(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光することによって静電潜像を形成させる露光手段と、前記静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、前記感光体上に形成されたトナー像を転写する転写手段と、前記感光体の表面に滑剤を供給する滑剤供給手段と、前記感光体の表面に残存したトナーを除去するクリーニング手段と、前記滑剤を前記感光体の表面より除去する滑剤除去手段とを備える画像形成装置であって、
前記滑剤が、有機滑剤および無機滑剤を含有し、
前記滑剤供給手段が、前記感光体の回転方向において前記クリーニング手段の上流側であって前記現像手段の下流側に配置されると共に、前記滑剤除去手段が、前記感光体の回転方向において前記クリーニング手段の下流側であって前記現像手段の上流側に配置されることを特徴とする画像形成装置。
前記無機滑剤が、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、マイカのうちの1つ以上からなることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
前記感光体が、重合性化合物を重合して得られる架橋型硬化樹脂による保護層を有するものであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
前記滑剤除去手段は、感光体の表面と接触して配置され、機械的作用によって滑剤を削り取るものであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の画像形成装置。
前記有機滑剤の質量をMa、前記無機滑剤の質量をMbとしたときに、Mb/(Ma+Mb)で表される前記無機滑剤の含有割合が、10〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0021】
〔画像形成装置〕
図1は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置100は、タンデム型カラートナー像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkと、中間転写体ユニット130と、給紙搬送手段150と、定着手段170とを有する。画像形成装置100の本体の上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0022】
画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、鉛直方向に並んで配置されている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、回転されるドラム状の感光体111Y、111M、111C、111Bkと、この外周面領域において感光体の回転方向に沿って順次配置された、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkと、露光手段115Y、115M、115C、115Bkと、現像手段117Y、117M、117C、117Bkと、滑剤供給手段114Y、114M、114C、114Bkと、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkと、滑剤除去手段116Y、116M、116C、116Bkとを有する。そして、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(Bk)のトナー像がそれぞれ形成される構成とされている。画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkは、感光体111Y、111M、111C、111Bkに形成するトナー像の色が異なる以外は同様に構成されるため、以下、画像形成ユニット110Yの例で説明する。
【0023】
〔感光体〕
感光体111Yは、重合性化合物を重合して得られる架橋型硬化樹脂による保護層を有するものであることが好ましく、具体的には、導電性支持体上に、中間層を有し、この中間層上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層がこの順に積層されてなる感光層が形成され、この感光層(電荷輸送層)上に表面層として保護層が形成された層構成を有している。なお、感光層は、電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する単層構造の層構成を有するものであってもよい。
【0024】
(重合性化合物)
架橋型硬化樹脂は、紫外線や電子線などの活性線の照射や加熱により、重合性官能基を2個以上有する重合性化合物を重合し、架橋反応による架橋結合を形成して硬化することにより得られる架橋重合体からなるものである。重合性化合物としては、重合性官能基を2個以上有するものを用い、重合性官能基を1個有するものを併用することもできる。具体的には、重合性化合物としては、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーなどが挙げられる。
【0025】
重合性化合物としては、少ない光量あるいは短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH
2 =CHCO−)またはメタクリロイル基(CH
2 =CCH
3 CO−)を2個以上有するアクリル系モノマーまたはこれらのオリゴマーであることが特に好ましい。
【0026】
本発明においては、重合性化合物は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの重合性化合物は、モノマーを用いてもよいが、オリゴマー化して用いてもよい。
【0030】
ただし、上記の例示化合物M1〜M14を示す化学式において、Rはアクリロイル基(CH
2 =CHCO−)を示し、R’はメタクリロイル基(CH
2 =CCH
3 CO−)を示す。
【0031】
(金属酸化物微粒子)
保護層には、膜強度および導電性の観点から、金属酸化物微粒子が含有されていてもよい。また、この金属酸化物微粒子は、表面処理剤によって表面処理されたものであることが好ましい。
【0032】
金属酸化物微粒子としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化ジルコニウム、酸化錫、チタニア(酸化チタン)、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどを用いることができるが、なかでも、硬度、導電性、光透過性の観点から、酸化錫が好ましい。
【0033】
金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、1〜300nmであることが好ましく、より好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜40nmである。
【0034】
本発明において、金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)を自動画像処理解析装置「LUZEX AP(ソフトウエアバージョン Ver.1.32)」((株)ニレコ製)を使用して数平均一次粒径を算出した。
【0035】
表面処理剤としては、金属酸化物微粒子の表面に存在するヒドロキシ基などと反応するものが好ましく、このような表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。
また、表面処理剤としては、ラジカル重合性反応基を有する表面処理剤が好ましい。ラジカル重合性反応基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。このようなラジカル重合性反応基は、本発明に係る重合性化合物とも反応して強固な保護層を形成することができる。ラジカル重合性反応基を有する表面処理剤としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのラジカル重合性反応基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0037】
S−1:CH
2 =CHSi(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−2:CH
2 =CHSi(OCH
3 )
3
S−3:CH
2 =CHSiCl
3
S−4:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−5:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(OCH
3 )
3
S−6:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(OC
2 H
5 )(OCH
3 )
2
S−7:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
3 Si(OCH
3 )
3
S−8:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )Cl
2
S−9:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 SiCl
3
S−10:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
3 Si(CH
3 )Cl
2
S−11:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
3 SiCl
3
S−12:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−13:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 Si(OCH
3 )
3
S−14:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−15:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(OCH
3 )
3
S−16:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )Cl
2
S−17:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 SiCl
3
S−18:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(CH
3 )Cl
2
S−19:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 SiCl
3
S−20:CH
2 =CHSi(C
2 H
5 )(OCH
3 )
2
S−21:CH
2 =C(CH
3 )Si(OCH
3 )
3
S−22:CH
2 =C(CH
3 )Si(OC
2 H
5 )
3
S−23:CH
2 =CHSi(OCH
3 )
3
S−24:CH
2 =C(CH
3 )Si(CH
3 )(OCH
3 )
2
S−25:CH
2 =CHSi(CH
3 )Cl
2
S−26:CH
2 =CHCOOSi(OCH
3 )
3
S−27:CH
2 =CHCOOSi(OC
2 H
5 )
3
S−28:CH
2 =C(CH
3 )COOSi(OCH
3 )
3
S−29:CH
2 =C(CH
3 )COOSi(OC
2 H
5 )
3
S−30:CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
3 Si(OC
2 H
5 )
3
S−31:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )
2 (OCH
3 )
S−32:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )(OCOCH
3 )
2
S−33:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )(ONHCH
3 )
2
S−34:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
3 )(OC
6 H
5 )
2
S−35:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(C
10H
21)(OCH
3 )
2
S−36:CH
2 =CHCOO(CH
2 )
2 Si(CH
2 C
6 H
5 )(OCH
3 )
2
【0038】
表面処理剤は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
表面処理剤の使用量は、未処理金属酸化物微粒子100質量部に対して0.1〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは7〜70質量部である。
【0040】
表面処理剤の未処理金属酸化物微粒子に対する処理方法としては、例えば、未処理金属酸化物微粒子と表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式解砕する方法が挙げられる。この方法により、未処理金属酸化物微粒子の再凝集を防止すると同時に未処理金属酸化物微粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化する。
【0041】
保護層中の金属酸化物微粒子の含有割合は、架橋型硬化樹脂100質量部に対して20〜170質量部であることが好ましく、より好ましくは25〜130質量部である。
【0042】
保護層には、架橋型硬化樹脂や金属酸化物微粒子の他に他の成分が含有されていてもよく、例えば各種の酸化防止剤を含有させることができ、各種の滑剤粒子を加えることもできる。例えば、フッ素原子含有樹脂粒子を加えることができる。フッ素原子含有樹脂粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂、およびこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択することが好ましいが、特に四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0043】
保護層は、重合性化合物や金属酸化物微粒子、重合開始剤および必要に応じて他の成分を公知の溶媒に添加して塗布液を調製し、この塗布液を感光層(電荷輸送層)の外周面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥し、紫外線や電子線などの活性線を照射することによって塗膜中の重合性化合物成分を重合反応させ、硬化させることにより形成することができる。
【0044】
以上のような保護層は、重合性化合物間の反応などが進行することにより、架橋重合体による硬化樹脂として形成される。
【0045】
保護層の形成に用いられる溶媒としては、重合性化合物および金属酸化物微粒子を溶解または分散させることができればいずれのものも使用でき、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
保層形成用の塗布液の塗布方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法などの公知の方法が挙げられる。
【0047】
塗膜は、乾燥しないで硬化処理を行ってもよいが、自然乾燥または熱乾燥を行った後、硬化処理を行うことが好ましい。
【0048】
乾燥の条件は、溶媒の種類、膜厚などによって適宜選択できる。乾燥温度は、好ましくは室温〜180℃であり、特に好ましくは80〜140℃である。乾燥時間は、好ましくは1分間〜200分間であり、特に好ましくは5分間〜100分間である。
【0049】
重合性化合物を反応させる方法としては、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤を添加して、光、熱で反応する方法などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光重合開始剤および熱重合開始剤を併用することもできる。
【0050】
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;過酸化ベンゾイル(BPO)、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物などが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(「イルガキュアー369」:BASFジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。また、光重合促進効果を有する光重合促進剤を単独で、または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0051】
ラジカル重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、中でも、アルキルフェノン系化合物、またはホスフィンオキサイド系化合物が好ましい。特に、α−アミノアルキルフェノン構造、または、アシルホスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましい。
【0052】
重合開始剤は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
重合開始剤の添加割合は、重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0054】
架橋重合体は、重合性化合物を含む塗膜に活性線を照射し、ラジカルを発生させて重合し、かつ分子間および分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化することにより生成される。活性線としては紫外線や電子線がより好ましく、紫外線が使用しやすく特に好ましい。
【0055】
紫外線光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノンなどを用いることができる。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm
2 、好ましくは5〜100mJ/cm
2 である。
ランプの電力は、好ましくは0.1kW〜5kWであり、特に好ましくは、0.5kW〜3kWである。
【0056】
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVであることが好ましい。吸収線量は、0.5〜10Mradであることが好ましい。
【0057】
必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒間〜10分間が好ましく、作業効率の観点から0.1秒間〜5分間がより好ましい。
【0058】
保護層の形成の工程においては、活性線を照射する前後、および活性線を照射中に乾燥を行うことができ、乾燥を行うタイミングはこれらを組み合わせて適宜選択できる。
【0059】
保護層のユニバーサル硬さ(HU)は、280N/mm
2 以上600N/mm
2 以下であることが好ましく、より好ましくは500N/mm
2 以上600N/mm
2 以下である。
保護層のユニバーサル硬さが上記範囲内であることにより、感光体表面が高い耐摩耗性を有するものとなるため、後述する滑剤除去手段の擦過力を大きくすることによって滑剤の除去能を向上させることができ、従って現像器内への滑剤の混入を抑制する効果を確実に得ることができる。
【0060】
本発明において、保護層のユニバーサル硬さは、超微小硬さ試験システム「フィッシャースコープH100」(フィッシャーインスツルメンツ社製)により測定される値である。
具体的には、「フィッシャースコープH100」により試験荷重下でダイヤモンド四角錐のビッカーズ圧子に荷重Fをかけて感光体表面を押し込んだときの、押し込み深さhおよび荷重Fから下記式(1)により求める。
式(1):HU(ユニバーサル硬さ)=F/(26.45×h
2 )
【0061】
なお、保護層のユニバーサル硬さは、保護層を形成する際の硬化処理条件(活性線の照射時間や活性線種)や重合性化合物の種類によって制御することができる。
【0062】
保護層の層厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜6μmである。
【0063】
本発明に係る感光体においては、保護層以外の層は公知の種々のものを採用することができる。
【0064】
〔帯電手段〕
帯電手段113Yは、感光体111Y表面に対して近接帯電方式による帯電を行うものよりなることが好ましく、特に帯電ローラからなることが好ましい。
ここで、近接帯電方式とは、感光体の表面近傍の微小な空隙で発生する近接放電を利用した帯電方式を指す。近接帯電方式には、具体的には、接触ローラ帯電方式、非接触ローラ帯電方式、ブラシ帯電方式などが含まれる。
この例の帯電手段113Yは、感光体111Yの表面に接触して配設された帯電ローラと、帯電ローラに電圧を印加する電源とからなる。
帯電ローラは、例えば、導電性支持体上に抵抗調整層が形成されてなるものである。
【0065】
〔露光手段〕
露光手段115Yは、帯電手段113Yによって一様な電位を与えられた感光体111Y表面に、画像信号(イエローの画像信号)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。露光手段115Yは、感光体111Yの軸方向にアレイ状に発光素子が配列されたLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいはレーザー光学系などが用いられる。
【0066】
〔現像手段〕
現像手段117Yは、感光体111Y表面にトナーを供給し、感光体111Y表面に形成された静電潜像を現像し、トナー像を形成する手段である。この例の現像手段117Yは、具体的には、現像剤が収容されたハウジングと、当該ハウジング内に備えられ、マグネットを内蔵して現像剤を保持して回転する現像スリーブと、感光体および当該現像スリーブの間に現像電界を形成するための直流および/または交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置により構成された現像器よりなる。
【0067】
〔滑剤供給手段〕
滑剤供給手段114Yは、感光体111Yの表面に滑剤を供給する手段である。滑剤供給手段114Yは、感光体111Yの回転方向においてクリーニング手段1119Yの上流側であって現像手段117Yの下流側に配置されていればよく、この例においては、感光体111Yの回転方向において、転写手段(この例においては一次転写ローラ133Y)の下流側であって、クリーニング手段119Yの上流側に配置されている。
この例の滑剤供給手段114Yは、固形状の滑剤と、ブラシローラよりなる滑剤塗布部材とにより構成される。具体的には、滑剤供給手段114Yは、
図2に示すように、筐体20と、この筐体20内に収容された、直方体形状を有する固形状の滑剤により構成された滑剤ストック22と、感光体111Y表面に当接し、滑剤ストック22表面を摺擦することにより掻き取った滑剤を感光体111Y表面に塗布するブラシローラ21と、滑剤ストック22をブラシローラ21に押圧する加圧バネ23と、ブラシローラ21を回転駆動させる駆動機構(図示せず)とにより構成される。ブラシローラ21は、ブラシの先端が感光体111Y表面に当接している。また、ブラシローラ21は、感光体111Yの回転方向とは逆回転で等速に回転駆動される。
【0068】
ブラシローラ21は、例えばポリプロピレンなどの樹脂製のブラシ繊維が高密度に植設されてなる長尺の織布がローラ基体の周面に形成されてなるものである。ブラシローラ21は、各々のブラシ繊維の太さが例えば3〜7デニール、ブラシ繊維の毛長が2〜5mm、ブラシ繊維の電気抵抗率が1×10
10Ω以下、ブラシ繊維のヤング率が1500〜9800N/mm
2 、ブラシ繊維の植設密度(単位面積あたりのブラシ繊維数)が例えば50k〜200kF/inch
2 のものであることが好ましい。
【0069】
加圧バネ23は、ブラシローラ21の感光体111Yに対する押圧力が例えば0.5〜1.0Nとなるよう、滑剤ストック22を感光体111Yに近接する方向に押圧するものが用いられている。
【0070】
滑剤供給手段114Yにおいては、感光体111Yの表面1cm
2 当たりに対する塗布量が0.5×10
-7〜1.5×10
-7g/cm
2 とされるよう、例えば滑剤ストック22のブラシローラ21に対する押圧力およびブラシローラ21の回転速度が調整される。
【0071】
滑剤ストック22を構成する滑剤は、有機滑剤および無機滑剤を含有するものである。
【0072】
〔有機滑剤〕
滑剤を構成する有機滑剤としては、脂肪酸金属塩を用いることが好ましく、有機滑剤としては、例えば、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどを用いることができる。これらの中でも、滑性および延展性の観点から、ステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。
これらは1種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
〔無機滑剤〕
滑剤を構成する無機滑剤としては、劈開性を有する物質からなるものを用いることが好ましく、例えば、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、タルク、カオリン、モンモリロナイト、フッ化カルシウム、マイカなどが挙げられる。これらの中でも窒化ホウ素を用いることが好ましい。
これらは1種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
滑剤における無機滑剤の含有割合は、有機滑剤の質量をMa、無機滑剤の質量をMbとしたときに、Mb/(Ma+Mb)で表され、これが10〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜25質量%である。
滑剤における無機滑剤の含有割合が全体の10質量%以上であることによって、滑剤除去手段によって滑剤を十分に除去することができて、現像器内への滑剤の混入を抑制する効果を確実に得ることができる。また、滑剤における無機滑剤の含有割合が全体の50質量%以下であることによって、有機滑剤の含有割合が確保されて十分なクリーニング性が得られる。
【0075】
〔クリーニング手段〕
クリーニング手段119Yは、感光体111Y表面に残存したトナーを除去する手段である。この例のクリーニング手段119Yは、クリーニングブレードにより構成される。このクリーニングブレードは、
図2に示すように、支持部材31と、この支持部材31上に接着層(図示せず)を介して支持されたブレード部材30とにより構成される。ブレード部材30は、その先端が、感光体111Y表面との当接部分における当該感光体111Yの回転方向と反対方向(カウンター方向)に向く状態で配置されている。
【0076】
支持部材31としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、剛体の金属、弾性を有する金属、プラスチック、セラミックなどから製造されたものが挙げられる。中でも、剛体の金属が好ましい。
【0077】
ブレード部材30としては、例えば、ベース層とエッジ層とが積層されてなる多層構造のものを用いることができる。ベース層およびエッジ層は、それぞれポリウレタンにより構成されることが好ましい。ポリウレタンとしては、ポリオール、ポリイソシアネートおよび必要に応じて架橋剤を反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0078】
〔滑剤除去手段〕
滑剤除去手段116Yは、感光体111Y表面に付着した滑剤を除去する手段である。滑剤除去手段116Yは、感光体111Yの回転方向においてクリーニング手段1119Yの下流側であって現像手段117Yの上流側に配置されていればよく、この例においては、感光体111Yの回転方向において、クリーニング手段119Yの下流側であって、帯電手段113Yの上流側に配置されている。
滑剤除去手段116Yは、除去部材が感光体111Y表面に接触し、機械的作用によって滑剤を除去する手段であることが好ましい。ここで、機械的作用によって滑剤を除去するとは、感光体の表面を機械的に擦過するなどによって滑剤を除去するこという。滑剤除去手段としては、ブラシローラや発泡ローラなどの除去部材を用いることができ、除去能力および耐久性の観点からブラシローラが好ましい。この例の滑剤除去手段116Yは、具体的には、感光体111Y表面に当接し、感光体111Yの回転方向とは逆回転で等速に回転駆動されるブラシローラよりなる除去部材と、駆動機構とにより構成される。
【0079】
除去部材としてのブラシローラとしては、例えば、基布に繊維の束をパイル糸として織り込んだパイル織り生地をリボン状生地にし、起毛した面を外側にして金属製シャフトの周囲に螺旋状に巻き付け、接着したものが挙げられる。この例のブラシローラは、例えばポリエステルなどの樹脂製のブラシ繊維が高密度に植設されてなる長尺の織布が金属製シャフトの周面に形成されてなるものである。
ブラシ毛は金属製シャフトに対し垂直方向に起毛させる、直毛タイプが除去能力の観点から好ましい。ブラシ毛に用いる糸は、フィラメント糸が望ましく、材料としては、6−ナイロン、12−ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン等の合成樹脂が挙げられ、導電性を高める目的でカーボン、ニッケル等の金属を練り込んだものでもよい。ブラシ繊維の太さは3〜15デニールが好ましく、ブラシ繊維の毛長は2〜5mmが好ましい。また、ブラシ繊維の植設密度を4万〜50万本/平方インチ(40k〜500kF/inch
2 )の範囲で設定することで、除去に必要な剛性を確保すると共に、ブラシ毛に疎な部分を作らず滑剤の除去ムラを引き起こさないようにすることができる。ブラシ繊維の電気抵抗率は1×10
7 Ω以下であることが好ましく、ブラシ繊維のヤング率は1500〜9800N/mm
2 であることが好ましい。ブラシローラの感光体に対する食込み量は、0.5〜1.5mmであることが好ましい。ブラシローラの回転速度は例えば感光体速度比で0.3〜1.5とされ、感光体の回転方向と同じ方向の回転であっても、逆の方向の回転であってもよい。
【0080】
本発明の画像形成装置100においては、
図2に示すように、滑剤供給手段114Yによる滑剤の供給後であってクリーニング手段119Yによるトナーの除去前の感光体111Y表面の単位面積当たりの滑剤存在比率をA(atm%)、滑剤除去手段116Yによる滑剤の除去後の感光体111Y表面の単位面積当たりの滑剤存在比率をB(atm%)としたとき、B/Aで表される滑剤残存率が0.67以下であることが好ましい。すなわち、画像形成装置100においては、滑剤供給手段114Yおよび滑剤除去手段116Yにおいて、0.67≧B/Aを満たすように、感光体111Y表面上の滑剤存在比率の調整が行われることが好ましい。
滑剤残存率が0.67以下であることにより、現像手段117Yを構成する現像器内への滑剤の混入が確実に抑制される。
【0081】
なお、滑剤存在比率Aの測定では、回転する感光体111Yにおいて、滑剤供給手段114Yの下流側であってクリーニング手段119Yの上流側の感光体111Y表面上の任意の箇所を選択することができる。
また、滑剤存在比率Bの測定では、回転する感光体111Yにおいて、滑剤除去手段116Yの下流側であって滑剤供給手段114Yの上流側の感光体111Y表面上の任意の箇所を選択することができるが、本発明においては、滑剤除去手段116Yの下流側であって帯電手段113Yの上流側の感光体111表面上の任意の箇所を選択することとする。
【0082】
ここで、滑剤存在比率とは、感光体表面の単位面積当たりに滑剤が存在する度合いをいう。本発明においては、X線光電子分光法(ESCA)によって測定される感光体表面上の滑剤を構成する脂肪酸金属塩に由来の金属の存在比率を代替量として用いる。滑剤における脂肪酸金属塩および無機滑剤の比率は経時的に略一定であると考えられるので、脂肪酸金属塩に由来の金属の存在比率は、滑剤全体に係る滑剤存在比率の代替量として用いることができる。単位は「atm%」とする。検出する選択元素は、(1)保護層を構成する架橋重合体の元素(C、Oなど)、(2)金属酸化物(例えばSnなど)、(3)感光体表面に供給される脂肪酸金属塩に由来の金属(例えばZn、Alなど)とする。これらの選択元素については、保護層を構成する材料の種類や用いる滑剤の種類によって、感光体表面に存在し得ると考えられる元素全てを抽出する必要がある。なお、検知性の観点から、保護層に含有される金属酸化物由来の金属と脂肪酸金属塩に由来の金属との差別化のため、使用する金属酸化物と脂肪酸金属塩に由来の金属とは違う種類のものを選択する。
具体的には、感光体から保護層のみ5mm角で切り取り、これを測定サンプルとして、X線光電子分光装置「K−Alpha」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、選択元素を下記測定条件にて定量分析し、各々の原子ピーク面積から相対感度因子を用いて表面元素濃度を算出する。検出される金属の測定量を代替量として取り扱う。
−測定条件
X線:Alモノクロ線源
加速:12kV、6mA
分解能:50eV
ビーム系:400μm
ステップサイズ:0.1eV
【0083】
滑剤存在比率Aは、滑剤供給手段における滑剤の供給方法や供給量によって制御することができる。また、滑剤存在比率Bは、滑剤除去手段による除去部材の種類や除去部材の接触状態によって制御することができる。
【0084】
中間転写体ユニット130は、感光体111Y、111M、111C、111Bkと当接可能に設けられている。中間転写体ユニット130は、無端ベルト状の中間転写体131と、当該中間転写体131と当接して配置された、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に形成されたトナー像を当該中間転写体131に転写する一次転写手段である一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと、当該中間転写体131のクリーニング手段135と、を有する。
【0085】
この画像形成装置100においては、感光体111Y、111M、111C、111Bk上に形成されたトナー像を一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkによって中間転写体131に転写し、中間転写体131上に転写された各トナー像を二次転写手段である二次転写ローラ217によって転写材Pに転写する中間転写方式が採用されているが、感光体上に形成されたトナー像を転写手段によって直接転写材に転写する直接転写方式が採用されてもよい。
【0086】
中間転写体131は、複数のローラ137A、137B、137C、137Dにより巻回され、回動可能に支持されている。
【0087】
この画像形成装置100において、感光体111Y、現像手段117Y、滑剤供給手段114Y、クリーニング手段119Yおよび滑剤除去手段116Yなどは、一体的に結合され、装置本体に着脱自在に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。あるいは、帯電手段113Y、露光手段115Y、現像手段117Y、滑剤供給手段114Y、滑剤除去手段116Y、一次転写ローラ133Yおよびクリーニング手段119Yからなる群から選ばれる一以上の部材と、感光体111Yとが一体的に構成されたプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)であってもよい。
【0088】
プロセスカートリッジ200は、筐体201と、それに収容された感光体111Y、帯電手段113Y、現像手段117Y、滑剤供給手段114Y、クリーニング手段119Yおよび滑剤除去手段116Yと、中間転写体ユニット130と、を有する。また、装置本体には、プロセスカートリッジ200を装置本体内にガイドする手段として支持レール203L、203Rが設けられている。それにより、プロセスカートリッジ200を装置本体に着脱可能となっている。これらのプロセスカートリッジ200は、装置本体に着脱自在に構成された単一の画像形成ユニットとなりうる。
【0089】
給紙搬送手段150は、給紙カセット211内の転写材Pを、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213Dおよびレジストローラ215を経て、二次転写ローラ217に搬送可能に設けられている。
【0090】
定着手段170は、二次転写ローラ217により転写されたカラートナー像を定着処理する。排紙ローラ219は、定着処理された転写材Pを挟持して、排紙トレイ221上に載置可能に設けられている。
【0091】
このように構成された画像形成装置100では、画像形成ユニット110Y、110M、110C、110Bkによりトナー像を形成する。具体的には、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に放電して負に帯電させる。次いで、露光手段115Y、115M、115C、115Bkで、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を画像信号に基づいて露光し、静電潜像を形成する。次いで、現像手段117Y、117M、117C、117Bkで、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面にトナーを付与して現像し、トナー像を形成する。
【0092】
次いで、一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkを、回動する中間転写体131と当接させる。それにより、感光体111Y、111M、111C、111Bk上にそれぞれ形成した各色のトナー像を、回動する中間転写体131上に逐次転写させて、カラートナー像を転写する(一次転写する)。画像形成プロセス中、一次転写ローラ133Bkは、常時、感光体111Bkに当接する。一方、他の一次転写ローラ133Y、133M、133Cは、カラートナー像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体111Y、111M、111Cに当接する。
【0093】
そして、一次転写ローラ133Y、133M、133C、133Bkと中間転写体131とを分離させた後、滑剤供給手段114Y、114M、114C、114Bkにより感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に滑剤を供給する。その後、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に残存したトナーを、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkで除去する。そして、感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面に残存した滑剤を、滑剤除去手段116Y、116M、116C、116Bkで除去する。その後、次の画像形成プロセスに備えて、必要に応じて感光体111Y、111M、111C、111Bkの表面を除電手段(不図示)によって除電した後、帯電手段113Y、113M、113C、113Bkにより負に帯電させる。
【0094】
一方、給紙カセット211内に収容された転写材P(例えば普通紙、透明シートなどの最終画像を担持する支持体)を、給紙搬送手段150で給紙し、複数の中間ローラ213A、213B、213C、213D、レジストローラ215を経て二次転写ローラ217に搬送する。そして、二次転写ローラ217を回動する中間転写体131と当接させて、転写材P上にカラートナー像を一括して転写する(二次転写する)。二次転写ローラ217は、転写材P上に二次転写を行うときのみ、中間転写体131と当接する。その後、カラートナー像が一括転写された転写材Pを、中間転写体131の曲率が高い部位で分離する。
【0095】
このようにしてカラートナー像が一括して転写された転写材Pを、定着手段170で定着処理した後、排紙ローラ219で挟持して装置外の排紙トレイ221上に載置する。また、カラートナー像が一括転写された転写材Pを中間転写体131から分離した後、クリーニング手段135で中間転写体131上の残存トナーを除去する。
【0096】
以上、本発明の画像形成装置100によれば、クリーニング手段119Y、119M、119C、119Bkの下流側かつ現像手段117Y、117M、117C、117Bkの上流側において滑剤を除去する滑剤除去手段116Y、116M、116C、116Bkが設けられていることによって滑剤が機械的に除去され、さらに、当該滑剤が有機滑剤および無機滑剤を含有するものであることにより、滑剤除去手段116Y、116M、116C、116Bkによる滑剤の除去能を向上させることができ、その結果、現像手段117Y、117M、117C、117Bkの現像器内への滑剤の混入が抑制されて白画像におけるカブリの発生を抑制することができる。
滑剤が有機滑剤および無機滑剤を含有するものであることによって滑剤の除去能を向上させることができる理由としては、詳細は不明であるが、以下のように考えられる。すなわち、有機滑剤は延展性および塗布性に優れるので、感光体上に均質な膜を形成することができる。一方、無機滑剤は延展性に優れないので、有機滑剤による膜の中に分散された状態が形成され、これにより滑剤の皮膜の感光体からの剥離性が向上させるためと推測される。
【0097】
〔トナー〕
本発明の画像形成装置において使用されるトナーとしては、特に限定されないが、結着樹脂および着色剤が含有されるトナー粒子よりなり、当該トナー粒子には、所望により離型剤などの他の成分が含有されていてもよい。
トナーを構成するトナー粒子は、高画質化を企図する観点から、その体積平均粒径が2〜8μmであることが好ましい。
【0098】
上記のトナーを製造する方法としては、特に制約されないが、例えば、通常の粉砕法や、分散媒中で作成する湿式溶融球形化法や、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法などが挙げられる。
【0099】
また、トナー粒子には、外添剤として、平均粒径10〜300nm程度のシリカおよびチタニア等の無機微粒子、0.2〜3μm程度の研磨剤を適宜量、外部添加することができる。
【0100】
トナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛などの合金、フェライトおよびマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライトが好ましい。
【0101】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、滑剤除去手段は、感光体の回転方向においてクリーニング手段の下流側かつ帯電手段の上流側に設けられることに限定されない。具体的には、滑剤除去手段116Yは
図3に示されるように、例えば感光体111Yの回転方向において帯電手段113Yの下流側かつ現像手段117Yの上流側に設けられていてもよい。
【0102】
また例えば、本発明において得られる効果は、ユニバーサル硬さが150〜280N/mm
2 程度となる、表面層が熱可塑性樹脂からなる感光体が搭載された画像形成装置においても得ることができる。また、アモルファスシリコン感光体が搭載された画像形成装置においても得ることができる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
〔感光体の作製例1〕
直径60mmのアルミニウム製の円筒体の表面を切削加工し、表面を細かく粗面にした導電性支持体〔1〕を用意した。
【0105】
(中間層の形成)
下記組成の分散液を下記溶媒と同じ溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルター使用)し、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 1部
金属酸化物粒子:酸化チタン「SMT500SAS」(テイカ社製) 3部
溶媒:メタノール 10部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
中間層形成用塗布液〔1〕を用いて導電性支持体〔1〕上に、浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚2μmの中間層〔1〕を形成した。
【0106】
(電荷発生層の形成)
電荷発生物質:下記顔料(CG−1)20部、バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)10部、溶媒:酢酸t−ブチル700部、溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン300部を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層形成用塗布液〔1〕を調製した。この電荷発生層形成塗布液〔1〕を中間層〔1〕上に浸漬コーティング法で塗布し、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
【0107】
<顔料(CG−1)の合成>
(1)無定形チタニルフタロシアニンの合成
1,3−ジイミノイソインドリン;29.2部をo−ジクロロベンゼン200部に分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド;20.4部を加えて窒素雰囲気下に150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルムで洗浄、2%塩酸水溶液で洗浄、水洗メタノール洗浄して、乾燥後、26.2部(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
次いで、粗チタニルフタロシアニンを5℃以下において濃硫酸250部中で1時間攪拌して溶解し、これを20℃の水5000部に注いだ。析出した結晶をろ過し、充分に水洗してウェットペースト品225部を得た。
このウェットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、ろ過、乾燥して無定形チタニルフタロシアニン24.8部(収率86%)を得た。
【0108】
(2)(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニン(CG−1)の合成
上記無定形チタニルフタロシアニン10.0部と(2R,3R)−2,3−ブタンジオール0.94部(0.6当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)をオルトクロロベンゼン(ODB)200部中に混合し60〜70℃で6.0時間加熱撹拌した。一夜放置後、該反応液にメタノールを加えて生じた結晶を濾過し、濾過後の結晶をメタノールで洗って((2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料)CG−1:10.3部を得た。顔料(CG−1)のX線回折スペクトルでは、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークがある。マススペクトルにおいて576と648にピークがあり、IRスペクトルでは970cm
-1付近のTi=O、630cm
-1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れる。また熱分析(TG)では390〜410℃に約7%の質量減少があることから、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混合物と推定される。
得られた顔料(CG−1)のBET比表面積を流動式比表面積自動測定装置(マイクロメトリックス・フローソープ型:島津製作所)で測定したところ、31.2m
2 /gであった。
【0109】
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送物質:下記化合物A225部、バインダー樹脂:ポリカーボネート樹脂「Z300」(三菱ガス化学社製)300部、酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製)6部、溶媒:THF(テトラヒドロフラン)1600部、溶媒:トルエン400部、シリコーンオイル「KF−50」(信越化学社製)1部を混合し、溶解して電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を電荷発生層〔1〕の上に円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布し、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
【0110】
【化3】
【0111】
(保護層の形成)
(1)金属酸化物微粒子の作製
酸化錫(数平均一次粒径:20nm)100部、表面処理剤として上記例示化合物(S−13)30部、トルエン/イソプロピルアルコール=1/1(質量比)の混合溶媒300部の混合液を、ジルコニアビーズとともにサンドミルに入れ約40℃で、回転速度1500rpmで撹拌し、さらに、上記処理混合物を取り出し、ヘンシェルミキサーに投入して回転速度1500rpmで15分間撹拌した後、120℃で3時間乾燥することによって、ラジカル重合性官能基を有する化合物による酸化錫の表面処理を終了し、表面処理済み酸化錫を得た。これを金属酸化物微粒子〔1〕とする。上記のラジカル重合性官能基を有する化合物による表面処理により、酸化錫の粒子表面は上記例示化合物(S−13)により被覆されていた。
【0112】
(2)保護層の形成
金属酸化物微粒子〔1〕100部、重合性化合物:上記例示化合物(M1)100部、溶媒:sec−ブタノール320部、溶媒:THF(テトラヒドロフラン)80部を遮光下で混合し、分散機としてサンドミルを用いて5時間分散した後、重合開始剤:「イルガキュアー」(BASFジャパン社製)10部を加え、遮光下で撹拌して溶解させ、保護層形成用塗布液〔1〕を調製した。この保護層形成用塗布液〔1〕を電荷輸送層〔1〕上に円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して塗膜を形成した。その後、この塗膜を室温で15分間乾燥し、キセノンランプを用いて窒素気流下において、光源と塗膜との間の離間距離を10mmとして、ランプ出力1kWで紫外線を1分間照射して、乾燥膜厚3.0μmの保護層〔1〕を形成し感光体〔1〕を作製した。
【0113】
<実施例1>
画像形成装置「bizhub C6500」(コニカミノルタ社製)に、所定の現像剤と感光体〔1〕とを搭載し、画像形成ユニットを近接帯電による帯電が行われるよう、接触ローラ帯電方式に改造し、さらにクリーニング手段の下流側に下記仕様の滑剤除去手段を設置した。この滑剤除去手段を下記条件に設定した。この装置には固形状の滑剤ストックとブラシローラとを有する滑剤供給手段が備えられているところ、当該滑剤ストックとして、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛)90質量%および無機滑剤(窒化ホウ素)10質量%が均質に混合されて成型されたものを用いた。この評価機を用いて下記の白ベタ画像におけるカブリの発生についての評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
−滑剤除去手段の仕様−
滑剤除去手段には、直毛タイプのブラシローラよりなる除去部材を使用した。このブラシローラは、フィラメント糸として炭素含有ナイロン繊維「SA−7」(東レ社製)を用い、ブラシ繊維の太さ10デニール、ブラシ繊維の植設密度75kF/inch
2 、ブラシ繊維の毛長3.0mmのリボン状生地を外径6mmの金属製シャフト(SUM22)に螺旋状に巻き付け形成したものである。また、ブラシローラは感光体に対し、食込み量1.2mmとなるよう設置し、感光体の回転方向とは逆方向に周速比0.6で回転させた。また、ブラシローラは金属製シャフトを介して接地させた。
【0115】
この評価機において、滑剤供給手段による滑剤の供給後であってクリーニング手段によるトナーの除去前の感光体表面の単位面積当たりの滑剤存在比率A、および、滑剤除去手段による滑剤の除去後であって現像手段による現像前の感光体表面の単位面積当たりの滑剤存在比率Bを測定し、滑剤残存率(B/A)を算出したところ、0.6であった。なお、滑剤存在比率の測定には、X線光電子分光装置「K−Alpha」(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用い、選択元素として亜鉛、錫、ケイ素、炭素、酸素、窒素を定量分析し、亜鉛の測定量を代替量とした。以下、実施例2〜実施例4および比較例1〜比較例3における滑剤存在比率の測定も同様とする。
【0116】
〔白ベタ画像におけるカブリの発生についての評価〕
高温高湿環境(温度30℃、湿度85%RH)で、A4サイズの印字率5%相当の文字チャートを10万枚連続で印字し、続けて白ベタ画像1枚を印字した。文字チャートおよび白ベタ画像は、いずれも、感光体表面電位−現像バイアス=100Vで、画像安定化後実施後条件にて印字した。
この白ベタ画像の顕微鏡写真を画像解析して微小定着トナーの量を測定し、定量化して黒化率を算出した。この黒化率が高いほどカブリのレベルが悪いと判断される。具体的には、黒化率が0.15%未満である場合を「A」、黒化率が0.15%以上0.20%未満である場合を「B」、黒化率が0.20%以上0.25%未満である場合を「C」、黒化率が0.25%以上である場合を「D」と評価した。本発明においては、黒化率が0.20%未満である場合、すなわち「A」または「B」である場合を合格とする。
【0117】
<実施例2〜4>
実施例1において、滑剤ストックとして、表1に従った有機滑剤および無機滑剤が均質に混合されて成型されたものを用いたことの他は同様にして、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
<比較例1>
実施例2において、滑剤除去手段を設けなかった、具体的には、
図2に示す配置を
図4に示す配置に変更したことの他は同様にして、上記の評価を行った。
なお、この構成において、滑剤存在比率Bは、
図4に示すように、クリーニング手段の下流側であって帯電手段の上流側の感光体表面の単位面積当たりの滑剤存在比率を示す。
【0119】
<比較例2>
実施例1において、滑剤ストックとして有機滑剤(ステアリン酸亜鉛)100質量%のものを用いたことの他は同様にして、上記の評価を行った。
【0120】
<比較例3>
比較例2において、滑剤除去手段を設けなかったことの他は同様にして、上記の評価を行った。
【0121】
【表1】
【0122】
上記表1から明らかなように、クリーニング後に滑剤除去手段によって滑剤を除去する実施例2によれば、その他の条件が同じである比較例1に比べて滑剤の除去能が高いことが確認される。
また、滑剤として有機滑剤および無機滑剤を用いた実施例1〜4によれば、有機滑剤のみを用いた比較例2と比べて滑剤の除去能が高いことが確認される。