特許第6233326号(P6233326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233326
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】研磨布立ち上げ方法及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20171113BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01L21/304 622M
   B24B53/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-20606(P2015-20606)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-143837(P2016-143837A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑宜
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005-288664(JP,A)
【文献】 特開2004-63482(JP,A)
【文献】 特開2006-332550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハを研磨するための研磨布を立ち上げる方法であって、
研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ、ドレッシングを行った後、ダミー研磨を行い、次いで該ダミー研磨によって前記研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後、前記研磨布中の研磨残渣量を測定し、該測定した研磨残渣量に基づいて前記ダミー研磨を行った研磨布の立ち上がりを判定することを特徴とする研磨布立ち上げ方法。
【請求項2】
前記判定は、予め、別途ドレッシングのみを行った発泡ウレタン樹脂製の基準用研磨布を用いてシリコンウェーハの研磨、前記ダミー研磨後の除去処理と同じ手段による研磨残渣の除去処理、及び該除去処理後の研磨残渣量の測定を行って、(基準用研磨布の使用時間)/(予め設定した基準用研磨布の寿命)の値が0.05の時点の基準用研磨布中の研磨残渣量を基準値として求めておき、前記ダミー研磨及び除去処理後に測定した研磨残渣量が前記基準値以上であれば前記ダミー研磨を行った研磨布が立ち上がったと判定することを特徴とする請求項1に記載の研磨布立ち上げ方法。
【請求項3】
前記研磨残渣量を、蛍光X線分析法によって得られる蛍光X線スペクトルからSi−Kα線を含む信号を検出して測定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨布立ち上げ方法。
【請求項4】
前記研磨残渣の除去処理を、ドレッシング及び高圧ジェット水洗浄によって行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の研磨布立ち上げ方法。
【請求項5】
前記研磨機を、両面研磨機とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の研磨布立ち上げ方法。
【請求項6】
研磨布を用いてシリコンウェーハを研磨する方法であって、
研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ、ドレッシングを行った後、ダミー研磨を行い、次いで該ダミー研磨によって前記研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後、前記研磨布中の研磨残渣量を測定し、該測定した研磨残渣量に基づいて前記シリコンウェーハの研磨に使用する研磨布を選別し、該選別された研磨布を用いて前記シリコンウェーハの研磨を行うことを特徴とする研磨方法。
【請求項7】
前記選別は、予め、別途ドレッシングのみを行った発泡ウレタン樹脂製の基準用研磨布を用いてシリコンウェーハの研磨、前記ダミー研磨後の除去処理と同じ手段による研磨残渣の除去処理、及び該除去処理後の研磨残渣量の測定を行って、(基準用研磨布の使用時間)/(予め設定した基準用研磨布の寿命)の値が0.05の時点の基準用研磨布中の研磨残渣量を基準値として求めておき、前記ダミー研磨及び除去処理後に測定した研磨残渣量が前記基準値以上である研磨布を前記シリコンウェーハの研磨に使用する研磨布として選別することを特徴とする請求項6に記載の研磨方法。
【請求項8】
前記研磨残渣量を、蛍光X線分析法によって得られる蛍光X線スペクトルからSi−Kα線を含む信号を検出して測定することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の研磨方法。
【請求項9】
前記研磨残渣の除去処理を、ドレッシング及び高圧ジェット水洗浄によって行うことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記研磨機を、両面研磨機とすることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハを研磨するための研磨布を立ち上げる方法、及び研磨布を用いてシリコンウェーハを研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウェーハ研磨工程では、研磨布を研磨機に貼り付けた直後の研磨において、ウェーハのキズの発生やパーティクルレベルが著しく悪化することがある。更に、研磨機が大きくなるほど、このキズの発生やパーティクルレベルの悪化は起こりやすい。このようなキズの発生やパーティクルレベルの悪化は、貼り付けた直後の研磨布の立ち上がりが不十分なために起こると考えられている。
【0003】
研磨布を立ち上げる際には、特許文献1に記載されるような表面にダイヤモンドを敷き詰めたドレッサー等を用いてドレッシングを行い、研磨布の表面粗さや厚みを整えることが一般的に行われている。しかしながら、このようなドレッシングによる研磨布の立ち上げを行っても、研磨開始直後(以下、「研磨布ライフ初期」とも呼ぶ)ではパーティクルレベルの悪化が見られることから、ドレッシングだけでは研磨布の立ち上げが不十分であることが分かってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−000868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善することができる研磨布の立ち上げ方法を提供することを目的とする。また本発明は、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善することができる研磨方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、シリコンウェーハを研磨するための研磨布を立ち上げる方法であって、研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ、ドレッシングを行った後、ダミー研磨を行い、次いで該ダミー研磨によって前記研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後、前記研磨布中の研磨残渣量を測定し、該測定した研磨残渣量に基づいて前記ダミー研磨を行った研磨布の立ち上がりを判定する研磨布立ち上げ方法を提供する。
【0007】
このような立ち上げ方法であれば、ドレッシングに加えてダミー研磨による研磨布の立ち上げを行い、更にダミー研磨後に研磨布が十分に立ち上がっているかどうかを判定するため、研磨布が十分に立ち上がるまで研磨布の立ち上げを行うことができ、結果として研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善することができる。
【0008】
また、前記判定は、予め、別途ドレッシングのみを行った発泡ウレタン樹脂製の基準用研磨布を用いてシリコンウェーハの研磨、前記ダミー研磨後の除去処理と同じ手段による研磨残渣の除去処理、及び該除去処理後の研磨残渣量の測定を行って、(基準用研磨布の使用時間)/(予め設定した基準用研磨布の寿命)の値が0.05の時点の基準用研磨布中の研磨残渣量を基準値として求めておき、前記ダミー研磨及び除去処理後に測定した研磨残渣量が前記基準値以上であれば前記ダミー研磨を行った研磨布が立ち上がったと判定することが好ましい。
【0009】
このような方法であれば、ダミー研磨後の研磨布が十分に立ち上がっているかどうかをより確実に判定することができるため、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルをより確実に改善することができる。
【0010】
またこのとき、前記研磨残渣量を、蛍光X線分析法によって得られる蛍光X線スペクトルからSi−Kα線を含む信号を検出して測定することが好ましい。
このような方法であれば、簡単に研磨残渣量を測定することができる。
【0011】
またこのとき、前記研磨残渣の除去処理を、ドレッシング及び高圧ジェット水洗浄によって行うことが好ましい。
このような方法であれば、簡単に研磨残渣の除去処理を行うことができる。
【0012】
またこのとき、前記研磨機を、例えば両面研磨機とすることができる。
このように、本発明の研磨布立ち上げ方法は、両面研磨機を用いる場合にも適用することができる。
【0013】
更に、本発明では、研磨布を用いてシリコンウェーハを研磨する方法であって、研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ、ドレッシングを行った後、ダミー研磨を行い、次いで該ダミー研磨によって前記研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後、前記研磨布中の研磨残渣量を測定し、該測定した研磨残渣量に基づいて前記シリコンウェーハの研磨に使用する研磨布を選別し、該選別された研磨布を用いて前記シリコンウェーハの研磨を行う研磨方法を提供する。
【0014】
このような研磨方法であれば、ドレッシングに加えてダミー研磨による研磨布の立ち上げを行い、更にダミー研磨によって十分に立ち上がった研磨布を選別して研磨に使用するため、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善することができる。
【0015】
また、前記選別は、予め、別途ドレッシングのみを行った発泡ウレタン樹脂製の基準用研磨布を用いてシリコンウェーハの研磨、前記ダミー研磨後の除去処理と同じ手段による研磨残渣の除去処理、及び該除去処理後の研磨残渣量の測定を行って、(基準用研磨布の使用時間)/(予め設定した基準用研磨布の寿命)の値が0.05の時点の基準用研磨布中の研磨残渣量を基準値として求めておき、前記ダミー研磨及び除去処理後に測定した研磨残渣量が前記基準値以上である研磨布を前記シリコンウェーハの研磨に使用する研磨布として選別することが好ましい。
【0016】
このような方法であれば、十分に立ち上がった研磨布をより確実に選別することができるため、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルをより確実に改善することができる。
【0017】
またこのとき、前記研磨残渣量を、蛍光X線分析法によって得られる蛍光X線スペクトルからSi−Kα線を含む信号を検出して測定することが好ましい。
このような方法であれば、簡単に研磨残渣量を測定することができる。
【0018】
またこのとき、前記研磨残渣の除去処理を、ドレッシング及び高圧ジェット水洗浄によって行うことが好ましい。
このような方法であれば、簡単に研磨残渣の除去処理を行うことができる。
【0019】
またこのとき、前記研磨機を、例えば両面研磨機とすることができる。
このように、本発明の研磨方法は、両面研磨機を用いる場合にも適用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の研磨布立ち上げ方法であれば、従来のドレッシングに加えてダミー研磨による研磨布の立ち上げを行い、更にダミー研磨後の研磨布がキズの発生やパーティクル悪化が見られない程度まで十分に立ち上がっているかどうかを判定するため、研磨布が十分に立ち上がるまで研磨布の立ち上げを行うことができ、結果として研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善することができる。また、研磨布が立ち上がったと判定した時点でダミー研磨を終了すればよいため、不必要に長い時間ダミー研磨を行うことがなく、研磨布の立ち上げを効率的に行うことができる。
また、本発明の研磨方法であれば、ドレッシングに加えてダミー研磨による研磨布の立ち上げを行い、更にダミー研磨によってキズの発生やパーティクル悪化が見られない程度まで十分に立ち上がった研磨布を選別して研磨に使用するため、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の研磨布立ち上げ方法の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の研磨方法の一例を示すフロー図である。
図3】実施例1におけるダミー研磨15μmごとの研磨残渣量と、除去処理後の研磨残渣量を示すグラフである。
図4】実施例1と比較例1の各研磨布使用時間における研磨残渣量を示すグラフである。
図5】実施例1の各研磨布使用時間におけるパーティクルレベルを示すグラフである。
図6】比較例1(従来法での立ち上げ後に本研磨を行った場合)の各研磨布使用時間におけるパーティクルレベルを示すグラフである。
図7】ウェーハの研磨と研磨残渣の除去処理を交互に繰り返した場合の、研磨残渣量の変化を示すグラフである。
図8】従来法での立ち上げ後に本研磨を行った場合の各研磨布使用時間における研磨残渣量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、従来のドレッシングによる立ち上げ(以下、「従来法」とも呼ぶ)では研磨布の立ち上げが不十分であるため、このような従来法での立ち上げを行った研磨布を用いて本研磨(製品ウェーハの研磨)を行うと、研磨布ライフ初期においてパーティクルレベルが悪化することが分かってきた。
【0023】
ここで、従来法での立ち上げ後に本研磨を行った場合の、各研磨布使用時間におけるパーティクルレベルを図6に示す。図6に示されるように、従来法で立ち上げを行った場合には、研磨布ライフ初期、特に(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点までは、パーティクルレベルが悪くなっていることが分かる。
【0024】
本発明者らは、研磨布ライフ初期におけるパーティクルレベルを改善するために鋭意検討し、研磨布中の研磨残渣量と研磨布の立ち上がりに注目した。本発明者らが検討したところ、パーティクルレベルの悪化が見られない程度に十分に立ち上がった研磨布では、研磨布中に研磨布ライフ初期に比べて多くの研磨残渣が蓄積されていることから、研磨布中の研磨残渣量によって研磨布の立ち上がりの状態を判定できることを見出した。更に、鋭意検討を重ねた結果、ダミー研磨を行って研磨布中に研磨残渣を蓄積させることで研磨布を立ち上げ、ダミー研磨後の研磨残渣量によって立ち上がりを判定し、十分に立ち上がったと判定された研磨布を用いて本研磨を行うことで、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0025】
即ち、本発明は、シリコンウェーハを研磨するための研磨布を立ち上げる方法であって、研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ、ドレッシングを行った後、ダミー研磨を行い、次いで該ダミー研磨によって前記研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後、前記研磨布中の研磨残渣量を測定し、該測定した研磨残渣量に基づいて前記ダミー研磨を行った研磨布の立ち上がりを判定する研磨布立ち上げ方法である。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本発明において、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が1になったら研磨布を交換することを意味し、また(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点は、予め設定した研磨布の寿命に対して5%の使用時間の時点を意味する。
【0027】
<研磨布立ち上げ方法>
以下、本発明の研磨布立ち上げ方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の研磨布立ち上げ方法の一例を示すフロー図である。本発明の研磨布立ち上げ方法では、まず研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ(図1(1a))、ドレッシングを行った後(図1(1b))、ダミー研磨を行い(図1(1c))、次いでダミー研磨によって研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後(図1(1d))、研磨布中の研磨残渣量を測定し(図1(1e))、測定した研磨残渣量に基づいてダミー研磨を行った研磨布の立ち上がりを判定する(図1(1f))。
【0028】
以下、各工程について、更に詳しく説明する。
まず、研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつける(図1(1a))。このとき、研磨機としては、特に限定されないが、例えば両面研磨機等を好適に用いることができる。また、本発明の研磨布立ち上げ方法は、研磨機の大きさに関係なく適用することができる。
【0029】
次に、ドレッシングを行う(図1(1b))。ドレッシング方法は、特に限定されないが、例えば、通常、研磨布の立ち上げに使用される、表面にダイヤモンドを敷き詰めたドレッサー等を好適に用いることができる。
【0030】
次に、ダミー研磨を行う(図1(1c))。通常、ウェーハの研磨を行う際には、研磨の合間に、研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理(例えば、ダイヤモンドを敷き詰めたドレッサーを用いて研磨布を削る処理(ドレッシング)や、研磨布に高圧ジェット水を当てて洗浄する処理(高圧ジェット水洗浄)など)を行う。この除去処理を行うと、研磨布中に蓄積された研磨残渣のほとんどは除去されるが、一部の研磨残渣は除去処理後も研磨布中に残り、研磨布を立ち上げている。そこで、本発明の研磨布立ち上げ方法では、ドレッシング後にダミー研磨を行って、意図的に研磨布中に研磨残渣を蓄積させ、研磨布を立ち上げる。
【0031】
ダミー研磨には、特に限定されず、例えば一般にダミー研磨に用いられるシリコンウェーハ等を好適に用いることができる。また、研磨剤としては、特に限定されず、コロイダルシリカ研磨剤等を好適に用いることができる。
【0032】
ここで、図7にウェーハの研磨と研磨残渣の除去処理を交互に繰り返した場合の、研磨残渣量の変化を示す。なお、このときの研磨1回あたりの研磨取代は15μmとした。図7に示されるように、ウェーハの研磨と研磨残渣の除去処理を交互に行うと、研磨によって蓄積された研磨残渣のほとんどが、その都度除去処理によって除去されるため、除去処理後の研磨残渣量が増加しにくい。従って、除去処理後の研磨残渣量を効率よく増加させるためには、除去処理をはさまずに通常の研磨(研磨取代:10μm〜20μm程度)複数回分の研磨取代となるように連続してダミー研磨を行うことが好ましい。より具体的には、例えば30μm〜150μm程度、より好ましくは50μm〜100μm程度の研磨取代となるように連続してダミー研磨を行うことが好ましい。
【0033】
次に、ダミー研磨によって研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行う(図1(1d))。研磨残渣の除去処理方法は、特に限定されないが、例えばドレッシング及び高圧ジェット水洗浄によって行うことが好ましい。なお、ドレッシングには、上記のダミー研磨前のドレッシングと同様、表面にダイヤモンドを敷き詰めたドレッサー等を好適に用いることができる。このような方法であれば、簡単に研磨残渣の除去処理を行うことができる。
【0034】
次に、研磨布中の研磨残渣量を測定する(図1(1e))。なお、ここで測定する研磨残渣量は、上述の除去処理後に研磨布中に残った研磨残渣の量である。研磨残渣量の測定方法は、特に限定されないが、例えば蛍光X線分析法によって得られる蛍光X線スペクトルからSi−Kα線を含む信号を検出して測定することが好ましい。
【0035】
蛍光X線分析法で研磨残渣量を測定する場合、具体的には以下のような方法で測定することができる。シリコンウェーハを研磨すると、研磨布に蓄積された研磨残渣にはSi元素が含まれているため、蛍光X線スペクトルからSi−Kα線を含む信号を検出すれば、研磨残渣の量を測定することができる。より具体的には、検出した蛍光X線スペクトルからSi−Kα線を含む、1.6−1.9eVの範囲の信号量を積分して得られる値を研磨残渣量の目安値として使用することができる(以下、この目安値を「Si信号量」と呼ぶ)。
【0036】
Si信号量の測定には、例えば堀場製作所製のMESA−630等を用いることができ、その場合の測定レシピは、例えばAlloy LE FPで、X線照射時間は60秒とすることが好ましい。このような装置を用いて、ダミー研磨を行った研磨布のSi信号量を測定し、このSi信号量を研磨残渣量とすることで、簡単に研磨残渣量を測定することができる。
【0037】
次に、測定した研磨残渣量に基づいてダミー研磨を行った研磨布の立ち上がりを判定する(図1(1f))。このとき、判定は、予め、別途ドレッシングのみを行った発泡ウレタン樹脂製の基準用研磨布を用いてシリコンウェーハの研磨、ダミー研磨後の除去処理と同じ手段による研磨残渣の除去処理、及び除去処理後の研磨残渣量の測定を行って、(基準用研磨布の使用時間)/(予め設定した基準用研磨布の寿命)の値が0.05の時点の基準用研磨布中の研磨残渣量を基準値として求めておき、ダミー研磨及び除去処理後に測定した研磨残渣量が基準値以上であればダミー研磨を行った研磨布が立ち上がったと判定することが好ましい。なお、もちろん判定方法はこれに限定されない。
【0038】
以下、上記の判定方法について、更に詳しく説明する。
本発明者らが検討したところ、上述のように、従来法で立ち上げを行った研磨布で本研磨を行った場合、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点までは、パーティクルレベルが悪くなっているが、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05以降では、パーティクルレベルの悪化が抑制されていることが分かった(図6参照)。このことから、上記の判定方法では、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点の研磨布は十分に立ち上がっていると仮定し、この時点での研磨布中の研磨残渣量を基準として、立ち上がりの判定を行う。
【0039】
具体的には、まず判定の基準となる基準値を求める。より具体的には、別途、ドレッシングのみ(従来法での立ち上げ)を行った発泡ウレタン樹脂製の研磨布(基準用研磨布)を用いて、シリコンウェーハの研磨を行い、続いて研磨残渣の除去処理を行った後、研磨残渣量の測定を行って、基準用研磨布の(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点の研磨残渣量を基準値として求める。なお、このとき、研磨残渣の除去処理は上述のダミー研磨後の除去処理と同じ手段で行う。
【0040】
次に、実際に判定を行う。より具体的には、上述のようにダミー研磨及び除去処理を行った後に測定した研磨残渣量(即ち、ダミー研磨を行った研磨布中の研磨残渣量)と、上記のようにして求めた基準値を比較し、ダミー研磨を行った研磨布中の研磨残渣量が基準値以上であれば、ダミー研磨を行った研磨布が立ち上がったと判定する。
【0041】
ここで、実際に、従来法での立ち上げ後に本研磨を行った場合の、各研磨布使用時間における研磨残渣量を図8に示す。なお、ここで示す研磨残渣量は、研磨残渣の除去処理後に測定した値である。上記の判定方法における基準値とは、例えば図8において点線で示される値(約4200)のことである。
【0042】
このような判定方法であれば、ダミー研磨後の研磨布が十分に立ち上がっているかどうかをより確実に判定することができるため、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルをより確実に改善することができる。また、正確に立ち上がりの判定ができるため、それ以上のダミー研磨を行う必要がない。従って、不必要なダミー研磨を行うことによる時間やコストの無駄を削減し、効率的に立ち上げを行うことができる。
【0043】
なお、立ち上がりの判定によって、立ち上がりが不十分であると判定された場合には、上述のダミー研磨(図1(1c))、研磨残渣の除去処理(図1(1d))、研磨残渣量の測定(図1(1e))、及び立ち上がりの判定(図1(1f))を、研磨布が立ち上がったと判定されるまで繰り返し行えばよい。
【0044】
以上のように、本発明の研磨布立ち上げ方法であれば、従来のドレッシングに加えてダミー研磨による研磨布の立ち上げを行い、更にダミー研磨後の研磨布がキズの発生やパーティクル悪化が見られない程度まで十分に立ち上がっているかどうかを判定するため、結果として研磨布が十分に立ち上がるまで研磨布の立ち上げを行うことができ、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを効率的に改善することができる。
【0045】
<研磨方法>
また、本発明では、研磨布を用いてシリコンウェーハを研磨する方法であって、研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ、ドレッシングを行った後、ダミー研磨を行い、次いで該ダミー研磨によって前記研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後、前記研磨布中の研磨残渣量を測定し、該測定した研磨残渣量に基づいて前記シリコンウェーハの研磨に使用する研磨布を選別し、該選別された研磨布を用いて前記シリコンウェーハの研磨を行う研磨方法を提供する。
【0046】
以下、本発明の研磨方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は、本発明の研磨方法の一例を示すフロー図である。本発明の研磨方法では、まず研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつけ(図2(2a))、ドレッシングを行った後(図2(2b))、ダミー研磨を行い(図2(2c))、次いでダミー研磨によって研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行った後(図2(2d))、研磨布中の研磨残渣量を測定し(図2(2e))、測定した研磨残渣量に基づいてシリコンウェーハの研磨に使用する研磨布を選別し(図2(2f))、選別された研磨布を用いてシリコンウェーハの研磨を行う(図2(2g))。
【0047】
以下、各工程について、更に詳しく説明する。
まず、研磨機に発泡ウレタン樹脂製の研磨布を貼りつける(図2(2a))。研磨機としては、上述の本発明の研磨布立ち上げ方法で挙げたものと同様のものを使用することができる。
【0048】
次に、ドレッシングを行う(図2(2b))。ドレッシングは、上述の本発明の研磨布立ち上げ方法におけるドレッシングと同様に行えばよい。
【0049】
次に、ダミー研磨を行う(図2(2c))。ダミー研磨は、上述の本発明の研磨布立ち上げ方法におけるダミー研磨と同様に行えばよい。
【0050】
次に、ダミー研磨によって研磨布中に蓄積された研磨残渣の除去処理を行う(図2(2d))。研磨残渣の除去処理は、上述の本発明の研磨布立ち上げ方法における研磨残渣の除去処理と同様に行えばよい。
【0051】
次に、研磨布中の研磨残渣量を測定する(図2(2e))。研磨残渣量の測定は、上述の本発明の研磨布立ち上げ方法における研磨残渣量の測定と同様に行えばよい。
【0052】
次に、測定した研磨残渣量に基づいてシリコンウェーハの研磨に使用する研磨布を選別する(図2(2f))。選別は、上述の本発明の研磨布立ち上げ方法における研磨布の立ち上がりの判定と同様に行えばよい。具体的には、上述の判定において、立ち上がったと判定されたものを、シリコンウェーハの研磨に使用する研磨布として選別すればよい。
【0053】
また、選別されなかった研磨布は、上述のダミー研磨(図2(2c))、研磨残渣の除去処理(図2(2d))、研磨残渣量の測定(図2(2e))、及び選別(図2(2f))を、選別されるまで繰り返し行えばよい。
【0054】
次に、選別された研磨布を用いてシリコンウェーハの研磨を行う(図2(2g))。研磨剤としては、例えば上述の本発明の研磨布立ち上げ方法におけるダミー研磨で挙げたものと同様のものを使用することができる。
【0055】
以上のように、本発明の研磨方法であれば、ドレッシングに加えてダミー研磨による研磨布の立ち上げを行い、更にダミー研磨によってキズの発生やパーティクル悪化が見られない程度まで十分に立ち上がった研磨布を選別して研磨に使用するため、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、研磨残渣量の測定には、堀場製作所製のMESA−630を使用し、測定レシピは、Alloy LE FPで、X線照射時間は60秒とした。
【0057】
[比較例1]
発泡ウレタン樹脂製の研磨布を研磨機に貼り付け、表面にダイヤモンドを敷き詰めたドレッサーを用いて研磨布のドレッシングを行った後、ダミー研磨を行わずに下記の本研磨条件でウェーハの研磨(本研磨)を行い、各研磨布使用時間における研磨残渣量とパーティクルレベルを測定した。各研磨布使用時間における研磨残渣量を図4に示す。また、各研磨布使用時間におけるパーティクルレベルを図6に示す。またこのとき、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点の研磨残渣量を基準値として求めた。
【0058】
(本研磨条件)
使用研磨機:30B両面研磨機
試料ウェーハ:CZ、P型、結晶方位<100>、直径300mm、シリコンウェーハ
研磨布:発泡ウレタン樹脂製
研磨剤:コロイダルシリカ研磨剤
研磨荷重:180g/cm
研磨取代:15μm
【0059】
[実施例1]
発泡ウレタン樹脂製の研磨布を研磨機に貼り付け、表面にダイヤモンドを敷き詰めたドレッサーを用いて研磨布のドレッシングを行った後、研磨荷重200g/cm、研磨取代15μmの条件(下記のダミー研磨条件)でダミー研磨を5回連続して行い、15μmのダミー研磨を行うごとに研磨残渣量を測定した。ダミー研磨と研磨残渣量の測定を5回繰り返した後に、研磨残渣の除去処理として、表面にダイヤモンドを敷き詰めたドレッサーを用いて研磨布のドレッシングを行い、更に研磨布に高圧ジェット水を当てて洗浄を行った。その後、除去処理後の研磨残渣量を測定した。ダミー研磨15μmごとの研磨残渣量と、除去処理後の研磨残渣量を図3に示す。
【0060】
(ダミー研磨条件)
使用研磨機:30B両面研磨機
試料ウェーハ:CZ、P型、結晶方位<100>、直径300mm、シリコンウェーハ
研磨布:発泡ウレタン樹脂製
研磨剤:コロイダルシリカ研磨剤
研磨荷重:200g/cm
研磨取代:15μm
【0061】
上記実施例1で測定した除去処理後の研磨残渣量と、上記比較例1で予め求めておいた基準値を比較したところ、除去処理後の研磨残渣量が基準値以上であったため、実施例1の研磨布は立ち上がったと判定し、後述の本研磨に用いる研磨布として選別した。
【0062】
次に、選別した研磨布を用いて、比較例1と同様の上記の本研磨条件でウェーハの研磨(本研磨)を行い、各研磨布使用時間における研磨残渣量とパーティクルレベルを測定した。各研磨布使用時間における研磨残渣量を図4に示す。また、各研磨布使用時間におけるパーティクルレベルを図5に示す。
【0063】
図4に示されるように、実施例1では、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0の時点で、比較例1における(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点の研磨残渣量と同程度の研磨残渣量を有しており、即ち、比較例1における(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0.05の時点と同程度に十分に研磨布が立ち上がっていることが分かる。
【0064】
図6に示されるように、立ち上がりの不十分な研磨布を用いて本研磨を行った比較例1では、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0〜0.05の時点まではパーティクル個数が多く、0.05以降では徐々に減少していた。これに対し、図5に示されるように、十分に立ち上がった研磨布を用いて本研磨を行った実施例1では、(現研磨布使用時間)/(設定研磨布使用時間)の値が0〜0.05の時点までにおけるパーティクルレベルが改善されていた。
【0065】
以上のことから、本発明の研磨布立ち上げ方法及び研磨方法であれば、研磨布ライフ初期のパーティクルレベルを改善できることが明らかとなった。また、研磨布の立ち上がりを研磨残渣量という明確な基準で判定できるので、必要以上にダミー研磨等を行い、時間やコストの無駄が発生するのを防止することができる。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8