(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
用紙に形成された複数の異なる色の測色パッチ及び当該測色パッチと対応して形成されたトリガパッチを読み取り装置で読み取るように読み取り装置のコンピュータを機能させる読み取り制御プログラムであって、
前記読み取り装置は、前記用紙に形成された前記測色パッチを読み取る測色計と、前記用紙に形成された前記トリガパッチを読み取るトリガセンサと、前記トリガセンサで読み取られた前記トリガパッチに基づいて前記測色計が前記測色パッチを読み取る読取領域を制御する制御部と、を備えて構成されており、
前記トリガパッチの読み取り結果に基づいて前記測色計が前記測色パッチを読み取る前記読取領域を決定する測色領域決定モードと、前記測色領域決定モードで決定された前記読取領域を前記測色計が読み取るよう制御する測色調整モードと、を有し、
前記測色領域決定モードでは、前記トリガパッチの各読み取り結果に対応して前記測色パッチの前記読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定して、前記測色計による前記測色パッチの読み取り結果を収集し、前記読み取り結果として前記測色パッチの特性と一致する状態となる領域を前記読取領域として決定する、
ように読み取り装置のコンピュータを機能させることを特徴とする読み取り制御プログラム。
【背景技術】
【0002】
用紙に画像を形成する画像形成装置の後段に読み取り装置(出力物読み取り装置)を接続し、画像形成された用紙上の画像を読み取り装置で読み取る画像形成システムが存在している。同様に、用紙に画像を形成する画像形成部の下流側に読取部(出力物読取部)を配置し、画像形成された用紙上の画像を読取部で読み取る画像形成装置が存在している。
【0003】
なお、プリンタや複合機などの画像形成装置においては、画像調整モードを有しており、この画像調整モードでは、出力画像の高画質化のために従来からカラーの測色パッチを印刷し、この測色パッチをRGBカラー濃度センサ等で検出してプリント基データと比較し、その差異が発生する場合には印刷濃度等を補正して画像を形成する機能を有している。
【0004】
このような画像調整モードで用紙に印刷する測色パッチのサイズは、調整用の用紙を削減するために、できる限り用紙搬送方向に対して小サイズにして、1枚の用紙に多数の測色パッチを形成できることが好ましい。
近年、さらなる高画質化のための画像調整時間等の短縮化のために、画像形成装置にインラインでイメージスキャナを搭載する画像読み取り装置も登場している。このイメージスキャナは、出力画像のリアルタイムでの紙表裏の位置ずれ、画像濃度、色味などを補正することに用いることができる。
【0005】
また、色味を正しく測定して絶対色をプリントデータに補正するための分光測色計をインラインで搭載すると、更なる調整時間の短縮に寄与できる。イメージスキャナは用紙全面のパッチを検出できるため、分光測色計で取得した真の色味とイメージスキャナで取得した色データの相関をとってイメージスキャナを補正することで、用紙全面にパッチを形成も可能となり調整用紙を節約することもできる。また、分光測色計のみを画像形成装置にインライン接続し、搬送中用紙のパッチを測色することによっても、調整自動化での時間短縮などの効果が得られる。
【0006】
なお、分光測色計を使用する場合は、各分光の反射光より、L*a*b*色空間データやXYZ色空間データに演算し色味を導き出すようにする。分光測色計は可視光源を測色するパッチにむかって照射し、反射光の分光スペクトルを取得する。また、測色用紙の蛍光材の影響を排除して正しい測色に近づけるために、紫外光源の反射光を取得して演算を行うものもある。
【0007】
なお、用紙Pに形成される測色パッチPのサイズについて、
図19を用いて説明する。一般的な分光測色計において、反射光を取得するレンズ部は約4mm程度であり、測色パッチ上での測定径φも約4mm程度である。
このため、用紙幅方向(用紙搬送方向と直交する方向)に対しては、測色計1個に対して、測色パッチは4mm+αのパッチサイズPTsize_Hが必要となる。
【0008】
また、用紙長さ方向(用紙搬送方向)に対しては、測色パッチは、測定時間に対応した用紙Pの移動距離mvと測定径φとマージンmgとを加えたパッチサイズPTsize_V=φ+mv+2mgが必要となる。
なお、分光測色計は、LEDなどから構成される露光部、光を分光する回折格子、分光された反射光を検出するCMOSセンサ、検出結果を波長に応じて出力する信号出力部、などで構成される。一般的な分光測色計は380nm〜730nmで10nm毎に分光された反射光をCMOSセンサ等で収集する。測色においては所定時間のLED等を露光し、所定時間の反射光を収集しなければ、精度のよい測色はできない。測色の繰り返し安定性を高めるためには、数回の積算平均をすることと尚よい。ここで得られた分光反射データは、測色計のメモリに記憶されるとともに、L*a*b*等の測色値への演算処理がなされる。これらの結果はRAMに位置時メモリされ、読み取り装置側に転送するまで保持される。
【0009】
ここで、測色時の測色時間と、移動用紙の測色パッチに関しては、一般的な分光測色計における目安で考えると、測定径φが4mm、測色時間が10ms、反射アナログ光量のデジタル値変換で1.3ms以上必要とされる。用紙の搬送スピードを300mm/sとすると、1回の測色を実行する際に約3.4mmが移動量となる。よって必要なパッチサイズは、測定径φ4mmと加え、最低7.4mmは必要となる。つまり、測色パッチを測色する分解能としては、用紙搬送方向に7.4mmとなる。
【0010】
また、以上の測色パッチに対して、分光測色計でタイミングを合わせて、2つの隣接する測色パッチにまたがることなく、それぞれ1の測色パッチで測色を実行することが重要である。なお、この種の技術としては、以下の特許文献に各種の関連提案がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(1)以上の特許文献1では、
図20に示すよう、用紙搬送センサ199で搬送中の用紙先端を検出して、所定タイマーでトリガ信号形成し、各測色パッチに対して測色を実行するように制御している。この場合、用紙先端余白(用紙先端から測色パッチまでの距離)、印字倍率など画像形成側の誤差により、用紙先端からの各測色パッチまでのタイミングが微妙に変化することになる。従って、パッチサイズを拡大することが必要になる。
【0013】
(2)以上の特許文献2では、分光測色計が、各測色パッチの境界を自己判定し、測色を開始する制御手法を採用している。
この場合、各パッチ間で、一定以上の色差(彩度、明度などの差を含む)が必要である。このため、チャートにおける測色パッチの配置に制限が生じる。また、使用できない測色パッチの組合せが発生する可能性がある。従って、各測色パッチの境界を完全に超えたと容易に判断できるように、測色パッチを拡大する必要がある。
【0014】
(3)その他、
図21と
図22に示すように、用紙Pの搬送方向において測色パッチと同期した状態になるようにトリガパッチを形成しておき、トリガセンサ190aでトリガパッチを検知し、このトリガパッチの検知に対応して、分光測色計190bが測色パッチを測色する手法も考えられる。この場合、測色パッチ毎に基点となるトリガパッチが存在するため、先端余白の影響や印字倍率の影響をほぼ受けず、確実に測色パッチを狙って測色できるようになる。
【0015】
以上説明したように、(1)と(2)では測色パッチを拡大しなければならないという問題が存在していた。一方、(3)では測色パッチを拡大する必要はなく、確実に測色パッチを測色できるように見える。
しかし、本件出願の発明者が確認したところ、上記(3)の手法でも、トリガセンサ190aと分光測色計190bの用紙搬送方向の位置の差(
図21参照)、トリガセンサ190aと分光測色計190bの用紙搬送方向における検出指向性の差(
図22参照)、といった製造時に起因する問題があることが分かった。
【0016】
このため、例えば、トリガセンサ1個づつに対し、トリガパッチを0.1mmずつ移動させながら、スケールを使ってセンサONする位置を測定して記録し、記録させた位置に基づいて、分光測色計とトリガセンサの位置を合わせるという、キャリブレーションが必要になる。しかし、これでは多大な調整時間を要してしまうことになり、望ましくない。
【0017】
本発明は、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチを拡大することなく、測色パッチの領域を適切に読み取ることが可能な読み取り装置及び読み取り制御方法並びに読み取り制御プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、前記した課題を解決する本発明は、以下の通りである。
(1)本発明の一側面が反映された読み取り装置は、用紙に形成された複数の異なる色の測色パッチ及び当該測色パッチと対応して形成されたトリガパッチを読み取る読み取り装置であって、前記用紙に形成された前記測色パッチを読み取る測色計と、前記用紙に形成された前記トリガパッチを読み取るトリガセンサと、前記トリガセンサで読み取られた前記トリガパッチに基づいて前記測色計が前記測色パッチを読み取る読取領域を制御する制御部と、を備えて構成され、前記制御部は、前記トリガパッチの読み取り結果に基づいて前記測色計が前記測色パッチを読み取る前記読取領域を決定する測色領域決定モードと、前記測色領域決定モードで決定された前記読取領域を前記測色計が読み取るよう制御する測色調整モードと、を有しており、前記測色領域決定モードでは、前記トリガパッチの各読み取り結果に対応して前記測色パッチの前記読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定して、前記測色計による前記測色パッチの読み取り結果を収集し、前記読み取り結果として前記測色パッチの特性と一致する状態となる領域を前記読取領域として決定する。
【0019】
(2)上記(1)において、前記制御部は、前記測色パッチそれぞれの前記読み取り結果として、異なる2の前記測色パッチが読み取られた混在領域と、1の前記測色パッチが読み取られた単独領域とを判別し、前記単独領域を前記読取領域として決定する。
(3)上記(2)において、前記制御部は、前記測色パッチそれぞれの前記読み取り結果として、前記混在領域、前記単独領域、前記混在領域の順番となるように、前記トリガパッチの各読み取り結果に対応して前記測色パッチの前記読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更し、前記読み取り結果が前記単独領域となる状態において前記読取領域を決定する。
【0020】
(4)上記(2)において、前記制御部は、前記測色パッチそれぞれの前記読み取り結果として、前記単独領域が連続して複数発生するように、前記トリガパッチの各読み取り結果に対応して前記測色パッチの前記読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定して、複数の連続した前記単独領域の中から前記読取領域を決定する。
【0021】
(5)上記(2)〜(4)において、前記制御部は、前記測色パッチそれぞれの前記読み取り結果としての前記単独領域となる範囲の中心を前記読取領域の中心として決定する。
(6)上記(1)〜(5)において、前記制御部は、前記測色領域決定モードにおいて前記トリガパッチの各読み取り結果に対応して前記測色パッチの前記読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定する手法として、複数の異なる色の測色パッチ及び当該測色パッチと同期状態に形成されたトリガパッチが前記用紙に形成された状態において、前記トリガパッチの各読み取り結果に対してそれぞれ異なる遅延時間を付与して前記測色パッチの読み取りタイミングを設定する。
【0022】
(7)上記(1)〜(5)において、前記制御部は、前記測色領域決定モードにおいて前記トリガパッチの各読み取り結果に対応して前記測色パッチの前記読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定する手法として、複数の異なる色の測色パッチ及び当該測色パッチに対して徐々に位相がずれた状態に形成されたトリガパッチが前記用紙に形成された状態において、前記トリガパッチの各読み取り結果に対して一定のタイミングで前記測色パッチの読み取りタイミングを設定する。
【発明の効果】
【0023】
(1)本発明の一側面が反映された読み取り装置では、測色領域決定モードにおいて、トリガパッチの各読み取り結果に対応して測色パッチの読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定して、測色計による測色パッチの読み取り結果を収集し、読み取り結果として測色パッチの特性と一致する状態となる領域を読取領域として決定する。そして、測色調整モードでは、測色領域決定モードで決定された読取領域を測色計が読み取るよう制御する。この結果、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチを拡大することなく、測色パッチの読取領域を適切に読み取ることが可能になる。
【0024】
(2)上記(1)において、測色パッチそれぞれの読み取り結果として、異なる2の測色パッチが読み取られた混在領域と、1の測色パッチが読み取られた単独領域とを判別し、単独領域を読取領域として決定する。この結果、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチを拡大することなく、単独領域の測色パッチの読取領域を適切に読み取ることが可能になる。
【0025】
(3)上記(2)において、測色パッチそれぞれの読み取り結果として、混在領域、単独領域、混在領域の順番となるように、トリガパッチの各読み取り結果に対応して測色パッチの読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更し、読み取り結果が単独領域となる状態において読取領域を決定する。この結果、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチを拡大することなく、混在領域ではなく単独領域の測色パッチの読取領域を適切に読み取ることが可能になる。
【0026】
(4)上記(2)において、測色パッチそれぞれの読み取り結果として、単独領域が連続して複数発生するように、トリガパッチの各読み取り結果に対応して測色パッチの読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定して、複数の連続した単独領域の中から読取領域を決定する。この結果、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチを拡大することなく、単独領域の測色パッチの読取領域として最も適切な領域を読み取ることが可能になる。
【0027】
(5)上記(2)〜(4)において、測色パッチそれぞれの読み取り結果としての単独領域となる範囲の中心を読取領域の中心として決定する。この結果、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチを拡大することなく、単独領域の測色パッチの読取領域として最も適切な領域を読み取ることが可能になる。
【0028】
(6)上記(1)〜(5)において、測色領域決定モードにおいてトリガパッチの各読み取り結果に対応して測色パッチの読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定する手法として、複数の異なる色の測色パッチ及び当該測色パッチと同期状態に形成されたトリガパッチが用紙に形成された状態において、トリガパッチの各読み取り結果に対してそれぞれ異なる遅延時間を付与して測色パッチの読み取りタイミングを設定する。この結果、用紙上に複数の測色パッチとトリガパッチが同期した状態で形成された場合に、測色パッチを拡大することなく、測色パッチの読取領域を適切に読み取ることが可能になる。
【0029】
(7)上記(1)〜(5)において、測色領域決定モードにおいてトリガパッチの各読み取り結果に対応して測色パッチの読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更した状態に設定する手法として、複数の異なる色の測色パッチ及び当該測色パッチに対して徐々に位相がずれた状態に形成されたトリガパッチが用紙に形成された状態において、トリガパッチの各読み取り結果に対して一定のタイミングで測色パッチの読み取りタイミングを設定する。この結果、読取領域を設定するためにタイミング遅延などを設定することなく、測色パッチを拡大せずに測色パッチの読取領域を適切に読み取ることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、読み取り装置、読み取り制御方法、読み取り制御プログラムにおける、測色パッチを適切に読み取る実施形態を詳細に説明する。
〔読み取り装置の構成〕
ここで、読み取り装置を含む画像形成装置の構成例として、
図1と
図2に基づいて詳細に説明する。この
図1と
図2では、読み取り装置としての出力物読取部190を内蔵した画像形成装置100について説明する。
【0032】
画像形成装置100は、画像形成装置100内の各部を制御する制御部101と、接続されている他の装置と通信するための通信部102と、利用者による操作入力の受け付けと画像形成装置100の状態表示とを行う操作表示部103と、各種設定を記憶する記憶部104と、給紙トレイに収容された用紙を給紙可能な給紙部105と、装置内で用紙を搬送する搬送部107と、撮像素子により原稿の画像を読み取る原稿読取部110と、撮像素子で得られた読取信号を処理する読取信号処理部120と、画像形成する際の画像データや各種データを記憶する画像データ記憶部130と、画像形成に必要な各種画像処理を実行する画像処理部140と、画像形成命令と画像データとに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成部150と、用紙上に形成されたトナーによる画像を熱と圧力とで安定させる定着部160と、用紙上に画像形成された画像(出力物)を撮像素子により読み取る出力物読取部190と、を備えて構成されている。
【0033】
なお、原稿読取部110は、ラインセンサを撮像素子として用いており、プラテンガラス上に載置された原稿を読み取る機能と、搬送中の原稿を読み取る機能とを備え、いずれかの機能を用いて原稿の両面の画像を読み取るものである。
また、読取信号処理部120は制御部101に含まれており、原稿読取部110で得られる読取信号と、出力物読取部190で得られる読取信号とに対して、シェーディング補正,色収差補正,色彩補正,解像度変換,回転処理といった各種の読取信号処理を行う。なお、読取信号処理部120は、制御部101の外に存在していても良い。
【0034】
また、画像形成部150は、
図2に示されるように、トナー像が形成される像担持体と、像担持体を所定の電位で帯電させる帯電部と、帯電した像担持体に画像データに応じた露光をして静電潜像を形成する露光部と、静電潜像を現像してトナー像にする現像部と、各色の像担持体上のトナー像が合成される中間転写体と、中間転写体上のトナー像を用紙に転写する転写部と、を有して構成される。なお、ここでは、カラー画像を形成する画像形成部150を示したが、1色のみの画像形成部であっても良い。
【0035】
また、出力物読取部190は、出力物全面を読み取るラインセンサを有していても良いが、特に、トリガセンサ190aと分光測色計190bと測色処理部190cを有して構成され、画像が形成された状態で搬送中の用紙を読み取る機能を備え、用紙の画像やパッチを読み取るものである(
図21、
図22参照)。なお、出力物読取部190は、定着部160の用紙搬送方向下流側に配置されており、出力される用紙の画像を搬送中に読み取る構成となっている。
【0036】
以上の
図1〜
図2の構成において、トリガセンサ190aの検知結果に基づいて分光測色計190bの読み取りタイミングを、測色処理部190cと制御部101とで制御して、測色パッチを適正な状態で読み取る。分光測色計190bで読み取られた測色パッチのデータは、測色処理部190cから画像処理部140に転送され、画像処理部140でプリント基データとの比較が行われる。そして、測色パッチを読取って得た色彩から求める色彩を算出し、所望の色彩を画像形成部150が出力できるように、画像処理部140でプリントデータの最適化を実施する。なお、画像最適化としては、濃度調整、色味調整などが含まれる。なお、分光測色計190bで読み取られた測色パッチのデータは、画像処理部140において、各分光の反射光よりL*a*b*色空間データやXYZ色空間データに演算され、色味が導き出される。
【0037】
また、トリガセンサ190aとしては、LED光源とフォトトランジスタで形成されたアナログ出力型の反射フォトセンサがふさわしい。用紙の白地では、反射が多くなり、黒色で形成されたトリガパッチ部では反射が弱くなり、それに応じた出力電流が流れる。これを電圧変換することでアナログ的に黒白の判別がつく。トリガセンサ190aから出力されデジタル変換されたトリガセンサ信号は、マイコンやFPGA等の制御デバイスに搭載されるトリガ制御部190cに入力される。測色処理部190cは、所定の遅延時間を形成してトリガ制御信号を発生し、このトリガ制御信号に基づいて、分光測色計190bの測色開始と測色終了を制御する。
【0038】
ここで、画像形成システムの別の構成例として、
図3と
図4に基づいて詳細に説明する。この
図3と
図4では、画像形成装置100と読み取り装置200とを有する画像形成システムについて説明する。ここで、画像形成装置100は、
図1−2に示したものと類似しており、出力物読取部190(
図1,
図2参照)を有していない状態である。なお、
図1−2と
図3−4とにおいて同一物には同一番号を付して、重複した説明は省略する。そして、画像形成装置100の用紙搬送方向下流側に読み取り装置200が配置されている。読み取り装置200は、制御部201と、通信部202と、用紙を搬送する搬送部207と、用紙上に画像形成された画像を読み取る出力物読取部290と、を有して構成されており、出力される用紙の画像を搬送中に読み取る構成となっている。なお、この読み取り装置200を、用紙反転を行う中間装置や、冊子作成などの各種の後処理を実行する後処理装置に内蔵させることも可能である。また、出力物読取部290としては、出力物読取部190(
図1)と同様な構成であり、トリガセンサ290aと分光測色計290bと測色処理部290cとを有して構成される。
【0039】
〔パッチの説明(1)〕
この実施形態の読み取り装置では、トリガパッチの読み取り結果に基づいて分光測色計が測色パッチを読み取る読取領域を決定する測色領域決定モードと、測色領域決定モードで決定された読取領域を分光測色計が読み取るよう制御する測色調整モードと、を有している。各モードの動作の詳細については、後述する。
【0040】
以下、本実施形態の測色領域決定モードで使用されるチャート(測色領域決定チャート)におけるトリガパッチと測色パッチとについて、
図5以降を参照して説明する。
なお、測色領域決定モードにおいては、測色調整モードにおいて実際に測色パッチを読み取る領域を調整するため、黒・白・黒・白・…のような色や濃度の差が大きい2色の測色パッチを使用することが望ましい。
図5以降では、白の部分は破線で示している。
【0041】
図5に示す具体例において、トリガセンサ190aと分光測色計190bでは、トリガセンサ190aが分光測色計190bよりも、用紙搬送方向の上流側に配置される位相となっている。このため、
図5に示す測色パッチに対応したトリガパッチは、用紙搬送方向において同位相に配置されている。なお、ここでは、黒の測色パッチと同位相でトリガパッチが配置されている。これにより、トリガパッチと同位相の黒の測色パッチよりも用紙先端側の位置から測色が可能となる。
【0042】
図6に示す具体例において、トリガセンサ190aと分光測色計190bでは、トリガセンサ190aと分光測色計190bは、用紙搬送方向において同位相となっている。このため、
図6に示す測色パッチに対応したトリガパッチは、用紙搬送方向において用紙先端側に配置されている。なお、ここでは、黒の測色パッチに対応して用紙先端側にトリガパッチが配置されている。これにより、トリガパッチに対応した黒の測色パッチよりも用紙先端側の位置から測色が可能となる。
【0043】
図7に示す具体例において、トリガセンサ190aと分光測色計190bでは、トリガセンサ190aが分光測色計190bよりも、用紙搬送方向の上流側に配置される位相となっている。このため、
図7に示す測色パッチに対応したトリガパッチは、用紙搬送方向において同位相に配置されている。なお、ここでは、黒の測色パッチと白の測色パッチとに同位相でトリガパッチが配置されている。これにより、トリガパッチと同位相の黒の測色パッチや白の測色パッチよりも用紙先端側の位置から測色が可能となる。なお、
図6に示す具体例においても、白の測色パッチに対応してトリガパッチを設けることも可能である。
【0044】
なお、
図5〜
図7では、黒の測色パッチと白の測色パッチとを、用紙搬送方向に交互に複数個並べた状態のものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、イエロー/シアンや、青/赤など、色相や明度が異なる組合せの測色パッチを採用することも可能である。
【0045】
〔動作説明(1)〕
以下、
図8のフローチャートを参照して、本実施形態の読み取り装置、読み取り制御方法、読み取り制御プログラムの実施形態について説明する。なお、ここでは、画像形成装置100に読み取り装置が含まれる、又は、画像形成装置100と読み取り装置とが連動しているという前提で説明を行う。また、この動作説明は、読み取り制御方法の処理手順でもある。また、この動作説明は、読み取り制御プログラムの処理ステップの説明でもある。
【0046】
制御部101は、画像形成装置100の動作状態や過去の動作履歴を参照し、現時点で調整を実行するか否かを判断する(
図8中のステップS101)。
調整を実行するタイミングに達していなければ(
図8中のステップS101でNO)、操作表示部103や外部機器からの指示に対応して画像形成部150がプリントを実行するように、制御部101が各部を制御する(
図8中のステップS118〜S120)。
【0047】
出力物読取部190をユニットとして交換した場合や、画像形成装置100を移動することにより衝撃が加わった可能性がある場合など、測色領域決定モードとして調整を実行するタイミングであれば(
図8中のステップS101でYES、ステップS102でYES)、制御部101は、測色領域決定チャート(
図5〜
図7参照)を画像形成部150でプリントし、出力物読取部190に向けて搬送する(
図8中のステップS103)。
【0048】
以下、
図9のタイムチャートも参照して動作説明を行う。なお、
図9では、ローレベルがアクティブな状態であるとしている。
測色領域決定チャートが出力物読取部190に搬送されると、トリガセンサ190aによりトリガパッチが読み取られ、トリガセンサ信号(
図9(a))が出力される。
【0049】
測色処理部190cは、トリガセンサ190aからのトリガセンサ信号を受けて、トリガセンサ信号に対応したトリガ制御信号(
図9(b))を生成する。このトリガ制御信号は、アナログ信号が波形整形されたトリガセンサ信号の立ち下がり(又は立ち上がり)から生成されたデジタル信号である。
【0050】
ここで、測色処理部190cは、トリガ制御信号に対して、異なる遅延時間を有する可変遅延トリガ制御信号(
図9(c))を生成する。
この場合、トリガ制御信号の1パルス目に対してはディレイ時間d0(ディレイ=0)の可変遅延トリガ制御信号を生成する。また、トリガ制御信号の2パルス目に対してはディレイ時間d1(ディレイ>0)の可変遅延トリガ制御信号を生成する。また、トリガ制御信号の3パルス目に対してはディレイ時間d2(d2>d1)の可変遅延トリガ制御信号を生成する。このように、測色処理部190cは、トリガ制御信号(
図9(b))から、遅延時間を徐々に大きくした可変遅延トリガ制御信号(
図9(c))を生成する。そして、測色処理部190cは、以上の可変遅延トリガ制御信号に基づいて、分光測色計190bに測色を実行させる(
図9(d))。
【0051】
以上のようにしてトリガパッチの検知結果に対して可変の遅延時間を与えて生成された可変遅延トリガ制御信号に基づく分光測色計190bの測色について、測色パッチの位置と測色される領域(読取領域)との関係は、
図9(e)のようになる。
図9(e)において、黒く塗りつぶされた四角形は測色パッチの配置を意味し、グレーの矢印は分光測色計190bによって測色される領域(読取領域)を意味している。
【0052】
すなわち、この測色領域決定モードでは、トリガパッチの各読み取り結果に対応して、測色パッチの読取領域が、読み取り方向(用紙搬送方向)に対して徐々に変更した状態に設定されている(
図8中のステップS104)。
測色処理部190cは、このようにして分光測色計190bで得られた各測色パッチの測色結果(測色領域決定用データ)を収集し(
図9中のステップS105)、収集された測色領域決定用データについての解析を行う(
図9中のステップS106)。
【0053】
図10は、以上のディレイd0〜d6の可変遅延トリガ制御信号に基づいて分光測色計190bが測色して得た測色領域決定用データについての濃度値をグラフに表したものである。
図9(e)から分かるように、ディレイd0では余白の白色領域と黒色測色パッチの両方(混在領域)を読み取っている。そして、ディレイd1,d2,と進むにつれて、白色測色パッチと黒色測色パッチの混在領域でありつつ、黒色測色パッチの比率が大きくなり、
図10の濃度値も上昇している。ディレイd4になると、黒色測色パッチのみの単独領域であり、
図10の濃度値は最大になる。そして、ディレイd5,d6,と進むにつれて、再び、白色測色パッチと黒色測色パッチの混在領域でありつつ、白色測色パッチの比率が大きくなり、
図10の濃度値が低下している。
【0054】
このため、測色処理部190cは、測色パッチの特性と最も一致する状態となる領域、すなわち、黒色測色パッチの特性として検出結果の濃度値が最も高くなるディレイd4による測色を最適な読取領域として決定する(
図9中のステップS107)。ここで、測色処理部190cは、可変遅延トリガ制御信号を生成するためのディレイd4を、制御部101を介して記憶部104などに記憶する(
図9中のステップS108)。
【0055】
このようにすることで、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチのサイズを拡大することなく、測色パッチの読取領域を適切に読み取ることが可能になる。
また、以上の可変遅延トリガ制御信号に基づく分光測色計190bの測色について、測色パッチそれぞれの読み取り結果として、混在領域、単独領域、混在領域の順番となるように、トリガパッチの各読み取り結果に対応して測色パッチの読取領域を読み取り方向に対して徐々に変更し、読み取り結果が単独領域となる状態において読取領域を決定することが望ましい。この結果、用紙上に複数の測色パッチが形成された場合に、測色パッチのサイズを拡大することなく、混在領域ではなく単独領域の測色パッチの読取領域を適切に読み取ることが可能になる。
【0056】
また、トリガセンサ190aと分光測色計190bの用紙搬送方向の位置の差(
図21参照)、トリガセンサ190aと分光測色計190bの用紙搬送方向における検出指向性の差(
図22参照)、といった製造時に起因する問題が存在していても、以上のようにすることで適切な測色パッチの読み取りが可能になるため、分光測色計190bとトリガセンサ190aのキャリブレーション等は不要になる。
【0057】
なお、以上は黒色測色パッチに対応してトリガパッチが配置されていた場合(
図5,
図6)の具体例であるが、
図7のように黒色測色パッチと白色測色パッチの両方に対応したトリガパッチが配置されている場合について、以下に説明する。
この場合、上述したパッチと読取領域との関係(
図9(e)参照)に対応する、黒色測色パッチと白色測色パッチとの読取領域は
図11のようになる。
【0058】
そして、ディレイd0,d2,d4,d6,d8,d10,d12,…の可変遅延トリガ制御信号に基づいて分光測色計190bが黒色測色パッチを測色して得た測色領域決定用データについての濃度値をグラフに表すと、
図12の実線のようになる。同様に、ディレイd1,d3,d5,d7,d9,d11,d13,…の可変遅延トリガ制御信号に基づいて分光測色計190bが白色測色パッチを測色して得た測色領域決定用データについての濃度値をグラフに表すと、
図12の破線のようになる。
【0059】
このため、測色処理部190cは、測色パッチの特性と最も一致する状態となる領域、すなわち、黒色測色パッチの特性として検出結果の濃度値が最も高くなるディレイd8による測色結果と、白色測色パッチの特性として検出結果の濃度値が最も低くなるディレイd7〜d9による測色結果とから、ディレイd8を最適な読取領域として決定する(
図9中のステップS107)。ここで、測色処理部190cは、可変遅延トリガ制御信号を生成するためのディレイd4を、制御部101を介して記憶部104などに記憶する(
図9中のステップS108)。
【0060】
また、黒色測色パッチと白色測色パッチの代わりに、シアン測色パッチとイエロー測色パッチとを交互に配置した場合も同様に、測色処理部190cは、測色パッチの特性と最も一致する状態となる領域、すなわち、シアン測色パッチの特性として検出結果のシアン成分が最も高くなるディレイd8による測色結果と、イエロー測色パッチの特性として検出結果のシアンの値が最も低くなる(イエローの値が強くなる)ディレイd7〜d9による測色結果とから、ディレイd8を最適な読取領域として決定する。
【0061】
なお、測色領域決定用データについて
図10,
図12,
図13のような明確な山谷が現れない場合の対処について、以下に説明する。
図14のように、ディレイd0,d1,d2,と進むにつれて、白色測色パッチと黒色測色パッチの混在領域でありつつ、黒色測色パッチの比率が大きくなり濃度値が上昇する。その後、ディレイd4,d5,d6,と進むにつれて、濃度値が一定になる。この場合、測色処理部190cは、このディレイd5で黒色測色パッチの安定領域に入ったとみなす。そして、これ以降の測色領域決定モードにおける動作を省略することができる。従って、測色領域決定モードの動作並びに測色領域決定チャートの出力を停止して、調整時間や調整用紙の削減が可能になる。
【0062】
また、可変遅延トリガ制御信号のディレイの分解能をあげて、測色領域決定モードを動作させた場合の様子を
図15に示す。この場合、ディレイd42〜d46の範囲で、黒色測色パッチのみの単独領域であり、濃度値が最大になっている。この場合、測色処理部190cは、ディレイd42〜d46の範囲の中央値であるディレイd44を最適な読取領域として決定する。
【0063】
また、測色処理部190cは、以上のような山型や台形が左右均等な形で現れた場合には、山型や台形の全体の中央値や重心から最適な読取領域を決定するようにしても良い。
そして、画像形成装置100が一定枚数の画像形成を実行した状態であれば、制御部101は測色調整が必要であると判断して(
図8中のステップS109でYES)、測色調整を実行する。この場合、各種の測色設定値を記憶部104から読み出し(
図8中のステップS112)、測色調整モード用の測色チャートを画像形成部150でプリントし、出力物読取部190に向けて搬送する(
図8中のステップS113)。
【0064】
そして、以上のようにして決定された最適な読取領域となるように、トリガ制御信号から所定の遅延時間で分光測色計190bが測色パッチを読み取るように測色処理部190cが制御を行って、測色チャートの各測色パッチを単独領域で測色するように制御する(
図8中のステップS114)。
【0065】
分光測色計190bで読み取られた測色パッチのデータは、測色処理部190cから画像処理部140に転送され、画像処理部140でプリント基データとの比較が行われる。そして、測色パッチを読取って得た色彩から求める色彩を算出し、所望の色彩を画像形成部150が出力できるように、画像処理部140でプリントデータの最適化を実施する(
図8中のステップS115,S116,S117)。
【0066】
また、画像形成装置において他の調整の実行が必要であると判断されると(
図8中のステップS110でYES)、制御部101は他の調整を実行する(
図8中のステップS111)。
また、以上の調整の実行後に、操作表示部103や外部機器からのプリントの指示が発生すれば、画像形成部150がプリントを実行するように制御部101が各部を制御する(
図8中のステップS118〜S120)。
【0067】
〔パッチ説明と動作説明(2)〕
以上の説明において、測色領域決定チャートにおけるトリガパッチと測色パッチとは、
図5−
図7のように同期した状態で並んでいた。そして、トリガパッチから得られるトリガ制御信号に対して可変遅延時間の可変遅延トリガ制御信号を生成していた。
【0068】
これに対し、
図16のように、可変遅延トリガ制御信号に含まれる可変の遅延時間の成分をトリガパッチの位置に反映させることが可能である。
この
図16の場合、可変遅延トリガ制御信号に含まれるべき可変の遅延時間の成分、すなわち、測色領域の変更がトリガパッチの位置に反映されているため、トリガパッチから得られるトリガセンサ信号(
図17(a))からトリガ制御信号(
図17(b))を生成し、そのトリガ制御信号で分光測色計190bに測色を命じることで(
図17(c))、測色パッチの読取領域が読み取り方向(用紙搬送方向)に対して徐々に変更された状態に設定される(
図17(d))。この場合、可変の遅延時間のディレイ信号d0,d1,…を生成しなくて良いため、高精度な遅延回路を設ける必要がないという利点がある。
【0069】
〔パッチ説明と動作説明(3)〕
画像調整時間を短縮したいという要望がある場合、分光測色計190bを複数搭載することも可能である。ここでは2個の分光測色計190b1、190b2を搭載した場合を
図18に示す。
【0070】
ここで、2個の分光測色計190b1、190b2に合わせ、測色パッチもそれにあわせた位置に画像形成部150でプリントする。
トリガパッチとトリガセンサ190aは1個のみでも充分であり、1のトリガ制御信号から、2個の分光測色計190b1、190b2に合わせた可変遅延トリガ制御信号をそれぞれ生成する。そして、2個の分光測色計190b1、190b2に合わせた可変遅延トリガ制御信号から、それぞれ適切なディレイを求め、それぞれ最適な読取領域を決定すれば良い。
図18の例では、分光測色計190b1に対しては、左から6番目の状態が最適な読取領域であり、分光測色計190b2に対しては、左から5番目の状態が最適な読取領域であることが分かる。
【0071】
〔その他の説明〕
以上の各実施形態の説明では、用紙Pの1枚の測色領域決定チャートの範囲で最適な読取領域が求まる具体例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、分解能を高めた状態にして、複数枚の測色領域決定チャートの範囲で最適な読取領域を求めるようにしても良い。