(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンク(2)の貫通孔(2b)に組み付けられ、前記燃料タンク内の燃料ポンプ(52)を駆動するために駆動回路(13)を収容するタンク蓋ユニット(10)において、
燃料蒸気を透過させる透過性樹脂により形成され、前記貫通孔を閉塞する蓋本体部(11)と、
前記透過性樹脂により前記蓋本体部の上方に一体成形され、前記駆動回路を保護する保護空間(120)を前記燃料タンクの外部空間(3)から仕切る回路筐体部(12)であって、前記外部空間と連通する通気空間(124)を前記蓋本体部との間にあける底部(121,2121)と、前記底部の上方において前記保護空間を囲む側部(122)と、前記側部において前記保護空間と前記外部空間との間を貫通する通気孔(126)とを、有する回路筐体部と、
前記底部を経由して前記燃料ポンプと前記駆動回路との間を延伸するように、当該延伸方向の中間部(152)が前記底部に埋設されるターミナル(15)であって、前記底部と前記中間部との界面(121d)が前記通気孔よりも上方において、前記保護空間に露出するターミナルと、
前記側部のうち前記外部空間に面する外側面(122b)に装着されて前記通気孔を覆うことにより、前記通気孔から前記外部空間への前記燃料蒸気の排出を許容し且つ前記外部空間から前記通気孔への液体の侵入を規制する防液通気膜(19)とを、備えることを特徴とするタンク蓋ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献1に開示のタンク蓋ユニットにおいて、燃料タンク内の燃料が気化した燃料蒸気は、蓋本体部及び回路筐体部を形成する樹脂によっては、蓋本体部とその上方の回路筐体部とを順次透過して保護空間に侵入することが、想定される。このように保護空間に侵入した燃料蒸気は、当該保護空間にて保護される駆動回路と接触し続けることで、駆動回路の故障を招くおそれがあるため、改善が必要となる。
【0006】
そこで、本発明者らは、外部空間と連通する通気空間を蓋本体部と回路筐体部の底部との間にあける技術につき、研究を行ってきた。かかる技術によれば、蓋本体部を透過した燃料蒸気は、通気空間から外部空間に逃がされることで、回路筐体部の底部における透過量を抑えられ得る。
【0007】
しかしながら、本発明者らのさらなる鋭意研究の結果、保護空間への燃料蒸気の侵入は、回路筐体部の底部を透過する経路だけでなく、他の経路により惹起されることが判明した。ここで他の経路とは、特許文献1に開示のタンク蓋ユニットでは明確でないものの、回路筐体部の底部を経由して燃料ポンプと駆動回路との間を延伸するターミナルのうち、延伸方向の中間部が同底部に埋設されることに起因して、生じる。即ち、ターミナルの延伸方向中間部が埋設先の底部となす界面には、クリアランスが生成されることで、かかる界面の露出する保護空間には、当該クリアランスを通じて燃料蒸気が侵入してしまうのである。
【0008】
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、駆動回路の故障を回避するタンク蓋ユニット、並びにそうしたタンク蓋ユニットの設けられる燃料供給装置を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために開示された第一の発明としてのタンク蓋ユニットは、
燃料タンク(2)の貫通孔(2b)に組み付けられ、燃料タンク内の燃料ポンプ(52)を駆動するために駆動回路(13)を収容するタンク蓋ユニット(10)において、
燃料蒸気を透過させる透過性樹脂により形成され、貫通孔を閉塞する蓋本体部(11)と、
透過性樹脂により蓋本体部の上方に一体成形され、駆動回路を保護する保護空間(120)を燃料タンクの外部空間(3)から仕切る回路筐体部(12)であって、外部空間と連通する通気空間(124)を蓋本体部との間にあける底部(121,2121)と、底部の上方において保護空間を囲む側部(122)と、側部において保護空間と外部空間との間を貫通する通気孔(126)とを、有する回路筐体部と、
底部を経由して燃料ポンプと駆動回路との間を延伸するように、当該延伸方向の中間部(152)が底部に埋設されるターミナル(15)であって、底部と中間部との界面(121d)が通気孔よりも上方において、保護空間に露出するターミナルと、
側部のうち外部空間に面する外側面(122b)に装着されて通気孔を覆うことにより、通気孔から外部空間への燃料蒸気の排出を許容し且つ外部空間から通気孔への液体の侵入を規制する防液通気膜(19)とを、備えることを特徴とする。
【0010】
こうした第一の発明によると、燃料タンクの外部空間と連通する通気空間が蓋本体部とその上方回路筐体部の底部との間にあけられる。故に、蓋本体部を透過した燃料蒸気は、通気空間から外部空間へ逃がされることで、回路筐体部の底部における透過量を抑えられ得る。
【0011】
また、第一の発明では、回路筐体部の底部を経由して燃料ポンプと駆動回路との間を延伸するターミナルのうち、延伸方向の中間部が同底部に埋設される。故に、ターミナルの中間部が埋設先の底部となす界面には、クリアランスが生成されることで、界面の露出する保護空間には、当該クリアランスを通じた燃料蒸気の侵入が懸念される。そこで、第一の発明によると、回路筐体部の底部とターミナルの中間部との界面は、通気孔よりも上方において保護空間に露出する。これによれば、保護空間へ侵入した燃料蒸気は、空気よりも重い比重により、界面の露出箇所よりも下方となる通気孔へと導かれるため、駆動回路には到達し難くなる。
【0012】
ここで第一の発明によると、回路筐体部の側部において保護空間と外部空間との間を貫通する通気孔からは、それを覆う防液通気膜により、外部空間への燃料蒸気の排出が許容される。故に、保護空間へ侵入した燃料蒸気は、通気孔から外部空間へと逐次消散されることで、駆動回路を保護する保護空間には溜まり難くなる。さらに第一の発明によると、外部空間から通気孔へは、それを覆う防液通気膜により、液体の侵入が規制される。故に、通気孔よりも内側の保護空間にて保護される駆動回路には、外部空間の液体も到達し難くなる。しかも、第一の発明において防液通気膜は、回路筐体部の側部のうち外部空間に面する外側面に装着されるので、外部空間の液体圧力により押圧されても、当該外側面からは剥がれ難くなる。このように剥がれ難い防液通気膜は、燃料蒸気の排出許容機能及び液体の侵入規制機能を、長きに亘って発揮できる。
【0013】
以上の如き第一の発明によれば、燃料タンク内の燃料蒸気が駆動回路に接触し続けることは勿論、外部空間の液体が駆動回路に接触することも抑制して、駆動回路の故障を回避することが可能となる。
【0014】
また、開示された第二の発明としての燃料供給装置は、
燃料タンク内から燃料タンク外へ向かって燃料を供給する燃料ポンプ(52)と共に、
第一発明のタンク蓋ユニット(10)が設けられることを特徴とする。
【0015】
このように、第一の発明のタンク蓋ユニットが設けられる第二の発明の燃料供給装置によれば、駆動回路の故障を回避して、当該駆動回路により駆動される燃料ポンプの作動信頼性を確保することが、可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0018】
(第一実施形態)
図1〜3に示すように、本発明の第一実施形態による燃料供給装置1は、車両の燃料タンク2に搭載される。燃料供給装置1は、燃料タンク2内から同タンク2外の内燃機関へと燃料を供給する。尚、燃料タンク2への燃料供給装置1の搭載状態を示す各
図1〜3の上下方向及び横方向は、水平面上における車両の鉛直方向及び水平方向と実質的に一致している。
【0019】
(基本構成)
まず、燃料供給装置1の基本構成につき、説明する。燃料供給装置1は、タンク蓋ユニット10、サブタンク20、保持カバー30、調整機構40、ポンプユニット50及び液面センサ60を備えている。ここで、燃料供給装置1のうちタンク蓋ユニット10以外の要素20,30,40,50,60は、燃料タンク2内に収容される。
【0020】
タンク蓋ユニット10は、樹脂により中空状に形成された燃料タンク2のうち天板部2aを貫通する貫通孔2bに、組み付けられている。
図1〜8に示すようにタンク蓋ユニット10は、蓋本体部11、回路筐体部12、駆動回路13、放熱カバー部14、ポンプターミナル15、センサターミナル16、接続ターミナル17及び燃料管部18を有している。
【0021】
図1〜3に示すように蓋本体部11は、樹脂により全体として略平板状に形成されている。蓋本体部11は、天板部2aの貫通孔2bに外側から嵌合組み付けされることで、燃料タンク2内の燃料よりも上方にて当該貫通孔2bを閉塞している。かかる閉塞状態下、燃料タンク2内の燃料が気化した燃料蒸気は、同燃料よりも上方に溜まる。ここで、蓋本体部11の形成樹脂としては、燃料蒸気を透過させる透過性樹脂(以下、単に「透過性樹脂」という)、例えば耐燃料性に優れたポリアセタール樹脂(POM)等が、採用されている。かかる透過性樹脂の採用により蓋本体部11では、燃料タンク2内に溜まった燃料蒸気が透過可能となっている。
【0022】
回路筐体部12は、透過性樹脂により蓋本体部11と一体成形されている。
図6,7に示すように回路筐体部12は、内部空間を保護空間120とする有底カップ状に、形成されている。回路筐体部12は、燃料タンク2の外部空間3において、蓋本体部11の上方に位置している。かかる位置関係により回路筐体部12の底部(以下、「筐体底部」という)121では、燃料タンク2内に溜まって蓋本体部11を透過した燃料蒸気が、保護空間120まで透過可能となっている。
【0023】
駆動回路13は、ポンプユニット50のうち燃料ポンプ52(
図2参照)を駆動するために、保護空間120に収容される電子回路である。駆動回路13は、例えばIC、チップコンデンサ、抵抗素子等といった複数の回路素子(図示しない)を、プリント配線基板130の両面乃至は片面に実装してなる。プリント配線基板130は、例えばガラスエポキシ基板等であり、平板状に形成されている。回路筐体部12では、筐体底部121よりも上方において保護空間120を囲む側部(以下、「筐体側部」という)122により、プリント配線基板130が保持されている。かかる保持形態によりプリント配線基板130は、保護空間120のうち筐体底部121よりも上方へと離間した離間箇所となる空間上部120aに、配置されている。
【0024】
放熱カバー部14は、金属により蓋状に形成されている。放熱カバー部14は、回路筐体部12のうち筐体側部122の上端縁部に嵌合組み付けされることで、筐体側部122の開口部122aを閉塞している。それと共に放熱カバー部14は、駆動回路13のうちプリント配線基板130に実装される回路素子の中でも、特に発熱量の多いIC(図示しない)とは放熱ゲルを介して面接触することで、放熱機能を発揮可能となっている。こうした構成の放熱カバー部14と共に回路筐体部12とは、協働して保護空間120を覆うことで、燃料タンク2の外部空間3から当該保護空間120を液密且つ気密に仕切って、駆動回路13を保護している。
【0025】
ポンプターミナル15は、金属により段付きの細長平板状に形成され、互いに間隔をあけて上下方向に延伸するように一対設けられている。各ポンプターミナル15において延伸方向の端部150,151間の中間部152は、透過性樹脂への金属のインサート成形により、蓋本体部11及び筐体底部121に埋設されている。各ポンプターミナル15の一端部150は、燃料タンク2内となる下方へ突出することで、ポンプユニット50のうち燃料ポンプ52との電気接続に供されている。各ポンプターミナル15の他端部151は、筐体底部121から上方の保護空間120へと突出することで、当該空間120のうち空間上部120aにてプリント配線基板130に電気接続されている。こうした構成により各ポンプターミナル15は、蓋本体部11及び筐体底部121を経由することで、燃料ポンプ52と駆動回路13との間を延伸している。尚、各ポンプターミナル15の形成金属としては、例えば耐燃料性に優れたすずめっき黄銅等が、採用されている。また、各ポンプターミナル15とプリント配線基板130との電気接続は、それらターミナル15の上端部151がプリント配線基板130のスルーホールを下方から上方に貫通して半田付けされることで、実現されている。
【0026】
図3,7に示すようにセンサターミナル16は、金属により略L字型の細長平板状に形成され、互いに間隔をあけて上下方向に延伸するように一対設けられている。各センサターミナル16において延伸方向の端部160,161間の中間部162は、透過性樹脂への金属のインサート成形により、蓋本体部11及び筐体底部121に埋設されている。各センサターミナル16の一端部160は、燃料タンク2内となる下方へ突出することで、液面センサ60との電気接続に供されている。各センサターミナル16の他端部161は、外部空間3に露出する側方へと突出することで、内燃機関のエンジン制御回路(図示しない)と電気接続可能となっている。こうした構成により、液面センサ60のセンサ信号がエンジン制御回路へと出力される。尚、各センサターミナル16の形成金属としては、ポンプターミナル15と同様な例えばすずめっき黄銅等が、採用されている。
【0027】
図3,7,8に示すように接続ターミナル17は、金属により略L字型の細長平板状に形成され、互いに間隔をあけて横方向に延伸するように複数設けられている。各接続ターミナル17において延伸方向の端部170,171間の中間部は、透過性樹脂への金属のインサート成形により、筐体側部122に埋設されている。各接続ターミナル17の一端部170は、筐体側部122から内側の保護空間120へと突出することで、当該空間120にて駆動回路13と電気接続されている。各接続ターミナル17の他端部171は、外部空間3に露出する側方へと突出することで、エンジン制御回路と電気接続可能となっている。こうした構成により、燃料ポンプ52の駆動がエンジン制御回路からの指令に従って駆動回路13を介して制御されるようになっている。尚、各接続ターミナル17の形成金属としては、ポンプターミナル15と同様な例えばすずめっき黄銅等が、採用されている。
【0028】
図1〜4に示すように燃料管部18は、透過性樹脂により蓋本体部11と一体成形されている。燃料管部18は、燃料タンク2内にて蓋本体部11から下方へ突出することで、ポンプユニット50のうち燃料ポンプ52の下流における燃料フィルタ53との連結に供されている。それと共に燃料管部18は、蓋本体部11から上方の外部空間3に突出することで、内燃機関の連結管部(図示しない)と連結されている。こうした構成により、後に詳述の如く燃料ポンプ52から燃料フィルタ53を通して供給される燃料が、燃料タンク2外の内燃機関へと導かれるようになっている。
【0029】
図1〜3に示すようにサブタンク20は、樹脂により有底カップ状に形成されている。サブタンク20は、燃料タンク2の底部2c上に設置されている。サブタンク20は、ポンプユニット50のうちジェットポンプ55により燃料タンク2内から移送される燃料を、貯留する。
【0030】
図1〜4に示すように保持カバー30は、樹脂により蓋状に形成されている。保持カバー30は、サブタンク20の上端縁部に嵌合組み付けされている。かかる嵌合形態により保持カバー30は、燃料タンク2内においてサブタンク20の開口部を閉塞している。保持カバー30は、上下方向に貫通する保持孔31を、有している。それと共に保持カバー30は、上方に向かって円筒状に延出する収容部32を、保持孔31の両側に一つずつ有している。
【0031】
図1に示すように調整機構40は、支柱41及び弾性部材42を、それぞれ一対ずつ有している。各支柱41は、金属により円筒状に形成され、上下方向に延伸して配置されている。各支柱41の上端部は、蓋本体部11の下部に装着されている。各支柱41は、上端部よりも下方において、それぞれ対応する収容部32に挿入されている。かかる挿入形態により各支柱41は、保持カバー30に対して上下方向にスライド可能となっている。各弾性部材42は、金属製のコイルスプリングからなり、それぞれ対応する収容部32と蓋本体部11との間に介装されている。各弾性部材42は、収容部32と蓋本体部11との相対位置に応じて圧縮弾性変形することで、復原力を発生する。かかる復原力の発生により各弾性部材42は、保持カバー30に対して一体に結合されているサブタンク20を、燃料タンク2のうち下方の底部2c側へと向かって押圧する。
【0032】
図2に示すようにポンプユニット50は、その上部を除いて、サブタンク20内に収容されている。ポンプユニット50は、サクションフィルタ51、燃料ポンプ52、燃料フィルタ53及びプレッシャレギュレータ54及びジェットポンプ55を有している。
【0033】
サクションフィルタ51は、ポンプユニット50の最下部に設けられている。サクションフィルタ51は、燃料ポンプ52の吸入口に連結されている。サクションフィルタ51は、サブタンク20内から燃料ポンプ52へ吸入される燃料濾過して、当該燃料中の大きな異物を除去する。燃料ポンプ52は、ポンプユニット50においてサクションフィルタ51の上側に設けられている。燃料ポンプ52は、湾曲自在なフレキシブル配線56を介して、各ポンプターミナル15と電気接続されている。かかる電気接続下において燃料ポンプ52は、駆動回路13からの駆動制御を受けて作動することで、サクションフィルタ51からの吸入燃料を加圧して吐出する。
【0034】
図1〜4に示すように燃料フィルタ53は、ポンプユニット50において燃料ポンプ52の周囲に設けられている。燃料フィルタ53は、例えばハニカム状濾材等のフィルタエレメント(図示しない)を、フィルタケース53a内に収容してなる。フィルタケース53aは、保持カバー30を上下方向に貫通した状態で、保持孔31の内周部により保持されている。それと共にフィルタケース53aは、燃料ポンプ52の吐出口に連結されていると共に、湾曲自在なフレキシブルチューブ57を介して燃料管部18に連結されている。こうした構成により燃料フィルタ53は、燃料ポンプ52からフィルタケース53a内へ吐出されてから燃料管部18へと向かう燃料を濾過して、当該燃料中の微細な異物を除去する。
【0035】
図2に示すようにプレッシャレギュレータ54は、ポンプユニット50において燃料フィルタ53の側方に設けられている。プレッシャレギュレータ54は、フィルタケース53aのうち燃料管部18へ向かう経路の形成部位に連結されている。プレッシャレギュレータ54は、燃料フィルタ53から燃料管部18へ供給される燃料の圧力を、調整する。ジェットポンプ55は、プレッシャレギュレータ54のうち調圧時の余剰燃料を排出する排出口に、連結されている。ジェットポンプ55は、プレッシャレギュレータ54から排出される余剰燃料の噴出により負圧を発生させることで、燃料タンク2内の燃料をサブタンク20内へと移送する。
【0036】
図1〜4に示すように液面センサ60は、サブタンク20の外周部に嵌合装着されている。液面センサ60は、本実施形態ではセンダゲージであり、湾曲自在なフレキシブル配線61を介して各センサターミナル16と電気接続されている。かかる電気接続下において液面センサ60は、燃料タンク2内の燃料に浮かぶフロート62の上下動に応じたアーム63の回転により、当該回転の角度を検出する。ここでアーム63の回転角度は、燃料タンク2内における燃料の液面高さに追従したものとなるので、液面センサ60は、当該液面高さを表すセンサ信号を各センサターミナル16へと出力する。
【0037】
(回路筐体部及びその関連構造)
次に、タンク蓋ユニット10が備える構成要素のうち特に、回路筐体部12とその関連構造である防液通気膜19とについて、詳細に説明する。
【0038】
図5〜8に示すように回路筐体部12では、下方の蓋本体部11との間に通気空間124をあけるように、筐体底部121が設けられている。筐体底部121は、下方の通気空間124を横方向に分断して蓋本体部11に接続されるリブ部121aを、複数有している。かかる分断形態により通気空間124は、各リブ部121aを横方向に挟んだ箇所に、分断空間部124aを形成している。各箇所の分断空間部124aは、外部空間3に向かって開口することで、当該空間3と連通している。また、そうした各箇所の分断空間部124aに面するリブ部121aのうち、本実施形態では一つの特定リブ部121asに、各ポンプターミナル15の中間部152が埋設されている。
【0039】
図6,7,10に示すように筐体底部121は、保護空間120に面する最下内面121bよりも上方へ張り出すように、張出部121cを有している。本実施形態において特定リブ部121asの直上に位置する張出部121cには、特定ターミナルとしてのいずれのポンプターミナル15についても中間部152が埋設されている。かかる埋設形態により張出部121cは、特定リブ部121asを経由した各ポンプターミナル15のうち中間部152との間になす界面121dを、プリント配線基板130よりも下方となる上端面121cuにて、保護空間120に露出させている。
【0040】
ここで
図9に示すように、保護空間120のうちプリント配線基板130が配置されて各ポンプターミナル15の端部151と電気接続される空間上部120aは、そうした界面121dの露出箇所である上端面121cuよりも、上方に位置している。それと共に、上端面121cuが筐体底部121の最下内面121bに対して離間する離間距離Daは、プリント配線基板130の下実装面130aが同最下内面121bに対して離間する離間距離Dbの半分Db/2よりも、大きく設定されている。
【0041】
図6,7,10に示すように筐体底部121は、張出部121cのうち界面121dの露出した上端面121cuよりも上方へ突出するように、凸壁部121eを有している。凸壁部121eは、横方向に間隔をあけた各ポンプターミナル15の中間部152間において、波打ち板形状に形成されている。それと共に凸壁部121eは、上方の空間上部120aに位置するプリント配線基板130までは達しない突出高さをもって、形成されている。
【0042】
図5,6,8に示すように回路筐体部12は、保護空間120と外部空間3との間において筐体側部122を貫通するように、通気孔126を有している。通気孔126は、ストレートな円筒孔状に形成され、横方向に並んで一対設けられている。各通気孔126において外部空間3側の開口面積は、通気空間124の開口面積、即ち分断空間部124aの開口面積の総面積よりも、小さく設定されている。それと共に
図9に示す如く、各通気孔126の最上部126aが最下内面121bに対して離間する離間距離Dcは、プリント配線基板130の下実装面130aが同最下内面121bに対して離間する離間距離Dbの半分Db/2よりも、小さく設定されている。かかる後者の設定により、各ポンプターミナル15の中間部152と筐体底部121の張出部121cとがなす界面121dは、各通気孔126よりも最下内面121bから上方に離間している。
【0043】
図5,6,8に示すように防液通気膜19は、エラストマーにより円形薄膜状に形成されている。防液通気膜19は、各通気孔126にそれぞれ対応して、一対設けられている。各防液通気膜19は、対応通気孔126の外部空間3側の開口面積よりも、大きな表面積を有している。各防液通気膜19は、筐体側部122のうち外部空間3に面する外側面122bに装着されることで、対応通気孔126の外部空間3側の開口全体を覆っている。各防液通気膜19は、対応通気孔126から外部空間3への燃料蒸気の排出を許容する通気性と共に、対応通気孔126への液体の侵入を規制する防液性を両立させるように、1μm程度の微細孔を多数有している。ここで、各防液通気膜19の形成エラストマーとしては、例えば液体として特に水の透過率よりも燃料蒸気の透過率を高くした材料が、採用される。具体的には、ポリテトラフルオロエチレンフィルムとポリウレタンポリマーとを複合化したエラストマー等が、各防液通気膜19の形成エラストマーとして採用されている。また、各防液通気膜19の外側面122bへの装着は、例えば溶着等により、対応通気孔126の開口縁部に沿って連続して実現されている。さらに各防液通気膜19は、本実施形態では、筐体側部122の外側面122bに突出形成された、それぞれ複数ずつの保持ガイド122cにより、外周側から保持されている。
【0044】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0045】
第一実施形態によると、燃料タンク2の外部空間3と連通する通気空間124が蓋本体部11とその上方の筐体底部121との間にあけられる。故に、蓋本体部11を透過した燃料蒸気は、通気空間124から外部空間3へ逃がされることで、筐体底部121における透過量を抑えられ得る。
【0046】
また、第一実施形態では、筐体底部121を経由して燃料ポンプ52と駆動回路13との間を延伸するポンプターミナル15のうち、延伸方向の中間部152が同底部121に埋設される。故に、中間部152が埋設先の筐体底部121となす界面121dには、クリアランスが生成されることで、界面121dの露出する保護空間120には、当該クリアランスを通じた燃料蒸気の侵入が懸念される。そこで、第一実施形態によると、筐体底部121と中間部152との界面121dは、通気孔126よりも上方において保護空間120に露出する。これによれば、保護空間120へ侵入した燃料蒸気は、空気よりも重い比重により、界面121dの露出箇所よりも下方となる通気孔126へと導かれるため、駆動回路13には到達し難くなる。
【0047】
ここで第一実施形態によると、筐体側部122において保護空間120と外部空間3との間を貫通する通気孔126からは、それを覆う防液通気膜19により、外部空間3への燃料蒸気の排出が許容される。故に、保護空間120へ侵入した燃料蒸気は、通気孔126から外部空間3へと逐次消散されることで、駆動回路13を保護する保護空間120には溜まり難くなる。さらに第一実施形態によると、外部空間3から通気孔126へは、それを覆う防液通気膜19により、液体の侵入が規制される。故に、通気孔126よりも内側の保護空間120にて保護される駆動回路13には、外部空間3の水等の液体も到達し難くなる。しかも、第一実施形態において防液通気膜19は、筐体側部122のうち外部空間3に面する外側面122bに装着されるので、外部空間3の液体圧力により押圧されても、当該外側面122bからは剥がれ難くなる。このように剥がれ難い防液通気膜19は、燃料蒸気の排出許容機能及び液体の侵入規制機能を、長きに亘って発揮できる。
【0048】
以上の如き第一実施形態のタンク蓋ユニット10によれば、燃料タンク2内の燃料蒸気が駆動回路13に接触し続けることは勿論、外部空間3の液体が駆動回路13に接触することも抑制して、駆動回路13の故障を回避することが可能となる。しかも、こうしたタンク蓋ユニット10が設けられる燃料供給装置1によれば、駆動回路13の故障を回避して、当該回路13により駆動される燃料ポンプ52の作動信頼性を確保することが、可能となる。
【0049】
尚、第一実施形態によると、通気空間124が筐体底部121とその下方の蓋本体部11との間にあけられることで、底部121よりも上方の駆動回路13により発生した熱は、蓋本体部11には伝達され難くなる。これによれば、蓋本体部11が熱変形して貫通孔2bとの間からの燃料蒸気漏れを惹起するのを、抑制できる。
【0050】
さて、以上の作用効果に加えて、第一実施形態によると、筐体底部121の最下内面121bに対して通気孔126の最上部126aと界面121dの露出箇所とは、同最下内面121bに対する駆動回路13の離間距離Dbの半分よりも、それぞれ小さい距離Dcと大きい距離Daとをもって離間する。これによれば、離間距離Dbの半分よりも最下内面121bから遠くなる界面121dの露出箇所は、同距離Dbの半分よりも最下内面121bに近くなる通気孔126に対して、上方位置に正しく配置され得る。故に、界面121dのクリアランスを通じて保護空間120に侵入した燃料蒸気であっても、駆動回路13への接触自体を抑制して、駆動回路13の故障回避効果の信頼性を高めることが可能となる。
【0051】
さらに、第一実施形態によると、保護空間120のうち界面121dの露出箇所よりも上方において筐体底部121から離間した離間箇所では、そこに配置の駆動回路13がポンプターミナル15と電気接続される。故に、駆動回路13のうちポンプターミナル15との電気接続部位には、その下方にて露出することになる界面121dのクリアランスを通じては、燃料蒸気の到達が生じ難くなる。これにより駆動回路13では、ポンプターミナル15との電気接続部位に燃料蒸気が接触して故障することにつき、回避可能となる。
【0052】
またさらに、第一実施形態によると、筐体底部121のうち保護空間120に面する最下内面121bよりも上方へ張り出す張出部121cは、中間部152となす界面121dの露出箇所を、通気孔126よりも当該最下内面121bから上方に離間させる。これによれば、界面121dのクリアランスを通じて保護空間120に侵入した燃料蒸気につき、駆動回路13への到達を確実に抑制して、駆動回路13の故障回避効果の信頼性を高めることが可能となる。
【0053】
加えて、第一実施形態によると、外部空間3側において各通気孔126の開口面積は、通気空間124の開口面積よりも小さい。故に、筐体側部122のうち外部空間3と面する外側面122bに装着の防液通気膜19については、通気孔126を覆うのに必要なサイズが可及的に縮小され得る。また、通気空間124の開口面積は、各通気孔126の開口面積よりも大きくなるので、蓋本体部11を透過した燃料蒸気について通気空間124を通じた逃し量は、増大し得る。かかる逃し量の増大によれば、燃料蒸気が逃がされずに筐体底部121を透過する透過量を、低減させることができるので、通気孔126及び防液通気膜19の作用と相俟って、当該透過蒸気に起因する駆動回路13の故障の回避が可能となる。
【0054】
さらに加えて、第一実施形態によると、中間部152は、筐体底部121のうちリブ部121aを経由することで、界面121dを保護空間120に露出させる。ここでリブ部121aは、通気空間124を分断して蓋本体部11に接続されるので、同空間124の存在により強度低下の懸念がある回路筐体部12を、中間部152の経由部位を利用して補強し得る。これによれば、駆動回路13を保護する保護空間120の形状を回路筐体部12により維持して、当該筐体部12の変形による駆動回路13の故障を回避することも可能となる。
【0055】
またさらに加えて、第一実施形態によると、複数のポンプターミナル15が互いにあける間では、それらターミナル15の中間部152が筐体底部121となす界面121dの露出箇所よりも上方に、凸壁部121eが突出形成される。故に万が一、外部空間3の液体が保護空間120に侵入したとしても、各ポンプターミナル15の間にて当該侵入液体が筐体底部121の表面に沿って伝う距離を、凸壁部121eの突出分に応じて増大させ得る。これによれば、各ポンプターミナル15間の絶縁状態が液体により低下して駆動回路13を故障させる自体につき、回避が可能となる。
【0056】
(第二実施形態)
図11に示すように本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態の筐体底部2121は、張出部121cのうち界面121dの露出した上端面121cuよりも下方へ突出するように、凹壁部2121eを有している。凹壁部2121eは、横方向に間隔をあけた各ポンプターミナル15の中間部152間において、矩形溝状に形成されている。それと共に凹壁部2121eは、下方の最下内面121bまでは達しない深さをもって、形成されている。
【0057】
このような第二実施形態によると、複数のポンプターミナル15が互いにあける間では、それらターミナル15の中間部152が筐体底部121となす界面121dの露出箇所よりも下方へ向かって、凹壁部2121eが凹陥形成される。故に万が一、外部空間3の液体が保護空間120に侵入したとしても、各ポンプターミナル15の間にて当該侵入液体が筐体底部121の表面に沿って伝う距離を、凹壁部2121eの凹陥分に応じて増大させ得る。これによれば、各ポンプターミナル15間の絶縁状態が液体により低下して駆動回路13を故障させる自体につき、回避が可能となる。また、それ以外の作用効果については、第一実施形態と同様の原理で発揮可能である。
【0058】
(他の実施形態)
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0059】
具体的に、第一及び第二実施形態に関する変形例1では、駆動回路13を保護する例えばエポキシ樹脂等の充填材を、保護空間120に充填してもよい。この場合にあっても、回路筐体部12と充填材との間のクリアランス及び通気孔126をそれぞれ通じて燃料蒸気及び液体が駆動回路13に到達することを、第一及び第二実施形態と同様の原理により抑制できる。また、この場合には、防液通気膜19ではなく、通気性のない防液膜又は要素11,12の形成樹脂と同じ透過性樹脂により、片方の通気孔126を覆ってもよい。
【0060】
第一及び第二実施形態に関する変形例2では、外部空間3側において各通気孔126の開口面積を、通気空間124の開口面積(分断空間部124aの開口面積の総面積)よりも、大きく設定してもよい。また、第一及び第二実施形態に関する変形例3では、通気孔126の数を、一対以外の一つ又は複数に設定してもよい。さらにまた、第一及び第二実施形態に関する変形例4では、防液通気膜19の数を、一対以外の一つ又は複数に設定してもよい。
【0061】
第一及び第二実施形態に関する変形例5では、ポンプターミナル15の数を、一対以外の一つ又は複数に設定してもよい。ここで、ポンプターミナル15の数を三つ以上に設定する場合、それらポンプターミナル15の間となる箇所のうち一部のみに、凸壁部121e又は凹壁部2121eを設けてもよい。この場合、三つ以上のポンプターミナル15のうち、互いの間に凸壁部121e又は凹壁部2121eの設けられるターミナル15のみが、特定ターミナルに相当する。
【0062】
第一及び第二実施形態に関する変形例6では、凸壁部121e又は凹壁部2121eを、一切設けなくてもよい。また、第一及び第二実施形態に関する変形例7では、通気空間124を分断するリブ部121aを、一切設けなくてもよい。さらにまた、第一及び第二実施形態に関する変形例8では、ポンプターミナル15の経由する特定リブ部121asとして、複数のリブ部121aを採用してもよい。
【0063】
第一及び第二実施形態に関する変形例9では、通気孔126よりも上方にて界面121dが露出する限りで、最下内面121bに対して最上部126aの離間距離Dcと露出箇所の離間距離Daとを、同最下内面121bに対する駆動回路13の離間距離Dbの半分よりも大きく設定してもよい。またあるいは、第一及び第二実施形態に関する変形例10では、通気孔126よりも上方にて界面121dが露出する限りで、最下内面121bに対して最上部126aの離間距離Dcと露出箇所の離間距離Daとを、同最下内面121bに対する駆動回路13の離間距離Dbの半分よりも小さく設定してもよい。