(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および第2貫通部間のピッチと、前記第1および第2トレンチ間のピッチとが等しくなるように、前記第1および第2トレンチを形成する、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
前記第1および第2トレンチを形成する工程は、前記マスク層を用いて熱エッチングを行うことにより、前記第3層の厚さ方向に対する前記第1および第2トレンチの側壁の角度が、前記第2層の厚さ方向に対する前記電荷補償領域の側面の角度よりも大きくなるように、前記第1および第2トレンチの側壁を傾斜させる工程を含む、請求項1又は請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に記載の技術では、p型ピラー層(電荷補償構造)上に、チャネルとして機能するp
+型ベース層が形成される。このため、電荷補償構造中の不純物がチャネル特性に影響を与えてしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、その目的は、チャネル特性への影響を避けつつ、かつオン抵抗を抑制しつつ、耐圧を向上させることができる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の炭化珪素半導体装置は、炭化珪素層と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極と、第1電極と、第2電極とを有する。炭化珪素層は、厚さ方向に互いに対向する第1表面および第2表面を有する。炭化珪素層は、第1領域と、第2領域と、第3領域と、第4領域とを有する。第1領域は、第1表面をなし、第1導電型を有する。第2領域は、第1領域によって第1表面から隔てられるように第1領域上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する。第3領域は、第2領域上に設けられ、第2領域によって第1領域と分離され、第1導電型を有する。第4領域は、第1表面および第2領域の各々から離れて第1領域内に設けられ、第2導電型を有する。ゲート絶縁膜は、第1領域および第3領域の間をつなぐように第2領域上に設けられている。ゲート電極は、ゲート絶縁膜上に設けられている。第1電極は、第1領域上に設けられている。第2電極は第3領域上に設けられている。
【0007】
本装置によれば、第1領域が空乏化されることにより生じる正または負の一方の極性の固定電荷に起因した厚さ方向における電界の少なくとも一部が、第4領域が空乏化されることにより生じる他方の極性の固定電荷によって補償される。言い換えれば、電荷補償構造が設けられる。これにより厚さ方向の電界強度の最大値が抑制される。よって炭化珪素半導体装置の耐圧を向上させることができる。また本装置によれば、第4領域は第2領域から離れている。これにより第4領域中の不純物が、チャネルとして機能する第2領域に影響することを避けることができる。
【0008】
好ましくは、第4領域は厚さ方向において5μmよりも大きい厚さを有する。これにより電荷補償構造が、厚さ方向においてより広い範囲にわたって設けられる。よって炭化珪素半導体装置の耐圧をより向上させることができる。
【0009】
好ましくは、第2表面には、側壁を有し、第3領域および第2領域を貫通して第1領域に至り、第4領域から離れたゲートトレンチが設けられている。またゲート絶縁膜は側壁上に設けられている。これにより上記電荷補償構造をトレンチ型半導体装置に適用することができる。
【0010】
好ましくは、炭化珪素層の第2表面に対してゲートトレンチの側壁は、0°よりも大きく90°よりも小さい角度だけ傾斜している。これにより、第2表面に対して傾いた面方位を有するチャネル面を設けることができる。
【0011】
好ましくは、厚さ方向に対する第4領域の側面の角度は、厚さ方向に対するゲートトレンチの角度に比して小さい。これにより、第4領域による電荷補償をより十分に行うことができる。
【0012】
好ましくは、炭化珪素層は六方晶系の結晶構造を有する。また炭化珪素層のゲートトレンチの側壁は{0−33−8}面および{0−11−4}面の少なくともいずれかからなる部分を含む。これにより、側壁上におけるキャリア移動度を高めることができる。よって炭化珪素半導体装置のオン抵抗を抑制することができる。
【0013】
本発明の炭化珪素半導体装置の製造方法は次の工程を有する。厚さ方向に互いに対向する第1表面および第2表面を有する炭化珪素層が準備される。炭化珪素層は、第1領域と、第2領域と、第3領域と、第4領域とを有する。第1領域は、第1表面をなし、第1導電型を有する。第2領域は、第1領域によって第1表面から隔てられるように第1領域上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する。第3領域は、第2領域上に設けられ、第2領域によって第1領域と分離され、第1導電型を有する。第4領域は、第1表面および第2領域の各々から離れて第1領域内に設けられ、第2導電型を有する。第2表面に、側壁を有し、第3領域および第2領域を貫通して第1領域に至り、第4領域から離れたゲートトレンチが形成される。ゲートトレンチの側壁上にゲート絶縁膜が形成される。ゲート絶縁膜上にゲート電極が形成される。炭化珪素層の第1領域上に第1電極が形成される。炭化珪素層の第3領域上に第2電極が形成される。
【0014】
本製造方法によって得られる炭化珪素半導体装置によれば、第1領域が空乏化されることにより生じる正または負の一方の極性の固定電荷に起因した厚さ方向における電界の少なくとも一部が、第4領域が空乏化されることにより生じる他方の極性の固定電荷によって補償される。言い換えれば、電荷補償構造が設けられる。これにより厚さ方向の電界強度の最大値が抑制される。よって炭化珪素半導体装置の耐圧を向上させることができる。また本製造方法によれば、第4領域は第2領域から離れている。これにより第4領域中の不純物が、チャネルとして機能する第2領域に影響することを避けることができる。
【0015】
好ましくは、ゲートトレンチは熱エッチングを用いて形成される。これによりゲートトレンチの側壁の面方位を結晶学的に特定のものとすることができる。
【0016】
好ましくは、炭化珪素層を準備する工程は、次の工程を有する。第1表面をなし第1領域を部分的になすベース部分が準備される。ベース部分上におけるエピタキシャル成長によって第4領域が形成される。第4領域に、ベース部分の一部を露出する貫通部が形成される。第1領域を部分的になし第4領域の貫通部を埋める埋込部分と、第1領域を部分的になし埋込部分およびベース部分を覆う被覆部分とが形成される。被覆部分の上に第2領域および第3領域が形成される。これにより第1領域に、第4領域を貫通する部分を設けることができる。
【0017】
好ましくは、貫通部は、物理的エッチング作用を有するエッチングを用いて形成される。これにより、貫通部の形成のためのエッチングを、より垂直に行うことができる。これにより、貫通部の内面からなる、第4領域の側面を、厚さ方向に沿わせることができる。よって第4領域による電荷補償をより十分に行うことができる。
【0018】
なお上記における「炭化珪素層の第1領域上に」との記載は、「第1領域上に直接に(directly on)」ということと、「第1領域上に間接に(indirectly on)」ということとのいずれをも意味し得る。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明によれば、炭化珪素半導体装置において、オン抵抗を抑制しつつ耐圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図2】
図1の炭化珪素半導体装置が有する炭化珪素層の構成を概略的に示す、
図3〜
図5の各々における線II−IIに沿う部分断面図である。
【
図3】
図2の炭化珪素層の構成を概略的に示す部分斜視図である。
【
図4】
図2の炭化珪素層の構成を概略的に示す部分平面図である。
【
図5】
図4の炭化珪素層の構成をより詳細に示す部分平面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す部分平面図である。
【
図8】
図7の線VIII−VIIIに沿う概略部分断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第3工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第4工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第5工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第6工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第7工程を概略的に示す部分平面図である。
【
図14】
図13の線XIV−XIVに沿う概略部分断面図である。
【
図15】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第8工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図16】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第9工程を概略的に示す部分平面図である。
【
図17】
図16の線XVII−XVIIに沿う概略部分断面図である。
【
図18】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第10工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図19】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第11工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図20】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第12工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図21】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第13工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図22】本発明の実施の形態1における炭化珪素半導体装置の製造方法の第14工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図23】本発明の実施の形態2における炭化珪素半導体装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図24】
図23の炭化珪素半導体装置が有する炭化珪素層の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図25】本発明の実施の形態2における炭化珪素半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図26】本発明の実施の形態2における炭化珪素半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
【0022】
(実施の形態1)
図1〜
図5を参照して、はじめに本実施の形態のMOSFET100(炭化珪素半導体装置)の構造について説明する。
【0023】
図1に示すように、MOSFET100は、単結晶基板1と、SiC層10(炭化珪素層)と、ドレイン電極31(第1電極)と、ソース電極32(第2電極)と、ゲート酸化膜21(ゲート絶縁膜)と、層間絶縁膜22と、ゲート電極30と、ソース配線層33とを有する。
【0024】
単結晶基板1は、n型(第1導電型)を有する炭化珪素から作られている。たとえば、単結晶基板1は、六方晶系および立方晶系のいずれかの単結晶構造を有する炭化珪素から作られている。好ましくは単結晶基板1には、基準面から5度以内のオフ角を有する主表面(図中上面)が設けられている。基準面は、六方晶系の場合は{000−1}面であり、より好ましくは(000−1)面である。また基準面は立方晶系の場合は{111}面である。好ましくは、オフ角は0.5度以上である。
【0025】
さらに
図2〜
図5を参照して、SiC層10は、厚さ方向DD(
図2)に互いに対向する下面F1(第1表面)および上面F2(第2表面)を有する。下面F1および上面F2は実質的に互いに平行である。またSiC層10は、n
-ドリフト領域11(第1領域)、p領域12(第2領域)、n領域13(第3領域)、電荷補償領域14(第4領域)、およびp
+コンタクト領域15を有する。
【0026】
n
-ドリフト領域11は、下面F1をなし、n型(第1導電型)を有する。n
-ドリフト領域11は、ベース部分11aと、埋込部分11bと、被覆部分11cとを有する。ベース部分11aはSiC層10の下面F1をなしている。ベース部分11a上に電荷補償領域14が設けられている。電荷補償領域14には、ベース部分11aと被覆部分11cとをつなぐ貫通部PPが設けられている。貫通部PPのピッチPTは、好ましくは、後述するゲートトレンチGTのピッチと同じである。埋込部分11bは電荷補償領域14の貫通部PPを埋めている。被覆部分11cは埋込部分11bおよびベース部分11aを覆っている。被覆部分11c上にp領域12が設けられている。ベース部分11aと、埋込部分11bと、被覆部分11cとの各々は、不純物濃度も含め同一の材料から作られていてもよい。
【0027】
p領域12は、n
-ドリフト領域11の被覆部分11c上に設けられ、p型(第1導電型と異なる第2導電型)を有する。n領域13は、p領域12上に設けられ、p領域12によってn
-ドリフト領域11と分離され、n型(第1導電型)を有する。
【0028】
上面F2には、n領域13およびp領域12を貫通してn
-ドリフト領域11に至り、底部BTおよび側壁SSを有するゲートトレンチGTが設けられている。ゲートトレンチGTは電荷補償領域14から離れている。側壁SSはn
-ドリフト領域11とp領域12とn領域13との各々からなる部分を有する。n
-ドリフト領域11の不純物の濃度は、好ましくは5×10
15cm
-3以上5×10
17cm
-3以下であり、より好ましくは5×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下である。
【0029】
電荷補償領域14はp型(第2導電型)を有する。電荷補償領域14は、下面F1およびp領域12の各々から離れて、n
-ドリフト領域11内に設けられている。具体的には、電荷補償領域14は、n
-ドリフト領域11のベース部分11aによって下面F1から分離されており、またn
-ドリフト領域11の被覆部分11cによってp領域12から分離されている。電荷補償領域14は、厚さ方向DDにおいて5μmよりも大きい厚さTH(
図2)を有する。電荷補償領域14の不純物濃度は、好ましくは5×10
15cm
-3以上5×10
17cm
-3以下であり、より好ましくは5×10
15cm
-3以上5×10
16cm
-3以下である。
【0030】
p
+コンタクト領域15は、p領域12の一部の上に直接設けられており、SiC層10の上面F2の一部をなしている。
【0031】
ゲート酸化膜21は、n
-ドリフト領域11およびn領域13の間をつなぐようにp領域12上に設けられている。具体的には、ゲート酸化膜21は側壁SS上においてSiC層10のp領域12を被覆している。ゲート電極30はゲート酸化膜21上に設けられている。これによりゲート電極30はゲート酸化膜21を介してSiC層10のp領域12上に位置している。
【0032】
ドレイン電極31は、単結晶基板1を介してSiC層10のn
-ドリフト領域11のベース部分11a上に設けられたオーミック電極である。ソース電極32は、SiC層10のn領域13およびp
+コンタクト領域15上に直接設けられたオーミック電極である。
【0033】
好ましくは、SiC層10の上面F2に対してゲートトレンチGTの側壁SSは、0°よりも大きく90°よりも小さい角度AF(
図2)だけ傾斜している。より好ましくは、厚さ方向DDに対するゲートトレンチGTの角度AD(
図2)に比して、厚さ方向DDに対する電荷補償領域14の側面SD(
図2)の角度は小さい。
【0034】
SiC層10は六方晶系の結晶構造を有してもよく、この場合、SiC層10のゲートトレンチGTの側壁SSは{0−33−8}面および{0−11−4}面の少なくともいずれかからなる部分を含むことが好ましい。SiC層10は立方晶系の結晶構造を有してもよく、この場合、SiC層10のゲートトレンチGTの側壁SSは{100}面からなる部分を含むことが好ましい。
【0035】
次にMOSFET100の製造方法について、以下に説明する。
図6に示すように、単結晶基板1上における炭化珪素のエピタキシャル成長によって、n
-ドリフト領域11(
図6において図示せず)の一部となるベース部分11aが形成される。次にベース部分11a上におけるエピタキシャル成長によって電荷補償領域14が形成される。炭化珪素のエピタキシャル成長は、たとえば原料ガスとしてシラン(SiH
4)とプロパン(C
3H
8)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素ガス(H
2)を用いた化学気相成長(CVD)法により実施することができる。炭化珪素にn型を付与するための不純物としては、たとえば窒素(N)またはリン(P)が用いられる。p型を付与するための不純物としては、たとえばアルミニウム(Al)が用いられる。
【0036】
図7および
図8に示すように、電荷補償領域14上にマスク層70が形成される。マスク層70は、電荷補償領域14の貫通部PP(
図2)の位置に対応した開口部を有する。マスク層70は、たとえば酸化珪素(SiO
2)から作られる。
【0037】
図9に示すように、マスク層70を用いたエッチングによって電荷補償領域14に、ベース部分11aの一部を露出する貫通部PPが形成される。好ましくはこのエッチングは、物理的エッチング作用を有するエッチングを用いて行われる。そのようなエッチングとしては、たとえば、反応性イオンエッチング(RIE)またはイオンビームエッチング(IBE)がある。RIEとしては特に誘導結合プラズマ(ICP)RIEを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとしてSF
6またはSF
6とO
2との混合ガスを用いたICP−RIEを用いることができる。次にマスク層70が除去される(
図10)。
【0038】
図11に示すように、n
-ドリフト領域11(
図11において図示せず)の一部となる埋込部分11bおよび被覆部分11cが形成される。具体的には、まず電荷補償領域14の貫通部PPを埋める埋込部分11bが形成される。また埋込部分11bおよびベース部分11aを覆う被覆部分11cが形成される。形成方法としてはベース部分11aと同様の方法を用い得る。
【0039】
図12に示すように、被覆部分11c上にp領域12およびn領域13が形成される。具体的には、n
-ドリフト領域11の被覆部分11cの上部表面層にイオン注入を行うことによりp領域12およびn領域13が形成され、イオン注入がなされなかった部分が被覆部分11cとしてそのまま残される。注入されるイオンの加速エネルギーを調整することによりp領域12が形成される領域を調整することができる。p型を付与するための不純物イオン注入においては、不純物として、たとえばアルミニウム(Al)が用いられる。またn型を付与するための不純物イオン注入においては、不純物として、たとえばリン(P)が用いられる。なおイオン注入の代わりにエピタキシャル成長によってp領域12およびn領域13の少なくともいずれかが形成されてもよい。
【0040】
以上によりSiC層10が単結晶基板1上に形成される。SiC層10は、厚さ方向(図中、縦方向)に互いに対向する下面F1および上面F2を有する。下面F1は単結晶基板1に面している。
【0041】
図13および
図14に示すように、SiC層10の上面F2上にマスク層71が形成される。マスク層71は、ゲートトレンチGT(
図1)が形成されることになる位置に対応した開口部を有する。マスク層71は、たとえば酸化珪素(SiO
2)から作られる。
【0042】
図15に示すように、マスク層71を用いたエッチングによって、マスク層71の開口部においてSiC層10の上面F2上に凹部が形成される。好ましくはこのエッチングは、物理的エッチング作用を有するエッチングを用いて行われる。
【0043】
図16および
図17に示すように、マスク層71を用いたSiC層10の熱エッチングによって上面F2にゲートトレンチGTが形成される。熱エッチングの詳細については後述する。次にマスク層71が除去される(
図18)。
【0044】
図19に示すように、不純物イオン注入によって、p
+コンタクト領域15が形成される。次に、イオン注入により注入された不純物を活性化するための活性化アニールが行われる。たとえば1700℃の温度で30分間の加熱が行われる。
【0045】
図20に示すように、SiC層10の露出面が熱酸化されることで、ゲート酸化膜21が形成される。この際、ゲートトレンチGTの内面も熱酸化されるので、ゲート酸化膜21は側壁SS上においてSiC層10のp領域12を被覆する。
【0046】
図21に示すように、ゲートトレンチGT内においてゲート酸化膜21上にゲート電極30が形成される。ゲート電極30は、ゲート酸化膜21を介してSiC層10のp領域12上に位置する部分を有するように形成される。
【0047】
さらに
図22を参照して、まず、露出したゲート酸化膜21およびゲート電極30(
図21)の上に層間絶縁膜22が形成される。次に、ゲート酸化膜21および層間絶縁膜22がパターニングされることで、p
+コンタクト領域15と、n領域13の一部とを露出する開口部が形成される。次にこの開口部内にソース電極32が形成される。これにより
図22に示す構成が得られる。
【0048】
再び
図1を参照して、層間絶縁膜22およびソース電極32の上にソース配線層33が形成される。またn
-ドリフト領域11上すなわちSiC層10の下面F1上に単結晶基板1を介してドレイン電極31が形成される。以上により、MOSFET100が得られる。
【0049】
次に上記製造方法において用いられる熱エッチングについて説明する。熱エッチングとは、所定の熱処理温度まで加熱されたエッチング対象へ反応性ガスを含むプロセスガス供給することによって生じる化学反応を用いて行われるエッチングである。
【0050】
プロセスガス中の反応性ガスとしては、塩素原子を有するガスが用いられ、好ましくは塩素系ガスが用いられ、より好ましくは塩素ガスが用いられる。また熱エッチングは、好ましくは、塩素系ガスの分圧が50%以下である雰囲気下で行われる。またプロセスガスは、好ましくは酸素原子を有するガスを含み、たとえば酸素ガスを含む。塩素ガスおよび酸素ガスが共に用いられる場合、プロセスガスの供給において、塩素ガスの流量に対する酸素ガスの流量の比率が0.1以上2.0以下となることが好ましく、より好ましくはこの比率の下限は0.25である。またプロセスガスはキャリアガスを含んでもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガス、またはヘリウムガスなどを用いることができる。また熱エッチングは、好ましくは、減圧雰囲気下で行われ、より好ましくは、減圧雰囲気は大気圧の1/10以下の圧力を有する。
【0051】
また熱処理温度は、好ましくは700℃以上とされ、より好ましくは800℃以上とされ、さらに好ましくは900℃以上とされる。これによりエッチング速度を高めることができる。また熱処理温度は、好ましくは、1200℃以下とされ、より好ましくは1100℃以下とされ、さらに好ましくは1000℃以下とされる。これにより熱エッチングに用いる装置をより簡易なものとすることができ、たとえば石英部材を用いたものとすることができる。
【0052】
熱エッチングのマスク層71(
図17)は、酸化珪素から作られることが好ましい。これによりエッチング中のマスクの消耗を抑制することができる。
【0053】
上記のような熱エッチングによって、ゲートトレンチGTの側壁SS(
図2)として、化学的安定性の高い、結晶学的に特定の結晶面を自己形成することができる。形成される結晶面は、SiC層10の結晶構造が六方晶系の場合、{0−33−8}面または{01−1−4}面の少なくともいずれかを含み得る。またその結晶構造が立方晶系である場合には、その結晶面は{100}面を含み得る。
【0054】
次にMOSFET100(
図1)の使用方法と、本実施の形態における作用効果とについて、以下に説明する。
【0055】
MOSFET100は、ドレイン電極31とソース配線層33との間の電流経路のスイッチングを行うスイッチング素子として用いられる。ドレイン電極31にはソース配線層33に対して正の電圧が印加される。ゲート電極30にしきい値以上の正の電圧が印加されている場合、ゲートトレンチGTの側壁SS上におけるp領域12、すなわちチャネル領域に、反転層が存在する。よって、n
-ドリフト領域11とn領域13とは電気的に接続された状態であり、MOSFET100はオン状態である。
【0056】
ゲート電極30へのしきい値以上の電圧の印加が停止されると、上記反転層が消失するので、ソース配線層33からn
-ドリフト領域11中へのキャリアの供給が停止される。その結果、n
-ドリフト領域11およびp領域12によるpn接合面からドレイン電極31の方へ、空乏化が進行する。この結果、n
-ドリフト領域11および電荷補償領域14が空乏化される。
【0057】
空乏化されたn
-ドリフト領域11が有する正の固定電荷は、上記pn接合面上での厚さ方向における電界強度を高める要因となる。一方、空乏化された電荷補償領域14は負の固定電荷を有するので、この負の固定電荷が、上記電界強度の少なくとも一部を相殺する。すなわち電荷補償領域14が電荷補償構造として機能する。これにより厚さ方向の電界強度の最大値が抑制される。よってMOSFET100の耐圧を向上させることができる。
【0058】
電荷補償領域14(
図2)は、厚さ方向DDにおいて好ましくは5μmよりも大きい厚さTHを有する。これにより電荷補償構造が、厚さ方向DDにおいてより広い範囲にわたって設けられる。よってMOSFET100の耐圧をより向上させることができる。
【0059】
電荷補償領域14の貫通部PP(
図9)の形成の際に、好ましくは、物理的エッチング作用を有するエッチングが用いられる。これにより、貫通部PPの形成のためのエッチングを、より垂直に行うことができる。これにより、貫通部PPの内面からなる電荷補償領域14の側面SD(
図2)を厚さ方向DDに沿わせることができる。よって電荷補償領域14による電荷補償をより十分に行うことができる。
【0060】
電荷補償領域14(
図1)はp領域12から離れている。これにより電荷補償領域14中の不純物が、チャネルとして機能するp領域12に影響することを避けることができる。
【0061】
また本実施の形態においては、ゲートトレンチGTが形成される際に熱エッチングが用いられる。これによりゲートトレンチGTの側壁SSの面方位を結晶学的に特定のものに自己形成することができる。好ましくは、ゲートトレンチGTの側壁SSはSiC層10の上面F2に対して、0°よりも大きく90°よりも小さい角度AF(
図2)だけ傾斜している。これによりゲートトレンチGTの側壁SS上に、上面F2に対して傾いた面方位を有するチャネル面を設けることができる。より好ましくは、厚さ方向DDに対する電荷補償領域14の側面SD(
図2)の角度は、厚さ方向DDに対するゲートトレンチGTの角度ADに比して小さい。これにより、電荷補償領域14による電荷補償をより十分に行うことができる。
【0062】
SiC層10は六方晶系の結晶構造を有してもよく、この場合、SiC層10のゲートトレンチGTの側壁SSは{0−33−8}面および{0−11−4}面の少なくともいずれかからなる部分を含むことが好ましい。これにより、側壁SS上におけるキャリア移動度を高めることができる。よってMOSFET100のオン抵抗を抑制することができる。
【0063】
SiC層10は立方晶系の結晶構造を有してもよく、この場合、SiC層10のゲートトレンチGTの側壁SSは{100}面からなる部分を含むことが好ましい。これにより、側壁SS上におけるキャリア移動度を高めることができる。よってMOSFET100のオン抵抗を抑制することができる。
【0064】
なお本実施の形態においては、ゲートトレンチGT(
図2)の断面が台形の形状を有するが、ゲートトレンチの形状は台形に限定されるものではなく、たとえばV字状であってもよい。言い換えると、ゲートトレンチの底部は必ずしも平坦面である必要はない。
【0065】
またゲートトレンチGTは熱エッチング以外のドライエッチングによって形成されてもよく、たとえばRIEまたはIBEによって形成されてもよい。またゲートトレンチGTはドライエッチング以外のエッチングによって形成されてもよく、たとえばウエットエッチングによって形成されてもよい。またゲートトレンチの互いに対向する側壁は、
図1に示すような非平行な位置関係を必ずしも有する必要はなく、互いに平行な関係を有してもよい。
【0066】
また上記実施の形態においては、
図4に示すように、上面F2の、ゲートトレンチGTの側壁SSに囲まれた部分は六角形の形状を有する。この部分の形状は六角形の形状に限定されるものではなく、たとえば長方形(正方形を含む)であってもよい。またこの形状は、SiC層10の結晶構造が六方晶の場合は各角が約60°の角度を有する六角形が好ましく、立方晶の場合は長方形が好ましい。
【0067】
(実施の形態2)
図23に示すように、MOSFET100Dは、単結晶基板1と、SiC層10Dと、ドレイン電極31と、ソース電極32と、ゲート酸化膜21Dと、層間絶縁膜22Dと、ゲート電極30Dと、ソース配線層33とを有する。
【0068】
さらに
図24を参照して、SiC層10Dは、厚さ方向(図中、縦方向)に互いに対向する下面F1(第1表面)および上面F2(第2表面)を有する。またSiC層10Dは、n
-ドリフト領域11(第1領域)、p領域12D(第2領域)、n領域13D(第3領域)、電荷補償領域14(第4領域)、およびp
+コンタクト領域15Dを有する。p領域12Dは、n
-ドリフト領域11の被覆部分11c上に設けられ、p型(第1導電型と異なる第2導電型)を有する。n領域13Dは、p領域12D上に設けられ、p領域12Dによってn
-ドリフト領域11と分離され、n型(第1導電型)を有する。p
+コンタクト領域15Dは、p領域12Dの一部の上に直接設けられており、SiC層10Dの上面F2の一部をなしている。
【0069】
p領域12Dは電荷補償領域14から離れている。具体的にはp領域12Dは、n
-ドリフト領域11の被覆部分11cによって電荷補償領域14から分離されている。
【0070】
ゲート酸化膜21Dは、SiC層10Dの上面F2上において、n
-ドリフト領域11およびn領域13Dの間をつなぐようにp領域12D上に設けられている。具体的には、ゲート酸化膜21DはSiC層10Dの上面F2上においてp領域12Dを被覆している。ゲート電極30Dはゲート酸化膜21D上に設けられている。これによりゲート電極30Dはゲート酸化膜21Dを介してSiC層10Dのp領域12D上に位置している。
【0071】
SiC層10Dのn領域13Dおよびp
+コンタクト領域15D上には、直接、ソース電極32が設けられている。
【0072】
SiC層10Dは六方晶系の結晶構造を有してもよく、この場合、SiC層10Dの上面F2は{0−33−8}面および{0−11−4}面の少なくともいずれかからなる部分を含むことが好ましい。SiC層10Dは立方晶系の結晶構造を有してもよく、この場合、SiC層10Dの上面F2は{100}面からなる部分を含むことが好ましい。
【0073】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0074】
次にMOSFET100Dの製造方法について説明する。まずは、実施の形態1の
図6〜
図11に示す工程と同様の工程が行われる。
【0075】
図25に示すように、次に不純物イオン注入によってn
-ドリフト領域11の被覆部分11c上に、p領域12D、n領域13Dおよびp
+コンタクト領域15Dが形成される。次に、イオン注入により注入された不純物を活性化するための活性化アニールが行われる。たとえば1700℃の温度で30分間の加熱が行われる。これによりSiC層10Dが単結晶基板1上に形成される。
【0076】
図26を参照して、SiC層10Dの上面F2が熱酸化されることでゲート酸化膜21Dが形成される。これによりp領域12Dはゲート酸化膜21Dに被覆される。ゲート酸化膜21D上にゲート電極30が形成される。ゲート電極30Dは、ゲート酸化膜21Dを介してSiC層10Dのp領域12D上に位置する部分を有するように形成される。露出したゲート酸化膜21Dおよびゲート電極30D上に層間絶縁膜22が形成される。ゲート酸化膜21Dおよび層間絶縁膜22Dがパターニングされることで、p
+コンタクト領域15Dと、n領域13Dの一部とを露出する開口部が形成される。次にこの開口部内にソース電極32が形成される。これにより
図26に示す構成が得られる。
【0077】
再び
図23を参照して、層間絶縁膜22Dおよびソース電極32の上にソース配線層33が形成される。またn
-ドリフト領域11上すなわちSiC層の下面F1上に単結晶基板1を介してドレイン電極31が形成される。以上により、MOSFET100Dが得られる。
【0078】
なお上記各実施の形態におけるMOSFET100(
図1)またはMOSFET100D(
図23)の製造方法において、ドレイン電極31を形成する前に、単結晶基板1を除去する工程が行われてもよい。この場合、MOSFET100(
図1)は単結晶基板1を有さず、ドレイン電極31は、n
-ドリフト領域11上、すなわち下面F1上に直接に設けられる。
【0079】
また第1導電型はn型に限定されるものではなく、p型であってもよい。MOSFETは、第1導電型がn型の場合はnチャネル型であり、p型の場合はpチャネル型である。
【0080】
また炭化珪素半導体装置はMOSFETに限定されるものではなく、たとえばMOSFET以外のMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の特許請求の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。