(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記噴射制御装置は、前記リンガーロールの外表面の温度の測定値、前記金属帯の走行速度および前記鋼板のサイズを含む前記金属帯の操業条件、ドライヤーの熱風の温度、並びに前記リンガーロールの外表面の目標温度に基づいて、前記ミスト噴射ノズルから前記ミストを噴射するために前記ミスト噴射ノズルに与えられる水圧、空気圧、ミスト水量および空気量を決定し、決定された水圧、空気圧、ミスト水量および空気量を前記ミスト噴射条件として前記ミスト噴射ノズルを制御する請求項2に記載の金属帯の水切り装置。
前記噴射制御装置は、前記リンガーロールの外表面の温度の測定値、前記金属帯の走行速度および前記鋼板のサイズを含む前記金属帯の操業条件、ドライヤーの熱風の温度、並びに前記リンガーロールの外表面の目標温度に基づいて、前記ミスト噴射ノズルから前記ミストを噴射するために前記ミスト噴射ノズルに与えられる水圧、空気圧、ミスト水量および空気量を決定し、決定された水圧、空気圧、ミスト水量および空気量を前記ミスト噴射条件として前記ミスト噴射ノズルを制御する請求項8に記載の金属帯の水切り方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に開示された従来の方法の場合、リンガーロールの金属帯との摩擦は考慮されているものの、ドライヤーの熱風による表面劣化については考慮されていないため、表面劣化によりロール本来の耐磨耗性を発揮出来ず、寿命が短くなる場合がある。
また、特許文献3に開示された従来の方法では、ドライヤー風量の増加によるリンガーロールの表面劣化は考慮されていない。
【0006】
そこで、リンガーロールをドライヤーの熱風から保護する手段として、水によるリンガーロールの冷却およびロール表面への水膜層を形成させ、保護する方法が考えられる。
この方法では、金属帯の出側にあるリンガーロールの外表面が受けるドライヤーからの熱風を防止するには、リンガーロールのドライヤー側の外表面に水膜層を形成する必要がある。しかしながら、この場合には、リンガーロールを通過した金属帯表面にも水膜が形成されることになり、ドライヤーを通過した金属帯表面に水分が残留し、表面欠陥発生に繋がる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたもので、リンガーロールとドライヤーとを備える水切り装置において、リンガーロールをドライヤーからの熱風による劣化から保護し、リンガーロールの長寿命化、およびリンガーロール交換による設備停止時間の削減をでき、かつドライヤー出側での金属帯表面の水分残留のない水切り装置および水切り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様の水切り装置は、走行する金属帯の表面を挟圧して表面の水分を絞るリンガーロールと、リンガーロールの金属帯の走行下流側に配置され、金属帯の表面を乾燥するドライヤーと、リンガーロールとドライヤーとの間に配置され、ドライヤーからの熱風を受けるリンガーロールの外表面にミストを噴射してミスト保護層を形成させる1個以上のミスト噴射ノズルと、を有し、ミスト噴射ノズルによって形成されたミスト層によってドライヤーから流出する熱風からリンガーロールを保護し、かつ、金属帯の表面の水分残留を防止することを特徴とする。
【0009】
上記第1の態様の水切り装置は、さらに、リンガーロールの外表面の温度を測定する温度測定器と、温度測定器によって測定されたリンガーロールの外表面の温度の測定値と金属帯の操業条件とに基づいてミスト噴射ノズルのミスト噴射条件制御を行い、リンガーロールの外表面のミスト保護層の形成を制御する噴射制御装置とを有することが好ましい。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の態様の水切り方法は、リンガーロールによって走行する金属帯の表面を挟圧して表面の水分を絞り、リンガーロールの金属帯の走行下流側に配置されたドライヤーによって、リンガーロールによって水分が絞られた金属帯の表面を乾燥するに際し、リンガーロールとドライヤーとの間に配置された1個以上のミスト噴射ノズルから、ドライヤーからの熱風を受けるリンガーロールの外表面にミストを噴射して、ミスト保護層を形成させ、ミスト噴射ノズルによって形成されたミスト層によってドライヤーから流出する熱風からリンガーロールを保護し、かつ、金属帯の表面の水分残留を防止することを特徴とする。
【0011】
上記第2の態様の水切り方法において、1個以上のミスト噴射ノズルからミストを噴射するに際し、さらに、温度測定器によってリンガーロールの外表面の温度を測定し、噴射制御装置によって、温度測定器によって測定されたリンガーロールの外表面の温度の測定値と金属帯の操業条件とに基づいて、ミスト噴射ノズルのミスト噴射条件制御を行い、リンガーロールの外表面のミスト保護層の形成を制御することが好ましい。
【0012】
上記第1および第2の態様において、噴射制御装置は、リンガーロールの外表面の温度測定値、金属帯の走行速度および鋼板のサイズを含む金属帯の操業条件、ドライヤーの熱風の温度、並びにリンガーロールの外表面の目標温度に基づいて、ミスト噴射ノズルからミストを噴射するためにミスト噴射ノズルに与えられる水圧、空気圧、ミスト水量および空気量を決定し、決定された水圧、空気圧、ミスト水量および空気量をミスト噴射条件としてミスト噴射ノズルを制御することが好ましい。
また、1個以上のミスト噴射ノズルは、リンガーロールの幅方向全面にミストを噴射するものであることが好ましい。
【0013】
また、ミスト噴射ノズルは、リンガーロールの両端にそれぞれ配置される少なくとも2個のミスト噴射ノズルであることが好ましく、少なくとも2個のミスト噴射ノズルは、リンガーロールのロール幅をa、リンガーロールのロール端部とミスト噴射ノズルの先端とのロール幅方向の距離をb、リンガーロールのロール端部の外表面とミスト噴射ノズルの先端とのロール幅方向と直交するロール高さ方向の距離をc、ノズル噴射距離をd、ノズル噴射角度をθ1、ノズル角度をθ2とする時、下記式(1)、(2)および(3)を満足するように配置されることが好ましい。
d≧√{((a/2)+b)
2+c
2} …(1)
θ
1≧tan
−1(c/b)−tan
−1{c/((a/2)+b)} … (2)
θ
2≦tan
−1{c/((a/2)+b)} …(3)
また、リンガーロールは、一対のリンガーロールであり、一対のリンガーロールは、その間に走行する金属帯の両表面を挟圧して両表面の水分を絞ることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように構成される本発明によれば、リンガーロールの外表面にミスト保護層を形成することにより、ドライヤーの熱風によるリンガーロールの表面劣化を防止し、リンガーロールの長寿命化を実現し、かつ、金属帯表面の水分残留による欠陥発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る水切り装置の一実施形態の断面模式図である。
図2は、
図1に示す水切り装置のリンガーロールとミスト噴射ノズルとの配置を模式的に示す正面説明図である。図は、
図1に示す水切り装置のリンガーロールの外表面に形成されるミスト保護層のミストを模式的に示す斜視図である。
これらの図に示すように、本発明に係る水切り装置10は、走行する金属帯12の表面12aの水分を絞り取るリンガーロール装置14と、リンガーロール装置14の走行下流側に配置され、表面の水分を絞り取られた金属帯12の表面12aを乾燥するドライヤー16とを有する。
【0017】
リンガーロール装置14は、走行する金属帯12の表面12aを挟圧する一対のリンガーロール18と、リンガーロール18とドライヤー16との間に配置され、ミストM(
図3参照)を噴射するミスト噴射ノズル20と、リンガーロール18の外表面18aの温度を計測する温度計測器22と、温度計測器22による計測温度値および金属帯12の操業条件等に基づいてミスト噴射ノズル20のミスト噴射条件を制御する制御装置24とを有する。
ドライヤー16は、
図1中矢印αで示す走行方向に走行する金属帯12の両表面12aを乾燥するためのものであり、金属帯12の走行方向αに対して逆向きに傾斜する、
図1中矢印βで示す方向から熱風を、走行する金属帯12の両表面12aに吹き付けて金属帯12の両表面12aを乾燥する。なお、
図1中矢印βは、熱風およびその方向を示すものとしても理解することができる。
【0018】
ここで、ドライヤー16としては、走行する金属帯12の両表面12aに向かって熱風bを矢印β方向に吹き付けることができるものであれば、どのようなものでも良く、従来公知の金属帯乾燥用ドライヤーを用いることができる。
このような構成のドライヤー16内において、金属帯12の両表面12aに吹き付けられた熱風は、走行する金属帯12が進入するドライヤー16の入側の開口16aから、金属帯12の走行方向αと逆方向である
図1中矢印γで示す方向に沿って、外部に放出され、リンガーロール装置14のリンガーロール18に向かうとともに、走行する金属帯12が退出するドライヤー16の出側の開口16bからも外部に放出される。なお、
図1中矢印αは、金属帯12の走行方向を示すとともに、熱風およびその放出方向を示すものとしても理解することができ、
図1中矢印γは、熱風およびその放出方向を示すものとしても理解することができる。
【0019】
なお、ドライヤー16の熱風(b)の温度は、金属帯12の表面12aを適切に乾燥することが可能な温度であれば、特に制限するものではないが80°C〜120°Cであるのが好ましい。熱風の温度をこの範囲とするのが好ましいのは、例えば、金属帯12の走行速度(ラインスピード:LS)が、0.5m/s〜3.4m/sである時、熱風の温度が80°C未満では、金属帯12の表面12aの乾燥が不十分になる恐れがあるからであり、120°C超では、ドライヤー16から放出された熱風によってリンガーロール装置14のリンガーロール18を劣化させる恐れがあるからである。
【0020】
一方、リンガーロール装置14は、酸洗、圧延、洗浄、焼鈍、めっき、調質圧延および精整等の各種処理を行う製鉄プロセスラインにおいて、金属ストリップの両面に付着した液分や水分を除去するために用いられている。図示例では、リンガーロール装置14は、走行する金属帯12の表面12aを挟圧する一対のリンガーロール18を備えているが、本発明はこれに限定されず、2対以上のリンガーロール18を備えていても良い。
対をなす2本のリンガーロール18は、
図2に示すように、それぞれ中心軸となる金属などの芯材からなるロール軸18bの外周に、ネオプレンゴムやウレタンゴムなどのヤング率の低いゴムをライニングしてライニング層18cを形成したものである。リンガーロール18のライニング層18cは、特に制限するもの的ではなく、特許文献2および3等に開示のように、ゴムライニングによるものに限定されず、従来公知のライニング層であっても良く、例えば、ロール軸18bの外周に、特許文献1等に開示のように、ゴム、スポンジゴムまたはウレタン等の柔軟性材料からなる内層と、この内層の外周に、ナイロン、ポリエステル、ポリイミドまたはポリエチレンなどの内装より硬質なフィルム状被覆物からなる外層とを積層したものであっても良い。
【0021】
このため、リンガーロール18の外表面18aの温度、即ち表面温度は、表面劣化等の点から、50°C以下であるのが好ましく、40°C以下であるのがより好ましい。下限は、特に制限するものではないが、常温より低い温度に冷却する必要はない。
リンガーロール18は、その両端のロール軸18bが図示しない軸受等により回転可能に支持されることにより、走行する金属帯12の表面12aを、回転しながら挟圧して、その表面12aの水分を絞り取ることができる。ここで、図示しない軸受の位置を調整することにより、1対の2本のリンガーロール18の間隔を調整して、金属帯12の板厚に応じて、リンガーロール18のライニング層18cの外表面18aと金属帯12の表面12aとの接触面圧を調整することができる。
また、1対のリンガーロール18は、共に従動ロールであっても良いが、少なくとも一方がモータ等の原動機に回転可能に接続された駆動ロールであっても良い。
【0022】
ミスト噴射ノズル20は、リンガーロール18とドライヤー16との間に配置されるもので、ドライヤー16から矢印γで示される熱風γを受けるリンガーロール18の外表面18aにミストMを噴射してミスト保護層26を形成させるためのものである。ここで、リンガーロール18は回転しているため、ミスト噴射ノズル20からリンガーロール18の外表面18aの上側に、ミスト噴射ノズル20から噴射されたミストMは、リンガーロール18の外表面18aを覆うが、リンガーロール18の回転に伴って随伴回転し、リンガーロール18の外表面18aを略全周覆い、ミスト保護層26を形成する。
図示例では、ミスト噴射ノズル20は、1対の2本のリンガーロール18に対して、各リンガーロール18の両端のロール軸18bの上側にそれぞれ1個設けられ、合計4個設けられる。
図1に示す例においては、1本のリンガーロール18に対して2個のミスト噴射ノズル20は、
図2に示すように、1つのミスト噴射ノズル20から噴射されたミストMが1本のリンガーロール18の少なくとも半分の位置まで届くように配置される必要がある。
【0023】
このため、リンガーロール18のロール幅をa、リンガーロール18のロール端部であるライニング層18cの端部とミスト噴射ノズル20の先端(噴射孔先端)とのロール幅方向の距離をb、リンガーロール18のロール端部の外表面18aとミスト噴射ノズル20の先端とのロール幅方向と直交するロール高さ方向の距離をc、ミスト噴射ノズル20の先端とリンガーロール18のロール幅の中点位置との距離であるノズル噴射距離をd、リンガーロール18のロール幅を覆う核であるノズル噴射角度をθ
1、ミスト噴射ノズル20の先端とリンガーロール18のロール幅の中点位置とを結ぶ線がリンガーロール18の外表面18aとなす角であるノズル角度をθ
2とする時、2個のミスト噴射ノズル20は、下記式(1)、(2)および(3)を満足するように互いに線対称に配置されることが好ましい。
d≧√{((a/2)+b)
2+c
2} …(1)
θ
1≧tan
−1(c/b)−tan
−1{c/((a/2)+b)} … (2)
θ
2≦tan
−1{c/((a/2)+b)} …(3)
【0024】
なお、ノズル噴射距離d、およびノズル噴射角度をθ
1の上限値、並びにノズル角度をθ
2の下限値は、特に制限するものではないが、2個のミスト噴射ノズル20が噴射されるミストMの最大の重なりを考慮すると、2個のミスト噴射ノズル20は、下記式(4)、(5)および(6)を満足するように配置されることが好ましい。
√{(a+b)
2+c
2}≧d …(4)
tan
−1(c/b)−tan
−1{c/(a+b)}≧θ
1 … (5)
tan
−1{c/(a+b)}≦θ
2 …(6)
【0025】
ミスト噴射ノズル20は、所定エアー圧(空気圧)の圧縮エアー(圧縮空気)で所定水圧の水を粉砕混合して、またはエジェクタ効果などによって吸引混合して、圧縮エアーと共にミストMとしてノズル噴射角度θ
1で外部に噴射するためのものである。ミスト噴射ノズル20は、
図4、
図5および
図6に示すように、水(純水)配管28が噴射方向と直交する方向に接続され、エアー配管30が噴射方向と平行な方向に接続される混合部32と、混合部32で圧縮エアーに混合された水をミストとして噴射する噴射孔を備える先端部34とを有する。
【0026】
図示例においては、エアー配管30は、L字状に湾曲した円管からなる。垂直部30aは、取付板36に固定された円管状の取付部材38内に挿入され、固定ボルト38a等の固定具によって取付部材39に固定される。水平部30bは、ミスト噴射ノズル20の混合部32に平行に接続される。
また、水配管28は、直円管からなる。一方の端部28aは、取付板36の長穴36aに移動可能に挿入され、取付板36に載置された取付部材40の平板部40aに直交するように固定された円管部40b内に挿入され、固定ボルト41a等の固定具によって円管部40bに固定される。他方の端部28bは、ミスト噴射ノズル20の混合部32に図中上側から垂直に接続される。
【0027】
ここで、上述の取付板36の長穴36aは、円弧状の長穴である。この長穴36aの中心線のなす円弧の中心の位置に取付板36を貫通する貫通孔36bが穿孔されている。一方、取付部材40は、長方形の平板部40aの長手方向の端部中央の位置に貫通孔40cが穿孔されている。取付部材40を取付板36上に取付部材40の貫通孔40cと取付板36の貫通孔36bとが重なるように配置し、固定ボルト41bのねじ部を取付板36の側から重ねられた貫通孔36bと貫通孔40cとに挿入し、取付部材40から突出した固定ボルト41bのねじ部にナット41cを螺合して取付部材40を取付板36上に移動可能に取り付けることができ、また、固定することもできるように構成されている。
【0028】
こうして、取付板36の長穴36aに挿入され、取付部材40の円管部40b内に挿入されて固定された水配管28は、固定ボルト41b及びナット41c等の固定具による取付位置を中心として、取付部材40と共に円弧状の長穴36aに沿って円弧状に移動することができる。このように、水配管28は、取付板36の長穴36aに沿って円弧状に移動可能であることから、ミスト噴射ノズル20の先端部34の位置を取付板36に平行、図示例では水平方向に円弧状に移動可能である。なお、取付部材40および取付部材40の円管部40bに固定された水配管28は、取付板36の長穴36aに沿って移動後、ナット41cを固定ボルト41bに螺合させて取付部材40を取付板36に締め付けることにより固定される。
また、水配管28の端部28aは、固定ボルト41aによって取付部材40の円管部40b内の所定位置に固定されているので、固定ボルト41aを緩めることにより、円管部40b内を移動することができるようになるので、取付板36に対して垂直方向、図示例では上下方向に移動可能であり、上述したミスト噴射ノズル20のノズル角度θ
2およびノズル噴射距離dを調整することができる。
【0029】
ところで、
図4、
図5及び
図6に示す実施形態では、水配管28の端部28aを、平板部40aおよび円管部40bを備える取付部材40を介して、水平方向及び垂直方向に移動可能に取付板36に取り付けているので、取付板36の長穴36aのサイズを少し大きくできるなど、水配管28の取付板36への取付構造の設計の自由度を上げることができるし、水配管28は、取付板36の長穴36aに沿った円弧状の水平移動や取付板36に対する垂直移動(上下動)をスムーズに行うことができる。
しかしながら、本発明は、
図4〜
図6に示す実施形態に限定されず、
図7に示す実施形態のように、取付部材40の代わりに、取付部材38と同様な円管部のみからなる取付部材44を介して、水配管28の端部28aを水平方向及び垂直方向に移動可能に取付板36に取り付けても良い。
図7に示す例でも、水配管28の端部28aは、固定ボルト45等の固定具によって取付部材44に固定され、取付板36に取り付けられる。
図7に示す例では、水配管28の取付板36への取付構造の設計の自由度は減るものの、構造自体を簡単にできるという特徴がある。
【0030】
図6、
図7および
図8に示すように、取付板36に取り付けられたミスト噴射ノズル20は、リンガーロール18を覆うリンガーロール装置14のハウジング46の水平板部46aに形成された開口部48に挿入され、取付板36は、両側の取付ねじ42などの取付具によって、リンガーロール18を覆うハウジング46の水平板部46aに固定される。
こうして、ミスト噴射ノズル20は、リンガーロール18に対して適切な位置に配置されるように取付板36を介してリンガーロール装置14のハウジング46に取り付けられて固定される。
なお、ハウジング46の垂直板部46bには、ハウジング46の水平板部46aへのミスト噴射ノズル20の取付位置の近傍に、ノズル点検窓50が設けられ、ミスト噴射ノズル20の取付位置や取付状態が点検できる。ノズル点検窓50には、図示しない扉が取り付けられ、ノズル点検窓44を開閉できる。
なお、上述したミスト噴射ノズル20のノズル角度θ
2およびノズル噴射距離dの調整は、ミスト噴射ノズル20が取付板36を介してリンガーロール装置14のハウジング46に取り付け固定された後でも、ノズル点検窓50から観察しながら実施することもできる。
【0031】
本発明において、ミスト噴射ノズル20で生成されるミストMの平均粒子径は、特に制限するものではないが、80μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
上述した例では、ミスト噴射ノズル20は、圧縮エアーと水との2流体を用いてミストMを生成するのであるが、高圧の水のみの1流体を用いてミストを生成するものであっても良い。しかしながら、2流体方式のミスト噴射ノズル20の方が、1流体方式のミスト噴射ノズルより、微細なミストを生成できるので好ましい。即ち、1流体方式のミスト噴射ノズルでのミストの平均粒径は、20μm〜35μmであるのに対し、2流体方式のミスト噴射ノズルでのミストの平均粒径は、好ましくは25μm以下にすることができ、より好ましくは10μm以下とすることができるからである。
【0032】
温度計測器22は、リンガーロール18の外表面18aの温度を計測するものである。温度計測器22は、リンガーロール18の外表面18aの温度を計測できれば、どこに配置しても良いが、リンガーロール18の外表面18aの上側近傍に配置するのが好ましい。
また、温度計測器22は、回転しているリンガーロール18の外表面18aの温度を非接触で計測することができれば、どのような温度計でも良く、例えば、赤外放射温度計や、パイロメーター(高温測定計:光高温度計)等の放射温度計を用いることができる。
【0033】
制御装置24は、温度計測器22によって計測された温度の測定値(計測温度値)および金属帯12の操業条件等に基づいて、好ましくはさらに、ドライヤー16の熱風の温度、並びにリンガーロール18の外表面18aの目標温度等に基づいて、ミスト噴射ノズル20のミスト噴射条件、例えばミスト噴射ノズル20からミストMを噴射するためにミスト噴射ノズル20に与えられる水圧(水配管28の圧力)、エアー圧(エアー配管30の圧力)、ミスト水量(水配管28の供給水量)および空気量(エアー配管30の供給エアー量)を制御するものである。
ここで用いられる金属帯12の操業条件は、金属帯12の走行速度(ラインスピード:LS)、および金属帯12のサイズ(幅)等を挙げることができる。
【0034】
例えば、1つのリンガーロール18について、ミスト保護層(フォグ)26によるリンガーロール18の外表面18aの冷却は、下記式(7)のように表すことができる。
ここで、リンガーロール18の表面質量、即ちゴム製のライニング層18cの質量をm
R(kg)、ミストMの水量をm
F(kg)、ライニング層18cの比熱をc
R(J/kg・K)、水の比熱をc
F(J/kg・K)、ミスト保護層26の形成前(ミスト冷却前)のリンガーロール18の表面温度をT
r1(K)、ミスト保護層26の形成後(ミスト冷却後)のリンガーロール18の表面温度をT
r2(K)、ミストMの水温をT
F(K)とすると、下記式(7)で示す等式が成り立つ。
m
Rc
R(T
r1−T
r2)=m
Fc
F(T
r2、−T
F) …(7)
【0035】
また、ミスト冷却後のリンガーロール18の表面温度T
r2は、リンガーロール18の表面温度の目標値(目標表面温度)とすることができるので、リンガーロール18の表面温度T
r2を目標表面温度T
tに維持するために必要なミストMの水量m
Ftは、下記式(8)で表すことができる。
m
Ft=m
Rc
R(T
r1−T
t)/c
F(T
t、−T
F) …(8)
また、リンガーロール18の半径をr(m)、金属帯12の走行速度をLS(m/min(分))、ミスト保護層16のミストMの密度をd(kg/L(リットル))とすると、リンガーロール18の表面温度を目標温度にするのに最低限必要なミストMの流量Q
LL(L/min)は、下記式(9)で表すことができる。
Q
LL=m
FtLS/(2πrd) …(9)
【0036】
ここで、ミスト噴射ノズル20から噴射されるミストMの流量をQ(L/min)とすると、リンガーロール18の表面温度を目標温度に維持するのに最低限必要なミストMの流量Q
LL、即ちミストMの流量Qの下限値Q
LLは、
図9に示す下限線のように、金属帯12の走行速度LSに比例することが分かる。
本発明においては、ミストMの流量Qは、下記式(10)で表されるように、下限値Q
LL以上に維持する必要がある。
Q≧Q
LL=m
FtLS/(2πrd) …(10)
その理由は、ミストMの流量Qが下限値Q
LLより少なく(過少に)なると、リンガーロール18の冷却不足のためその外表面18aに劣化が生じ、リンガーロール18のゴム等のライニング層18aが剥離して金属帯12にカミコミ欠陥等が発生するからである。
【0037】
次に、ミストMの流量Qの上限値は、リンガーロール18の下流側にあるドライヤー14の乾燥可能な水分量に依存する。ドライヤー14の乾燥可能な水分量は、ドライヤー14の熱風の温度および熱風量に依存する。ところで、ドライヤー14に搬送される金属帯12の表面の乾燥すべき単位面積当たりの水分量が一定であるとすると、金属帯12のサイズおよび走行速度LSに比例して、ドライヤー14内において乾燥しなければならない水分量は多くなる。したがって、通常、ドライヤー14内の乾燥能力は、金属帯12の走行速度LSに応じてドライヤー14の出力が変化するようになっていることがある。このため、金属帯12の走行速度LSが早くなると、ドライヤー14の出力が上がり、ドライヤー14の乾燥能力も上がる。また、ドライヤー14内に金属帯12に随伴して運ばれるミストMの量は、金属帯12のサイズおよび走行速度LSに比例する。
したがって、ミストMの流量Qの上限値Q
ULは、ドライヤー14の熱風の温度T
D(K)、ミストMの水温T
F(K)、金属帯12のサイズ(幅)W(m)および金属帯12の走行速度LS(m/min)の関数として、下記式(11)のように表すことができる。
Q
UL=f(T
D、T
F、W、LS) …(11)
【0038】
ここで、ミストMの流量がQ(L/min)であると、ドライヤー14で乾燥可能な最大のミストMの流量Q
UL、即ちミストMの流量Qの上限値Q
ULは、
図9に示す上限線のように、金属帯12の走行速度LSに依存することが分かる。
本発明においては、ミストMの流量Qは、下記式(12)で表されるように、上限値Q
UL以下に維持する必要がある。
Q≦Q
UL=f(T
D、T
F、W、LS) …(12)
その理由は、ミストMの流量Qが上限値Q
ULより多く(過多に)なると、ドライヤー14内での乾燥不足のためドライヤー14の出側での金属帯12の水濡れが生じ、水濡れに異物付着等を誘発するからである。
【0039】
次に、制御装置24は、ミストMの流量Qを上限値Q
ULと下限値Q
LLとの間に設定して、流量QのミストMをミスト噴射ノズル20で生成するために、必要となる水圧および水量、ならびにエアー圧およびエアー量を算出する。
なお、
図9においてドッドで示すミストMの流量Qが1.5L/min〜2.5L/minの領域は、金属帯12の走行速度LSが変化しても、ミストMの流量Qの上限値Q
ULと下限値Q
LLとの間にあるので、最適な領域であると言える。
したがって、制御装置24は、ミストMの流量Qをこの範囲内に制御すれば、リンガーロール18の外表面18aの略全面に最適なミスト保護層26を形成することができる。
このようなミストMの流量Qは、1分あたりの水量Q(kg)である。なお、2流体ノズルの場合、水とエアーのバランスでミスト粒径が変わるので、最適な水量かつ粒径になるよう水圧、エアー圧を調整すればよく、ノズルの仕様や配管径などに応じて適宜、水圧および水量、エアー圧およびエアー量を調整すればよい。
本発明の金属帯の水切り装置は、基本的に以上のように構成される。
【0040】
次に、本発明においては、
図1に示す金属帯の水切り装置10を用いて、本発明の金属帯の水切り方法を実施することができる。
本発明の水切り方法では、先ず、リンガーロール18によって走行する金属帯12の外表面18aを挟圧して外表面18aの水分を絞り取る。
次に、リンガーロール18の金属帯12の走行下流側に配置されたドライヤー14によって、リンガーロール18によって水分が絞り取られた金属帯12の表面12aを乾燥するものである。
【0041】
この際、本発明の水切り方法では、まず、上述したように、リンガーロール18とドライヤー14との間に配置された1個以上のミスト噴射ノズル20から、ドライヤー14からの熱風を受けるリンガーロール18の外表面18aにミストMを噴射して、ミスト保護層26を形成させる。
こうして、ミスト噴射ノズル20によって形成されたミスト保護層26によってドライヤー14から流出する熱風からリンガーロール18を保護し、かつ、金属帯12の表面12aの水分残留を防止する。
以上のようにして、本発明の金属帯の水切り方法を実施することができる。
【実施例】
【0042】
本発明の金属帯の水切り装置を一実施例に基づいて具体的に説明する。
図1に示す金属帯の水切り装置10を用いて本発明の金属帯の水切り方法を実施した。
適用金属帯12として、板厚が0.5mm〜3.3mmであり、サイズ(板幅)が800mm〜1850mmである溶融亜鉛めっき鋼板を用いたが、これに限定されるものではない。
適用設備は、連続溶融亜鉛めっきラインCGL(Continuous Galvanizing Line)の連続焼鈍設備であり、そのウォータークエンチ(WQ:Water Quench、水焼入れ)装置の後段の水切り装置として用いた。本実施例の連続溶融亜鉛めっきラインCGLでは、連続ラインであるので、上述の異なるサイズおよび種類の鋼板の先端(トップ:TOP)部と末端(エンド:END)部を溶接して連続した金属帯12とすることにより、常時切れることなく連続して流れる。このように、金属帯12のサイズが変わっても本発明の金属帯の水切り装置10のリンガーロール18を用いて水切りを実施することができる。
【0043】
リンガーロール18として、半径105mmの炭素鋼製金属ロール軸18bに厚さ20mmのニトリルゴム製のライニング層18cを持つ半径125mmのリンガーロールを用いた。
ドライヤー14の熱風の温度は、80〜120°Cとした。
ミストM用の水の温度は、50°C以下であった。
金属帯の水切り装置10において、水配管28から水圧0.3MPaの水を0.4L/min、エアー配管30からエアー圧0.3MPaのエアーを90L/minで4つのミスト噴射ノズル20にそれぞれ供給し、1対のリンガーロール18に向けてミストMをミスト流量Qとして1.6L/min噴射し、1対のリンガーロール18の外表面18aの略全面にミスト保護層26を形成した。
【0044】
以上のようにして、ミス切装置10の1対のリンガーロール18の外表面18aの略全面にミスト保護層26を形成することにより、リンガーロール18の表面温度を80〜90°Cから50°以下まで冷却することができた。
その結果、リンガーロール18の寿命を,3か月から4.5か月まで延ばすことができた。その結果、リンガーロール18の巻替えコストを36%低減できた。
以上から、本発明の効果は明らかである。