。そして、小径カバー部52の先端には、孔の全周が打ち抜かれた第1貫通孔521を形成し、大径カバー部51と小径カバー部52とを繋ぐ段部53の周方向の複数個所には、孔の全周が打ち抜かれた第2貫通孔531を形成している。
このカバー5の構成により、被測定ガスGが、第1貫通孔521及び第2貫通孔531を介して、カバー5の外側と内側との間を通過しやすくなる。すなわち、このカバー5の構成により、被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速を高めることができる。そして、被測定ガスGは、固体電解質体2における被測定ガス側電極21に到達しやすくなり、また、被測定ガス側電極21からカバー5の外部へ排出されやすくなる。そのため、ガスセンサ1による酸素濃度を測定する応答性を高めることができる。
【0026】
図6には、固体電解質体2の測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)と、ガスセンサ1の応答性(応答時間)(ms)との関係を示す。同図に示すように、被測定ガスGの流速が速くなるほど、応答性が改善される(応答時間が短くなる)。このことより、被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速を高めることが、ガスセンサ1の応答性を高めることに効果的に寄与することが分かる。
【0027】
また、ガスセンサ1の応答性が高められることにより、ヒータ3の出力を抑えて、固体電解質体2(ガスセンサ素子)の温度を低くすることが可能になる。これにより、固体電解質体2に、水分による被水ストレス、割れ等が生じにくくすることができ、ガスセンサ1の耐被水性を確保することができる。また、第1貫通孔521の孔径をφ3mm以下と小さくし、第2貫通孔531の孔径をφ1.5mm以下として小さくすることによっても、水分がカバー5内に浸入しにくくして、耐被水性を確保することができる。
それ故、本例のガスセンサ1によれば、耐被水性を確保して、測定の応答性を高めることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ガスセンサ
2 固体電解質体
201 外周面
202 内周面
21 被測定ガス側電極
22 基準ガス側電極
23 外周部
3 ヒータ
4 ハウジング
5 カバー
51 大径カバー部
52 小径カバー部
521 第1貫通孔
53 段部
531 第2貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6