特許第6233271号(P6233271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6233271感光性樹脂組成物およびレジストパターンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233271
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物およびレジストパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20171113BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20171113BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20171113BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G03F7/004 502
   G03F7/031
   C08F2/38
   C08F2/50
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-215332(P2014-215332)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-143813(P2015-143813A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-271806(P2013-271806)
(32)【優先日】2013年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】秋丸 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】榊原 宏和
(72)【発明者】
【氏名】石川 英史
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 真吾
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256891(JP,A)
【文献】 特開2013−203956(JP,A)
【文献】 特開2013−164471(JP,A)
【文献】 特開2010−215575(JP,A)
【文献】 特開2011−238589(JP,A)
【文献】 特表2012−532334(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0099214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)、および下記式(1)または(2)で表わされる化合物(D)を含有し、顔料および染料から選ばれる着色剤を含有しない感光性樹脂組成物であって、
前記光ラジカル重合開始剤(C)の含有量(質量)が、前記化合物(D)の含有量(質量)の0.5〜5倍であり、
前記化合物(B)100質量部に対する前記光ラジカル重合開始剤(C)の含有量が3〜20質量部であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、6つのR1はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、nは0または1を示す。式(2)中、6つのR2はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、mは0または1を示す。)
【請求項2】
前記オキシムエステル構造が、下記式(3)で表わされる構造である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
【請求項3】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を基材上に塗布して樹脂塗膜を形成する工程、前記樹脂塗膜を露光する工程、アルカリ性現像液により前記露光後の樹脂塗膜を現像してパターンを形成する工程を有する、レジストパターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプなどのメッキ造形物の製造に好適に用いることができる感光性樹脂組成物およびレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの電子機器において、大規模集積回路(LSI)の高集積化および多層化が急激に進んでいる。このため、LSIを電子機器に搭載するための基板への多ピン実装方法が必要とされ、例えば、テープオートメーテッドボンディング(TAB)方式やフリップチップ方式によるベアチップ実装などが注目されている。前記方式においては、接続用端子であるバンプと呼ばれる突起電極をLSI上に高精度に配置することが必要とされている。
【0003】
上記バンプなどの各種精密部品は、例えば、感放射線性樹脂組成物を加工物表面に塗布して樹脂膜を形成し、フォトリソグラフィー法により該樹脂膜をパターニングし、得られたレジストパターンをマスクとして、電解メッキなどを実施することにより製造される(特許文献1)。
【0004】
ところで、光ラジカル発生剤を含有するラジカルネガ型感光性樹脂組成物の場合、活性種がラジカルであるため、空気中に含まれる酸素による阻害により、パターンの解像度の向上には限界がある。特に、ラジカルネガ型感光性樹脂組成物により微細なパターンを形成しようとすると、得られるレジストパターンの頭が丸くなるという問題があることが知られている。この問題を解決するために、酸素阻害層を用いた方法などが提案されている(特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−285035号公報
【特許文献2】特開2000−112134号公報
【特許文献3】特開2005−165012号公報
【特許文献4】WO2006/112439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸素阻害層を用いた方法は、レジストパターンの形成プロセスが煩雑になり、量産化する場合に不向きである。また、酸素阻害層を用いた方法は、感光性樹脂組成物の種類に合わせて、酸素阻害層を選択する必要があるため、量産化する場合には不向きである。
【0007】
本発明は、酸素阻害層を用いなくても、解像度に優れたレジストパターンの形成が可能な、感光性樹脂組成物および感光性樹脂組成物を使ったレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)、および下記式(1)または(2)で表わされる化合物(D)を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記光ラジカル重合開始剤(C)の含有量(質量)が、前記化合物(D)の含有量(質量)の0.5〜5倍であり、
前記化合物(B)100質量部に対する前記光ラジカル重合開始剤(C)の含有量が3〜20質量部であることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0009】
【化1】
(式(1)中、6つのR1はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、nは0または1を示す。式(2)中、6つのR2はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、mは0または1を示す。)
前記感光性樹脂組成物において、前記ケト型オキシムエステル構造が、下記式(3)で表わされる構造であることが好ましい。
【0010】
【化2】
また本発明は、前記の感光性樹脂組成物を基材上に塗布して樹脂塗膜を形成する工程、前記樹脂塗膜を露光する工程、アルカリ性現像液により前記露光後の樹脂塗膜を現像してパターンを形成する工程を有する、レジストパターンの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物を使用すれば、酸素阻害層を用いなくても、解像度に優れたレジストパターンの形成が可能である。本発明のレジストパターンの製造方法によれば、酸素阻害層を用いなくても、解像度に優れたレジストパターンの形成が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)、および下記式(1)または(2)で表わされる化合物(D)を含有し、
前記光ラジカル重合開始剤(C)の含有量(質量)が、前記化合物(D)の含有量(質量)の0.5〜5倍であり、
前記化合物(B)100質量部に対する前記光ラジカル重合開始剤(C)の含有量が3〜20質量部であることを特徴とする。
【0013】
【化1】
(式(1)中、6つのR1はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、nは0または1を示す。式(2)中、6つのR2はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、mは0または1を示す。)
【0014】
前述のとおり、光ラジカル発生剤を含有する従来のラジカルネガ型感光性樹脂組成物は、活性種であるラジカルの作用が空気中の酸素により阻害されるため、得られるレジストパターンの頭が丸くなるなどの現象が起こり、パターンの解像度の向上に限界があった。レジストパターンの頭が丸くなるという現象は、レジストパターンが微細かつ薄膜である場合に顕著に生じる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤として、多種かつ大量に活性種を発生させるケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)を高濃度に含有する。その結果、前述の空気中の酸素による阻害が抑制される。
【0016】
その一方、ケト型オキシムエステル系光ラジカル開始剤から発生する活性種の中にはメチルラジカルなどの反応性の高い活性種が含まれるため、この光ラジカル開始剤を含む感光性樹脂組成物を塗布して得られた樹脂塗膜を露光してパターニングした際、この反応性の高い活性種が非露光部まで影響し、その結果、パターンが解像できなくなるという問題が起こる場合がある。この問題を解決するために、重合禁止剤(クエンチャー)を高濃度に含有させて、この反応性の高い活性種を補足することが考えられる。しかし、従来一般的に使用される重合禁止剤は昇華しやすく、一定量で活性種の補足能が飽和してしまい、十分な効果は得られないものと推定される。一方、昇華しにくい大きな分子構造を有する重合禁止剤では、活性種の補足能が低いので、パターンを十分に解像することができない。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤として、上記式(1)または(2)で表わされる化合物(D)を高濃度に含有する。化合物(D)は、活性種の補足能が高く、また昇華しにくいので、一定量で活性種の補足能が飽和することがない。その結果、化合物(D)を用いることにより、前記拡散長の長い活性種を有効に補足することができ、ケト型オキシムエステル系光ラジカル開始剤を使用したことにより生じるパターンが解像できなくなるという問題を解決することができるものと推定される。
【0018】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)を高濃度含有することにより空気中の酸素による阻害を抑制し、さらに化合物(D)を高濃度含有することにより、光ラジカル重合開始剤(C)の含有により生じ得るデメリットを解消したものであり、その結果、酸素阻害層を用いなくても解像度に優れたレジストパターン、具体的には頭が丸くないレジストパターンを形成するという本発明の課題を解決したものである。
【0019】
以下、本発明の感光性樹脂組成物を具体的に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)、ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)、および上記式(1)または(2)で表わされる化合物(D)を含有し、さらに必要により光ラジカル重合開始剤(C)以外の光ラジカル重合開始剤およびその他の成分を含有する。
【0020】
〔アルカリ可溶性樹脂(A)〕
アルカリ可溶性樹脂(A)は、目的とする現像処理が可能な程度にアルカリ性の現像液に溶解する性質を有する樹脂である。例えば、特開2008−276194号公報、特開2003−241372号公報、特表2009−531730号公報、WO2010/001691号公報、特開2011−123225号公報、特開2009−222923号公報、および特開2006−243161号公報等に記載のアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは2000〜50000、より好ましくは3000〜20000の範囲にある。
【0021】
また、アルカリ可溶性樹脂(A)は、レジストパターンのメッキ液耐性が向上する点で、フェノール性水酸基を有することが好ましい。フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(A)としては、下記式(4)で表される構造単位(以下「構造単位(4)」ともいう)を有するアルカリ可溶性樹脂(A')が好ましい。
【0022】
【化3】
式(4)中、R1は水素原子またはメチル基を表す。
【0023】
構造単位(4)を有するアルカリ可溶性樹脂(A')を用いることで、メッキ工程において膨潤しにくいレジストパターンを得ることができる。その結果、基材からのレジストパターンの浮きや剥れが発生しないため、メッキ工程を長時間実施した場合であってもメッキ液が基材とレジストパターンとの界面にしみ出すことを防ぐことができる。また、解像性を良好にすることもできる。
【0024】
構造単位(4)を有するアルカリ可溶性樹脂(A')中の構造単位(4)の含有量は、通常は1〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲にある。構造単位(4)の含有量が前記範囲にある、すなわち構造単位(4)を導く単量体をこのような量で用いることにより、アルカリ可溶性樹脂(A')の分子量を十分に上げることができる。また、メッキ工程において膨潤しにくいレジストパターンを得ることができる。
【0025】
≪単量体(4')≫
構造単位(4)を有するアルカリ可溶性樹脂(A')は、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノールなどの水酸基含有芳香族ビニル化合物(以下「単量体(4')」ともいう)を原料モノマーの一部に用いて重合することにより得ることができる。これらの単量体(4')は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
これら単量体(4')の中でも、長時間のメッキ処理耐性に優れたレジストパターンを形成できる樹脂組成物が得られる点で、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノールが好ましく、p−イソプロペニルフェノールがより好ましい。
【0027】
≪単量体(I)≫
構造単位(4)を有するアルカリ可溶性樹脂(A')は、さらに、単量体(4')と共重合可能なその他の単量体(以下「単量体(I)」ともいう)から誘導される構造単位を有してもよい。
【0028】
単量体(I)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族ビニル化合物;
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのヘテロ原子含有脂環式ビニル化合物;
フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのグリコール構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;
1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;
アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;
p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらの単量体(I)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
これら単量体(I)の中では、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0030】
アルカリ可溶性樹脂(A')は、例えば、ラジカル重合によって製造することができる。また、重合方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法が挙げられる。
【0031】
〔1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)〕
化合物(B)は、露光により光ラジカル重合開始剤から発生する活性種によりラジカル重合する成分であり、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する。
【0032】
化合物(B)としては、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物、ビニル基を有する化合物が好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物は、単官能性(メタ)アクリレート化合物と多官能性(メタ)アクリレート化合物とに分類されるが、いずれの化合物であってもよい。
【0033】
上記単官能性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシルアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカニル(メタ)アクリレート、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デセニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、tert−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
上記多官能性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO(propylene oxide)変性トリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシメチルエチルエーテル、ビスフェノールAジ(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシエチルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート(三官能以上)などが挙げられる。
【0035】
化合物(B)として、市販されている化合物をそのまま用いることができる。市販されている化合物としては、例えば、アロニックスM−210、同M−309、同M−310、同M−320、同M−400、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−9050、同M−240、同M−245、同M−6100、同M−6200、同M−6250、同M−6300、同M−6400、同M−6500(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD R−551、同R−712、同TMPTA、同HDDA、同TPGDA、同PEG400DA、同MANDA、同HX−220、同HX−620、同R−604、同DPCA−20、DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート#295、同300、同260、同312、同335HP、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0036】
これらの化合物(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(B)の使用量は、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、通常は10〜100質量部、好ましくは30〜80質量部である。化合物(B)の使用量が前記範囲にあると、化合物(B)とアルカリ可溶性樹脂(A)との相溶性が優れ、本感光性樹脂組成物からなる塗布液の保存安定性が向上する。また、感光性樹脂膜の露光感度が良好となる。
【0037】
〔ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)〕
ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)は、光の照射によりラジカルを発生し、化合物(B)のラジカル重合を開始させる化合物である。光ラジカル重合開始剤(C)は、前述のとおり、多種かつ大量に活性種を発生させ、その結果、空気中の酸素による阻害を抑制する機能を有する。
【0038】
本感光性樹脂組成物における光ラジカル重合開始剤(C)の含有量(質量)は、化合物(D)の含有量(質量)の0.5〜5倍であり、好ましくは0.55〜4.5倍、より好ましくは0.6〜4倍である。化合物(D)に対する光ラジカル重合開始剤(C)の含有量が前記範囲内であると、解像度に優れたレジストパターンの形成が可能となる。
【0039】
本感光性樹脂組成物における光ラジカル重合開始剤(C)の含有量は、化合物(B)100質量部に対して3〜20質量部であり、好ましくは4〜15質量部、より好ましくは4〜12質量部ある。化合物(B)に対する光ラジカル重合開始剤(C)の含有量が前記範囲内であると、感度および解像度に優れたレジストパターンの形成が可能となる。
【0040】
本感光性樹脂組成物における光ラジカル重合開始剤(C)の含有量が上記範囲内であると、前述の光ラジカル重合開始剤(C)の機能が十分に発現される。
ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)にはオキシムの二重結合に起因する幾何異性体が存在しうるが、これらは区別されず、いずれも光ラジカル重合開始剤(C)に含まれる。
【0041】
光ラジカル重合開始剤(C)としては、例えば、WO2010/146883号公報、特開2011−132215号公報、特表2008−506749号公報、特表2009−519904、および特表2009−519991号公報に記載光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0042】
前記光ラジカル重合開始剤(C)の具体例としては、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1−オン−2−イミン、N−エトキシカルボニルオキシ− 1−フェニルプロパン−1−オン−2−イミン、N−ベンゾイルオキシ−1−(4−フェニルスルファニルフェニル)オクタン−1−オン−2−イミン、N−アセトキシ−1− [9 −エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン、およびN−アセトキシ−1−[9−エチル−6−{2−メチル−4−(3,3−ジメチル−2,4−ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}−9H−カルバゾール−3−イル]エタン−1−イミン等が挙げられる。
【0043】
光ラジカル重合開始剤(C)が有するケト型オキシムエステル構造としては、下記式(3)で表わされる構造が好ましい。
【0044】
【化2】
式(3)の左端の炭素原子には2つの有機基が結合する。前記有機基としては、例えば、アルキル基、並びにフェニルカルバゾール基、およびフェニルチオベンゾイル基等のアリール基を有する基が挙げられる。
【0045】
光ラジカル重合開始剤(C)が、ケト型オキシムエステル構造として式(3)で表わされる構造を有すると、効率よく酸素阻害を解消できるため、解像度に優れたレジストパターンの形成が可能となる。
【0046】
好適な光ラジカル重合開始剤(C)としては、例えば、ケト型オキシムエステル構造がフェニルカルバゾール基に結合してなる構造を有する化合物を挙げることができる。式(3)で表わされるケト型オキシムエステル構造がフェニルカルバゾール基に結合してなる構造を有する化合物としては、例えば下記式(5)および(6)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
光重合開始剤(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光ラジカル重合開始剤全体に占める、ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)の比率は通常5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
【0050】
〔光ラジカル重合開始剤(C)以外の光ラジカル重合開始剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、レジストパターン形状や感度をコントロールするために、任意成分として、ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)以外の光ラジカル重合開始剤を含有することができる。
【0051】
光ラジカル重合開始剤(C)以外の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビイミダゾール化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、アルキルフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾイン化合物、およびベンゾフェノン化合物等が挙げられる。
前記ビイミダゾール化合物としては、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−メチルフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、および2,2'−ジフェニル−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾールなどが挙げられる。
【0052】
前記アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−(2−メチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル) ブタノン、2−(3−メチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−(4−メチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−(2−エチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−(2−プロピルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、および2−(2−ブチルベンジル)−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン等が挙げられる。
【0053】
前記アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
前記トリアジン化合物としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4− メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6− 〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス( トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5− トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、および2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0054】
ベンゾイン化合物しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0055】
前記ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、3,3',4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0056】
光重合開始剤(C)以外の光ラジカル重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
〔下記式(1)または(2)で表わされる化合物(D)〕
化合物(D)は下記式(1)または(2)で表わされる。
【0058】
【化1】
化合物(D)は、前述のとおり重合禁止剤である。化合物(D)は、前述のとおり、活性種の補足能が高く、昇華しにくいことから、光ラジカル重合開始剤(C)から発生する拡散長の長い活性種を有効に補足する機能を有する。
【0059】
式(1)中、6つのR1はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、nは0または1を示す。式(2)中、6つのR2はそれぞれ独立に水素原子又は電子供与性の基を示し、mは0または1を示す。前記電子供与性の基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基に含まれるアルキル基についても前記と同様である。
【0060】
式(1)で表わされる化合物(D)としては、例えば、ヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、およびメチルヒドロキノンを挙げることができる。
【0061】
式(2)で表わされる化合物(D)としては、例えば、ベンゾキノン、および1,4−ナフトキノンを挙げることができる。
これらの中で、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ナフトキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、およびメチルヒドロキノンが好ましい。
化合物(D)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
本感光性樹脂組成物における化合物(D)の含有量(質量)は、前述のとおり、本感光性樹脂組成物における光ラジカル重合開始剤(C)の含有量(質量)が化合物(D)の含有量(質量)の0.5〜5倍、好ましくは0.55〜4.5倍、より好ましくは0.6〜4倍になる量である。化合物(D)の含有量が前記範囲内であると、前述の化合物(D)の機能が十分に発現され、解像度に優れたレジストパターンの形成が可能となる。
【0063】
〔その他の成分〕
本発明の感光性樹脂組成物は、上述の成分の他に、必要に応じて、化合物(D)以外の重合禁止剤、溶媒、界面活性剤、樹脂膜と基板の接着性を改良するための接着助剤、感度を上げるための増感剤、樹脂膜の強度を改良するための無機フィラー等を、本発明の目的および特性を損なわない範囲で配合してもよい。
【0064】
(溶媒)
本発明の樹脂組成物は、溶媒を含有することで、樹脂組成物の取り扱い性を向上させたり、粘度を調節したり、保存安定性を向上させたりすることができる。
【0065】
溶媒としては、
メタノール、エタノール、プロピレングリコールなどのアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;
エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられる。
【0066】
本発明におけるエチレングリコール系溶媒の使用量は、全溶媒100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。溶媒としてエチレングリコール系溶媒を前記範囲で用いることにより、膜厚が大きく異なる樹脂膜を形成することがより容易となる。
【0067】
溶媒の使用量は、膜厚5〜100μmの樹脂膜を形成する場合、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して、通常は50質量部以上、好ましくは60〜300質量部、より好ましくは80〜200質量部である。
【0068】
(化合物(D)以外の重合禁止剤)
化合物(D)以外の重合禁止剤としては、ピロガロール、メチレンブルー、tert−ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、フェノール、n−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4'−[1−〔4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4',4"−エチリデントリス(2−メチルフェノール)、4,4',4"−エチリデントリスフェノール、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン等が挙げられる。
【0069】
(界面活性剤)
感光性樹脂組成物に界面活性剤を配合すると、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させることができる。
【0070】
界面活性剤としては、市販されている界面活性剤を用いることができる。市販されている界面活性剤の具体例としては、例えば、NBX−15、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D,FTX−218、FTX−220D、FTX−222D(以上、(株)ネオス製)、BM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)が挙げられる。これらの中ではFTX−216D、FTX−218、FTX−220Dが好ましい。
【0071】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
本発明の感光性樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより調製することができる。また、ゴミを取り除くために、各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルター等で濾過しても良い。
【0072】
[レジストパターンの製造方法]
本発明のレジストパターンの製造方法は、少なくとも、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布して樹脂塗膜を形成する工程(以下、工程1という)、前記樹脂塗膜を露光する工程(以下、工程2という)、アルカリ性現像液により前記露光後の樹脂塗膜を現像してパターンを形成する工程(以下、工程3という)を有する。
【0073】
〔工程(1)〕
基材としては、前記樹脂塗膜を形成することができる基材であれば特に制限はなく、例えば半導体基板、ガラス基板、シリコン基板および半導体板、ガラス板、シリコン板の表面に各種金属膜などを設けて形成される基板などを挙げることができる。基材の形状には特に制限はない。平板状であっても、後述の実施例で使用された基材(シリコンウェハー)ように平板に凹部(穴)を設けてなる形状であってもよい。凹部を備え、さらに表面に銅膜を有する基材の場合、TSV構造のように、その凹部の底部に銅膜が設けられてもよい。
【0074】
感光性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法を採用することができ、特にスピンコート法が好ましい。スピンコート法の場合、回転速度は通常は800〜3000rpm、好ましくは800〜2000rpmであり、回転時間は通常は1〜300秒間、好ましくは5〜200秒間である。樹脂組成物をスピンコートした後は、例えば50〜250℃で1〜30分間程度、得られた塗膜を加熱乾燥する。
【0075】
樹脂塗膜の膜厚は通常0.1〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜10μmである。薄膜であるほど、酸素阻害の影響が顕著に現れるため、メッキ造形物を作る目的で本発明の感光性樹脂組成物を使用する場合、上述の範囲で用いるのが好ましい。
【0076】
〔工程(2)〕
工程(2)では、レジストパターンが得られるように前記樹脂膜を選択的に露光する。選択的露光を行うため、通常、所望のフォトマスクを介して、例えばコンタクトアライナー、ステッパーまたはスキャナーを用いて、上記樹脂膜に対して露光を行う。露光光としては、波長200〜500nmの光(例:i線(365nm))を用いる。露光量は、樹脂膜中の成分の種類、配合量、塗膜の厚さなどによって異なるが、露光光にi線を使用する場合、通常、1,000〜100,000mJ/m2である。
【0077】
また、露光後に加熱処理を行うこともできる。露光後の加熱処理の条件は、樹脂膜中の成分の種類、配合量、塗膜の厚さなどによって適宜決められるが、通常70〜180℃、1〜60分間である。
【0078】
〔工程(3)〕
工程(3)では、露光後の樹脂膜にアルカリ性の水溶液を接触させる。すなわち工程(3)において現像が行われる。工程(3)において、現像液により樹脂膜の非露光部を溶解して、露光部を残存させて、所定のパターンを有する硬化膜を得る。
【0079】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノナンの水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0080】
現像時間は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗膜の厚さなどによって異なるが、通常30〜600秒間である。現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー法、シャワー現像法などのいずれでもよい。
【0081】
上記のように作製した硬化膜に対し、用途に応じてさらに、追加の露光(以下「後露光」という。)や加熱を行うことによってさらに硬化膜を硬化させることができる。
後露光は、上記露光と同様の方法で行なうことができる。露光量は特に限定されないが、高圧水銀灯使用の場合100〜2000mJ/cm2が好ましい。加熱については、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置を用いて、所定の温度、例えば60〜100℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5〜30分間、オーブン中では5〜60分間加熱処理をすればよい。この後処理によって、さらに良好な特性を有するパターンの硬化膜を得ることができる。
【0082】
パターン化された樹脂膜は流水等により洗浄してもよい。その後、エアーガンなどを用いて風乾したり、ホットプレート、オーブンなど加熱下で乾燥させてもよい。
【0083】
[メッキ造形物の作製]
本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造されたレジストパターンを使用して、定法に従い、バンプ等のメッキ造形物を作製、エッチングによる基板の加工、レジストパターンを絶縁膜として使用することができる。例えば、上記レジストパターンの製造方法に示したようにレジストパターンを基材上に形成し、このレジストパターンをマスクとして電解メッキなどを実施することによりメッキ造形物を製造することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、「部」は「質量部」を示す。
1.物性の測定方法
アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法
下記条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にてアルカリ可溶性樹脂(A)のMwを測定した。
・カラム:東ソー社製カラムのTSK−MおよびTSK2500を直列に接続
・溶媒:テトラヒドロフラン
・温度:40℃
・検出方法:屈折率法
・標準物質:ポリスチレン
【0085】
2.アルカリ可溶性樹脂(A)の合成
[合成例1]アルカリ可溶性樹脂(A−1)の合成
窒素置換したドライアイス/メタノール還流器の付いたフラスコ中に、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル5.0g、および重合溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル90gを仕込み、攪拌した。
【0086】
得られた溶液に、メタクリル酸11g、p−イソプロペニルフェノール15g、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカニルメタクリレート15g、イソボルニルアクリレート39g、およびフェノキシポリエチレングリコールアクリレート20gを仕込み、攪拌を開始し、80℃まで昇温した。その後、80℃で6時間加熱した。
【0087】
加熱終了後、反応生成物を多量のシクロヘキサン中に滴下して凝固させた。この凝固物を水洗し、該凝固物を凝固物と同質量のテトラヒドロフランに再溶解した後、得られた溶液を多量のシクロヘキサン中に滴下して再度凝固させた。この再溶解および凝固作業を計3回行った後、得られた凝固物を40℃で48時間真空乾燥し、アルカリ可溶性樹脂(A−1)を得た。アルカリ可溶性樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は10,000であった。
【0088】
[合成例2]アルカリ可溶性樹脂(A−2)の合成
窒素置換したドライアイス/メタノール還流器の付いたフラスコ中に、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル5.0g、および重合溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル150gを仕込み、攪拌した。
【0089】
得られた溶液に、メタクリル酸10g、p−イソプロペニルフェノール15g、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカニルメタクリレート25g、イソボルニルアクリレート20g、およびn−ブチルメタクリレート30gを仕込み、攪拌を開始し、80℃まで昇温した。その後、80℃で7時間加熱した。
【0090】
加熱終了後、反応生成物を多量のシクロヘキサン中に滴下して凝固させた。この凝固物を水洗し、該凝固物を凝固物と同質量のテトラヒドロフランに再溶解した後、得られた溶液を多量のシクロヘキサン中に滴下して再度凝固させた。この再溶解および凝固作業を計3回行った後、得られた凝固物を40℃で48時間真空乾燥し、アルカリ可溶性樹脂A−2を得た。アルカリ可溶性樹脂(A2)の重量平均分子量(Mw)は10,000あった。
【0091】
3.感光性樹脂組成物の調製
[実施例1]感光性樹脂脂組成物の調製
アルカリ可溶性樹脂(A)としてアルカリ可溶性樹脂(A−1)を100部、1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物(B)として、ポリエステルアクリレート(商品名「アロニックスM−8060」、東亞合成(株)製)(B−1)を80部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(B−2)を10部、トリメチロールプロパントリアクリレート(B−3)を10部、ケト型オキシムエステル構造を有する光ラジカル重合開始剤(C)として、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1-(O−アセチルオキシム)(商品名「IRGACURE OXE02」、東亞合成(株)製、前記式(5)で表わされる化合物)(C−1)を5部、化合物(D)として、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン(D−1)を2部、有機溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(E−1)を200部、界面活性剤としてフタージェントFTX−218(F−1)((株)ネオス製)を0.1部用い、これらを混合、攪拌して均一な溶液を得た。この溶液を、孔径10μmのカプセルフィルターでろ過して、実施例1の感光性樹脂組成物を得た。
【0092】
[実施例2〜9、比較例1〜5]感光性樹脂組成物の調製
表1に記載の各成分およびその配合量を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜5の感光性樹脂組成物を得た。
得られた組成物を用いて、下記の評価を行った。
【0093】
【表1】
【0094】
なお、表1中に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
A−1:合成例1で重合したアルカリ可溶性樹脂A1
A−2:合成例2で重合したアルカリ可溶性樹脂A2
B−1:ポリエステルアクリレート(商品名「アロニックスM−8060」、東亞合成(株)製)
B−2:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
B−3:トリメチロールプロパントリアクリレート
C−1:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1-(O−アセチルオキシム)(商品名「IRGACURE OXE02」、BASF(株)製)
C−2:前記式(6)に示す構造を有する光ラジカル重合開始剤
CR−1:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「IRGACURE 651」、BASF(株)製)
CR−2:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名「LUCIRIN TPO」、BASF(株)製)
D−1:2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン
D−2:1,4−ナフトキノン
DR−1:p−メトキシフェノール
DR−2:4,4' −[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール
DR−3:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「IRGANOX 1010」、BASF(株)製)
E−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
F−1:ジグリセリンエチレンオキサイド(平均付加モル数=18)付加物ペルフルオロノネニルエーテル (「フタージェントFTX−218」、(株)ネオス製)
【0095】
4.評価
感光性樹脂組成物の評価方法は以下のとおりである。評価結果を表1に示す。
酸素阻害の有無
シリコン板上に銅スパッタ膜を備えてなる基板にスピンコーターを用いて、各組成物を塗布した後、ホットプレート上で、90℃で5分間加熱して、厚さ5μmの樹脂塗膜を形成した。次いで、ステッパー(ニコン社製、型式「NSR−2005i10D」)を用い、パターンマスクを介して、樹脂塗膜を露光した。露光後の樹脂塗膜を、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に、30秒間接触させ、流水洗浄し、窒素ブローして、レジストパターンを形成した。得られたレジストパターンの中で、ライン幅とスペース幅が同じレジストパターンにおいて、ライン幅が2μmのレジストパターンの形状を、電子顕微鏡にて観察した。酸素阻害の有無は、以下の基準にてパターン形状を評価することで行った。
【0096】
A:2μmのレジストパターンを矩形で解像している
B:2μmのレジストパターンを解像できるが、レジストパターン形状は矩形でない
C:2μmのレジストパターンを解像できない