(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記希土類元素が、ランタン、ネオジム、サマリウム、エルビウム及びイッテルビウムから選ばれる少なくとも1つの元素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一方の面に形成された正極合剤層とを含み、前記正極合剤層は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の正極活物質と、バインダーと、導電剤とを含む、非水電解液二次電池用正極。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について以下に説明する。本実施形態は、本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態の一例である非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物の表面の一部に、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物が接触している。このように、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面に接触していることで、リチウム遷移金属複合酸化物と電解液間のリチウムイオンの受け入れに関する活性化エネルギーが低下し、イオン伝導性が向上するため、低温時の放電性能を向上させることができる。
【0017】
但し、上記化合物の一部はリチウム遷移金属複合酸化物の内部に存在していても良い。また、上記化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の表面に接触している場合、上記化合物は、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子の表面にのみならず一次粒子の表面に接触していても良い。これは、リチウム遷移金属複合酸化物の一次粒子または二次粒子の少なくともいずれかに上記化合物が接触することにより、リチウム遷移金属複合酸化物と電解液間のリチウムイオンの受け入れに関する活性化エネルギーが低下し、それによってイオン伝導性が向上するためである。
【0018】
ここで、希土類元素とケイ酸を含む化合物の代表的な組成式としては、例えばLn
2Si
2O
5、Ln
2SiO
7、あるいはA
xLn
ySiO
z(A=アルカリ金属元素、Ln=希土類元素、0≦x<4、0<y≦2、zは化合物の電荷を0にする値)で表される化合物が挙げられる。上記希土類元素とケイ酸を含む化合物は、希土類元素とケイ酸とアルカリ金属元素からなる化合物や、希土類元素とケイ酸からなる化合物であることがより好ましく、中でも、希土類元素とケイ酸からなる化合物であることが好ましい。
【0019】
一方、希土類元素とホウ酸を含む化合物の代表的な組成式としては、例えばLnBO
3、A
aLn
b(BO
3)
3(A=アルカリ金属元素、Ln=希土類元素、0≦a<3、0<b≦2)、あるいはB
cLn
d(BO
3)
4(B=アルカリ土類金属元素、Ln=希土類元素、0≦c<3、0<d≦2)で表される化合物が挙げられる。上記希土類元素とホウ酸を含む化合物は、希土類元素とホウ酸とアルカリ金属元素からなる化合物や、希土類元素とホウ酸からなる化合物であることがより好ましく、中でも、希土類元素とホウ酸からなる化合物であることが好ましい。
【0020】
また、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物は、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に固着されていることが望ましい。希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物が、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に接触しており、且つその表面に固着していれば、上述した作用効果が長期間に亘って発現され易い。これは、このような構成の正極活物質であれば、導電剤等と混錬した場合に、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物がリチウム遷移金属複合酸化物から剥がれ難く、当該化合物が固着された状態が維持され易いからである。
【0021】
また、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物の平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが望ましい。上記化合物の平均粒子径が1nm未満であると、上記化合物の電子伝導性が乏しいため、遷移金属複合酸化物表面を緻密に覆うことで電子の授受がし難くなり、放電性能の低下を招く恐れがある。一方、上記化合物の平均粒子径が100nmを超えると、リチウム遷移金属複合酸化物との接触面積が小さくなるため、リチウム遷移金属複合酸化物と電解液間で生じる、電解液の分解などの副反応を抑制する効果やリチウムイオン移動に伴う活性化エネルギーを抑制する効果などを発揮し難くなる。
【0022】
本実施形態の一例である非水電解質二次電池用正極は、正極集電体と、当該正極集電体の少なくとも一方の面に形成された正極合剤層とを含み、当該正極合剤層には、表面に希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物が接触したリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質と、バインダーと、導電剤とが含まれている。
【0023】
ここで、本実施形態の一例である非水電解質二次電池用正極活物質を製造するにあたっては、リチウム遷移金属複合酸化物と、ケイ酸塩及び/又はホウ酸塩を含む懸濁液に、希土類元素塩を溶解した溶液を加える。
【0024】
ここで、上記方法を用いる場合には、上記懸濁液のpHは6以上10以下であることが望ましい。これは、pHが6未満になると、リチウム遷移金属複合酸化物が溶解してしまうことがある。一方、pHが10を超えると、希土類元素を含む化合物を溶解した溶液を加えた際に、希土類の水酸化物等の不純物が生成することがあるからである。pHの調整は、酸性或いは塩基性の水溶液を用いて行うことができ、例えば、酸性溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸、蟻酸、シュウ酸などの有機酸を含む溶液などが挙げられ、塩基性溶液としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニウムなどを含む溶液などが挙げられる。
【0025】
このような方法により、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物を接触させる(上記方法であれば固着させる)ことができる。特に、上記方法を用いたときには、上記化合物をリチウム遷移金属複合酸化物の表面に固着させるのみならず、均一に分散して固着させることも可能となるので、低温での放電特性をより一層向上させることができる。
【0026】
但し、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に上記化合物を接触させる方法としては、前述した方法に限定されるものではなく、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物の粉末と、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物の粉末を機械的に混合する方法を用いても良い。機械的に混合する方法には、例えば、らいかい機、ボールミル装置、メカノフュージョン、ノビルタなどの乾式粒子混合機などを用いることができる。また、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に上記化合物を接触(固着)させる方法としては、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子粉末を攪拌しながら、この粒子粉末に、希土類塩を溶解した溶液と、ケイ酸塩及び/又はホウ酸塩を溶解した溶液とを、別々に噴霧或いは滴下する方法、又は、リチウム遷移金属複合酸化物の粒子粉末を攪拌しながら、この粒子粉末に、希土類塩と、ケイ酸塩及び/又はホウ酸塩とを一緒に溶解した溶液を噴霧或いは滴下する方法でもよい。
【0027】
上記機械的に混合する方法を用いた場合、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物の粉末は、リチウム遷移金属複合酸化物の粉末と部分的には接触しているものの、リチウム遷移金属複合酸化物に密着して固着した状態とはならない。このため、機械的に混合する方法を用いた場合には、正極合剤スラリー作製時に上記化合物粉末がリチウム遷移金属複合酸化物から脱離しやすくなり、電解液の分解などの副反応を抑制する効果やリチウムイオン移動に伴う活性化エネルギーを抑制する効果などを発揮し難くなる恐れがある。
一方、上述のリチウム遷移金属複合酸化物の表面に上記化合物を接触(固着)させる方法を用いた場合には、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物が、リチウム遷移金属複合酸化物上で析出するため、リチウム遷移金属複合酸化物と密着して固着した状態となるために、上記化合物とリチウム遷移金属複合酸化物とが一体化してなる粉末として存在するようになる。これにより、正極合剤スラリー作製時に上記化合物粉末がリチウム遷移金属複合酸化物から脱離しにくくなるため、電解液の分解などの副反応を抑制する効果やリチウムイオン移動に伴う活性化エネルギーを抑制する効果などを発揮しやすい。
【0028】
上記より、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に上記化合物を接触させる方法としては、機械的に混合する方法よりも、上述のリチウム遷移金属複合酸化物の表面に上記化合物を接触(固着)させる方法の方がより好ましい。
【0029】
ここで、上記リチウム遷移金属複合酸化物に対する、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物の割合は、希土類元素換算で、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが望ましい。当該割合が0.01質量%未満ではリチウム遷移金属複合酸化物の表面に付着している化合物の量が過小となって、十分な効果を得ることができないことがある一方、当該割合が2.0質量%を超えると、活物質同士或いは活物質と導電剤或いは活物質と集電体などの間で、電子の授受がし難くなることに起因して、電池の充放電特性の低下を招くためである。
【0030】
上記ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸、ケイ酸アンモニウム、或いはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ヘキサフルオロケイ酸塩などのアルカリ(アルカリ土類)金属とケイ酸の化合物、及び、ケイ酸エチルなどのシリコンアルコキシドなどが挙げられる。
【0031】
一方、上記ホウ酸塩としては、例えば、酸化ホウ素、ホウ酸、またはホウ酸アンモニウム、メタホウ酸、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸カリウムなどのホウ酸塩、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ酸塩、テトラヒドロホウ酸ナトリウムなどのテトラヒドロホウ酸塩、テトラフルオロほう酸リチウム、テトラフルオロほう酸ナトリウム、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどのフルオロホウ酸塩、ペルオキソホウ酸ナトリウム、ペルオキソホウ酸カリウムなどのペルオキソホウ酸塩などが挙げられる。
【0032】
上記ケイ酸塩及び/又はホウ酸塩の添加量としては、希土類元素換算で1質量%に対して、ケイ素元素換算及び/又はホウ素元素換算で0.01質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。ケイ酸塩及び/又はホウ酸塩の添加量が0.01質量%以下であると、希土類元素塩とケイ酸塩及び/又はホウ酸塩を含む化合物の効果が乏しくなり、また10質量%を超えると、当該化合物の添加量が多すぎて無駄になるからである。
【0033】
尚、希土類塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、シュウ酸塩などが挙げられる。また、希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどから選ばれる少なくとも1つの元素が挙げられ、中でも、ランタン、ネオジム、サマリウム、エルビウム及びイッテルビウムの少なくとも1つの元素であることがより好ましい。
【0034】
上記リチウム遷移金属複合酸化物表面に、希土類元素とケイ酸及び/又はホウ酸を含む化合物を接触(固着)させた後、これを600℃以下で熱処理することが望ましい。つまり、上記方法で作製した正極活物質を、作製後に酸化性雰囲気、還元性雰囲気又は減圧状態の下で熱処理することがある。この熱処理において熱処理温度が600℃を超えると、温度の高温化に伴い、リチウム遷移金属複合酸化物表面に固着した化合物が分解したり、当該化合物が凝集してしまうだけでなく、当該化合物がリチウム遷移金属複合酸化物の内部に拡散してしまう。このようなことが生じると、電解液と正極活物質との反応を抑制する効果が低下することがある。したがって、熱処理する場合には、熱処理温度は600℃以下で熱処理することが望ましい。但し、水分を適切に除去すべく、熱処理温度は80℃以上であることが好ましい。
【0035】
(その他の事項)
(1)本発明における正極活物質としては、コバルト、ニッケル、マンガンなどの遷移金属を含むリチウム含有遷移金属複合酸化物が挙げられる。具体的には、コバルト酸リチウム、Ni−Co−Mnのリチウム複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム複合酸化物、Co−Mnのリチウム複合酸化物、鉄、マンガンなどを含む遷移金属のオキソ酸塩(LiMPO
4、Li
2MSiO
4、LiMBO
3で表され、MはFe、Mn、Co、Niから選択される)が例示される。また、これらを単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0036】
(2)上記リチウム含有遷移金属複合酸化物には、Al、Mg、Ti、Zr等の物質を固溶していたり、粒界に含まれていても良い。また、その表面には、アルカリ金属元素とフッ素元素と希土類元素とを含む化合物の他、Al、Mg、Ti、Zr等の化合物も固着していても良い。これらの化合物が固着されていても、電解液と正極活物質との接触を抑制できるからである。
【0037】
(3)上記Ni−Co−Mnのリチウム複合酸化物としては、NiとCoとMnとのモル比が、1:1:1の他に、5:3:2、6:2:2、7:1:2、7:2:1、8:1:1等の、公知の組成のものを用いることができるが、特に、正極容量を増大させうるように、NiやCoの割合がMnより多いものを用いることが好ましく、NiとCoとMnのモルの総和に対するNiとMnのモル率の差は、0.05%以上であることが好ましい。
【0038】
(4)本発明に用いる非水電解質の溶媒は限定するものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物や、プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物や、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物や、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等のニトリルを含む化合物や、ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物等を用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0039】
(5)本発明に用いる非水電解質の溶質についても特に限定するものではなく、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF
6、LiBF
4、LiN(SO
2F)
2、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiPF
6−x(C
nF
2n−1)
x(ただし、1<x<6、n=1または2)等の他に、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩、LiPF
2O
2等の塩等が挙げられる。
【0040】
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB〔リチウム−ビスオキサレートボレート〕の他、中心原子にC
2O
42−が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C
2O
4)
xR
y](式中、Mは遷移金属,周期律表のIIIb族,IVb族,Vb族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C
2O
4)F
2]、Li[P(C
2O
4)F
4]、Li[P(C
2O
4)
2F
2]等がある。但し、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
【0041】
尚、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
【0042】
(6)本発明に用いる負極としては、従来から用いられてきた負極を用いることができ、特に、リチウムを吸蔵放出可能な炭素材料、あるいはリチウムと合金化可能な金属またはその金属を含む合金化合物が挙げられる。
炭素材料としては、天然黒鉛や難黒鉛化性炭素、人造黒鉛等のグラファイト類、コークス類等を用いることができ、合金化合物としては、リチウムと合金化可能な金属を少なくとも1種類含むものが挙げられる。特に、リチウムと合金形成可能な元素としてはケイ素やスズであることが好ましく、これらが酸素と結合した、酸化ケイ素や酸化スズ等も用いることもできる。また、上記炭素材料とケイ素やスズの化合物とを混合したものを用いることができる。
上記の他、エネルギー密度は低下するものの、負極材料としてはチタン酸リチウム等の金属リチウムに対する充放電の電位が、炭素材料等より高いものも用いることができる。
【0043】
(7)正極とセパレータとの界面、又は、負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーからなる層を形成することができる。フィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物等で処理されているものを用いることができる。
上記フィラー層の形成は、正極、負極、或いはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、或いはセパレータに貼り付ける方法等を用いることができる。
【0044】
(8)本発明に用いるセパレータとしては、従来から用いられてきたセパレータを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレン層の表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
【実施例】
【0045】
以下、この発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質、正極及び電池を以下に説明する。尚、この発明における非水電解質二次電池用正極活物質、正極及び電池は、下記の形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0046】
〔第1実験例〕
(実験例1)
[正極活物質の作製]
先ず、コバルト酸リチウムに対してMg及びAlを各1.0モル%固溶し、且つZrを0.04モル%含有したコバルト酸リチウム粒子1000gを用意し、この粒子を3.0Lの純水に添加し攪拌して、コバルト酸リチウムが分散した懸濁液を調製した。次に、この懸濁液に、100mLの純水にケイ酸ナトリウム1.45g(ケイ素元素換算で、0.014質量%)を溶解させた水溶液を加えた。次いで、上記懸濁液に、硝酸エルビウム5水和物2.26g(エルビウム元素換算で、0.085質量%)が200mLの純水に溶解された水溶液を加えた。尚、上記懸濁液に硝酸エルビウム5水和物が溶解された溶液を加える間、懸濁液に10質量%の硝酸水溶液、或いは、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えて、pHを7に調整した。
【0047】
この後、上記硝酸エルビウム5水和物溶液の添加終了後に、吸引濾過し、更に水洗を行い、得られた粉末を120℃で乾燥して、上記コバルト酸リチウムの表面に、エルビウムとケイ酸とを含む化合物が均一に分散して固着したものを得た。その後、得られた粉末を300℃で5時間空気中にて熱処理することにより正極活物質粉末を得た。
【0048】
ここで、得られた正極活物質について、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してエルビウム元素換算で、0.085質量%、ケイ素元素換算で、0.014質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
【0049】
上記コバルト酸リチウムの表面に固着したエルビウムとケイ酸とを含む化合物は、その殆どがエルビウムとケイ酸からなる化合物(Er
2Si
2O
5)であった。ただし、エルビウムとケイ酸とアルカリ金属元素からなる化合物がコバルト酸リチウムの表面に固着していることがある。
【0050】
[正極の作製]
上記正極活物質粉末と、正極導電剤としてのカーボンブラック(アセチレンブラック)粉末(平均粒径:40nm)と、正極バインダー(結着剤)としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、質量比で95:2.5:2.5の割合になるように、NMP溶液中で混練し正極合剤スラリーを調製した。最後に、この正極合剤スラリーを、アルミニウム箔から成る正極集電体の両面に塗布、乾燥した後、圧延ローラにより圧延することにより、正極集電体の両面に正極合剤層が形成された正極を作製した。なお、正極の充填密度は、3.7g/cm
3とした。
【0051】
[負極の作製]
先ず、負極活物質としての人造黒鉛と、分散剤としてのCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)と、結着剤としてのSBR(スチレン−ブタジエンゴム)とを、98:1:1の質量比で水溶液中において混合し、負極合剤スラリーを調製した。次に、この負極合剤スラリーを銅箔から成る負極集電体の両面に均一に塗布した後、乾燥させ、更に、圧延ローラにより圧延した。これにより、負極集電体の両面に負極合剤層が形成された負極を得た。尚、この負極における負極活物質の充填密度は1.60g/cm
3であった。
【0052】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、3:7の体積比で混合した混合溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解させて、非水電解液を調製した。
【0053】
[電池の作製]
上記正負極それぞれに正極集電タブ3、負極集電タブ4を取り付け、これら両極間にセパレータを配置して渦巻き状に巻回した後、巻き芯を引き抜いて渦巻状の電極体を作製した。次に、この渦巻状の電極体を押し潰して、偏平型の電極体5を得た。この後、この偏平型電極体5と上記非水電解液とを、アルミニウムラミネート製の外装体1内に配置し、アルミニウムネート外装体のヒートシート開口部2を加熱して溶着し、
図1及び
図2に示した構造の非水電解質二次電池を作製した。尚、当該非水電解質二次電池のサイズは、3.6mm×35mm×62mmであり、また、当該非水電解質二次電池を4.40Vまで充電し、2.75Vまで放電したときの放電容量は750mAhであった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A1と称する。
【0054】
(実験例2)
ケイ酸ナトリウム1.45gに代えてケイ酸ナトリウム2.9g(ケイ素元素換算で、0.028質量%)を用い、硝酸エルビウム5水和物2.26gに代えて硝酸エルビウム5水和物4.53g(エルビウム元素換算で、0.171質量%)を用いたこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してエルビウム元素換算で、0.171質量%、ケイ素元素換算で、0.028質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A2と称する。
【0055】
(実験例3)
熱処理条件を、空気中にて300℃で5時間熱処理に代えて、空気中にて120℃2時間熱処理に変更したこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してエルビウム元素換算で、0.085質量%、ケイ素元素換算で、0.014質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A3と称する。
【0056】
(実験例4)
コバルト酸リチウムとケイ酸ナトリウムとを含む懸濁液のpHを7から9に代えたこと以外は、実験例2と同様にして活物質及び電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してエルビウム元素換算で、0.171質量%、ケイ素元素換算で、0.028質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A4と称する。
【0057】
(実験例5)
硝酸エルビウム5水和物2.26gに代えて、硝酸ランタン6水和物2.21gを用いたこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してランタン元素換算で、0.071質量%、ケイ素元素換算で、0.014質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A5と称する。
【0058】
(実験例6)
硝酸エルビウム5水和物2.26gに代えて、硝酸ネオジム6水和物2.24gを用いたこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してネオジム元素換算で、0.074質量%、ケイ素元素換算で、0.014質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A6と称する。
【0059】
(実験例7)
硝酸エルビウム5水和物2.26gに代えて、硝酸サマリウム6水和物2.27gを用いたこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してサマリウム元素換算で、0.077質量%、ケイ素元素換算で、0.014質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A7と称する。
【0060】
(実験例8)
硝酸エルビウム5水和物2.26gに代えて、硝酸イッテルビウム3水和物2.11gを用いたこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してイッテルビウム元素換算で、0.088質量%、ケイ素元素換算で、0.014質量%であった。また、希土類元素とケイ素元素のモル比は、1:1であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A8と称する。
【0061】
(実験例9)
コバルト酸リチウムの表面にエルビウムとケイ酸とを含む化合物を固着しなかった正極活物質(非表面改質正極活物質)を用いたこと以外は、実験例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池をA9と称する。
【0062】
(実験例10)
100mLの純水にケイ酸ナトリウム1.45gを溶解させた水溶液を加えず、純水のみを用いたこと、硝酸エルビウム5水和物を4.53gに代えて2.26gにしたこと以外は、実験例4と同様にして電池を作製した。尚、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してエルビウム元素換算で、0.085質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A10と称する。
【0063】
(実験)
上記の電池A1〜A10について、下記条件にて充放電した。
【0064】
[1サイクル目の充放電条件]
・1サイクル目の充電条件
1.0It(750mA)の電流で電池電圧が4.40Vとなるまで定電流充電を行い、更に、4.40Vの電圧で電流値が37.5mAとなるまで定電圧充電を行った。
・1サイクル目の放電条件
1.0It(750mA)の電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
・休止
上記充電と放電との間の休止間隔は10分間とした。
【0065】
[25℃の放電容量の測定]
25℃にて上記の条件で充放電サイクル試験を1回行って、放電容量Q1(25℃の放電容量Q1)を測定した。
【0066】
[−20℃の放電容量の測定]
25℃にて、1.0It(750mA)の電流で電池電圧4.40Vとなるまで定電流充電を行った後、4.40Vの定電圧で電流が(1/20)It(37.5mA)になるまで充電した。次に、−20℃の恒温槽に4時間放置した後、1.0It(750mA)の電流で電池電圧2.75Vとなるまで定電流放電を行って、放電容量Q2(−20℃の放電容量Q2)を測定した。
【0067】
25℃放電容量
下記(1)式から低温放電容量維持率を求めた。これらの結果を表1に示す。
低温放電容量維持率(%)=(−20℃の放電容量Q2/25℃の放電容量Q1)×100(%)・・・・(1)
【0068】
【表1】
【0069】
表1から明らかなように、エルビウムとケイ酸を含む化合物で表面改質したコバルト酸リチウムを用いた電池A1〜A8は、電池A9,A10に比べて、低温時の放電容量維持率が高くなることがわかる。
上記のような結果となったのは、以下に示す理由によるものと考えられる。即ち、電池A1〜A8では、コバルト酸リチウムの表面に固着したエルビウムとケイ酸を含む化合物の存在により、コバルト酸リチウム表面と電解液間のリチウムイオンの受け入れに関する活性化エネルギーを低下させ、それによってイオン伝導性が向上することで、低温での放電性能が飛躍的に向上したものと考えられる。これに対して、電池A9ではエルビウムとケイ酸を含む化合物が存在しておらず、このような効果は発揮されない。また、A10ではオキシ水酸化エルビウムは存在しているが、オキシ水酸化エルビウムがケイ酸との化合物を形成していないため、このような相乗効果を十分に発揮しえず、低温時の放電容量維持率が向上しないものと考えられる。
【0070】
〔第2実験例〕
(実験例11)
[正極活物質の作製]
先ず、コバルト酸リチウムに対してMg及びAlを各1.0モル%固溶し、且つZrを0.04モル%含有したコバルト酸リチウム粒子1000gを用意した。次に、コバルト酸リチウム粒子1000gを攪拌しながら、この粒子に、硝酸エルビウム5水和物2.26g(エルビウム元素換算で、0.085質量%)が50mLの純水に溶解された水溶液と、ホウ酸アンモニウム8水和物0.28g(ホウ素元素換算で、0.006質量%)が50mLの純水に溶解された水溶液とを、別々に噴霧して混合した。
【0071】
この後、上記水溶液の噴霧終了後に、得られた粉末を120℃で乾燥して、上記コバルト酸リチウムの表面に、エルビウムとホウ酸とを含む化合物が固着したものを得た。その後、得られた粉末を300℃で5時間空気中にて熱処理することにより正極活物質粉末を得た。
【0072】
ここで、得られた正極活物質について、ICPにより測定したところ、コバルト酸リチウムに対してエルビウム元素換算で、0.085質量%、ホウ素元素換算で、0.06質量%であった。また、希土類元素とホウ素元素のモル比は、1:1であった。
【0073】
上記コバルト酸リチウムの表面に固着したエルビウムとホウ酸とを含む化合物は、その殆どがエルビウムとホウ酸からなる化合物(ErBO
3)であった。ただし、エルビウムとホウ酸とアルカリ金属元素からなる化合物がコバルト酸リチウムの表面に固着していることがある。
【0074】
上記で得た正極活物質粉末を用いたこと以外は、上記実験例1と同様にして電池を作製した。このようにして作製した二次電池を、以下、電池B1と称する。
【0075】
上記の電池B1について、上記電池A1〜A10と同様にして充放電し、低温放電容量維持率を求めた。この結果を、電池A9及び電池A10と纏めて表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2から明らかなように、エルビウムとホウ酸を含む化合物で表面改質したコバルト酸リチウムを用いた電池B1は、エルビウムとケイ酸を含む化合物で表面改質したコバルト酸リチウムを用いた上記電池A1〜A8と同様に、電池A9及びA10に比べて低温時の放電容量維持率が高くなっていることがわかる。このことから、コバルト酸リチウムの表面にエルビウムとケイ酸を含む化合物が固着した場合も、上述のコバルト酸リチウムの表面にエルビウムとケイ酸を含む化合物が固着した場合と同様に、イオン伝導性が向上する効果が得られていると考えられる。