【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1に係る光変調器の構成を示す上面図である。
図1に示すように、光変調器1は、光変調チップ10を有する。光変調チップ10は、基板11上に形成された光導波路12近傍に、電極13が設けられることで形成される。基板11は、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)により形成されており、LN基板とも呼ばれる。また、光導波路12は、Ti等の金属膜を形成して熱拡散させる、あるいは、パターニング後に安息香酸中でプロトン交換する、ことにより形成される。光導波路12は、マッハツェンダ型干渉計を形成し、電極13は、マッハツェンダの導波路上に設けられている。
【0015】
また、電極13は、z軸方向の電界による屈折率変化を利用するため、光導波路12の真上に配置される。電極13は、例えば、光導波路12上に、信号電極と接地電極とがパターニングされることにより形成されるコプレーナ電極である。光変調器チップ10は、光導波路12中を伝搬する光が上記信号電極と接地電極とにより吸収されるのを防ぐため、基板11と電極13との間にバッファ層を有する。バッファ層は、例えば、SiO
2等により形成される。
【0016】
光変調器1では、光変調チップ10等の部品を収容するパッケージ14に、中継基板15を介して、コネクタ16が設けられている。コネクタ16は、光導波路12を伝搬する光を変調するための電気信号を電極13へ入力させる。
【0017】
また、光変調器1では、
図1に示すように、光変調チップ10の前段側に、光ファイバ17及びフェルール部材18が配置されている。光ファイバ17は、基板11の短手方向に沿って配置され、光源からの光をフェルール部材18へ伝送する。フェルール部材18は、光ファイバ17から入力される光を基板11の長手方向に反射するとともに、反射された光を集光して、得られた光ビームを光変調チップ10へ入力する。なお、以下では、基板11の長手方向を「方向X」と表記し、基板11の短手方向を「方向Y」と表記する。方向Xは、第1の方向の一例であり、方向Yは、第1の方向と交差する第2の方向の一例に相当する。
【0018】
光変調チップ10は、フェルール部材18から入力される光ビームを光導波路12によって2つに分岐し、電極13によってそれぞれの光ビームに電気信号を重畳する。そして、光変調チップ10は、それぞれ電気信号が重畳された2つの光ビームを基板の長手方向、すなわち、方向Xへ出力する。
【0019】
また、光変調器1では、
図1に示すように、光変調チップ10の後段側に、コリメートレンズ19、偏波結合器100、集光レンズ20、レンズホルダ21、フェルール22及び光ファイバ23が配置されている。なお、コリメートレンズ19及び偏波結合器100は、パッケージ14の内部に収容され、集光レンズ20、レンズホルダ21、フェルール22及び光ファイバ23は、パッケージ14の外部に配置されている。
【0020】
コリメートレンズ19は、光変調チップ10によって電気信号が重畳された光ビームをコリメートした後、偏波結合器100へ向けて出力する。すなわち、コリメートレンズ19は、コリメートされた2つの併進する光ビームを偏波結合器100へ出力する。コリメートレンズ19が出力する2つの光ビームの偏波方向は同一である。
【0021】
偏波結合器100は、コリメートレンズ19から出力される2つの光ビームを合成し、偏波方向が直交する2つの偏波を含む光ビームを集光レンズ20を介して光ファイバ23へ出力する。すなわち、偏波結合器100は、コリメートレンズ19から出力される一方の光ビームの偏波方向を回転させた後、他方の光ビームと合成し、得られた1つの光ビームを光ファイバ23へ出力する。本実施例においては、偏波方向が直交する2つの光ビームを合成する機能と、合成済みの光ビームを基板の短手方向に配置された光ファイバへ出力する機能とを1つの偏波結合器100で兼用することが可能である。結果として、光変調チップ10と偏波結合器100との間に偏波結合器100とは別部材であるミラーが配置される構造と比較して、部品点数を削減し、光変調器1の小型化を促進することが可能である。偏波結合器100は、合成部の一例である。偏波結合器100の具体的な構成については、後に詳述する。
【0022】
集光レンズ20は、偏波結合器100から出力される1つの光ビームを光ファイバ23へ集光する。レンズホルダ21は、集光レンズ20をパッケージ14に固定する。フェルール22は、光ファイバ23をレンズホルダ21に固定する。
【0023】
光ファイバ23は、基板11の短手方向、すなわち、方向Yに沿って配置され、集光レンズ20によって光ビームが集光されて得られる信号光を後段側のデバイスに伝送する。
【0024】
次に、
図2を参照して、
図1に示した偏波結合器100の構成を説明する。
図2は、実施例1に係る偏波結合器の構成を示す上面図である。
図2に示すように、偏波結合器100は、波長板210と、PBCプリズム220とを有する。
【0025】
波長板210は、例えば水晶から形成され、光変調チップ10から出力される一方の光ビームの偏波方向を90度回転させる1/2波長板である。すなわち、波長板210は、光変調チップ10から出力される2つの光ビームのうち一方の偏波方向を回転させる偏波回転素子として機能する。
【0026】
PBCプリズム220は、例えば石英ガラスから形成され、光変調チップ10から方向Xに沿って出力される2つの光ビームを方向Yへ反射させ、方向Yへ反射された2つの光ビームを合成する。具体的には、PBCプリズム220は、波長板210を通過して入射する光ビーム301を表面で反射させて方向Yへ直進させ、波長板210を通過せずに入射する光ビーム302を内部で反射させて方向Yへ直進させ、2つの光ビーム301,302を合成する。すなわち、PBCプリズム220は、光変調チップ10から方向Xへ出力される2つの光ビームを合成して方向Yへ出力する偏波合成素子として機能する。
【0027】
PBCプリズム220は、第1のプリズム221と、第2のプリズム223とを有する。第1のプリズム221には、方向Xに対して傾斜する傾斜面221a,221bが形成され、かつ、波長板210が固定される。第2のプリズム223は、第1のプリズム221の傾斜面221bに偏光分離膜222を介して接合される。偏光分離膜222は、例えば誘電体多層膜等から形成されており、所定の偏波方向の光ビームを反射する一方で、この光ビームと偏波方向が直交する光ビームを透過させる。
【0028】
このような構成において、光変調チップ10から出力される2つの光ビームのうち光ビーム301は、波長板210を通過した後にPBCプリズム220へ入射し、光ビーム302は、波長板210を通過せずにPBCプリズム220へ直接入射する。そして、波長板210を通過した光ビーム301は、第1のプリズム221の傾斜面221aにおいて方向Yへ反射する。ここで、光ビーム301の偏波方向が波長板210によって90度回転することにより、PBCプリズム220に入射する時点では、光ビーム301の偏波方向と光ビーム302の偏波方向とは互いに直交している。このため、光ビーム301は、第1のプリズム221の傾斜面221aにおいて方向Yへ反射した後、偏光分離膜222を透過する一方、光ビーム302は、偏光分離膜222において方向Yへ反射した後、偏光分離膜222を透過する光ビーム301と合成される。結果として、偏波方向が互いに直交する光ビーム301,302が合成されることによって得られる1つの光ビームが、集光レンズ20を介して光ファイバ23へ出力される。
【0029】
次に、
図3を参照して、光変調器1の光送受信機Mへの収納態様を説明する。
図3は、実施例1に係る光変調器の光送受信機への収納態様を説明するための図である。
【0030】
図3に示す光変調器1では、偏波結合器100が、偏波結合器100とは別部材であるミラーを用いることなく、光変調チップ10から出力される2つの光ビームを合成して、方向Yに沿って配置される光ファイバ23へ出力する。すなわち、
図7に示す従来の光変調器では、光変調チップ500と偏波結合器600との間にミラー700が配置される。そして、従来の光変調器では、光変調チップ500から出力される2つの光ビームはミラー700によって基板の短手方向へ反射された後、偏波結合器600へ入力される。そして、偏波結合器600は、ミラー700によって短手方向へ反射された2つの光ビームを合成し、得られた1つの光ビームを、基板の短手方向に沿って配置された光ファイバへ出力する。このため、従来の光変調器では、ミラー700が存在することによって部品点数が増加し、装置が大型化することがあった。結果として、光変調器が光送受信機Mの内部空間Sに収納されない恐れがあった。
【0031】
これに対して、本実施例の光変調器1では、偏波方向が直交する2つの光ビームを合成する機能と、合成済みの光ビームを基板の短手方向、つまり、方向Yに配置された光ファイバ23へ出力する機能とを1つの偏波結合器100で兼用する。これにより、光変調器10から出力される2つの光ビームを方向Yへ反射するためのミラーが省略されるので、光変調器1が大型化することが回避される。結果として、光変調器1は、
図3に示すように、光送受信機Mの内部空間Sに収納される。
【0032】
以上のように、本実施例によれば、偏波結合器100が、光変調チップ10から出力される一方の光ビームの偏波方向を回転させた後、他方の光ビームと合成し、得られた1つの光ビームを基板の短手方向に沿って配置された光ファイバへ出力する。すなわち、偏波結合器100は、光変調チップ10から出力される一方の光ビームの偏波方向を波長板210によって回転させ、偏波方向が互いに直交する2つの光ビームをPBCプリズム220によって基板の短手方向へ反射させて合成する。このため、偏波方向が直交する2つの光ビームを合成する機能と、合成済みの光ビームを基板の短手方向に配置された光ファイバへ出力する機能とを1つの偏波結合器100で兼用することが可能である。結果として、部品点数の削減により装置の小型化を促進することができる。
【実施例2】
【0033】
実施例2の特徴は、PBCプリズムの第1のプリズムの傾斜面にベース部材を接合し、波長板を第1のプリズム及びベース部材に固定することで、波長板の固定面を広くして、波長板を確実に固定する点である。
【0034】
実施例2に係る光変調器の構成は、実施例1に係る光変調器1の構成と同様であるため、その説明を省略する。実施例2においては、偏波結合器100の構成が実施例1とは異なる。
【0035】
図4は、実施例2に係る偏波結合器の構成を示す上面図である。
図4において、
図2と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図4に示すように、PBCプリズム220の第1のプリズム221の傾斜面221aに全反射膜を介してベース部材230が接合される。そして、波長板210は、第1のプリズム221及びベース部材230に固定される。
【0036】
このような構成において、光変調チップ10から出力される2つの光ビームのうち光ビーム301は、波長板210を通過した後にPBCプリズム220へ入射し、光ビーム302は、波長板210を通過せずにPBCプリズム220へ直接入射する。そして、波長板210を通過した光ビーム301は、第1のプリズム221の傾斜面221a上の全反射膜において方向Yへ反射する。ここで、光ビーム301の偏波方向が波長板210によって90度回転することにより、PBCプリズム220に入射する時点では、光ビーム301の偏波方向と光ビーム302の偏波方向とは互いに直交している。このため、光ビーム301は、第1のプリズム221の傾斜面221a上の全反射膜において方向Yへ反射した後、偏光分離膜222を透過する。一方、光ビーム302は、偏光分離膜222において方向Yへ反射した後、偏光分離膜222を透過する光ビーム301と合成される。結果として、偏波方向が互いに直交する光ビーム301,302が合成されることによって得られる1つの光ビームが、集光レンズ20を介して光ファイバ23へ出力される。
【0037】
以上のように、本実施例によれば、偏波結合器100が、PBCプリズムの第1のプリズムの傾斜面にベース部材を接合し、波長板を第1のプリズム及びベース部材に固定する。このため、装置の小型化に伴って偏波結合器100自体が小型化されても、波長板の固定面を広くすることができ、波長板を強固に固定することができる。
【実施例3】
【0038】
実施例3の特徴は、PBCプリズムの第1のプリズムの傾斜面に波長板を固定することで、波長板の固定面を広くして、波長板を確実に固定する点である。
【0039】
実施例3に係る光変調器の構成は、実施例1に係る光変調器1の構成と同様であるため、その説明を省略する。実施例3においては、偏波結合器100の構成が実施例1とは異なる。
【0040】
図5は、実施例3に係る偏波結合器の構成を示す上面図である。
図5において、
図2と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図5に示すように、PBCプリズム220の第1のプリズム221の傾斜面221aに無反射膜を介して波長板210が固定される。波長板210は、自身を通過する光ビームの偏波方向を90度回転させ、偏波方向が回転した光ビームを、第1のプリズム221の傾斜面221a上の無反射膜とは反対側の面において、反射する。
【0041】
このような構成において、光変調チップ10から出力される光ビーム301,302は、PBCプリズム220へ直接入射する。そして、光ビーム301は、波長板210を通過しつつ、波長板210の無反射膜とは反対側の面において方向Yへ反射する。ここで、光ビーム301の偏波方向が波長板210によって90度回転することにより、PBCプリズム220の偏光分離膜222に入射する時点では、光ビーム301の偏波方向と光ビーム302の偏波方向とは互いに直交している。このため、光ビーム301は、波長板210の無反射膜とは反対側の面において方向Yへ反射した後、偏光分離膜222を透過する。一方、光ビーム302は、偏光分離膜222において方向Yへ反射した後、偏光分離膜222を透過する光ビーム301と合成される。結果として、偏波方向が互いに直交する光ビーム301,302が合成されることによって得られる1つの光ビームが、集光レンズ20を介して光ファイバ23へ出力される。
【0042】
以上のように、本実施例によれば、偏波結合器100が、PBCプリズムの第1のプリズムの傾斜面に波長板を固定する。このため、装置の小型化に伴って偏波結合器100自体が小型化されても、波長板の固定面を広くして、波長板を強固に固定することができる。