特許第6233449号(P6233449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233449
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20171113BHJP
   B29D 30/30 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   B60C5/14 Z
   B60C5/14 A
   !B29D30/30
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-97899(P2016-97899)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-206052(P2017-206052A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年5月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】三田 雅也
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−006499(JP,A)
【文献】 特開2012−171252(JP,A)
【文献】 特開2012−254718(JP,A)
【文献】 特開2008−308007(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0283975(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14
B29D 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成された熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムとその両サイドに積層されたゴムシートの少なくとも3層構造から構成されたインナーライナー部材をタイヤ内周面に有し、前記フィルムのタイヤ周方向端部同士が前記ゴムシートを介して重なるラップスプライス部を有する空気入りタイヤであって、前記ラップスプライス部において少なくともタイヤ径方向内側に位置する前記フィルムの端部に複数の孔部を備え、該孔部がタイヤ中心線に近いほど該孔部が前記フィルムの先端寄りに配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成された熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムとその両サイドに積層されたゴムシートの少なくとも3層構造から構成されたインナーライナー部材をタイヤ内周面に有し、前記フィルムのタイヤ周方向端部同士が前記ゴムシートを介して重なるラップスプライス部を有する空気入りタイヤであって、前記ラップスプライス部において少なくともタイヤ径方向内側に位置する前記フィルムの端部に複数の孔部を備え、該孔部がタイヤ中心線に近いほど該孔部の相互間隔が小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記孔部の総面積が前記ラップスプライス部の面積の10%以上50%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ラップスプライス部のタイヤ周方向の長さSが5mm以上30mm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、インナーライナーを構成するフィルムに孔部を設けることにより、インナーライナーのスプライス部に起因するタイヤ故障を抑制するようにした空気入りタイヤに関する。
【0002】
更に詳しくは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムを含むインナーライナー部材をタイヤ内面に有し、そのタイヤ周方向端部を互いに重ねあわせスプライスした構造の空気入りタイヤにおいて、加硫成形時や走行時のタイヤ故障の発生を抑制させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムをインナーライナー部材として使用することが、タイヤの全体重量の軽減化と高い空気透過防止性能の高性能化を両立するため、種々の検討がされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
例えば、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムとその両サイドに積層されたゴムシートの少なくとも3層構造から構成されたインナーライナー部材をタイヤ内周面に内貼りして使用することが検討され、このようなインナーライナー部材をタイヤ構造部材として用いるためには、タイヤ成形ドラムにインナーライナー部材を巻き付けて、その端部をラップスプライスしてタイヤの加硫工程に供するという製造手法が採用される(例えば、特許文献4,5参照)。
【0005】
具体的には、そうした積層構造を持つインナーライナー部材をタイヤ成形ドラムに円筒状を呈するように巻き付け、その際に、両方の周方向端部同士をラップスプライスしてタイヤの加硫成形工程に供して、空気入りタイヤを製造するという手法がとられる。
【0006】
そうした手法を用いるに際して、フィルムとその両サイドに積層されたゴムシートの少なくとも3層構造から構成されたインナーライナー部材を使用することは、ゴムシート同士が重ね合わせられてラップスプライスされることになり、スプライスを確実に行うことができるので好ましいものである。
【0007】
しかし、加硫成形中〜成形直後までの工程間で、フィルムとゴムシートとの界面で剥離を起こしたり、接合部(スプライス部)が開口(目開き)してしまうという現象を生ずることがあった。
【0008】
これを図で説明すると、図5(a)に示したように、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルム2とその両サイドに積層されたゴムシート3A、3Bの少なくとも3層構造から構成されたインナーライナー部材1が、タイヤサイズに応じて定まる所要サイズ(長さ)に形成されて、二点鎖線でモデル的に示したタイヤ成形ドラム5上にて、その両端部にラップスプライス部4を設けて、全体が環状を成すようにして重ね合わされてラップスプライスされる。ゴムシート3Bは、カーカス層などの他のタイヤ構成部材と接合させる機能を有するタイゴムとしての機能を有するものである。なお、図5(a)〜(c)では、矢印Tcはタイヤ周方向、矢印Trinはタイヤ径方向内側、矢印Troutはタイヤ径方向外側を示している。
【0009】
インナーライナー部材1のラップスプライス部4は、グリーンタイヤの成形から加硫成形までの工程で、図5(b)に示したように、フィルム2とゴムシート3Aとの界面、特に端部付近の界面で剥離状態7を起こすことがある。例えば、インナーライナー部材1を構成するゴムシート3Aは、成形ドラム5の表面との間の密着力(タック)が高いため、グリーンタイヤを成形し成形ドラム5から取り外すとき、ゴムシート3Aの端部付近が成形ドラム5側に引っ張られ、フィルム2とゴムシート3Aとの界面に剥離状態7を起こすことがある。
【0010】
加硫成形後のインナーライナー部材は、図5(c)に示したように、その全体がインナーライナー層10を形成する。ラップスプライス部4付近では、フィルム2の端部同士が、ゴムシートからなる部材を介して重なっている。図5(c)に示すフィルム2の先端付近8の一点線で囲んだ領域は、空気入りタイヤの成形加工時及び走行時においてもフィルム2とゴム部材の剥離等のタイヤ故障の発生が注意されるべき箇所となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−217923号公報
【特許文献2】国際公開第2008/53747号
【特許文献3】国際公開第2012/086276号
【特許文献4】特開2006−198848号公報
【特許文献5】特開2012−6499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、インナーライナーを構成するフィルムに孔部を設けることにより、インナーライナーのスプライス部に起因するタイヤ故障を抑制するようにした空気入りタイヤを提供することにある。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成された熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムとその両サイドに積層されたゴムシートの少なくとも3層構造から構成されたインナーライナー部材をタイヤ内周面に有し、前記フィルムのタイヤ周方向端部同士が前記ゴムシートを介して重なるラップスプライス部を有する空気入りタイヤであって、前記ラップスプライス部において少なくともタイヤ径方向内側に位置する前記フィルムの端部に複数の孔部を備え、該孔部がタイヤ中心線に近いほど該孔部が前記フィルムの先端寄りに配置されていることを特徴とするものである。
また、本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成された熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムとその両サイドに積層されたゴムシートの少なくとも3層構造から構成されたインナーライナー部材をタイヤ内周面に有し、前記フィルムのタイヤ周方向端部同士が前記ゴムシートを介して重なるラップスプライス部を有する空気入りタイヤであって、前記ラップスプライス部において少なくともタイヤ径方向内側に位置する前記フィルムの端部に複数の孔部を備え、該孔部がタイヤ中心線に近いほど該孔部の相互間隔が小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ラップスプライス部において少なくともタイヤ径方向内側に位置するフィルムの端部に複数の孔部を備えることで、加硫成形時にゴムシートがフィルムを貫通してゴムシート同士が直接的に接触するため、ラップスプライス部の接合を強固にすることができる。その結果、タイヤの加硫成形時におけるラップスプライス部の剥がれや開口(目開き)が生じることを抑制すると共に、走行時におけるラップスプライス部付近でクラックが発生する等のタイヤ故障の発生を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明では、孔部タイヤ中心線に近いほど孔部がフィルムの先端寄りに配置されている、或いは、孔部がタイヤ中心線に近い領域ほど孔部の相互間隔を小さくしている。一般に、タイヤ中心線に近い領域ほど、ラップスプライス部におけるフィルムとゴムシートの剥離現象が生じ易い。そのため、タイヤ中心線に近い領域ほど孔部をフィルムの先端寄りに配置する、或いは、タイヤ中心線に近い領域ほど孔部の相互間隔を小さくすることで、フィルムとゴムシートの剥離現象を抑制する効果をフィルムの幅方向において均等に発揮することができ、タイヤの加硫成形時及び走行時におけるフィルムとゴムシートの剥離といったタイヤ故障を効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
本発明では、フィルムに配置された孔部の総面積はラップスプライス部の面積の10%以上50%未満の範囲にあることが好ましい。このように孔部を付設することで、タイヤの加硫成形時及び走行時におけるフィルムとゴムシートの剥離といったタイヤ故障を効果的に抑制することが可能となる。より好ましくは、25%以上35%以下であることが良い。
【0017】
本発明では、ラップスプライス部のタイヤ周方向の長さSは5mm以上30mm未満であることが好ましい。このようにラップスプライス部の寸法を適度に設定することで、タイヤの加硫成形時及び走行時におけるフィルムとゴムシートの剥離といったタイヤ故障を効果的に抑制することが可能となる。より好ましくは、7mm以上15mm以下であることが良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示した一部破砕斜視図であり、インナーライナー部材のラップスプライス部のタイヤ内における位置関係を説明するものである。
図2】本発明の空気入りタイヤのインナーライナー部材におけるラップスプライス部の実施形態の一例を示し、タイヤ赤道方向断面の一部を拡大して示す断面図である。
図3本発明の空気入りタイヤを説明するために参考例となるインナーライナー部材を構成するフィルムの周方向端部を示す平面図である。
図4図2のインナーライナー部材を構成するフィルムの変形例の周方向端部を示す平面図である。
図5】(a)、(b)、(c)は、従来の空気入りタイヤにおけるインナーライナー部材のラップスプライス部のタイヤ赤道方向の断面を模式的に説明するものであり、(a)はインナーライナー部材を、周方向の両端部を重ね合わせてスプライスしたタイヤ成形ドラム上で環状にした状態を示し、(b)は(a)に示した状態でタイヤを成形する際にフィルムとゴムシートの間に剥離が生じた状態を模式的に示し、(c)は加硫後のスプライス部の構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示した一部破砕斜視図である。なお、図1において、矢印Tcはタイヤ周方向、矢印Twはタイヤ幅方向を示している。
【0020】
図1に示すように、空気入りタイヤTは、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13を連接するように設けている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向に左右のビード部13、13間に跨るように設けられており、各ビード部13に配置されたビードコア16の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。トレッド部11に対応するカーカス層14の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのラップスプライス部4がタイヤ幅方向に延びて存在している。
【0021】
図2に示すように、本発明の空気入りタイヤは、その内周面にインナーライナー部材1を有し、そのタイヤ周方向両側の端部が互いに重なりスプライスされたラップスプライス構造を有する。インナーライナー部材1は、フィルム2とその両サイドに積層されたゴムシート3A,3Bの少なくとも3層構造で構成される。フィルム2は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムである。なお、図2において、フィルム2及びゴムシート3A,3Bの本体の断面は、理解を容易にするため直線状に描かれている。実際は、空気入りタイヤの大きさに応じ、フィルム2及びゴムシート3A,3Bは、適当な曲率で延在する。
【0022】
インナーライナー部材1をラップスプライスする際、フィルム2を1枚使用する場合は、フィルム2の周方向両端部同士がゴムシート3A,3Bを介してラップスプライスされて環状を成すように形成される。或いは、フィルム2を複数枚使用する場合は、各フィルム2の周方向端部同士がゴムシート3A,3Bを介してラップスプライスされることで、各フィルム2が繋ぎ合わされ全体で一つの環状を成すように形成される。また、インナーライナー部材1(フィルム2)の両端同士の接合は、ゴムシート3A及び3Bを介してフィルム2が互いに重なる構造であり、ゴム−ゴム同士が加硫接合するため、接着力が大きい。
【0023】
インナーライナー部材1を構成するフィルム2は、ラップスプライス部4においてタイヤ径方向内側に位置する端部2Aとタイヤ径方向外側に位置する端部2Bとを有している。そして、ラップスプライス部4において少なくともタイヤ径方向内側に位置するフィルム2の端部2Aには複数の孔部6が形成されている。これら孔部6は、図3に示すように、全てラップスプライス部4の領域内に設けられており、フィルム2の幅方向に沿って等間隔で配置されている。図3においては平面視で円形をなす孔部6が描写されているが、孔部6の形状は特に限定されるものではなく、例えば、直線状の切れ目からなるスリット形状、楕円形、三角形、四角形、菱形又は多角形等を採用することができる。また、図2に示す態様では、フィルム2の端部2Aにのみ孔部6が形成された場合を例示しているが、孔部6をフィルム2の両方の端部2A,2Bに形成することもできる。即ち、フィルム2の両端部2A,2Bのうち、少なくとも端部2Aに形成されていれば良い。
【0024】
上記空気入りタイヤにおいて、ラップスプライス部4において少なくともタイヤ径方向内側に位置するフィルム2の端部2Aに複数の孔部6を備えることで、加硫成形時にゴムシート3A,3Bがフィルム2を貫通してゴムシート3A,3B同士が直接的に接触するため、ラップスプライス部4の接合を強固にすることができる。その結果、タイヤTの加硫成形時におけるラップスプライス部4の剥がれや開口(目開き)が生じることを抑制すると共に、走行時におけるラップスプライス部4付近でクラックが発生する等のタイヤ故障の発生を抑制することが可能となる。
【0025】
孔部6は、図4に示すように、タイヤ中心線CLに近いほどフィルム2の先端寄りに配置されていると良い。即ち、タイヤ中心線CL寄りに位置する複数の孔部61と孔部61よりもタイヤ幅方向外側に位置する複数の孔部62とを対比したとき、孔部61はフィルム2の先端に近接した位置に配置され、孔部62は孔部61よりもフィルム2の先端から離れた位置に配置されている。孔部6の位置はタイヤ中心線CLからタイヤ幅方向外側に向かって段階的に変位させても良く、或いは、徐々に変化させても良い。いずれにしても、タイヤ中心線CLに最も近い孔部6の中心位置からフィルム2の先端までの距離は1mm〜3mmとすることが望ましい。
【0026】
本発明において、タイヤ中心線CLに近い領域ほど孔部6をフィルム2の先端寄りに配置することで、フィルム2とゴムシート3A,3Bの剥離現象を抑制する効果をフィルム2の幅方向において均等に発揮することができる。その結果、タイヤTの加硫成形時及び走行時におけるフィルム2とゴムシート3A,3Bの剥離といったタイヤ故障を効果的に抑制することが可能となる。
【0027】
なお、上述のようにタイヤ中心線CLに近いほど孔部6をフィルム2の先端寄りに配置すると同時に、或いは、タイヤ中心線CLに近いほど孔部6をフィルム2の先端寄りに配置する替りに、タイヤ中心線CLに近いほど孔部6の相互間隔を小さくすることも可能である。この場合も、フィルム2とゴムシート3A,3Bの剥離現象を抑制する効果をフィルム2の幅方向において均等に発揮することが可能となる。
【0028】
フィルム2の端部2Aに配置された各孔部6の面積を面積Zとする。この面積Zは、好ましくは0.25〜80.0mm2、より好ましくは3.0〜30.0mm2であると良い。また、フィルム2の端部2Aに配置された全ての孔部6の面積Zを合計した面積を総面積Z1とし、ラップスプライス部4のタイヤ周方向の長さSとフィルム2の幅Wとの積から求められる面積をラップスプライス部4の面積Z2とする。このとき、孔部6の総面積Z1は、それぞれラップスプライス部4の面積Z2に対して、好ましくは10%以上50%未満、より好ましくは25%以上35%以下の範囲であると良い。このように総面積Z1を面積Z2に対して適度に設定することで、タイヤの加硫成形時及び走行時におけるフィルム2とゴムシート3A,3Bの剥離といったタイヤ故障を効果的に抑制することが可能となる。ここで、孔部6の総面積Z1がラップスプライス部4の面積Z2に対して10%より小さいと、剥離現象の抑制効果が低下し、その一方で、50%以上となると、フィルム2の先端の剛性が過度に低下し、タイヤ成形工程において著しく作業の効率が悪化する虞がある。
【0029】
本発明において、フィルム2のタイヤ周方向の両端部2A,2Bが互いに重なり合うラップスプライス部4のタイヤ周方向の長さSは、好ましくは5mm以上30mm未満、より好ましくは7mm以上15mm以下であると良い。このようにラップスプライス部4の寸法を適度に設定することで、タイヤTの加硫成形時及び走行時におけるフィルム2とゴムシート3A,3Bの剥離といったタイヤ故障を効果的に抑制することが可能となる。ここで、ラップスプライス部4のタイヤ周方向の長さSが5mmより小さいと、十分なスプライス量を確保することができず、目開きを起こしやすくなる。その一方で、ラップスプライス部4のタイヤ周方向の長さSが30mm以上となると、ラップスプライス部4の剛性がその周辺領域に対して過大となり、タイヤの均一性(ユニフォミティ)が低下する虞がある。
【0030】
本発明において、フィルム2は、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムか、又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物を主成分とするフィルムである。
【0031】
フィルム2に用いることのできる樹脂としては、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を使用できるが、取扱い性の良さから熱可塑性樹脂を主成分とするものが好ましい。熱可塑性樹脂については、詳細を後述する。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂などが好ましい。
【0032】
フィルム2に用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物〔例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を用いることができる。
【0033】
なかでも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が、物性面や加工性、取扱い性などの点で好ましい。
【0034】
また、フィルム2を構成することができる熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物(熱可塑性エラストマー組成物)は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂とエラストマーのうち、熱可塑性樹脂については上述のものを使用できる。熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
【0035】
特に、複数のエラストマーをブレンドするとき、そのうち50重量%以上が、ハロゲン化ブチルゴム又は臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴム又は無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合ゴムであることが、ゴム体積率を増やして低温から高温に至るまで柔軟、高耐久化できる点で好ましい。
【0036】
また、熱可塑性エラストマー組成物中の熱可塑性樹脂の50重量%以上が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/10共重合体、ナイロン4/6共重合体、ナイロン6/66/12共重合体、芳香族ナイロン、及びエチレン/ビニルアルコール共重合体のいずれかであることが優れた耐久性を得ることができるものであり、好ましい。
【0037】
また、上述した特定の熱可塑性樹脂及びエラストマーを組合せて熱可塑性エラストマー組成物を調製する際に、両者の相溶性が不足する場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて相溶化させることができる。熱可塑性樹脂及びエラストマーのブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散相を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、あるいは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部が良い。
【0038】
熱可塑性エラストマー組成物において、熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように、組成比を適宜決めればよい。熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、熱可塑性樹脂/エラストマーの重量比で、好ましくは90/10〜20/80、より好ましくは80/20〜30/70であると良い。
【0039】
本発明において、熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物には、例えば、フィルム2を構成することに必要な特性を損なわない範囲内で、上述した相溶化剤以外にも、他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、材料の成型加工性を良くするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。
【0040】
また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をフィルム2としての必要特性を損なわない限り、任意に配合することもできる。
【0041】
また、熱可塑性樹脂とブレンドされるエラストマーは、熱可塑性樹脂との混合の際に、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0042】
このように熱可塑性樹脂組成物中のエラストマーが動的加硫をされていることは、得られる熱可塑性エラストマー組成物が加硫エラストマーを含んだものとなるので、外部からの変形に対して抵抗力(弾性)があり、本発明の効果を大きくできることになり好ましい。
【0043】
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr(本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。)程度用いることができる。
【0044】
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0045】
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0046】
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度)、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
【0047】
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加しても良い。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
【0048】
また、ゴムシート3A,3Bを構成するゴム材料には、天然ゴム、イソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、水素化スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム等を好ましく使用できる。
【0049】
そして、上記フィルム2は、隣接するゴムシート3A,3Bとの接着性を高めるために接着層を介在させて積層するとよい。接着層を構成するポリマーとしては、分子量100万以上、好ましくは300万以上の超高分子量ポリエチレン、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸共重合体等のアクリレート共重合体類及びそれらの無水マレイン酸付加物、ポリプロピレン及びそのマレイン酸変性物、エチレンプロピレン共重合体及びそのマレイン酸変性物、ポリブタジエン系樹脂及びその無水マレイン酸変性物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、フッ素系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂などが好ましく使用される。
【0050】
本発明において、フィルム2の厚さは、特に限定はされないが、通常、0.002〜0.3mm程度のものを使用することが好ましい。また、ゴムシート3A、3Bの各厚さについても、特に限定されるものではないが、0.1〜1.8mm、好ましくは0.2〜1.0mmのものを使用することが実際的である。ここで、ゴムシート3A、3Bの厚さが0.1mm未満であると、フィルム2への積層作業が悪くなる方向であり、また、加硫時のブラダーからの熱によるフィルム2の劣化を抑制することが難しくなる方向である。また、1.8mmを超える場合はタイヤの重量増加を招くことになるので望ましくない。
【0051】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
インナーライナー部材を構成するフィルムの孔部の形態及びラップスプライス部のタイヤ周方向の長さSを表1のように異ならせたインナーライナー層を有する9種類(従来例、参考例、実施例1〜)のグリーンタイヤ(タイヤサイズが195/65R15H)を100本ずつ成形した。
【0053】
なお、各試験タイヤにおいて、フィルムは、ナイロン6/66共重合体(N6/66)と、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)とを、重量比50/50で含む熱可塑性エラストマー組成物を主成分とし、その厚さを100μm(0.1mm)とする共に、ゴムシートはその厚さ0.5mmのものとすることを共通にした。
【0054】
各試験タイヤの評価は、グリーンタイヤでの耐剥がれ性(耐剥離性)を以下に記載する方法で評価した。
【0055】
(a)グリーンタイヤでの耐剥がれ性(耐剥離性):
完成したグリーンタイヤの内周面を目視で観察し、インナーライナーのスプライス部における剥がれが発生したグリーンタイヤの本数を数えた。得られた結果は、剥がれが発生したグリーンタイヤの本数の逆数を用い、従来例を100とする指数として表1の「グリーンタイヤでの耐剥離性」の欄に記載した。この指数が大きいほど、インナーライナーの剥がれが少なく、成形性が優れていることを意味する。
【0056】
得られたグリーンタイヤを加硫し、それぞれ100本ずつの空気入りタイヤを製造した。この空気入りタイヤの耐久性試験後の耐剥がれ性(耐剥離性)を以下に記載する方法で評価した。
【0057】
(b)製品タイヤでの耐剥がれ性(耐剥離性):
製造した空気入りタイヤをJATMA標準リム15×6Jに取り付け、空気をタイヤ内圧で120kPaに充填した。このタイヤをJIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)にかけて、荷重7.24kN、速度81km/hで80時間走行させた。その後、インナーライナーのスプライス部のタイヤ内面を目視で観察し、剥がれ及びクラックが発生した製品タイヤの本数を数えた。得られた結果は、剥がれ及びクラックが発生した製品タイヤの本数の逆数を用い、従来例を100とする指数として表1の「製品タイヤでの耐剥離性」の欄に記載した。この指数が大きいほど、インナーライナーの剥がれが少なく、タイヤ耐久性が優れていることを意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から判るように、フィルムに孔部を設けることで、実施例1〜のタイヤは、グリーンタイヤの成形時及び耐久試験後のいずれにおいても、ラップスプライス部付近において剥がれやクラックの発生が抑制され、故障の発生が少ない空気入りタイヤであることがわかる。
【符号の説明】
【0060】
1 インナーライナー部材
2 フィルム
2A タイヤ径方向内側に位置する端部
2B タイヤ径方向外側に位置する端部
3A、3B ゴムシート
4 ラップスプライス部
5 タイヤ成形ドラム
6 孔部
7 剥離状態
8 フィルムの先端付近
10 インナーライナー層
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
14 カーカス層
15 ベルト層
16 ビードコア
T 空気入りタイヤ
S ラップスプライス部のタイヤ周方向の長さ
図1
図2
図3
図4
図5