特許第6233410号(P6233410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233410
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/012 20060101AFI20171113BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01G9/05 E
   H01G9/24 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-518162(P2015-518162)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2014061213
(87)【国際公開番号】WO2014188833
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-105684(P2013-105684)
(32)【優先日】2013年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕二
(72)【発明者】
【氏名】黒見 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤本 耕治
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−79463(JP,A)
【文献】 特開2005−26257(JP,A)
【文献】 特開2001−267186(JP,A)
【文献】 特開平2−263424(JP,A)
【文献】 特開2002−319522(JP,A)
【文献】 特開平6−84716(JP,A)
【文献】 特開昭63−107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00 − 9/012
H01G 9/04 − 9/055
H01G 9/06
H01G 9/08 − 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部とその表面に沿って形成される粗面部とを有する弁作用金属基体と、前記粗面部上に形成された誘電体皮膜と、前記誘電体皮膜上に形成された固体電解質層と、前記固体電解質層上に形成された集電体層と、をもってそれぞれ構成された、複数のコンデンサ素子が積層されてなるもので、複数の前記コンデンサ素子の各前記集電体層が互いに電気的に接続されている、積層体と、
前記弁作用金属基体の一方端面を第1の端面上に露出させた状態で、前記積層体を覆う電気絶縁性の外装と、
前記外装の前記第1の端面上、および当該第1の端面に隣接する側面の一部上に設けられ、かつ前記弁作用金属基体の前記芯部と電気的に接続された、陽極側外部電極と、
前記外装の前記第1の端面に対向する第2の端面上に設けられ、かつ前記集電体層と電気的に接続された、陰極側外部電極と、
を備え、
前記陽極側外部電極は、前記弁作用金属基体の前記芯部と直接接する第1導電層とその上に形成される第2導電層とを含み、
前記第1導電層は、隣り合う少なくとも2つの前記コンデンサ素子の各前記弁作用金属基体の前記芯部を互いに電気的に接続するように、前記弁作用金属基体の前記一方端面およびその周囲に位置する前記外装の前記第1の端面全体を覆うとともに、当該第1の端面に隣接する側面の一部にまで延びるようにドライプロセスによって形成されている、
固体電解コンデンサ。
【請求項2】
芯部とその表面に沿って形成される粗面部とを有する弁作用金属基体と、前記粗面部上に形成された誘電体皮膜と、前記誘電体皮膜上に形成された固体電解質層と、前記固体電解質層上に形成された集電体層と、をもってそれぞれ構成された、複数のコンデンサ素子が積層されてなるもので、複数の前記コンデンサ素子の各前記集電体層が互いに電気的に接続されている、積層体を用意する工程と、
前記弁作用金属基体の一方端面を第1の端面上に露出させた状態で、前記積層体を覆う電気絶縁性の外装を設ける工程と、
前記外装の前記第1の端面上、および当該第1の端面に隣接する側面の一部上に、前記弁作用金属基体の前記芯部と電気的に接続された、陽極側外部電極を設ける工程と、
前記外装の前記第1の端面に対向する第2の端面上に、前記集電体層と電気的に接続された、陰極側外部電極を設ける工程と、
を備え、
前記陽極側外部電極を設ける工程は、隣り合う少なくとも2つの前記コンデンサ素子の各前記弁作用金属基体の前記芯部を互いに電気的に接続するように、前記弁作用金属基体の前記一方端面およびその周囲に位置する前記外装の前記第1の端面全体を覆うとともに、当該第1の端面に隣接する側面の一部にまで延びるように、前記弁作用金属基体の前記芯部と直接接する第1導電層をドライプロセスによって形成する工程と、前記第1導電層上に第2導電層を形成する工程とを含む、
固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記陽極側外部電極を設ける工程の前に、前記積層体を乾燥する工程をさらに備える、請求項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体電解コンデンサおよびその製造方法に関するもので、特に、固体電解コンデンサ内部への不所望な水分浸入を抑制するための改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明にとって興味ある固体電解コンデンサとして、たとえば特許第4439848号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1には、一実施形態として、図4に示すような構造の固体電解コンデンサが開示されている。
【0003】
図4を参照して、固体電解コンデンサ1は、複数のコンデンサ素子2が積層されてなる積層体3を備える。各コンデンサ素子2は、芯部としてのアルミニウム層4と、アルミニウム層4の表面に形成された粗面部としての多孔質層5とを有する弁作用金属基体6を備える。多孔質層5の表面には、誘電体皮膜(図示せず。)が形成され、誘電体皮膜上には、固体電解質層7が形成され、固体電解質層7上には、集電体層8が形成される。
【0004】
複数のコンデンサ素子2は、導電性接着剤9を介して互いに接合されることにより、積層体3を構成する。導電性接着剤9は、隣り合うコンデンサ素子2間を互いに機械的に固定するとともに、隣り合うコンデンサ素子2の各集電体層8間を互いに電気的に接続する。特定のコンデンサ素子2間には、たとえば銅からなる陰極端子部材10が挿入され、集電体層8と電気的に接続される。
【0005】
積層体3は、電気絶縁性の樹脂からなる外装11によって覆われる。このとき、弁作用金属基体6の一方端面12は、外装11の第1の端面13上に露出し、陰極端子部材10の一方端面15は、外装11の第1の端面13に対向する第2の端面14上に露出するようにされる。
【0006】
外装11の第1の端面13上には、陽極側外部電極16が設けられ、第2の端面14上には、陰極側外部電極17が設けられる。陽極側外部電極16は、弁作用金属基体6のアルミニウム層4と電気的に接続され、陰極側外部電極17は、陰極端子部材10を介して集電体層8と電気的に接続される。
【0007】
弁作用金属基体6の端面12には、陽極側外部電極16の一部となる亜鉛層18が形成される。亜鉛層18は、外装11から露出するアルミニウム層4および誘電体皮膜を、亜鉛を含む水酸化ナトリウム溶液、または亜鉛を含むフッ化水素酸もしくはフッ化アンモニウム溶液に浸漬して亜鉛置換することによって形成される。亜鉛層18上には、陽極側外部電極16の一部となる第1ニッケル層19が形成される。第1ニッケル層19は、ニッケル塩と水酸化ホウ素化合物を含む溶液に浸漬することによって形成される。
【0008】
陽極側外部電極16は、さらに、第1ニッケル層19上の第2ニッケル層20、その上の銅層21、その上の第3ニッケル層22、およびその上の錫層23を有する。上記第2ニッケル層20は無電解めっき法により形成され、銅層21、第3ニッケル層22および錫層23は電解めっき法により形成される。
【0009】
陰極側外部電極17は、陽極側外部電極16にも備える第2ニッケル層20、その上の銅層21、その上の第3ニッケル層22、およびその上の錫層23を備える。陽極側外部電極16の場合と同様、陰極側外部電極17における上記第2ニッケル層20は無電解めっき法により形成され、銅層21、第3ニッケル層22および錫層23は電解めっき法により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4439848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した固体電解コンデンサ1において、多孔質層5や、多孔質層5と外装11との間に不所望な水分が存在している可能性がある。このような水分は、多くの場合、陽極側外部電極16を形成する工程において外部から浸入したものである。たとえば、亜鉛層18を形成するために、亜鉛を含む水酸化ナトリウム溶液、または亜鉛を含むフッ化水素酸もしくはフッ化アンモニウム溶液に浸漬したり、第1ニッケル層19を形成するために、ニッケル塩と水酸化ホウ素化合物を含む溶液に浸漬したりする工程において、水分が浸入しやすい。特に、弁作用金属基体6のアルミニウム層4に直接接する亜鉛層18は、弁作用金属基体6の端面12のみを覆うように形成されるにすぎないので、その後の第1ニッケル層19の形成のためのニッケル塩と水酸化ホウ素化合物を含む溶液への浸漬時において、水分浸入を招きやすい。
【0012】
上述のように、多孔質層5や、多孔質層5と外装11との間に不所望な水分が存在していると、この固体電解コンデンサ1の実装時にユーザ側で実施されるリフロー工程において、水分が気化・膨張し、そのため、外装11に膨れが生じることがある。このような外装11の膨れは、固体電解コンデンサ1の形状不良や実装不良をもたらす。また、このような現象は、外装11の厚みが薄い小型低背品においてより顕著に生じる。
【0013】
そこで、この発明の目的は、上述したような水分浸入の問題を低減し得る、固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、
芯部とその表面に沿って形成される粗面部とを有する弁作用金属基体と、粗面部上に形成された誘電体皮膜と、誘電体皮膜上に形成された固体電解質層と、固体電解質層上に形成された集電体層と、をもってそれぞれ構成された、複数のコンデンサ素子が積層されてなるもので、複数のコンデンサ素子の各集電体層が互いに電気的に接続されている、積層体と、
弁作用金属基体の一方端面を第1の端面上に露出させた状態で、積層体を覆う電気絶縁性の外装と、
外装の第1の端面上、および当該第1の端面に隣接する側面の一部上に設けられ、かつ弁作用金属基体の芯部と電気的に接続された、陽極側外部電極と、
外装の第1の端面に対向する第2の端面上に設けられ、かつ集電体層と電気的に接続された、陰極側外部電極と、
を備える、固体電解コンデンサにまず向けられる。
【0015】
この発明に係る固体電解コンデンサは、上述した技術的課題を解決するため、陽極側外部電極が、弁作用金属基体の芯部と直接接する第1導電層とその上に形成される第2導電層とを含み、第1導電層は、隣り合う少なくとも2つのコンデンサ素子の各弁作用金属基体の芯部を互いに電気的に接続するように、弁作用金属基体の一方端面およびその周囲に位置する外装の第1の端面全体を覆うとともに、当該第1の端面に隣接する側面の一部にまで延びるようにドライプロセスによって形成されていることを特徴としている。
【0016】
第1導電層は、弁作用金属基体の一方端面およびその周囲に位置する外装の少なくとも一部を覆うように形成されているので、弁作用金属基体の粗面部への水分の浸入や粗面部と外装との間への水分の浸入を抑制するように作用する。
【0019】
この発明は、また、固体電解コンデンサの製造方法にも向けられる。
【0020】
この発明に係る固体電解コンデンサの製造方法は、
芯部とその表面に沿って形成される粗面部とを有する弁作用金属基体と、粗面部上に形成された誘電体皮膜と、誘電体皮膜上に形成された固体電解質層と、固体電解質層上に形成された集電体層と、をもってそれぞれ構成された、複数のコンデンサ素子が積層されてなるもので、複数のコンデンサ素子の各集電体層が互いに電気的に接続されている、積層体を用意する工程と、
弁作用金属基体の一方端面を第1の端面上に露出させた状態で、積層体を覆う電気絶縁性の外装を設ける工程と、
外装の第1の端面上に、および当該第1の端面に隣接する側面の一部上に、弁作用金属基体の芯部と電気的に接続された、陽極側外部電極を設ける工程と、
外装の第1の端面に対向する第2の端面上に、集電体層と電気的に接続された、陰極側外部電極を設ける工程と、
を備える。
【0021】
そして、上述した陽極側外部電極を設ける工程は、隣り合う少なくとも2つのコンデンサ素子の各弁作用金属基体の芯部を互いに電気的に接続するように、弁作用金属基体の一方端面およびその周囲に位置する外装の第1の端面全体を覆うとともに、当該第1の端面に隣接する側面の一部にまで延びるように、弁作用金属基体の芯部と直接接する第1導電層をドライプロセスによって形成する工程と、第1導電層上に第2導電層を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0023】
また、陽極側外部電極を設ける工程の前に、積層体を乾燥することが好ましい。これにより、陽極側外部電極を設ける前に、積層体の内部に残留する不所望な水分を除去しておくことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、第1導電層が、隣り合う少なくとも2つのコンデンサ素子の各弁作用金属基体の芯部を互いに電気的に接続するように、弁作用金属基体の一方端面およびその周囲に位置する外装の第1の端面全体を覆うとともに、当該第1の端面に隣接する側面の一部にまで延びるように形成されるので、弁作用金属基体の粗面部への水分の浸入や粗面部と外装との間への水分の浸入を抑制することができる。特に、第1導電層がドライプロセスによって形成されたものであるので、第1導電層を形成する工程での水分の浸入の懸念を回避することができる。したがって、固体電解コンデンサの実装時にユーザ側で実施されるリフロー工程において、水分が気化・膨張し、そのため、外装に膨れが生じる、といった問題を生じにくくすることができる。その結果、固体電解コンデンサの形状不良や実装不良を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明の一実施形態による固体電解コンデンサ31を示す断面図である。
図2】この発明の範囲外の参考例を説明するためのもので、外装43の第1の端面44上に設けられる陽極側外部電極47の一部となる第1導電層49の形成パターンを示す図である。
図3】この発明の他の実施形態を説明するためのもので、図1に示したコンデンサ素子32の製造途中の状態を示す断面図である。
図4】この発明にとって興味ある従来の固体電解コンデンサ1を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、この発明の一実施形態による固体電解コンデンサ31は、複数のコンデンサ素子32が積層されてなる積層体33を備える。各コンデンサ素子32は、弁作用金属基体34を備えている。弁作用金属基体34は、たとえばアルミニウム箔からなり、エッチング処理を施すことによって表面が粗面化され、それによって、アルミニウムからなる芯部35とその表面に沿って形成される多孔質の粗面部36とを有している。
【0027】
弁作用金属基体34の表面には、誘電体皮膜37(図1において、太線で示す。)が形成される。誘電体皮膜37は、たとえば、弁作用金属基体34の表面を酸化することによって形成される。なお、弁作用金属基体34の一方端面38は、誘電体皮膜37によって覆われず、露出した状態となっている。これは、弁作用金属基体34の端面38に露出した芯部35を陽極部として用いるためである。
【0028】
誘電体皮膜37上には、固体電解質層39が形成される。固体電解質層39の形成には、導電性高分子材料を用いて化学重合、電解重合などの方法が適用される。
【0029】
固体電解質層39上には、集電体層40が形成される。集電体層40は、固体電解質層39の表面に、たとえば、カーボンペーストおよび銀ペーストを付与することによって形成される。
【0030】
複数のコンデンサ素子32は、導電性接着剤41を介して互いに接合されることにより、積層体33を構成する。導電性接着剤41は、隣り合うコンデンサ素子32間を互いに機械的に固定するとともに、隣り合うコンデンサ素子32の各集電体層40間を互いに電気的に接続する。また、図示の例では、最も下のコンデンサ素子32の下面側には、たとえば銅からなる陰極端子部材42が配置される。陰極端子部材42は、導電性接着剤41を介して集電体層40と電気的に接続される。
【0031】
積層体33は、外装43によって覆われる。外装43は、金型を用いて、たとえばエポキシ樹脂などの電気絶縁性の樹脂を成形することによって形成される。通常、外装43の形成後において、弁作用金属基体34および陰極端子部材42の各々における外装43から突出した部分をそれぞれ切断することが行なわれる。これによって、図1に示すように、弁作用金属基体34の一方端面38が、外装43の第1の端面44上に露出する状態、および、陰極端子部材42の一方端面46が、外装43の第1の端面44に対向する第2の端面45上に露出する状態が得られる。前述した、弁作用金属基体34の一方端面38が誘電体皮膜37によって覆われない状態も、外装43の形成後に、弁作用金属基体34における外装43から突出した部分を切断することによって実現される。
【0032】
外装43を形成した後、好ましくは、外装43から露出した弁作用金属基体34の端面38および陰極端子部材42の端面46は純水で洗浄され、次いで、オーブン等を用いて十分に乾燥される。乾燥にあたっては、一例として、120℃にて10分といった条件が適用されるが、この条件は、状況に応じて変更されてもよい。また、真空中で乾燥させれば、たとえば粗面部36中に浸透した水分を効率良く除去することができる。
【0033】
外装43の第1の端面44上には、陽極側外部電極47が設けられ、第2の端面45上には、陰極側外部電極48が設けられる。陽極側外部電極47は、弁作用金属基体34の芯部35と電気的に接続され、陰極側外部電極48は、陰極端子部材42を介して集電体層40と電気的に接続される。
【0034】
陽極側外部電極47および陰極側外部電極48は、ともに、第1導電層49、第1導電層49上に形成される第2導電層50、および第2導電層50上に形成される第3導電層51を含む。陽極側外部電極47における第1導電層49は、弁作用金属基体34の芯部35と直接接し、電気的接続を達成する。陰極側外部電極48における第1導電層49は、陰極端子部材42と直接接し、電気的接続を達成する。
【0035】
なお、陰極端子部材42を備えず、集電体層40の一部が外装43の第2の端面45上に露出し、このように露出した集電体層40の一部と陰極側外部電極48における第1導電層49とが直接接するように構成されてもよい。
【0036】
第1導電層49、第2導電層50および第3導電層51は、それぞれ、以下のようにして形成される。
【0037】
まず、陽極側外部電極47における第1導電層49を形成するため、たとえば、スパッタリング、真空蒸着、CVDなどのドライプロセスを用いることが好ましい。特に、第1導電層49を、図1に示すように、外装43の端面44だけでなく、端面44に隣接する側面の一部にまで延びるように能率的に形成するためには、スパッタリングを用いることがより好ましい。
【0038】
第1導電層49を形成するため、スパッタリングが用いられる場合、スパッタ装置に、弁作用金属基体34の端面38が上になる姿勢で、積層体33および外装43を備える構造物が配置される。このとき、第1導電層49が不所望な領域にまで形成されないようにするため、外装43の側面に保護テープを貼るなど、マスクを施してもよい。
【0039】
第1導電層49は、5〜100nm程度の厚みとされる。また、第1導電層49の材質としては、弁作用金属基体34の端面38に対する良好な密着性を確保するため、チタンを用いることが好ましい。なお、チタン以外に、ニクロム、クロムなどを用いてもよい。
【0040】
この実施形態では、第1導電層49は、外装43の端面44全体を覆うように形成されている。したがって、スパッタ装置から取り出した後において、粗面部36や粗面部36と外装43間への水分の浸入をより確実に防ぐことができる。また、第1導電層49の形成にドライプロセスが適用されるので、第1導電層49自体の形成時に水分が浸入するといった懸念についても回避され得る。
【0041】
第1導電層49を形成した後、第2導電層50が形成される。水分浸入防止の点で、第2導電層50の形成にも、ドライプロセスが適用されることが好ましい。第2導電層50の形成にあたっても、好ましくは、スパッタリングが適用される。この場合、第1導電層49を形成した後、大気解放することなく連続して第2導電層50を形成することがより好ましい。これにより、第1導電層49と第2導電層50との密着強度を高めることができる。
【0042】
なお、特に密着性が問題にならなければ、大気解放した後、第2導電層50を形成してもよい。この場合、第2導電層50の形成には、スパッタリング以外のドライプロセスが適用されても、ドライプロセス以外の成膜法が適用されてもよい。
【0043】
第2導電層50の材質としては、たとえばモネルが好適に用いられる。モネルは、当該固体電解コンデンサ31の実装時におけるはんだの拡散防止層として機能する。
【0044】
この実施形態では、第2導電層50上に第3導電層51が形成される。第3導電層51は、たとえば導電成分として銀を含む導電性ペーストを塗布し、焼き付けることによって形成される。この場合、第3導電層51は、酸化防止機能を果たすものである。
【0045】
なお、第2導電層50および第3導電層51にそれぞれ含まれる導電成分は、上述した金属以外であってもよく、たとえば、銅、ニッケル、モネル、錫、白金、金などの中から適宜選ぶことができる。また、第3導電層51は、特に必要がなければ、形成されなくてもよい。
【0046】
以上のようにして、陽極側外部電極47における第1導電層49、第2導電層50および第3導電層51が形成される。
【0047】
次に、陽極側外部電極47の場合と同様の工程が繰り返されることによって、陰極側外部電極48における第1導電層49、第2導電層50および第3導電層51が形成される。この場合、まず、第1導電層49を形成するため、スパッタ装置に、陰極端子部材42の端面46が上になる姿勢で、積層体33および外装43を備える構造物が配置される。
【0048】
なお、陰極側外部電極48における第1導電層49を形成する前に、積層体33および外装43を備える構造物を、オーブンなどの乾燥装置に投入すれば、大気解放時に吸着した水分を除去できるので、水分の浸入をより完璧に抑えることができる。
【0049】
以上説明した実施形態では、図1に示すように、陽極側外部電極47における第1導電層49は、外装43の端面44全体を覆うように形成されていた。この発明の範囲外の参考例ではあるが、第1導電層49は、弁作用金属基体34の端面38およびその周囲に位置する外装43の少なくとも一部を覆うように形成されることもあり得る
【0050】
このことを、図2を参照して、より具体的に説明する。図2において、図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。図2には、外装43の第1の端面44上に設けられる陽極側外部電極の一部となる第1導電層49の形成パターンが示されているが、第1導電層49によって隠される弁作用金属基体34の端面38は点線で示されている。
【0051】
図2の下半部には、第1導電層49が、弁作用金属基体34の端面38およびその周囲に位置する外装43の一部のみを覆うように形成されている状態が図示されている。他方、図2の上半部には、第1導電層49が、隣り合う少なくとも2つのコンデンサ素子の各弁作用金属基体34の芯部を互いに電気的に接続するように形成されている状態が図示されている。
【0052】
図2に示した第1導電層49についての2種類の形成パターンは、第1導電層49が外装43の端面44全体を覆うように形成されている図1に示した形成パターンに比べて、水分浸入の抑制効果はやや劣るものの、実用上十分な水分抑制効果を発揮し得る。特に、図2の上半部に図示される第1導電層49の形成パターンの場合には、電気的接続によって、第1導電層49が外装43の端面44を覆う面積が増す分、第1導電層49による水分浸入の抑制効果を高めることができる。
【0053】
また、前述したように、誘電体皮膜37を形成した後、導電性高分子材料を用いて化学重合、電解重合などの方法によって、固体電解質層39が形成され、次いで、カーボンペーストおよび銀ペーストを付与することによって、集電体層40が形成される。これら固体電解質層39および集電体層40は、陰極部を構成するものであるので、陽極部となる弁作用金属基体34の芯部35と導通しないようにする必要がある。そのため、図3に示すように、誘電体皮膜37を形成した後の弁作用金属基体34には、点線で図示した固体電解質層39および集電体層40の形成領域を規定するため、電気絶縁性の樹脂を塗布することによって、マスキング材52を形成しておくことが好ましい。この場合、マスキング材52を形成する樹脂の一部は、粗面部36中に浸透する。
【符号の説明】
【0054】
31 固体電解コンデンサ
32 コンデンサ素子
33 積層体
34 弁作用金属基体
35 芯部
36 粗面部
37 誘電体皮膜
38 弁作用金属基体の一方端面
39 固体電解質層
40 集電体層
41 導電性接着剤
42 陰極端子部材
43 外装
44 外装の第1の端面
45 外装の第2の端面
46 陰極端子部材の一方端面
47 陽極側外部電極
48 陰極側外部電極
49 第1導電層
50 第2導電層
図1
図2
図3
図4