【実施例】
【0013】
以下に、ガスセンサにかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例のガスセンサ1は、
図1に示すごとく、固体電解質体2、測定ガス側電極21、基準ガス側電極22、ヒータ3、ハウジング4及びカバー5を備えている。固体電解質体2は、酸素イオン伝導性を有し、かつ筒状の外周部23の先端が閉塞されたコップ形状を有している。測定ガス側電極21は、固体電解質体2の外周部23の外周面201に設けられており、基準ガス側電極22は、外周部23の内周面202に設けられている。ヒータ3は、固体電解質体2の内周側に配置されており、固体電解質体2を加熱するよう構成されている。ハウジング4は、固体電解質体2を内周側に保持する筒形状を有している。カバー5は、固体電解質体2を覆うとともに、その基端部がハウジング4に取り付けられている。
【0014】
カバー5は、固体電解質体2の外周側に位置する大径カバー部51と、大径カバー部51の先端側に隣接して、大径カバー部51よりも縮径して形成された小径カバー部52と、小径カバー部52と大径カバー部51とを繋ぐ段部53とを有している。小径カバー部52の先端には、孔の全周が打ち抜かれた第1貫通孔521が形成されている。段部53の周方向の複数個所には、孔の全周が打ち抜かれた第2貫通孔531が形成されている。
【0015】
以下に、本例のガスセンサ1について、
図1〜
図6を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例のガスセンサ1は、車両の排気管内に配置されて使用され、排気管内を流れる排気ガスを被測定ガスGとして、排気ガス中の酸素濃度を測定するものである。また、ガスセンサ1は、排気管内の、触媒が配置された位置よりも下流側の位置に配置され、排気管内の排気ガスの流れFに略直交して配置される。
なお、ガスセンサ1は、酸素濃度センサとする以外にも、A/F(空燃比)センサ等とすることができる。
【0016】
同図に示すごとく、固体電解質体2の外周部23は、ハウジング4の内周穴に挿通される挿通部分231が、先端側に行くほど縮径する傾斜円筒形状に形成されており、ハウジング4から先端側に突出する突出部分232が、ガスセンサ1の軸線方向Lに平行な円筒形状に形成されている。突出部分232の先端は、半球状の先端部24によって閉塞されている。測定ガス側電極21は、突出部分232の外周面201の全周に設けられており、基準ガス側電極22は、突出部分232の内周面202の全周に設けられている。また、固体電解質体2、測定ガス側電極21及び基準ガス側電極22によってガスセンサ素子が構成されている。
ヒータ3は、セラミックス基板に、通電によって発熱する導体層を設けて構成されている。ヒータ3における導体層は、被測定ガス側電極21及び基準ガス側電極22が設けられた軸線方向Lの範囲に設けられている。カバー5は、大径カバー部51、段部53及び小径カバー部52が形成された一重構造を有するものである。
【0017】
カバー5の大径カバー部51及び小径カバー部52は、円筒形状に形成されており、軸線方向Lに平行に配置されている。カバー5は、固体電解質体2と同一軸線状に配置されている。固体電解質体2の突出部分232は、大径カバー部51の内周側に配置されており、突出部分232の先端と、カバー5の段部53の基端面530との間には、所定の隙間D1が形成されている。
小径カバー部52の先端における第1貫通孔521の孔径はφ0.9〜3mmの範囲内にある。第1貫通孔521は、小径カバー部52の先端の中心位置の1箇所に形成されている。段部53における第2貫通孔531の孔径はφ0.9〜1.5mmの範囲内にある。第2貫通孔531は、固体電解質体2及びカバー5の中心軸線回りである周方向の複数箇所に等間隔に形成されている。
【0018】
カバー5、及びカバー5とその周辺との間の寸法関係は、次のようにしている。
図1に示すごとく、大径カバー部51の内周面と測定ガス側電極21との間の径方向の隙間D1は、1〜2.5mmの範囲内にある。また、小径カバー部52の内径D2は、φ3.8〜9.8mmの範囲内にある。また、測定ガス側電極21の先端211から段部53の基端面530までの軸線方向Lの距離D3は、1〜6mmの範囲内にある。
【0019】
図2には、隙間D1(mm)と、固体電解質体2の被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)との関係を示す。同図において、内径D2はφ4mmとし、距離D3は、3.5mmとし、内径D4はφ10mmとした。同図に示すように、隙間D1が2.5mmよりも大きくなると被測定ガスGの流速が低下することが分かる。この理由は、隙間D1が大きくなると、大径カバー部51と固体電解質体2の突出部分232との間に、被測定ガスGが流入する空間が広くなり過ぎるためであると考える。一方、隙間D1が2.5mm以下である場合には、被測定ガスGの流速が低下せず、ガスセンサ1による測定の応答性を高く維持することができる。また、大径カバー部51の内周面と測定ガス側電極21との干渉を避けるために、隙間D1はφ1mm以上とすることが好ましい。
【0020】
図3には、内径D2(mm)と、固体電解質体2の被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)との関係を示す。同図において、隙間D1は2.3mmとし、距離D3は、3.5mmとし、内径D4はφ10mmとした。同図に示すように、内径D2がφ3.8mmよりも小さくなると被測定ガスGの流速が低下することが分かる。この理由は、内径D2が小さくなると、小径カバー部52内を被測定ガスGが流れにくくなるためであると考える。一方、内径D2がφ3.8mm以上である場合には、被測定ガスGの流速が低下せず、ガスセンサ1による測定の応答性を高く維持することができる。また、大径カバー部51と小径カバー部52との2段形状を成立させるためには、内径D2はφ9.8mm以下とすることが好ましい。
【0021】
図4には、距離D3(mm)と、固体電解質体2の被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)との関係を示す。同図において、隙間D1は2.3mmとし、内径D2はφ4mmとし、内径D4はφ10mmとした。同図に示すように、距離D3が6mmよりも大きくなると被測定ガスGの流速が低下することが分かる。この理由は、距離D3が大きくなると、大径カバー部51内と小径カバー部52内との間を被測定ガスGが通過しにくくなるためであると考える。一方、距離D3が6mm以下である場合には、被測定ガスGの流速が低下せず、ガスセンサ1による測定の応答性を高く維持することができる。また、固体電解質体2の先端部24と段部53の基端面530との干渉を避けるためには、距離D3はφ1mm以上とすることが好ましい。
【0022】
また、
図1に示すごとく、大径カバー部51の内径D4は、φ8〜14mmの範囲内にある。大径カバー部51の内径D4がφ8mm未満になると、大径カバー部51が固体電解質体2における被測定ガス側電極21と干渉するおそれが生じる。一方、大径カバー部51の内径D4がφ14mm超過になると、大径カバー部51がその周囲の部品と干渉するおそれが生じる。
【0023】
また、第2貫通孔531の全体の開口面積は、14〜25mm
2の範囲内にある。第2貫通孔531の全体の開口面積が14mm
2未満になると、カバー5内へ被測定ガスGが流入しにくくなり、ガスセンサ1による測定の応答性が悪化するおそれがある。一方、第2貫通孔531の全体の開口面積が25mm
2超過になると、第2貫通孔531からカバー5内へ水分が浸入しやすくなり、ガスセンサ1の耐被水性が悪化するおそれがある。
【0024】
図5には、カバー5の段部53における第2貫通孔531の孔径(mm)と、固体電解質体2の被水量(μL)との関係を示す。同図に示すように、第2貫通孔531の孔径がφ1.5mmよりも大きくなると、固体電解質体2の被水量が多くなることが分かる。この理由は、第2貫通孔531の孔径が大きくなると、被測定ガスGに混ざって飛散する水分が第2貫通孔531を通過してカバー5内に浸入しやすくなるためであると考える。一方、第2貫通孔531の孔径がφ1.5mm以下である場合には、固体電解質体2が被水しにくくなり、ガスセンサ1の耐被水性を高く維持することができる。また、第2貫通孔531の孔明けを行う型の管理を容易にするためには、第2貫通孔531の孔径はφ0.9mm以上とすることが好ましい。
【0025】
本例のガスセンサ1においては、カバー5を大径カバー部51と小径カバー部52との2段形状に形成している。そして、小径カバー部52の先端には、孔の全周が打ち抜かれた第1貫通孔521を形成し、大径カバー部51と小径カバー部52とを繋ぐ段部53の周方向の複数個所には、孔の全周が打ち抜かれた第2貫通孔531を形成している。
このカバー5の構成により、被測定ガスGが、第1貫通孔521及び第2貫通孔531を介して、カバー5の外側と内側との間を通過しやすくなる。すなわち、このカバー5の構成により、被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速を高めることができる。そして、被測定ガスGは、固体電解質体2における被測定ガス側電極21に到達しやすくなり、また、被測定ガス側電極21からカバー5の外部へ排出されやすくなる。そのため、ガスセンサ1による酸素濃度を測定する応答性を高めることができる。
【0026】
図6には、固体電解質体2の測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速(m/s)と、ガスセンサ1の応答性(応答時間)(ms)との関係を示す。同図に示すように、被測定ガスGの流速が速くなるほど、応答性が改善される(応答時間が短くなる)。このことより、被測定ガス側電極21の近傍における被測定ガスGの流速を高めることが、ガスセンサ1の応答性を高めることに効果的に寄与することが分かる。
【0027】
また、ガスセンサ1の応答性が高められることにより、ヒータ3の出力を抑えて、固体電解質体2(ガスセンサ素子)の温度を低くすることが可能になる。これにより、固体電解質体2に、水分による被水ストレス、割れ等が生じにくくすることができ、ガスセンサ1の耐被水性を確保することができる。また、第1貫通孔521の孔径をφ3mm以下と小さくし、第2貫通孔531の孔径をφ1.5mm以下として小さくすることによっても、水分がカバー5内に浸入しにくくして、耐被水性を確保することができる。
それ故、本例のガスセンサ1によれば、耐被水性を確保して、測定の応答性を高めることができる。