【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る光走査装置の一例を示した表面側の斜視図である。
図1において、実施例1に係る光走査装置は、ミラー部40と、トーションバー50と、連結部60と、水平駆動梁70と、駆動源71と、可動枠80と、垂直駆動部110と、フレーム120と、端子130と、配線140とを有する。また、ミラー部40は、ミラー反射面10と、応力緩和領域20と、スリット30とを有し、垂直駆動部110は、垂直駆動梁90と、駆動源91と、連結部100とを有する。
【0012】
ミラー部40は、2本のトーションバー50により同一直線上の両外側から挟まれるように支持されている。ミラー部40は、中心にミラー反射面10を有し、ミラー反射面10とトーションバー50との間に応力緩和領域20を有する。各応力緩和領域20には、2つのスリットが形成されている。また、トーションバー50は、連結部60を介して水平駆動梁70の内側の角に連結されている。水平駆動梁70は、表面に駆動源71を備え、外側の辺が可動枠80に連結されている。
【0013】
可動枠80は、水平駆動梁70を介して連結部60、トーションバー50及びミラー部20を支持するとともに、これらの周囲を囲んでいる。可動枠80は、奥側の一端が垂直駆動梁90の一端に連結され、可動枠80に連結された垂直駆動梁90の他端は、自分よりも外側にある垂直駆動梁90の一端に連結されている。
【0014】
垂直駆動梁90は、可動枠80の両側に、可動枠80を挟むようにトーションバー50と平行に複数設けられ、可動枠80の各片側には4つの垂直駆動梁90が配置されている。4つの垂直駆動梁90は、その端部よりも外側にある連結部100により、隣接して配置された垂直駆動梁90に連結されているが、一端は内側の垂直駆動梁90の一端に連結され、他端は外側の垂直駆動梁90の一端に連結されている。最も内側にある可動枠80に隣接した垂直駆動梁90は、一端は可動枠80の一端に連結され、他端は外側の垂直駆動梁90の一端に連結されている。また、最も外側にあるフレーム120に隣接した垂直駆動梁90は、一端がフレーム120に連結され、他端が内側にある垂直駆動梁90の一端に連結されている。また、垂直駆動梁90には、駆動源91が備えられている。
【0015】
垂直駆動梁90は、片側4本で片側の垂直駆動部110を構成し、両側8本で全体の垂直駆動部110を構成する。フレーム120は、最も外側の垂直駆動梁90を介して垂直駆動部110を支持する。フレーム120の表面には端子130が設けられ、配線140が接続される。駆動源71、91は、例えば、電圧の印加により伸縮して駆動する圧電素子等の電力の供給により駆動する駆動源71、91が用いられてよく、駆動源71、91に電圧を供給するために配線140が設けられている。
【0016】
次に、個々の構成要素について、より詳細に説明する。
【0017】
ミラー部40は、ミラー反射面10を保持するための部材であり、ミラー反射面10を中心に備える。ミラー反射面10は、照射された光を反射するための面であり、例えば、銀、銅、アルミニウムのような反射率の高い金属箔が用いられてもよい。ミラー反射面10は、一般に、規格や仕様によりサイズや形状が定められており、形状は円である場合が多い。ミラー反射面10は、例えば、ミラー部40の中心に貼り付けられて形成されてもよい。
【0018】
応力緩和領域20は、トーションバー50の捻れ応力を緩和させ、ミラー反射面10に加わる応力を低減させるための領域である。応力緩和領域20についての詳細は後述するが、トーションバー50とミラー反射面10との間にスペース部を設けることにより、トーションバー50の捻れ運動で発生する応力を分散させ、ミラー反射面10に加わる応力を緩和することができる。
【0019】
スリット30は、応力緩和領域20内に設けられ、応力緩和領域20に印加された応力を分散させるための穴である。応力緩和領域20に更にスリット30を設けることにより、応力緩和領域20に印加された応力を更に分散させることができる。なお、スリット30についても、詳細は後述する。
【0020】
トーションバー50は、ミラー部40を両側から支持するとともに、ミラー部20を水平方向に揺動させるための手段である。ここで、水平方向とは、ミラー反射面10により反射される光が高速に走査して移動する方向であり、投影面の横方向を意味する。つまり、ミラー反射面10が横方向に揺動する方向であり、トーションバー50が軸となる方向である。トーションバー50は、左右に交互に捻れることにより、ミラー部40を水平方向に揺動させる。
【0021】
連結部60は、水平駆動梁70で発生した水平方向の駆動力をトーションバー50に伝達するための伝達手段である。
【0022】
水平駆動梁70は、ミラー部40を水平方向に揺動させ、ミラー反射面10により反射された光を投影面の水平方向に走査させるための駆動手段である。水平駆動梁70は、例えば表面に圧電素子等の駆動源71を備えてよく、圧電素子の薄膜が水平駆動梁70の表面上に形成されてもよい。圧電素子は、電圧の印加により伸縮する素子であり、ミラー部40の左右両側にある圧電素子に異なる位相の電圧を交互に印加することにより、左右の水平駆動梁70を交互に上方に反らせることができる。これにより、トーションバー50に捻れ力を与え、トーションバー50を軸とする水平方向軸周りにミラー部40を揺動させることができる。なお、圧電素子には、例えば、ピエゾ素子が用いられてもよい。
【0023】
また、水平駆動梁70による駆動は、例えば、共振駆動が用いられてよい。本実施例に係る光走査装置がプロジェクタ等に用いられる場合、一般に、水平方向は30kHz程度の高速スキャンが要求されるので、高速走査が可能なように、共振駆動によりミラー部40を駆動することが好ましい。
【0024】
なお、ミラー部40、トーションバー50、連結部60及び水平駆動梁70の殆どが、弾性を有するように薄く構成され、例えば、シリコン基板の薄板として構成されてもよい。
【0025】
可動枠80は、ミラー部40,トーションバー50、連結部60及び水平駆動梁70を外側から囲んで支持するとともに、トーションバー50と垂直な方向の垂直軸周りに揺動する際の揺動対象となる。可動枠80は、水平駆動梁70を固定支持することが求められるので、弾性をあまり有さないように、上述のトーションバー50、連結部60及び水平駆動梁70よりも厚く構成され、これらの数倍の厚さを有して構成される。例えば、トーションバー50、連結部60及び水平駆動梁70が同じ厚さで、50μm程度で構成された場合には、可動枠80は250μm以上の厚さで構成されてもよい。例えば、実施例1に係る光走査装置をSOI(Silicon On Insulator)基板から形成した場合には、活性層の薄板のシリコン基板の部分をトーションバー50等の弾性を要する箇所に用い、活性層と埋め込み酸化膜と支持基板が積層された部分全体を可動枠80等の厚い部分に用いればよい。
【0026】
垂直駆動部110は、矩形であり、トーションバー50がなす水平軸と平行に配置された複数の垂直駆動梁90を有する。垂直駆動梁90は、各々が駆動源91を備え、独立した位相で駆動することが可能となっている。駆動源91は、例えば、ピエゾ素子等の圧電素子が用いられてもよく、この場合には、隣接する垂直駆動梁90に異なる位相の電圧が印加されるようにすれば、可動枠80を手前側又は奥側に傾くように揺動(傾動)させることができる。なお、ミラー部40は、可動枠80に支持されているので、可動枠80の揺動に従い、同じように垂直方向に揺動することになる。
【0027】
なお、垂直駆動部110は、例えば、非共振駆動により可動枠80を揺動させてもよい。垂直駆動では、水平駆動と比較して高速駆動は要求されず、例えば、60Hz程度の周波数でよい場合が多い。また、垂直駆動梁90は複数設けられているため、変位の蓄積により非共振駆動によって要求される速度を満たすことができる場合が多いからである。
【0028】
なお、垂直駆動部110の構成についても、詳細は後述するが、本実施例に係る光走査装置においては、垂直駆動梁90が偶数個設けられている。これにより、手前側と奥側への揺動に作用する垂直駆動梁90を常に同数とすることができ、手前側と奥側で均等な揺動を行うことができる。
【0029】
フレーム120は、垂直駆動部110及び可動枠80を支持するための固定支持部材であり、最も外側の垂直駆動梁90を介して垂直駆動部110を支持し、更に垂直駆動部110を介して可動枠80を支持している。
【0030】
垂直駆動梁90及び連結部100は、弾性を有するように薄板として構成されるが、フレーム120は、弾性を有しない厚板として構成される。
【0031】
端子130は、フレーム120上に設けられ、配線140に電力を供給している。これにより、駆動源71、91に電力が供給され、水平方向及び垂直方向に揺動駆動を行うことができる。
【0032】
図2は、本発明の実施例1に係る光走査装置の一例の裏面側を示した斜視図である。
図2において、
図1と同様の構成要素には、同一の参照符号を付している。
【0033】
図2において、ミラー反射面10の裏面に、リブ11が設けられている。リブ11は、駆動中におけるミラー反射面10の歪みが発生するのを抑制することができ、ミラー反射面10を平坦に保つことができる。リブ11は、ミラー反射面10の形状とほぼ外形が一致するように形成される。これにより、ミラー反射面10を全体に亘って平坦にすることができる。
【0034】
スリット30は、リブ11とトーションバー50との間の応力緩和領域20内に設けられている。これにより、トーションバー50から伝達される応力を、応力緩和領域20内で分散させ、リブ11にまで応力が伝達することを防ぐことができる。
【0035】
可動枠80には、肉抜き部81が設けられている。肉抜き部81は、可動枠80を軽量化するために形成された窪みである。可動枠80は、水平駆動梁70を支持する役割を有するため、厚肉部で構成されるが、自らも垂直方向に揺動する駆動対象であるため、重量が大きいと、同じ電圧を印加しても変位が小さくなり、感度が低下してしまう。よって、可動枠に肉抜き部を設け、軽量化することにより、感度を向上させることができる。
【0036】
また、可動枠80が例えば60Hzで駆動される場合、60Hzの倍数(120Hz、180Hz、240Hz・・・)に不要な共振周波数が存在すると、ノイズが大きくなってしまう。つまり、振動特性として、駆動周波数の倍数付近に不要な共振周波数が存在しないことが好ましい。軽量化により、不要な共振周波数を高周波数化することができ、駆動周波数の倍数付近から不要な共振周波数を遠ざけることができる。また、不要な共振周波数が駆動周波数の倍数であった場合でも、60Hzから離れた周波数、つまり高周波数側である方が影響は少ない。つまり、可動枠80の軽量化により、不要な共振周波数を高周波数化することができ、ノイズを減少させることができる。なお、肉抜き部81の形状、配置等の詳細については後述するものとする。
【0037】
可動枠80及びフレーム120の他、垂直駆動部110の垂直駆動梁90同士の連結部100の裏面にも、リブ101が形成されている。かかるリブ101により、垂直駆動梁90同士の連結を補強し、剛性を高めている。
【0038】
図3は、実施例1に係る光走査装置の応力緩和構造についてより詳細に説明するための図である。
図3(A)は、実施例1に係る光走査装置のミラー部周辺の表面側の構成を示した図であり、
図3(B)は、実施例1に係る光走査装置のミラー部周辺の裏面側の構成を示した図である。
【0039】
図3(A)に示すように、表面側については、ミラー部40は、円形のミラー反射面10とトーションバー50との間に応力緩和領域20を有する。また、
図3(A)において、回転(揺動)軸Xに垂直な垂直軸とミラー部40との交点が示され、交点とトーションバー50との間に応力緩和領域20が設けられている。また、各応力緩和領域20には、回転(揺動)軸Xに対称に円弧状のスリット30が2つ形成されている。
【0040】
図3(B)に示すように、裏面側については、ミラー反射面10の円形に対応して、ミラー反射面10とほぼ同様のエリアに格子状のリブ11が形成されている。これは、ミラー反射面10の平坦性を確保するためであり、格子状のリブパターンでミラー反射面10全体を補強している。但し、リブ11は重量物となり、ミラー部40の振れ角感度の低下を引き起こすため、可能な範囲で肉抜きを行っている。その結果、
図3(B)に示すように、格子状のリブ11が形成されている。
【0041】
図3(B)において、ミラー部40については、回転軸Xと直交する方向の外形寸法は、ミラー反射面10の寸法とほぼ同じとなっている。具体的には、ミラー反射部10の中心Cを含む上下に直径の2/3以内の範囲では、ミラー部40の外形寸法は、ミラー反射面10の寸法とほぼ同様である。つまり、応力緩和領域20は、回転軸Xと直交する方向の、少なくともミラー反射面10の中心Cを通る部分には形成されていない。これは、回転軸Xから離れた場所に重量があると、慣性モーメントの働きでミラー反射面10の感度低下が発生するからである。
【0042】
一方、回転軸Xに近い箇所の重量は、回転軸Xから離れた箇所ほどの影響は無いため、回転軸方向のミラー部40の外形寸法をミラー反射面10よりも大きくし、応力緩和領域20としてスペースを設けている。かかる応力緩和領域20を設けることにより、応力が発生するトーションバー50からリブ11までの距離を離すことになり、リブ11への応力を緩和することができ、リブ11の破壊を防止することができる。
【0043】
なお、
図3(A)、(B)に示すように、応力緩和領域20の平面形状は、トーションバー50からミラー反射面10に向かって末広がりの形状であることが好ましい。応力緩和領域20は、トーションバー50で発生した応力を緩和させるため、ある程度広いスペースが必要とされるが、トーションバー50から急激に横に広げた長方形のような形状としても、応力自体が横方向に伝達しないし、上述の慣性モーメントの発生により回転(揺動)にも悪影響を与えるからである。
図3(A)、(B)に示すようは末広がりの形状であれば、応力を分散させることができるとともに、揺動にも悪影響を与えない。
【0044】
また、
図3(A)、(B)に示すように、応力緩和領域20の端部21の平面形状は、曲線であることが好ましい。トーションバー50は、捻れ運動を行うため、端部21にも応力が発生するが、角を有する端部形状を含むと、角部分に応力が集中し易く、破損を招き易い。よって、応力緩和領域20の端部21をR形状とすることにより、そのような応力の集中による破損を防ぐことができる。なお、応力緩和領域20の端部21は、角部を含んでさえいなければ、直線部分を含んでもよい。直線部分が角部を構成しなければ、そこに応力が集中することはないからである。
【0045】
図4は、実施例1に係る光走査装置のミラー部40のミラー反射面10と応力緩和領域20との寸法関係を示した図である。
【0046】
図4において、ミラー反射面10の寸法を縦MV、横MHとし、ミラー部40の寸法を縦DV、横DHとすると、MH≒DH、MV<DVとなる。つまり、横方向についてはミラー反射面10とミラー部40の外形はほぼ等しく、縦方向についてはミラー反射面10の外形よりもミラー部40の外形が大きい。なお、
図4に示すように、ミラー反射面10の外形は円であるが、ミラー部40の外形は楕円に近似したものとなる。
【0047】
また、応力緩和領域20のMV以上〜DV以下の範囲には、スリット30が設けられている。スリット30を設けることにより、応力緩和領域20に伝達した応力を更に分散させることができるが、この点について以下説明する。
【0048】
図5は、実施例1に係る光走査装置の応力緩和領域20に設けられたスリット30による応力緩和効果を説明するための図である。
図5(A)〜(D)において、トーションバー50から応力緩和部20及びリブ11に加わる応力の強度分布が示されている。
【0049】
ミラー反射面10のリブ11は、ミラー反射面10の反りを低減する効果があるが、その半面、リブ11の付け根のL字状の部分は形状的に応力が集中し易くなる。特に、本実施例に係る光走査装置をMEMS(Micro Electro Mechanical System)構造体として構成する場合には、絶縁酸化膜(一般にSiO
2)の両側にシリコン基板を貼り合わせたSOIウェハーを用いて作製する場合が多い。この場合、上述のL字部分が絶縁酸化膜とシリコン基板の貼り合わせ部分に相当するため、ミラー反射面10に垂直な力成分が加わることにより、この貼り合わせ部分から剥離が発生及び進行し、破損に至る場合が多い。
【0050】
そこで、本実施例に係る光走査装置においては、回転軸X方向におけるミラー部40の外形とリブ11との距離を離間させ、応力緩和領域20を設けることによりトーションバー50で発生する力がリブ11のL字状部分に及ぶのを低減させているが、更にスリット30を応力緩和領域20に設けることにより、上述のL字状部分に及ぶ垂直方向の力成分を複数箇所に分散させている。
【0051】
図5(A)は、スリット30を応力緩和領域20に設けない場合の応力強度分布を示した図である。
図5(A)において、トーションバー50で発生した応力は、トーションバー50から離れる程小さくなり、リブ11に到達する応力はトーションバー50で発生した応力よりも小さくなっている。これは、応力緩和領域20で応力が緩和されたためである。しかしながら、リブ11に到達した応力は、トーションバー50の延長線上にある回転軸X(
図5においては図示せず)上に集中している。
【0052】
図5(B)は、スリット30を応力緩和領域20に設けた場合の応力強度分布を示した図である。
図5(B)において、2つのスリット30を回転軸Xに対称に、リブ11から距離を離間させて設けたことにより、応力緩和領域20内の応力が分散され、リブ11に到達した応力は、2つのスリット30の間の回転軸X上の部分と、各スリット30よりも外側の2つの部分となり、3つに分散されている。その結果、リブ11に到達する1つの応力大きさは低減されて小さくなり、リブ11の特定箇所に強い応力が加わるのを防ぐことができる。なお、スリット30がリブ11に接近して設けられていると、スリット30で応力をブロックする効果が働かず、応力がそのままリブ11に加わってしまう。よって、スリット30は、リブ11からある程度距離を離して設けることが好ましい。
【0053】
図5(C)は、スリット30を応力緩和領域20に設けない場合の鉛直方向の応力強度分布を示した図である。
図5(C)に示すように、スリット30が存在しない場合には、リブ11の2箇所に応力が集中する。なお、
図5(A)と異なり、2箇所の応力集中箇所が示されているのは、応力成分を鉛直方向に限定して示したことにより、揺動のプラスとマイナスで各々応力集中箇所が示されているからである。
【0054】
図5(D)は、スリット30を応力緩和領域20に設けた場合の鉛直方向の応力強度分布を示した図である。
図5(D)に示すように、スリット30が存在する場合には、スリット30の存在しない箇所に応力が分散され、4箇所に応力集中箇所が分散されていることが分かる。これにより、分散された各応力の大きさは小さくなるので、リブ11に加わる応力を低減させることができ、破損を回避することができる。
【0055】
なお、スリット30の形状は、ミラー反射面10の外形に近くなるように円弧状としてあるが、直線状やその他の形状であっても、応力分散の効果は得ることができるので、用途に応じてスリット30の形状は変更してもよい。
【0056】
このように、応力緩和領域20及びスリット30をミラー部40に設けることにより、ミラー部40の破損を回避することができるとともに、光走査装置の寿命を向上させることができる。
【0057】
次に、
図6及び
図7を用いて、可動枠80の軽量化についてより詳細に説明する。
【0058】
図6は、実施例1に係る光走査装置の軸の配置を示した図である。
図6に示すように、実施例1に係る光走査装置は、トーションバー50を通る水平回転軸Xと、トーションバー50に垂直であり、ミラー反射面10の中心Cを通る垂直回転軸Yの2軸を有する2軸の光走査装置として構成される。かかる2軸の光走査装置の可動枠80は、可動枠80の内側に配置された水平駆動梁70が高速に振動するのを支える役割を有するとともに、可動枠80の外側に配置された垂直駆動部110にとっては、感度を低下させる重量物となる。
【0059】
ここで、重量物が垂直回転軸Yから離れれば離れる程動きを阻害する慣性モーメントが大きくなるため、リブ状
に可動枠80を肉抜きする可動枠80の軽量化は、垂直回転軸周りの駆動感度の改善に効果がある。
【0060】
図7は、実施例1に係る光走査装置の可動枠の拡大斜視図である。
図7に示すように、可動枠80の内側にミラー部40の水平駆動部が構成される。ここで、水平駆動部とは、ミラー部40を水平駆動するための水平駆動梁70、駆動源71、連結部60及びトーションバー50を意味する。水平駆動部を駆動することで、ミラー反射面10は水平回転軸Xを中心として揺動する。
【0061】
可動枠80の外側には、
図1、2及び6に示したように、垂直駆動梁90がジャバラ状に蛇行して配置され、垂直駆動部110を駆動することにより可動枠80ごと垂直回転軸周りに振動する。この、垂直駆動部110にとって重量物となる可動枠80を軽量化するため、垂直回転軸Yから遠い枠部を肉抜きする。よって、
図7に示すように、垂直回転軸Yから離れた可動枠80の上辺と下辺の部分に複数の肉抜き部81が形成されている。
【0062】
肉抜き部81は、可動枠80を貫通させずに、途中で止めて窪み状にしている。また、肉抜き部81は、三角形とされ、可動枠80の延在方向に沿って三角形の頂点が交互に外側を向くように配置されている。これにより、可動枠80が残された厚肉部82が可動枠80に沿ったジグザグ形状となり、可動枠80に沿ったいずれの部分にも厚肉部82を残すことができるともに、幅方向にも均一に厚肉部82が残るので、肉抜き部81が形成された領域の強度を強く保ち、剛性を保つことが可能となる。
【0063】
このように、肉抜き部81を、可動枠80に沿って頂点が交互に入れ替わる複数の三角形の窪みとすることにより、ジグザグ状の厚肉部82を残しつつ肉抜きを行うことができ、強度を保ちつつ軽量化を行うことができる。
【0064】
なお、肉抜き部81は、数学的に正確な三角形でなくてもよく、角が丸まっていたり、辺が曲線的であったりする略三角形であってもよい。この場合にも、厚肉部82は略ジグザグ形状となり、可動枠80の延在方向と幅方向のいずれの箇所にもほぼ均一に厚肉部82を残すことができるので、軽量化を図りつつ剛性を保つことができる。
【0065】
また、肉抜き部81は、本実施例においては、水平回転軸Xの延在方向と一致する領域である可動枠80の上辺と下辺にのみ設けた例を挙げて説明したが、更なる軽量化を行う場合には、その他の領域にも肉抜き部81を設けてもよく、例えば、可動枠80の全周に亘って肉抜き部81を設けるようにしてもよい。このように、肉抜き部81は、用途に応じて種々の形状及び配置構成で設けることができる。
【0066】
次に、
図8を用いて、垂直駆動部110の構成についてより詳細に説明する。
図8は、実施例1に係る光走査装置の垂直駆動部110の構成を説明するための図である。
【0067】
図8において、実施例1に係る光走査装置の平面図が示されているが、垂直駆動部110は、片側に4本、両側で合計8本の垂直駆動梁92〜99を有している。垂直駆動梁92〜99のうち、ある駆動タイミングにおいて正転電圧が印加された垂直駆動梁93、94、97、99には○印、正転電圧を上下反転した波形で形成される反転電圧が印加された垂直駆動梁92、94、96、98には△印が付されている。
【0068】
正転電圧は、ゼロ電圧と最大値電圧(Vmax)との範囲で生成される、例えば正弦波やのこぎり波等の波形により形成される駆動波形である。反転電圧とは、最大値電圧(Vmax)の半分(Vmax/2)の電圧で、前記正転電圧波形を上下反転した波形により形成される駆動波形である。尚、水平軸の駆動に駆動波形として正弦波を使用する場合には、正転波形の位相を180°ずらすことによって反転電圧を得るようにしてもよい。
【0069】
ここで、○印が付された左側の駆動梁93、95と右側の駆動梁97、99はミラー反射面10及び可動枠80について対称であり、同様に、△印が付された左側の駆動梁92、94と右側の駆動梁96、98もミラー反射面10及び可動枠80について対称となっている。そして、○印が付されたプラス側の駆動梁93、95、97、98は、可動枠80より左側に2本、右側に2本の同数となっており、同様に、△印が付されたマイナス側の駆動梁92、94、96、98も、可動枠80より左側に2本、右側に2本の同数となっている。よって、○印の駆動梁93、95、97、99に反転電圧が印加され、△印の駆動梁92、94、96、98に正転電圧が印加された場合も、可動枠80の左側と右側で、上下反転した電圧が印加された駆動梁92〜99は2本ずつとなり、常に可動枠80に同じ傾き量の変位が与えられる。
【0070】
このように、駆動梁92〜99の数を偶数とすることにより、可動枠80の手前側への傾き量と、奥側への傾き量を同量にすることができる。一般に、光走査装置は、携帯電話等の小さな製品に組み込まれる場合が多く、スペース等との関係から、垂直駆動梁92〜99の数を奇数として構成される場合もある。この場合、可動枠80の手前側と奥側の傾き量が異なるので、投影面のサイズが異なる場合には、投影面のサイズ毎に投影中心がオフセットされることになり、光走査装置の設置に細かな調整が必要な場合も出てくる。
【0071】
しかしながら、本実施例に係る光走査装置においては、垂直駆動梁92〜99を偶数本にしているので、投影面のサイズが異なっても、投影中心を常に一定にすることができ、種々の用途や投影面のサイズに用いられる場合であっても、光走査装置を容易に設置することができる。
【0072】
このように、実施例1に係る光走査装置によれば、ミラー反射面10とトーションバー50との間に応力緩和領域20を設けることにより、トーションバー50で発生する応力のミラー反射面10への影響を低減することができる。また、必要に応じて、応力緩和領域20にスリット30を設けることにより、応力を分散させ、ミラー反射面10への影響を更に低減させることができる。
【0073】
また、可動枠80の肉抜きを行うことにより、可動枠80を軽量化して感度を向上させるとともに、ノイズを低減させることができる。更に、垂直駆動梁90の本数を偶数とすることにより、プラス側とマイナス側の揺動量を同量とし、光走査装置の設置を容易にすることができる。