(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2を含む従来技術では、ドライバがアクセルペダルを踏み込み加速している際において、動力伝達軸の捩れに起因する不所望な車両の振動を抑制しながら、ドライバが期待する加速感を満足させることができない。
【0007】
具体的に、上記特許文献1,2の技術を採用する場合には、ドライバがアクセルペダルを踏み込んで加速している最中においても、車両の振動を抑制すべく、エンジントルクの補正(トルクの低減)がなされる。よって、上記特許文献1,2の技術を採用する場合には、車両の加速時において、ドライバ加速要求を満足させることが難しい。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、加速に際しても、動力伝達軸の捩れに起因する車両の振動を抑制できるとともに、ドライバの加速要求を満足させることができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る車両の制御装置は、次の構成を有する車両を制御対象とする。
【0010】
前記車両は、走行駆動力を生成する駆動源と、車輪と、前記駆動源と前記車輪との間の動力伝達経路中に設けられた動力伝達軸と、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサと、を備える。
【0011】
そして、本態様に係る車両の制御装置は、
(i)前記動力伝達軸における前記車輪側端に対する前記駆動源側端の捩れ角を推定又は検出し、
(ii)前記アクセルセンサでの検出結果に基づき、前記アクセルペダルの踏込が開始されたと判定した場合に、前記駆動源に対し、前記アクセルペダルの踏み込み量に応じた第1トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令し、
(iii)前記アクセルペダルの踏込が開始されたと判定した後において、前記駆動源側端における前記捩れ角の推定又は検出の結果に基づき、前記捩れ角の変化速度が、正から負に反転したと最初に判定した場合に、前記駆動源に対し、前記第1トルク値よりも低い第2トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令する。
【0012】
本態様に係る車両の制御装置では、アクセルペダルの踏み込みが開始されたと判定した後、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定して初めて、第1トルク値よりも低い第2トルク値を以って走行駆動力を生成するよう駆動源を制御する。換言すると、本態様では、アクセルペダルの踏込が開始されて後、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転するまでの間は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた第1トルク値を以って走行駆動力を生成するよう駆動源を制御する。
【0013】
よって、本態様に係る車両の制御装置では、少なくともアクセルペダルの踏込が開始されて後、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転するまでの間は、駆動源に対し、アクセルペダルの踏み込み量に応じた第1トルク値を駆動源に出力させ、ドライバの加速要求を満足させることができる。
【0014】
なお、上記における「応じて」とは、トルク補正を行わず、アクセルペダルの踏み込み量に対して直接対応している状況を指すか、トルク補正を行ったとしても極めて補正量が小さく、ドライバが補正を感知できないくらいの状況を指す。
【0015】
また、本態様では、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定した後においては、第1トルク値よりも相対的に小さな第2トルク値を以って走行駆動力を生成するように駆動源を制御する。このため、動力伝達軸の捩れに起因した車両の振動を効果的に抑制することができる。即ち、本発明者等は、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転、あるいは負から正に反転するという現象が、車両の振動に大きく影響するものであることを見出した。本態様では、この知見に基づき、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定した後においては、第1トルク値よりも相対的に小さな第2トルク値を以って走行駆動力を生成するよう駆動源を制御することで、加速時における車両の振動を効果的に抑制できる。
【0016】
従って、本態様に係る車両の制御装置では、加速に際しても、動力伝達軸の捩れに起因する車両の振動を抑制できるとともに、ドライバの加速要求を満足させることができる。
【0017】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記第2トルク値は、前記アクセルペダルの踏み込みが開始されたと判定した時点から、前記捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定した時点までの、前記捩れ角の変化量及び前記変化速度の少なくとも一方に基づき設定される。
【0018】
本態様に係る車両の制御装置では、第2トルク値を、前記捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定した時点までの、前記捩れ角の変化量及び前記変化速度の少なくとも一方に基づき設定することとしているので、効果的に車両の振動を抑制することができる。即ち、本発明者等は、前記捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定した時点までの、前記捩れ角の変化量及び前記変化速度が、加速時における車両の振動に大きく影響することを見出した。本態様は、この知見に基づくものである。
【0019】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記駆動源に対しては、前記捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定した時点から、所定期間が経過するまで、前記第2トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令する。
【0020】
動力伝達軸の捩れ角における変化速度の“正”から“負”への反転、及び“負”から“正”への反転は、捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転したと最初に判定した時点から、複数回ずつ生じるが、本態様では、所定期間が経過するまで第2トルク値を以って走行駆動力を生成するよう駆動源を制御することにより、加速時における車両の振動を効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記車両は、前記駆動源と前記動力伝達軸との間の動力伝達経路中に設けられた変速機を更に備え、前記所定期間は、前記変速機におけるギヤ比に応じて設定される。
【0022】
本態様では、動力伝達軸における捩れの反転回数が、変速機のギヤ比に影響を受けることを考慮し、前記所定期間を、変速機におけるギヤ比に応じて設定する。これにより、何れのギヤ比においても、加速時における車両の振動を効果的に抑制することができる。
【0023】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記駆動源に対しては、前記所定期間の経過後に、前記第1トルク値よりも低く、前記第2トルク値よりも高い第3トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令する。
【0024】
本態様では、所定期間の間に、動力伝達軸における捩れ角の変化速度の反転を収束させ、車両の振動を抑制した後、第3トルク値を以って走行駆動力を生成するよう駆動源を制御する。この制御を実行することにより、過剰に低いトルク値(第2トルク値)での駆動源の制御を行わず、第3トルク値での駆動源の制御へ移行することにより、車両における最適な条件での走行を行うことでエネルギ消費の観点及び環境負荷の低減の観点から優位である。
【0025】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記駆動源に対しては、前記捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転したと最初に判定した時点から、前記捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転したとの判定が所定回数なされるまで、前記第2トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令する。
【0026】
本態様では、動力伝達軸における捩れの反転回数が、所定回数なされた時点で、第2トルク値よりも大きな第3トルク値を発生させるよう駆動源を制御することとしている。これによっても、加速時における車両の振動を抑制しながら、ドライバの要求に応えるようにすることができる。
【0027】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記駆動源に対しては、前記所定回数の判定がなされた後に、前記第1トルク値よりも低く、前記第2トルク値よりも高い第3トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令する。
【0028】
本態様においても、過剰に低いトルク値(第2トルク値)での駆動源の制御を行わず、第3トルク値での駆動源の制御へ移行することにより、ドライバの操縦に係る要求に応えるようにすることができる。
【0029】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記駆動源は内燃機関であり、前記車両は、前記駆動源に対し取り付けられた、スロットル弁及び可変動弁機構及び点火プラグ及び燃料噴射弁を更に備え、前記駆動源に対する前記第1トルク値及び前記第2トルク値の制御は、前記スロットル弁の制御、及び前記可変動弁機構の制御、及び前記点火プラグの制御、及び前記燃料噴射弁の制御の少なくとも一つの制御を以ってなされる。
【0030】
本態様は、駆動源としてガソリンエンジンなどの内燃機関を採用する場合の具体的な制御形態を規定するものである。即ち、本態様では、スロットル弁の制御、及び可変動弁機構の制御、及び点火プラグの制御、及び燃料噴射弁の制御の少なくとも一つの制御を以って、駆動源(内燃機関)における第1トルク値及び第2トルク値での制御を実行する。
【0031】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記動力伝達軸の前記捩れ角は、当該動力伝達軸を含む前記車両の動力伝達系をモデル化した制御対象モデルの挙動を記述したオブザーバ方程式を用い推定される。
【0032】
本態様では、オブザーバ方程式を用い動力伝達軸の捩れ角を推定することとしているので、加速時において、刻々と動力伝達軸の捩れ角が変化するような場合にあっても、高い精度で動力伝達軸の捩れ角を推定することができる。よって、高い精度で動力伝達軸の捩れ角を推定することにより、確実に動力伝達軸における捩れの反転を収束させることができ、車両の振動を確実に抑制することができる。
【0033】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記推定された前記動力伝達軸の前記捩れ角に基づき、前記アクセルペダルの踏み込み量に応じた前記第1トルク値に対する補正量であるトルク補正量を算出し、前記第2トルク値は、前記第1トルク値を前記トルク補正量に応じて補正した値である。
【0034】
本態様では、上記のような補正量を用いて第2トルク値を設定するので、高精度の制振制御を実行することができる。
【0035】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記トルク補正量は、前記動力伝達軸の前記捩れ角に係る周期に応じて漸減するよう設定される。このようなトルク補正を行うことにより、動力伝達軸の捩れ振動を効果的に抑制することができる。
【0036】
本発明の別態様に係る車両の制御装置は、上記構成において、前記駆動源に対するトルク制御に関し、フィードバック制御を実行する。
【0037】
本態様では、フィードバック制御により駆動源の制御を行うので、刻々と変化する状況に応じて高精度の制振制御を行うことができる。
【0038】
本発明の一態様に係る車両の制御装置は、次の構成を有する車両を制御対象とする。
【0039】
前記車両は、走行駆動力を生成する駆動源と、車輪と、前記駆動源と前記車輪との間の動力伝達経路中に設けられた動力伝達軸と、前記車両のドライバからの加速要求を受け付ける加速要求受付部材と、前記ドライバによる前記加速要求受付部材への操作が行われた際に、加速要求量を検出する加速要求量検出部と、を備える。
【0040】
なお、上記構成における「加速要求受付部材」としては、車両のドライバが手動操作を以って加速要求する部材(例えば、クルーズコントロールの設定車速変更ボタン)や、車両のドライバが足動操作を以って加速要求する部材(例えば、アクセルペダル)などが適用可能である。
【0041】
そして、本態様に係る制御装置は、
(i)前記動力伝達軸における前記車輪側端に対する前記駆動源側端の捩れ角を推定又は検出し、
(ii)前記加速要求量検出部での検出結果に基づき、前記車両に対する前記ドライバからの加速要求があったと判定した場合に、前記駆動源に対し、前記加速要求量に応じた第1トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令し、
(iii)前記車両に対する前記ドライバからの加速要求があったと判定した後において、前記駆動源側端における前記捩れ角の推定又は検出の結果に基づき、前記捩れ角の変化速度が、正から負に反転したと最初に判定した場合に、前記駆動源に対し、前記第1トルク値よりも低い第2トルク値を以って前記走行駆動力を生成するよう指令する。
【0042】
本態様に係る車両の制御装置では、車両に対するドライバからの加速要求があったと判定した後、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定して初めて、第1トルク値よりも低い第2トルク値を以って走行駆動力を生成するよう駆動源を制御する。換言すると、本態様では、ドライバにより加速要求受付部材への操作が開始されて後、動力伝達軸の捩れ角が正から負に反転するまでの間は、ドライバからの加速要求量に応じた第1トルク値を以って走行駆動力を生成するよう駆動源を制御する。
【0043】
よって、本態様に係る車両の制御装置では、少なくともドライバにより加速要求受付部材への操作が開始されて後、動力伝達軸の捩れ角が正から負に反転するまでの間は、駆動源に対し、ドライバが求める加速要求量に応じた第1トルク値を駆動源に出力させ、ドライバの加速要求を満足させることができる。
【0044】
なお、本態様の上記(ii)における「応じた」とは、上述と同様に、トルク補正を行わず、ドライバによる加速要求量に対して直接対応している状況を指すか、トルク補正を行ったとしても極めて補正量が小さく、ドライバが補正を感知できないくらいの状況を指す。
【0045】
また、本態様では、動力伝達軸の捩れ角の変化速度が正から負に反転したと最初に判定した後においては、第1トルク値よりも相対的に小さな第2トルク値を以って走行駆動力を生成するように駆動源を制御する。このため、動力伝達軸の捩れに起因した車両の振動を効果的に抑制することができる。
【0046】
従って、本態様に係る車両の制御装置では、加速に際しても、動力伝達軸の捩れに起因する車両の振動を抑制できるとともに、ドライバの加速要求を満足させることができる。
【発明の効果】
【0047】
上記の各態様では、加速に際しても、動力伝達軸の捩れに起因する車両の振動を抑制できるとともに、ドライバの加速要求を満足させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0050】
[第1実施形態]
1.車両1の構成
本実施形態に係る車両1の構成について、
図1及び
図2を用い説明する。
図1は、車両1の一部構成を示す模式図である。
図2は、車両1における制御に係る構成を示す模式ブロック図である。
【0051】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、変速機3と、デファレンシャルギヤ4と、一対のドライブシャフト5と、一対の車輪6と、コントローラ12と、を備える。
【0052】
エンジン2は、車両1における駆動源として設けられており、内部で燃料を燃焼させて動力を得る内燃機関である。エンジン2の形式については、特に限定されるものではないが、一例として、4サイクルの多気筒ガソリンエンジンが採用されている。詳細な図示を省略するが、本実施形態でのエンジン2は、ピストンが往復動可能に収容された複数の気筒11と、出力軸であるクランク軸9と、を備える。
【0053】
また、
図2に示すように、エンジン2には、スロットル弁17と、可変動弁機構18と、点火プラグ19と、燃料噴射弁20と、が取り付けられている。スロットル弁17は、エンジン2の各気筒11に供給される空気の量を調節するための吸気通路に設けられている。点火プラグ19は、燃料噴射弁20から噴射された燃料と空気との混合気に火花を供給して着火させる。
【0054】
また、
図1に示すように、エンジン2には、クランク軸9からの動力を得て発電するオルタネータ10が取り付けられている。オルタネータ10で発電された電力は、図示を省略しているバッテリ等の蓄電デバイスに充電される。当該蓄電デバイスの電力は、車両に備わる各種電装品を作動させるのに用いられる。
【0055】
変速機3は、エンジン2のクランク軸9の回転を減速しつつ、ドライブシャフト5に伝達する無段変速機、あるいは遊星歯車式の自動変速機である。本実施形態に係る車両1は、所謂、フロントエンジン・フロントドライブ式(FF式)の車両であり、変速機3は、差動装置としてのデファレンシャルギヤ4と一体化されている。
【0056】
コントローラ12は、PCM(Powertrain Contorol Module)であり、車両1の走行状況等に応じてエンジン2に接続された、スロットル弁17、可変動弁機構18、点火プラグ19、及び燃料噴射弁20等を制御する。
【0057】
図2に示すように、コントローラ12には、車両1に設けられた複数のセンサから種々の情報が逐次入力される。具体的に、車両1には、車速センサ13と、アクセルセンサ14と、エンジン回転数センサ15と、ブレーキセンサ16とが設けられており、各センサ13〜16からコントローラ12に対して検出情報が逐次入力されるようになっている。
【0058】
車速センサ13は、車両1の速度を検出するセンサである。アクセルセンサ14は、ドライバによるアクセルペダル7(
図1を参照。)の踏み込み量(アクセル開度)を検出するセンサである。エンジン回転数センサ15は、エンジン2のクランク軸9の回転数を検出するためのセンサである。ブレーキセンサ16は、
図1に示すブレーキペダル8をドライバが踏み込んだ際の、ブレーキフルードの圧力(ブレーキ圧)を検出するためのセンサである。
【0059】
これらセンサ13〜16からの検出情報は、車両1の駆動中において、コントローラ12に対して逐次入力されるようになっている。
【0060】
コントローラ12は、上記の各センサ13〜16からの入力情報に基づいて、種々の演算を実行し、状況に応じてエンジン2で発生させるべきトルクを逐次決定する。そして、コントローラ12は、決定したトルクを発生させるのに最適となる条件を決定し、これに応じた制御信号をスロットル弁17、可変動弁機構18、点火プラグ19、及び燃料噴射弁20に対して出力する。
【0061】
2.コントローラ12によるエンジン2のトルク制御
コントローラ12によるエンジン2のトルク制御について、
図3を用い説明する。
図3は、コントローラ12によるエンジン12のトルク制御に係る機能部を示す模式機能ブロック図である。
【0062】
図3に示すように、コントローラ12は、トルク変換部21と、フィードバック部22と、トルクコントロール部23と、実機計測部24と、走行抵抗推定部25と、トルク推定部26と、挙動推定部27と、を有する。
【0063】
トルク変換部21は、アクセルセンサ14から入力されるアクセル開度情報に基づいて、エンジン2の要求トルクT
0を算出する機能部である。ここで、トルク変換部21が算出する要求トルクT
0は、ドライブシャフト5の捩れを考慮せず、ドライブシャフト5が剛体であるという仮定の下での値である。よって、トルク変換部21が算出する要求トルクT
0は、単純に、アクセル開度に比例するように設定される。即ち、トルク変換部21では、アクセル開度が大きいほど、要求トルクT
0を大きく設定する。
【0064】
トルクコントロール部23は、トルク変換部21が設定した要求トルクT
0を発生させるために必要となるエンジン2の吸入空気量、燃料噴射量、点火タイミングを算出する。また、トルクコントロール部23は、上記のような吸入空気量、燃料噴射量、点火タイミングを実現するための制御目標値として、スロットル弁17の目標開度や燃料噴射弁20の目標開弁期間、点火プラグ19への目標給電タイミング等を設定する。
【0065】
実機計測部24は、車速センサ13、エンジン回転数センサ15、及びブレーキセンサ16からの入力信号に基づいて、例えば、エンジン回転速度、車速、ブレーキ圧等の計測値を逐次取得する。
【0066】
走行抵抗推定部25は、実機計測部24から入力された車速及びブレーキ圧に基づいて、車両1に加わると予測される走行抵抗(走行抵抗推定値)T
bを算出する。具体的に、走行抵抗推定値T
bの算出には、車速及びブレーキ圧を変数とした所定の演算式が用いられ、車速及びブレーキ圧が高いほど、走行抵抗推定値T
bの値は大きく算出される。
【0067】
トルク推定部26は、トルクコントロール部23で設定されたスロットル弁17、燃料噴射弁20、及び点火プラグ19の制御目標値と、実機計測部24が取得したエンジン回転速度と、に基づいて、エンジン2で実際に発生すると予測されるトルク(エンジントルク推定値)T
eを算出する。
【0068】
具体的に、エンジントルク推定値T
eの算出には、予め格納されているエンジン2のトルク特性データが用いられる。即ち、コントローラ12には、エンジン2を各種条件で運転したときのトルクの実測値に基づいたトルク特性データ、つまり、エンジン2の発生トルクが燃料噴射量、空燃比、点火タイミング、エンジン回転速度等の各種パラメータに応じてどのように変化するかを実験的に特定したデータが格納されている。そして、このトルク特性データに基づいて、上述したスロットル弁17、燃料噴射弁20、点火プラグ19の各制御目標値や、エンジン回転速度に対応するエンジントルク推定値T
eが設定される。
【0069】
挙動推定部27は、実機計測部24が取得したエンジン回転速度と、トルク推定部26が設定したエンジントルク推定値T
eと、走行抵抗推定部25が推定した車両1の走行抵抗推定値T
bと、に基づいて、車両1の各種状態量を推定する。
【0070】
具体的に、挙動推定部27は、エンジン回転速度(より正確には、ドライブシャフト5の回転に換算した値)、エンジントルク推定値T
e、及び走行抵抗推定値T
bといった既知の値から、後述する方程式(オブザーバ方程式(2))を利用して、ドライブシャフト5の捩れ等に関係する各種状態量を推定する。
【0071】
このように、既知の値を利用してオブザーバ方程式により状態量を推定することにより、センサ等を用いて直接的に状態量を測定した場合と異なり、ノイズ等の影響を受け難く、正確な状態量を把握することができる。
【0072】
挙動推定部27が推定する状態量には、ドライブシャフト5のエンジン2側の回転速度と、ドライブシャフト5の車輪6側の回転速度とが含まれる。ここで、「ドライブシャフト5のエンジン2側の回転速度」とは、
図4に示す制御対象モデルにおいて、エンジン2(及び変速機3)に近い側に位置するドライブシャフト5の一端部の回転速度ω
eであり、「ドライブシャフト5の車輪6側の回転速度」とは、車輪6に近い側に位置するドライブシャフト5の他端部の回転速度ω
bである。以下では、これらの両回転速度ω
e,ω
bのオブザーバ方程式による推定値を、それぞれ、ドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e’、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’と表記する。
【0073】
フィードバック部22は、挙動推定部27が推定したドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e‘と、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’と、の差に基づいて、ドライブシャフト5の捩れ振動を収束させるためのトルク補正量T
Qを設定する。
【0074】
即ち、上記の両推定速度ω
e’,ω
b’の間に差が生じているということは、ドライブシャフト5の捩れ量が変化しつつあるということを表わす。そこで、フィードバック部22では、このようなドライブシャフト5における捩れ量の変化を起こさせないために、エンジントルクをどの程度補正すればよいかが演算され、その値がトルク補正量T
Qとして設定される。
【0075】
例えば、ドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e’が、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’よりも大きい場合には、ドライブシャフト5の捩れ量を変化させないようにするためにエンジン側推定速度ω
e’を減少させる必要がある。このため、このような場合には、エンジントルクが減少方向に補正される(トルク補正量T
Qが“負“になる)。
【0076】
一方、ドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e’が、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’よりも小さい場合には、ドライブシャフト5の捩れ量を変化させないようにするためにエンジン側推定速度ω
e’を増大させる必要がある。このため、このような場合には、エンジントルクが増大方向に補正される(トルク補正量T
Qが“正”になる)。
【0077】
フィードバック部22で設定されたトルク補正量T
Qは、トルクコントロール部23に対し出力される。
【0078】
トルクコントロール部23は、上述した要求トルクT
0に、フィードバック部22から入力されたトルク補正量T
Qを付加した値である補正済目標トルクT
fbを設定する。そして、トルクコントロール部23は、設定した補正済目標トルクT
fbを発生させるために、吸入空気量、燃料噴射量、及び点火タイミングの目標値を再設定し、これらの値に基づいて、スロットル弁17、燃料噴射弁20、及び点火プラグ19を制御する。
【0079】
ここで、エンジン2の発生トルクをトルク補正量T
Qだけ補正するための方法は種々考えられるが、本実施形態では、一例として、次のようにトルクの調整を行うこととする。
【0080】
先ず、トルク補正量T
Qが“負”の値であり、エンジン2の発生トルクを減少させる必要がある場合には、点火タイミング(点火プラグ19により気筒11内で点火するタイミング)をリタードする。即ち、点火タイミングを本来のタイミング(ベストな燃焼が得られるように状況に応じて予め定められるタイミング)よりも遅らせることにより、気筒11内で混合気が燃焼するタイミングを遅らせて、エンジン2の発生トルクを減少させる。
【0081】
次に、トルク補正量T
Qが“正”の値であり、エンジン2の発生トルクを増大させる必要がある場合には、エンジン2から動力を得て発電するオルタネータ10の発電量を減少させる。即ち、オルタネータ10での発電量を減少させることにより、オルタネータ10からエンジン2に加わる抵抗力を小さくする。これにより、エンジン2の発生トルクが増大したのと実質的に同じ効果を得ることができる。
【0082】
以上のように、本実施形態では、コントローラ12は、フィードバック制御を以ってトルク制御を実行する。
【0083】
3.状態量の推定方法
次に、挙動推定部27による各種状態量の推定方法について、具体的な演算式を用い説明する。なお、以下の説明では、
図4を用いる。
図4は、車両1における動力伝達系をモデル化して示す模式図であって、エンジン2の出力トルクを車輪に伝達する動力伝達系をモデル化したものである。
【0084】
図4に示すように、本実施形態に係る車両1の動力伝達系には、エンジン2と車輪6との間に、変速機3と、ドライブシャフト5と、が含まれる。
【0085】
変速機3は、エンジン2のクランク軸9(
図1を参照。)の回転を減速する。
【0086】
ドライブシャフト5は、変速機3の出力軸と車輪6とを連結する。なお、ドライブシャフト5は、トルクに比例して捩れ変形するばねとしての要素と、捩れ変形の速度に比例した抵抗力を発生するダンパーとしての要素とを有する。よって、
図4では、ドライブシャフト5を、ばねとダンパーとの組み合わせを以って表している。
【0087】
図4に示す制御対象モデルから導かれる車両1の状態方程式は、次式(1)のように表すことができる。
【0089】
上記の状態方程式(1)における各値の意味は、次の(表1)に示すとおりである。
【0091】
上記の状態方程式(1)に基づいて、走行抵抗誤差も含めた各種状態量を推定するように拡張した、次のオブザーバ方程式(2)を導き出すことができる。
【0093】
上記のオブザーバ方程式(2)における各値の意味は、次の(表2)に示すとおりである。
【0095】
上記挙動推定部27は、上記のオブザーバ方程式(2)を用いて、既知の値T
e,T
b,ω
eから、車両1の各種状態量ω
e’,ω
b’、θ’、T
err’を推定する。即ち、挙動推定部27は、トルク推定部26から入力されるエンジントルク推定値T
eと、走行抵抗推定部25から入力される車両1の走行抵抗推定値T
bと、実機計測部24から入力されるエンジン回転速度と、を既知の値として、これらの値を上記オブザーバ方程式(2)に当てはめる。これにより、挙動推定部27は、ドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e’、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’、ドライブシャフト5の推定捩れ量θ’、車両1の走行抵抗誤差の推定値T
err’、をそれぞれ求める。
【0096】
なお、実機計測部24から入力されるエンジン回転速度については、ドライブシャフト5の回転速度に換算し(即ち、変速機3の減速比ηで割った値を求め)、その値をω
eとして、上記オブザーバ方程式(2)に適用する。
【0097】
ここで、上記のオブザーバ方程式(2)におけるオブザーバゲインKは、例えば、MATLAB等の制御設計ツールで用いられる最適ゲイン算出関数より算出することができる。
【0098】
上記のオブザーバ方程式(2)における減速比ηは、エンジン回転数センサ15により検出されるエンジン回転速度と、車速センサ13により検出される車輪速(車輪6の回転速度)と、の比から特定される。より具体的には、変速機3の各変速段に対応して設定された複数の減速比の中から、上記エンジン回転速度と車輪速との比に一致又は近いものが特定され、それが減速比ηとして用いられる。
【0099】
以上で、挙動推定部27による状態量推定の基礎となる理論について説明したが、挙動推定部27において実際の演算に用いられるのは、上記のオブザーバ方程式(2)を離散化した次の離散式(3)である。
【0101】
上記の離散式(3)におけるΔtは、挙動推定部27が状態量の推定値を求める時間間隔(サンプリングタイム)であり、例えば、1msec.程度に設定される。即ち、挙動推定部27は、過去に求められた推定値χ
ext[i+1]を求め、そのような処理をΔtごとに繰り返してゆく。
【0102】
なお、このような処理は、エンジン2が始動された直後から継続されるので、χ
extの初期値χ
ext[0]としては、(0 0 0 0)
Tが選ばれる。
【0103】
4.車両1の加速時における制振制御方法
次に、車両1の加速時において、コントローラ12が実行する制振制御の方法について、
図5から
図7を用い説明する。
【0104】
図5に示すように、コントローラ12は、車速センサ13、アクセルセンサ14、ブレーキセンサ16の各入力情報から、目標となる車両1の加速度を設定する(ステップS1)。そして、コントローラ12におけるトルク変換部21は、上記のように設定した車両1の加速度を実現するための目標エンジントルク(要求トルク)T
0を設定する(ステップS2)。上述のように、ステップ2の段階では、ドライブシャフト5の捩れが考慮されることはなく、アクセル開度に比例するように要求トルクT
0が設定される。
【0105】
次に、コントローラ12のトルクコントロール部23は、設定された要求トルクT
0を実現するための目標スロットル開度、吸気可変動弁機構の目標位相角、目標燃料噴射量、及び目標点火時期(タイミング)を設定する(ステップS3)。
【0106】
次に、コントローラ12の走行抵抗推定部25は、実機計測部24から入力された車速及びブレーキ圧に基づいて、車両1に加わると予測される走行抵抗(走行抵抗推定値)T
bを算出する(ステップS4)。
【0107】
次に、コントローラ12のトルク推定部26は、スロットル開度、吸気可変動弁機構の位相角、燃料噴射量、点火タイミング等の入力情報から、エンジン2で発生するエンジントルク推定値T
eを推定する(ステップS5)。なお、スロットル開度を用いたトルクの推定処理に代えて、エアフローセンサ等による吸入空気量の計測値及び吸気系の物理モデルから、次に(最も近い将来)点火が行われる気筒11の筒内空気量を推定し、その推定値に基づいてエンジントルク推定値T
eを推定するようにもできる。
【0108】
次に、コントローラ12の挙動推定部27は、エンジン回転数センサ15から入力されるエンジン回転速度の情報と、ステップS4で算出された車両1の走行抵抗推定値T
bと、ステップS5で推定されたエンジントルク推定値T
eと、をオブザーバ方程式(2)(より具体的には、それを離散化した離散式(3))に当てはめることにより、ドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e’と、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’と、を含む各種状態量を算出する。そして、コントローラ12は、ドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e’と、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’と、の差分(ω
e’−ω
b’)から、ドライブシャフト5の推定捩れ角を算出する(ステップS6)。
【0109】
次に、コントローラ12は、アクセルセンサ14等からの入力情報に基づいて、車両1が加速中であるか否かを判定する(ステップS7)。車両1が加速中であると判定した場合には(ステップS7:Yes)、コントローラ12は、トルク変換部21が設定した要求トルクT
0を発生させるために必要となるエンジン2の吸入空気量、燃料噴射量、点火タイミングを実現するための制御目標値として、スロットル弁17の目標開度や燃料噴射弁20の目標開弁期間、点火プラグ19への目標給電タイミング等を制御する(ステップS8)。
【0110】
即ち、本実施形態では、ドライバがアクセルペダル7を踏み込んでいる最中は、トルク補正を行わず、アクセル開度に比例する要求トルクT
0を発生させるように各アクチュエータを制御する。
【0111】
次に、コントローラ12は、ドライバがアクセルペダル7を踏み込んで加速している最中において、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度/変化量が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS9)。ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度/変化量は所定値以上であると判定した場合には(ステップS9:Yes)、フラグを立ててF=1とする(ステップS10)。なお、この判定は、次に説明するドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が反転するまで継続される。
【0112】
次に、コントローラ12は、ドライブシャフト5の捩れ角が“正”から“負”に反転したか否かを判定する(ステップS11)。即ち、加速中においては、ドライブシャフト5におけるエンジン側推定速度ω
e’が、ドライブシャフト5における車輪側推定速度ω
b’に対して相対的に大きく、(ω
e’−ω
b’)>0の関係が成立するが、ドライバがアクセルペダル7の踏込量を略一定の状態とした後においては、(ω
e’−ω
b’)<0となるタイミングが到来する。コントローラ12は、ステップS11において、加速開始後、最初に(ω
e’−ω
b’)<0となるタイミングを待つ。
【0113】
コントローラ12は、ドライブシャフト5の捩れ角が“正”から“負”に反転したと判定した場合には(ステップS11:Yes)、フラグが立っているか否かを判定する(ステップS12)。フラグが立っており、F=1の場合には(ステップS12:Yes)、コントローラ12は、大きなゲインを以ってトルク補正を行い、制振制御を実行する(ステップS13)。
【0114】
図6に示すように、コントローラ12におけるフィードバック部22は、ゲイン(大)での制振制御において、大きなゲインでトルク補正量T
Qを設定し、要求トルクT
0に、フィードバック部22から入力されたトルク補正量T
Qを付加した値である補正済目標トルクT
fbを設定する(ステップS131)。そして、コントローラ12におけるトルクコントロール部23は、設定した補正済目標トルクT
fbを発生させるために、吸入空気量、燃料噴射量、及び点火タイミングの目標値を再設定し(ステップS132)、これらの値に基づいて、スロットル弁17、燃料噴射弁20、及び点火プラグ19を制御する(ステップS133)。なお、本実施形態では、一例として、点火タイミングのリタードを以ってトルク補正を実行する。
【0115】
図5に戻って、コントローラ12は、ドライブシャフト5の捩れ角が反転したタイミングを基準として、所定期間が経過するまでの間は、ゲイン(大)で制振制御を継続して実行する(ステップS14:No)。
【0116】
コントローラ12は、ステップS14において、所定時間が経過したと判断した場合には(ステップS14:Yes)、フラグをF=0として(ステップS15)、ゲイン(小)での制振制御を実行する(ステップS16)。
【0117】
また、コントローラ12は、ステップS12において、フラグが立っておらず、F=0の場合にも(ステップS12:No)、小さなゲインを以ってトルク補正を行い、制振制御を実行する(ステップS16)。
【0118】
図7に示すように、コントローラ12におけるフィードバック部22は、ゲイン(小)での制振制御において、小さなゲインでトルク補正量T
Qを設定し、要求トルクT
0に、フィードバック部22から入力されたトルク補正量T
Qを付加した値である補正済目標トルクT
fbを設定する(ステップS161)。そして、コントローラ12におけるトルクコントロール部23は、設定した補正済目標トルクT
fbを発生させるために、吸入空気量、燃料噴射量、及び点火タイミングの目標値を再設定し(ステップS162)、これらの値に基づいて、スロットル弁17、燃料噴射弁20、及び点火プラグ19を制御する(ステップS163)。
【0119】
この後、ドライバが新たにアクセルペダル7を踏み込んだりしない限り、ゲイン(小)での制振制御を継続する。
【0120】
なお、コントローラ12は、ステップS7において、車両1が加速中ではないと判定した場合や(ステップS7:No)、ステップS9において、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度/変化量が所定値未満であると判定した場合においても(ステップS9:No)、ゲイン(小)での制振制御を実行する(ステップS16)。
【0121】
5.トルク補正量T
Qの算出
上記において、トルク補正量T
Qの絶対値は、ドライブシャフト5の推定速度差の絶対値|ω
e’−ω
b’ |に比例するように算出されるが、より具体的には、次のような演算を経てトルク補正量T
Qが算出される。
【0122】
エンジン2のトルクは、各気筒11での燃焼により発生するトルクである。このため、トルク補正量T
Qを算出したとしても、そのトルク補正量T
Qを付加したトルクが実際に発生するのは、次に点火が行われるタイミングである。そこで、本実施形態では、現時点でのドライブシャフト5の推定速度差(ω
e’−ω
b’)から、上記のようなトルク発生遅れを考慮して定められる。
【0123】
ここで、トルクの発生遅れ、即ち、次の燃焼までの時間は、各気筒11での点火間隔に基づいて特定することができる。なお、点火間隔とは、ある気筒11の点火タイミングと、その次に点火される気筒11の点火タイミングとの時間差のことであり、例えば、4気筒エンジンであれば180°のクランク角(180°CA)に相当する時間である。
【0124】
現時点でのドライブシャフト5の推定速度差(ω
e’−ω
b’)をf(t)とし、現時点から遅れ時間dが経過した後の推定速度差(ω
e’−ω
b’)をf(t+d)とするとき、この遅れ時間dの経過後におけるドライブシャフト5の推定速度差f(t+d)は、現時点での推定速度差f(t)から、次式(4)を用い求めることができる。
【0126】
上記の式(4)において、“a”は変速機3の変速段ごとに予め設定されたドライブシャフト5の共振周波数(a/2π)に対応する値であり、“f’(t)”はf(t)の時間微分である。即ち、実際の車両1で発生する振動の多くは、ドライブシャフト5の捩れ共振に大きく影響を受けるものであるから、このドライブシャフト5の推定速度差(f=ω
e’−ω
b’)は、共振周波数に依存して変化する値、つまり、f(t)=sin(at)であると仮定することができる。よって、当該仮定に基づいて、遅れ時間dだけ進んだ時点でのf(t+d)を、上記の式(4)のように表すことができる。
【0127】
上記の式(4)のようにして遅れ時間dが経過した後のドライブシャフト5の推定速度差f(t+d)が求まると、次に示す式(5)のように、f(t+d)に、先に定めておいたフィードバックゲインkを掛けた値、即ち、k×f(t+d)を、トルク補正量T
Qとして算出することができる。
【0129】
ここで、本実施形態では、エンジン2のトルクを減少方向に補正することで制振制御を実行するものである。このため、本実施形態においては、特に断りのない限り、f(t+d)=ω
e’−ω
b’は、“正”である。即ち、ドライブシャフト5の車輪側推定速度ω
b’よりも、ドライブシャフト5のエンジン側推定速度ω
e’の方が大きいものとする。よって、トルク補正量T
Qは“負”の値である。
【0130】
なお、
図5に示すステップS8において、ゲイン(0)で制御を実行することとした。ここでの“ゲイン(0)”とは、上記の式(5)の“k=0”であり、トルク補正量T
Q=0ということを意味する。
【0131】
また、ステップS13における”ゲイン(大)“とは、ステップS16における”ゲイン(小)“との相対的な関係での、上記の式(5)における”k“の値、即ち、フィードバックゲインkの値の大小を意味する。
【0132】
6.制振制御の具体例
図5から
図7を用い説明した制振制御の具体例について、
図8を用い説明する。
図8は、横軸に時間をとり、上からドライブシャフトの捩れ、アクセル開度、目標エンジントルクを表わす模式図である。
【0133】
図8に示すように、本具体例では、タイミングt0からタイミングt1までの間は、ドライバがアクセルペダル7を踏んでおらず、惰性(コースト)走行している状態である。このため、ドライブシャフト5の捩れは、“負”の状態、即ち、エンジン側推定速度ω
e’よりも、車輪側推定速度ω
b’の方が大きい状態にある。
【0134】
タイミングt1において、ドライバがアクセルペダル7を踏み込むと、少し遅れたタイミングt2から目標エンジントルクが上昇を始める。そして、これに呼応して、ドライブシャフトの捩れも値が上昇し始める。即ち、車両1の加速中であるタイミングt2以降において、ドライブシャフト5における推定速度差(ω
e’−ω
b’)が“正”の値をとる。
【0135】
目標エンジントルク及びドライブシャフト5の捩れは、ドライバがアクセルペダル7を踏み増している間だけでなく、一定の踏み込み量となった時点(タイミングt3)以降も少しの間、上昇(増加)し続ける。具体的には、目標エンジントルク及びドライブシャフト5の捩れは、タイミングt4まで上昇(増加)を続ける。
【0136】
ここで、本具体例においては、ドライブシャフト5の捩れが増大している間、即ち、タイミングt2からタイミングt4までの間は、トルク補正量T
Q=0としている(ゲイン(0)でトルク制御)。これより、ドライバによるアクセルペダル7の踏込量に応じてエンジン2のトルクが上昇する。
【0137】
また、コントローラ12は、タイミングt2からタイミングt4に至る期間において、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度(角速度)/変化量を監視している。そして、コントローラ12は、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度(角速度)/変化量が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上であると判定した場合には、フラグを立てる(
図5のステップS10)。フラグがF=1であるかF=0であるかで、タイミングt4からタイミングt11までの制振制御の程度がかわる。
【0138】
なお、
図8に示す例では、コントローラ12が、タイミングt2からタイミングt4に至る期間において、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度(角速度)/変化量が所定値以上であると判定した場合を想定している。
【0139】
上記において、「捩れ角の変化速度」とは、
図8におけるドライブシャフト5の捩れの特性図において、“傾き”であり、「捩れ角の変化量」とは、
図8におけるドライブシャフト5の捩れの特性図において、“高さ”である。
【0140】
図8に矢印を付した部分に示すように、ドライバによるアクセルペダル7の踏み増しが終了したタイミングt3よりも少し後のタイミングt4において、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度(傾き)が“正”から“負”に反転する。本例では、このタイミングt4を起点として、ゲイン(大)での制振制御を実行することとしている。
【0141】
図8に示すように、ドライブシャフト5の捩れは、変化速度が“正”から“負”の反転と、“負”から“正”の反転と、を複数回繰り返して収束してゆく。
図8に示す例では、略3周期で収束している。
【0142】
図8に示すように、目標エンジントルクについて、先ず、タイミングt5からタイミングt6の間でトルク補正(トルクを低減する補正)を行っている。ここで、タイミングt5は、ドライブシャフトの捩れ角の変化速度が“負”から“正”へと再反転するタイミングである。
【0143】
タイミングt5からタイミングt6の間でのトルク補正により、ドライブシャフトの捩れは、タイミングt5からタイミングt7の間の周期において、
図8の点線で示すように、その振幅が低く抑えられる。
【0144】
同様にして、タイミングt7からタイミングt8の間、及びタイミングt9からタイミングt10の間の各期間において、コントローラ12はトルク補正を実行する。このトルク補正を行うタイミングについても、上記同様に、ドライブシャフトの捩れ角の変化速度が“負”から“正”へと再反転するタイミングである。
【0145】
なお、
図8に示すように、2回目のトルク補正量は1回目のトルク補正量に比べて小さく設定されており、3回目のトルク補正量はさらに小さく設定される。これは、1回目のトルク補正(タイミングt5からタイミングt6の間でのトルク補正)により、ドライブシャフト5の捩れの振幅が抑制され、2回目のトルク補正(タイミングt7からタイミングt8の間でのトルク補正)により、ドライブシャフト5の捩れの振幅がさらに抑制されていることによるものである。
【0146】
そして、コントローラ12は、タイミングt11以降は、ゲイン(小)での制振制御を実行する。タイミングt11は、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が最初に“正”から“負”に反転したタイミングt4を基準として、所定時間が経過したタイミングである。この所定時間は、ドライブシャフト5の捩れ剛性や、エンジン2の特性(レスポンスやトルク特性)などを考慮して、予め設定されている。
【0147】
ただし、ドライブシャフト5の捩れについての周期により、ゲイン(大)での制振制御からゲイン(小)での制振制御への移行タイミングを決定してもよい。あるいは、変速機3のギヤ比に応じてゲイン(大)での制振制御からゲイン(小)での制振制御への移行タイミングを決定してもよい。
【0148】
7.効果
本実施形態に係る車両1のコントローラ12は、アクセルペダル7の踏込が開始されたと判定したタイミングt1以降、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転したと最初に判定したタイミングt4から初めて、トルク補正を行って制振制御を実行する。換言すると、コントローラ12は、アクセルペダル7の踏込が開始されたタイミングt1から、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転するタイミングt4までの間は、トルク補正を行わず、ドライバによるアクセルペダル7の踏込量に応じて目標エンジントルクを設定している。
【0149】
よって、車両1のコントローラ12では、少なくともアクセルペダル7の踏込が開始されて後、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転するまでの間(タイミングt1からタイミングt4までの間)は、ドライバが要求するトルクでエンジン2を駆動させている。よって、ドライバの加速要求を満足させることができる。
【0150】
また、コントローラ12は、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転したと最初に判定したタイミングt4から所定期間の間、ゲイン(大)でのトルク補正を複数回にわたって実行している。このため、コントローラ12は、ドライブシャフト5の捩れに起因した車両1の振動を効果的に抑制することができる。即ち、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転、あるいは“負”から“正”に反転するという現象が、車両1の振動に大きく影響するものである。この知見に基づき、本実施形態では、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転したと最初に判定した後においては、ゲイン(大)での制振制御を実行することで、加速時における車両1の振動を効果的に抑制できる。
【0151】
従って、本実施形態に係る車両1のコントローラ12では、加速に際しても、ドライブシャフト5の捩れに起因する車両1の振動を抑制できるとともに、ドライバの加速要求を満足させることができる。
【0152】
なお、本実施形態においては、タイミングt1からタイミングt4の間で、トルク補正を行わず、ドライバによるアクセルペダル7の踏込量に応じたトルクをエンジン2に出力させることとしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。ドライバの加速要求を満たすことができる範囲内であれば、少しのトルク補正を行うこととしてもよい。
【0153】
また、本実施形態では、タイミングt4からタイミングt11に至る期間でのトルク補正量を、タイミングt2からタイミングt4までの、ドライブシャフト5の捩れ角の変化量及び変化速度の少なくとも一方に基づき設定することとしているので、効果的に車両1の振動を抑制することができる。即ち、タイミングt2からタイミングt4に至る期間でのドライブシャフト5における捩れ角の変化量及び変化速度が、加速時における車両の振動に大きく影響するので、これによりタイミングt4からタイミングt11に至る期間でのトルク補正量を規定することとしている。
【0154】
図8を用い説明したように、ドライブシャフト5における捩れ角の変化速度の“正”から“負”への反転、及び“負”から“正”への反転は、タイミングt4から、複数回ずつ生じるが、本実施形態では、タイミングt11に至るまでの所定期間、トルク補正を行って制振制御を実行することとしている。これにより、加速時における車両1の振動を効果的に抑制することができる。
【0155】
上述のように、ドライブシャフト5における捩れの反転回数が、変速機3のギヤ比に影響を受けることを考慮し、ゲイン(大)でのトルク補正を実行する期間を、変速機3におけるギヤ比に応じて設定することとしてもよい。これにより、何れのギヤ比においても、加速時における車両1の振動を効果的に抑制することができる。
【0156】
コントローラ12は、タイミングt11に至るまでの間に、ドライブシャフト5における捩れの反転を収束させ、車両1の振動を抑制した後、タイミングt11以降において、ゲイン(小)でのトルク補正を行った制振制御を実行する。この制御を実行することにより、過剰なトルク制御を行わず、タイミングt11以降は、ゲイン(小)での制振制御へ移行することにより、ドライバの操縦に係る要求に応えるようにすることができる。
【0157】
なお、本実施形態では、トルク補正の方法として、点火プラグ19における点火タイミングをリタードする方法を採用したが、トルク補正の方法は、これに限定されるものではない。例えば、スロットル弁17の制御、及び可変動弁機構18の制御、及び燃料噴射弁20の制御の少なくとも一つの制御行うことでトルク補正を実行することとしてもよい。
【0158】
本実施形態に係る車両1のコントローラ12は、ドライブシャフト5を含む車両1の動力伝達系をモデル化した制御対象モデルの挙動を記述したオブザーバ方程式を用い、ドライブシャフト5の捩れを推定することとしている。このため、車両1の加速時において、刻々とドライブシャフト5の捩れ角が変化するような場合にあっても、高い精度でドライブシャフト5の捩れ角を推定することができる。よって、高い精度でドライブシャフト5の捩れ角を推定することにより、確実にドライブシャフト5における捩れの反転を収束させることができ、車両1の振動を確実に抑制することができる。
【0159】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る車両及びコントローラの構成について、上記第1実施形態との差異部分だけを説明する。説明を省略する部分については、上記第1実施形態と同様である。
【0160】
先ず、本実施形態に係る車両では、ハンドルや操作パネルなどにクルーズコントロールの各種操作ボタンが設けられている。クルーズコントロールの各種操作ボタンの1つとして、設定車速変更ボタンが含まれている。そして、クルーズコントロールの制御ユニットには、ドライバにより設定車速変更ボタンへの操作が行われた際に、ドライバが要求する加速要求量を検出する機能部が設けられており、コントローラ12に対して逐次出力するように構成されている。
【0161】
コントローラ12は、上記の各センサ13〜16からの入力情報と、クルーズコントロールの制御ユニットからの加速要求量に関する入力情報に基づいて、種々の演算を実行し、状況に応じてエンジン2で発生させるべきトルクを逐次決定する。そして、コントローラ12は、決定したトルクを発生させるのに最適となる条件を決定し、これに応じた制御信号をスロットル弁17、可変動弁機構18、点火プラグ19、及び燃料噴射弁20に対して出力する(
図2を参照)。
【0162】
上記第1実施形態において、コントローラ12は、アクセルセンサ14等からの入力情報に基づいて、車両1が加速中であるか否かを判定することとした(
図5のステップS7)。これに対して、本実施形態に係るコントローラ12は、アクセルペダル14からの入力情報に加え、クルーズコントロールの制御ユニットからの加速要求量に関する入力情報にも基づき、車両1が加速中であるか否かを判定する。
【0163】
そして、本実施形態では、クルーズコントロールの起動中に、ドライバが設定速度を上昇させたような場合にも、上記第1実施形態と同様に、
図5に示すステップS8以降の制御を実行し、ドライブシャフト5の捩れに起因する車両1の振動を抑制する。
【0164】
具体的に、ドライバによりクルーズコントロールの設定車速変更ボタンが操作され、現在の車速よりも高い車速が設定された際に、クルーズコントロールの制御ユニットは、コントローラ12のトルク変換部21に対して、その旨の情報を出力する。
【0165】
そして、コントローラ12が設定する第1トルク値は、現在の車速と設定された車速との差分により決定される。即ち、コントローラ12は、現在の車速と設定された車速との差分が大きいほど、第1トルク値を大きくする。
【0166】
また、コントローラ12が設定する第2トルク値についても、現在の車速と設定された車速との差分により決定される。なお、同一の車速の差分の場合においては、第2トルク値が第1トルク値よりも低くなるように設定される。
【0167】
以上のように、本実施形態においては、クルーズコントロールの起動中においても、ドライバが設定速度を上昇させた場合にも、ドライバが期待している加速感を満足させることができる。
【0168】
また、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“正”から“負”に反転した後は、第1トルク値よりも低い第2トルク値を以って走行駆動力を生成するようにエンジン2を制御するので、動力伝達軸の捩れに起因する車両の振動を抑制できる。
【0169】
[変形例]
上記第1実施形態及び上記第1実施形態では、車両1として、ガソリンエンジンを搭載したFF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)を一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エンジンとしては、ディーゼルエンジンなどを採用することもできる。
【0170】
また、FR車(フロントエンジン・リヤドライブ車)、RR車(リヤエンジン・リヤドライブ車)、MR車(ミッドシップエンジン・リヤドライブ車)、4WD車(4輪駆動車)などを採用することももちろん可能である。FR車や4WD車では、上記と同様の制御を実行することにより、プロペラシャフトの捩れによる振動を抑えることが可能となり、結果として加速時における車両の振動を低減することができる。
【0171】
また、本発明は、駆動源としては、エンジン2に限定されるものではない。例えば、駆動源として電動モータを備えた電気自動車や、電動モータとエンジンとを備えたハイブリッド電気自動車などを採用することもできる。
【0172】
ここで、例えば、ハイブリッド電気自動車を採用する場合においては、
図8のタイミングt4からタイミングt5の間、タイミングt6からタイミングt7の間、タイミングt8からタイミングt9の間、においてもトルク補正を行うことができる。即ち、ドライブシャフト5の捩れ角の変化速度が“負”の場合に、電動モータによるトルクアシストを実行することで、より確実にドライブシャフト5の捩れ角の反転を収束させることが可能となる。よって、これにより車両1のドライブシャフト5の捩れに起因する振動をより確実に抑制することが可能となる。
【0173】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、タイミングt4からタイミングt11の間でのトルク補正を、点火タイミングのリタードによってのみ行うこととしたが、本発明では、例えば、オルタネータ10の発電量の減少を以って、実質的にエンジントルクの増大をさせる補正を行うことも可能である。
【0174】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、ドライブシャフト5の捩れを、ドライブシャフト5を含む車両1の動力伝達系をモデル化した制御対象モデルの挙動を記述したオブザーバ方程式を用い推定することとしているが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ドライブシャフト5のエンジン側端部の回転速度と、車輪側端部の回転速度とを、逐次測定することによっても、上記同様の制御を実行することが可能となる。
【0175】
また、
図8を用いた説明では、タイミングt4からタイミングt11の間で、ゲイン(大)での制振制御を実行することとしたが、
図5のフローチャートでも示した通り、この期間でのトルク補正量の大きさは、タイミングt2からタイミングt4までのドライブシャフト5の捩れ角の変化速度/変化量が所定値以上となったか否かにより決定される。このため、タイミングt2からタイミングt4までのドライブシャフト5の捩れ角の変化速度/変化量が所定値未満の場合には、タイミングt4以降において、ゲイン(小)での制振制御を実行することとなる。
【0176】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、エンジントルクの制御において、ゲインが“0”、ゲインが“小”、ゲインが“大”の3条件としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。少なくとも互いにゲインの異なる2条件でエンジントルクの制御を行うこととすればよい。よって、より詳細にトルク補正を行うこととしてもよい。
【0177】
また、上記第1実施形態では、タイミングt2からタイミングt4の間はトルク補正を行わず、ドライバによるアクセルペダル7の踏込量に応じてエンジン2のトルク制御を行うこととしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、路面μが低いと判断した場合には、ドライバがアクセルペダル7を踏み込んだとしても、トルク補正をかけることも可能である。これにより、車両1の走行安定性を確実に確保することが可能となる。これについては、ドライバからの加速要求受付部材としてクルーズコントロールの設定車速変更ボタンを備える上記第2実施形態においても同様である。
【解決手段】コントローラは、ドライブシャフトの推定捩れ角を演算する(ステップS6)。アクセルセンサからの検出結果に基づき、車両が加速中であると判定した場合には(ステップS7)、ゲイン(0)である第1トルク値の駆動力を生成するようエンジンの制御を実行する(ステップS8)。ステップS11において、ドライブシャフトの捩れ角の変化速度が反転したと判定した場合には、ゲイン(大)である第2トルク値の駆動力を生成するようエンジンの制御を実行する(ステップS13)。そして、第2トルク値でのエンジン制御の実行開始から所定期間が経過した後においては、ゲイン(小)である第3トルク値の駆動力を生成するようエンジンの制御を実行する(ステップS16)。