特許第6233249号(P6233249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233249
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】急傾斜コンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/40 20060101AFI20171113BHJP
   B65G 15/42 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B65G15/40
   B65G15/42 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-178758(P2014-178758)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-52925(P2016-52925A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】宮越 亮丞
(72)【発明者】
【氏名】伊東 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 富
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−050105(JP,A)
【文献】 実開平06−049411(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/30−15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースベルトの搬送面に、粒状の運搬物を保持する多数のクリートを搬送方向に所定間隔で立設するとともに、クリートを挟むように搬送面のベルト幅方向両端部に波形状のフランジを立設し、当該ベースベルトをプーリにより駆動する急傾斜コンベヤベルトにおいて、
クリートは、搬送面に対して傾斜した傾斜部を有し、
傾斜部の上部には、ベルト幅方向両端部が切り欠かれた切り欠き部が形成され、
切り欠き部は、プーリ通過時以外の通常の状態におけるフランジの波とクリートの切り欠き部に囲まれた隙間の内接円直径が、運搬物の最大径以上となる大きさに構成され
通常の状態の切り欠き部のベルト幅方向の長さ(L)、及び通常の状態の切り欠き部の搬送方向の長さは、運搬物の最大の粒径(dmax)と等しい急傾斜コンベヤベルト。
【請求項2】
前記クリートは、フランジの波の山と山との間に位置するように設置される請求項1に記載の急傾斜コンベヤベルト。
【請求項3】
搬送面を、搬送面に対し垂直な方向から見ると、切り欠き部は矩形またはR形状に形成されている請求項1または2に記載の急傾斜コンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急傾斜コンベヤベルトに関し、さらに詳しくは、粒状の運搬物が、急傾斜コンベヤベルトのクリートとフランジの間に挟まることを減少させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、土砂、石炭等の粒状の運搬物を急勾配(傾斜角度30°〜90°程度)で低位置から高位置に搬送する急傾斜コンベヤベルトが知られている(特許文献1)。
【0003】
図3に例示するように、急傾斜コンベヤベルト1は、ベースベルト2が駆動プーリ5とテールプーリ6との間に張設されて、ベルト長手方向途中に配置されたディスクローラ7、下部変角ローラ9および上部変角ローラ8により支持される。低位置で投入された運搬物は、高位置まで運搬され、駆動プーリ5の下方に設けられたシュートに排出される。
【0004】
図4は、従来の急傾斜コンベヤベルトの一部を切り欠いて示した斜視図である。急傾斜コンベヤベルトは、ベースベルト2の搬送面に、多数のクリート3をベルト長手方向(X方向)に所定間隔で立設するとともに、クリート3を挟むように搬送面のベルト幅方向(Y方向)両端部に波形状のフランジ4を立設した構造になっている。クリート3は、先端が屈曲した、くの字形状の板により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−255985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベースベルト2が駆動プーリ5、テールプーリ6、下部変角ローラ9および上部変角ローラ8を通過する際には、フランジ4の波のピッチが拡がるように変形し、拡がったフランジ4とクリート3との隙間に、粒状の運搬物が挟まれる。
【0007】
これを具体的に図5および図6を用いて説明する。急傾斜コンベヤベルト1の搬送面を上から見ると、図5に示す通常の状態(プーリやローラを通過する以外の状態)では、フランジ4とクリート3との間に略三角形の隙間が存在する。
【0008】
フランジ4は、下端がベースベルト2の搬送面に接合され、上端が自由端となっている。駆動プーリ5、テールプーリ6、下部変角ローラ9および上部変角ローラ8のプーリやローラを通過してベースベルト2が湾曲する際には、フランジ4は、先端になればなるほど波のピッチが拡がる方向に変形する。そのため、図5に示す、通常の状態のフランジ4とクリート3で囲まれた隙間の内接円直径aよりも、図6に示す、駆動プーリ5、テールプーリ6、下部変角ローラ9および上部変角ローラ8を通過する際のフランジ4とクリート3で囲まれた隙間の内接円直径aが大きくなる。
【0009】
従来では、駆動プーリ5等の周辺において拡がったフランジ4とクリート3との隙間に、粒状の運搬物が挟まれるという問題があった。フランジ4とクリート3との隙間に運搬物が挟まれると、下部変角ローラ9やテールプーリ6においてフランジ4が再び拡がることで、急傾斜コンベヤベルトの外部に排出されて床面上に落下し、床面に堆積物10として堆積する。堆積物10は環境を悪化させたり、その処理に多大な費用と労力を要する。また、堆積物10がベルトやローラ等の機器に接触して損傷するという問題もある。
【0010】
本発明は、このような問題点に対してなされたものであり、駆動プーリ5等の周辺において拡がったフランジ4とクリート3との隙間に、粒状の運搬物が挟まれることを低減する急傾斜コンベヤベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、まず、粒状の運搬物がどのような場合にフランジ4とクリート3との隙間に挟まれるのかを検討した。
【0012】
図5に示すクリート3とフランジ4との間の内接円直径aよりも運搬物Cの粒径dが小さい場合には、図7に示すように、運搬物Cはクリート3とフランジ4の隙間に入っても抜け出すことが可能であるため、前記のような問題は発生しない。
【0013】
また、図6に示すように傾斜コンベヤベルトが駆動プーリ5部で湾曲する際には、波形状のフランジ4の波のピッチが変化し、その時のフランジ4のベルト幅方向の長さ(W2)は、図5に示す通常の状態のフランジのベルト幅方向の長さ(W1)よりも小さくなっても、運搬物Cの粒径dが通常の状態のフランジ4のベルト幅方向の長さ(W1)よりも大きい場合には、図8に示すように運搬物Cがクリート3とフランジ4の隙間に入ることがないため、前記のような問題は生じない。
【0014】
つまり、運搬物の粒径dが、a<d<W1の関係にある場合に、前記の問題が生じる。
【0015】
本発明は、このような場合において、運搬物がクリート3とフランジ4の隙間に挟まることを防止するために、以下のような特徴を有している。
[1] ベースベルトの搬送面に、運搬物を保持する多数のクリートを搬送方向に所定間隔で立設するとともに、クリートを挟むように搬送面のベルト幅方向両端部に波形状のフランジを立設し、当該ベースベルトを複数のプーリにより支持した急傾斜コンベヤベルトにおいて、
クリートは、搬送面に対して傾斜した傾斜部を有し、
傾斜部の上部には、ベルト幅方向両端部が切り欠かれた切り欠き部が形成され、
切り欠き部は、プーリ通過時以外の通常の状態におけるフランジの波とクリートの切り欠き部に囲まれた隙間の内接円直径が、運搬物の最大径以上となる大きさに構成されている急傾斜コンベヤベルト。
[2] 通常の状態の切り欠き部のベルト幅方向の長さ(L)は、運搬物の最大の粒径(dmax)と等しい[1]に記載の急傾斜コンベヤベルト。
[3] 搬送面を、搬送面に対し垂直な方向から見ると、切り欠き部は矩形またはR形状に形成されている[1]または[2]に記載の急傾斜コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、駆動プーリ部でフランジの波のピッチが拡がった状態において、運搬物がフランジとクリートとの間に挟まれることを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の急傾斜コンベヤベルトの搬送面の一部を切り欠いて示した斜視図である。
図2】(a)は、本発明の急傾斜コンベヤベルトのクリートの切り欠き部の形状の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の急傾斜コンベヤベルトのクリートの切り欠き部の形状の他の例を示す平面図である。
図3】急傾斜コンベヤベルトの全体図を示す図である。
図4】従来の急傾斜コンベヤベルトの搬送面の一部を切り欠いて示した斜視図である。
図5】急傾斜コンベヤベルトのフランジとクリートとの隙間の通常の状態を示す図である。
図6】急傾斜コンベヤベルトのフランジとクリートとの隙間が拡がった状態を示す図である。
図7】急傾斜コンベヤベルトのフランジとクリートとの隙間から運搬物が抜け出す状態を示す図である。
図8】急傾斜コンベヤベルトのフランジとクリートとの隙間に運搬物が入らない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の急傾斜コンベヤベルトの搬送面の一部を切り欠いて示した斜視図である。なお、搬送方向をX方向、搬送面の幅方向をY方向、搬送面に対する垂直方向をZ方向と定義する。また、本発明の急傾斜コンベヤベルトの全体図については、図3を引用して説明する。
【0020】
この急傾斜コンベヤベルトは、ベースベルト2の搬送面に、多数のクリート3を搬送方向(X方向)に所定間隔で立設するとともに、クリート3を挟むように搬送面のベルト幅方向両端部に波形状のフランジ4を立設した構造になっている。クリート3は、くの字形状を有しており、搬送面に対して垂直方向(Z方向)に延びた垂直部3aと、この垂直部3aの上部に設けられ、搬送面に対して傾斜した傾斜部3bを有している。傾斜部3bの上部には、平面視においてベルト幅方向両端部が切り欠かれた切り欠き部3cが形成されている。
【0021】
図2(a)は、本発明の急傾斜コンベヤベルトのクリートの切り欠き部の形状の一例を示す平面図である。図2(a)に示すように、クリート3の搬送方向(X方向)の長さは、平面視において、フランジ4の1つの波のピッチと略同じ大きさに形成されている。複数のクリート3は、搬送方向(X方向)に所定の間隔を置いて、フランジ4の波の山と山の間に位置するように設置されている。なお、切り欠き部3cの形状は、矩形状に限られず、図2(b)に示すように、R形状としてもよい。
【0022】
本発明では、切り欠き部3cは、プーリやローラ回りを通過する以外の通常の状態における、フランジ4とクリート3に囲まれた隙間の内接円直径aが、運搬物の最大径(dmax)以上となる大きさに構成されている。
【0023】
例えば、切り欠き部3cのベルト幅方向の長さ(L)は、運搬物の最大の粒径(dmax)と等しい大きさとすればよい。なお、切り欠き部3cの運搬物の搬送方向の長さについても、運搬物の最大の粒径(dmax)程度とすればよい。
【0024】
本発明に係る急傾斜ベルトコンベアでは、図2(a)に示す通り、クリート3の傾斜部3bの上部のベルト幅方向両端部に、プーリ等を通過していない通常の状態における内接円直径aが、運搬物の最大径と等しくなる大きさとなるように切り欠き部3cを形成している。これにより、駆動プーリ5部でフランジ4とクリート3との隙間が拡がっても、この隙間に運搬物が挟まれることを低減することができる。
【0025】
なお、通常の状態において内接円直径aが運搬物の最大径と等しい場合には、フランジ4とクリート3との隙間に運搬物が挟まれる可能性があるが、駆動プーリ5部において、図6に示すように、フランジ4とクリート3との隙間が通常の状態より拡がることで、隙間に挟まれた運搬物がプーリ部において、隙間から抜け落ち、シュートに排出される。なお、切り欠き部3cの大きさが大きければ大きいほど、クリート3が運搬できる運搬物の量が少なくなるが、通常の状態において内接円直径aが運搬物の最大径と等しい大きさになるよう切り欠き部3cを形成することで、運搬物が隙間に挟まれることを防止しながら、最大限の運搬量を確保することができる。
【0026】
以上のように、本発明では、床面への運搬物の堆積を防止することができ、運搬物が堆積した堆積物10の処理にかかる費用と時間を削減し、更に、堆積物10がベルトやローラ等の接触することで生じる損傷のリスクを低減することで、安定した操業が可能となった。
【0027】
本発明は、上述の実施の形態に限られず、種々の設計変更を行うことができる。例えば、上述の説明では、垂直部3aと傾斜部3bを有するクリート3を例として説明したが、垂直部3aを有さず、傾斜部3bのみを有するクリート3に対しても、本発明を適用することができる。
【0028】
切り欠きサイズをa<dmax<Lに限らず、最小粒径dminとして、a<dmaxかつdmin<Lであれば、本発明を適用することができる。その際は切り欠きサイズ、搬送物の平均粒径daveがa<dave<Lであれば効果が大きい。
【実施例】
【0029】
既設の急傾斜コンベヤベルトに、本発明を適用した。この結果、従来、堆積物の処理が1日3回程度行っていたのに対し、本発明を適用することで、処理頻度を週1、2回程度に低減させることができた。
【符号の説明】
【0030】
1 急傾斜コンベヤベルト
2 ベースベルト
3 クリート
3a 垂直部
3b 傾斜部
4 フランジ
5 駆動プーリ
6 テールプーリ
7 ディスクローラ
8 上部変角ローラ
9 下部変角ローラ
10 堆積物
W1 フランジの通常の状態のベルト幅方向の大きさ
W2 フランジの拡がり時のベルト幅方向の大きさ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8