特許第6233428号(P6233428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233428
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】モータ制御装置およびモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/05 20060101AFI20171113BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H02P21/05
   H02P27/06
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-25219(P2016-25219)
(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-143713(P2017-143713A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年2月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 考弘
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−133878(JP,A)
【文献】 特開2009−077503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/05
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに電力を供給するインバータ部と、
前記インバータ部を制御し、静止直交座標系の直交する2軸のうち、前記モータの相電圧と所定の位相関係を有する一方の軸に対して交流電流である探索電流を当該探索電流の周波数を変えながら前記インバータ部から供給させて、前記モータの回転周波数及び回転方向の少なくとも一方を検出する制御部と、
を備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記探索電流を前記モータへ供給している状態で前記モータの電圧および磁束の少なくとも一方に基づいて、前記モータの回転周波数を検出する回転周波数検出部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記回転周波数検出部は、
前記モータの電圧および磁束の少なくとも一方を極大にする前記探索電流の周波数を前記モータの回転周波数として検出する周波数検出部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記回転周波数検出部は、
前記モータの電圧および磁束の少なくとも一方が閾値以上になる前記探索電流の周波数を前記モータの回転周波数として検出する周波数検出部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記周波数検出部は、
前記閾値として前記探索電流の周波数に応じた閾値を用いる
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記探索電流によって生じる前記モータの電圧に基づいて、前記モータの回転方向を検出する回転方向検出部を備える
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記回転方向検出部は、
前記静止直交座標系の直交する2軸のうち、前記一方の軸の電圧と他方の軸の電圧との位相差に基づいて、前記モータの回転方向を決定する
ことを特徴とする請求項6に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
前記回転方向検出部は、
前記モータの電圧に基づいて前記モータの電圧位相を演算する位相演算部と、
前記位相演算部によって演算された前記モータの電圧位相の変化状態に基づいて、前記モータの回転方向を決定する回転方向決定部と、を備える
ことを特徴とする請求項6に記載のモータ制御装置。
【請求項9】
前記回転方向検出部は、
前記探索電流によって生じる前記モータの電圧であって前記探索電流の供給を停止した後に検出される前記モータの電圧に基づいて、前記モータの回転方向を検出する
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載のモータ制御装置。
【請求項10】
前記探索電流に対応する電流指令を生成する電流指令生成部と、
前記電流指令と前記モータに流れる電流との差に基づいて電圧指令を生成する電流制御部と、
前記電圧指令に基づいて前記インバータ部へ前記探索電流を供給させる駆動制御部と、
前記電圧指令に基づいて、前記モータの回転方向を検出する回転方向検出部と、を備える
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のモータ制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記モータの静止直交座標系の直交する2軸のうち、他方の軸の電流がゼロになるように前記探索電流を前記インバータ部から供給させる
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載のモータ制御装置。
【請求項12】
静止直交座標系の直交する2軸のうち、モータの相電圧と所定の位相関係を有する一方の軸に対して交流電流である探索電流をインバータ部から供給することと、
前記インバータ部から供給される前記探索電流の周波数を変更して、前記モータの回転周波数及び回転方向の少なくとも一方を検出することと、
を含むことを特徴とするモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、モータ制御装置およびモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを制御するモータ制御装置が知られている。かかるモータ制御装置は、瞬時停電などが発生した場合、インバータからのモータへの電力供給が一時的に停止され、モータが例えばフリーラン状態や惰行回転状態(以下、フリーラン状態と総称する)になる場合がある。
【0003】
そして、モータ制御装置は、瞬時停電から回復した後にインバータからモータへ電力を供給する。この場合、モータの回転周波数とインバータの出力周波数とが大きくずれていると、例えば、不要なトルクによりジャークが発生したり、過電流や過電圧が発生したりするおそれがある。
【0004】
そこで、モータの回転周波数にインバータの出力周波数を対応させた状態でインバータからモータへ電力供給を行うために、フリーラン状態のモータの回転周波数を検出する機能(以下、速度サーチと記載する場合がある)がモータ制御装置に採用されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−133878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
速度サーチの方式として、フリーラン状態のモータの残留磁束によって生じる誘起電圧に基づいてモータの回転周波数を検出する方式があるが、モータに残留磁束がなければモータの回転周波数を検出することが難しい。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、例えば、モータに残留磁束がない状態からでもモータの回転周波数および回転方向の少なくとも一方を検出することができるモータ制御装置およびモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係るモータ制御装置は、インバータ部と、制御部とを備える。前記インバータ部は、モータに電力を供給する。前記制御部は、前記モータの相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系の当該軸に対して交流電流を当該交流電流の周波数を変えながら前記インバータ部から供給させる。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、例えば、モータに残留磁束がない状態からでもモータの回転周波数および回転方向の少なくとも一方を検出することができるモータ制御装置およびモータ制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態にかかるモータ制御装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、図1に示すモータ制御装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、駆動制御部の他の構成を示す図である。
図4図4は、α軸重畳電流指令の周波数の変化を示す図である。
図5図5は、モータの2次磁束とα軸電流との変化の一例を示す図(その1)である。
図6図6は、モータの2次磁束とα軸電流との変化の一例を示す図(その2)である。
図7図7は、モータの回転周波数、探索電流の周波数、α軸電圧指令、β軸電圧指令、α軸磁束、および、β軸磁束の変化を示す図である。
図8図8は、図2に示す回転周波数検出部の一例を示す図である。
図9図9は、定格磁束時の誘起電圧と、電圧振幅と、誘起電圧を基準とした電圧振幅の比との関係を示す図である。
図10図10は、図2に示す回転方向検出部の一例を示す図である。
図11図11は、モータの回転方向が正転である場合におけるα軸電圧指令、β軸電圧指令および電圧位相の状態を示す図である。
図12図12は、モータの回転方向が逆転である場合におけるα軸電圧指令、β軸電圧指令および電圧位相の状態を示す図である。
図13図13は、回転状態探索処理、電圧復帰処理および加速処理における状態量の変化を示す図である。
図14図14は、回転状態探索処理、電圧復帰処理および加速処理の流れを示すフローチャートである。
図15図15は、図14に示すステップS11の処理の流れを示すフローチャートである。
図16図16は、図14に示すステップS13の処理の流れを示すフローチャートである。
図17図17は、図1に示すモータ制御装置の構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するモータ制御装置およびモータ制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
[1.モータ制御装置]
図1は、実施形態にかかるモータ制御装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、モータ制御装置1は、インバータ部10と、電流検出部11と、制御部20とを備え、直流電源2から供給される直流電力を交流電力へ変換してモータ3へ出力し、モータ3を制御する。かかるモータ3は、例えば、3相誘導電動機である。
【0013】
なお、図1に示すモータ制御装置1は、直流電源2とモータ3との間に配置されるが、交流電源とモータ3との間に配置されてもよい。この場合、モータ制御装置1は、交流電源から供給される交流電力を直流電力へ変換してインバータ部10へ供給するコンバータを備える。また、インバータ部10を複数の双方向スイッチを有するマトリクスコンバータに置き換えることもできる。この場合、モータ制御装置1は、マトリックスコンバータにより交流入力から直接交流を出力することができる。
【0014】
インバータ部10は、例えば、3相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を備える。電流検出部11は、インバータ部10からモータ3に流れる電流(以下、検出電流Ioと記載する場合がある)を検出し、かかる検出電流Ioを制御部20へ出力する。電圧検出部12は、モータ3の電圧(以下、検出電圧Voと記載する場合がある)を検出し、かかる検出電圧Voを制御部20へ出力する。
【0015】
制御部20は、駆動制御部21と、回転状態探索部22とを備える。駆動制御部21は、インバータ部10のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成してインバータ部10へ出力する。インバータ部10のスイッチング素子は、駆動制御部21から出力される駆動信号によりPWM(Pulse Width Modulation)制御される。これにより、直流電源2から供給される直流電力がインバータ部10により交流電力へ変換されてモータ3へ出力され、モータ3の回転が制御される。
【0016】
また、駆動制御部21は、例えば、瞬時停電などによって、電源(例えば、直流電源2)から電力供給が停止した場合、例えば、インバータ部10のスイッチング素子をすべてOFFにし、インバータ部10からモータ3への電力供給を停止する。また、駆動制御部21は、停電復帰などによって、電源からの電力供給が再開した場合、回転状態探索処理等の終了後、インバータ部10のスイッチング素子を制御し、モータ3の回転を制御する。
【0017】
回転状態探索部22は、例えば、瞬時停電などによって、モータ3がフリーラン状態からの再始動時に、モータ3の回転周波数ωma(=|ω|)および回転方向D(=sign(ω))を探索する回転状態探索処理を実行する。
【0018】
なお、「ω」は、回転方向Dを含めたモータ3の回転周波数である。また、モータ3の回転周波数ωmaは、電気角での周波数であり、機械角での周波数は、モータ3の極数に応じた周波数になる。なお、以下においては、説明の便宜上、モータ3が2極のモータであるものとして説明するが、モータ3の極数は2極に限定されるものではない。
【0019】
かかる回転状態探索処理において、回転状態探索部22は、モータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dを検出することができる。以下、モータ3の回転周波数ωmaを検出する処理を回転周波数探索処理と記載し、モータ3の回転方向Dを検出する処理を回転方向探索処理と記載する。
【0020】
なお、回転状態探索処理は、例えば、瞬時停電などによって、電源からモータ制御装置1への電力供給が一時的に停止した後、電力供給が再開した場合に開始される。例えば、制御部20は、直流電源2からモータ制御装置1への直流電力の供給が一時的に停止した後再開された場合に回転状態探索処理を開始する。
【0021】
また、モータ制御装置1が交流電源からの交流電力の供給を直流電力に変換するコンバータを有する場合、制御部20は、例えば、交流電源からのモータ制御装置1への交流電力の供給が一時的に停止した後再開した場合に回転状態探索処理を開始する。
【0022】
回転状態探索部22は、回転周波数探索処理において、インバータ部10を制御し、モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系の軸に対して交流電流(以下、探索電流Iと記載する)をこの探索電流Iの周波数ωを変えながらインバータ部10から供給させる。かかる静止直交座標系は、モータ3の固定子に設定される座標系であり、固定子座標系とも呼ばれる。なお、上述した「モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸」は、静止直交座標系の直交する2軸のうち一方の軸である。また、上述した「モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する」とは、モータ3の相電圧の位相が静止直交座標系の一方の軸と予め定められた角度差を有することを意味し、かかる「角度差」は、ゼロであってもよい。
【0023】
かかる探索電流Iによってモータ3の2次磁束が励磁される。モータ3の2次磁束は、モータ3の回転子の回転とともに回転し、モータ3の回転周波数ωmaと一致する周波数ωの探索電流Iがモータ3に供給された場合に、モータ3の2次磁束および誘起電圧が最も大きくなる。
【0024】
そこで、回転状態探索部22は、探索電流Iをモータ3へ供給している状態におけるモータ3の電圧および磁束の少なくとも一方に基づいて、モータ3の回転周波数ωmaを検出する。これにより、モータ3に残留磁束がない状態からでもモータ3の回転周波数ωmaを検出することができる。
【0025】
例えば、回転状態探索部22は、モータ3の電圧が極大値となったタイミングの探索電流Iの周波数ωをモータ3の回転周波数ωmaとして検出することができる。また、回転状態探索部22は、モータ3の電圧が閾値電圧Vth以上になる探索電流Iの周波数ωをモータ3の回転周波数ωmaとして検出することもできる。
【0026】
また、回転状態探索部22は、探索電流Iによって生じるモータ3の電圧に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出する。これにより、モータ3に残留磁束がない状態からでもモータ3の回転方向Dを検出することができる。
【0027】
例えば、回転状態探索部22は、モータ3の電圧に基づいてモータ3の電圧位相を演算し、かかる電圧位相の変化状態に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出することができる。また、回転状態探索部22は、例えば、モータ3の電圧位相からモータ3の回転周波数ωを検出し、かかる回転周波数ωの正負に基づいてモータ3の回転方向Dを検出することができる。
【0028】
回転状態探索部22は、モータ3に流す探索電流Iの大きさ応じた電流指令I*を生成し、電流検出部11の検出電流Ioと電流指令I*との差に応じた電圧指令Vs*を生成する。駆動制御部21は、電圧指令Vs*に基づいてインバータ部10のスイッチング素子を制御し、電圧指令Vs*に対応する電圧をモータ3へ供給する。これにより、インバータ部10からモータ3に探索電流Iが供給される。
【0029】
回転状態探索部22は、回転周波数ωmaや回転方向Dを検出するためのモータ3の電圧として、電圧指令Vs*を用いることができる。すなわち、回転状態探索部22は、電圧指令Vs*に基づいてモータ3の回転周波数ωmaを検出することができ、また、電圧指令Vs*に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出することができる。
【0030】
また、回転状態探索部22は、モータ3の電圧として。電圧検出部12の検出電圧Voを用いることができる。すなわち、回転状態探索部22は、検出電圧Voに基づいてモータ3の回転周波数ωmaを検出することができ、また、検出電圧Voに基づいて、モータ3の回転方向Dを検出することができる。
【0031】
以下、モータ制御装置1についてさらに詳細に説明する。なお、以下においては、モータ3の電圧として電圧指令Vs*を用いてモータ3の回転周波数ωmaおよびモータ3の回転方向Dを検出する構成を主として説明するものとする。
【0032】
[2.モータ制御装置1の構成例]
図2は、図1に示すモータ制御装置1の構成の一例を示す図である。図2に示すように、モータ制御装置1は、インバータ部10と、電流検出部11と、制御部20とを備え、モータ3を制御する。モータ3は、例えば、3相誘導電動機である。
【0033】
インバータ部10は、コンデンサC1と複数のスイッチング素子Q1〜Q6を備える。スイッチング素子Q1〜Q6は、3相ブリッジ接続され、それぞれ保護用のダイオードが逆並列接続される。
【0034】
スイッチング素子Q1〜Q6は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチング素子である。なお、インバータ部10は、図2に示す構成に限定されるものではなく、モータ3を駆動するための交流電力を出力することができる構成であればよい。
【0035】
電流検出部11は、インバータ部10からモータ3のU相、V相およびW相に流れる電流の瞬時値I、I、I(以下、検出電流I、I、Iと記載する)をそれぞれ検出し、かかる検出電流I、I、Iを出力する。電流検出部11は、例えば、電流トランスを有する構成であるが、磁電変換素子であるホール素子を有する構成であってもよい。
【0036】
なお、電流検出部11は、3相の電流を検出する構成に代えて、2相の電流を検出する構成であってもよい。例えば、電流検出部11は、検出電流I、Iを検出し、かかる検出電流I、Iから、「I=−I−I」の演算式を用いて、検出電流Iを求めることができる。なお、3相のうち電流検出部11によって検出されていない相の電流の瞬時値は、制御部20によって演算することもできる。
【0037】
制御部20は、動作モードが運転モードである場合、インバータ部10のスイッチング素子Q1〜Q6をON/OFFする駆動信号S1〜S6を例えば速度指令ω*に基づいて生成してインバータ部10へ出力する。これにより、直流電源2から供給される直流電力がインバータ部10により交流電力へ変換されてモータ3へ出力され、モータ3の回転が制御される。
【0038】
また、制御部20は、動作モードが速度探索モードである場合、例えば、インバータ部10から探索電流Iを出力させ、このときのモータ3の電圧に基づいてモータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dを検出する。以下、制御部20について詳細に説明する。
【0039】
[3.制御部20]
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。
【0040】
制御部20は、駆動制御部21と、回転状態探索部22とを備える。かかる駆動制御部21および回転状態探索部22の機能は、例えば、上記CPUが上記プログラムを読み出して実行することにより実現される。なお、駆動制御部21および回転状態探索部22は、それぞれ一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0041】
[3.1.駆動制御部21]
駆動制御部21は、周波数指令生成部31と、V/f制御部32と、d軸電圧指令出力部33と、位相演算部34と、座標変換部35と、加算部36、37と、駆動信号生成部38と、を備える。
【0042】
周波数指令生成部31は、速度指令ω*(周波数指令の一例)を生成する。かかる速度指令ω*は、周波数指令生成部31からV/f制御部32および位相演算部34へ通知される。
【0043】
V/f制御部32は、速度指令ω*に応じたq軸電圧指令V*を出力する。V/f制御部32は、例えば、速度指令ω*の値とq軸電圧指令V*の値との対応関係を規定するテーブルまたは演算器を備えており、かかるテーブルまたは演算器に基づいて、速度指令ω*に応じたq軸電圧指令V*を出力する。
【0044】
d軸電圧指令出力部33は、d軸電圧指令V*を出力する。d軸電圧指令V*は、例えば、ゼロに設定される。位相演算部34は、速度指令ω*に基づいて位相θを生成する。例えば、位相演算部34は、速度指令ω*を微分することによって、位相θを求めることができる。
【0045】
座標変換部35は、位相θ、q軸電圧指令V*およびd軸電圧指令V*に基づいて、α軸電圧指令V1α*およびβ軸電圧指令V1β*を演算する。α軸電圧指令V1α*は、αβ軸座標系のα軸成分であり、β軸電圧指令V1β*は、αβ軸座標系のβ軸成分である。
【0046】
かかるαβ軸座標系は、モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系であり、例えば、α軸とモータ3のU相軸(U相電圧位相)とが一致するように設定される。なお、αβ軸座標系は、α軸とモータ3のV相軸(V相電圧位相)とが一致するように設定されてもよく、また、α軸とモータ3のW相軸(W相電圧位相)とが一致するように設定されてもよい。また、α軸は、U相軸、V相軸およびW相軸のいずれかと一致させなくてもよく、任意の位相で固定してもよい。
【0047】
座標変換部35は、例えば、下記式(1)、(2)の演算を行って位相θaを求める。さらに、座標変換部35は、位相θaに基づいて、q軸電圧指令V*およびd軸電圧指令V*をα軸電圧指令V1α*およびβ軸電圧指令V1β*に変換する。
θv=tan−1√(V*/V*) ・・・(1)
θa=θ+θv ・・・(2)
【0048】
加算部36は、回転状態探索部22によって生成されるα軸重畳電圧指令Viα*をα軸電圧指令V1α*に加算して、α軸電圧指令Vα*を求める。加算部37は、回転状態探索部22によって生成されるβ軸重畳電圧指令Viβ*をβ軸電圧指令V1β*に加算して、β軸電圧指令Vβ*を求める。
【0049】
駆動信号生成部38は、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*に基づいて、駆動信号S1〜S6を生成する。例えば、駆動信号生成部38は、3相2相変換によりα軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*をU相電圧指令V*、V相電圧指令V*およびW相電圧指令V*へ変換する。駆動信号生成部38は、U相電圧指令V*、V相電圧指令V*およびW相電圧指令V*をそれぞれキャリア信号と比較することにより、PWM信号を求める。かかる駆動信号生成部38は、PWM信号から駆動信号S1〜S6を生成する。
【0050】
[3.2.回転状態探索部22]
回転状態探索部22は、例えば、動作モードが速度探索モードである場合に、αβ軸座標系の一方の軸(α軸またはβ軸)に対し探索電流Iをインバータ部10から供給させ、モータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dを検出する。
【0051】
回転状態探索部22は、3相2相座標変換部41と、重畳電流指令生成部42と、減算部43、44と、α軸電流制御部45と、β軸電流制御部46と、回転周波数検出部48と、回転方向検出部49とを備える。
【0052】
3相2相座標変換部41は、3相/2相座標変換により、U相、V相およびW相の検出電流I、I、Iをα軸検出電流Iαおよびβ軸検出電流Iβへ変換する。α軸検出電流Iαは、αβ軸座標系のα軸成分であり、β軸検出電流Iβは、αβ軸座標系のβ軸成分である。
【0053】
重畳電流指令生成部42は、α軸重畳電流指令Iiα*およびβ軸重畳電流指令Iiβ*を生成する。例えば、重畳電流指令生成部42は、α軸重畳電流指令Iiα*を下記式(3)の演算によって生成する。この場合、重畳電流指令生成部42は、例えば、Iiβ*=0にする。なお、下記式(3)において、例えば、I≧Imaxになるように設定される。「Imax」は、例えば、モータ制御装置1の定格出力電流である。
iα*=Isin(ωst) ・・・(3)
【0054】
なお、上記式(3)の演算によって生成されるα軸重畳電流指令Iiα*は、正弦波信号であるが、α軸重畳電流指令Iiα*は、周波数ωを有するパルス信号や三角波信号(例えば、ノコギリ波信号)であってもよい。すなわち、α軸重畳電流指令Iiα*は、周波数ωを有する信号であればよい。なお、パルス信号や三角波信号は、周波数ω以外の周波数成分が多く含まれていることから、モータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dの検出精度の観点から、α軸重畳電流指令Iiα*は、パルス信号よりも正弦波信号であることが望ましい。
【0055】
また、上述した例では、α軸重畳電流指令Iiα*を交流信号とし、β軸重畳電流指令Iiβ*をゼロに設定したが、β軸重畳電流指令Iiβ*を交流信号とし、α軸重畳電流指令Iiα*をゼロに設定してもよい。例えば、重畳電流指令生成部42は、Iiβ*=Isin(ωst)とし、Iiα*=0とすることもできる。
【0056】
なお、Iiβ*=0、または、Iiα*=0であることが望ましいが、α軸重畳電流指令Iiα*またはβ軸重畳電流指令Iiβ*は0でなくてもよく、例えば、回転周波数ωmaおよび回転方向Dの検出に対する影響がすくないような小さい値であればよい。
【0057】
減算部43は、α軸重畳電流指令Iiα*からα軸検出電流Iαを減算する。α軸電流制御部45は、α軸重畳電流指令Iiα*とα軸検出電流Iαとの差が低減するようにα軸重畳電圧指令Viα*を生成する。例えば、α軸電流制御部45は、α軸重畳電流指令Iiα*とα軸検出電流Iαとの偏差がゼロになるようにPI(比例積分)制御を行って、α軸重畳電圧指令Viα*を生成する。
【0058】
かかるα軸重畳電圧指令Viα*によって、α軸重畳電流指令Iiα*に応じたα軸電流iαがインバータ部10からモータ3へ供給され、α軸重畳電流指令Iiα*に応じたα軸検出電流Iαが電流検出部11によって検出される。なお、α軸電流制御部45は、PI制御に代えて、P(比例)制御やPID(比例積分微分)制御を行うこともできる。
【0059】
減算部44は、β軸重畳電流指令Iiβ*からβ軸検出電流Iβを減算する。β軸電流制御部46は、β軸重畳電流指令Iiβ*とβ軸検出電流Iβとの差が低減するようにβ軸重畳電圧指令Viβ*を生成する。例えば、β軸電流制御部46は、β軸重畳電流指令Iiβ*とβ軸検出電流Iβとの偏差がゼロになるようにPI制御を行って、β軸重畳電圧指令Viβ*を生成する。
【0060】
かかるβ軸重畳電圧指令Viβ*によって、β軸重畳電流指令Iiβ*に応じたβ軸電流iβがインバータ部10からモータ3へ供給され、β軸重畳電流指令Iiβ*に応じたβ軸検出電流Iβが電流検出部11によって検出される。なお、β軸電流制御部46は、PI制御に代えて、P制御やPID制御を行うこともできる。
【0061】
上述したように、α軸重畳電圧指令Viα*は、駆動制御部21において、α軸電圧指令V1α*に加算される。これにより、α軸重畳電圧指令Viα*はα軸電圧指令V1α*に重畳される。また、β軸重畳電圧指令Viβ*は、駆動制御部21において、β軸電圧指令V1β*に加算される。これにより、β軸重畳電圧指令Viβ*はβ軸電圧指令V1β*に重畳される。なお、動作モードが速度探索モードである場合、例えば、V1α*=0、V1β*=0であり、この場合のα軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*が上述した電圧指令V*の一例である。
【0062】
α軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*によって、探索電流Iがインバータ部10からモータ3へ供給される。かかる探索電流Iには、α軸成分であるα軸電流iαとβ軸電流iβとが含まれる。そして、Iiα*=Isin(ωst)およびIiβ*=0である場合、例えば、iα=Isin(ωst)およびiβ=0になるように、探索電流Iがα軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*によって調整される。そのため、探索電流Iをα軸に対して流すことができる。
【0063】
なお、α軸電流制御部45およびβ軸電流制御部46でP制御を行う場合、β軸電流iβがゼロになるように制御されないことがあるが、この場合であっても、β軸電流iβを抑えつつ、探索電流Iのほとんどをα軸に対して流すことができる。
【0064】
また、Iiα*=0およびIiβ*=Isin(ωst)とすることで、探索電流Iをβ軸に対して流すこともできる。これにより、αβ軸座標系の一方の軸に対して探索電流Iを供給することができ、モータ3の回転周波数ωmaや回転方向Dを精度よく検出することができる。
【0065】
図2に示す駆動制御部21では、α軸重畳電圧指令Viα*がα軸電圧指令V1α*に加算され、β軸重畳電圧指令Viβ*がβ軸電圧指令V1β*に加算される構成であるが、駆動制御部21は、図2に示す構成に限定されない。
【0066】
図3は、駆動制御部21の他の構成を示す図である。図3に示す駆動制御部21は、加算部36、37(図2参照)に代えて切替部50を備える。切替部50は、α軸重畳電圧指令Viα*とα軸電圧指令V1α*とを切り替えて、α軸電圧指令Vα*として出力し、β軸重畳電圧指令Viβ*とβ軸電圧指令V1β*とを切り替えて、β軸電圧指令Vβ*として出力する。
【0067】
このように、駆動制御部21は、α軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*と、α軸電圧指令V1α*およびβ軸電圧指令V1β*とを切り替えて、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*として出力することもできる。なお、α軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*を総称して、重畳電圧指令Vと記載する場合がある。
【0068】
ここで、重畳電流指令生成部42についてさらに詳細に説明する。図4は、α軸重畳電流指令Iiα*の周波数ωの変化を示す図である。図4に示すように、重畳電流指令生成部42は、速度探索モードにおいて、まず、ω=ωmaxに設定したα軸重畳電流指令Iiα*を生成する。その後、時刻t1から時刻t2にかけてα軸重畳電流指令Iiα*の周波数ωを漸次低減したα軸重畳電流指令Iiα*を生成する。
【0069】
図5は、ω>ωmaである場合におけるモータ3の2次磁束φとα軸電流iαとの変化の一例を示す図であり、図6は、ω=ωmaである場合におけるモータ3の2次磁束φとα軸電流iαとの変化の一例を示す図である。なお、Iα=iαおよびIβ=iβであり、図5および図6に示す例では、α軸電流iαおよびβ軸電流iβに対応するα軸検出電流Iαおよびβ軸電流iβが示されている。
【0070】
ω>ωmaである場合、図5に示すように、2次磁束φおよびα軸電流iαがα軸の正方向と一致している状態から、Δt(=π/ω)経過した場合、α軸電流iαは、π進むが、2次磁束φはα軸電流iαよりも遅れる。
【0071】
一方、ω=ωmaである場合、図6に示すように、2次磁束φおよびα軸電流iαがα軸の正方向と一致している状態から、Δt(=π/ω)経過した場合、α軸電流iαおよび2次磁束φは、共にπ進む。この場合、モータ3の2次磁束φが大きくなり、モータ3の誘起電圧が大きくなる。そのため、モータ3の2次磁束φが増幅し、モータ3の誘起電圧が大きくなる。
【0072】
図7は、動作モードが速度探索モードである場合における、モータ3の回転周波数ωma、探索電流Iの周波数ω、α軸電圧指令Vα*、β軸電圧指令Vβ*、α軸磁束φα、および、β軸磁束φβの変化を示す図である。図7に示すように、モータ3の回転周波数ωmaが探索電流Iの周波数ωに一致した場合(図7に示す時刻t3)に、α軸電圧指令Vα*、β軸電圧指令Vβ*、α軸磁束φα、および、β軸磁束φβが最大になる。なお、ここでは、例えば、Vα*=Viα*、Vβ*=Viβ*である。
【0073】
そこで、回転周波数検出部48は、動作モードが速度探索モードである場合において、モータ3の電圧に基づいて、モータ3の回転周波数ωmaを検出する。たとえば、図2に示す回転周波数検出部48は、モータ3の電圧としてα軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*を用いて、モータ3の回転周波数ωmaを検出する。
【0074】
図8は、回転周波数検出部48の一例を示す図である。図8に示すように、回転周波数検出部48は、振幅検出部51と、極大検出部52と、電圧比較部53と、回転周波数決定部54とを備える。
【0075】
振幅検出部51は、モータ3の電圧振幅Vを検出する。かかる振幅検出部51は、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*に基づいて、例えば、下記式(4)の演算によって、モータ3の電圧振幅Vを求める。
=√(Vα*2+Vβ*2) ・・・(4)
【0076】
極大検出部52は、α軸重畳電流指令Iiα*の周波数ωが変化している状態において、振幅検出部51によって演算された電圧振幅Vのうち極大値になる電圧振幅Vを検出する。例えば、図7に示す例では、時刻t3の場合に、電圧振幅Vが極大値になる。
【0077】
また、極大検出部52は、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*のいずれか一方の電圧の極大値を検出することもできる。
【0078】
また、極大検出部52は、2次磁束オブザーバを備える構成であってもよい。この場合、極大検出部52の2次磁束オブザーバは、例えば、α軸電圧指令Vα*、β軸電圧指令Vβ*、α軸検出電流Iα、および、β軸検出電流Iβに基づいて、2次磁束φを推定することができる。そして、極大検出部52は、2次磁束オブザーバによって推定される2次磁束φの極大値を検出することができる。なお、2次磁束オブザーバは、公知の技術であり、2次磁束φを推定できる構成であればどのような構成であってもよい。
【0079】
極大検出部52は、検出対象(例えば、電圧振幅V、2次磁束φ、α軸電圧指令Vα*、β軸電圧指令Vβ*の少なくともいずれか一つ)を極大値にする探索電流Iの周波数ωを回転周波数ωma1として検出する。
【0080】
電圧比較部53は、電圧振幅Vが探索電流Iの周波数ωに応じた電圧以上になる探索電流Iの周波数ωを回転周波数ωma2として検出する。図9は、定格磁束時の誘起電圧Vq_baseと、電圧振幅Vと、誘起電圧Vq_baseを基準とした電圧振幅Vの比Rv(以下、振幅比Rvと記載する)との関係を示す図である。なお、定格磁束をφrateとした場合、誘起電圧Vq_baseは、例えば、Vq_base=ω×φrateの演算式によって求めることができる。
【0081】
探索電流Iの周波数ωが低下すると、図9に示すように、定格磁束時の誘起電圧Vq_baseも低下する。そして、探索電流Iの周波数ωが低下していくと、ω=ωmaとなった場合(図9に示す時刻t4)に、電圧振幅Vが最大(極大)になり、振幅比Rvも最大となる。電圧比較部53は、例えば、振幅比Rvの閾値Rthと振幅比Rv(=V/Vq_base)とを比較し、Rv≧Rthになった場合の探索電流Iの周波数ωを回転周波数ωma2として検出する。
【0082】
また、電圧比較部53は、極大検出部52の場合と同様に、2次磁束オブザーバを備える構成であってもよい。そして、電圧比較部53は、2次磁束オブザーバによって推定されたモータ3の2次磁束φが閾値φth以上になった場合の探索電流Iの周波数ωを回転周波数ωma2として検出することができる。なお、閾値φthは、探索電流Iの周波数ωに応じた閾値であってもよい。
【0083】
回転周波数決定部54は、極大検出部52によって検出された回転周波数ωma1および電圧比較部53によって検出された回転周波数ωma2のいずれか一方をモータ3の回転周波数ωmaとして決定する。なお、極大検出部52で検出された回転周波数ωma1を用いるか、電圧比較部53で検出された回転周波数ωma2を用いるかは、例えば、予め設定されたパラメータによって決定される。
【0084】
また、回転周波数決定部54は、回転周波数ωma1および回転周波数ωma2のうち、回転周波数ωma1をモータ3の回転周波数ωmaとして優先的に出力することもできる。また、例えば、パラメータの設定に従って、極大検出部52および電圧比較部53のいずれか一方の動作を停止させることもできる。また、回転周波数決定部54は、例えば、回転周波数ωma1と回転周波数ωma2との平均値をモータ3の回転周波数ωmaとして決定することもできる。
【0085】
図2に戻って、回転状態探索部22の説明を続ける。回転状態探索部22の回転方向検出部49は、探索電流Iによって生じるモータ3の電圧に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出する。回転方向検出部49は、モータ3の電圧として、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*を用いて、モータ3の回転方向Dを検出する。
【0086】
回転方向検出部49は、例えば、検出された回転周波数ωmaと一致する周波数ωの探索電流Iがインバータ部10からモータ3へ供給されている状態で、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出することができる。この場合、α軸電流制御部45およびβ軸電流制御部46は、回転周波数検出部48でモータ3の回転周波数ωmaが検出された後も、α軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*の出力を継続する。
【0087】
かかる回転方向検出部49は、α軸電圧指令Vα*とβ軸電圧指令Vβ*との位相差に基づき、モータ3の回転方向Dを検出することができる。回転方向検出部49は、例えば、α軸電圧指令Vα*よりもβ軸電圧指令Vβ*が90度進んでいる場合には、モータ3の回転方向Dが正転であると判定し、90度遅れている場合には、モータ3の回転方向Dが正転であると判定することができる。
【0088】
図10は、回転方向検出部49の一例を示す図である。図10に示すように、回転方向検出部49は、位相演算部61と、第1回転方向決定部62と、第2回転方向決定部63とを備える。
【0089】
位相演算部61は、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*に基づいて、モータ3の電圧位相θs1を演算する。位相演算部61は、例えば、下記式(5)の演算により、電圧位相θs1を求める。
θs1=tan−1(Vβ*/Vα*) ・・・(5)
【0090】
第1回転方向決定部62は、微分部64と、正負判定部65とを備える。微分部64は、電圧位相θs1を微分して電圧周波数ωs1を求める。正負判定部65は、電圧周波数ωs1の正負を判定し、モータ3の回転方向Dを検出する。
【0091】
正負判定部65は、例えば、ωs1>0である場合、モータ3の回転方向Dが正転であると判定し、ωs1<0である場合、モータ3の回転方向Dが反転であると判定する。正負判定部65は、モータ3の回転方向Dが正転である場合、例えば、D=1とし、モータ3の回転方向Dが反転である場合、例えば、D=−1とする。
【0092】
第2回転方向決定部63は、傾き判定部66を備える。かかる傾き判定部66は、位相演算部61によって演算されたモータ3の電圧位相θs1の変化状態に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出する。
【0093】
図11は、モータ3の回転方向Dが正転である場合におけるα軸電圧指令Vα*、β軸電圧指令Vβ*および電圧位相θs1の状態を示す図であり、図12は、モータ3の回転方向Dが逆転である場合におけるα軸電圧指令Vα*、β軸電圧指令Vβ*および電圧位相θs1の状態を示す図である。
【0094】
図11に示すように、モータ3の回転方向Dが正転である場合、電圧位相θs1の変化状態は、値が漸次増加する方向に変化する上り勾配を有する波形となる。一方、モータ3の回転方向Dが正転である場合、図12に示すように、電圧位相θs1の変化状態は、値が漸次減少する方向に変化する下り勾配を有する波形となる。
【0095】
傾き判定部66は、例えば、上り勾配を有する波形である場合には、モータ3の回転方向Dが正転であると判定し、下り勾配の波形である場合には、モータ3の回転方向Dが逆転であると判定する。
【0096】
回転方向検出部49は、第1回転方向決定部62および第2回転方向決定部63のいずれか一方によって検出されたモータ3の回転方向Dを出力する。
【0097】
なお、第1回転方向決定部62で検出された回転方向Dを用いるか、第2回転方向決定部63で検出された回転方向Dを用いるかは、例えば、予め設定されたパラメータによって決定される。また、例えば、パラメータの設定に従って、第1回転方向決定部62および第2回転方向決定部63のいずれか一方の動作を停止させることもできる。
【0098】
このようにモータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dを回転状態探索部22によって検出した後、V/f制御部32は、電圧復帰処理および加速処理を行う。図13は、回転状態探索処理、電圧復帰処理および加速処理における状態量の変化を示す図である。なお、図13に示す「ωo」は、インバータ部10の出力電圧(以下、出力電圧Voutと記載する)の周波数である。
【0099】
駆動制御部21は、回転状態探索部22によってモータ3の回転周波数ωmaと回転方向Dとの判別が完了するタイミングの電圧位相θs1と電圧振幅Vとを回転状態探索部22から取得する。電圧位相θs1は例えば、位相演算部34によって取得され、電圧振幅VはV/f制御部32によって取得される。
【0100】
V/f制御部32は、電圧復帰処理において、q軸電圧指令V*(出力電圧の大きさの一例)の初期値と位相θ(出力電圧の位相の一例)の初期値とを座標変換部35へ設定する。例えば、V/f制御部32は、回転状態探索部22から取得した電圧振幅Vをq軸電圧指令V*の初期値を座標変換部35へ出力する。
【0101】
また、位相演算部34は、位相θの初期値としてθs1+π/2またはθs1−π/2を用いる。例えば、位相演算部34は、位相θの初期値として、モータ3の回転方向Dが正転である場合、θ=θs1−π/2とし、モータ3の回転方向Dが逆転である場合、θ=θs1+π/2とする。これは、制御部20において磁束位相を回転座標位相と定義しているためである。
【0102】
V/f制御部32は、電圧復帰処理において、q軸電圧指令V*および位相θの初期値を座標変換部35に設定した後、モータ3の2次磁束φを定格まで立ち上げるため、インバータ部10の出力電圧Voutを目標電圧まで戻すようにq軸電圧指令V*を徐々に大きくしていく。
【0103】
例えば、V/f制御部32は、ΔVの傾き、すなわち、単位時間当たりΔVずつ上昇するように、q軸電圧指令V*を徐々に大きくしていく。これにより、モータ3の電圧が急激に変化することを防止することができる。
【0104】
なお、出力電圧Voutの目標電圧は、速度指令ω*が回転状態探索部22によって検出されるモータ3の回転周波数ωmaと同じであると仮定した場合(ω*=ωma)に、V/f制御部32から出力されるq軸電圧指令V*の値に対応する。これにより、モータ3の回転周波数ωmaを固定した状態(ω*=ωmaとした状態)で、出力電圧Voutを目標電圧に戻すことができる。
【0105】
次に、V/f制御部32は、周波数指令生成部31から出力される速度指令ω*が検出された回転周波数ωmaよりも低い場合、周波数指令生成部31から出力される速度指令ω*に応じたq軸電圧指令V*の値になるように、q軸電圧指令V*を徐々に大きくする。これにより、モータ3の回転が加速され、モータ3の回転周波数ωmaを周波数指令生成部31から出力される速度指令ω*に一致させることができる。
【0106】
このように、制御部20は、回転状態探索処理を実行した後、電圧復帰処理および加速処理を行うことができ、これにより、速度指令ω*に一致するようにモータ3の回転周波数ωmaを調整することができる。
【0107】
[4.制御部20の処理]
次に、制御部20による回転状態探索処理、電圧復帰処理および加速処理について説明する。図14は、回転状態探索処理、電圧復帰処理および加速処理の流れを示すフローチャートである。
【0108】
図14に示すように、回転状態探索部22は、回転状態探索処理を開始すると、まず、インバータ部10を制御し、探索電流Iをインバータ部10からモータ3へ供給する(ステップS10)。
【0109】
例えば、回転状態探索部22は、上記式(3)の演算によって生成したα軸重畳電流指令Iiα*とゼロに設定したβ軸重畳電流指令Iiβ*とを生成する。これにより、α軸重畳電流指令Iiα*およびβ軸重畳電流指令Iiβ*に応じた探索電流Iがインバータ部10からモータ3へ供給される。
【0110】
次に、回転状態探索部22は、モータ3の回転周波数ωmaを検出したかどうか判定する(ステップS11)。図15は、図14に示すステップS11の処理の流れを示すフローチャートである。
【0111】
図15に示すように、回転状態探索部22は、モータ3の電圧および磁束の大きさ(例えば、電圧振幅Vまたは2次磁束φ)を検出し(ステップS20)、ステップS20で検出したモータ3の電圧および磁束の少なくとも一方の大きさが極大値または閾値(例えば、固定値または周波数ωに応じた閾値)以上となったか否かを判定する(ステップS21)。
【0112】
ステップS21の処理において、モータ3の電圧および磁束の少なくとも一方の大きさが極大値または閾値以上となったと判定した場合(ステップS21;Yes)、回転状態探索部22は、モータ3の電圧および磁束を極大値または閾値以上にする探索電流Iの周波数ωをモータ3の回転周波数ωmaとして決定し、モータ3の回転周波数ωmaを検出したと判定する(ステップS22)。
【0113】
ステップS22の処理が終了した場合、または、ステップS21において、モータ3の電圧および磁束の少なくとも一方の大きさが極大値または閾値以上となっていないと判定した場合(ステップS21;No)、ステップS11の処理を終了する。
【0114】
ステップS11の処理において、モータ3の回転周波数ωmaを検出していないと判定した場合(ステップS11;No)、回転状態探索部22は、図14に示すように、探索電流Iの周波数ωを変更する(ステップS12)。探索電流Iの周波数ωは、例えば、上記式(3)の周波数ωを変更することによって行う。周波数ωの変更は、例えば、探索電流Iの周波数ωをΔωだけ下げることによって行われる。
【0115】
図14に示すステップS11の処理において、モータ3の回転周波数ωmaを検出したと判定した場合(ステップS11;Yes)、回転状態探索部22は、モータ3の電圧および磁束の少なくとも一方に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出する(ステップS13)。
【0116】
図16は、図14に示すステップS13の処理の流れを示すフローチャートである。図16に示すように、回転状態探索部22は、モータ3の電圧位相θs1を演算し(ステップS30)、電圧位相θs1の微分値の正負または電圧位相θs1の変化状態(例えば、傾き)に基づき、モータ3の回転方向Dを検出する(ステップS31)。なお、回転状態探索部22は、モータ3の一方の軸の電圧と他方の軸の電圧との位相差に基づいて、モータ3の回転方向を検出することができる。
【0117】
このように、モータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dの検出処理である回転状態探索処理が終了すると、駆動制御部21は、次に、電圧復帰処理を行う。電圧復帰処理において、まず、駆動制御部21は、図14に示すように、q軸電圧指令V*(出力電圧の大きさの一例)の初期値と位相θ(出力電圧の位相の一例)の初期値を設定する(ステップS14)。
【0118】
駆動制御部21は、例えば、回転状態探索処理が終了するタイミングの電圧振幅Vをq軸電圧指令V*の初期値とし、回転状態探索処理が終了するタイミングの電圧位相θs1に+π/2または−π/2を加算した値を位相θの初期値として設定する。
【0119】
次に、駆動制御部21は、出力電圧Voutを目標電圧まで戻すようにq軸電圧指令V*を徐々に大きくしていく(ステップS15)。そして、出力電圧Voutが目標値に達すると、駆動制御部21は、速度指令ω*に応じた出力電圧Voutになるように、q軸電圧指令V*を徐々に大きし、速度指令ω*の速度までモータ3の速度を加速する(ステップS16)。
【0120】
なお、上述した実施形態では、モータ3が2極のモータであり、モータ3の電気角周波数ωとモータ3の機械角速度ωmechとが一致する。そのため、回転周波数検出部48によって検出されるモータ3の回転周波数ωmaは、モータ3の電気角周波数ωと言え、また、モータ3の機械角速度ωmechとも言える。
【0121】
また、上述した実施形態では、回転周波数検出部48および回転方向検出部49は、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*に基づいて、モータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dを検出するが、かかる例に限定されない。
【0122】
例えば、回転周波数検出部48および回転方向検出部49は、α軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*に基づいて、モータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dを検出することもできる。この場合、回転周波数検出部48および回転方向検出部49は、α軸電圧指令Vα*に代えてα軸重畳電圧指令Viα*を用い、β軸電圧指令Vβ*に代えてβ軸重畳電圧指令Viβ*を用いる。
【0123】
また、回転周波数検出部48および回転方向検出部49は、α軸検出電圧Vαおよびβ軸検出電圧Vβに基づいて、モータ3の回転周波数ωmaおよび回転方向Dを検出することもできる。図17は、図1に示すモータ制御装置1の構成の他の一例を示す図である。
【0124】
図17に示すモータ制御装置1は、図1に示す電圧検出部12を有し、かかる電圧検出部12は、モータ3のU相、V相およびW相の電圧の瞬時値V、V、V(以下、検出電圧V、V、Vと記載する)を検出する。
【0125】
また、回転状態探索部22は、3相/2相座標変換部47を有し、かかる3相/2相座標変換部47は、検出電圧V、V、Vを3相/2相変換によって、α軸検出電圧Vαおよびβ軸検出電圧Vβを求める。α軸検出電圧Vαは、検出電圧Voのうちαβ軸座標系のα軸成分であり、β軸検出電圧Vβは、検出電圧Voのうちαβ軸座標系のβ軸成分である。
【0126】
回転周波数検出部48および回転方向検出部49は、α軸電圧指令Vα*に代えてα軸検出電圧Vαを用い、β軸電圧指令Vβ*に代えてβ軸検出電圧Vβを用いる。なお、図17に示す回転周波数検出部48および回転方向検出部49は、α軸電圧指令Vα*に代えてα軸検出電圧Vαを用い、β軸電圧指令Vβ*に代えてβ軸検出電圧Vβを用いる以外は、上述した図2に示す回転周波数検出部48および回転方向検出部49と同様の処理を行う。
【0127】
なお、回転方向検出部49は、例えば、モータ3の回転周波数ωmaが検出された後、インバータ部10からモータ3への電圧供給が停止した状態で、α軸検出電圧Vαおよびβ軸検出電圧Vβに基づいて、モータ3の回転方向Dを検出することができる。この場合、駆動制御部21は、回転周波数検出部48でモータ3の回転周波数ωmaが検出された後、例えば、インバータ部10を制御し、インバータ部10のスイッチング素子Q1〜Q6をすべてOFFにする。これにより、インバータ部10からモータ3への電圧供給が停止される。
【0128】
以上のように、実施形態にかかるモータ制御装置1は、インバータ部10および制御部20を備える。インバータ部10は、モータ3に電力を供給する。制御部20は、モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系(例えば、αβ軸座標系)の軸に対して探索電流I(交流電流の一例)を探索電流Iの周波数ωを変えながらインバータ部10から供給させる。
【0129】
このように、モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系の一方の軸に対して探索電流Iを供給することによってモータ3の2次磁束φを励磁することができる。かかる2次磁束φは、モータ3の回転(モータ3の回転子の回転)に伴って回転し、探索電流Iの周波数ωとモータ3の回転周波数ωmaとの一致度が高くなるほど高まる。そのため、例えば、瞬時停電復帰後にモータ3の残留磁束が検出可能に残存していないような場合であっても、探索電流Iの周波数ωを変化させることによって、2次磁束φを発生させ且つ強めることができる。これにより、例えば、モータ3の回転状態を精度よく検出することができる。なお、上述した実施形態では、モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系として、αβ軸座標系を例に挙げて説明したが、αβ軸座標系の原点を中心としてαβ軸座標系から所定角度Daだけ回転した静止直交座標系であってもよい。この場合、制御部20は、例えば、αβ軸座標系のα軸またはβ軸から所定角度Daずれた方向に対して探索電流I(交流電流の一例)をその周波数ωを変えながらインバータ部10から供給させる。
【0130】
また、制御部20は、回転周波数検出部48を備える。かかる回転周波数検出部48は、探索電流Iをモータ3へ供給している状態でモータ3の電圧(例えば、電圧振幅V、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*など)および2次磁束φ(磁束の一例)の少なくとも一方に基づいて、モータ3の回転周波数ωmaを検出する。
【0131】
探索電流Iを供給した場合、かかる探索電流Iの周波数ωとモータ3の回転周波数ωmaとの一致度が高くなるほどモータ3の2次磁束φが大きくなり、それに伴い、モータ3の電圧も高くなる。したがって、モータ3の磁束または電圧に基づいてモータ3の回転周波数ωmaを精度よく検出することができる。また、モータ3の電圧に基づいてモータ3の回転周波数ωmaを検出することにより、モータ3の回転周波数ωmaの検出を容易に行うことができる。また、探索電流Iを流すために生成される重畳電圧指令V(電圧指令の一例)からモータ3の電圧を把握することで、モータ3の回転周波数ωmaを検出するための構成を簡易な構成とすることができる。
【0132】
また、回転周波数検出部48は、モータ3の電圧および2次磁束φの少なくとも一方を極大にする探索電流Iの周波数ωをモータ3の回転周波数ωmaとして検出する。探索電流Iの周波数とモータ3の回転周波数ωmaとが一致した場合に、モータ3の磁束や電圧が極大になることから、モータ3の2次磁束φや電圧を極大にする探索電流Iの周波数ωを検出する。これにより、モータ3の回転周波数ωmaの検出を容易かつ精度よく行うことができる。
【0133】
また、回転周波数検出部48は、モータ3の電圧(例えば、電圧振幅V)または2次磁束φの少なくとも一方が探索電流Iの周波数ωに応じた閾値(例えば、閾値電圧Vth)以上になる探索電流Iの周波数ωをモータ3の回転周波数ωmaとして検出する。
【0134】
このように、モータ3の電圧と比較する閾値を設けることで、極大値を検出する場合に比べ、モータ3の回転周波数ωmaの検出を容易に行うことができる。また、探索電流Iの周波数ωに応じて閾値を設けることで、モータ3の回転周波数ωmaの検出を容易かつ精度よく行うことができる。例えば、モータ3の駆動電圧の大きさは、駆動電圧の周波数によって異なり、また、探索電流Iによって生じる電圧も異なることから、モータ3の回転周波数ωmaを検出するための閾値を精度よく設定することができる。
【0135】
また、制御部20は、探索電流Iによって生じるモータ3の電圧(例えば、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*)に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出する回転方向検出部49を備える。
【0136】
このように、探索電流Iによって生じるモータ3の電圧に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出することができることから、例えば、モータ3の回転周波数ωmaを検出する際に併せてモータ3の回転方向Dを検出することができる。また、モータ3の回転周波数ωmaを検出した後、続けて、モータ3の回転方向Dを検出することができる。
【0137】
また、回転方向検出部49は、αβ軸座標系(モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系の一例)におけるモータ3の一方の軸の電圧(例えば、α軸電圧指令Vα*)と他方の軸の電圧(例えば、β軸電圧指令Vβ*)との位相差に基づいて、モータ3の回転方向Dを決定する。
【0138】
これにより、例えば、α軸電圧指令Vα*とβ軸電圧指令Vβ*の位相差がマイナスかプラスかを検出することによって、モータ3の回転方向Dを容易に検出することができる。すなわち、α軸電圧指令Vα*とβ軸電圧指令Vβ*とは90度の位相差があるが、α軸電圧指令Vα*に対してβ軸電圧指令Vβ*が進んでいるか遅れているかを検出することで、モータ3の回転方向Dを容易に検出することができる。
【0139】
また、回転方向検出部49は、位相演算部61と、第1回転方向決定部62(回転方向決定部の一例)とを備える。位相演算部61は、モータ3の電圧(例えば、α軸検出電圧Vαおよびβ軸検出電圧Vβ)に基づいてモータ3の電圧位相θs1を演算する。第1回転方向決定部62は、位相演算部61によって演算されたモータ3の電圧位相θs1の変化状態に基づいて、モータ3の回転方向Dを決定する。
【0140】
モータ3の電圧位相θs1の変化状態は、モータ3の回転方向Dによって変わることから、モータ3の電圧位相θs1を演算し、かかる電圧位相θs1の変化状態を検出することによって、精度よくモータ3の回転方向Dを検出することができる。
【0141】
また、回転方向検出部49は、探索電流Iによって生じるモータ3の電圧であって探索電流Iの供給を停止した後に検出されるモータ3の電圧(例えば、α軸電圧指令Vα*およびβ軸電圧指令Vβ*)に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出する。
【0142】
探索電流Iによってモータ3に2次磁束φを発生させた後、探索電流Iの供給を停止した場合、モータ3には残留磁束が生じている。回転方向検出部49は、探索電流Iの供給停止によりモータ3への探索電流Iの供給が無いがモータ3に残留磁束が生じている状態でモータ3の残留磁束に基づく電圧を検出することができ、これにより、モータ3の回転方向Dをより精度よく検出することができる。
【0143】
また、制御部20は、重畳電流指令生成部42(電流指令生成部の一例)と、α軸電流制御部45およびβ軸電流制御部46(電流制御部の一例)と、駆動制御部21と、回転方向検出部49とを備える。重畳電流指令生成部42は、探索電流Iに対応するα軸重畳電流指令Iiα*およびβ軸重畳電流指令Iiβ*(交流電流に対応する電流指令の一例)を生成する。α軸電流制御部45は、α軸重畳電流指令Iiα*とα軸検出電流Iα(モータに流れる電流の一例)との差に基づいてα軸重畳電圧指令Viα*を生成する。β軸電流制御部46は、β軸重畳電流指令Iiβ*とβ軸検出電流Iβ(モータに流れる電流の一例)との差に基づいてβ軸重畳電圧指令Viβ*を生成する。駆動制御部21は、α軸重畳電圧指令Viα*が重畳されたα軸電圧指令Vα*とβ軸重畳電圧指令Viβ*が重畳されたβ軸電圧指令Vβ*に基づいてインバータ部10へ探索電流Iを供給させる。回転方向検出部49は、α軸電圧指令Vα*とβ軸電圧指令Vβ*(電圧指令の一例)、または、α軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*(電圧指令の一例)に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出する。
【0144】
このように、探索電流Iを流すために生成されるα軸重畳電圧指令Viα*およびβ軸重畳電圧指令Viβ*に基づいて、モータ3の回転方向Dを検出することができる。そのため、例えば、モータ3の電圧を直接検出する処理が不要になり、モータ3の回転方向Dを検出するための構成を簡易な構成とすることができる。
【0145】
また、モータ制御装置1は、インバータ部10と、制御部20とを備える。インバータ部10は、モータ3に電力を供給する。制御部20は、インバータ部10を制御し、モータ3の相電圧と所定の位相関係を有する軸を有する静止直交座標系(例えば、αβ軸座標系)の軸に対して探索電流Iをインバータ部10から供給させる。
【0146】
探索電流Iを供給した場合、かかる探索電流Iの周波数ωにモータ3の回転周波数ωmaが近い場合、探索電流Iによってモータ3の2次磁束φが大きくなる。そのため、例えば、フリーラン状態に移行した後のモータ3の回転周波数ωmaの低下が予測できるような場合、予測したモータ3の回転周波数ωmaに対応する周波数ωの探索電流Iを供給する。これにより、2次磁束φを生じさせることができ、例えば、モータ3の回転方向Dの検出を容易に行うことができる。
【0147】
また、静止直交座標系(例えば、αβ軸座標系)の他方の軸(例えば、β軸)の電流がゼロになるように一方の軸(例えば、α軸)に探索電流Iをインバータ部10から供給させる。これにより、一方の軸に流れる交流電流以外の電流によるモータ3の電圧への影響を抑えることができる。そのため、モータ3の回転状態をより精度よく検出することができる。
【0148】
モータ制御装置1は、モータ3に電力を供給するインバータ部10と、回転状態探索部22とを備える。回転状態探索部22は、「前記モータの静止直交座標系の一方の軸に対して前記インバータ部から供給される交流電流によって生じる前記モータの電圧または電流に基づいて、前記モータの回転周波数および回転方向の少なくとも一つを検出する制御手段」の一例である。
【0149】
なお、図2に示すモータ制御装置1は、V/f制御によってモータ3を制御する構成であるが、ベクトル制御によってモータ3を制御するモータ制御装置であってもよい。また、また、図中(例えば図1〜3、図8図10)の矢印は、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、他の流れの否定や方向の限定を意味するものではない。
【0150】
また、上述の実施形態では、モータ3の回転周波数ωmaと一致する周波数ωの探索電流Iが供給された場合に、2次磁束および誘起電圧が最も大きくなるモータ3を一例として説明したが、モータ3はかかる例に限定されない。すなわち、モータ3の回転周波数ωmaと探索電流Iの周波数ωとが一定の関係にある場合に、2次磁束および誘起電圧が最も大きくなるモータ3であっても、モータ3の回転状態を精度よく検出することができる。
【0151】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0152】
1 モータ制御装置
3 モータ
10 インバータ部
20 制御部
21 駆動制御部
42 重畳電流指令生成部(電流指令生成部の一例)
45 α軸電流制御部(電流制御部の一例)
46 β軸電流制御部(電流制御部の一例)
48 回転周波数検出部
49 回転方向検出部
51 振幅検出部
52 極大検出部
53 電圧比較部
54 回転周波数決定部
61 位相演算部
62 第1回転方向決定部(回転方向決定部の一例)
63 第2回転方向決定部
64 微分部
65 正負判定部
66 傾き判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17