特許第6233354号(P6233354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233354
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20171113BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20171113BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   G06F3/12 375
   G06F3/12 304
   G06F3/12 347
   B41F33/00 200
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-116683(P2015-116683)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-1259(P2017-1259A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 一慶
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−030449(JP,A)
【文献】 特開2012−181762(JP,A)
【文献】 特開2004−046578(JP,A)
【文献】 特開2010−181932(JP,A)
【文献】 特開2009−266094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0212771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41F 33/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客から受注した受注ジョブに関するジョブ指示書を生成し、前記受注ジョブの実行を指示する印刷工程管理装置と、前記印刷工程管理装置から前記ジョブ指示書及び前記受注ジョブ実行の指示を受信する印刷指示装置とを有する印刷工程管理システムで使用され、前記印刷指示装置からの印刷指示を受けて印刷を行う画像形成装置であって、
前記印刷指示装置が実行できる印刷設定の情報を取得する取得部と、
前記顧客に関する顧客情報と、画像形成装置で使用されるカラーコンフィグレーション設定とを紐付けた紐付けテーブルと、
前記取得部取得した印刷設定の情報を基に、前記ジョブ指示書における前記顧客情報の有無を判定し、前記ジョブ指示書に前記顧客情報が存在し、かつ、前記紐付けテーブルに前記顧客情報が登録されている場合に、前記顧客情報に紐付けられた前記カラーコンフィグレーション設定により前記ジョブ指示書を更新して印刷設定を補完することにより、前記ジョブ指示書に記載されている印刷設定が前記印刷指示装置で実行不可能であると判断した前記ジョブ指示書の印刷設定を前記画像形成装置に適したジョブ指示書に変更する変更部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷指示装置は、
前記画像形成装置から前記変更部が変更したジョブ指示書に関するデータを受信したとき、この受信したデータがプリセットデータと同一の場合には、その受信データを破棄し、前記受信したデータのファイル形式がジョブ指示書形式でない場合には前記受信したデータのファイル形式をジョブ指示書形式へ変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
顧客から受注した受注ジョブに関するジョブ指示書を生成し、前記受注ジョブの実行を指示する印刷工程管理装置と、前記印刷工程管理装置から前記ジョブ指示書及び前記受注ジョブ実行の指示を受信する印刷指示装置とを有する印刷工程管理システムで使用され、前記印刷指示装置からの印刷指示を受けて印刷を行う画像形成装置において、
前記印刷指示装置が実行できる印刷設定の情報を取得する取得処理と、
前記取得処理によ取得された印刷設定の情報を基に、前記ジョブ指示書における前記顧客に関する顧客情報の有無を判定し、前記ジョブ指示書に前記顧客情報が存在し、かつ、前記顧客情報と、画像形成装置で使用されるカラーコンフィグレーション設定とを紐付けた紐付けテーブルに前記顧客情報が登録されている場合に、前記顧客情報に紐付けられた前記カラーコンフィグレーション設定により前記ジョブ指示書を更新して印刷設定を補完することにより、前記ジョブ指示書に記載されている印刷設定が前記印刷指示装置で実行不可能であると判断した前記ジョブ指示書の印刷設定を前記画像形成装置に適したジョブ指示書に変更する変更処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びプログラムに関し、特に、印刷工程管理装置と印刷指示装置とを有する印刷工程管理システムで使用され、印刷指示装置からの印刷指示を受けて印刷を行う画像形成装置及びその制御に用いるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
JDF(Job Definition Format)連携を用いた印刷フローでは、MIS(Management Information System)と呼ばれる工程管理アプリケーション、CTP(Computer To Plate)−WF(Workflow)と呼ばれる面付け・製版アプリケーション、画像形成装置、後処理機等を接続した状態での印刷・後加工作業が行われている。
【0003】
JDFは、印刷指示書(ジョブ指示書)に相当するものである。JDFには、印刷設定や顧客情報、納期等のジョブ指示情報が記載されている。MISは、CTP−WFにジョブ実行を指示する。その指示を受けて、CTP−WFオペレータは、そのジョブを画像形成装置や後処理機に振り分けることによって印刷処理を実行する。
【0004】
ところが、CTP−WFは印刷設定機能が乏しく、MISが指示した印刷設定を画像形成装置に適用できないケースが存在する。また、CTP−WFの中には、印刷設定のGUI(Graphical User Interface)を持たず、ジョブ設定記載済みのジョブテンプレートファイルをジョブ投入時に選択させるものも存在する。この場合、プリセットとして保存されている印刷設定でしか印刷を行えないことになる。
【0005】
そのため、画像形成装置側でホットフォルダ(Hot Folder)を作成しておき、CTP−WFからは設定できない印刷項目については、このホットフォルダを用いるという運用が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−112237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、CTP−WFでの印刷設定が出来ない場合に、ホットフォルダを別途作成しなければならないために、印刷作業に手間がかかってしまう。また、顧客は、CTP−WFとホットフォルダでそれぞれどのようなジョブ設定項目が存在しているかを把握しておかなければならず、印刷工程の管理が煩雑となる。
【0008】
本発明は、ホットフォルダの作成を不要とすることにより、印刷作業を円滑に行うことができるとともに、印刷工程の管理が容易な画像形成装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、
顧客から受注した受注ジョブに関するジョブ指示書を生成し、受注ジョブの実行を指示する印刷工程管理装置と、印刷工程管理装置からジョブ指示書及び受注ジョブ実行の指示を受信する印刷指示装置とを有する印刷工程管理システムで使用され、印刷指示装置からの印刷指示を受けて印刷を行う画像形成装置であって、
印刷指示装置が実行できる印刷設定の情報を取得する取得部と、
顧客に関する顧客情報と、画像形成装置で使用されるカラーコンフィグレーション設定とを紐付けた紐付けテーブルと、
取得部取得した印刷設定の情報を基に、ジョブ指示書における顧客情報の有無を判定し、ジョブ指示書に顧客情報が存在し、かつ、紐付けテーブルに顧客情報が登録されている場合に、顧客情報に紐付けられたカラーコンフィグレーション設定によりジョブ指示書を更新して印刷設定を補完することにより、ジョブ指示書に記載されている印刷設定が印刷指示装置で実行不可能であると判断したジョブ指示書の印刷設定を画像形成装置に適したジョブ指示書に変更する変更部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のプログラムは、
顧客から受注した受注ジョブに関するジョブ指示書を生成し、受注ジョブの実行を指示する印刷工程管理装置と、印刷工程管理装置からジョブ指示書及び受注ジョブ実行の指示を受信する印刷指示装置とを有する印刷工程管理システムで使用され、印刷指示装置からの印刷指示を受けて印刷を行う画像形成装置において、
印刷指示装置が実行できる印刷設定の情報を取得する取得処理と、
取得処理によ取得された印刷設定の情報を基に、ジョブ指示書における顧客情報の有無を判定し、ジョブ指示書に顧客情報が存在し、かつ、顧客に関する顧客情報と、画像形成装置で使用されるカラーコンフィグレーション設定とを紐付けた紐付けテーブルに顧客情報が登録されている場合に、顧客情報に紐付けられたカラーコンフィグレーション設定によりジョブ指示書を更新して印刷設定を補完することにより、ジョブ指示書に記載されている印刷設定が印刷指示装置で実行不可能であると判断したジョブ指示書の印刷設定を画像形成装置に適したジョブ指示書に変更する変更処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
上記構成の画像形成装置あるいはプログラムにおいて、印刷工程管理装置が印刷指示装置にジョブ実行が指示されたとき、その指示内容(印刷設定)が印刷指示装置で実行不可能である場合に、画像形成装置に適したジョブ指示書に変更し、ジョブテンプレートファイルを作成する。これにより、顧客は、ホットフォルダの運用が不要になるため、ホットフォルダを別途作成する作業が不要になるとともに、印刷指示装置とホットフォルダでそれぞれどのようなジョブ設定項目が存在しているかを把握しておく必要がなくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホットフォルダの運用が不要になるため、印刷作業を円滑に行うことができるとともに、印刷工程の管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が適用される印刷工程管理システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明が適用される印刷工程管理システムの具体的な構成例及び処理の流れを示すブロック図である。
図3】クライアントPC及びデジタルプリンタのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】CTP−WFで実行できる印刷設定機能情報の取得の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】クライアントPCの状態監視とJDFの取得についての処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】クライアントPCからJDFを取得した後のプリンタコントローラの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】プリンタコントローラから変換済みのJDFを取得した後のクライアントPCの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】クライアントPC(CTP−WF)でのテンプレート選択イメージの一例を示す図である。
図9】顧客情報とカラーコンフィグレーションの紐付けテーブルの一例を示す図である。
図10】カラーコンフィグレーション設定の補正処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本発明は実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明や各図において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
<印刷工程管理システム>
図1は、本発明が適用される印刷工程管理システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本適用例に係る印刷工程管理システム1は、印刷工程管理装置2と、印刷指示装置3と、画像形成装置4とを備える構成となっている。画像形成装置4は、後処理機を含む場合もある。そして、本印刷工程管理システム1において、画像形成装置4として本発明の画像形成装置が用いられる。すなわち、本発明の画像形成装置は、上記構成の印刷工程管理システム1で用いられる画像形成装置である。本発明の画像形成装置として、デジタルプリンタ等の印刷機を例示することができる。
【0016】
印刷工程管理装置2は、受注ジョブに関するジョブ指示書を生成し、印刷指示装置3に対してジョブの実行を指示する。本印刷工程管理システム1では、印刷工程管理装置2は、MISと呼ばれる工程管理アプリケーションに相当する。印刷指示装置3は、印刷工程管理装置2からジョブ指示書及びジョブ実行の指示を受信し、画像形成装置4に対して印刷の指示を行う。本印刷工程管理システム1では、印刷指示装置3は、CTP−WFと呼ばれる面付け・製版アプリケーションに相当する。画像形成装置4は、印刷指示装置3からの印刷指示を受けて印刷を行う。
【0017】
図2は、本適用例に係る印刷工程管理システム1の具体的な構成例及び処理の流れを示すブロック図である。
【0018】
本印刷工程管理システム1において、印刷工程管理装置2は、印刷工程の管理を行うMISのアプリケーションをインストールしたサーバーPC(Personal Computer)20であり、その構成は後述するクライアントPC30と同様である。サーバーPC20は、顧客から印刷ジョブを受注した後、印刷設定や顧客情報(顧客名、出荷先、納期等)を記載したジョブ指示書(JDF)を作成し、後続のクライアントPC30に対してジョブ実行の指示を行う。また、サーバーPC20は、印刷の状態や納期に対する進捗状況の管理も行う。
【0019】
本印刷工程管理システム1において、印刷指示装置3は、CTP−WFのアプリケーションをインストールしたクライアントPC30であり、その構成の詳細については後述する。CTP−WFは、印刷工程及び後処理工程の一元管理や印刷/後処理指示を行うアプリケーションである。クライアントPC30は、画像形成装置4の一例であるデジタルプリンタ40や後処理機へのジョブ投入と、それらの進捗状況の確認等を行う。
【0020】
クライアントPC30がサーバーPC20からジョブ指示を受信すると、クライアントPC30のオペレータ(CTP−WFオペレータ)は、その指示に従ってデジタルプリンタ40や後処理機にジョブの振り分けを行う。ここでは、画像形成装置4としてデジタルプリンタ40を例示したが、これに限られるものではなく、オフセット印刷機等であってもよい。
【0021】
デジタルプリンタ40は、クライアントPC30からのジョブ投入を受けて印刷処理を実行する。デジタルプリンタ40は、比較的小規模の印刷に向いており、主に小ロット印刷の場合に用いられる。また、デジタルプリンタ40は、オフセット印刷機で大量印刷する前の確認段階(プルーフ)としても用いられる。
【0022】
デジタルプリンタ40は、大きく、プリンタコントローラ、プリンタエンジン及びインライン後処理機の3つのモジュールによって構成される。プリンタコントローラは、デジタルプリンタ40におけるRIP(Raster Image Processor)モジュールである。プリンタエンジンは、デジタルプリンタ40における画像転写、印刷、排紙等の画像形成のための各処理を行う。インライン後処理機は、デジタルプリンタ40に直付けされた後処理機であり、印刷した用紙に対し、その場でステープルやパンチ等の後処理を行う。
【0023】
因みに、JDF連携での印刷工程には、一般的に、CTP(オフセット印刷機用の版制作装置)、オフセット印刷機、ニアライン後処理機、オフライン後処理機が構成に含まれるケースが存在する。
【0024】
<クライアントPC及びデジタルプリンタのハードウェア構成>
図3は、クライアントPC30及びデジタルプリンタ40のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0025】
[クライアントPC]
図3に示すように、クライアントPC30は、CPU(Central Processing Unit)31、ネットワーク通信インターフェース(I/F)32、メモリ33、HDD(Hard Disk Drive)34等により構成され、前述のCTP−WFのアプリケーション35がインストールされている。CTP−WFのアプリケーション35により作成した印刷データは、ネットワーク通信インターフェース32を介してデジタルプリンタ40内のプリンタコントローラ41に送信される。
【0026】
[デジタルプリンタ]
デジタルプリンタ40は、プリンタコントローラ41とプリンタエンジン42とに分けられる。
【0027】
(プリンタコントローラ)
プリンタコントローラ41は、ネットワーク通信インターフェース411、CPU412、メモリ413、HDD414、RIP部415、プリンタエンジン通信インターフェース416等から構成されている。HDD414は、保存ジョブの画像データや設定情報を格納するモジュールである。
【0028】
プリンタコントローラ41は、クライアントPC30から送信された印刷データをネットワーク通信インターフェース411にて受信し、RIP部415にてラスタライズ処理を行う(メモリ413上に展開したデータをCPU412が処理実行する)。ラスタライズ処理の完了後、画像データと後処理設定データはプリンタエンジン通信インターフェース416を介してプリンタエンジン42へ送信される。
【0029】
(プリンタエンジン)
プリンタエンジン42は、プリンタエンジン通信インターフェース421、給紙部422、画像形成部423、排紙部424、インライン後処理機425、操作部426等から構成され、プリンタコントローラ41から受信した画像データを用紙に印刷する。また、インライン後処理機425では、印刷済み用紙に対してステープルやパンチ等の後処理を実施できる。
【0030】
<JDF連携におけるデータ通信について>
一般的に、MISやCTP−WFとの連携では、JDFと呼ばれる規格でデータ通信が行われている。JDFは業界共通規格であり、異なるベンダー間でのデータ通知を可能とするものである。そのため、開発元が異なるCTP−WFや画像形成装置を連携させることができ、JDF(ジョブ指示書)に記載された共通フォーマットの印刷指示やジョブ状態情報等を参照することで、印刷や後処理の実施、印刷工程の管理を可能としている。
【0031】
<クライアントPC及びデジタルプリンタの処理>
以下に、クライアントPC(CTP−WF)30及びデジタルプリンタ40のプリンタコントローラ41の処理の流れについて説明する。デジタルプリンタ40は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例である。以下では、JDF及びJMF(Job Messaging Format)を用いた通信を例に挙げて説明するが、必ずしもこの方式に限定されるものではない。
【0032】
[クライアントPCで実行できる印刷設定機能情報の取得]
クライアントPC(CTP−WF)30とプリンタコントローラ41との初回接続時に印刷設定可能な機能の情報取得を行い、取得した情報を保持する。具体的には、図4のフローチャートに示すように、クライアントPC30がプリンタコントローラ41に対して接続を行うと、初期通信のメッセージが送信される。これは、デジタルプリンタ40側の状態(給紙トレイ情報、用紙一覧情報、インライン後処理機の構成情報等)の取得要求の通知である。
【0033】
プリンタコントローラ41がこの要求に対する返答データの作成及び通知をクライアントPC30へ行い、さらにジョブ設定能力の取得要求を行う。この状態取得の要求/返答には、JMFと呼ばれるXML(Extensible Markup Language)フォーマットを用いたデータ通信が行われる。プリンタコントローラ41からクライアントPC30へのジョブ設定能力の取得要求と、それに対する返答についてもJMFを利用することで実現できる。
【0034】
例)デジタルプリンタ40側で実行可能な印刷設定を通知するJMF
Known Devicesと呼ばれるJMFメッセージを用いることで、デジタルプリンタ40が実行可能な印刷設定を通知することができる。例えば、ステープル設定の場合、プリンタコントローラ41からクライアントPC30へ通知されるJMFには以下のような記載がされる。
<Name="StitchingParams">
<EnumerationState AllowedValueList="Corner Side"/>
<Name/>
これは、「このプリンタではコーナーステープル及びサイドステープルが可能である」ことを意味する。
【0035】
クライアントPC30でのジョブ設定能力のデータ作成についても同様の形式を用いればよく、そのデータをプリンタコントローラ41で解析することで、クライアントPC30(即ち、印刷指示装置3)がどのような印刷設定が可能かを知ることが出来る。
【0036】
[クライアントPCの状態監視とJDFの取得]
次に、クライアントPC(CTP−WF)30の状態監視とJDF(ジョブ指示書)の取得の処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
プリンタコントローラ41は、クライアントPC30の監視を行い、クライアントPC(CTP−WF)30が、印刷工程管理装置2であるサーバーPC(MIS)20からジョブ実行が指示されたかを検知する(ステップS11)。サーバーPC20からのジョブ実行の指示は、JDF(ジョブ指示書)の送信によって行われる。
【0038】
クライアントPC30は、サーバーPC20から受信したJDFの保存先をプリンタコントローラ41から一定間隔で確認する(ステップS12)。次に、その保存先にJDFが新規に保存された(特定フォルダにファイルが追加された)場合に、プリンタコントローラ41は、クライアントPC30がサーバーPC20からジョブ指示されたことを検知する(ステップS13)。そして、クライアントPC30がサーバーPC20からジョブ指示されたことを検知した場合、プリンタコントローラ41は、クライアントPC30に対してJDFの取得要求及び取得を行う(ステップS14)。
【0039】
[クライアントPCの印刷設定可否の判定とジョブテンプレートの保存]
次に、クライアントPC(CTP−WF)30の印刷設定可否の判定とジョブテンプレートの保存の処理について説明する。
【0040】
まず、クライアントPC30からJDFを取得した後のプリンタコントローラ41の処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図3に示すプリンタコントローラ41において、CPU412による制御の下に実行される。
【0041】
プリンタコントローラ41において、CPU412は、クライアントPC30から取得したJDFを解析する(ステップS21)。この解析により、JDFにどのような印刷設定が記載されているかを把握する。続いて、CPU412は、JDFの解析結果と、クライアントPC30との初回接続時に入手済みの設定能力とを比較し、JDFに記載の印刷設定がクライアントPC(CTP−WF)30で設定可能か否かを判定する(ステップS22)。
【0042】
ここで、ステープル設定を例に挙げると、先述したJMFパラメータの比較を行えばよい。例えば、下記のような場合、
-JDF記載:<EnumerationState AllowedValueList="Corner"/>
-CTP−WF設定能力:<EnumerationState AllowedValueList="Corner Side"/>
クライアントPC30では、コーナーステープル及びサイドステープルが設定可能であるため、JDFに記載のコーナーステープルはCTP−WF上で設定可能、という判定結果となる。
【0043】
CPU412は、ステップS22の判定結果がCTP−WF上で設定可能であれば(S22のYes)、本処理を終了する。この場合、クライアントPC30のオペレータ(CTP−WFオペレータ)がアプリケーション上で印刷設定を行い、デジタルプリンタ40へジョブ投入すればよい。
【0044】
CPU412は、ステップS22の判定結果がCTP−WF上で設定が不可能であれば(S22のNo)、受信したJDFをそのプリンタ用のJDF、即ちデジタルプリンタ40に適したJDFに変換(変更)する(ステップS23)。変換を行う理由は、次の通りである。すなわち、JDFは標準規格であるものの、ベンダーによって解釈の仕方(各種パラメータの記載方法など)が異なるケースが存在するためである。受信したJDFをそのまま利用できるのであれば変換(変更)する必要はない。最後に、CPU412は、その変換済みJDF(印刷設定情報)をクライアントPC30へ送信する(ステップS24)。
【0045】
続いて、プリンタコントローラ41から変換済み(変更済み)のJDFを取得した後のクライアントPC30の処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図3に示すクライアントPC30において、CPU31による制御の下に実行される。
【0046】
クライアントPC30において、CPU31は、プリンタコントローラ41が送信した変換済みのJDFを受信し(ステップS31)、次いで受信した変換済みのJDFと、プリセットとして保存されているJDFジョブテンプレートとを比較する(ステップS32)。そして、CPU31は、設定内容が同一という比較結果の場合(S32のYes)、受信した変換済みのJDFは不要となるため削除する(ステップS33)。また、CPU31は、設定内容がプリセットのテンプレートに一致しないという比較結果の場合(S32のNo)、受信した変換済みのJDFをプリセットテンプレートファイル(ジョブテンプレートファイル)としてCTP−WF内に保存する(ステップS34)。
【0047】
換言すれば、CPU31は、プリンタコントローラ41が送信した変換済みのJDFに関するデータを受信したとき、受信データがプリセットデータ(プリセットのテンプレート)と同一の場合には、その受信データを破棄する処理を行う。CPU31はさらに、受信データのファイル形式がJDF(ジョブ指示書)形式でない場合(即ち、設定内容がプリセットのテンプレートに一致しない場合)には、受信データのファイル形式をJDF形式へ変換する処理を行う。
【0048】
[CTP−WFのテンプレート運用について]
ここで、CTP−WFのテンプレートの運用について説明する。クライアントPC(CTP−WF)30は、プリンタドライバ等と同様に印刷設定を行うGUIを搭載しているが、一般的に設定可能な項目は多くない。デジタルプリンタ40側は、くるみ製本、リングバインド、各種折り等、多彩なインライン後処理が可能であるが、クライアントPC30ではステープルやパンチといった基本的な設定しかできないものが多い。また、印刷設定用のGUIを搭載していないクライアントPC30も存在する。
【0049】
そのような場合に、デジタルプリンタ40側で実行可能な印刷設定を記載したJDFをクライアントPC30に予め保存しておき、印刷指示する際に、そのJDFを選択するというジョブテンプレート運用が行われる。これによれば、クライアントPC30でくるみ製本が設定できないとしても、くるみ製本設定済みのJDFを予め保存しておくことで、印刷時にくるみ製本を指示できることになる。図8に、クライアントPC(CTP−WF)30でのテンプレート選択イメージの一例を示す。
【0050】
[JDFの補正]
先述したように、プリンタコントローラ41は、クライアントPC30からJDFを取得する、即ちサーバーPC20がクライアントPC30に送信したJDFを取得する。このMIS製JDFには、印刷設定以外にも各種管理用パラメータ(顧客情報、出荷先、納期等)が含まれているが、通常、プリンタコントローラ41は、デジタルプリンタ40での印刷に直接かかわるパラメータでないため、これらのパラメータを無視する。
【0051】
プリンタコントローラ41は、先述したプリンタコントローラ41のJDF解析時に、上記管理用パラメータを印刷設定に反映させることもできる。一例として、顧客毎の色変換設定について説明する。印刷物の受注顧客または出荷先(企業、国)に応じて適切な色設定を適用し、印刷を行うことが望まれる。例えば、商業枚葉印刷向け規格のGRACoL(登録商標)、日本の広告業界(雑誌制作等)ではJMPA(雑誌協会カラーターゲット)カラー、欧州向け印刷物ではFogra認証取得済みカラーコンフィグレーションなどが挙げられる。
【0052】
実現手段として、顧客情報とプリンタコントローラ41が有するカラーコンフィグレーション設定とを紐付けたテーブルをあらかじめ作成しておき、その作成した紐付けテーブルを特定の場所に印刷設定を補完するデータベースとして保存しておく。紐付けテーブルの保存先(特定の場所)については、プリンタコントローラ41のHDD414(図3参照)でも良いし、外部サーバー等でも良い。図9に、顧客情報とカラーコンフィグレーションの紐付けテーブルの一例を示す。
【0053】
ここで、プリンタコントローラ41において実行される、カラーコンフィグレーション設定の補正処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。プリンタコントローラ41の動作としては、先述したプリンタコントローラ41のJDF解析処理に、顧客情報の有無の判定処理を加えればよい。すなわち、カラーコンフィグレーション設定の補正処理は、図6のステップS21のJDF解析における処理となる。
【0054】
プリンタコントローラ41において、CPU412は、クライアントPC30から取得したJDFを解析する(ステップS211)。この解析により、JDFにどのような印刷設定が記載されているかを把握する。続いて、CPU412は、JDF顧客情報の有無を判定する(ステップS212)。
【0055】
次に、CPU412は、顧客情報が存在すると判定した場合(S212のYes)、図10の紐付けテーブル(データベース)にアクセスし、その顧客情報が登録されているか否か、即ち顧客情報が存在するか否かを判定する(ステップS213)。そして、CPU412は、顧客情報が登録済みであれば(S213のYes)、紐付けられているカラーコンフィグレーション情報を取得し、JDFに適用する、即ちJDFを更新する(ステップS214)。
【0056】
すなわち、CPU412は、クライアントPC30から取得したJDFに基づいて、データベースである紐付けテーブルにアクセスしてデータ検索を行い、目的のデータである顧客情報を検出した場合にJDFを更新する。ステップS212で顧客情報が存在しないと判定(No)した場合及びステップS213で紐付けテーブルに顧客情報が存在しないと判定(No)した場合は、その時点で本処理を終了する。
【0057】
[プログラム]
上述したプリンタコントローラ41の種々の処理は、コンピュータの一例であるCPU412に対するプログラムの命令によって実行される。プリンタコントローラ41の種々の処理をCPU412に実行させる処理プログラム(本発明のプログラム)については、プリンタコントローラ41のメモリ413(図3参照)にあらかじめインストールしておくことが考えられる。ただし、これに限定されるものではなく、有線や無線による通信手段によって提供することも可能であるし、コンピュータ読み取りが可能なICカードやUSBメモリ等の記憶媒体に格納して提供することも可能である。
【0058】
以上説明したように、サーバーPC(MIS)20とクライアントPC(CTP−WF)30とを有する印刷工程管理システム1で使用される、本実施形態に係るデジタルプリンタ40は、ホットフォルダの作成を不要とするために次の構成を採っている。まず、デジタルプリンタ40は、クライアントPC30が実行できる印刷設定情報(JDF)を取得する取得部の機能を有する。このCTP−WFが実行可能な印刷設定情報を取得する取得部の処理は、図5のステップS14で実行される。
【0059】
また、本実施形態に係るデジタルプリンタ40は、その取得した印刷設定情報(JDF)を解釈する解釈部の機能と、解析結果を基に、サーバーPC20から受信したJDFに記載されている印刷設定がクライアントPC30で実行可能であるか否かを判断する判断部の機能とを有する。解釈部の処理は、図6のステップS21で実行される。判断部の処理は、図6のステップS22で実行される。
【0060】
本実施形態に係るデジタルプリンタ40はさらに、JDFの印刷設定がクライアントPC30で実行可能かの判断結果が実行不可能である場合(S22のNo)、JDFの印刷設定の内容を、自身(デジタルプリンタ40)に適した印刷設定(JDF)に変更(変換)する変更部の機能を有する。このJDFの印刷設定を変更する変更部の処理は、図6のステップS23で実行される。
【0061】
上述したデジタルプリンタ40の処理により、サーバーPC(MIS)20がクライアントPC(CTP−WF)30にジョブ実行を指示すると、その指示内容(印刷設定)がCTP−WFで設定不可能である場合に、ジョブテンプレートファイルを自動的に作成することができる。これにより、顧客は、ホットフォルダの運用が不要になり、CTP−WFのみを扱えばよくなる。したがって、顧客は、ホットフォルダを別途作成する作業が不要になるとともに、CTP−WFとホットフォルダでそれぞれどのようなジョブ設定項目が存在しているかを把握しておく必要がなくなるため、印刷作業を円滑に行うことができる。また、設定可能な印刷設定の一覧をCTP−WF上で知ることができ、CTP−WF上で印刷設定を一元管理できるため、印刷工程の管理が容易になる。
【0062】
<変形例>
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記実施形態では、JDF及びJMFを用いた通信を例に挙げて説明したが、必ずしもこの方式に限定されるものではなく、例えばMIB(Management Information Base)テーブルを用いる方式であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、プリンタコントローラ41が有する取得部、解釈部、判断部及び変更部の各機能部について、CPU412がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより、ソフトウェアで実現するとしたが、これに限られるものではない。すなわち、上記の各機能部などについては、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1…印刷工程管理システム、 2…印刷工程管理装置、 3…印刷指示装置、 4…画像形成装置、 20…サーバーPC(MIS)、 30…クライアントPC(CTP−WF)、 40…デジタルプリンタ
図1
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図3
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図10