(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2対向面(32、54)は、前記端部(34、56)およびそれらの間の中間部(35、57)の全てが前記回転方向で端にいくほど前記基準曲面から前記第1対向面とは反対側へ離れるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転位置検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示された位置検出装置では、両ヨークの端部間の隙間を広げるため、内側ヨークの両端部を内側へ突き出させるとともに外側ヨークの両端部を外側へ突き出させている。そのため、位置検出装置に対して外側および内側の両方で搭載上の制約を受けるという問題があった。例えば、内側にシャフトが配置される場合、内側ヨークとシャフトとが干渉しないように位置検出装置を全体的に外側に設ける必要がある。また、両ヨークを樹脂でモールドする場合、ヨークの両端部でモールド樹脂の厚みを確保しにくくなる。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁束密度検出手段の出力信号の直線性を向上させつつ搭載性の低下が抑えられた回転位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による回転位置検出装置は、第1磁束伝達部材、第2磁束伝達部材、第1磁束発生手段、第2磁束発生手段および磁束密度検出手段を備える。
第1磁束伝達部材は検出対象の回転方向へ延びている。第2磁束伝達部材は、検出対象の回転中心と直交する方向である径方向において第1磁束伝達部材と対向するように回転方向へ延びており、第1磁束伝達部材と共に基準部材および検出対象の一方に設けられている。第1磁束発生手段は、第1磁束伝達部材の一端部と第2磁束伝達部材の一端部との間に設けられている。第2磁束発生手段は、第1磁束伝達部材の他端部と第2磁束伝達部材の他端部との間に設けられている。磁束密度検出手段は、第1磁束伝達部材と第2磁束伝達部材との間の隙間に位置し、基準部材および検出対象の他方に設けられ、通過する磁束密度に応じた信号を出力する。
【0007】
ここで、第1磁束伝達部材のうち第2磁束伝達部材と対向し且つ前記隙間を区画形成している面を第1対向面とする。また、第2磁束伝達部材のうち第1磁束伝達部材と対向し且つ前記隙間を区画形成している面を第2対向面とする。また、第2対向面の回転方向の中央を通り、曲率中心が回転中心と一致し且つ曲率半径が一定である仮想的な曲面を基準曲面とする。
第1対向面は、曲率中心が回転中心と一致し且つ曲率半径が一定である曲面である。第2対向面のうち少なくとも回転方向の両方の端部は、回転方向で端にいくほど基準曲面から第1対向面とは反対側へ離れるように形成されている。
【0008】
このように構成することで、両磁束伝達部材間の隙間は回転方向の中央よりも両端が広くなり、磁束密度検出手段を流れる磁束密度が隙間の端部で増大することが抑制される。したがって、磁束密度検出手段の出力信号の直線性が向上する。
また、両磁束伝達部材の端部間の隙間を広げるために第1磁束伝達部材を内側または外側へ突き出させる必要がない。つまり、径方向へ突き出させるのは第2磁束伝達部材だけでよい。そのため、回転位置検出装置に対して外側および内側の一方で搭載上の制約を受けることを回避可能であるので、搭載性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による回転位置検出装置は、
図1に示す回転式アクチュエータ100に設けられている。
【0011】
(回転式アクチュエータ)
先ず、回転式アクチュエータ100の概略構成について
図1を参照して説明する。
回転式アクチュエータ100は、ハウジング101、ケース102、モータ103、出力部材104および回転位置検出装置10を備えている。
【0012】
ハウジング101およびケース102は、車体または車体に取り付けられた部材に固定される。
【0013】
出力部材104は、モータ軸107に連結されている出力回転体108と、ケース102により回転可能に支持され、出力回転体108と一体に回転する出力軸109とを有する。出力回転体108は、回転中心AX1から離れた位置で周方向へ延びている弧状の通孔111を有する。
【0014】
回転位置検出装置10は、出力回転体108の通孔111に設けられており、ケース102に対する出力回転体108の相対的な回転位置(回転角度)を検出可能である。回転位置検出装置10は、信号端子112を介して電子制御装置106と電気的に接続されており、出力回転体108の回転位置に対応する出力信号を出力する。ケース102は特許請求の範囲に記載の「基準部材」に相当し、また、出力回転体108は特許請求の範囲に記載の「検出対象」に相当する。
【0015】
(回転位置検出装置の基本構成)
次に、回転位置検出装置10の基本構成について
図1、
図2を参照して説明する。
以下の説明において、出力回転体108が回転する方向を「回転方向」と記載する。また、出力回転体108の回転中心AX1と直交する方向を「径方向」と記載する。
【0016】
回転位置検出装置10は、第1ヨーク11、第2ヨーク12、第1磁石13、第2磁石14およびホールIC22を備えている。
第1ヨーク11は、磁性材料から構成され、出力回転体108の回転方向へ延びており、通孔111内で出力回転体108に固定されている。第1ヨーク11は特許請求の範囲に記載の「第1磁束伝達部材」に相当する。
【0017】
第2ヨーク12は、磁性材料から構成され、径方向において第1ヨーク11と対向するように回転方向へ延びており、通孔111内で出力回転体108に固定されている。第2ヨーク12は特許請求の範囲に記載の「第2磁束伝達部材」に相当する。本実施形態では、第2ヨーク12は、第1ヨーク11に対して径方向内側に設けられている。
【0018】
第1磁石13は、第1ヨーク11の一端部16と第2ヨーク12の一端部17との間に設けられており、N極が径方向外側に位置するとともにS極が径方向内側に位置するように着磁されている。第1磁石13は特許請求の範囲に記載の「第1磁束発生手段」に相当する。
【0019】
第2磁石14は、第1ヨーク11の他端部18と第2ヨーク12の他端部19との間に設けられており、N極が径方向内側に位置するとともにS極が径方向外側に位置するように着磁されている。第2磁石14は特許請求の範囲に記載の「第2磁束発生手段」に相当する。
【0020】
第1ヨーク11は、第1磁石13のN極と第2磁石14のS極とをつないでいる。第2ヨーク12は、第1磁石13のS極と第2磁石14のN極とをつないでいる。第1ヨーク11、第2ヨーク12、第1磁石13および第2磁石14は、通孔111の内壁に沿って環状の閉磁気回路を形成している。第1ヨーク11は、第2ヨーク12に対して径方向に対向している。第1ヨーク11と第2ヨーク12との間には、回転方向へ延びる弧状の隙間21が区画形成されている。
【0021】
第1磁石13のN極から出る磁束には、第1ヨーク11を通って第2磁石14のS極に流れる還流磁束と、第1ヨーク11から隙間21を通って第2ヨーク12に流れる漏洩磁束と、第1ヨーク11および第2ヨーク12を通ることなく隙間21を通って第1磁石13のS極に流れる直通磁束とが含まれる。
【0022】
第2磁石14のN極から出る磁束には、第2ヨーク12を通って第1磁石13のS極に流れる還流磁束と、第2ヨーク12から隙間21を通って第1ヨーク11に流れる漏洩磁束と、第1ヨーク11および第2ヨーク12を通ることなく隙間21を通って第2磁石14のS極に流れる直通磁束とが含まれる。
【0023】
ホールIC22は、隙間21に設けられており、モールド部材24を介してケース102に固定されている。また、ホールIC22はホール素子25を有している。ホール素子25は、ホール効果を利用した磁電変換素子であって、感磁面を通過する磁束密度に応じた信号を出力するものであり、特許請求の範囲に記載の「磁束密度検出手段」に相当する。
【0024】
(回転位置検出装置の特徴構成)
次に、回転位置検出装置10の特徴構成について
図2、
図3を参照して説明する。
以下の説明において、第1ヨーク11のうち第2ヨーク12と対向し且つ隙間21を区画形成している面を第1対向面31とする。また、第2ヨーク12のうち第1ヨーク11と対向し且つ隙間21を区画形成している面を第2対向面32とする。また、第2対向面32の回転方向の中央33を通り、曲率中心が回転中心AX1と一致し且つ曲率半径が一定である仮想的な曲面を基準曲面BC1とする。また、回転中心AX1に直交する断面(
図2)において当該回転中心AX1と第2対向面32の中央33とを結ぶ仮想的な直線を中央直線CL1とする。
【0025】
図2に示すように、第1対向面31は、曲率中心が回転中心AX1と一致し且つ曲率半径R1が一定である曲面から構成されている。第1ヨーク11のうち第1対向面31に対応する部分の径方向断面積は、回転方向で一定である。
【0026】
第2対向面32は、回転方向の両方の端部34およびそれらの間の中間部35の全てが、回転方向で端にいくほど基準曲面BC1から第1対向面31とは反対側へ離れるように形成されている。本実施形態では、第2対向面32は、曲率中心AX2が中央直線CL1上で回転中心AX1から第1対向面31側に離れて位置し且つ曲率半径R2が一定である曲面から構成されている。第2ヨーク12のうち第2対向面32に対応する部分の径方向断面積は、回転方向で一定である。
【0027】
ここで、ホール素子25を通過する磁束密度は、各ヨーク間の隙間21の端部において直通磁束の影響を受けて急激に変化する傾向にある。これに対して、本実施形態では、隙間21の径方向の幅は回転方向の中央から端にいくほど連続的に大きくなっているので、ホール素子25を流れる磁束密度が隙間21の端部で増大することが抑制される。
【0028】
図3には、直交座標系において、出力回転体108の回転位置(回転角度)θと、ホール素子25を通過する磁束密度Bとの関係を示す特性線L1を実線で示している。また、
図3には、各ヨーク間の隙間の径方向の幅が回転方向で一定である比較形態における回転位置θと磁束密度Bとの関係を示す特性線L2を破線で示している。特性線L1と特性線L2とを比べても分かるように、本実施形態では、比較形態と比べると、回転位置検出範囲の端部にて磁束密度Bの増大が抑制される。
【0029】
(効果)
以上説明したように、第1実施形態では、第1対向面31は、曲率中心が回転中心AX1と一致し且つ曲率半径R1が一定である曲面から構成されている。第2対向面32のうち少なくとも回転方向の両方の端部34は、回転方向で端にいくほど基準曲面BC1から第1対向面31とは反対側へ離れるように形成されている。
【0030】
このように構成することで、両ヨーク間の隙間21は回転方向の中央よりも両端が広くなり、ホール素子25を流れる磁束密度が隙間21の端部で増大することが抑制される。したがって、ホール素子25の出力信号の直線性が向上する。
また、隙間21の端部を中央よりも広げるために第1ヨーク11を外側へ突き出させる必要がない。つまり、径方向へ突き出させるのは第2ヨーク12だけでよい。そのため、回転位置検出装置10に対して外側で搭載上の制約を受けることを回避可能であるので、搭載性の低下を抑えることができる。
【0031】
また、第1実施形態では、第2対向面32は、回転方向の両方の端部34およびそれらの間の中間部35の全てが、回転方向で端にいくほど基準曲面BC1から第1対向面31とは反対側へ離れるように形成されている。特に、第1実施形態では、第2対向面32は、曲率中心AX2が中央直線CL1上で回転中心AX1から第1対向面31側に離れて位置し且つ曲率半径R2が一定である曲面から構成されている。
このように構成することで、第2ヨーク12を単純な形状とすることができ、設計および製造が容易となる。
【0032】
[第1実施形態の変形例]
第1実施形態の変形例では、
図4に示すように、第2ヨーク41の第2対向面42の中間部43は、曲率中心が回転中心AX1と一致し且つ曲率半径R3が一定である曲面から構成されている。本実施形態では、中間部43は、基準曲面BC1と一致するように形成されている。
第2対向面42の両方の端部44は、回転方向で端にいくほど基準曲面BC1から第1対向面31とは反対側へ離れるように形成されている。本実施形態では、端部44は、曲率中心AX3が中央直線CL1上で回転中心AX1から第1対向面31側に離れて位置し且つ曲率半径R4が一定である曲面から構成されている。
【0033】
以上より、第1ヨーク11と第2ヨーク41との間の隙間45の端部の径方向幅は回転方向の端にいくほど大きくなっているので、ホール素子25を流れる磁束密度が隙間45の端部で増大することが抑制される。
このように、第2対向面42の中間部43と第1対向面31との間の間隔が回転方向で一定であっても、第2対向面42の端部44が回転方向で端にいくほど第1対向面31から離れるように形成されていれば、第1実施形態と同様に、ホール素子25の出力信号の直線性を向上させることができる。
【0034】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態では、
図5に示すように、第2ヨーク52は、第1ヨーク51に対して径方向外側に設けられている。第1磁石13は第1ヨーク51の一端部511と第2ヨーク52の一端部521との間に設けられ、また第2磁石14は第1ヨーク51の他端部512と第2ヨーク52の他端部522との間に設けられている。以下の説明では、第2対向面54の回転方向の中央55を通り、曲率中心が回転中心AX1と一致し且つ曲率半径が一定である仮想的な曲面を基準曲面BC2とする。また、回転中心AX1に直交する断面(
図5)において当該回転中心AX1と第2対向面54の中央55とを結ぶ仮想的な直線を中央直線CL2とする。
【0035】
第1対向面53は、曲率中心が回転中心AX1と一致し且つ曲率半径R3が一定である曲面から構成されている。
第2対向面54は、回転方向の両方の端部56およびそれらの間の中間部57の全てが、回転方向で端にいくほど基準曲面BC2から第1対向面53とは反対側へ離れるように形成されている。本実施形態では、第2対向面54は、曲率中心AX4が中央直線CL2上で回転中心AX1から第1対向面53とは反対側に離れて位置し且つ曲率半径R5が一定である曲面から構成されている。
【0036】
以上より、第1ヨーク51と第2ヨーク52との間の隙間58の径方向幅は回転方向の端にいくほど大きくなっているので、ホール素子25を流れる磁束密度が隙間58の端部で増大することが抑制される。
このように、第1ヨーク51と第2ヨーク52との径方向の配置が第1実施形態とは逆であっても、第2対向面54の端部56が回転方向で端にいくほど第1対向面53から離れるように形成されていれば、第1実施形態と同様に、ホール素子25の出力信号の直線性が向上する。
【0037】
また、隙間58の端部を中央よりも広げるために第1ヨーク51を内側へ突き出させる必要がない。つまり、径方向へ突き出させるのは第2ヨーク52だけでよい。そのため、回転位置検出装置10に対して内側で搭載上の制約を受けることを回避可能であるので、搭載性の低下を抑えることができる。
【0038】
また、第2実施形態では、第2対向面54は、回転方向の両方の端部56およびそれらの間の中間部57の全てが、回転方向で端にいくほど基準曲面BC2から第1対向面53とは反対側へ離れるように形成されている。特に、第2実施形態では、第2対向面54は、曲率中心AX4が中央直線CL2上で回転中心AX1から第1対向面53とは反対側に離れて位置し且つ曲率半径R5が一定である曲面から構成されている。
このように構成することで、第2ヨーク52を単純な形状とすることができ、設計および製造が容易となる。
【0039】
[第2実施形態の変形例]
第2実施形態の変形例では、
図6に示すように、第2ヨーク61の第2対向面62の中間部63は、曲率中心が回転中心AX1と一致し且つ曲率半径R1が一定である曲面から構成されている。本実施形態では、中間部63は、基準曲面BC2と一致するように形成されている。
第2対向面62の両方の端部64は、回転方向で端にいくほど基準曲面BC2から第1対向面53とは反対側へ離れるように形成されている。本実施形態では、端部64は、曲率中心AX5が中央直線CL2上で回転中心AX1から第1対向面53とは反対側に離れて位置し且つ曲率半径R6が一定である曲面から構成されている。
【0040】
以上より、第1ヨーク51と第2ヨーク61との間の隙間65の端部の径方向幅は回転方向の端にいくほど大きくなっているので、ホール素子25を流れる磁束密度が隙間65の端部で増大することが抑制される。
このように、第2対向面62の中間部63と第1対向面53との間の間隔が回転方向で一定であっても、第2対向面62の端部64が回転方向で端にいくほど第1対向面53から離れるように形成されていれば、第2実施形態と同様に、ホール素子25の出力信号の直線性を向上させることができる。
【0041】
[他の実施形態]
本発明の他の実施形態では、第1対向面および第2対向面の曲率半径は一定でなくてもよい。また、第1対向面および第2対向面は、曲面に限らず、回転方向に連なる複数の平面から構成されてもよい。
本発明の他の実施形態では、第1ヨークおよび第2ヨークの径方向断面積は、回転方向で変化してもよい。
本発明の他の実施形態では、閉磁気回路を構成する部材(第1ヨーク、第2ヨーク、第1磁石、第2磁石)がケースに設けられ、ホールICが出力回転体に設けられてもよい。
【0042】
本発明の他の実施形態では、第1磁石および第2磁石に代えて、例えば電磁石などの他の磁束発生手段が設けられてもよい。
本発明の他の実施形態では、回転位置検出装置は、例えばモータと出力軸との間に設けられる減速機の最終減速部材などの他の回転部材に設けられてもよい。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。