(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は前記搬送部に、前記経路上に停止しているシートのうち、前記操作部が受け付けたパージ先への搬送対象から除外された残りのシートを前記経路上に停留させ、または、当該残りのシートのうち移動可能なシートを前記複数の排紙先のうち搬送可能な排紙先まで搬送させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
前記制御部は、前記経路上に停止しているシートのうち、各ジョブで最初に処理されたシートの位置に基づいて、前記複数の排紙先の中からパージ先の候補を選択して前記選択画面に表示することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[画像形成装置の外観]
図1の(a)は、本発明の実施形態による画像形成装置の外観を示す斜視図であり、(b)はその画像形成装置の正面図である。
図1を参照するに、この画像形成装置は本体100とそれに外付けされた後処理部とを備えている。後処理部はたとえば、中綴じ機200、くるみ製本機300、および平綴じ機400の3台の縦続接続で構成されている。
【0013】
本体100は、スキャナー、コピー機、およびレーザープリンターの機能を併せ持つ。
図1を参照するに、本体100の筐体の上面には自動原稿送り装置(auto document feeder:ADF)110が開閉可能に装着されている。ADF110の直下に位置する筐体の上部にはスキャナー120が内蔵され、この筐体の下部にはプリンター130が内蔵されている。プリンター130の底部には給紙カセット131が引き出し可能に取り付けられている。ADF110は上面のトレイに載せられた原稿をスキャナー120へ送り込む。スキャナー120はその原稿の表面から画像を取り込む。プリンター130はその画像、またはネットワークから取得した画像データの表す画像を、給紙カセット131に収容されたシートに印刷する。
【0014】
中綴じ機200は本体100から、プリンター130によって画像が印刷された後のシートを受け取って束にし、その束を中綴じして冊子にする。中綴じ機200の底部には冊子トレイ201が引き出し可能に取り付けられ、この中に形成後の冊子が収容される。
くるみ製本機300は本体100から中綴じ機200を通して、プリンター130によって画像が印刷された後のシートを受け取って束にし、その束に対してくるみ製本処理を行う。くるみ製本機300の筐体の底部には表紙トレイ301が引き出し可能に取り付けられ、その筐体の左端部分には前面の扉302の中に台車(図には示されていない。)が収容されている。製本後の束はこの台車に積載され、台車ごと引き出される。
【0015】
平綴じ機400は本体100から中綴じ機200とくるみ製本機300とを通して、プリンター130によって画像が印刷された後のシートを受け取って束にし、その束を平綴じする。平綴じ機400の左側面には排紙トレイ401が取り付けられている。平綴じ機400は本体100から取り込んだ印刷後のシートの束を平綴じした上で、またはそのままこの排紙トレイ401に積載する。
【0016】
[シートの搬送経路]
図2は、
図1の示す画像形成装置に内蔵されたシートの搬送経路を示す模式図である。
図2が破線で示すように、この経路は次のように構成されている。
本体100内では、各給紙カセット11からの給紙経路FDPが1本の搬送経路CRPに合流し、この搬送経路CRPが作像部20と定着部30とを貫いて送出部40から次段の中綴じ機200内の搬送経路へつながる。
【0017】
中綴じ機200内の搬送経路は、中綴じ部202を貫く処理経路SLPと、次段のくるみ製本機300内の搬送経路へつながる中継経路RLPとの二手に分かれる。処理経路SLPは冊子トレイ201に終端を持つ。中継経路RLPは途中で、中綴じ機200の上面に設けられたサブトレイ203と、中綴じ機200に内蔵されたパージ専用トレイ204とにつながる。
【0018】
くるみ製本機300内の搬送経路は、丁合部303を貫いて次段の平綴じ機400内の搬送経路へつながる中継経路BBPと、表装部304を貫く処理経路MTPとの二手に分かれる。中継経路BBPは途中で、くるみ製本機300の上面に設けられたサブトレイ305と、丁合部303に内蔵された集積台306とにつながる。処理経路MTPは表紙トレイ301を別の始端とし、台車307に終端を持つ。
【0019】
平綴じ機400内の搬送経路は、排紙トレイ401に直結する排紙経路DCP、平綴じ部402へつながる処理経路SDP、および平綴じ機400の上面に設けられたサブトレイ403へつながるサブ経路SBPの三方に分かれる。処理経路SDPは、平綴じ部402に内蔵された処理トレイ404に終端を持つ。
図2を更に参照するに、経路上には複数の搬送ローラー14、210、310、410が配置されている。各搬送ローラーは上流の搬送ローラーから送出されたシートを自身のニップへ引き込んで自身の下流側へ送出する。
図2は示していないが、経路の周辺には各搬送ローラーの駆動用モーターが設置されている。各モーターはたとえば直流ブラシレス(BLDC)モーターであり、ギア、ベルト等の伝達系統を通して駆動対象のローラーに回転力を与える。
【0020】
図2の示す経路の各分岐点には切換爪とその駆動用ソレノイドとが設置されている(
図2には示されていない)。切換爪は、基端が回転可能に固定された爪状または板状の部材である。ソレノイドは、電磁石を利用して可動鉄芯(ブランジャー)を軸方向に前後運動させて切換爪を押し引きすることにより、それらを基端のまわりに揺動させる。この揺動に伴ってその切換爪の先端が上下に移動することにより、その分岐点における下流への通路が切り換えられる。
【0021】
図2は示していないが、経路上には更に複数の光学センサーが設置されている。各光学センサーはその設置場所を通過中のシートを検知する。具体的には、各光学センサーは発光部と受光部とを含む。発光部は赤外線等、所定波長の光を出射し、受光部はその波長の光を検出する。各光学センサーの設置場所を1枚のシートが通過する間、そのシートは発光部の出射光を受光部の手前で遮断し、または受光部へ向けて反射する。この出射光の遮断または反射に応じて受光部の出力が変化することから、各光学センサーの設置場所を通過中のシートが検知される。この検知のタイミングから、ジャム等に起因する搬送不良の有無が判断される。
【0022】
[本体の内部構造]
図3は
図1の示す画像形成装置の本体100の内部構造を模式的に示す正面図である。
図3にはこれらの内部の要素が、あたかも筐体の前面を透かして見えているように描かれている。
図3を参照するにプリンター130は、給送部10、作像部20、定着部30、および送出部40を含む。これらの要素10−40は協働して画像形成部として機能し、画像データに基づいてシートにトナーで画像を形成する。
【0023】
給送部10は給送ローラー群12、13、14を利用して、給紙カセット11または手差しトレイ16に収容されたシートの束SHTからシートを1枚ずつ作像部20へ給送する。給紙カセット11および手差しトレイ16に収容可能なシートの材質は紙または樹脂であり、サイズは、A3、A4、A5、またはB4等であり、紙種は、普通紙、上質紙、または塗工紙等である。給紙カセット11と手差しトレイ16との近傍には給紙センサーFSが設置されている。これらの出力が示すシートの通過タイミングに遅れがないか否かに応じて、給送ローラー群12、…がシートを正常なタイミングで経路へ給送しているか否かが判断される。
【0024】
給送部10は作像部20との境界付近にタイミングローラー14とタイミングセンサーTSとを含む。タイミングローラー14は一般に停止しているので、その場に到着したシートはいずれも一旦停止する。その後、タイミングローラー14は、後述の主制御部60からの駆動信号が示すタイミングで回転を開始する。これにより、タイミングローラー14から作像部20へ送出されたシートには、感光体ドラム22の表面上に形成されたトナー像がタイミング良く接触するので、そのシートにそのトナー像が正しく転写される。タイミングセンサーTSは、その出力が示すシートの通過タイミングから、タイミングローラー14およびその周辺におけるシートの搬送不良の有無を判断するのに利用される。
【0025】
作像部20は、給送部10から送られたシートの上にトナー像を形成する。具体的にはまず、露光部21がレーザー光LSBを感光体ドラム22に照射してその表面を、画像データの表すパターンで露光することにより、その表面に静電潜像を作成する。次に、その静電潜像を現像部23がトナーで現像する。現れたトナー像は、感光体ドラム22とその表面に対向する電極24との間の電界によって感光体ドラム22の表面から、感光体ドラム22とその電極24との間を通過するシートの表面へ転写される。
【0026】
定着部30は、作像部20から送出されたシートにトナー像を熱定着させる。具体的には、定着ローラー31と加圧ローラー32との間のニップにシートが通紙されるとき、定着ローラー31はそのシートの表面へ内蔵のヒーターの熱を加え、加圧ローラー32はそのシートの加熱部分に対して圧力を加えて定着ローラー31へ押し付ける。定着ローラー31からの熱と加圧ローラー32からの圧力とにより、トナー像がそのシートの表面上に定着する。
【0027】
送出部40は、定着部30から送出されたシートを次段の中綴じ機200へ送出し、またはそのシートの表裏を反転させて作像部20へ戻す。具体的には、送出部40はまず切換爪41をその基端のまわりに揺動させてその先端を上下させる。
定着部30が送出したシートを中綴じ機200へ送出する場合、送出部40は切換爪41の先端を下げて送出口42への通路を形成する。送出口42は、本体100の筐体の側面に開いた水平方向に細長いスリットである。切換爪41から送出口42へ移動したシートは、その送出口42の内側に配置された送出ローラー43の回転に伴い、送出口42から中綴じ機200へ送出される。
【0028】
定着部30が送出したシートを循環路44へ送出する場合、送出部40は切換爪41の先端を上げて循環路44への通路を形成する。切換爪41から循環路44の上流部分へ進入したシートは複数の搬送ローラーによって反転ローラー45へ送られる。反転ローラー45は正逆両方向に回転可能である。反転ローラー45はまず正転しながらその周面でシートを反転ガイド46へ送出する。そのシートの後端が反転ローラー45を通過する直前に反転ローラー45は逆転してそのシートを反転ガイド46から引き込み、循環路44の下流部分へ送出する。このように反転ローラー45がそのシートをスイッチバックさせるので、そのシートは裏返しに給送部10内の経路へ戻る。その後、給送部10はこのシートを再び作像部20へ送り、作像部20はこのシートの裏面にトナー像を形成する。定着部30はこのトナー像をそのシートに熱定着させ、送出部40はこのシートを今度は中綴じ機200へ送出する。
【0029】
切換爪41の手前には排紙センサーESが設置されている。この出力が示すシートの通過タイミングに遅れがないか否かに応じて、切換爪41をシートが正常なタイミングで通過しているか否かが判断される。循環路44には反転センサー1RS、2RSが設置されている。これらの出力が示すシートの通過タイミングに遅れがないか否かに応じて反転ローラー45がシートを正常なタイミングでスイッチバックさせたか否かが判断される。
【0030】
[本体の電子制御系統]
図4は本体100の電子制御系統のブロック図である。
図4を参照するにこの電子制御系統では、ADF110、スキャナー120、およびプリンター130に加えて、操作部50、外部インタフェース(I/F)52、および主制御部60がバス90を通して互いに通信可能に接続されている。特にプリンター130ではこのバス接続を利用して、給送部10、送出部40、および作像部20と定着部30との一部が搬送部70を構成する。
【0031】
−操作部−
操作部50はユーザーの操作または外部の電子機器との通信を通してジョブの要求と印刷対象の画像データとを受け付け、それらを主制御部60へ伝える。
図4を参照するに操作部50は操作パネル51を含む。操作パネル51は、
図1が示すとおり、本体100の筐体の上面に設置され、押しボタン、タッチパネル、およびディスプレイを含む。操作部50は操作パネル51を制御して、操作画面および各種パラメーターの入力画面等のGUI画面をディスプレイに表示させる。操作部50はまた、ユーザーが操作した押しボタンまたはタッチパネルの位置を識別し、その識別に関する情報を操作情報として主制御部60へ伝える。
【0032】
−外部I/F−
外部I/F52はUSBポートまたはメモリカードスロットを含み、それらを通してUSBメモリーまたはハードディスクドライブ(HDD)等の外付けの記憶装置から直に印刷対象の画像データを取り込む。外部I/F52はまた外部ネットワーク(
図4には示されていない。)に有線または無線で接続され、そのネットワーク上の他の電子機器から印刷対象の画像データを受信する。外部I/F52は更に後処理部150の電子制御系統に接続され、その電子制御系統と主制御部60との間のデータ交換を中継する。
【0033】
−搬送部−
搬送部70は本体100内でシートの搬送を行う機能部の全体であり、
図3、
図4から理解されるとおり、給送部10と送出部40とに加え、感光体ドラム22、定着ローラー31、加圧ローラー32等、作像部20と定着部30との一部から構成される。
図4を更に参照するに、プリンター130の各要素10、20、30、40は駆動部10D、20D、30D、40Dを含む。各駆動部10D、…は搬送ローラー群12、…を始め、搬送部70の含む多様な可動部材の駆動用モーターとソレノイドとを制御する。各駆動部10D、…は更に多種多様なセンサーを利用して本体100の各要素10、…の動作状態とシートの搬送状態とを監視し、いずれかから不具合を検出したときに主制御部60へ通知する。これらのセンサーには、
図3の示す光学センサーFS、…の他に、感光体ドラム22、定着ローラー31等の可動部材の位置または姿勢を検知するための位置センサー、給紙カセット11における紙切れを検知するためのセンサー、現像部23におけるトナー不足を検知するためのセンサー等が含まれる。
【0034】
−主制御部−
主制御部60は1枚の基板の上に実装された電子回路であり、その基板は本体100の内部に設置されている。
図4を参照するに主制御部60は、CPU61、RAM62、およびROM63を含む。CPU61はファームウェアに従って、バス90に接続された他の要素10、20、…を制御する。RAM62は、CPU61がファームウェアを実行する際の作業領域をCPU61に提供する。この作業領域にCPU61はたとえば、シートの搬送処理に利用するシート位置情報621を書き込む。RAM62はまた、操作部50が受け付けた印刷対象の画像データ622を保存する。この画像データ622はたとえばページ記述言語(PDL)で表現されている。ROM63は書き込み不可の半導体メモリー装置と、EEPROM等の書き換え可能な半導体メモリー装置またはHDDとを含む。前者はファームウェアを格納し、後者はCPU61に環境変数等の保存領域を提供する。
【0035】
CPU61が各種ファームウェアを実行することにより、主制御部60は操作部50からの操作情報に基づいて本体100内の他の要素を制御する。具体的には、主制御部60は操作部50に操作画面を表示させてユーザーによる操作を受け付けさせる。この操作に応じて主制御部60は、稼動モード、待機モード、スリープモード等の動作モードを決定し、その動作モードを他の要素へ駆動信号で通知して、その動作モードに応じた処理を各要素に実行させる。
【0036】
たとえば操作部50がユーザーからジョブを受け付けたとき、主制御部60はまず操作部50に印刷対象の画像データ622をRAM62へ転送させる。主制御部60は次に、その画像データ622の示す印刷条件に従い、給送部10には給送すべきシートの種類とその給送のタイミングとを指定し、作像部20には形成すべきトナー像を表す画像データを提供し、定着部30には、維持すべき定着ローラー31の表面温度を指定し、送出部40には切換爪41の先端の方向とその切換のタイミングとを指定する。主制御部60はまた後処理部150には、送出部40によるシートの送出のタイミングとそのシートに対して施すべき後処理の種類とを指示する。
【0037】
主制御部60は更に画像形成部10−40と後処理部150との動作状態、特にそれらによるシートの搬送状態を監視し、いずれかから不具合を検出したときには動作モードを適切に変更してその不具合の解消を図る。たとえば、
図3の示す光学センサーFS、…を通してシートの搬送タイミングの異常な遅れを検知した場合、プリンター130と後処理部150とに処理を中断させると共に操作パネル51に「紙詰まりが生じた」旨のメッセージを表示させてユーザーにその解消を促す。給紙カセット11における紙切れまたは作像部20の現像部23におけるトナー不足を検知した場合、プリンター130に処理を中断させると共に操作パネル51に「紙が切れた/トナーが不足している」旨のメッセージを表示させてユーザーにそれらの補充を促す。
【0038】
図4を更に参照するに主制御部60は、監視部610、選択部611、およびパージ制御部612を含む。これらの機能部610、…、612は搬送部70と後処理部150とによるパージ処理を制御するためのものであり、CPU61が専用のファームウェアを実行することによって実現される。
監視部610は、本体100の搬送部70と後処理部150とがシートを経路に沿って搬送する間、
図3の示す光学センサーFS、…の出力を通してそれらのシートの位置を監視し、それらの位置に基づいて搬送部70と後処理部150とによるシートの搬送動作を制御する。
【0039】
選択部611は、監視部610が搬送部70と後処理部150とを通して経路にジャムを検出した場合に起動し、操作部50を利用してユーザーに、本体100と後処理部150とが備えた複数の排紙先の中からパージ先を選択させる。具体的には、選択部611はまず搬送部70と後処理部150とにシートの搬送を中断させる。それと共に、選択部611は操作部50に、複数の排紙先の中からパージ先を選択するための選択画面を表示させて、その選択画面を通してユーザーによって選択されたパージ先を受け付けさせる。
【0040】
パージ制御部612は、操作部50がユーザーからパージ先を受け付けたことに応じて起動し、経路上に停止しているシートの中からそのパージ先へ移動可能なシートを特定して、搬送部70と後処理部150とにそれらのシートをそのパージ先へ搬送させる。
これらの機能部610、…、612が制御するパージ処理の詳細については後述する。
[中綴じ機の構造]
図5の(a)は、中綴じ機200の主要部である中綴じ部202の構成を表す模式図である。
図5の(a)を参照するに中綴じ部202は、中折りローラー221、折り板222、搬送ベルト223、集積鞍224、ステープラー225、押さえ部材226、およびカッター227を備えている。これらの要素を用いた中綴じ処理は次の3つの工程を順に含む。(A)中折り、(B)ステープルによる綴じ、(C)小口の裁断。
【0041】
(A)中折りローラー221と折り板222とは中折り工程に利用される。中折りローラー221は同じ細長い円柱形状のローラーの対であり、互いの回転軸を平行にした姿勢で隣接して間にニップを形成している。中折りローラー221は特に正逆両方向に回転可能である。折り板222は薄い刃状または楔状の部材であり、中折りローラー221のニップを含む仮想的な平面(
図5ではXZ平面)内に、刃状または楔状の先端がそのニップに対向するように配置されている。折り板222は特にそのニップに挿抜可能である。搬送ベルト223は折り板222の表側と裏側とに1つずつ配置され、中折りローラー221と折り板222との間に挿入されたシートSHTに接触してそのシートSHTを中折りローラー221の軸方向(
図5ではX軸方向)に搬送する。
【0042】
中折り工程ではまず、中折り対象のシートSHTが中折りローラー221と折り板222との間に挿入されて、その折られるべき直線部分が中折りローラー221のニップと折り板222とを含む仮想的な平面(XZ平面)上に配置される。次に、そのシートSHT越しに折り板222の先端が中折りローラー221のニップへ挿入されると共に、中折りローラー221が正転してその周面でシートSHTの折られるべき直線部分をニップに引き込む。そのシートSHTの直線部分を中心とする所定幅をニップに引き込んだ時点で、折り板222の先端がニップから引き抜かれると共に、中折りローラー221は逆転してそのシートSHTをニップから送り出す。その結果、そのシートSHTの直線部分に折り目が付いて、このシートSHTが1枚の“折り”となる。その後、この折りは搬送ベルト223によって集積鞍224の上(
図5ではX軸方向)へ押し出される。
【0043】
(B)集積鞍224とステープラー225とは綴じ工程に利用される。集積鞍224は2枚の板状部材を切妻屋根様の形状に組み合わせたものであり、この上で丁合が行われる。すなわち、中折り工程で形成された折りは形成順に集積鞍224の上に、その折り目が集積鞍224の“棟”に位置するように積み重ねられる。本1冊分の折りの束が集積鞍224の上に積載されたとき、ステープラー225はその束の上から集積鞍224の棟へステープルを打ち込む。その棟にはクリンチャー(clincher:
図5には示されていない。)が埋め込まれており、ステープラー225が打ち込んだステープルの先端を曲げて平坦にする。こうして、集積鞍224の上の束が綴じられて折丁が完成する。その後、この折丁は集積鞍224の上から棟の方向(
図5ではX軸方向)へ押し出されて、押さえ部材226の間へ移動する。
【0044】
(C)押さえ部材226とカッター227とは裁断工程に利用される。押さえ部材226は一対の棒状部材であり、互いに平行に間隔を置いて配置され、その間隔が変化するように長手方向(
図5ではX軸方向)に対して垂直な方向(
図5ではY軸方向)で平行移動可能である。カッター227は、押さえ部材226の間を移動可能な刃を備えている。集積鞍224の上から押さえ部材226の間へ移動した折丁QURは、その押さえ部材226によって両側から挟まれる。この状態でカッター227が刃を移動させて、押さえ部材226の間からはみ出した折丁QURの端を裁断する。こうして、1冊の冊子が完成し、
図2の示す冊子トレイ201へ収容される。
【0045】
図5の(b)は、集積鞍224の上で綴じられた折丁QURの分解図であり、(c)、(d)は、裁断後の折丁QUR、すなわち冊子の上面図と斜視図である。折りSHTは折り目CRSが一致するように重ねられ、その折り目CRSの2箇所がステープルSTPで綴じられる。また、カッター227による裁断の結果、折丁QURの小口FREが平坦に揃う。
【0046】
[くるみ製本機の構造]
図6の(a)は、くるみ製本機300の主要な構成を表す模式図である。
図6の(a)を参照するに、丁合部303は集積台306の他に、把持部材331と糊塗布部332とを含む。表装部304は表紙トレイ301と台車307との他に、表紙給送部340、加圧部材341、折曲部材342、昇降部343、搬送ベルト344、および載置部345を含む。
【0047】
−丁合部−
丁合部303は次のように1冊分のシートを束ねてその束の背に接着剤を塗布する。集積台306は、中継経路BBPの1つの分岐の終端に置かれたトレイであり、その載置面が水平方向に対して傾斜している。把持部材331は、くるみ製本機300の筐体内に設けられた作業空間を移動可能なマニピュレーターである。中継経路BBPを通して集積台306の上に1冊分のシートの束BBKが積載されると、把持部材331はこの束BBKをつかんで集積台306から糊塗布部332の前方の空間(
図6の(a)では紙面に対して手前側)へ移動させる。把持部材331は更にその束BBKを、
図6の(a)が示すようにその背を下にして垂直に立てて保持する。糊塗布部332はその前方の空間を前後に(
図6の(a)では紙面に対して垂直に)往復運動することにより、内蔵の塗布ローラー(
図6の(a)には示されていない。)を束BBKの背の上で転がす。これによりそのローラーの外周面から束BBKの背にポリウレタン(PUR)系ホットメルト等の接着剤が塗布される。
【0048】
−表装部−
表装部304は、丁合部303が丁合したシートの束BBKを表紙でくるむ。
図6の(b)、(c)、(d)は、この工程を段階的に表す模式図である。
図6の(a)を参照するに、表紙給送部340は、処理経路MTPに沿って設置された複数の搬送ローラーを利用して表紙トレイ301から表紙用シートCVSを1枚ずつ分離し、処理経路MTPに沿って表紙支持ローラー346、347の上まで搬送する。これらのローラー346、347の中間には加圧部材341と折曲部材342とが配置されている。これら341、342、346、347の上に表紙用シートCVSが位置したとき、これらの全体を昇降部343が垂直方向(
図6の(a)では上下方向)に上昇させる。この上昇により、
図6の(b)が示すように表紙用シートCVSが、把持部材331によって保持された束BBKの背に下から接近する。
【0049】
昇降部343が上昇を続けると、
図6の(c)が示すように表紙用シートCVSの中央の帯状部分が束BBKの背に接触して、加圧部材341がその帯状部分を束BBKの背に押し付ける。この背には接着剤が塗布されているので、その背に接触した表紙用シートCVSの中央の帯状部分がその背に接着される。
昇降部343は更に上昇を続け、加圧部材341で束BBKの背を上向きに加圧すると共に折曲部材342を上昇させる。
図6の(a)、(d)が示すとおり、折曲部材342は、加圧部材341を間に挟んで平行に配置された一対の棒状部材である。したがって、折曲部材342はその上昇により、表紙用シートCVSのうち、束BBKの背に接触した帯状部分の両側に隣接する部分をその束BBKの先頭と最後とのページの背側の端、すなわち“のど”に押し付ける。これにより、
図6の(d)が示すとおり、表紙用シートCVSが束BBKの背の縁に沿って折れ曲がり、束BBKの先頭と最後とのページをくるむ。こうして、1冊の冊子CBKが完成する。
【0050】
図6の(a)を再び参照するに、この冊子CBKを把持部材331は搬送ベルト344の上に寝かせて置く。この搬送ベルト344はこの冊子CBKを水平方向(
図6の(a)では左右方向)に搬送して載置部345へ送出する。載置部345はこの冊子CBKを台車307に積載する。
[平綴じ機の構造]
図2を再び参照するに、平綴じ部402の内蔵する処理トレイ404は水平方向(
図2では左右方向)に対して傾斜している。このトレイ404の上に本体100から取り込んだ平綴じ対象のシートの束が積載されると、載置面の傾斜によってその束が整合される。さらに、このトレイ404の傾斜の下側の端部にはステープラー405が設置されているので、整合された束の傾斜の下側の端がステープルによって綴じられる。こうして、処理トレイ404の上の束が綴じられて1冊の冊子が完成する。その後、この冊子は処理トレイ404から排紙トレイ401へ排出される。
【0051】
[パージ処理]
−初期設定−
主制御部60は操作部50にユーザーからパージ処理に関する初期設定として、たとえば以下の項目の設定を受け付けさせる(たとえば特許文献2参照)。(1)ジャム等の搬送不良の発生時にパージ処理を行うか否か。(2)パージ処理を行う場合、自動と手動とのいずれのモードで行うか。すなわち、ジャム等の検出時にパージ処理を自動的に開始するか、それともパージ処理の許否をユーザーに確認させるか。(3)パージ処理を行う場合、パージ先を固定するか、それともその都度選択するか。(4)パージ先を固定する場合、いずれの排紙先をパージ先に選択するか。(5)パージ処理を自動で行い、かつその都度パージ先を選択する場合、パージ先の選択条件を次のいずれに設定するか。(i)パージ先は、経路上に残留するシートを1枚でも搬送可能な排紙先の中で最も下流に位置する。(ii)パージ先は、履歴の表すジャムの頻度が最も高い場所よりも上流に位置する排紙先の中で、その場所に最も近い。(iii)パージ先は、ジョブが規定する本来の排紙先とは異なる。
【0052】
操作部50は画像形成装置の起動時等において、これらの項目を設定させるためのGUI画面を操作パネル51に表示してユーザーに各項目の設定を促す。その後、ユーザーが“OK”ボタン等を押下したことに応じ、操作部50はユーザーから受け付けた各項目の設定を示す情報を主制御部60に通知し、この通知に応じて主制御部60はその情報をROM63に保存する。
【0053】
−監視部−
監視部610は、本体100の搬送部70と後処理部150(以下、「搬送部70等」と略す。)がシートを経路に沿って搬送する間、画像形成装置の動作モードとジョブの規定する印刷条件とに応じて、搬送部70等の駆動部10D、…を次のように制御する。
監視部610はまず各駆動部にシートの搬送先とその搬送先へシートを移動させるべきタイミングとを指示する。たとえば、給送部10の駆動部10Dには、給紙元として選択すべき給紙カセット等、その給紙カセット等から給送ローラー12にシートをピックアップさせるべきタイミング、およびタイミングローラー14にシートを作像部20へ送出させるべきタイミングが指示される。送出部40の駆動部40Dには、切換爪41の先端の向きとその向きへの切り換えのタイミング、および反転ローラー45に正転を逆転に切り換えさせるべきタイミングが指示される。
【0054】
これらの指示に応じて搬送部70等がシートを搬送する間、監視部610は各駆動部10D、…から通知される光学センサーFS、…の出力を監視して、各シートの経路上の位置を追跡する。具体的には監視部610は、各搬送ローラーがシートを送出する度にその時点からの経過時間をタイマーで計測する。シートの搬送速度は動作モードごとに標準値(すなわちシステム速度)が規定されているので、監視部610はこの標準の搬送速度と送出時点からの経過時間とに基づいて各シートの移動距離を定期的に、たとえば数十−数百ミリ秒ごとに計算し、その値からそのシートの現時点での位置を割り出す。こうして割り出された各シートの位置に関する情報を監視部610はシート位置情報621としてRAM62に保存する。監視部610はまたこの位置情報621に基づいて、各シートが次に通過する光学センサーFS、…の設置場所とその通過時刻とを予測する。監視部610はこの予測時刻と、その光学センサーの出力の表す実際の通過時刻との誤差からそのシートの現時点での位置を修正し、修正後の値で位置情報621を更新する。監視部610は更に、更新後の位置情報621を利用して各駆動部にシートの新たな搬送先とその搬送先へシートを移動させるべき新たなタイミングとを指示する。
【0055】
監視部610はまた、シート位置情報621と光学センサーFS、…の出力とに基づいてジャム等の搬送不良に起因するシートの搬送タイミングの異常な遅れを検知する。その異常な遅れと判断される事象にはたとえば、シート位置情報621から予測した光学センサーFS、…の設置場所の通過時刻とその光学センサーの出力の表す実際の通過時刻との誤差が許容範囲を超えた場合、その予測した通過時刻からの経過時間が許容範囲を超えてもその光学センサーの出力が実際の通過を表さない場合が含まれる。この許容範囲は、搬送部70等がシートを各光学センサーFS、…の設置場所から次の光学センサーの設置場所まで移動させるのに要する時間のばらつきに基づいて予め設定されている。
【0056】
−選択部−
選択部611は、監視部610がジャムを検出した場合に起動し、まず、搬送部70等にシートの搬送を中断させると共に、ROM63からパージ処理に関する初期設定を読み出す。この初期設定が、ジャム等の搬送不良の発生時にパージ処理を行わないことを示す場合、選択部611は、ジャムの検出を表すメッセージ等の表示を操作部50に指示することのみを行う。
【0057】
初期設定がパージ処理を行うことを示す場合、選択部611は次にその初期設定から、パージ処理を自動と手動とのいずれのモードで行うべきかを確認する。パージ処理を自動的に実行すべき場合、選択部611は更に、パージ先が固定であるか、それとも都度選択すべきかを確認する。パージ先が固定であれば、その固定のパージ先を示す識別情報を選択部611は初期設定から抽出する。パージ先を都度選択すべきであれば、選択部611は初期設定の示す選択条件に従ってパージ先を選択する。選択部611はその後、パージ制御部612を起動し、それにパージ先を指示する。
【0058】
初期設定が手動モードでのパージ処理の実行を示す場合、選択部611はパージ処理の許否をユーザーに確認させる。具体的には、選択部611はまず操作部50にパージ先の選択画面をポップアップ表示させる。
図7はこの選択画面710を示す。
図7を参照するに選択画面710は、ジャムの検出に伴い、操作パネル51に表示された操作画面700の上にポップアップとして現れる。この選択画面710は、メニュー711、キャンセルボタン712、およびOKボタン713を含む。このメニュー711には、画像形成装置が備えた複数の排紙先がパージ先の選択肢として一覧表示される。
図2の例では、これらの排紙先が、中綴じ機200の備えたサブトレイ203とパージ専用トレイ204、くるみ製本機300の備えたサブトレイ305、および平綴じ機400の備えた排紙トレイ401とサブトレイ403を含む。キャンセルボタン712は、その押下がパージ処理の拒否を意味するボタンであり、OKボタン713は、その押下がパージ処理の許可を意味するボタンである。
【0059】
操作部50はキャンセルボタン712の押下を検知した場合、ユーザーがパージ処理を拒否したことを選択部611に通知する。この通知に応じて選択部611は、ジャムの検出を表すと共に、経路全体からの残留シートの除去をユーザーに促すメッセージ等の表示を操作部50に指示することのみを行う。
一方、OKボタン713の押下を検知した場合には、操作部50は更にメニュー711に対するユーザーの操作からユーザーの選択した排紙先を特定し、その排紙先を選択部611に通知する。この通知に応じて選択部611はパージ制御部612を起動し、操作部50から通知された排紙先をパージ先としてパージ制御部612に指示する。
【0060】
−パージ制御部−
パージ制御部612は起動後、まずシート位置情報621を参照し、経路上に停止しているシートの中からパージ先へ移動可能なシートを特定してそれらのシートの搬送順を決定する。パージ制御部612は次に搬送部70等にそれらのシートをその搬送順でパージ先へ搬送させる。
【0061】
図8の(a)は、平綴じ機400が排紙トレイ401にジャムJMを検出したことに応じて、
図2の示すシートの搬送経路に設けられた複数の排紙先のうち、平綴じ機400のサブトレイ403がパージ先に選択された場合におけるパージ処理の様子を示す模式図である。
図8の(a)を参照するに、パージ先である平綴じ機400のサブトレイ403へは、平綴じ機400内の搬送経路の分岐点801よりも上流に残留するシートが移動可能である。パージ制御部612はシート位置情報621に基づいて、その分岐点801よりも上流に残留するシートを特定してそれらのシートの搬送順を決定し、搬送部70等にそれらのシートをその搬送順で平綴じ機400のサブトレイ403へ搬送させる。一方、その分岐点801よりも下流、中綴じ機200内の処理経路SLP、くるみ製本機300内の処理経路MTP、および平綴じ機400内の処理経路SDPに残留するシート等、ジャムJMを生じたシートを含めて、平綴じ機400のサブトレイ403へは搬送不可のシートをパージ制御部612は搬送部70等に経路上にそのまま停留させる。これらのシートはユーザーによって経路から直接除去される。
【0062】
図8の(b)は、平綴じ機400が排紙トレイ401にジャムJMを検出したことに応じて、中綴じ機200のサブトレイ203がパージ先に選択された場合におけるパージ処理の様子を示す模式図である。
図8の(b)を参照するに、パージ先である中綴じ機200のサブトレイ203へは、中綴じ機200内の搬送経路の分岐点802よりも上流に残留するシートが移動可能である。パージ制御部612はシート位置情報621に基づいてその分岐点802よりも上流に残留するシートを特定してそれらのシートの搬送順を決定し、搬送部70等にそれらのシートをその搬送順で中綴じ機200のサブトレイ203へ搬送させる。一方、その分岐点802よりも下流と中綴じ機200内の処理経路SLPとに残留するシート等、ジャムJMを生じたシートを含めて、中綴じ機200のサブトレイ203へは搬送不可のシートをパージ制御部612は搬送部70等に経路上にそのまま停留させる。これらのシートはユーザーによって経路から直接除去される。
【0063】
−パージ処理の流れ−
図9はパージ処理のフローチャートである。この処理は、選択部611が監視部610によるジャムの検出に応じて起動し、搬送部70と後処理部150とにシートの搬送を中断させた後、初期設定がパージ処理の実行を示すことを確認した場合に開始される。
ステップS101では、パージ処理を自動モードで行うべきことを初期設定が示すか否かを選択部611が確認する。自動モードでの実行を初期設定が示さない場合には処理がステップS102へ進み、示す場合には処理がステップS105へ進む。
【0064】
ステップS102では、初期設定がパージ処理の自動モードでの実行を示さない。これはその実行が手動モードであることを意味する。したがって、選択部611は操作部50に対し、パージ先の選択画面を操作パネル51にポップアップ表示するように指示する。その後、処理はステップS103へ進む。
ステップS103では、選択画面に対するユーザーの操作によってパージ先が選択されたことを操作部50からの通知が示すか否かを選択部611が確認する。ユーザーによるパージ先の選択をその通知が示さない場合には処理がステップS104へ進み、示す場合には処理がステップS106へ進む。
【0065】
ステップS104では、操作部50からの通知が、キャンセルボタン712の押下等、ユーザーによるパージ先の選択を示さないので、ユーザーがパージ処理の実行を拒否したと選択部611は解釈する。この解釈に基づいて選択部611は更に操作部50に対し、ジャムの検出を表すメッセージ等と共に、経路全体から残留シートを除去するようにユーザーに促す旨のメッセージを操作パネル51に表示することを指示する。その後、処理は終了する。
【0066】
ステップS105では、初期設定がパージ処理の自動モードでの実行を示すので、選択部611は更に、固定のパージ先を初期設定から特定し、または初期設定の示す選択条件に従ってパージ先を選択する。その後、処理はステップS106へ進む。
ステップS106では、選択部611は、初期設定がパージ処理の自動モードでの実行を示す場合であればすでに初期設定に基づいてパージ先を特定済みである。一方、初期設定がパージ処理の手動モードでの実行を示す場合であれば、操作部50からの通知がユーザーの選択した排紙先を示すので、選択部611はその通知の示す排紙先をパージ先に特定する。こうして、選択部611はパージ制御部612を起動して、特定したパージ先をパージ制御部612に指示する。パージ制御部612はシート位置情報621に基づき、経路上に停止しているシートの中から、指示されたパージ先へ移動可能なシートをパージ対象に特定する。その後、処理はステップS107へ進む。
【0067】
ステップS107では、パージ制御部612はパージ対象のシートを搬送部70等にパージ先へ搬送させる。一方、パージ対象から除外された経路上の残留シートをパージ制御部612は搬送部70等に経路上にそのまま停留させる。その後、処理はステップS108へ進む。
ステップS108では、パージ対象のシートをすべて搬送部70等がパージ先へ搬送し終えたことをパージ制御部612が確認し、その上で選択部611は操作部50に対し、ジャムの検出を表すメッセージ等と共に、パージ対象から除外された残留シートを経路から除去するようにユーザーに促す旨のメッセージを操作パネル51に表示することを指示する。その後、処理は終了する。
【0068】
[実施形態の利点]
本発明の実施形態による画像形成装置では上記のとおり、監視部610がジャムを検出した場合、選択部611が搬送部70等にシートの搬送を中断させると共に、初期設定が手動モードでのパージ処理の実行を示すことに応じて、操作部50にパージ先の選択画面を表示させる。この選択画面を通してユーザーからパージ先を操作部50が受け付けたことに応じ、パージ制御部612が経路上に停止しているシートの中からそのパージ先へ移動可能なシートを特定し、搬送部70等にそれらのシートをそのパージ先へ搬送させる。
【0069】
こうしてこの画像形成装置は、ジャムが実際に検出された時点においてパージ処理の許否をユーザーに確認させ、特にパージ先を選択させることができる。これにより、ユーザーが実際のパージ先を失念する危険性が低減する。したがって、この画像形成装置は、中綴じ機200のサブトレイ203とパージ専用トレイ204、くるみ製本機300のサブトレイ305、および平綴じ機400の排紙トレイ401とサブトレイ403のように、パージ先として利用可能な排紙先を複数備えていても、パージされたシートをユーザーが取り忘れる危険性を回避することができる。それ故、ジョブの対象が機密文書等、セキュリティーレベルの高い画像の印刷である場合、ユーザーがパージ処理を手動モードに設定してさえおけば、その画像の形成されたシートがパージ先で他の印刷物へ混入する等によって第三者に曝される危険性を回避することができる。
【0070】
[変形例]
(A)
図1の示す画像形成装置はその本体100が、スキャナー、コピー機、およびレーザープリンターの機能を併せ持つ。本発明の実施形態による画像形成装置はその他にその本体が、レーザープリンター、インクジェットプリンター、ファクシミリ、またはコピー機等のいずれの機能を含んでいてもよい。特に作像部が、
図2、
図3の示すモノクロ対応の構造20とは異なり、カラー対応の構造であってもよい。
【0071】
(B)
図1の示す後処理部は、中綴じ機200、くるみ製本機300、および平綴じ機400の3台により、中綴じ、くるみ製本、および平綴じの3種類の後処理を実行可能である。後処理の種類はその他に、シートを仕分け(ソート)する処理、シートに綴じ穴を開ける処理、シートを二つ折りもしくは三つ折りにする処理、またはシートの束に別のシートを挿入する処理等を含んでいてもよい。
【0072】
(C)ジャムの検出に伴うパージ処理は一般に、ジャムを生じたシートが経路からユーザー等の手で除去される前に行われるもの(プレパージ)と、そのシートが除去された後、ジョブの処理を再開する直前に行われるもの(オートパージ)との2種類に大別される。本発明の実施形態による画像形成装置が対象とするパージ処理はこれら2種類のいずれであってもよい。
【0073】
(D)操作部50は
図7が示すように、パージ先の選択画面710を操作画面700の上にポップアップ表示する。操作部50はその他に、操作パネル51から操作画面を消去した後に選択画面を表示しても、操作パネル51の画面を分割して選択画面を操作画面とは別に表示してもよい。
(E)パージ制御部612は経路上の残留シートのうちパージ先へ搬送可能なシートをパージ対象に特定する一方、そのパージ対象から除外された残留シートを搬送部70等に経路上にそのまま停留させる。パージ制御部612はその他に、パージ対象から除外されたシートのうち移動可能なシートを搬送部70等に、複数の排紙先のうち搬送可能な排紙先まで搬送させてもよい。この場合、選択部611は操作部50に対し、選択されたパージ先とは別の排紙先にパージされたシートがあることとその別の排紙先とを示すメッセージ等を操作パネル51に表示するように指示してもよい。これにより、パージされたシートをユーザーが取り忘れる危険性を回避すると共に、ユーザーに経路上からシートを除去させる際の手間を軽減することができる。
【0074】
(F)
図2では後処理部を構成する、中綴じ機200、くるみ製本機300、および平綴じ機400のそれぞれが、パージ先の候補となり得る排紙先を少なくとも1つずつ含む。その他に、後処理部を構成する装置のいずれかが、パージ先の候補となり得る排紙先を備えていなくてもよい。
(G)
図7の示す選択画面710では、
図2の示す複数の排紙先、すなわち中綴じ機200のサブトレイ203とパージ専用トレイ204、くるみ製本機300のサブトレイ305、および平綴じ機400の排紙トレイ401とサブトレイ403のすべてがパージ先の候補としてメニュー711に表示される。その他に、画像形成装置が備えた複数の排紙先の中から、選択画面710のメニュー711に実際に表示されるパージ先の候補が自動的に絞られてもよい。具体的には、選択部611がまず、ジャムの検出に伴って経路上に停止したシートのうち各ジョブで最初に処理されたシートの位置をシート位置情報621から特定する。特に、手動モードでのパージ処理の実行が設定されたジョブで最初に処理されたシートの位置が特定される。選択部611は次に、特定した位置からシートを搬送可能な排紙先をパージ先の候補として選択し、これらの候補を選択画面710に表示するように操作部50に対して指示する。
【0075】
これにより、機密文書等、セキュリティーレベルの高い画像を対象とする特定のジョブの処理中に、先行の別のジョブで処理されたシートにジャムが生じた場合、その特定のジョブ以降のジョブで処理されたシートを対象とするパージ先をユーザーに選択させることができる。これにより、少なくともそれらのシートは経路上に残留することなくユーザーが選択したパージ先に排紙されるので、それらのシートが第三者に曝される危険性を更に低減させることができる。
【0076】
選択部611はまた、ジャムの検出に伴って経路上に停止したシートのうち各ジョブで最初に処理されたシートの位置を選択画面710に表示してもよい。ユーザーはこの表示された位置に基づき、自身の要求したジョブで最初に処理されたシートが移動可能な排紙先を探す。この排紙先をパージ先に選択することができれば、そのジョブで処理されたシートが経路上に残ることを回避することができる。