特許第6233405号(P6233405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233405
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20171113BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20171113BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20171113BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20171113BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/19
   A61K8/25
   A61K8/26
   A61K8/27
   A61K8/29
   A61K8/92
   A61Q1/12
   A61Q1/04
   A61Q17/04
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-505570(P2015-505570)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2014056764
(87)【国際公開番号】WO2014142266
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-51479(P2013-51479)
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】倉本 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】押村 英子
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−067406(JP,A)
【文献】 特開平01−242517(JP,A)
【文献】 国際公開第01/014317(WO,A1)
【文献】 特開平08−337519(JP,A)
【文献】 特開2001−010928(JP,A)
【文献】 特開平09−323914(JP,A)
【文献】 特開平11−189674(JP,A)
【文献】 特開昭61−137808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)Nε−モノヘキサノイルリジン、Nε−モノオクタノイルリジンおよびNε−モノデカノイルリジンからなる群から選ばれる少なくとも一つからなる粉体、
(B)無機粉体、および
(C)油剤
を含有し、成分(A)の内部摩擦角が10.0〜17.0度である化粧料組成物。
【請求項2】
成分(A)がNε−モノオクタノイルリジンからなる粉体である請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量が化粧料組成物全体の0.1〜95重量%である請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
成分(B)の含有量が化粧料組成物全体の4〜99.5重量%である請求項1〜のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項5】
成分(C)の含有量が化粧料組成物全体の0.01〜95重量%である請求項1〜のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項6】
成分(A)と成分(B)の配合割合(成分(A)の重量:成分(B)の重量)が1:99〜60:40である請求項1〜のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項7】
成分(A)と成分(C)の配合割合(成分(A)の重量:成分(C)の重量)が0.5:99.5〜90:10である請求項1〜のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項8】
固形化粧料である請求項1〜のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体、無機粉体および油剤を含有する化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素原子数11以上のアシル基を有するN−長鎖アシル塩基性アミノ酸は、特有の板状結晶構造を有し、これにより良好なすべり性を有するため粉体素材として化粧料に使用されている。N−長鎖アシル塩基性アミノ酸粉体は、さらに、油性原料に由来する化粧料のテカリ、ベタツキ感を抑える効果も有する(特許文献1)。また、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸を無機粉体の表面処理剤として用いることにより、無機粉体特有の硬い使用感や乾燥感を抑え、柔らかい感触、高い保湿感を得る技術が知られている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、特許文献2にも述べられているとおり、無機粉体表面に付着せずに単独で存在するN−長鎖アシル塩基性アミノ酸は、無機粉体およびN−長鎖アシル塩基性アミノ酸から得られる化粧料のすべり、滑らかさ、およびのびを損ね、さらに化粧料が均一な塗布膜にならないために、塗布後の肌の透明感およびツヤ感も損ねてしまう場合があった。この問題は、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸粉体を油性原料と組み合わせるとさらに顕著になった。また、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸粉体を含む組成物をプレスして固形化粧料を作製すると、固形化粧料が硬くなりすぎる場合があり、固形化粧料の表面をスポンジなどでこすり取る際の固形化粧料の「粉取れ」が悪化したり、固形化粧料の表面をスポンジなどでこすり続けるうちに表面がテカる「ツノ光」という現象を生じるという問題が生じていた。また、上述の特許文献1および2の実施例には、炭素原子数6〜10の中鎖アシル基を有するN−中鎖アシル塩基性アミノ酸を含有する化粧料は記載されていない。
【0004】
また、特許文献3には、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸を含有する皮膚および毛髪化粧料組成物が記載され、特許文献4には、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸を含有する毛髪化粧料組成物が記載されている。しかし、特許文献3および4の実施例には、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体、無機粉体および油剤を含有する化粧料は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−337519号公報
【特許文献2】特開2001−279129号公報
【特許文献3】特開昭61−137808号公報
【特許文献4】特開平1−242517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、柔らかく、しっとりした感触を有し、塗布時のすべり、滑らかさ、およびのびに優れ、塗布後に優れた肌の透明感、およびツヤ感が得られる化粧料であって、プレスして固形化粧料の形態にした場合には、粉取れ、耐衝撃性に優れ、ツノ光の発生しにくい化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、特定のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体、無機粉体および油剤を組み合わせることにより上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は以下の態様を含む。
[1] (A)式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは炭素原子数5〜9の飽和または不飽和の直鎖炭化水素基を示し、mは1〜4の整数を示す)
で表されるN−中鎖アシル塩基性アミノ酸の1種または2種以上からなる粉体、
(B)無機粉体、および
(C)油剤
を含有する化粧料組成物。
[2] 成分(A)の内部摩擦角が10.0〜17.0度である前記[1]に記載の化粧料組成物。
[3] 成分(A)がNε−モノオクタノイルリジンからなる粉体である前記[1]に記載の化粧料組成物。
[4] 成分(A)の含有量が化粧料組成物全体の0.1〜95重量%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[5] 成分(B)の含有量が化粧料組成物全体の4〜99.5重量%である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[6] 成分(C)の含有量が化粧料組成物全体の0.01〜95重量%である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[7] 成分(A)と成分(B)の配合割合(成分(A)の重量:成分(B)の重量)が1:99〜60:40である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[8] 成分(A)と成分(C)の配合割合(成分(A)の重量:成分(C)の重量)が0.5:99.5〜90:10である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の化粧料組成物。
[9] 固形化粧料である前記[1]〜[8]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柔らかく、しっとりした感触を有し、塗布時のすべり、滑らかさ、およびのびに優れ、塗布後に優れた肌の透明感、およびツヤ感が得られる化粧料であって、プレスして固形化粧料の形態にした場合には、粉取れ、耐衝撃性に優れ、ツノ光の発生しにくい化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の化粧料組成物は、(A)式(I)で表されるN−中鎖アシル塩基性アミノ酸からなる粉体(「成分(A)」と略称することがある)、(B)無機粉体(「成分(B)」と略称することがある)、および(C)油剤(「成分(C)」と略称することがある)の組合せを含有することを特徴とする。成分(A)〜(C)の組合せを使用することによって、上述の本発明の効果を達成することができる。以下、成分(A)〜(C)について順に説明する。
【0013】
[(A)N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体]
成分(A)は、式(I):
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rは炭素原子数5〜9の飽和または不飽和の直鎖炭化水素基を示し、mは1〜4の整数を示す)
で表されるN−中鎖アシル塩基性アミノ酸の1種または2種以上からなる粉体である。
【0016】
Rは、炭素原子数5〜9の飽和または不飽和の直鎖炭化水素基を示す。その炭素原子数は、好ましくは5、7または9であり、より好ましくは5または7であり、更に好ましくは7である。炭化水素基は、好ましくはアルキル基である。アルキル基としては、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられ、好ましくはペンチル基、ヘキシル基、ノニル基であり、より好ましくはペンチル基、ヘプチル基であり、更に好ましくはヘプチル基である。mは、1〜4の整数、好ましくは2〜4の整数、より好ましくは3または4、更に好ましくは4である。
【0017】
成分(A)は、好ましくは、Nε−モノヘキサノイルリジン(式(I)中、Rがペンチル基であり、mが4の整数である化合物)、Nε−モノオクタノイルリジン(式(I)中、Rがヘプチル基であり、mが4の整数である化合物)およびNε−モノデカノイルリジン(式(I)中、Rがノニル基であり、mが4の整数である化合物)からなる群から選ばれる少なくとも一つからなる粉体であり、より好ましくはNε−モノオクタノイルリジンからなる粉体である。
【0018】
成分(A)は、例えば、脂肪酸と塩基性アミノ酸との脱水縮合のような公知の方法によって合成することができる。脱水縮合に用いる脂肪酸としては、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸が挙げられる。塩基性アミノ酸としては、2,3−ジアミノプロピオン酸、α,γ−ジアミノ酪酸、オルニチン、リジンが挙げられる。脂肪酸および塩基性アミノ酸は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。
【0019】
脱水縮合に用いる塩基性アミノ酸は、フリー体でも、塩でもよい。塩基性アミノ酸の塩としては、例えば、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩等が挙げられる。脱水縮合に用いる塩基性アミノ酸としては、フリー体、塩酸塩、炭酸塩が好ましく、フリー体、炭酸塩がより好ましい。脱水縮合には、塩基性アミノ酸のフリー体および塩の混合物、または2種以上の塩基性アミノ酸塩の混合物を使用することもできる。
【0020】
脱水縮合の反応温度としては、70℃〜250℃が好ましく、副反応を防ぐ観点から70℃〜200℃がより好ましく、75℃〜180℃が更に好ましい。
【0021】
脱水縮合の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、酢酸、アセトニトリル等が挙げられる。溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。副反応を防ぐ観点から、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンが好ましく、トルエン、キシレン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、シクロヘキサンがより好ましい。また、反応設備の観点から、採用する反応温度よりも高い沸点を有する溶媒を使用することが好ましい。
【0022】
成分(A)(即ち、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体)の内部摩擦角は、10.0〜17.0度が好ましく、11.0〜16.0度がより好ましく、11.5〜16.0度が更に好ましく、12.0〜15.0度が特に好ましい。該内部摩擦角は、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体における塩基性アミノ酸部分の種類およびアシル基の種類、該粉体に含まれる微細粒子の量、該粉体の製造時の反応率(特に、原料脂肪酸の残存率)等によって変わる値である。該内部摩擦角は、例えば、式(I)における塩基性アミノ酸部分およびアシル基を選択し、粒径5μm以下の微細粒子の量を少なくし、反応率を97%以上(特に、原料脂肪酸の残存率を0.5重量%以下)とすることによって、前記の好ましい範囲に調整することができる。また、異なる内部摩擦角を有する2種以上のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体を適宜混合して、好ましい内部摩擦角を有する粉体を得ることもできる。
【0023】
成分(A)(即ち、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体)の内部摩擦角は、ナノシーズ社製粉体層せん断力測定装置を用いた定圧せん断測定より求められ、粉体層の流動性を示す物性値として、主に製造や輸送の設備設計に利用される。測定は、例えば、製剤機械技術学会誌 第68号(Vol.19 No.1)、2010年、62−67に記載された粉体層せん断力測定装置NS−Sシリーズ(例えば、NS−S500型)を用いた製剤用微粉体の特性評価に基づき行うことができ、この文献の内容は、本明細書の記載に含まれるものとする。具体的には、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体2.5gをせん断セル内に充填し、粉体層上面を平坦にした後、押し込み目標荷重を押し込み制御の条件として、せん断試験を行う。目標荷重(25、50、75、100、125Nの5段階)に達した時、押し込みを停止し、横摺りを開始し、せん断面にて連続のせん断力を記録する。粉体層の最大せん断応力を縦軸に、最大せん断応力を得た時の粉体層の底面垂直応力を横軸にプロットして、直線回帰式を算出し、その角度を内部摩擦角として求める。
【0024】
本発明の成分(A)(即ち、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体)の平均粒径は、好ましくは1〜1000μmであり、より好ましくは5〜200μmである。この平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置でN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体の粒度分布を測定することによって求められる。
【0025】
本発明の化粧料組成物における成分(A)の含有量は、共存する成分によって異なるが、化粧料組成物全体の0.1〜95重量%であることが好ましい。該含有量の下限は、0.5重量%がより好ましく、1.0重量%がより一層好ましく、2重量%が更に好ましく、5重量%が更に一層好ましい。一方、組成物の感触の観点から、該含有量の上限は、85重量%がより好ましく、65重量%がより一層好ましく、55重量%が更に好ましく、45重量%が更に一層好ましく、35重量%が特に好ましい。
【0026】
本発明の化粧料組成物は、炭素原子数11以上のアシル基を有するN−長鎖アシル塩基性アミノ酸を実質的に含まないことが好ましい。該N−長鎖アシル塩基性アミノ酸は、成分(A)(即ち、N−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体)を成分(B)および(C)と組み合わせることによる本発明の効果である、化粧料のすべり、滑らかさおよびのび、化粧料塗布後の肌の透明感およびツヤ感を損ねてしまう傾向がある。ここで、該N−長鎖アシル塩基性アミノ酸を実質的に含まないとは、本発明の化粧料組成物における成分(A)および該N−長鎖アシル塩基性アミノ酸の合計中、該N−長鎖アシル塩基性アミノ酸の量が10モル%未満であることをいう。該N−長鎖アシル塩基性アミノ酸の量は、成分(A)および該N−長鎖アシル塩基性アミノ酸の合計中、5モル%未満であることがより好ましく、1モル%未満であることがより一層好ましく、0.1モル%未満であることが更に好ましい。
【0027】
[(B)無機粉体]
本発明の化粧料組成物に使用する無機粉体としては、例えば、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化鉄、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化コバルト、カーボンブラック、群青、紺青、酸化亜鉛、微粒子酸化亜鉛、酸化チタン、微粒子酸化チタン、シリカ、多孔性シリカ、アルミナ、酸化セリウム、窒化ホウ素、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭化珪素、色素、レーキ、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ベントナイト、板状硫酸バリウム、バタフライ状硫酸バリウム、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。無機粉体は、さらに、上述のものの複合体(例えば、シリカ被覆酸化チタン、マイカ被覆酸化チタン、チタン被膜マイカ)であってもよく、上述のものにシリコーン処理、フッ素化合物処理、シランカップリング剤処理、シラン処理、有機チタネート処理、脂肪酸処理(例えば、ステアロイルグルタミン酸処理)、金属石鹸処理(例えば、ステアリン酸アルミニウム処理)、油剤処理、アミノ酸処理等の表面処理を施したもの(例えば、シリコーン処理タルク、シリコーン処理マイカ、シリコーン処理セリサイト、シリコーン処理酸化チタン、シリコーン処理赤色酸化鉄、シリコーン処理黄酸化鉄、シリコーン処理黒酸化鉄、ステアロイルグルタミン酸処理酸化チタン、ステアロイルグルタミン酸処理黄酸化鉄、ステアロイルグルタミン酸処理赤色酸化鉄、ステアロイルグルタミン酸処理黒酸化鉄、ステアリン酸アルミニウム処理酸化チタン等)でもよい。
【0028】
成分(B)としてタルクを含有した本発明の化粧料組成物では、本発明の効果がより顕著に表れるため、成分(B)としてタルクを用いることが好ましい。
【0029】
本発明の化粧料組成物における成分(B)の含有量は、共存する成分によって異なるが、化粧料組成物全体の4〜99.5重量%であることが好ましい。該含有量の下限は、5重量%がより好ましく、10重量%がより一層好ましく、20重量%が更に好ましく、30重量%が更に一層好ましい。一方、組成物の感触の観点から、該含有量の上限は、95重量%がより好ましく、93重量%がより一層好ましく、90重量%が更に好ましい。
【0030】
[(C)油剤]
本発明の化粧料組成物に使用する油剤としては、化粧料に通常用いられるものであれば特に制限されず、例えば、ワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ、シアバター等の固形・半固形油分;ステアリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール;スクワラン、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、イソドデカン等の炭化水素油;ホホバ種子油、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソステアリル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、安息香酸アルキル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル−2、ラウロイルグルタミン酸(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ラウロイルグルタミン酸(フィトステリル/オクチルドデシル/ベヘニル)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ミリストイルメチルベータ−アラニン(フィトステリル/デシルテトラデシル)、カプリン酸グリセリル等の天然または合成のエステル油;ジグリセリド;コーン油、オリーブオイル、ヒマワリ油、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン等の天然または合成のトリグリセリド;ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、リンゴ酸ジイソステアリル、水添ポリデセン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル等の高粘性油;ジメチコン、メチコン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、フェニルトリメチコン、PEG−10 ジメチコン等のシリコーン油;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤;ミネラルオイル;等が挙げられる。これらは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の化粧料組成物における成分(C)の含有量は、共存する成分によって異なるが、化粧料組成物全体の0.01〜95重量%が好ましい。該含有量の下限は、0.05重量%がより好ましく、0.1重量%がより一層好ましく、0.5重量%が更に好ましく、1.0重量%が更に一層好ましい。該含有量の上限は93重量%がより好ましく、90重量%がより一層好ましく、85重量%が更に好ましく、70重量%が更に一層好ましく、50重量%が特に好ましい。
【0032】
本発明の化粧料組成物は、0.1〜95重量%の成分(A)、4〜99.5重量%の成分(B)および0.01〜95重量%の成分(C)を含有することが好ましく;0.5〜85重量%の成分(A)、5〜95重量%の成分(B)および0.05〜93重量%の成分(C)を含有することがより好ましく;1.0〜65重量%の成分(A)、10〜93重量%の成分(B)および0.1〜90重量%の成分(C)を含有することがより一層好ましく;2〜55重量%の成分(A)、20〜90重量%の成分(B)および0.5〜85重量%の成分(C)を含有することが更に好ましく;5〜45重量%の成分(A)、30〜90重量%の成分(B)および1.0〜70重量%の成分(C)を含有することが更に一層好ましく;5〜35重量%の成分(A)、30〜90重量%の成分(B)および1.0〜50重量%の成分(C)を含有することが特に好ましい。なお、前記含有量は、化粧料組成物全体に対する値である。
【0033】
本発明の化粧料組成物における成分(A)と成分(B)の配合割合(成分(A)の重量:成分(B)の重量)は、1:99〜60:40が好ましく、1.5:98.5〜40:60がより好ましく、2:98〜35:65がより一層好ましく、5:95〜32:68が更に好ましい。
【0034】
本発明の化粧料組成物における成分(A)と成分(C)の配合割合(成分(A)の重量:成分(C)の重量)は、0.5:99.5〜90:10が好ましく、1:99〜85:15がより好ましく、10:90〜80:20がより一層好ましく、15:85〜75:25が更に好ましく、30:70〜72:28が更に一層好ましい。
【0035】
本発明の化粧料組成物は、肌や唇の色のコントロールおよび/または着色、および/または紫外線遮蔽を目的とする種々の用途に用いることができる。本発明の化粧料組成物は、固形化粧料でもよく、液状化粧料でもよいが、好ましくは固形化粧料である。固形化粧料としては、例えば、ルースパウダー型の化粧料;容器に充填後に、圧縮成型するか、または溶剤を除去することによって形成される固形粉末化粧料;練り状物を容器に流し込むことによって形成される練り状化粧料;スティック型の化粧料;等が挙げられる。液状化粧料としては、例えば、液状成分(水等)を含有する乳化型の化粧料等が挙げられる。本発明の化粧料組成物の用途としてはファンデーション、スティックファンデーション、おしろい、口紅、ほお紅、アイカラー、アイブロウ、化粧下地、日中用美容液、サンスクリーン、コンシーラー、ブロンザー、リップカラー、BBクリーム等が挙げられる。本発明の化粧料組成物の特徴が特に生かされるのは無機粉体を比較的大量に配合する用途であり、そのような用途に用いる化粧料としては、例えば、固形粉末ファンデーション等の固形粉末化粧料、ルースパウダーファンデーションやおしろい等の粉末化粧料、各種サンスクリーン、コンシーラー、化粧下地等が挙げられる。
【0036】
本発明の化粧料組成物には、上記成分(A)〜(C)に加え、通常、化粧料(医薬外用剤、医薬部外品を含む)に使用し得るその他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合しても良い。その他の成分としては、例えば、水、界面活性剤、アミノ酸、アミノ酸誘導体、低級アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、グリセリン、ブチレングリコール)、糖アルコールおよびそのアルキレンオキシド付加物、水溶性高分子(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、被膜形成性高分子、樹脂粉体(例えば、ナイロンパウダー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーパウダー)、粘土鉱物(例えば、クオタニウム−18ヘクトライト、クオタニウム−18ベントナイト)、ゲル化剤(例えば、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド)、保湿剤(例えば、ピロリドンカルボン酸ナトリウム)、殺菌剤および抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗真菌剤、角質軟化剥離剤、皮膚着色剤、ホルモン剤、紫外線吸収剤、育毛剤、発汗防止剤および収斂活性成分(例えば、ピロリドンカルボン酸亜鉛塩)、汗防臭剤、ビタミン剤、血流促進剤(血管拡張剤、血行促進剤)、生薬、植物抽出物、pH調整剤、キレート剤(例えば、EDTA−2Na)、粘度調整剤、パール化剤、天然香料、合成香料、色素および顔料(例えば、赤202号、青1号)、酸化防止剤(例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ペンタガロイルグルコシド)、防腐剤(例えば、メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール)、乳化剤、増粘剤、脂肪およびワックス、シリコーン化合物、香油等が挙げられる。
【0037】
本発明の化粧料組成物は、成分(A)〜(B)および必要に応じてその他の成分を、公知の方法で混合することによって製造することができる。例えば、粉体である成分(A)および(B)に、成分(C)および必要に応じてその他の成分を加えた後、それらをヘンシェルミキサー等を用いて混合し、得られた混合物を篩いがけすることによって、本発明の化粧料組成物を製造することができる。また、公知の方法によって成分(B)の一部または全量を、成分(A)の一部または全量で被覆してから、成分(A)で被覆された成分(B)と、残りの成分(A)(被覆に成分(A)の一部を使用した場合)、残りの成分(B)(成分(B)の一部を被覆した場合)および成分(C)並びに必要に応じてその他の成分とを混合することによって、本発明の化粧料組成物を製造することができる。成分(A)で成分(B)を被覆する方法としては、衝撃混合装置、せん断混合装置等を利用する乾式処理法、成分(A)の強アルカリ溶解液を成分(B)のスラリーに滴下した後、酸で中和し、ろ過、乾燥させるといった湿式処理法が挙げられる。成分(A)で成分(B)を被覆する場合、被覆に使用する成分(A)の量は、被覆される成分(B)100重量部に対して、20重量部以下であることが望ましい。
【実施例】
【0038】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
〔製造例1〕内部摩擦角12.9度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
n−オクタン酸(東京化成工業(株)製)93.0g、リジン(東京化成工業(株)製)84.5gをキシレン(関東化学(株)製)439.2gに25℃で懸濁させ、得られた懸濁液を、80℃に昇温し、80℃で1時間撹拌させることにより、n−オクタン酸リジン塩を形成させた。さらに懸濁液を昇温し、窒素雰囲気下で加熱沸騰させながら反応によって生成した水を系外に除去し、3時間攪拌を続けた。冷却後、晶析した結晶を濾別し、516.0gの50重量%エタノール水溶液を用いて得られた結晶を洗浄し、乾燥し、Nε−モノオクタノイル−L−リジンの白色粉体139.5g(収率89.0%)を、製造例1の粉体として得た。
【0040】
製造例1の粉体の1H−NMR測定結果(400MHz,CD3COOD):4.09(t,J=11Hz,1H,CHCOOH),3.28(t,J=13Hz,2H,CH2NHCO),2.29(t,J=16Hz,2H,CH2CONH),2.04−1.91(m,2H,CH2CHNH2),1.65−1.46(m,6H,CH2CH2CHNH2,CH2CH2NHCO,CH2CH2CONH),1.36−1.24(m,8H,CH2),0.91(t,J=14Hz,3H,CH3
【0041】
ナノシーズ社製粉体層せん断力測定装置NS−S500型を用いて、製造例1の粉体の定圧せん断測定を行い、2.5gの粉体層の最大せん断応力を縦軸に、最大せん断応力を得た時の粉体層の底面垂直応力を横軸にプロットして、直線回帰式を算出して、その内部摩擦角を求めた。その結果、製造例1の粉体の内部摩擦角は12.9度であった。
【0042】
堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて製造例1の粉体の粒度分布を測定し、その平均粒径を求めた。その結果、製造例1の粉体の平均粒径は35μmであった。
【0043】
〔製造例2〕内部摩擦角15.7度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
n−オクタン酸93.0gの代わりにn−デカン酸(東京化成工業(株)製)111.1gを用いたこと以外は製造例1と同様に合成し、Nε−モノデカノイル−L−リジンの白色粉体160.7g(収率85.0%)を製造例2の粉体として得た。
【0044】
製造例2の粉体の1H−NMR測定結果(400MHz,CD3COOD):4.11(t,J=11Hz,1H,CHCOOH),3.28(t,J=13Hz,2H,CH2NHCO),2.27(t,J=16Hz,2H,CH2CONH),2.06−1.93(m,2H,CH2CHNH2),1.68−1.49(m,6H,CH2CH2CHNH2,CH2CH2NHCO,CH2CH2CONH),1.37−1.29(m,12H,CH2),0.90(t,J=13Hz,3H,CH3
【0045】
製造例1と同様にして求めた製造例2の粉体の内部摩擦角は15.7度であった。また、製造例1と同様にして求めた製造例2の粉体の平均粒径は14.8μmであった。
【0046】
〔製造例3〕内部摩擦角11.5度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
n−オクタン酸93.0gの代わりにn−ヘキサン酸(東京化成工業(株)製)74.9gを用いたこと以外は製造例1と同様に合成し、Nε−モノヘキサノイル−L−リジンの白色粉体80.8g(収率64.9%)を製造例3の粉体として得た。
【0047】
製造例3の粉体の1H−NMR測定結果(400MHz,CD3COOD):4.09(t,J=11Hz,1H,CHCOOH),3.28(t,J=13Hz,2H,CH2NHCO),2.28(t,J=14Hz,2H,CH2CONH),2.04−1.93(m,2H,CH2CHNH2),1.68−1.48(m,6H,CH2CH2CHNH2,CH2CH2NHCO,CH2CH2CONH),1.38−1.27(m,4H,CH2),0.92(t,J=13Hz,3H,CH3
【0048】
製造例1と同様にして求めた製造例3の粉体の内部摩擦角は11.5度であった。また、製造例1と同様にして求めた製造例3の粉体の平均粒径は55μmであった。
【0049】
〔製造例4〕内部摩擦角12.1度のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
製造例1の粉体4gと製造例2の粉体8gと製造例3の粉体4gをラボ用粉砕機(商品名ミルサーLFM−800DG、イワタニ製)の小容器に入れて5分間混合し、製造例4の粉体として白色粉体を得た。
【0050】
製造例1と同様にして求めた製造例4の粉体の内部摩擦角は12.1度であった。また、製造例1と同様にして求めた製造例4の粉体の平均粒径は30μmであった。
【0051】
〔比較例1〕内部摩擦角17.7度のN−長鎖アシル塩基性アミノ酸粉体
比較例1の粉体として、味の素(株)社製「アミホープLL」(Nε−モノドデカノイル−L−リジン)を用いた。製造例1と同様にして求めた比較例1の粉体の内部摩擦角は17.7度であった。また、製造例1と同様にして求めた比較例1の粉体の平均粒径は23.5μmであった。
【0052】
〔実施例1〜8〕〔比較例2〜4〕固形粉末化粧料組成物
表1−1〜表1−4に示す組成(単位:重量%)の固形粉末ファンデーション(固形粉末化粧料組成物)を製造し、その粉取れ、すべり、透明感、ツヤ感、滑らかさ、のび、密着性、ツノ光、耐衝撃性、塗布時の柔らかさおよび塗布後のしっとり感を評価した。結果を表1−1〜表1−5に示す。
【0053】
〔固形粉末ファンデーションの製造〕
製造例1〜4のN−中鎖アシル塩基性アミノ酸粉体または比較例1のN−長鎖アシル塩基性アミノ酸粉体および無機粉体に油剤を加えて、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を250μmメッシュの篩いに通した。この混合物約12gを、アルミ製中皿に充填し、0.4MPaでプレス成型して、固形粉末ファンデーションを得た。
【0054】
<粉取れの評価>
市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーション表面を1回こすり、スポンジに取れたファンデーションの量を目視で判定し、以下の基準で粉取れを評価した。
◎ 1回でたくさんのファンデーションが取れる
○ 1回で充分な量のファンデーションが取れる
△ 1回で取れる量がやや少ない
× 1回で取れる量が極めて少ない
【0055】
<すべり、透明感、ツヤ感の評価>
黒色の出光テクノファイン製人工皮革(商品名サプラーレ)を顕微鏡用スライドグラスに貼付したものを、実施例および比較例ごとに4枚ずつ用意した。市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーションを、前記人工皮革の長軸方向に1回塗り広げたときのすべり感と、得られた塗布膜の透明感およびツヤ感を、以下の基準で評価した。
◎ 非常に良い
○ 良い
△ やや悪い
× 悪い
【0056】
<滑らかさの評価>
上記のすべり、透明感、ツヤ感の評価試験で得られた塗布膜を目視およびファイバーマイクロスコープ(200倍)で観察し、塗布膜のムラおよび粉の凝集の様子を判定し、以下の基準で滑らかさを評価した。
◎ 目視およびファイバーマイクロスコープ観察のいずれでも塗りムラがほとんどなく、均一な塗布膜が得られる
○ 目視では塗りムラが少ないが、ファイバーマイクロスコープ観察では粉の凝集している部分がある
△ 目視でやや塗りムラが目立ち、ファイバーマイクロスコープ観察では粉の凝集が多い
× 目視で顕著な凝集、塗りムラが生じる
【0057】
<のびの評価>
上記のすべり、透明感、ツヤ感の評価試験で得られた塗布膜をファイバーマイクロスコープ(200倍)で撮影した画像より、輝度レベル100以上の明るい部分の面積の撮影総面積に対する割合(=100×輝度レベル100以上の明るい部分の面積/撮影総面積)を算出した。これを4回繰り返し、得られた4個の割合の平均値を固形粉末ファンデーションによる被覆率として求めた。得られた被覆率から、のびを以下の基準で評価した。
◎ 被覆率95%以上
○ 被覆率85%以上95%未満
△ 被覆率75%以上85%未満
× 被覆率75%未満
【0058】
<密着性の評価>
上記のすべり、透明感、ツヤ感の評価試験で得られた塗布膜上に粘着テープ(ニチバン製セロテープ)をのせ、指の腹で軽く押さえて貼りつけた後、粘着テープを剥離した。剥離後の人工皮革上の塗布膜を再度ファイバーマイクロスコープ(200倍)で撮影した画像より、のびの評価試験と同様にして剥離後被覆率を求めた。のびの評価試験で得られた被覆率と、本試験で得られた剥離後被覆率とから残留率(=100×剥離後被覆率/被覆率)を求め、密着性を以下の基準で評価した。
◎ 残留率95%以上
○ 残留率85%以上95%未満
△ 残留率75%以上85%未満
× 残留率75%未満
【0059】
<ツノ光の評価>
市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーション表面の同じ箇所を強くこすり、表面にテカリが生じるまでの回数を確認し、以下の基準でツノ光を評価した。
◎ 往復20回こすってもテカリが生じない
○ 往復11〜20回でテカリが生じる
△ 往復6〜10回でテカリが生じる
× 往復5回以下でテカリが生じる
【0060】
<耐衝撃性>
固形粉末ファンデーションを、50cmの高さからビニルクロス張りの床にくり返し落下させ、かけや割れなどの異常が生じるまでの回数を測定し、以下の基準で耐衝撃性を評価した。
◎ 20回落下で異常なし
○ 11〜20回で異常発生
△ 6〜10回で異常発生
× 5回以下で異常発生
【0061】
<塗布時の柔らかさ、塗布後のしっとり感の評価>
市販のファンデーション用スポンジで固形粉末ファンデーションを下腕内側に塗布したときの使用感を5名のパネラーにより以下の基準で採点し、その平均点を求め、以下の基準で塗布時の柔らかさおよび塗布後のしっとり感を評価した。
(塗布時の柔らかさの採点基準)
4 塗布時の柔らかさが非常に強い
3 塗布時の柔らかさが強い
2 塗布時の柔らかさがふつう
1 塗布時の柔らかさがあまりない
0 塗布時の柔らかさが全くない
(塗布後のしっとり感の採点基準)
4 塗布後のしっとり感が非常に強い
3 塗布後のしっとり感が強い
2 塗布後のしっとり感がふつう
1 塗布後のしっとり感があまりない
0 塗布後のしっとり感が全くない
(評価基準)
◎ 平均点が3.0以上
○ 平均点が2.0以上3.0未満
△ 平均点が1.0以上2.0未満
× 平均点が1.0未満
【0062】
【表1-1】
【0063】
【表1-2】
【0064】
【表1-3】
【0065】
【表1-4】
【0066】
【表1-5】
【0067】
実施例1〜8の固形粉末ファンデーションは、粉取れ、すべり、透明感、ツヤ感、滑らかさ、のび、密着性、ツノ光、および耐衝撃性のすべてにおいて良好であった。また、実施例1〜5の固形粉末ファンデーションは、塗布時の柔らかさおよび塗布後のしっとり感も良好であった。これらの中で実施例2〜8の固形粉末ファンデーションがより好ましく、実施例2〜4および8の固形粉末ファンデーションが更に好ましく、実施例2の固形粉末ファンデーションが特に好ましかった。
【0068】
一方、比較例2の固形粉末ファンデーションは、すべり、透明感、塗布時の柔らかさ、および塗布後のしっとり感において不良であり、ツヤ感、密着性および耐衝撃性において満足のいくものではなかった。比較例3の固形粉末ファンデーションは、ツヤ感において不良であり、すべり、滑らかさ、のびおよびツノ光において満足のいくものではなかった。比較例4の固形粉末ファンデーションは、ツヤ感、滑らかさ、のび、およびツノ光において不良であり、粉取れおよび塗布時の柔らかさにおいて満足のいくものではなかった。
【0069】
表2〜7に別の態様の本発明の化粧料を示す。なお、表2〜7に示す数値の単位は重量%である。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の化粧料組成物は、肌や唇の色のコントロールおよび/または着色、および/または紫外線遮蔽を目的とする種々の用途に用いることができる。