特許第6233416号(P6233416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233416
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電子写真機器用半導電性部品
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20171113BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G03G15/00 550
   G03G15/00 551
   F16C13/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-542613(P2015-542613)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(86)【国際出願番号】JP2014077324
(87)【国際公開番号】WO2015056670
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-214338(P2013-214338)
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】大貫 孝司
(72)【発明者】
【氏名】宇渡 真一
(72)【発明者】
【氏名】安田 和敬
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−038001(JP,A)
【文献】 特開2012−036289(JP,A)
【文献】 特開2004−204968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/08
G03G 15/16
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として9.9〜39.9mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として0.1〜10mol%を有する共重合体の(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位の反応性を利用して架橋してなる架橋体を含有する電子写真機器用半導電性部品。
【請求項2】
(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位が、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位である請求項1記載の電子写真機器用半導電性部品。
【請求項3】
(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位が、エピクロロヒドリン及びエピブロモヒドリンからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位である請求項1又は2記載の電子写真機器用半導電性部品。
【請求項4】
(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位が、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位である請求項1〜3いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品。
【請求項5】
架橋体の硬度が、JIS K6253のタイプAに準拠する硬さ試験において、10〜80であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品。
【請求項6】
電子写真機器用半導電性部品が、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として9.9〜39.9mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として0.1〜10mol%を有する共重合体の(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位の反応性を利用して架橋してなる架橋体が基材に積層された半導電性ロールである請求項1〜5いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品を用いてなる電子写真機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真機器用半導電性部品に関する。本発明の電子写真機器用半導電性部品はコピー機、プリンター等における電子写真プロセスの帯電、現像、転写などの半導電性ロールまたはベルトとして有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、接触帯電方式に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロールにおいて、より高画質かつ高速化に対応した部品が要求されている。
【0003】
通常、帯電ロール、転写ロール、現像ロールの電気特性として半導電性が必要であり、また、感光体と接触することから感光体を破損させにくい事また感光体への汚染性が小さいことが求められており、材料としてゴム材料を用いた部材が多く使用されている。
【0004】
帯電ロールなどの材料として半導電性ゴムであるエピクロロヒドリン系重合体はその導電特性から、現在広く用いられている。エピクロロヒドリン系重合体の架橋方法としては一般的に架橋剤及び架橋促進剤を添加し加熱する方法がある。しかし、架橋剤を用いた架橋方法では、架橋時の熱により添加した架橋剤の残渣が感光体を汚染する要因になることが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
そこで、導電性ロール等の電子写真機器に用いる材料として、半導電性を有し、感光体汚染性の小さい材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−208289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情を背景としてなされたものであり、コピー機、プリンター等に使用される電子写真プロセスの帯電、現像、転写などの半導電性ロール及び半導電性ベルトに用いられる電子写真機器用半導電性部品であって、感光体などへの汚染性が著しく低減された電子写真機器用半導電性部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として9.9〜39.9mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として0.1〜10mol%を有する共重合体の(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位の反応性を利用して架橋してなる架橋体を含有する電子写真機器用半導電性部品を用いることで、感光体などへの汚染の原因となる架橋剤などの使用量を著しく低減することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
項1 (a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として9.9〜39.9mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として0.1〜10mol%を有する共重合体の(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位の反応性を利用して架橋してなる架橋体を含有する電子写真機器用半導電性部品。
項2 (c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位が、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位である項1記載の電子写真機器用半導電性部品。
項3 (a)エピハロヒドリンに由来する構成単位が、エピクロロヒドリン、及びエピブロモヒドリンからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位である項1又は2記載の電子写真機器用半導電性部品。
項4 (b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位が、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位である項1〜3いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品。
項5 架橋体の硬度が、JIS K6253のタイプAに準拠する硬さ試験において、10〜80であることを特徴とする項1〜4いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品。
項6 電子写真機器用半導電性部品が、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として9.9〜39.9mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として0.1〜10mol%を有する共重合体の(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位の反応性を利用して架橋してなる架橋体が基材に積層された半導電性ロールである項1〜5いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品。
項7 項1〜6いずれか記載の電子写真機器用半導電性部品を用いてなる電子写真機器。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られた電子写真機器用半導電性部品は、これまで帯電ロール、現像ロール、転写ロール等に使用されてきた部材と同様に半導電性を持つだけでなく、感光体などへの汚染性が著しく低減されているため、コピー機、プリンター等の半導電性ロール及びベルト等に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の電子写真機器用半導電性部品は、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として9.9〜39.9mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として0.1〜10mol%を有する共重合体を、(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位の反応性を利用して架橋してなる架橋体を含有する。
【0013】
本発明の共重合体においては、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として、エピクロロヒドリン及びエピブロモヒドリンからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位であることが好ましく、エピクロロヒドリンに由来する構成単位であることがより好ましい。
【0014】
本発明の共重合体においては、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として、9.9〜39.9mol%を有することが好ましく、9.9〜34.5mol%を有することがより好ましく、9.9〜29.5mol%を有することが特に好ましい。
【0015】
本発明の共重合体においては、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位であることが好ましく、半導電性の観点からエチレンオキサイドに由来する構成単位であることが特に好ましい。
【0016】
本発明の共重合体においては、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として、60〜90mol%を有することが好ましく、60〜80mol%を有することがより好ましく、65〜80mol%を有することが特に好ましい。
【0017】
本発明の共重合体においては、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一つに由来する構成単位であることが好ましく、メタクリル酸グリシジル及び/又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに由来する構成単位であることがより好ましい。尚。前記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0018】
本発明の共重合体においては、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として、0.1〜10mol%を有することが好ましく、0.1〜8mol%を有することがより好ましく、1〜8mol%を有することが特に好ましい。
【0019】
本発明の架橋体は、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位を有する共重合体を、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位の反応性を利用して架橋して得られる。つまり、汚染性の原因となる架橋剤を使用することなく共重合体を架橋することができるため、感光体などに対する、最終的に得られる電子写真機器用半導電性部品の汚染性を低減することができる。なお、本発明に係る電子写真機器用半導電性部品を構成する架橋体を製造する際、前記(c)成分を架橋することに加えて、エピクロロヒドリン系重合体の架橋に通常使用される架橋剤、例えばポリアミン系架橋剤、キノキサリン系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン系架橋剤、ビスフェノール系架橋剤、硫黄系架橋剤、過酸化物架橋剤を併用することも可能である。ただし、前述のとおり電子写真機器用半導電性部品を構成する材料が架橋剤を含有すると、感光体などへの汚染の原因となる恐れがあるため、その配合量は、共重合体の全量を100重量%としたとき、3重量%以下とすることが好ましく、1重量%以下とすることがより好ましく、0.1重量%未満とすることが更に好ましく、架橋剤を使用しないことが特に好ましい。
【0020】
ポリアミン系架橋剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p-フェニレンジアミン、クメンジアミン、N,N'−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメート等が挙げられる。
【0021】
キノキサリン系架橋剤としては、2,3−ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチカーボネート等が挙げられる。
【0022】
チオウレア系架橋剤としては、2−メルカプトイミダゾリン、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等が挙げられる。
【0023】
トリアジン系架橋剤としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、2−ヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプトトリアジン等が挙げられる。
【0024】
ビスフェノール系架橋剤としてはビスフェノールAF、ビスフェノールS等が挙げられる。
【0025】
硫黄系架橋剤としては、硫黄やテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N′−ジメチル−N,N′−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等の活性硫黄放出型の化合物が挙げられる。
【0026】
過酸化物架橋剤としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0027】
本発明の架橋体は、共重合体における(メタ)アクリロイル基を利用して架橋する場合には、熱、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を用いて、架橋することが好ましい。熱で架橋する場合には、100℃〜200℃の温度条件下で3分〜5時間で架橋反応が終了する。また、紫外線、電子線等のエネルギー線を利用する場合、一般的には増感剤が用いられ、通常10℃〜150℃の温度条件下0.1秒〜1時間で架橋反応が終了する。
【0028】
本発明の架橋体は、アルコキシシリル基を利用して架橋する場合には、熱、蒸気を用いて、架橋することが好ましい。熱で架橋する場合には、100℃〜200℃の温度条件下で3分〜1時間で架橋反応が終了する。また、蒸気で架橋する場合には、5分〜1時間で架橋反応が終了する。
【0029】
本発明の電子写真機器用半導電性部品には、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位を有する共重合体を架橋する際に用いられる受酸剤を含有してもよい。
【0030】
本発明で用いられる受酸剤としては、公知の受酸剤を使用できるが、好ましくは金属化合物および/または無機マイクロポーラス・クリスタルである。金属化合物としては、周期表第II族(2族および12族)金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表III族(3族および13族)金属の酸化物、水酸化物、カルボン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、周期表第IV族(4族および14族)金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等の金属化合物が挙げられる。
【0031】
前記金属化合物の具体例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができ、炭酸ナトリウム、マグネシア、水酸化マグネシウム、生石灰、消石灰、ケイ酸カルシウム、亜鉛華などが好ましい。
【0032】
前記無機マイクロポーラス・クリスタルとは、結晶性の多孔体を意味し、無定型の多孔体、例えばシリカゲル、アルミナ等とは明瞭に区別できるものである。このような無機マイクロポーラス・クリスタルの例としては、ゼオライト類、アルミノホスフェート型モレキュラーシーブ、層状ケイ酸塩、合成ハイドロタルサイト、チタン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。特に好ましい受酸剤としては、合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0033】
前記ゼオライト類は、天然ゼオライトの外、A型、X型、Y型の合成ゼオライト、ソーダライト類、天然ないしは合成モルデナイト、ZSM−5などの各種ゼオライトおよびこれらの金属置換体であり、これらは単独で用いても2種以上の組み合わせで用いても良い。また金属置換体の金属はナトリウムであることが多い。ゼオライト類としては酸受容能が大きいものが好ましく、A型ゼオライトが好ましい。
【0034】
前記合成ハイドロタルサイトは下記一般式(1)で表される。
MgZnAl(OH)(2(X+Y)+3Z−2)CO・wHO (1)
[式中、xとyはそれぞれx+y=1〜10の関係を有する0〜10の実数、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数をそれぞれ示す。]
【0035】
前記一般式(1)で表されるハイドロタルサイト類の例として、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO、MgZnAl(OH)12CO・3.5HO、MgZnAl(OH)12CO等を挙げることができる。
【0036】
本発明の電子写真機器用半導電性部品には、老化防止剤を含有していてもよく、公知の老化防止剤を使用できる。老化防止剤の例としては、フェニル−α−ナフチルアミン、p−トルエンスルホニルアミド−ジフェニルアミン、4,4−α,α−ジメチルベンジルジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応生成品、ジフェニルアミンとアセトンの低温反応生成品、ジフェニルアミン,アニリン,アセトンの低温反応品、ジフェニルアミンとジイソブチルレンの反応生成品、オクチル化ジフェニルアミン、置換ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、ジフェニルアミン誘導体、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ビス1−メチルヘプチル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ビス1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジアリル−p−フェニレンジアミンの混合品、フェニル,オクチル−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミンとジフェニル−p−フェニレンジアミンの混合品、2,2,4−トリメチル−1,2ジヒドロキノリンの重合物、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールと2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノールとオルト−tert−ブチルフェノールの混合物、スチレン化フェノール、アルキル化フェノール、アルキルおよびアラルキル置換フェノールの混合品、フェノール誘導体、2,2´−メチレン−ビス−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2´−メチレン−ビス−4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール、2,2´−メチレン−ビス−4−エチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−メチレン−ビス−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、ポリブチル化ビスフェノールAの混合物、4,4−チオビス−6−tert−ブチル−3−メチルフェノール、4,4−ブチリデンビス−3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ビスオクチルチオメチル−O−クレゾール、ヒンダートフェノール、ヒンダートビスフェノール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイメダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、4と5−メルカプトメチルベンズイミダゾール、4と5−メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジオクタデシルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、1,3−ビスジメチルアミノプロピル−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素、ビス2−メチル−4−3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ−5−tert−ブチルフェニルスルフィド、ビス3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルフィド、混合ラウリルステアリンチオジプロピオネート、環状アセタール、ポリマーポリオール60%と水添シリカ40%の混合品、ポリエチレンとポリエチレングリコールの2分子構造による特殊ポリエチレングリコール加工品、不活性フィラーとポリマーポリオールの特殊設計混合品、複合系老化防止剤、エノールエーテル、1,2,3−ベンゾトリアゾール、3−N−サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾル、トリアジン系誘導体複合物、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、N,N´−ビス3−3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルヒドラジン、テトラキス−メチレン−3−3´,5´−ジ−tert−ブチル4´ヒドロキシフェニルプロピオネートメタン等が挙げられる。
【0037】
本発明の電子写真機器用半導電性部品に対しては、本発明の効果を損なわない限り、上記の他に当該技術分野で行われる各種の充填剤、補強剤、可塑剤、導電剤、加工助剤、難燃剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の配合剤を任意で配合することができる。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている、他のゴム、樹脂等のブレンドを行うことも可能である。
【0038】
上記の配合剤、他のゴム、樹脂の配合は、(a)エピハロヒドリンに由来する構成単位として9.9〜39.9mol%、(b)アルキレンオキサイドに由来する構成単位として60〜90mol%、(c)(メタ)アクリロイル基、又はアルコキシシリル基を含有する環状エーテルモノマーに由来する構成単位として0.1〜10mol%を有する共重合体と共に混練することで行うことができる。混練して得られる共重合体と配合剤を含有する組成物を架橋することにより架橋体を得ることができ、架橋体を含有する電子写真機器用半導電性部品とすることができる。
【0039】
本発明の電子写真機器用半導電性部品の作製のための混練方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段を用いることができ、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。
【0040】
本発明の電子写真機器用半導電性部品の成型方法としては、金型による圧縮成型、押出成型、インジェクション成型等が例示できるが、押出成型、インジェクション成型であることが好ましい。
【0041】
本発明の電子写真機器用半導電性部品においては、架橋体の硬度が、JIS K6253のタイプAに準拠する硬さ試験において、10〜80であることが好ましく、20〜70であることが好ましい。
【0042】
本発明の電子写真機器用半導電性部品においては、23℃×50%RH(相対湿度)における架橋体の体積抵抗率は、JIS K6271に準拠して測定を行い、1.0×10〜1.0×1010Ω・cmであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Ω・cmであることがより好ましい。
【0043】
本発明の電子写真機器用半導電性部品は、本発明の架橋体を基材に積層することにより形成されていてもよい。基材は、用途によって異なるが、樹脂、又はアルミ、鉄等の金属を例示することができる。基材と架橋体との間に中間層を設けることもでき、架橋体上より更なる表層を設けることもできる。本発明の電子写真機器用半導電性部品はコピー機、プリンター等の電子写真機器における半導電性ロール及びベルト等として用いられる。
【0044】
以下において実施例および比較例により具体的に説明する。なお本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
重合触媒の合成
温度計および攪拌装置を伏した三ツ口フラスコにジブチル錫オキサイド10.0g、トリブチルホスフェート23.4gをいれ、窒素気流下に攪拌しながら260℃で15分間加熱して留出物を留去させ、残留物として固体状の縮合物質を得た。この縮合物質を重合触媒として使用した。
【0046】
実施例1
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロロヒドリン607g、エチレンオキサイド820gの60%量、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61gを仕込み35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目と2.5時間目に各々エチレンオキサイド820gの25%量、15%量を添加した。反応溶液を除去した後、減圧下40℃にて8時間乾燥し、共重合体を得た。
【0047】
実施例2
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロロヒドリン587g、エチレンオキサイド839gの60%量、メタクリル酸グリシジル74gを仕込み35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目と2.5時間目に各々エチレンオキサイド839gの25%量、15%量を添加した。反応溶液を除去した後、減圧下40℃にて8時間乾燥し、共重合体を得た。
【0048】
比較例1
内容量20LのSUS反応器(温度計および攪拌装置付き)の内部を窒素置換し、上記縮合物質触媒7.2g、水分10ppm以下のノルマルヘキサン4500g、エピクロロヒドリン304g、エチレンオキサイド661gの60%量、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン534gを仕込み35℃にて20時間反応させた。なお反応時間1.5時間目と2.5時間目に各々エチレンオキサイド661gの25%量、15%量を添加した。反応溶液を除去した後、減圧下40℃にて8時間乾燥し、共重合体を得た。しかし、比較例1の共重合体は粘度が大きく低下し、粘着性の高いペースト状になってしまったため反応器からの取り出しが困難となり、以下の評価ができなかった。
【0049】
実施例1で得られた共重合体の共重合組成について、H−NMR分析、塩素含量により求め、実施例2で得られた共重合体の共重合組成については、塩素含量、ヨウ素価により求めた。
塩素含量は、JIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって求めた。電位差滴定法は電極に複合電極C−878を備えた京都電子工業株式会社製AT−420N電位差測定装置を用いて行い、得られた塩素含量からエピクロロヒドリンに由来する構成単位のモル分率を算出する。
ヨウ素価はJIS K6235に準じた方法で測定した。共栓付きフラスコにサンプル約0.70gとクロロホルム80mlを加えて40℃に加熱してサンプルを溶解させた後、ウィイス試薬20mlと酢酸ナトリウム水溶液10mlを加えてよく振り混ぜ、暗所で20分間静置する。次に20%ヨウ化カリウム水溶液5mlを加えてからよく振り混ぜる。その後、微量複合白金電極(酸化還元滴定)を備えた自動的定装置を用いて0.1N−チオ硫酸ナトリウム水溶液で電位差滴定を行い、得られたヨウ素価からメタクリル酸グリシジルに由来する構成単位のモル分率を算出する。
H−NMR分析を用いて、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに由来する構成単位のモル分率を算出する。測定機器は日本電子株式会社製のJNM−GSX270を用いた。
アルキレンオキサイドに由来する構成単位のモル分率は、他のモノマーユニットに由来する構成単位と合算し、100mol%になるように算出した。
【0050】
前記の実施例1〜2で得られた共重合体をオープンロールにてシート化し、170℃で15分プレス架橋し、架橋シートを得た。
【0051】
体積抵抗率
前記で作成した架橋シートを23℃/50%RH環境下にて状態調整を行った後、JIS K6271に準拠し、二重リング電極を用いた三菱油化株式会社製ハイレスタを用いて、10V印加、1分後の体積抵抗率を測定する。
硬度
前記で作成した架橋シートを使用し、JIS K6253のタイプAに準拠する硬さ試験を行い、硬度を測定した。結果を表2に示す。
汚染性
作成した架橋シートを2cm各で裁断し1平方センチあたり5gの荷重をかけ感光体に圧着させ40℃×90%RH環境下で1週間放置し感光体への付着物を確認し、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
○:試験後の感光体を使用し印刷した時に画像に汚染痕が印刷されない。
×:試験後の感光体を使用し印刷した時に画像に汚染痕が印刷される。
【0052】
表1に実施例1〜2、比較例1で得られた共重合体の組成比を示し、実施例1〜2で得られた共重合体を架橋した架橋シートの体積抵抗率を表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
実施例1は、(a)エピクロロヒドリンに由来する構成単位が26mol%(b)エチレンオキサイドに由来する構成単位が73mol%(c)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに由来する構成単位が1mol%となる共重合体の架橋体を有する電子写真機器用半導電性部品であり、実施例2は、(a)エピクロロヒドリンに由来する構成単位が24mol%(b)エチレンオキサイドに由来する構成単位が74mol%(c)メタクリル酸グリシジルに由来する構成単位が2mol%含んだ共重合体の架橋体を有する電子写真機器用半導電性部品である。比較例1は、(c)3−グリシドキシプロピルトリメトキシシシランに由来する構成単位が11mol%になるように重合を行ったが、共重合体の粘度が大きく低下し、粘着性の高いペースト状になってしまうため反応器からの取り出しが困難となり評価できなかった。
また、表2に示すように本発明の電子写真機器用半導電性部品である実施例1〜2の共重合体の架橋体は、23℃/50%RHでの体積抵抗率が1.1×10、1.3×10と半導電性を維持しているとともに、電子写真機器用半導電性部品、特には半導電性ロールを構成する弾性材料として好適な硬度を有することがわかる。さらに、共重合体の架橋体は汚染性が著しく低減されているため、電子写真機器用半導電性部品として好適に使用可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
また、本発明の電子写真機器用半導電性部品は、半導電性しており、コピー機、プリンター等の電子写真機器における半導電性ロール及びベルト等の用途に極めて有用である。