(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記添加材の供給速度の見直しを行う工程において、前記第2のガラス母材における添加材供給範囲の最外縁での前記添加材の供給速度がゼロ以上となるように前記供給速度の見直しを行う、請求項1に記載のマルチモード光ファイバの製造方法。
前記添加材の供給速度の見直しを行う工程において、前記見直しを行う領域の最外縁での前記添加材の供給速度がゼロ以上となるように前記供給速度の見直しを行う、請求項1または2に記載のマルチモード光ファイバの製造方法。
前記第1のガラス母材を形成する工程、及び前記第2のガラス母材を形成する工程において、少なくとも前記第1及び第2のマルチモード光ファイバのコアに相当する前記第1及び第2のガラス母材の領域を、OVD法、MCVD法、PCVD法のいずれかを用いて形成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマルチモード光ファイバの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態に係るマルチモード光ファイバの製造方法は、径方向におけるマルチモード光ファイバの所望の屈折率分布を実現するために屈折率調整用の添加材の供給速度を制御しつつ円柱状の第1のガラス母材を形成する工程と、第1のガラス母材を線引きすることにより第1のマルチモード光ファイバを形成する工程と、線引き後の第1のマルチモード光ファイバの径方向における残留応力分布を測定する工程と、測定された残留応力分布から求められる、所望の屈折率分布からの屈折率のずれに応じて、添加材の供給速度の見直しを行う工程と、見直し後の供給速度に従って添加材を供給しながら円柱状の第2のガラス母材を形成する工程と、第2のガラス母材を線引きすることにより第2のマルチモード光ファイバを形成する工程とを含む。
【0012】
本発明者の知見によれば、線引き後のマルチモード光ファイバにおける残留応力の大きさは、屈折率のずれの大きさと密接に関連する。従って、残留応力分布を測定し、その測定結果に応じて屈折率調整用の添加剤の供給速度を見直す(調整する)ことにより、残留応力による屈折率分布のずれを低減することができる。
【0013】
また、上記の製造方法では、添加材の供給速度の見直しを行う工程において、第2のガラス母材における添加材供給範囲の最外縁での添加材の供給速度がゼロ以上となるように供給速度の見直しを行ってもよい。測定された残留応力から換算された屈折率のずれを相殺するように添加材の供給速度を設定すると、残留応力値によっては添加材の供給速度が負の値となることがある。マルチモード光ファイバのコア付近では中心軸線から離れるほど屈折率が小さくなっているので、特に添加材供給範囲(典型的には、コアに相当する領域)の最外縁付近において、このような現象が生じ易い。従って、添加材供給範囲の最外縁での添加材の供給速度がゼロ以上となるように供給速度の見直しを行うことにより、添加材の供給速度が負の値となることを回避し、残留応力による屈折率分布のずれを効果的に低減することができる。
【0014】
また、上記の製造方法では、添加材の供給速度の見直しを行う工程において、第1のマルチモード光ファイバのコアに相当する第1のガラス母材の領域の半径をr1とするとき、添加材の供給速度の見直しを行う領域の半径r2は半径r1よりも小さくてもよい。本発明者の知見によれば、マルチモード光ファイバのコアの最外縁付近では、残留応力の大きさの製造ロット毎の変動が大きく、残留応力が安定しない。従って、そのように残留応力が不安定な領域に相当する領域を除いたガラス母材のコア相当領域についてのみ供給速度の見直しを行うことにより、残留応力による屈折率分布のずれをより精度良く低減することができる。また、この場合、見直しを行う領域の最外縁での添加材の供給速度がゼロ以上となるように供給速度の見直しを行ってもよい。これにより、上記の方法と同様に、添加材の供給速度が負の値となることを回避し、残留応力による屈折率分布のずれを効果的に低減することができる。また、この場合、半径r2は、半径r1の0.95倍以下であってもよい。
【0015】
また、上記の製造方法では、第1のガラス母材を形成する工程、及び第2のガラス母材を形成する工程において、少なくとも第1及び第2のマルチモード光ファイバのコアに相当する第1及び第2のガラス母材の領域を、OVD(Outside Vapor Deposition)法、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法、PCVD(Plasma-activated Chemical VaporDeposition)法のいずれかを用いて形成してもよい。このように、径方向にガラスを堆積させる方法によりガラス母材を形成する場合に、上記の製造方法を特に好適に行うことができる。
【0016】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るマルチモード光ファイバの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態に係るマルチモード光ファイバ1Aの中心軸線AXに垂直な断面における内部構造の一例を示す。
図1に示されるように、マルチモード光ファイバ1Aは、石英ガラスを主材料とするコア10と、コア10の外周面上に設けられた、石英ガラスを主材料とするクラッド12とを備える。コア10は、中心軸線AXに沿って延びており、その断面形状は円形である。コア10の外径D1は、例えば47.5μm以上52.5μm以下といった大きさである。クラッド12の外周面とコア10の外周面とは互いに同心円であり、中心軸線AXを中心とする。クラッド12の外径D2は、例えば123μm以上127μm以下といった大きさである。
【0018】
マルチモード光ファイバ1Aを伝搬する光をコア10に閉じ込めるために、コア10の屈折率は、クラッド12の屈折率よりも大きい。ここで、
図2は、マルチモード光ファイバ1Aが有する屈折率分布を示す。この屈折率分布は、
図1に示される中心軸線AXと直交する直線L1上の各部の屈折率を示しており、マルチモード光ファイバ1Aの径方向に沿った屈折率分布に相当する。コア10の中心すなわち中心軸線AXから距離D1/2までの領域がコア10に相当する領域であり、距離D1/2から距離D2/2までの領域がクラッド12に相当する領域である。
図2に示されるように、コア10は、その中心すなわち中心軸線AXにおいて最大屈折率n1を有する。そして、コア10の屈折率は、中心から外周縁に向けて次第に小さくなり、最外縁においてクラッド12の屈折率n2と一致する。従って、クラッド12の屈折率n2は、コア10の最大屈折率n1よりも小さい。
【0019】
上述した屈折率分布は、石英ガラスに屈折率調整用の添加材を添加することにより実現される。すなわち、石英ガラスの屈折率は、添加材の濃度に応じて変化する。
図2に示されたコア10の径方向における屈折率の変化は、添加剤の濃度を径方向に変化させることによって実現される。屈折率調整用の添加材としては、例えばGeを含む材料(一例ではGeCl
4)等、屈折率を変化させ得る種々の材料が用いられる。
【0020】
マルチモード光ファイバ1Aの製造方法について説明する。
図3は、マルチモード光ファイバ1Aの製造に用いられる線引き装置20の構成を概略的に示す。線引き装置20は、円柱状のガラス母材30の一端を線引きすることにより、マルチモード光ファイバ1Aを形成する。ガラス母材30は、コア10に相当する領域30aと、クラッド12に相当する領域30bとを含む。線引き装置20は、セットされたガラス母材30の一端を加熱するヒーター21と、ガラス母材30の加熱された一端を所定の張力を加えながら巻き取る巻取りドラム22とを備える。巻取りドラム22は、矢印Rで示された方向に回転するが、その際、巻取りドラム22の回転速度が調節されることにより、コア10及びクラッド12それぞれの外径が調整される。また、ヒーター21による加熱温度を調節することにより、ガラス母材30の加熱された一端に加えられる張力(線引き張力)が調整される。
【0021】
図4は、本実施形態によるマルチモード光ファイバ1Aの製造方法の各工程を示すフローチャートである。この製造方法では、まず、円柱状の第1のガラス母材30(
図3参照)を形成する(工程S1)。この工程S1では、ガラス母材30のうち少なくともコア10に相当する領域30aを、例えばOVD法、MCVD法、PCVD法のいずれかを用いて形成する。すなわち、ガラス母材30の当該領域30aを、径方向に石英ガラスを堆積させることにより形成する。また、このとき、屈折率調整用の添加材を供給しながら石英ガラスを堆積させる(スス付け)。そして、径方向におけるマルチモード光ファイバ1Aの所望の屈折率分布(
図2参照)が実現するように、添加材の供給速度を、堆積開始からの時間および堆積速度から求められるガラス母材30の径方向位置に応じて制御する。
【0022】
次に、
図3に示された線引き装置20を用いて、上記工程S1にて形成されたガラス母材30の線引きを行う(工程S2)。これにより、第1のマルチモード光ファイバ1Aが形成される。
【0023】
続いて、上記工程S2にて形成された線引き後のマルチモード光ファイバ1Aの径方向における残留応力分布を測定する(工程S3)。主な残留応力は、マルチモード光ファイバ1Aの石英ガラス組成に因るほか、上記工程S2にて石英ガラスが引き延ばされることにより生じる。
図5は、測定された残留応力分布の一例を示すグラフである。
図5において、縦軸は残留応力(単位:MPa)を表し、横軸は中心軸線を原点とする径方向位置(単位:μm)を表す。なお、残留応力はプラス側が引張り応力、マイナス側が圧縮応力に対応する。また、図中の範囲A1はマルチモード光ファイバ1Aのコア10の範囲を示し、範囲A2はクラッド12の範囲を示す。
図5に示されるように、範囲A1と範囲A2とでは、残留応力の分布形状が互いに異なる。例えば、範囲A1では、中心軸線から周縁部に近づくに従って残留応力が減じ、範囲A2では、範囲A1との境界から周縁部に近づくに従って残留応力が増す。なお、このような残留応力分布は一つの例であって、本実施形態の製造方法は様々な残留応力分布形状に適用され得る。また、望ましくは、この工程S2において、残留応力分布の測定が複数回行われ、各回の測定結果が平均されるとよい。
【0024】
続いて、上記工程S3にて測定された残留応力分布から求められる、所望の屈折率分布(
図2参照)からの屈折率のずれに応じて、添加材の供給速度の見直しを行う(工程S4)。
図6は、残留応力による屈折率のずれΔnの分布の例を示すグラフであって、先に例示した
図5の残留応力分布に対応している。
図6において、縦軸は所望の屈折率分布からの屈折率ずれΔn(単位:%)を表し、横軸は中心軸線を原点とする径方向位置(単位:μm)を表す。なお、残留応力分布から屈折率分布への換算には、例えばIEEE発行の文献「Denshi Tokyo 第28巻」の140〜142頁に記載されている係数、−4.2×10
-12Pa
-1を用いることができる。
【0025】
図7は、
図6に基づいて得られる、添加材の供給速度の変更量を示すグラフである。
図7において、縦軸は供給速度の変更量、すなわち見直し前の供給速度と見直し後の供給速度との差を表す。横軸は、中心軸線を原点とする径方向位置(単位:μm)を表す。本実施形態ではクラッド12に相当する領域30bに添加材が供給されないので、コア10に相当する領域30aのみにおいて、供給速度の変更量が示される。
【0026】
この工程S4では、後述する工程S5において作成される、第2のガラス母材30の添加材供給範囲の最外縁での添加材の供給速度がゼロ以上となるように、供給速度の見直しを行うとよい。一例としては、残留応力による屈折率のずれから供給速度の変更量を算出した結果、添加材供給範囲の最外縁において変更量が負となる場合に、その変更量の絶対値を添加材供給範囲の全体に加算してもよい。なお、ガラス母材30の添加材供給範囲とは、本実施形態においてはコア10に相当する領域30aを意味する。但し、クラッド12の一部分に屈折率分布が及ぶ場合には、添加材供給範囲はその部分に相当する領域を含むことがある。
【0027】
続いて、見直し後の供給速度に従って添加材を供給しながら、円柱状の第2のガラス母材30を形成する(工程S5)。この工程S5では、上述した工程S1と同様に、ガラス母材30のうち少なくともコア10に相当する領域30aを、例えばOVD法、MCVD法、PCVD法のいずれかを用いて形成する。
【0028】
続いて、
図3に示された線引き装置20を用いて、上記工程S5にて形成されたガラス母材30の線引きを行う(工程S6)。これにより、屈折率のずれが補正された第2のマルチモード光ファイバ1Aが形成される。なお、必要に応じて、第2のマルチモード光ファイバ1Aの径方向における残留応力分布を再び測定し、残留応力分布から求められる、所望の屈折率分布からの屈折率のずれが所定の閾値以下になっていることを確認してもよい。
【0029】
以上に説明した本実施形態によるマルチモード光ファイバ1Aの製造方法によって得られる効果について説明する。本発明者の知見によれば、線引き後のマルチモード光ファイバにおける残留応力の大きさは、屈折率のずれの大きさと密接に関連する。従って、残留応力分布を測定し、その測定結果に応じて屈折率調整用の添加剤の供給速度を見直す(調整する)ことにより、残留応力による屈折率分布のずれを低減することができる。特に、マルチモード光ファイバの場合、シングルモード光ファイバとは異なり、径方向の屈折率分布が適正なα乗分布からずれると帯域特性が劣化するので、広帯域特性を得るためには、適正なα乗分布からの屈折率分布のずれが出来る限り小さいことが望ましい。本実施形態の方法では、前述したように、マルチモード光ファイバの径方向の残留応力分布を実測し、測定結果を屈折率調整用添加材の流量条件に反映することにより、適正なα乗分布からの屈折率分布のずれを小さくすることができる。
【0030】
なお、前述した特許文献1に記載された方法は、分散補償ファイバや波長分割多重用の光ファイバに適した方法であり、シングルモード光ファイバを前提としたものである。故に、屈折率のずれの補正に関しては、単にコアとクラッドとの比屈折率差の補正について言及しているにとどまる。また、残留応力はガラス母材(プリフォーム)の構造から計算されている。本実施形態のようなマルチモード光ファイバの場合、コア10の径方向の屈折率分布が所望の屈折率分布(例えばα乗分布)に精度良く一致することが広帯域品にとって重要であり、特許文献1に記載された方法では不十分である。また、前述した特許文献2に記載された方法は、複数のガラス母材(プリフォーム)を異なる線引張力で線引きする必要があるので、得られる光ファイバの歩留まりが低下するという問題がある。本実施形態の製造方法によれば、これらの問題を解決し、マルチモード光ファイバの屈折率分布のずれを効果的に低減することができる。
【0031】
また、本実施形態のように、工程S4では、第2のガラス母材30における添加材供給範囲の最外縁での添加材の供給速度がゼロ以上となるように供給速度の見直しを行ってもよい。残留応力の大きさは、添加材供給範囲(典型的には、コア10に相当する領域30a)の最外縁において必ずしもゼロになるわけでない。従って、測定された残留応力から換算された屈折率のずれを相殺するように添加材の供給速度を設定すると、残留応力値によっては添加材の供給速度が負の値となることがある。マルチモード光ファイバ1Aのコア10付近では中心軸線AXから離れるほど屈折率が小さくなっているので(
図2を参照)、特に添加材供給範囲の最外縁付近において、このような現象が生じ易い。従って、添加材供給範囲の最外縁での添加材の供給速度がゼロ以上となるように供給速度の見直しを行うことにより、添加材の供給速度が負の値となることを回避し、残留応力による屈折率分布のずれを効果的に低減することができる。
【0032】
なお、添加材供給範囲の最外縁では、添加材の供給速度がゼロであることがより好ましい。添加材供給範囲の最外縁での添加材の供給速度がゼロよりも大きい場合、添加材が供給されない添加材供給範囲の外側の領域(典型的には、クラッド12に相当する領域30b)と添加材供給範囲との境界部分において添加材の流量条件が不連続に変化してしまうからである。添加材供給範囲とその外側の領域との境界では、添加材の流量条件が連続的に且つなだらかに変化することが好ましい。
【0033】
また、本実施形態のように、工程S1及びS5では、少なくともマルチモード光ファイバ1Aのコア10に相当するガラス母材30の領域30aを、OVD法、MCVD法、PCVD法のいずれかを用いて形成してもよい。このように、径方向に石英ガラスを堆積させる方法によりガラス母材30を形成する場合に、本実施形態の工程S3,S4を特に好適に行い、上述した効果を奏することができる。
【0034】
(変形例)
ここで、上記実施形態の一変形例について説明する。
図8は、ガラス母材30の中心軸線に垂直な断面を示しており、本変形例における添加材供給速度の見直し対象となる領域B1を示す。上記実施形態の工程S4では、コア10に相当するガラス母材30の領域30aが即ち添加材供給速度の見直し対象であったが、本変形例の対象領域B1は、領域30aよりも小さい。言い換えれば、領域30aの半径をr1とするとき、添加材の供給速度の見直しを行う領域B1の半径r2は半径r1よりも小さい。一例では、半径r2は半径r1の0.95倍以下である。
【0035】
本発明者の知見によれば、マルチモード光ファイバ1Aのコア10の最外縁付近では、残留応力の大きさの製造ロット毎の変動が大きく、残留応力が安定しない。従って、そのように残留応力が不安定な領域に相当する領域を除いた領域についてのみ供給速度の見直しを行うことにより、残留応力による屈折率分布のずれをより精度良く低減することができる。
【0036】
また、本変形例では、ガラス母材30における見直し対象領域B1の最外縁での添加材の供給速度がゼロ以上となるように、供給速度の見直しを行ってもよい。これにより、上記実施形態と同様に、添加材の供給速度が負の値となることを回避し、残留応力による屈折率分布のずれを効果的に低減することができる。一例としては、残留応力による屈折率のずれから供給速度の変更量を算出した結果、見直し対象領域B1の最外縁において変更量が負となる場合に、その変更量の絶対値を見直し対象領域B1の全体に加算してもよい。
【0037】
(第1実施例)
続いて、上記実施形態の実施例について説明する。本実施例では、まず、OVD法を用いてガラス母材30のコア相当領域30aを作製し、その屈折率分布を測定した。このとき、屈折率分布が、目標とする適正なα乗分布となっていることを確認した。そして、VAD法を用いて、コア相当領域30aの外周にクラッド相当領域30bを作製し、ガラス母材30とした。その後、ガラス母材30の線引きを行った。このとき、ガラス部分の張力を150gとした。線引されたファイバの残留応力を測定した結果、前述した
図5に示される残留応力分布を得た。なお、残留応力の測定は、光弾性効果を応用した方法により行った。具体的な測定方法の一例が、例えば特開2003−315184号公報に開示されている。
【0038】
そして、測定された残留応力分布からコア10の残留応力分布のみを取り出し、所望の屈折率分布からの屈折率のずれに換算した。なお、残留応力分布から屈折率分布への換算には、前述した係数(−4.2×10
-12Pa
-1)を用いた。次に、この屈折率分布のずれ(
図6)を補正するように、スス付けの際の径方向の屈折率分布に対応するGeCl
4流量(供給速度)パターンを見直した。具体的には、屈折率分布のずれ(
図6)のグラフを上下反転し、当初のGeCl
4流量パターンに加算した。
【0039】
なお、GeCl
4流量パターンを見直す際、見直し後の流量パターンが一部でも負の値となると実質的に見直しが不可能になるので、見直し後の流量パターンの最小値が正の値になるよう、一定値を加算する補正を同時に行った。
【0040】
このようにして作製されたコア相当領域30aにクラッド相当領域30bを加えてガラス母材30とし、張力150gで線引きを行った。得られたマルチモード光ファイバの帯域を測定した結果、850nmにおけるOFL帯域が3600MHz・km、実効帯域が6500MHz・kmとなり、OM4の帯域を満たすマルチモード光ファイバが得られた。
【0041】
(第2実施例)
この第2実施例では、第1実施例において残留応力をGeCl
4流量パターンに換算する際、コア10の中心軸線からコア10の半径の0.95倍までの範囲の残留応力の値のみを用いて、GeCl
4流量パターンを見直した。その際、見直し対象領域(コア10の0.95倍までの範囲)の最外縁におけるGeCl
4流量がゼロとなるように、GeCl
4流量パターンに一定値を加算した。
【0042】
このようにして作製したコア相当領域30aにクラッド相当領域30bを加えてガラス母材30とし、線引張力150gで線引きを行った。得られたマルチモード光ファイバの帯域を測定した結果、850nmにおけるOFL帯域が3800MHz・km、実効帯域が6800MHz・kmとなり、OM4の帯域を満たすマルチモード光ファイバが得られた。
【0043】
(比較例)
この比較例では、第1実施例において残留応力によるGeCl
4流量パターンの見直しを行わずに、ガラス母材30を作製し、線引きを行った。得られたマルチモード光ファイバの帯域を測定した結果、850nmにおけるOFL帯域が1500MHz・km、実効帯域が4500MHz・kmとなり、OM4の帯域を満たすマルチモード光ファイバは得られなかった。
【0044】
本発明によるマルチモード光ファイバの製造方法は、上述した実施形態等に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態ではクラッド部分の屈折率分布が平坦である場合を例示したが、クラッド部分は様々な屈折率分布を有することができる。例えば、クラッド部分の屈折率分布がいわゆるトレンチ(溝)部を含む場合であっても、本発明の効果を好適に奏することができる。