【実施例】
【0038】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
〔製造例1〕内部摩擦角12.9度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
n−オクタン酸(東京化成工業(株)製)93.0g、リジン(東京化成工業(株)製)84.5gをキシレン(関東化学(株)製)439.2gに25℃で懸濁させ、得られた懸濁液を、80℃に昇温し、80℃で1時間撹拌させることにより、n−オクタン酸リジン塩を形成させた。さらに懸濁液を昇温し、窒素雰囲気下で加熱沸騰させながら反応によって生成した水を系外に除去し、3時間攪拌を続けた。冷却後、晶析した結晶を濾別し、516.0gの50重量%エタノール水溶液を用いて得られた結晶を洗浄し、乾燥し、Nε−モノオクタノイル−L−リジンの白色粉体139.5g(収率89.0%)を、製造例1の粉体として得た。
【0040】
製造例1の粉体の
1H−NMR測定結果(400MHz,CD
3COOD):4.09(t,J=11Hz,1H,CHCOOH),3.28(t,J=13Hz,2H,CH
2NHCO),2.29(t,J=16Hz,2H,CH
2CONH),2.04−1.91(m,2H,CH
2CHNH
2),1.65−1.46(m,6H,CH
2CH
2CHNH
2,CH
2CH
2NHCO,CH
2CH
2CONH),1.36−1.24(m,8H,CH
2),0.91(t,J=14Hz,3H,CH
3)
【0041】
ナノシーズ社製粉体層せん断力測定装置NS−S500型を用いて、製造例1の粉体の定圧せん断測定を行い、2.5gの粉体層の最大せん断応力を縦軸に、最大せん断応力を得た時の粉体層の底面垂直応力を横軸にプロットして、直線回帰式を算出して、その内部摩擦角を求めた。その結果、製造例1の粉体の内部摩擦角は12.9度であった。
【0042】
堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて製造例1の粉体の粒度分布を測定し、その平均粒径を求めた。その結果、製造例1の粉体の平均粒径は35μmであった。
【0043】
〔製造例2〕内部摩擦角15.7度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
n−オクタン酸93.0gの代わりにn−デカン酸(東京化成工業(株)製)111.1gを用いたこと以外は製造例1と同様に合成し、Nε−モノデカノイル−L−リジンの白色粉体160.7g(収率85.0%)を製造例2の粉体として得た。
【0044】
製造例2の粉体の
1H−NMR測定結果(400MHz,CD
3COOD):4.11(t,J=11Hz,1H,CHCOOH),3.28(t,J=13Hz,2H,CH2NHCO),2.27(t,J=16Hz,2H,CH
2CONH),2.06−1.93(m,2H,CH
2CHNH
2),1.68−1.49(m,6H,CH
2CH
2CHNH
2,CH
2CH
2NHCO,CH
2CH
2CONH),1.37−1.29(m,12H,CH
2),0.90(t,J=13Hz,3H,CH
3)
【0045】
製造例1と同様にして求めた製造例2の粉体の内部摩擦角は15.7度であった。また、製造例1と同様にして求めた製造例2の粉体の平均粒径は14.8μmであった。
【0046】
〔製造例3〕内部摩擦角11.5度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
n−オクタン酸93.0gの代わりにn−ヘキサン酸(東京化成工業(株)製)74.9gを用いたこと以外は製造例1と同様に合成し、Nε−モノヘキサノイル−L−リジンの白色粉体80.8g(収率64.9%)を製造例3の粉体として得た。
【0047】
製造例3の粉体の
1H−NMR測定結果(400MHz,CD
3COOD):4.09(t,J=11Hz,1H,CHCOOH),3.28(t,J=13Hz,2H,CH
2NHCO),2.28(t,J=14Hz,2H,CH
2CONH),2.04−1.93(m,2H,CH
2CHNH
2),1.68−1.48(m,6H,CH
2CH
2CHNH
2,CH
2CH
2NHCO,CH
2CH
2CONH),1.38−1.27(m,4H,CH
2),0.92(t,J=13Hz,3H,CH
3)
【0048】
製造例1と同様にして求めた製造例3の粉体の内部摩擦角は11.5度であった。また、製造例1と同様にして求めた製造例3の粉体の平均粒径は55μmであった。
【0049】
〔製造例4〕内部摩擦角12.1度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
製造例1の粉体4gと製造例2の粉体8gと製造例3の粉体4gをラボ用粉砕機(商品名ミルサーLFM−800DG、イワタニ製)の小容器に入れて5分間混合し、製造例4の粉体として白色粉体を得た。
【0050】
製造例1と同様にして求めた製造例4の粉体の内部摩擦角は12.1度であった。また、製造例1と同様にして求めた製造例4の粉体の平均粒径は30μmであった。
【0051】
〔比較例1〕内部摩擦角17.7度のN−長鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
比較例1の粉体として、味の素(株)社製「アミホープLL」(Nε−モノドデカノイル−L−リジン)を用いた。製造例1と同様にして求めた比較例1の粉体の内部摩擦角は17.7度であった。また、製造例1と同様にして求めた比較例1の粉体の平均粒径は23.5μmであった。
【0052】
〔実施例1〜8〕〔比較例2〜4〕固形粉末化粧料組成物
表1−1〜表1−4に示す組成(単位:重量%)の固形粉末ファンデーション(固形粉末化粧料組成物)を製造し、その粉取れ、すべり、透明感、ツヤ感、滑らかさ、のび、密着性、ツノ光、耐衝撃性、塗布時の柔らかさおよび塗布後のしっとり感を評価した。結果を表1−1〜表1−5に示す。
【0053】
〔固形粉末ファンデーションの製造〕
製造例1〜4のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体または比較例1のN−長鎖アシル塩基性アミノ酸粉体および無機粉体に油剤を加えて、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を250μmメッシュの篩いに通した。この混合物約12gを、アルミ製中皿に充填し、0.4MPaでプレス成型して、固形粉末ファンデーションを得た。
【0054】
<粉取れの評価>
市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーション表面を1回こすり、スポンジに取れたファンデーションの量を目視で判定し、以下の基準で粉取れを評価した。
◎ 1回でたくさんのファンデーションが取れる
○ 1回で充分な量のファンデーションが取れる
△ 1回で取れる量がやや少ない
× 1回で取れる量が極めて少ない
【0055】
<すべり、透明感、ツヤ感の評価>
黒色の出光テクノファイン製人工皮革(商品名サプラーレ)を顕微鏡用スライドグラスに貼付したものを、実施例および比較例ごとに4枚ずつ用意した。市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーションを、前記人工皮革の長軸方向に1回塗り広げたときのすべり感と、得られた塗布膜の透明感およびツヤ感を、以下の基準で評価した。
◎ 非常に良い
○ 良い
△ やや悪い
× 悪い
【0056】
<滑らかさの評価>
上記のすべり、透明感、ツヤ感の評価試験で得られた塗布膜を目視およびファイバーマイクロスコープ(200倍)で観察し、塗布膜のムラおよび粉の凝集の様子を判定し、以下の基準で滑らかさを評価した。
◎ 目視およびファイバーマイクロスコープ観察のいずれでも塗りムラがほとんどなく、均一な塗布膜が得られる
○ 目視では塗りムラが少ないが、ファイバーマイクロスコープ観察では粉の凝集している部分がある
△ 目視でやや塗りムラが目立ち、ファイバーマイクロスコープ観察では粉の凝集が多い
× 目視で顕著な凝集、塗りムラが生じる
【0057】
<のびの評価>
上記のすべり、透明感、ツヤ感の評価試験で得られた塗布膜をファイバーマイクロスコープ(200倍)で撮影した画像より、輝度レベル100以上の明るい部分の面積の撮影総面積に対する割合(=100×輝度レベル100以上の明るい部分の面積/撮影総面積)を算出した。これを4回繰り返し、得られた4個の割合の平均値を固形粉末ファンデーションによる被覆率として求めた。得られた被覆率から、のびを以下の基準で評価した。
◎ 被覆率95%以上
○ 被覆率85%以上95%未満
△ 被覆率75%以上85%未満
× 被覆率75%未満
【0058】
<密着性の評価>
上記のすべり、透明感、ツヤ感の評価試験で得られた塗布膜上に粘着テープ(ニチバン製セロテープ)をのせ、指の腹で軽く押さえて貼りつけた後、粘着テープを剥離した。剥離後の人工皮革上の塗布膜を再度ファイバーマイクロスコープ(200倍)で撮影した画像より、のびの評価試験と同様にして剥離後被覆率を求めた。のびの評価試験で得られた被覆率と、本試験で得られた剥離後被覆率とから残留率(=100×剥離後被覆率/被覆率)を求め、密着性を以下の基準で評価した。
◎ 残留率95%以上
○ 残留率85%以上95%未満
△ 残留率75%以上85%未満
× 残留率75%未満
【0059】
<ツノ光の評価>
市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーション表面の同じ箇所を強くこすり、表面にテカリが生じるまでの回数を確認し、以下の基準でツノ光を評価した。
◎ 往復20回こすってもテカリが生じない
○ 往復11〜20回でテカリが生じる
△ 往復6〜10回でテカリが生じる
× 往復5回以下でテカリが生じる
【0060】
<耐衝撃性>
固形粉末ファンデーションを、50cmの高さからビニルクロス張りの床にくり返し落下させ、かけや割れなどの異常が生じるまでの回数を測定し、以下の基準で耐衝撃性を評価した。
◎ 20回落下で異常なし
○ 11〜20回で異常発生
△ 6〜10回で異常発生
× 5回以下で異常発生
【0061】
<塗布時の柔らかさ、塗布後のしっとり感の評価>
市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーションを下腕内側に塗布したときの使用感を5名のパネラーにより以下の基準で採点し、その平均点を求め、以下の基準で塗布時の柔らかさおよび塗布後のしっとり感を評価した。
(塗布時の柔らかさの採点基準)
4 塗布時の柔らかさが非常に強い
3 塗布時の柔らかさが強い
2 塗布時の柔らかさがふつう
1 塗布時の柔らかさがあまりない
0 塗布時の柔らかさが全くない
(塗布後のしっとり感の採点基準)
4 塗布後のしっとり感が非常に強い
3 塗布後のしっとり感が強い
2 塗布後のしっとり感がふつう
1 塗布後のしっとり感があまりない
0 塗布後のしっとり感が全くない
(評価基準)
◎ 平均点が3.0以上
○ 平均点が2.0以上3.0未満
△ 平均点が1.0以上2.0未満
× 平均点が1.0未満
【0062】
【表1-1】
【0063】
【表1-2】
【0064】
【表1-3】
【0065】
【表1-4】
【0066】
【表1-5】
【0067】
実施例1〜8の固形粉末ファンデーションは、粉取れ、すべり、透明感、ツヤ感、滑らかさ、のび、密着性、ツノ光、および耐衝撃性のすべてにおいて良好であった。また、実施例1〜5の固形粉末ファンデーションは、塗布時の柔らかさおよび塗布後のしっとり感も良好であった。これらの中で実施例2〜8の固形粉末ファンデーションがより好ましく、実施例2〜4および8の固形粉末ファンデーションが更に好ましく、実施例2の固形粉末ファンデーションが特に好ましかった。
【0068】
一方、比較例2の固形粉末ファンデーションは、すべり、透明感、塗布時の柔らかさ、および塗布後のしっとり感において不良であり、ツヤ感、密着性および耐衝撃性において満足のいくものではなかった。比較例3の固形粉末ファンデーションは、ツヤ感において不良であり、すべり、滑らかさ、のびおよびツノ光において満足のいくものではなかった。比較例4の固形粉末ファンデーションは、ツヤ感、滑らかさ、のび、およびツノ光において不良であり、粉取れおよび塗布時の柔らかさにおいて満足のいくものではなかった。
【0069】
表2〜7に別の態様の本発明の化粧料を示す。なお、表2〜7に示す数値の単位は重量%である。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】