(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電子情報ネットワークの普及に伴い、電子書籍に代表される電子出版が利用されている。この電子出版及び電子情報を表示する装置としては、一般的に自発光型又はバックライト型の表示装置が用いられる。しかしながら、これらの表示装置は紙に印刷した媒体に比べ、人間工学的理由から長時間使用すると疲労を招きやすい。また、これらの表示装置は、消費電力が大きく、電池駆動の場合には表示時間が制限される。
【0003】
自発光型又はバックライト型の表示装置よりも目にかかる負担が小さい表示装置として、周囲の照明又は環境光などに基づく反射光を制御して表示を行う反射型ディスプレイが利用される。
【0004】
反射型ディスプレイとしては、液晶を用いる方式、帯電した微粒子を電場によって動かす電気泳動方式(例えば、文献1(特許第2552783号公報))、2色に塗り分けられた球体を電場で回転させるツイストボール方式(例えば、文献2(特許第2860790号公報))、樹脂中に分散した液晶の液体内部の配向状態を電場で制御する高分子分散型液晶方式(PDLC:Polymer Dispersion Liquid Crystal)(例えば、文献3(特開2001−92383号公報))、樹脂成分比が小さく液晶中で高分子が網目構造を持つ高分子ネットワーク型液晶方式(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)(例えば、文献4(特許第3178530号公報))などが利用される。
【0005】
これらの方式の反射型ディスプレイは、いずれも散乱反射状態を電場で制御する。これらの方式の反射型ディスプレイ自体は色表示が困難であり、現実的にはカラー表示するためにカラーフィルタが使用される。
【0006】
反射型ディスプレイのカラー化のためにカラーフィルタを用いる方法において、カラーフィルタの画素と画素との間隔は、1〜20μmが好ましい(例えば、文献5(特許第4415525号公報))。
【0007】
文献5の方法のカラーフィルタ基板と電極基板とを貼り合わせる工程では、5μm未満のずれ量で貼り合わせなければ、コントラストの高い表示ができない。しかしながら、カラーフィルタ基板と電極基板とを精度よく貼り合わせることは現在の技術上困難である。
【0008】
そこで、インクジェット印刷法により、反射型ディスプレイの上に直接カラー印刷を行い、カラーフィルタと反射型ディスプレイとを貼り合わせる工程をなくすことでアライメントを不要にする方法が提案されている。また、インクジェット印刷法は、非接触印刷であり、異物の影響が少なく、無版印刷であるために、版を用いた印刷と比較してコストを安くできる。
【0009】
反射型ディスプレイのカラー化のために、電気光学ディスプレイの様々な表面に、又は、そのようなディスプレイを生産するために使われるフロントプレーン積層物に、インク着色領域をインクジェット印刷する方法が提案されている(例えば、文献6(特表2010−503895号公報))。
【0010】
色の再現性を向上させるために、インク着色領域は、画素全体を覆うことが好ましい。しかし、インクジェット印刷法においては、液滴が球体となるため、四角形状の画素全体が効率的に覆われず、画素内着色率が低下する場合がある。また、このような課題は、公知の文献1−6では言及されていない。
【0011】
四角形状にインク着色領域を作製するためにバンクを用いる方法がある。しかし、この方法では、バンクを作製する工程がさらに増え、バンク作製のためのアライメント精度が必要であり、バンク太さを細く作製する必要があるため、コストが高くなる場合がある。
【0012】
画素内着色率が低くても、画素内着色率が高い場合と同じ色再現性を出す方法として、インクの濃度又は膜厚を上げる方法がある。しかし、この方法では、インクの透過率が下がり、反射率が低下する場合がある。
【0013】
画素内着色率を上げることで、カラー反射型ディスプレイにおいて反射率を維持しながら、色再現性を向上させることができる。しかし、単に画素内着色率を向上させると、画素と画素との重なりによる混色が発生する。混色を抑制しながらも、画素内着色率を上げるためには、画素形状を四角形に近づけることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
上述したように、白黒表示が可能な反射型白黒ディスプレイとしては、液晶を用いる方式、電気泳動方式、ツイストボール方式、高分子分散型液晶方式、高分子ネットワーク型液晶方式などが用いられる。本実施形態では、電気泳動方式の反射型ディスプレイを一例に挙げて説明するが、他の方式に対しても同様に適用可能である。
【0024】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る電気泳動方式のカラー反射型ディスプレイの層構成の一例を概略的に示す断面図である。
【0026】
カラー反射型ディスプレイは、基材層1の一方の面上に、電極層2、接着層3、電気泳動材料層4、光透過性電極層5、透明樹脂膜6、インク定着層7、カラーフィルタ層8、保護膜9をこの順序で形成して構成される。
【0027】
本実施形態に係る電気泳動方式のカラー反射型ディスプレイの作製工程は、従来のモノクロ電気泳動方式の反射型ディスプレイの作製工程に加え、インクジェット印刷法によるカラー印刷工程をさらに含む。
【0028】
電子ペーパーと呼ばれる電気泳動方式の反射型ディスプレイとして、例えば、特許第2551783号公報に記載されたディスプレイがある。この反射型ディスプレイは、少なくとも片面が光透過型である対向電極板の間に、電子泳動粒子を含む分散系を封入し、対向電極の間に印加された表示制御用電圧によって光学的反射特性を変化させて所要の表示を行う。
【0029】
本実施形態に係るカラー反射型ディスプレイは、
図1に示すように、モノクロ電子ペーパーの透明樹脂膜6の上にインク定着層7を形成し、インクジェット印刷法によりカラーフィルタ層8を形成することによって、構成される。
【0030】
インク定着層7として、例えば、特開2000−43405号公報のインクジェット記録媒体、又は、特開2008−272972号公報のインクジェットプリンタ用記録媒体が使用されてもよい。インク定着層7は、透明度が高いことが好ましい。インク定着層7としては、透明であること、受像したインクの変色及び褪色がないこと、諸耐性があることなどの性能が要求され、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテートなどのビニル樹脂が用いられる。
【0031】
インク定着層7の材料は、例えば、塗布装置で乾燥後の厚さが0.1〜10μmになるように塗布される。塗布装置としては、例えば、ダイコータ、スピンコータ、バーコータ等が用いられる。ただし、塗布方法は、これらの方法に限定されない。
【0032】
インク定着層7の材料を、塗布後に、熱、真空、UV照射等の方法により固化することにより、インク定着層7が形成される。
【0033】
本実施形態においては、電極配線をパターニングした基板1に合わせて、任意のパターンの塗布が、インクジェット法により実施される。
【0034】
次に、本実施形態で使用されるインクジェット塗布装置の一例について簡単に説明する。
【0035】
図2は、インクジェット塗布装置の構成の一例を概略的に示す斜視図である。このインクジェット塗布装置11は、搬送ステージ13、インクジェットヘッドユニット15を備える。
【0036】
搬送ステージ13は、カラー反射型ディスプレイ基材(以下、単に基材と称す)12を載置して1方向に精度よく搬送する。
【0037】
インクジェットヘッドユニット15は、カラー反射型ディスプレイに塗布するためのインクジェットインクが供給されるインクジェットヘッド14を備える。インクジェットヘッドユニット15は、インクジェットヘッド14を、搬送ステージ13の上の基材12から一定の高さに保持し、搬送ステージ13の搬送方向と直交する方向に移動することが可能な装置である。
【0038】
インクジェットヘッド14は、インクを吐出する複数のノズルを備える。複数のノズルは、インクジェットヘッド14をカラーフィルタ層8の着色画素パターン(以下、単に画素パターンとする)に対して相対的に走査する走査方向に対して、所定の等間隔になるように配置されている。
【0039】
インクジェット塗布装置11は、さらに、インクジェットヘッド14のノズルからインクジェットインクを吐出制御するためのインクジェットヘッド制御基盤16、インク定着層7に塗布されたインクを乾燥させる乾燥部、インクタンク19を備える。
【0040】
インクジェット塗布装置11において、インクジェットヘッド14のノズルから基材12までの距離を300μm以上、2000μm以下とすることによって、インクを基材12に精度よく塗布することができる。インクジェットヘッド14のノズルから基材12までの距離が300μm未満の場合には、インクジェットヘッド14と基材12とが接触する危険性が高まる。インクジェットヘッド14のノズルから基材12までの距離が2000μmより大きい場合には、吐出飛行曲がり(ミスディレクション)が発生し易い。
【0041】
インクジェット塗布装置11は、インクジェットヘッド14のノズルの吐出性を回復するためのインクジェットヘッドンテナンス装置17を備える。このインクジェットヘッドメンテナンス装置17は、ノズル面をウエス又はフィルム等でワイピングし、又は、液を吐出するためのポット等を備える。インクジェットヘッドメンテナンス装置17としては、一般的なインクジェットヘッド14のメンテナンス機構を利用可能である。
【0042】
インクジェット塗布装置11は、カラー反射型ディスプレイの画素パターンの位置を決めるために、アライメント用カメラと画像処理ユニットを備えることが好ましい。
【0043】
本実施形態においては、
図2に示したインクジェット塗布装置11を用い、複数のノズルを備えたインクジェットヘッド14を画素パターンに対して相対的に走査し、基材12のインク定着層7が設けられた面に対し、インクジェットインクを吐出(供給)し、インク定着層7の上にインクジェットインク層、すなわちカラーフィルタ層8を形成する。なお、本実施形態においては、複数のノズルを備えたインクジェットヘッド14を画素パターンに対して相対的に走査する。走査のために、基材12側が移動してもよく、インクジェットヘッド14側が移動してもよい。また、基材12とインクジェットヘッド14の両方が移動してもよい。
【0044】
本実施形態において、画素形状は、四角形状に近づける。このため、画素の大きさに応じたインクジェット吐出配列が適用される。本実施形態においては、上記配列に着弾される順序は、画素形状に影響を与えるため、最適に設定される。液量も、画素形状に影響を与えるため、最適な値が設定される。
【0045】
図3から
図5Bは、画素形状と吐出配列パターンとの第1から第4の例を示す。
【0046】
図3に示す画素の形成方法では、画素の4隅に配列される液滴を、画素の他の位置に配列される液滴よりも先に着弾させている。
【0047】
図3に記載されている数字は配列順序を示す。もし、この配列順を変更し、一方の端から他方の端へ順に液滴が着弾された場合、インク同士が接触し、表面張力により画素形状は歪んだ円形となる。上記画素に配列される液滴の量は、画素の四隅に配列される液滴の量を画素の他の位置に配列される液滴の量の1.2以上、6倍以下にすることで、画素の辺をより直線に近づけることができる。画素の4隅に配列される液滴の量が画素の他の位置に配列される液滴の量の1.2倍より小さい場合、画素形状は画素の辺の中央部が膨らむ形となる。画素の4隅に配列される液滴の量が画素の他の位置に配列される液滴の量の6倍を超える場合、画素形状は画素の辺の中央部が窪む形となる。
【0048】
図4に示す画素の形成方法では、画素の4隅に配列される液滴を着弾させた後、画素の中心部に液滴を着弾させている。
【0049】
このように、画素の4隅に配列される液滴を着弾させた後、画素の中心部に液滴を着弾させると、4隅に配列された液滴が、画素の中心部に着弾された液滴の自由な濡れ広がりを抑制する。さらに、画素の中心部に着弾される液滴は、表面張力により、4隅に着弾された液滴の方向に向かって濡れ広がる。この結果、画素の中心部に着弾された液滴は四角形状に近づく。画素の中心部に着弾される液滴の量が、画素の4隅に配列される液滴の量の50倍を超える場合、4隅に配列された液滴が、画素の中心部に着弾された液滴の濡れ広がりを抑制できなくなり、画素形状が円形状になる。一方で、画素の中心部に着弾される液滴の量が、画素の4隅に配列される液滴の量の10倍以下の場合、画素の中心部に着弾された液滴の濡れ広がりが十分でなくなり、画素形状は、辺の中央部が窪む形状となる。
【0050】
図5Aは、インク液滴の間隔及び液量によって影響を受ける配列パターン形状の例を示す。
【0051】
さらに、
図5Bは、長穴状の配列パターンの組み合わせの一例を示す。
【0052】
図5Aの中央の配列パターンのように、液滴径と間隔Fとを調整し、縦に直線になる配列パターン形状が形成されることが好ましい。
【0053】
インク液滴の間隔と液量が最適化されていない場合、配列パターン形状は、
図5Aの左パターンのように窪んだ形、又は、
図5Aの右パターンのように中央部が膨らんだ形となる。例えば、長穴状着色部分の中央部の液量が少ない場合、又は、インク液滴の間隔Fが長い場合、配列パターン形状は、窪んだ形になる場合がある。長穴状着色部分の中央部の液量が多い場合、又は、インク液滴の間隔Fが短い場合、配列パターン形状は、中央部が膨らんだ形になる。長穴状着色部分の端部の液量は、長穴状着色部分の中央部の1.2以上、6倍以下にすることが好ましい。
【0054】
図5Bにおいて、長穴状の着色部は、インク液滴着弾部を連続して吐出することにより作製される。
【0055】
図5Bに記載されている数字は配列される順序を示す。もし、この配列順を変更し、配列パターンを一方の端から他方の端へ順に着弾させた場合、長穴状の着色部が接触し、着色部は、表面張力により歪んだ円形となる場合がある。この長穴状の着色部分は、任意の本数を並べることができるが、配列される順序は、1辺とその辺に向かい合う辺を先に形成することが好ましい。
【0056】
図5A及び
図5Bの方法で配列パターン形状を作製することにより、上述した画素の4隅に液滴を着弾させた後、画素の他の位置に液滴を着弾させる
図3及び
図4の方法よりも、インクジェット塗工回数を減らすことができ、塗工を効率化させることができる。
【0057】
本実施形態に係る画素パターンの製造方法においては、インクジェットヘッド14の隣り合うノズルの距離のうちのインクジェットヘッド14の主走査方向に垂直な成分を、カラー反射型ディスプレイの同じ色を形成する隣り合う画素と画素との距離のうちのインクジェットヘッド14の主走査方向に垂直な成分の整数分の1となるように、インクジェットヘッド14の向きが配置され、画素パターンにインクジェットインクが吐出及び供給されることが好ましい。
【0058】
また、例えば、インクジェットヘッド14は、主走査方向に傾けて配置されることが好ましい。
【0059】
図6は、インクジェットヘッド14を傾けたときのノズル孔とノズルピッチとの関係の一例を示す図である。
【0060】
参照番号21は、インクジェットヘッド14のノズル面、参照番号22は、インクジェットヘッド14のノズル孔を示す。インクジェットヘッド14のノズル列は、インク定着層7に向かう方向に配置される。ノズル列とカラー反射型ディスプレイの基材12とは、相対的に走査される。この場合、インクジェットヘッド14のノズル間隔のうちのインクジェットヘッド14の走査方向に直交する成分が、カラー反射型ディスプレイの隣り合う同じ色を着色すべき画素と画素との間の距離のうちのインクジェットヘッド14の走査方向に直交する成分の整数分の1となるように、インクジェットヘッド14が傾けて配置される。例えば、インクジェットヘッド14の配列において、インクジェットヘッド14におけるノズルが並んだ列、すなわちノズル配列の軸が、カラー反射型ディスプレイの基材12の搬送方向に対して任意の角度θで傾けられる。ノズル配列軸を傾けることにより、ノズルピッチを調整することができる。ノズル配列軸を傾けていない場合のノズルピッチをAとすると、ノズル配列軸が角度θで傾けられることにより、ノズルピッチは、「A×cosθ」となる。同じ色を着色すべき画素と画素との間のピッチBが決まっている場合、そのピッチBにノズルピッチを合わせるために、「cosθ=B÷A」としてθを求めることができる。
【0061】
ピッチBがノズルピッチAより大きい場合、一つノズルを飛ばして、「cosθ=B÷2A」としてθを求めてもよい。本実施形態においては、例えば、多相分割駆動のインクジェットヘッドが用いられる。多相分割駆動のインクジェットヘッドは、周期性を持つ複数の相がその相毎に分割されて駆動する。多相分割駆動のインクジェットヘッドが用いられる場合、ノズルの位置に応じてノズルからインクジェットインクを吐出する工程において、複数の相のうちの1相以上の特定相が割り当てられる。この場合、同じ相のノズルピッチをAとする。画素着色領域23がノズルの下を通過するタイミングに合わせて、インクジェットヘッド14は、制御された微少ドロップの吐出動作を実施する。
【0062】
別の実施形態として、独立ノズル制御のインクジェットヘッドが用いられてもよい。独立ノズル制御では、ノズル個々の吐出タイミングが走査方向の速度と時間に合わされる。吐出動作は、独立ノズル制御にしたがって実施される。
【0063】
本実施形態に係るカラー反射型ディスプレイの製造方法においては、インクジェットヘッド14は多相分割駆動としている。この多相分割駆動において、複数のノズルは周期性を持つ複数の相に割り当てられており、ノズルからインクジェットインクを吐出する工程は、複数の相のうちの一部の特定相に限定して行われる。これに対して、独立ノズル制御可能なインクジェットヘッドが用いられる場合、相は一つであることから、全てのノズルが使用可能である。本実施形態においては、ヘッドの種類については限定されず、任意のヘッドを使用可能である。
【0064】
図7は、本実施形態に係るインクジェットヘッド14における多層分割駆動の一例を示す説明図である。この
図7では、インクジェットヘッド14と、このインクジェットヘッド14に配置されたノズル24との関係の一例を示している。インクジェットヘッド14は、N個のノズル24を備えている。各ノズル24には、便宜的に、左端部又は右端部から1、2、3・・・と順番に自然数の番号Nが付与される。各ノズル24はインクを吐出する。各ノズル24の吐出のタイミング、回数、インクの吐出量などは、独立して制御可能である。ノズル24は、列ごとにA相のノズル1、4、7…(N−2)、B相のノズル2、5、8…(N−1)、C相のノズル3、6、9…Nに分割される。分割されたA相、B相、C相は周期性を持つ。
【0065】
例えば、インクジェットインクの吐出時に、A相のノズル1、4、7…(N−2)が用いられると、B相、C層はインクジェットインクを吐出しない。これにより、隣接ノズルの圧力や電気的な干渉を時間差でずらすことができ、吐出が安定し、吐出タイミングの制御を容易に行うことができ、より精度よくインクを塗布することができる。また、A相、B相、C相のノズルの吐出は、吐出ごとに切り替えることもでき、A相に吐出不良が生じた場合に、吐出する駆動相をB相、C相に切換えてもよい。
【0066】
本実施形態において、着色インクの材料は、例えば、着色顔料、樹脂、分散剤、溶媒を含むとしてもよい。着色インクは、フッ素を含み、撥液性を持つとしてもよい。インクの顔料は赤色、緑色、青色の3種類を使うことが好ましいが、いずれかの1種類又は2種類でもよく、インクの顔料として黄色、水色、紫色が用いられてもよい。また、色の組み合わせは限定されない。
【0067】
着色剤として使用される顔料として、例えば、Pigment Red9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、215、216、208、216、217、220、223、224、226、227、228、240、Pigment Blue 15、15:6、16、22、29、60、64、Pigment Green7、36、Pigment Red 20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、153、154、166、168、185、 Pigment Orange36、 Pigment Violet23などが用いられる。しかしながら、顔料は、これらに限定されるものではない。これらの顔料は、要望の色相を得るために、2種類以上を混合して用いられてもよい。
【0068】
着色インクの材料の樹脂としては、カゼイン、ゼラチン、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂などが用いられる。着色インクの材料の樹脂は、着色インクの樹脂と色素との関係に基づいて適宜選択されるとしてもよい。耐熱性又は耐光性が要求される場合には、着色インクの樹脂としてアクリル樹脂が好ましい。
【0069】
分散を向上させるために、分散剤が用いられる。分散剤の一例である極性溶媒インクとして、下記の一般式(1)のアルキレンオキサイドが用いられる。ただし、式(1)のR1は、飽和又は不飽和の炭化水素基を意味する。R2とR3は、それぞれ異なり、炭素数が「2」又は「3」のアルキレン基を意味する。mとnは、それぞれ「0」又は正の整数であり、5≦m+n≦30となり、分子量は200以下である。
【0070】
R
1−(R
2−O−)
m−(R3−O)
n−H…(1)
この一般式(1)の分散剤を用いることにより、水中、グリコール系溶媒、又は、グリセリン中で、顔料の分散性を増すことができる。
【0071】
分散を向上させるために、分散剤が用いられてもよく、分散剤としての非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが用いられてもよい。分散剤としてのイオン性界面活性剤として、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩などが用いられてもよい。その他に、分散剤として、有機顔料誘導体、ポリエステルなどが用いられてもよい。分散剤は、一種類が単独で使用されてもよく、又は、二種類以上が混合されて使用されてもよい。
【0072】
着色インクに使用される溶剤種は、インクジェット印刷における適性の表面張力範囲35mN/m以下で、かつ、沸点が130℃以上であることが好ましい。表面張力が35mN/mより大きい場合には、インクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼし、沸点が130℃未満の場合には、ノズル近傍での乾燥性が著しく高くなり、その結果、ノズル詰まり等の不良発生を招くため、好ましくない。具体的には、溶剤として、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが用いられるが、これらに限定されず、上記要件を満たす溶剤であれば適用可能である。必要に応じて2種類以上の溶剤が混合されて使用されてもよい。
【0073】
インクが乾燥、固化された後、カラーフィルタ層8の保護のために、保護膜9が形成される。カラーフィルタ層8の保護膜9を形成するために、着色パターン表面に、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル系、シリコーン系等のような有機樹脂が、又は、Si
3N
4、SiO
2、SiO、Al
2O
3、Ta
2O
3等のような無機膜が、例えば、スピンコート、ロールコート、又は、印刷法などの塗布法で、又は、蒸着法によって、保護膜9として形成されてもよい。
【0074】
上記の各実施形態は、発明の趣旨が変わらない範囲で様々に変更して適用することができる。
【実施例】
【0075】
各実施例においては、マトリクス上に印刷された反射型ディスプレイ用カラーフィルタの製造方法について説明する。
【0076】
基材層1として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)フィルムが用意される。インク定着層7の材料としては、ウレタン系樹脂、トルエン、水、IPAを混合した材料が用いられる。インク定着層7の材料は、ダイコータによって乾燥厚6μm〜8μmとなるよう塗布される。
【0077】
インク定着層7にインクジェット塗布装置11を用いて格子状のパターンが印刷される。印刷に用いられるインクは、顔料4%、合成樹脂20%、分散剤2%、ジエチレングリコールジメチルエーテル65%、PGM−Ac9%を含むとする。
【0078】
図8は、吐出配列パターンと画素形状との関係の一例を示す図である。
【0079】
印刷パターンは、120μm×120μmの画素サイズに収まるように塗布される。
図8の例では、4種類の配列パターンを用いて着色画素が形成される。
【0080】
第1の配列パターンは、画素の4隅に配列する液滴を着弾させた後、画素の他の位置に液滴を着弾させる方法(
図8の「画素4隅+α配列」参照)である。
【0081】
第2の配列パターンは、画素の4隅に液滴を配列した後に、画素中心に液滴を着弾させる方法(
図8の「画素4隅+画素中心」参照)である。
【0082】
第3の配列パターンは、長穴形状を形成する配列パターンを組み合わせる方法(
図8の「長穴形状配列」参照)である。
【0083】
第4の配列パターンは、比較用としての、画素4隅に着弾位置を配列する方法(
図8の「画素4隅配列」参照)である。
【0084】
インクジェットヘッド14の走査方向をy軸とし、y軸に垂直な方向をx軸とする。120μm×120μmの着色画素を形成するために、x軸、y軸の各液滴の着弾配列距離、及びインクジェットヘッド14から吐出される液滴の量、の2つの塗工パラメータが変更され、画素形状の最適化が行われる。
【0085】
[実施例1]
実施例1では、画素の4隅に配列される液滴を、画素の他の位置に配列される液滴よりも先に着弾させる方法について説明する。
【0086】
図8(A)は、配列パターンの第1の例を示す。数値は液滴の着弾順序を示し、矢印については、インクジェット塗布装置のインクジェットヘッドの走査方向をy軸とし、y軸に垂直な方向をx軸として示している。
【0087】
図8(A)で大きな円で囲まれている4隅の配列(1,2,3,4)に着弾される液量は、小さな円で囲まれているその他の配列(5,6,7,8)に着弾される液量の1.2以上、6倍以下に調整される。
図8(A)において、x軸間隔は、各液滴の中心を基準として各々の着弾間隔を同じ値で設定する。y軸間隔は、各液滴の中心を基準として各々の着弾間隔を同じ値で設定する。
【0088】
表1は、各々の液滴着弾間隔のx軸間隔、y軸間隔、4隅に配列される液滴の液量、その他の配列に着弾される液滴の液量を示す。
【表1】
【0089】
さらに、表1は、着色画素の対角線を(a)、1辺とその辺に向かい合う辺との最大距離を(b)、1辺とその辺に向かい合う辺との最小距離を(c)とし、これらの比a/b及びa/cの値と、画素形状の適不適の判断(評価)結果とを示す。判断結果は、四角形状に近いものを○、丸型や窪みが発生したものを×として判断基準を設定し、評価した結果を示す。
【0090】
a/b≒1.41、a/c≒1.41の場合、着色画素が正方形又は正方形に近づき、カラーフィルタ層8の適切な画素領域が確保される。
【0091】
また、a/b<1.15の場合、着色画素は丸型に近づき、1.15<a/b<1.41、かつ、a/c>1.41の場合、着色画素は正方形にならず辺が窪んだ形状を形成し、どちらも着色画素が四角形状に近づかず、適切な画素領域が確保されない。
【0092】
表1の実施例1の結果では、x軸及びy軸の着弾間隔が35μmの場合に四角形状に近づき、a/b=1.39、a/c=1.49となる。この場合の画素形状を
図8(E)に示す。実験の結果、1.15<a/b<1.41、1.42<a/c<2.0の範囲外の場合には、画素形状は四角形状にならなかった。
【0093】
[実施例2]
実施例2では、画素の4隅に液滴が配列された後、画素中心部に液滴が着弾される方法について説明する。
【0094】
図8(B)は、配列パターンの第2の例を示す。
図8(B)では、大きな円で囲まれている配列(5)に着弾させる液量と、小さな円で囲まれている配列(1,2,3,4)に着弾させる液量とがそれぞれ調整される。
【0095】
表2は、各々の液滴着弾間隔のx軸間隔、y軸間隔、画素4隅に配列される液滴の液量、画素中心に着弾される液滴の液量、a/b及びa/cの値、画素形状評価の結果を示す。
【表2】
【0096】
表2において、x軸間隔とy軸間隔は、
図8(B)の小さな円で囲まれている配列(1,2,3,4)の着弾間隔を示している。
【0097】
表2の実施例2の結果では、x軸及びy軸の着弾間隔が80μm、画素の4隅に配列される液滴量が18pl、画素中心部に配列される液滴量が250plの場合に、四角形状に近づき、a/bは1.42となる。この場合の画素形状を
図8(F)に示す。実験の結果、1.15<a/b<1.41、1.42<a/c<2.0の範囲外の場合には、画素形状は四角形状にならなかった。
【0098】
[実施例3]
実施例3では、長穴形状を形成する配列パターンを組み合わせる方法について説明する。
【0099】
図8(C)は、配列パターンの第3の例を示す。
図8(C)では、大きな円で囲まれている配列(1,3,4,6,7,9)に着弾される液量が、小さな円で囲まれている配列(2,5,8)に着弾される液量の1.2以上、6倍以下に調整される。
【0100】
表3は、各々の液滴着弾間隔のx軸間隔、y軸間隔、画素の1辺とその辺に向かい合う辺に配列される液滴の液量、その他の配列に着弾される液滴の液量、a/b及びa/cの値、画素形状評価の結果を示す。
【表3】
【0101】
この表3のx軸間隔及びy軸間隔は、
図8(C)の各々の着弾間隔を示している。
【0102】
表3の実施例3の結果では、x軸及びy軸の着弾間隔が35μmの場合に、四角形状に近づき、a/bは1.42となる。この場合の画素形状を
図8(G)に示す。実験の結果、1.15<a/b<1.41、1.42<a/b<2.0の範囲外の場合には、画素形状は、四角形状にならなかった。
【0103】
[実施例4]
図8(D)は、比較用として、画素4隅に液滴が配列される配列パターンの一例を示す。
【0104】
表4は、比較用としての、画素4隅に液滴が配列される方法で着色画素を形成した結果を示す。
【表4】
【0105】
x軸間隔、y軸間隔が短い場合(20μm以上、30μm以下)、一辺120μmの画素を形成するためには、着弾液滴の直径を大きくする必要があり、液滴量が増える(48pl以上、60pl以下)。したがって、
図8(H)のように、画素形状は丸型となり、a/bは1.2以下、a/cは2.0以上となる。
【0106】
一方、x軸間隔、y軸半角が長い場合(40μm以上、50μm以下)、着弾液滴の直径を小さくする必要があり、液滴量が減る。したがって、
図8(I)のように、画素形状が窪む形となり、a/cは2.1以上となる。
【0107】
この結果、画素4隅に液滴が配列される方法においては、効果的に画素領域が占有される四角形状の着色画素を形成することができなかった。
【0108】
したがって、実施例1,2で説明された、液量比を調整するとともに画素の4隅に配列される液滴を画素の他の位置に配列される液滴よりも先に着弾させる方法、及び、実施例3で説明された、液量比を調整するとともに長穴形状を形成する配列パターンを組み合わせる方法は、実施例4で説明された画素4隅に着弾位置を配列する方法と比較し、着色画素の形成において、a/bを1.41に近づけることができ、効果的に画素領域を占有可能な四角形状に近い着色画素を形成することができる。