(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の熱的要素は、少なくとも、各空気調和機、前記一つの閉じた空間内にある温冷熱源、日射熱、並びに、前記一つの閉じた空間内に侵入した外気熱であることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機の制御装置。
前記合計電力量演算部は、各熱的要素の熱負荷を求め、該求めた熱的要素の熱負荷を、前記熱負荷分配比率情報で示された比率で各分割空間にそれぞれ分配し、各分割空間にそれぞれ分配された熱負荷と前記設定温度とをもとに、前記空気調和機が消費する電力量を前記空気調和機ごとに求めることを特徴とする請求項3または4に記載の空気調和機の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗では、複数の空気調和機を設置している場合が多い。従来においては、このように複数の空気調和機が設置されている場合でも、全ての空気調和機に対して同じ条件で一律制御していた。しかしながら、冷蔵冷凍ショーケースのような温冷熱源は店舗内で均等に配置されるとは限らず、また、日射による熱や人の出入りによる外気熱の侵入も考慮すると、各空気調和機に係る熱負荷は互いに異なる場合がほとんどである。さらに、店舗内では、場所に応じて快適性が求められるか否かも異なっている。このため、複数の空気調和機に対して同じ条件で一律に制御する従来の方法では、快適性の確保と消費電力量の抑制との双方を満たすことができなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、快適性の確保と消費電力量の抑制との双方を満たすことができる空気調和システム、複数の空気調和機を制御する空気調和機の制御装置および空気調和機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる空気調和システムは、一つの閉じた空間の温度制御を行う空気調和システムであって、前記一つの閉じた空間に対して設けられた複数の空気調和機と、前記複数の空気調和機のそれぞれに対応させて前記一つの閉じた空間を仮想的に分割した複数の分割空間の各々に少なくとも一つずつ設置された複数の温度センサと、前記複数の温度センサによる温度検出結果と、前記一つの閉じた空間に関連する複数の熱的要素による熱負荷が前記複数の分割空間にそれぞれ分配される分配比率とを用いて、それぞれの前記空気調和機が対応する前記分割空間の特性に応じて定められる設定温度を含む運転条件をもとに前記空気調和機が消費する電力量を前記空気調和機ごとに求めた結果に応じて、前記複数の空気調和機が消費する合計電力量が最小となるように前記複数の空気調和機をそれぞれ制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる空気調和機の制御装置は、一つの閉じた空間の温度制御のために前記一つの閉じた空間に対して設けられた複数の空気調和機を制御する空気調和機の制御装置であって、前記複数の空気調和機のそれぞれに対応させて前記一つの閉じた空間を仮想的に分割した複数の分割空間の各々に少なくとも一つずつ設置された複数の温度センサによる温度検出結果と、前記一つの閉じた空間に関連する複数の熱的要素による熱負荷が前記複数の分割空間にそれぞれ分配される分配比率とを用いて、それぞれの前記空気調和機が対応する前記分割空間の特性に応じて定められる設定温度を含む運転条件をもとに前記空気調和機が消費する電力量を前記空気調和機ごとに演算した結果に応じて、前記複数の空気調和機が消費する合計電力量が最小となるように前記複数の空気調和機をそれぞれ制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる空気調和機の制御装置は、各空気調和機の運転条件をそれぞれ記憶する運転条件記憶部と、前記分配比率を、前記複数の熱的要素ごとにそれぞれ示した熱負荷分配比率情報を記憶する熱負荷情報記憶部と、前記運転条件記憶部に記憶された各空気調和機の運転条件をもとに、各運転条件に含まれる設定温度の組み合わせごとに、前記複数の温度センサによる温度検出結果と前記熱負荷情報記憶部が記憶する前記熱負荷分配比率情報とを用いて、前記空気調和機が消費する電力量を前記空気調和機ごとに求め、該求めた各電力量を合計した合計電力量をそれぞれ演算する合計電力量演算部と、前記合計電力量演算部が演算した各合計電力量のうち最も小さい合計電力量となる設定温度の組み合わせを抽出し、該抽出した設定温度の組み合わせで前記複数の空気調和機をそれぞれ制御する空気調和機制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる空気調和機の制御装置は、前記複数の熱的要素は、少なくとも、各空気調和機、前記一つの閉じた空間内にある温冷熱源、日射熱、並びに、前記一つの閉じた空間内に侵入した外気熱であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる空気調和機の制御装置は、前記合計電力量演算部は、各熱的要素の熱負荷を求め、該求めた熱的要素の熱負荷を、前記熱負荷分配比率情報で示された比率で各分割空間にそれぞれ分配し、各分割空間にそれぞれ分配された熱負荷と前記設定温度とをもとに、前記空気調和機が消費する電力量を前記空気調和機ごとに求めることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる空気調和機の制御方法は、一つの閉じた空間の温度制御のために前記一つの閉じた空間に対して設けられた複数の空気調和機を制御する制御装置が行う空気調和機の制御方法であって、各空気調和機に対応して前記一つの閉じた空間を仮想的に分割した複数の分割空間の各々に少なくとも一つずつ設置された複数の温度センサによる温度検出結果を取得する温度検出結果取得処理と、それぞれの前記空気調和機が対応する前記分割空間の特性に応じて定められる設定温度を含む運転条件をもとに各運転条件に含まれる設定温度の組み合わせを取得する温度組み合わせ取得処理と、前記一つの閉じた空間に関連する複数の熱的要素による熱負荷が前記複数の分割空間に分配される分配比率を、前記複数の熱的要素ごとにそれぞれ示した熱負荷分配比率情報を取得する熱負荷分配比率情報取得処理と、前記温度検出結果取得処理において取得した温度検出結果と、前記熱負荷分配比率情報取得処理において取得した前記熱負荷分配比率情報とを用いて、前記温度組み合わせ取得処理において取得した前記設定温度の組み合わせごとに、前記空気調和機が消費する電力量を前記空気調和機ごとに求め、該求めた各電力量を合計した合計電力量をそれぞれ演算する合計電力量演算処理と、前記合計電力量演算処理において演算した各合計電力量のうち最も小さい合計電力量となる設定温度の組み合わせを抽出し、該抽出した温度の組み合わせで前記複数の空気調和機をそれぞれ制御する空気調和機制御処理と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の空気調和機のそれぞれに対応させて一つの閉じた空間を仮想的に分割した複数の分割空間の各々に少なくとも一つずつ設置された複数の温度センサによる温度検出結果と、一つの閉じた空間に関連する複数の熱的要素による熱負荷が複数の分割空間にそれぞれ分配される分配比率とを用いて、それぞれの空気調和機が対応する分割空間の特性に応じて定められる設定温度を含む運転条件をもとに空気調和機が消費する電力量を空気調和機ごとに演算した結果に応じて、複数の空気調和機が消費する合計電力量が最小となるように複数の空気調和機をそれぞれ制御するため、快適性の確保と消費電力量の抑制との双方を満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる実施の形態の一例として、一つの閉じた空間に複数の空気調和機が設けられた空気調和システムについて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0015】
(実施の形態)
本実施の形態にかかる空気調和システムにおいては、複数の空気調和機のそれぞれに対応させて一つの閉じた空間を仮想的に分割した複数の分割空間の各々に少なくとも一つずつ設置された複数の温度センサによる温度検出結果と、一つの閉じた空間に関連する複数の熱的要素による熱負荷が複数の分割空間にそれぞれ分配される分配比率とを用いて、それぞれの空気調和機が対応する分割空間の特性に応じて定められる設定温度を含む運転条件をもとに空気調和機が消費する電力量を空気調和機ごとに演算した結果に応じて、複数の空気調和機が消費する合計電力量が最小となるように複数の空気調和機をそれぞれ制御する。本実施の形態では、一つの閉じた空間として、一つの店舗の内部空間を例として説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態にかかる空気調和システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2は、本実施の形態の空気調和システムが設置される店舗の内部構成の一例を示す図である。
【0017】
図1および
図2に示すように、実施の形態にかかる空気調和システム1は、店舗Sの内部空間に対して設けられた空気調和機群2と、ショーケース群3と、温度センサ群4と、空気調和機群2およびショーケース群3の運転を制御する制御装置5と、を備える。
【0018】
空気調和機群2は、たとえば、店舗Sの天井等に設けられた第1空気調和機21および第2空気調和機22を有する。
図2に例示するように、第1空気調和機21は、店舗Sの出入り口Eとレジカウンタとの間の天井に設けられ、第2空気調和機22は、店舗Sの奥の後述する第4ショーケース34手前の天井に設けられる。
【0019】
ショーケース群3は、冷蔵冷凍装置であり、
図2に例示するように、店舗S奥の壁面に並んで配置された第1ショーケース31〜第4ショーケース34を有する。
【0020】
空気調和システム1では、店舗Sの内部空間を複数の空気調和機のそれぞれに対応させて仮想的に分割し、該分割した分割空間の特性に対応させて空気調和機ごとに最適制御を行いながら、最大電力量の低減も行っている。
図2の例では、第1空気調和機21は、店舗Sの内部空間を仮想的に分割した分割空間の一方の分割空間A1に配置し、第2空気調和機22は、他方の分割空間A2に配置される。分割の仕方は、複数の空気調和機、ショーケース、窓、出入り口、レジカウンタ等のレイアウトに応じて決められる。分割空間A1は第1空気調和機21に対応し、分割空間A2は第2空気調和機22に対応する。
【0021】
温度センサ群4は、第1温度センサ41、第2温度センサ42、および、室外用温度センサ43を少なくとも含む。第1温度センサ41、第2温度センサ42、および、室外用温度センサ43は、異なる領域に少なくとも一つずつ設置される。第1温度センサ41は、たとえば、
図2に示す分割空間A1の第1空気調和機21周辺に設けられ、設置された周辺の温度を検出する。第2温度センサ42は、たとえば、分割空間A2の第2空気調和機22周辺に設けられ、設置された周辺の温度を検出する。室外用温度センサ43は、たとえば、店舗Sの窓W2外に設けられ、店舗Sの外気温を検出する。各温度センサは、検出した各温度結果を制御装置5に出力する。各温度センサは、定期的に温度検出を行ってもよく、制御装置5から温度検出指示があった時に温度検出を行ってもよい。
【0022】
制御装置5は、空気調和機群2の各空気調和機、ショーケース群3の各ショーケース、温度センサ群4の各温度センサに接続し、空気調和機群2の各空気調和機およびショーケース群3の各ショーケースの運転を制御する。制御装置5は、入力部51、出力部52、運転条件記憶部53、熱負荷情報記憶部54、合計電力量演算部55、および、制御部56を備える。
【0023】
入力部51は、キーボード、各種ボタン、各種スイッチ等の入力デバイスや、マウスやタッチパネル等のポインティングデバイスを含み、これらのデバイスに対する空気調和システム1の管理者の操作に応じた空気調和制御に関する指示信号を制御部56に入力する。
【0024】
出力部52は、ディスプレイやプリンタなどを有し、空気調和システム1の空気調和制御に関する情報を出力する。
【0025】
運転条件記憶部53は、第1空気調和機21および第2空気調和機22の運転条件をそれぞれ記憶する。第1空気調和機21および第2空気調和機22の運転条件は、第1空気調和機21および第2空気調和機22が対応する分割空間A1および分割空間A2の特性に応じて予め決められている。運転条件は、温度や湿度をパラメータとして含んでいる。運転条件は、パラメータの組み合わせに応じて、快適性優先運転条件と、省エネルギー優先条件とが設定されている。
【0026】
快適性優先運転条件は、快適性を優先させるようにパラメータが設定される。快適性優先運転条件は、たとえば、冷房時および暖房時の温度範囲が22℃以上26℃以下に設定されている。省エネ優先運転条件は、省エネルギー性を優先させるようにパラメータが設定される。省エネ優先運転条件は、冷房時の温度範囲が24℃以上28℃以下に設定されており、暖房時の温度範囲が20℃以上24℃以下に設定されている。第1空気調和機21および第2空気調和機22の運転条件は、来客数、外気温、季節、時間帯等に応じて、スケジュール管理されている。第1空気調和機21に対応する分割空間A1は、レジカウンタを含み、従業員や会計待ちの客が留まることが多いため、快適性優先運転条件が設定される時間帯が多い。これに対し、第2空気調和機22に対応する分割空間A2は、人が留まることが分割空間A1よりも少ないため、省エネ性優先条件が設定される時間帯が多い。これらの各運転条件および設定温度範囲は、入力部51などを介して予め入力されることによって運転条件記憶部53に記憶される。また、図示しない専用ネットワーク回線を介して外部装置から入力されることによって、運転条件記憶部53に記憶してもよい。なお、設定温度範囲は、運転条件ごとに予め決まっているが、入力部51などを介して変更が可能である。
【0027】
熱負荷情報記憶部54は、店舗Sの内部空間に関連する複数の熱的要素による熱負荷が複数の分割空間にそれぞれ分配される分配比率を、複数の熱的要素ごとにそれぞれ示した熱負荷分配比率情報を記憶する。
図2に示す例では、複数の熱的要素として、少なくとも、店舗Sの内部空間にある温冷熱源である第1空気調和機21、第2空気調和機22、漏れ冷気(矢印Y31〜34参照)を放出する第1〜第4ショーケース31〜34に加え、窓W1,W2を介した日射熱(矢印Y11,Y12参照)、出入り口Eを介して店舗Sの内部空間内に侵入した外気熱(矢印Y21参照)、および、人Hが含まれる。分割空間A1,A2に対する各熱的要素の熱負荷分配比率は、予め求められて熱負荷情報記憶部54に記憶される。また、各要素の熱負荷の分配比率は、店舗Sの空気調和機、ショーケース等の温冷熱源の配置変更や機種変更、窓や出入口の配置変更などに応じて、適宜変更される。
【0028】
合計電力量演算部55は、運転条件記憶部53に記憶された運転条件の中から、制御対象期間における各空気調和機の運転条件を取得する。合計電力量演算部55は、取得した各空気調和機の運転条件をもとに、各運転条件に含まれる各設定温度の組み合わせを取得する。合計電力量演算部は、取得した設定温度の組み合わせごとに、第1空気調和機21および第2空気調和機22が消費する電力量を空気調和機ごとに求める。そして、合計電力量演算部55は、該求めた各電力量を合計した合計電力量を、設定温度の組み合わせごとに、それぞれ演算する。合計電力量演算部55は、温度センサ群4の各温度センサによる温度検出結果と、熱負荷情報記憶部54が記憶する熱負荷分配比率情報と、を少なくとも用いて、第1空気調和機21および第2空気調和機22の各電力量を求める。
【0029】
制御部56は、図示しないメモリ等に保持された各種プログラムおよびパラメータを実行して制御装置5の各構成部位の各処理および各動作を制御する。制御部56は、制御装置5の各構成部位に入出力されるデータについて入出力制御を行い、また、各構成部位に対してデータに対する所定の処理を行わせる。制御部56は、空気調和機制御部57を備える。空気調和機制御部57は、合計電力量演算部55が演算した各合計電力量のうち最も小さい合計電力量となる設定温度の組み合わせを抽出し、該抽出した設定温度の組み合わせで第1空気調和機21および第2空気調和機22をそれぞれ制御する。
【0030】
図3は、
図1に示す制御装置5が行う空気調和機の制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、制御装置5では、制御部56が、温度センサ群4の各温度センサによる温度検出結果を取得する温度検出結果取得処理を行う(ステップS1)。制御部56は、第1温度センサ41による分割空間A1の温度検出結果、第2温度センサ42による分割空間A2の温度検出結果とともに、室外用温度センサ43によって店舗S外の外気温の温度検出結果を取得する。制御部56が取得した各温度検出結果は、合計電力量演算部55に出力される。
【0031】
合計電力量演算部55は、運転条件記憶部53に記憶された運転条件の中から、制御対象期間における第1空気調和機21および第2空気調和機22の運転条件を取得し、取得した運転条件に含まれる設定温度の全てを組み合わせを取得する温度組み合わせ取得処理を行う(ステップS2)。
【0032】
図4は、合計電力量の演算対象となる第1空気調和機21および第2空気調和機22の設定温度の組み合わせを例示した表を示す図である。たとえば、第1空気調和機21は、快適性優先運転条件に決められており、
図4の組み合わせ表Tでは、上述したように設定温度が22℃以上26℃以下の範囲で決められている。第2空気調和機22は、省エネ優先運転条件に決められており、上述したように設定温度が24℃以上28℃以下の範囲で決められている。したがって、第1空気調和機21および第2空気調和機22の設定温度の組み合わせは、セル群Rに含まれるセルC1〜C25に示すように25通りある。たとえば、セルC1は、第1空気調和機21の設定温度が22℃であり、第2空気調和機22の設定温度が24℃である組み合わせに対応する。セルC2は、第1空気調和機21の設定温度が23℃であり、第2空気調和機22の設定温度が24℃である組み合わせに対応する。合計電力量演算部55は、このセルC1〜C25に示す25通りの設定温度の組み合わせごとに、以降に説明するステップS4〜ステップS7の処理を行うことによって、空気調和機が消費する電力量を空気調和機ごとに求め、該求めた各電力量を合計した合計電力量を、対応するセルに順次入れていく。
【0033】
合計電力量演算部55は、ステップS2において求めた設定温度の各組み合わせのうち、合計電力量の演算対象となる最初の温度組み合わせを選択する(ステップS3)。たとえば、合計電力量演算部55は、
図4の組み合わせ表TのセルC1に対応する設定温度の組み合わせを最初の演算対象として選択する。
【0034】
合計電力量演算部55は、運転条件記憶部53を参照し、店舗Sの内部空間に関連する複数の要素による熱負荷が分割空間A1,A2にそれぞれ分配される分配比率を、複数の熱的要素ごとにそれぞれ示した熱負荷分配比率情報を取得する熱負荷分配比率情報取得処理を行う(ステップS4)。
【0035】
図5は、熱負荷情報記憶部54が記憶する熱負荷分配比率情報の一例を示す図である。
図5に示す熱負荷分配比率表Dは、
図2の店舗Sに関連する各熱的要素の熱負荷が分割空間A1,A2にそれぞれ分配される比率を示す一覧表である。熱負荷分配比率表Dでは、第1空気調和機21、第2空気調和機22、第1〜第4ショーケース31〜34、窓W1、W2から侵入する日射熱量、出入り口Eから侵入する外気熱量、人的熱等について、最大負荷と、分割空間A1,A2にそれぞれ分配される熱負荷の分配比率とが、それぞれ対応付けられている。
【0036】
合計電力量演算部55は、演算対象の設定温度の組み合わせにおける各空気調和機の熱負荷を演算する(ステップS5)。合計電力量演算部55は、少なくとも、温度検出結果取得処理において取得した温度検出結果と、熱負荷分配比率取得処理において取得した熱負荷分配比率情報とを用いて、第1空気調和機21および第2空気調和機22が消費する熱負荷総量をそれぞれ求める。
【0037】
ステップS5の処理内容について説明する。実施の形態1では、各外気温、各室温および空間の広さ等に応じて、第1空気調和機21における熱負荷の初期値と空間設定温度との関係、および、第2空気調和機22における熱負荷の初期値と空間設定温度との関係が予め求められている。また、第1〜第4ショーケース31〜34についても、ショーケースごとに、各外気温、各室温および空間の広さ等に応じて、熱負荷の初期値と庫内設定温度との関係が予め求められている。これらの各関係は、たとえば熱負荷情報記憶部54に記憶されている。
【0038】
図6は、ステップS1において取得した外気温および室温に対応する第1空気調和機21の熱負荷の初期値と空間設定温度との関係を示す図である。
図6は、冷房時のものに対応し、曲線L1は、第1空気調和機21の熱負荷の初期値と、空間設定温度との関係を示す。たとえば、セルC1(
図4参照)の設定温度の組み合わせに対応させて、第1空気調和機21の熱負荷総量を求める場合を例に説明する。この場合、合計電力量演算部55は、矢印Y41に示すように、空間設定温度22℃に対応する熱負荷a1を第1空気調和機21の熱負荷の初期値として求める。合計電力量演算部55は、熱負荷分配表D(
図5参照)の冷房時の第1空気調和機21の分配比率に従い、求めた熱負荷a1のうちの70%を分割空間A1に分配し、熱負荷a1のうちの30%を分割空間A2に分配する。
【0039】
続いて、合計電力量演算部55は、ステップS1において取得した外気温および室温に対応する第2空気調和機22の熱負荷の初期値と空間設定温度との関係を参照し、セルC1の設定温度の組み合わせに対応させて、空間設定温度24℃の場合の第2空気調和機22の熱負荷の初期値を求める。合計電力量演算部55は、熱負荷分配表Dの冷房時の第2空気調和機22の分配比率に従い、求めた第2空気調和機22の熱負荷の初期値のうちの20%を分割空間A1に分配し、熱負荷c1のうちの80%を分割空間A2に分配する。同様に、合計電力量演算部55は、第1〜第4ショーケース31〜34についても、ショーケースごとに、ステップS1において取得した外気温および室温に対応するショーケースの熱負荷の初期値と庫内設定温度との関係を参照し、熱負荷の初期値を第1〜第4ショーケース31〜34ごとにそれぞれ求め、求めた各熱負荷を、熱負荷分配表Dの分配比率に従い、分割空間A1,A2に分配する。なお、参考までに、
図7の曲線L2に、暖房時における第1空気調和機21の熱負荷の初期値と空間設定温度との関係の一例を示す。
【0040】
合計電力量演算部55は、店舗Sに関連する他の熱的要素の熱負荷もそれぞれ求め、熱負荷分配表Dの分配比率に従い分割空間A1,A2に分配する。合計電力量演算部55は、演算対象である時間帯、室外用温度センサ43から求めた外気温、第1温度センサ41による検出温度および窓W1,W2の断熱特性等をもとに、窓W1,W2から侵入する日射熱の熱負荷を求め、求めた熱負荷のうちの85%を分割空間A1に分配し、15%を分割空間A2に分配する。合計電力量演算部55は、演算対象である時間帯、室外用温度センサ43から求めた外気温および出入り口Eの開閉回数や断熱特性等をもとに、出入り口Eから侵入する外気熱の熱負荷を求め、求めた熱負荷のうちの70%を分割空間A1に分配し、30%を分割空間A2に分配する。そして、合計電力量演算部55は、過去の来客数データ等をもとに演算対象である時間帯にレジカウンタ付近に留まる人Hの数を推定し、推定した人数に対応する人的熱負荷を求め、求めた熱負荷のうちの95%を分割空間A1に分配し、5%を分割空間A2に分配する。
【0041】
このように、合計電力量演算部55は、内部空間の熱量の分布特性をもとに各分割空間A1,A2に関連する各熱的要素の熱負荷を分割空間A1および分割空間A2に分配し、分割空間A1,A2のそれぞれの熱負荷の総量を求める。合計電力量演算部55は、求めた分割空間A1,A2の熱負荷の各総量と、設定温度とをもとに、第1空気調和機21、第2空気調和機22にそれぞれかかる熱負荷の総量を、空気調和機ごとに求める。合計電力量演算部55は、第1空気調和機21については、分割空間A1の熱負荷の総量と、セルC1に対応する第1空気調和機21の設定温度22℃とに基づいて、第1空気調和機21の熱負荷を求める。合計電力量演算部55は、第2空気調和機22については、分割空間A2の熱負荷の総量と、セルC1に対応する第2空気調和機22の設定温度24℃とに基づいて、第1空気調和機21の熱負荷の総量を求める。
【0042】
合計電力量演算部55は、ステップS5において求めた第1空気調和機21の熱負荷の総量と、第2空気調和機22の熱負荷の総量とをそれぞれ電力量(エネルギー量)に換算する(ステップS6)。合計電力量演算部55は、ステップS6において換算した第1空気調和機21の電力量と第2空気調和機22の電力量を合計した合計電力量を演算する合計電力量演算処理を行い(ステップS7)、この設定温度の組み合わせにおける合計電力量を取得する。
【0043】
合計電力量演算部55は、全ての温度組み合わせに対して合計電力量を演算したか否かを判断する(ステップS8)。合計電力量演算部55は、全ての温度組み合わせに対して合計電力量を演算していないと判断した場合(ステップS8:No)、演算対象となる次の温度組み合わせを選択して(ステップS9)、ステップS4以降の処理を行う。合計電力量演算部55は、たとえばセルC1に対応する温度組み合わせに関する合計電力量の演算が終了した場合には、次のセルC2に対応する温度組み合わせに対して、ステップS4以降の処理を行い、セルC2に対応する温度組み合わせにおける空気調和機群2の合計電力量を求める。
【0044】
一方、合計電力量演算部55が、全ての温度組み合わせに対して合計電力量を演算したと判断した場合(ステップS8:Yes)、空気調和機制御部57は、合計電力量演算部55が演算した各合計電力量のうち合計電力量が最少となる温度組み合わせを第1空気調和機21および第2空気調和機22の運転条件として抽出する(ステップS10)。空気調和機制御部57は、ステップS10において抽出した設定温度の組み合わせで第1空気調和機21および第2空気調和機22をそれぞれ制御する空気調和機制御処理を行う(ステップS11)。
【0045】
図8は、合計電力量演算部55の演算結果の一例を示す図である。たとえば、空気調和機制御部57には、合計電力量演算部55の演算結果として、セルC1〜C25に、それぞれ演算された合計電力量が入れられた合計電力量演算表T1(
図8参照)が出力される。この例では、第1空気調和機21の電力量および第2空気調和機22の電力量との合計は、合計電力量演算表T1のセルC14に対応する組み合わせの設定温度の場合に最小となる。したがって、空気調和機制御部57は、セルC14に対応する設定温度の組み合わせを第1空気調和機21および第2空気調和機22の運転条件として抽出する。そして、空気調和機制御部57は、抽出したセルC14に対応する設定温度の組み合わせに従い、第1空気調和機21の設定温度を25℃とし、第2空気調和機22の設定温度を26℃として、各空気調和機をそれぞれ制御する。この結果、第1空気調和機21に対応する分割空間A1では、快適性優先運転条件に含まれる25℃の室温に調整され、第2空気調和機22に対応する分割空間A2では、省エネ優先運転条件に含まれる26℃の室温に調整される。
【0046】
このように、実施の形態では、複数の空気調和機が設けられた一つの閉じた空間を各空気調和機に対応させて仮想的に分割し、それぞれの空気調和機が対応する分割空間の特性に応じて定められる設定温度を含む運転条件をもとに空気調和機が消費する電力量を空気調和機ごとに求めた結果に応じて、複数の空気調和機が消費する合計電力量が最小となるように複数の空気調和機をそれぞれ制御する。言い換えると、本実施の形態では、仮想的に分割した分割空間A1,A2の特性に対応させて第1空気調和機21および第2空気調和機22をそれぞれ最適な運転条件で制御するとともに電力量の低減も実行しているため、快適性を求められる分割空間では快適性を確保しながら、空間全体の空気調和に要する消費電力の低減を図ることができる。さらに、本実施の形態では、制御対象の空間における熱分布特性をもとに各分割空間A1、A2に各熱的要素の熱負荷を分配し、分配後の各分割空間のそれぞれの熱負荷総量と設定温度とに応じて、実際に各空気調和機にかかる熱負荷総量を求めているため、各分割空間A1、A2の室温を、適切に設定温度に調整することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、制御装置5は、定期的、外気変化に応じたタイミング、或いは、予め設定されたタイミングで、
図3に示すステップS1〜ステップS11の処理を行うことによって、快適性および省エネ性の双方を満たすように、第1空気調和機21および第2空気調和機22の制御を行う。
【0048】
また、本実施の形態で説明したシステム構成は一例であり、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があることは言うまでもない。実施の形態では、制御装置5が、運転条件記憶部53、熱負荷情報記憶部54および合計電力量演算部55の全てを備える場合を例に説明したが、もちろんこれに限らず、運転条件記憶部53、熱負荷情報記憶部54および合計電力量演算部55は、ネットワーク回線でそれぞれ接続する複数の装置に分散していてもよい。この場合、空気調和機制御部57は、合計電力量演算部55において演算された設定温度の各組み合わせに対応するそれぞれの合計電力量を、ネットワーク回線を介して取得し、該取得した各合計電力量のうち最も小さい合計電力量となる設定温度の組み合わせで第1空気調和機21および第2空気調和機22をそれぞれ制御すればよい。もちろん、制御装置5の制御対象である空気調和機も二台に限るものではなく、三台以上であってもよい。
図4の例では、二台の空気調和機の設定温度の組み合わせをセルに対応させて電力量を求めているが、三台以上の場合を含め、設定温度の組み合わせを多次元配列に対応させて電力量を求めてもよい。
【0049】
また、本実施の形態の空気調和システム1は、一つの閉じた空間の空気調和制御を行うものであるため、一階と二階が吹き抜けとなって一つの空間を形成する場合にも適用可能である。
【0050】
また、本実施の形態にかかる制御装置5で実行される各処理に対する実行プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよく、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。